(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120565
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート、および、コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20230823BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230823BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230823BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/79 040
C09D7/63
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023507
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拡之
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC35
4J034HC61
4J034HC71
4J034HD01
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4J034KA01
4J034KB03
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4J034KD02
4J034KE02
4J034QB17
4J034RA07
4J038DG051
4J038DG111
4J038DG282
4J038DG302
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA04
4J038PA19
(57)【要約】
【課題】耐薬品性に優れるブロックイソシアネート、および、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤を提供すること。
【解決手段】ブロックイソシアネートは、TDI誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートである。TDI誘導体は、TDIのイソシアヌレート誘導体を含有する。TDIのイソシアヌレート誘導体は、TDIのイソシアヌレート3核以上体を含む。TDIのイソシアヌレート3核以上体は、イソシアヌレート基を3つ以上含有し、7分子以上のTDIを含む誘導体化合物である。トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、TDIのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が40%以上である。ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、
前記トリレンジイソシアネート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有し、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体を含み、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体は、イソシアヌレート基を3つ以上含有し、7分子以上のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物であり、
前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、40%以上であり、
前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有する、ブロックイソシアネート。
【請求項2】
前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、70%以上である、請求項1に記載のブロックイソシアネート。
【請求項3】
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体を含み、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体は、イソシアヌレート基を1つ含有し、3分子のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物であり、
前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(1核体面積率)に対する、
前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(3核以上体面積率)の
比率(3核以上体面積率/1核体面積率)が、1.0以上18.0以下である、請求項1または2に記載のブロックイソシアネート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、
ポリオール成分を含む主剤とを含有する、コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネート、および、コーティング剤に関し、詳しくは、ブロックイソシアネート、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックイソシアネートは、加熱によりブロック剤を解離させ、イソシアネート基を再生させるイソシアネートである。ブロックイソシアネートは、耐薬品性および加工性に優れている。そのため、ブロックイソシアネートは、2液硬化型ポリウレタン樹脂の硬化剤として、広範に使用されている。
【0003】
例えば、以下のブロックイソシアネートが、知られている。このブロックイソシアネートでは、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされている。キシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する。また、キシリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、20%以上40%以下である。また、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤およびオキシム系ブロック剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ブロックイソシアネートは、用途に応じて、優れた耐薬品性が要求される。例えば、ブロックイソシアネートを使用したコーティング膜は、樹脂フィルムの表面に形成される場合がある。このような場合、樹脂フィルムに含まれる薬品(残存モノマーなど)が、コーティング膜に滲出する場合がある。そのため、ブロックイソシアネートを使用した硬化膜には、耐薬品性が要求される。
【0006】
しかしながら、上記のブロックイソシアネートは、耐薬品性が十分ではない場合がある。
【0007】
本発明は、耐薬品性に優れるブロックイソシアネート、および、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、前記トリレンジイソシアネート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有し、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体を含み、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体は、イソシアヌレート基を3つ以上含有し、7分子以上のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物であり、前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、40%以上であり、前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有する、ブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率が、70%以上である、上記[1]に記載のブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体を含み、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体は、イソシアヌレート基を1つ含有し、3分子のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物であり、前記トリレンジイソシアネート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(1核体面積率)に対する、前記トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(3核以上体面積率)の比率(3核以上体面積率/1核体面積率)が、1.0以上18.0以下である、上記[1]または[2]に記載のブロックイソシアネートを、含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを含有する、コーティング剤を、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブロックイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされている。また、トリレンジイソシアネート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する。そして、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体を、所定の割合で含んでいる。さらに、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有している。そのため、本発明のブロックイソシアネートによれば、耐薬品性に優れた硬化膜を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1におけるトリレンジイソシアネート誘導体のゲルパーミエーションクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のブロックイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされている。換言すれば、ブロックイソシアネートは、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応生成物である。
【0015】
トリレンジイソシアネート誘導体(TDI誘導体)は、イソシアネート基を含有するポリイソシアネート組成物である。トリレンジイソシアネート誘導体(TDI誘導体)は、主成分として、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(TDIイソシアヌレート)を含有する。なお、トリレンジイソシアネート誘導体の総量に対して、主成分の含有割合は、90質量%以上である。
【0016】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、分子中に1つ以上のイソシアヌレート基(イソシアヌレート環)を含有する。また、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(TDIイソシアヌレート)は、トリレンジイソシアネートの多量体である。多量体としては、例えば、イソシアヌレート1核体(3分子体)、イソシアヌレート2核体(5分子体)、イソシアヌレート3核体(7分子体)、および、イソシアヌレート4核体(9分子体)が挙げられる。
【0017】
なお、イソシアヌレートn分子体(n:自然数)とは、n分子(n:自然数)のトリレンジイソシアネートがイソシアヌレート基(イソシアヌレート環)を介して結合した誘導体を示す。
【0018】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、例えば、以下の方法によって、得られる。すなわち、トリレンジイソシアネートを、公知のイソシアヌレート化触媒の存在下で、イソシアヌレート化反応させる。
【0019】
トリレンジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートが併用される。
【0020】
2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートが併用される場合、これらの割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートの総モルに対して、2,4-トリレンジイソシアネートが、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上である。また、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートの総モルに対して、2,4-トリレンジイソシアネートが、例えば、99モル%以下、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。また、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートの総モルに対して、2,6-トリレンジイソシアネートが、例えば、1モル%以上、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上である。また、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートの総量に対して、2,6-トリレンジイソシアネートが、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。
【0021】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、これらの有機弱酸塩、アルキルカルボン酸の金属塩、β-ジケトンの金属キレート化合物、フリーデル・クラフツ触媒、有機金属化合物、および、アミノシリル基含有化合物が挙げられる。好ましくは、アルキルカルボン酸の金属塩が挙げられる。アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸およびナフテン酸が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、錫塩、亜鉛塩および鉛塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。なお、イソシアヌレート化触媒を、溶液および/または分散液として用いることもできる。
【0022】
イソシアヌレート化触媒(固形分換算)の添加割合は、トリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上である。また、イソシアヌレート化触媒(固形分換算)の添加割合は、トリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、3.0質量部以下、好ましくは、1.0質量部以下である。
【0023】
また、イソシアヌレート化触媒の使用形態は、特に制限されない。例えば、公知の固体のイソシアヌレート化触媒を使用できる。また、公知のイソシアヌレート化触媒の溶液を使用できる。好ましくは、イソシアヌレート化触媒の溶液が使用される。
【0024】
イソシアヌレート化触媒の溶液は、上記のイソシアヌレート化触媒と、公知の有機溶剤とを含有できる。有機溶剤としては、例えば、アルキルエステル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類およびニトリル類が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。溶液の固形分濃度(イソシアヌレート化触媒の含有割合)は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0025】
なお、イソシアヌレート化触媒の溶液が、アルコール類を含有する場合、そのアルコール類は、触媒に対する溶媒である。溶媒としてのアルコール類は、後述する変性剤としてのアルコール類とは区別される。より具体的には、溶媒としてのアルコール類の量は、変性剤としてのアルコール類の量に比べて、僅かである。より具体的には、溶媒としてのアルコール類の量は、トリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0026】
トリレンジイソシアネートおよびイソシアヌレート化触媒は、不活性ガス雰囲気下、および、常圧(大気圧)下で、イソシアヌレート化反応する。
【0027】
また、トリレンジイソシアネートおよびイソシアヌレート化触媒は、好ましくは、有機溶剤の存在下で、イソシアヌレート化反応する。有機溶剤としては、例えば、上記した有機溶剤が挙げられる。有機溶剤として、好ましくは、アルキルエステル類が挙げられる。
【0028】
イソシアヌレート化反応の反応条件は、後述するイソシアヌレート3核以上体の割合を後述の範囲に調整する観点から、適宜設定される。
【0029】
例えば、トリレンジイソシアネートおよびイソシアヌレート化触媒が、有機溶剤の存在下でイソシアヌレート化反応する場合、イソシアヌレート化反応の反応温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、50℃以上である。また、イソシアヌレート化反応の反応温度は、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。また、イソシアヌレート化反応の反応時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、2時間以上である。また、イソシアヌレート化反応の反応時間は、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間以下、さらに好ましくは、8時間以下である。
【0030】
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率は、後述するイソシアヌレート3核以上体の割合を後述の範囲に調整する観点から、適宜設定される。
【0031】
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上、とりわけ好ましくは、65質量%以上である。また、イソシアネート基のイソシアヌレート転化率は、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0032】
イソシアヌレート化反応では、例えば、イソシアヌレート転化率が所望の値に到達した後、触媒失活剤が、添加される。これにより、イソシアヌレート化反応が停止される。触媒失活剤としては、例えば、リン酸化合物、スルホン酸化合物およびスルホンアミド化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。触媒失活剤の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0033】
これにより、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を得ることができる。
【0034】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、必要に応じて、変性剤としての公知のアルコール類で変性されていてもよい。
【0035】
アルコール類で変性されたイソシアヌレート誘導体は、例えば、以下の方法で得られる。すなわち、まず、トリレンジイソシアネートの一部のイソシアネート基と、アルコール類とをウレタン化反応させ、アルコール類で変性されたトリレンジイソシアネートを得る。次いで、アルコール類で変性されたトリレンジイソシアネートを、イソシアヌレート化触媒の存在下で、イソシアヌレート化反応させる。
【0036】
また、アルコール類で変性されたイソシアヌレート誘導体は、例えば、以下の方法で得ることもできる。すなわち、まず、トリレンジイソシアネートを、イソシアヌレート化触媒の存在下で、イソシアヌレート化反応させ、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を得る。次いで、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の一部のイソシアネート基と、アルコール類とをウレタン化反応させる。
【0037】
これらの方法により、アルコール類で変性されたトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が得られる。
【0038】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、上記の反応における反応生成液に含まれる。換言すると、反応生成液は、トリレンジイソシアネート誘導体である。
【0039】
すなわち、反応生成液を、そのままトリレンジイソシアネート誘導体として用いることができる。また、反応生成液から、未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)を分離して、トリレンジイソシアネート誘導体として用いることもできる。
【0040】
未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)を分離する方法としては、例えば、蒸留法および抽出法が挙げられ、好ましくは、蒸留法が挙げられる。蒸留法としては、例えば、薄膜蒸留が挙げられる。なお、蒸留条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0041】
好ましくは、上記のイソシアヌレート転化率が比較的低い場合(例えば、65質量%以下、好ましくは、30質量%以下)に、未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)が、反応生成液から分離される。
【0042】
好ましくは、反応生成液から、未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)を分離せずに、上記のイソシアヌレート化反応の反応条件を調整して、未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)を低減する。
【0043】
より具体的には、好ましくは、上記のイソシアヌレート化反応における反応条件が調整され、後述するイソシアヌレート3核以上体の割合が、後述の範囲に調整される。これにより、トリレンジイソシアネートが反応に供される。つまり、未反応のトリレンジイソシアネートの量が、低減される。
【0044】
このような場合、未反応のトリレンジイソシアネートを分離する操作は、不要である。すなわち、好ましくは、反応生成液から、未反応のトリレンジイソシアネート(および/またはそのアルコール変性体)を分離しない。
【0045】
換言すると、好ましくは、反応生成液が、そのままトリレンジイソシアネート誘導体として用いられる。
【0046】
反応生成液は、上記の有機溶剤を含むことができる。このような場合、トリレンジイソシアネート誘導体の溶液および/または分散液が、得られる。また、反応生成液は、上記の有機溶剤を含んでいなくともよい。このような場合、固形のトリレンジイソシアネート誘導体が、得られる。すなわち、トリレンジイソシアネート誘導体は、固形であってもよく、溶液および/または分散液であってもよい。
【0047】
トリレンジイソシアネート誘導体が溶液および/または分散液である場合、固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上である。また、固形分濃度は、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0048】
なお、トリレンジイソシアネート誘導体の溶液および/または分散液に、上記の有機溶剤を添加して、固形分濃度を、上記範囲に調整することができる。また、トリレンジイソシアネート誘導体の溶液および/または分散液から、上記の有機溶剤を留去して、固形分濃度を、上記範囲に調整することができる。
【0049】
トリレンジイソシアネート誘導体は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、助触媒、耐熱安定剤、耐光安定剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、滑剤、フィラーおよび加水分解防止剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。添加剤の添加割合、および、添加タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0050】
トリレンジイソシアネート誘導体において、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、必須成分として、7分子以上のトリレンジイソシアネート(および必要により配合されるアルコール類)からなるイソシアヌレート3核以上体(7分子以上体)を含んでいる。
【0051】
また、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、任意成分として、例えば、3分子のトリレンジイソシアネート(および必要により配合されるアルコール類)からなるイソシアヌレート1核体(3分子体)を含むことができる。さらに、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、任意成分として、5分子のトリレンジイソシアネート(および必要により配合されるアルコール類)からなるイソシアヌレート2核体を含むことができる。
【0052】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体(3分子体)は、イソシアヌレート基を1つ含有し、3分子のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物である。
【0053】
トリレンジイソシアネート誘導体において、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体の質量割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおける面積率(GPC面積率)として求めることができる。イソシアヌレート1核体のGPC面積率は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおいてトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体に相当するピークの面積が全ピークの面積に対して占める割合を、示す。
【0054】
より具体的には、イソシアヌレート1核体のGPC面積率は、以下の方法で、算出される。すなわち、トリレンジイソシアネート誘導体を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定し、クロマトグラムを得る。そして、そのクロマトグラムの全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)400以上550未満の範囲にピークトップを有するピークの面積が占める割合(面積率)を、算出する。この面積率が、イソシアヌレート1核体のGPC面積率である。イソシアヌレート1核体のGPC面積率は、トリレンジイソシアネート誘導体中におけるイソシアヌレート1核体の質量割合を示す。なお、以下において、イソシアヌレート1核体のGPC面積率を、Mn400-550面積率、または、1核体面積率と称する場合がある。
【0055】
耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn400-550面積率(1核体面積率)は、例えば、3%以上、好ましくは、5%以上、より好ましくは、8%以上、さらに好ましくは、10%以上である。また、耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn400-550面積率(1核体面積率)は、例えば、50%以下、好ましくは、40%以下、より好ましくは、30%以下、さらに好ましくは、20%以下、とりわけ好ましくは、15%以下である。
【0056】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート2核体(5分子体)は、イソシアヌレート基を2つ含有し、5分子のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物である。
【0057】
トリレンジイソシアネート誘導体において、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート2核体の質量割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおける面積率(GPC面積率)として求めることができる。イソシアヌレート2核体のGPC面積率は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおいてトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート2核体に相当するピークの面積が全ピークの面積に対して占める割合を、示す。
【0058】
より具体的には、イソシアヌレート2核体のGPC面積率は、以下の方法で、算出される。すなわち、トリレンジイソシアネート誘導体を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定し、クロマトグラムを得る。そして、そのクロマトグラムの全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)750以上900未満の範囲にピークトップを有するピークの面積が占める割合(面積率)を、算出する。この面積率が、イソシアヌレート2核体のGPC面積率である。イソシアヌレート2核体のGPC面積率は、トリレンジイソシアネート誘導体中におけるイソシアヌレート2核体の質量割合を示す。なお、以下において、イソシアヌレート2核体のGPC面積率を、Mn750-900面積率、または、2核体面積率と称する場合がある。
【0059】
耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn750-900面積率(2核体面積率)は、例えば、3%以上、好ましくは、5%以上、より好ましくは、8%以上、さらに好ましくは、10%以上である。また、耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn750-900面積率(2核体面積率)は、例えば、40%以下、好ましくは、30%以下、より好ましくは、20%以下である。
【0060】
トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体(7分子以上体)は、イソシアヌレート基を3つ以上含有し、7分子以上のトリレンジイソシアネートを含む誘導体化合物である。
【0061】
トリレンジイソシアネート誘導体において、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体の質量割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおける面積率(GPC面積率)として求めることができる。イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおいてトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体に相当するピークの面積が全ピークの面積に対して占める割合を、示す。
【0062】
より具体的には、イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率は、以下の方法で、算出される。すなわち、トリレンジイソシアネート誘導体を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定し、クロマトグラムを得る。そして、そのクロマトグラムの全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)1000以上10000未満の範囲にピークトップを有するピークの面積が占める割合(面積率)を、算出する。この面積率が、イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率である。イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率は、トリレンジイソシアネート誘導体中におけるイソシアヌレート3核以上体の質量割合を示す。なお、以下において、イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率を、Mn1000-10000面積率、または、3核以上体面積率と称する場合がある。
【0063】
耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn1000-10000面積率(3核以上体面積率)は、40%以上、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、70%以上、とりわけ好ましくは、75%以上である。また、耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn1000-10000面積率(3核以上体面積率)は、例えば、97%以下、好ましくは、95%以下、より好ましくは、90%以下、さらに好ましくは、85%以下、とりわけ好ましくは、80%以下である。
【0064】
また、耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn400-550面積率(1核体面積率)に対して、トリレンジイソシアネート誘導体のMn1000-10000面積率(3核以上体面積率)の比率(3核以上体面積率/1核体面積率)が、例えば、0.5以上、好ましくは、1.0以上、より好ましくは、3.0以上、さらに好ましくは、5.0以上、とりわけ好ましくは、7.0以上である。また、耐薬品性の観点から、トリレンジイソシアネート誘導体のMn400-550面積率(1核体面積率)に対して、トリレンジイソシアネート誘導体のMn1000-10000面積率(3核以上体面積率)の比率(3核以上体面積率/1核体面積率)が、例えば、20.0以下、好ましくは、18.0以下、より好ましくは、15.0以下、さらに好ましくは、10.0以下、とりわけ好ましくは、8.0以下である。
【0065】
トリレンジイソシアネート誘導体は、不可避的不純物として、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体(その他の誘導体)を含有できる。より具体的には、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の合成では、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体が、副生する場合がある。そのため、トリレンジイソシアネート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体以外の誘導体を、不可避的に含有する場合がある。
【0066】
イソシアヌレート誘導体以外の誘導体としては、例えば、トリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、トリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、トリレンジイソシアネートのウレトジオン誘導体が挙げられる。これらの含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。例えば、イソシアヌレート誘導体以外の誘導体の含有割合は、トリレンジイソシアネート誘導体の総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0067】
ブロックイソシアネートは、上記のトリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させることにより得られる。
【0068】
ブロック剤は、必須成分として、ピラゾール系ブロック剤を、含有する。ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、および、3-メチル-5-フェニルピラゾールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)が挙げられる。
【0069】
ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含んでいれば、耐薬品性に優れた硬化膜(後述)を得られる。また、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含んでいれば、ブロックイソシアネートの濁りを抑制でき、さらに、優れたハンドリング性を得ることができる。
【0070】
また、ブロック剤は、任意成分として、ピラゾール系ブロック剤以外のブロック剤(その他のブロック剤)を含有できる。ピラゾール系ブロック剤以外のブロック剤としては、例えば、イミダゾール系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、フェノール系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、イミン系ブロック剤、アミン系ブロック剤、カルバミン酸系ブロック剤、尿素系ブロック剤、イミド系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、および、酸アミド系ブロック剤(ラクタム系ブロック剤)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0071】
ピラゾール系ブロック剤以外のブロック剤(その他のブロック剤)の割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。例えば、ブロック剤の総量に対して、ピラゾール系ブロック剤以外のブロック剤の質量割合は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、0質量%である。また、ブロック剤の総量に対して、ピラゾール系ブロック剤の質量割合が、例えば、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、100質量%である。換言すると、ブロック剤は、より好ましくは、ピラゾール系ブロック剤からなる。
【0072】
トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させる方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、不活性ガス雰囲気下、および、常圧(大気圧)下で、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させる。
【0073】
トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との混合割合は、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基と、ブロック剤の活性基(イソシアネート基をブロックするブロック基)との比率に応じて、調整される。
【0074】
より具体的には、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基に対する、ブロック剤の活性基(イソシアネート基をブロックするブロック基)の比率(ブロック基/イソシアネート基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、1.0以上である。また、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基に対する、ブロック剤の活性基(イソシアネート基をブロックするブロック基)の比率(ブロック基/イソシアネート基)が、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0075】
トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。また、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応温度は、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下である。
【0076】
トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0077】
なお、反応の終了は、公知の方法で、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断される。
【0078】
また、上記の反応では、必要に応じて、公知の有機溶剤が配合されていてもよい。有機溶剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0079】
また、上記の反応では、必要に応じて、公知のブロック化触媒が配合されていてもよい。ブロック化触媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0080】
そして、上記のようにトリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させることにより、トリレンジイソシアネート誘導体(具体的には、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体)のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされる。その結果、ブロックイソシアネートが得られる。
【0081】
また、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とは、好ましくは、有機溶剤の存在下で、反応する。より具体的には、好ましくは、トリレンジイソシアネート誘導体が、溶液および/または分散液である。そして、溶液および/または分散液に含まれる有機溶剤の存在下で、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とが、反応する。
【0082】
このような場合、ブロックイソシアネートの溶液および/または分散液が、得られる。また、トリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とは、無溶剤下で反応してもよい。このような場合、固形のブロックイソシアネートが、得られる。すなわち、ブロックイソシアネートは、固形であってもよく、溶液および/または分散液であってもよい。
【0083】
ブロックイソシアネートが溶液および/または分散液である場合、固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上である。また、固形分濃度は、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0084】
なお、ブロックイソシアネートの溶液および/または分散液に、有機溶剤を添加して、固形分濃度を、上記範囲に調整することができる。また、ブロックイソシアネートの溶液および/または分散液から、有機溶剤を留去して、固形分濃度を、上記範囲に調整することができる。
【0085】
このようなブロックイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされている。また、トリレンジイソシアネート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する。そして、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体を、所定の割合で含んでいる。さらに、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有している。そのため、上記のブロックイソシアネートによれば、耐薬品性に優れた硬化膜を得られる。
【0086】
より具体的には、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)のイソシアヌレート誘導体では、イソシアネート基が、芳香環に対して、直接結合せずに、メチレン基を介して結合している。そのため、キシリレンジイソシアネート(XDI)のイソシアヌレート誘導体を用いて得られるポリウレタン樹脂は、比較的柔軟な分子骨格および結晶構造を有する。その結果、キシリレンジイソシアネート(XDI)のイソシアヌレート誘導体を用いて得られるポリウレタン樹脂の耐薬品性は、比較的低い場合がある。
【0087】
一方、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート誘導体では、イソシアネート基が、芳香環に直接結合している。そのため、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート誘導体を用いて得られるポリウレタン樹脂は、比較的剛直な分子骨格および結晶構造を有する。その結果、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート誘導体を用いて得られるポリウレタン樹脂の耐薬品性は、耐薬品性が比較的高くなる。
【0088】
とりわけ、上記のブロックイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート誘導体は、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート3核以上体を、所定の割合で含んでいる。トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート3核以上体は、ポリウレタン樹脂の分子骨格および結晶構造を、より剛直にできる。そのため、イソシアヌレート3核以上体により、とりわけ耐薬品性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【0089】
さらに、上記のブロックイソシアネートでは、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有するため、とりわけ耐薬品性に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【0090】
すなわち、上記のブロックイソシアネートによれば、耐薬品性に優れた硬化膜を得られる。
【0091】
さらに、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート誘導体が、トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート3核以上体を含んでいても、ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤を含有していれば、ブロックイソシアネートの濁りが抑制される。
【0092】
その結果、上記のブロックイソシアネートは、各種産業分野において、樹脂の硬化剤(架橋剤)として、好適に用いられる。産業分野としては、例えば、コーティング分野、塗料分野、インキ分野および接着剤分野が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂およびポリエステル樹脂が挙げられる。
【0093】
とりわけ好ましくは、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤分野において、ポリウレタン樹脂の硬化剤として、好適に用いられる。
【0094】
コーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを含有する。コーティング剤は、例えば、2液硬化型コーティング剤であってもよく、1液硬化型コーティング剤であってもよい。2液硬化型コーティング剤は、個別に調整された硬化剤と主剤とを、別々に備える2液キットである。1液硬化型コーティング剤は、硬化剤と主剤とを含む混合組成物である。上記の硬化剤は、ブロックイソシアネートを含む。そのため、コーティング剤は、好ましくは、1液硬化型コーティング剤である。
【0095】
硬化剤は、上記のブロックイソシアネートとともに、他のブロックイソシアネートを含むこともできる。硬化剤において、他のブロックイソシアネートの含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。好ましくは、硬化剤は、他のブロックイソシアネートを含有しない。つまり、硬化剤は、上記のブロックイソシアネート(トリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネート)からなる。
【0096】
主剤において、ポリオール成分は、好ましくは、マクロポリオールを含んでいる。つまり、主剤は、好ましくは、マクロポリオールを含んでいる。
【0097】
マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400を超過し、例えば、20000以下である。
【0098】
なお、数平均分子量は、水酸基当量および平均水酸基数から、公知の方法で算出できる。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算分子量として測定できる(以下同様)。
【0099】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0100】
マクロポリオールとして、好ましくは、アクリルポリオールおよびポリエステルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0101】
マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400を超過し、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、20000以下、好ましくは、15000以下、より好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、5000以下である。
【0102】
マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、2以上、好ましくは、2を超過し、より好ましくは、2.1以上である。また、マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、3未満、さらに好ましくは、2.8以下である。
【0103】
マクロポリオールの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以上である。また、マクロポリオールの水酸基価は、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、180mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下である。
【0104】
マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0105】
また、ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含むこともできる。ポリオール成分は、好ましくは、低分子量ポリオールを含有しない。つまり、ポリオール成分は、好ましくは、マクロポリオールからなる。つまり、主剤は、好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0106】
ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤との配合割合は、ポリオール成分の水酸基に対する、ブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比に応じて、調整される。
【0107】
より具体的には、ポリオール成分の水酸基に対する、ブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.9以上である。また、ポリオール成分の水酸基に対する、ブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0108】
また、コーティング剤は、例えば、溶剤を含有できる。溶剤は、硬化剤および/または主剤に、任意の割合で配合される。硬化剤の固形分濃度、および、主剤の固形分濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0109】
また、コーティング剤は、必要に応じて、さらに、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、顔料分散剤、染料、有機粒子、無機粒子、防黴剤、難燃剤、密着改良剤、および、つや消し剤が挙げられる。添加剤の添加量および添加のタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0110】
そして、このようなコーティング剤は、本発明のブロックイソシアネートを含有するため、耐薬品性に優れた硬化膜(後述)を得られる。
【0111】
コーティング剤から硬化膜を得る方法としては、例えば、コーティング剤を基材に塗布する。
【0112】
基材としては、特に制限されず、公知の樹脂フィルムが挙げられる。樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0113】
コーティング剤を基材に塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法が採用される。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、バーコート法、および、アプリケーター塗布法が挙げられる。
【0114】
なお、コーティング剤の塗布量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0115】
次いで、この方法では、基材に塗布されたコーティング剤を加熱し、ブロックイソシアネートのブロック剤を解離させる。解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤が解離する条件である。例えば、解離温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上である。また、解離温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。
【0116】
そして、この方法では、ブロック剤の解離により再生したイソシアネート基(硬化剤のイソシアネート基)と、主剤中のポリオール成分の水酸基とを、上記の解離温度において、ウレタン化反応させる。反応時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上である。また、反応時間は、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0117】
これにより、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール成分の水酸基とを反応させ、コーティング剤を硬化させることができる。その結果、コーティング剤の、硬化膜が得られる。また、必要により、適宜の条件で、エージングすることもできる。
【0118】
このような硬化膜は、上記のコーティング剤を用いて得られるため、優れた耐薬品性を有する。
【実施例0119】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0120】
1.GPC測定方法
サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
【0121】
そして、ポリスチレン換算分子量400以上550未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn400-550面積率)を、イソシアヌレート1核体(3分子体)の含有割合とした。
【0122】
また、ポリスチレン換算分子量1000以上10000未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn1000-10000面積率))を、イソシアヌレート3核以上体(7分子以上体)の含有割合とした。
【0123】
なお、GPC測定においては、サンプルを約0.03g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
【0124】
分析装置 : 高速GPC装置 HLC-8320(東ソー製)
検出器 : 示差屈折検出器
溶離液 : テトラヒドロフラン
分離カラム :下記(1)~(4)を直列接続
(1)TSKgel guardcolum HXL-L 6.0×40(東ソー社製)
(2)TSKgel G1000HXL 7.8×300(東ソー社製)
(3)TSKgel G2000HXL 7.8×300(東ソー社製)
(4)TSKgel G3000HXL 7.8×300(東ソー社製)
測定温度 : 40℃
流速 : 1mL/min
サンプル注入量: 100μL
解析装置 : Eco SEC(東ソー社製)
・システム補正
標準物質名 : Polystyrene
検量線作成方法: 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
注入量、注入濃度: 100μL、 1mg/mL
【0125】
なお、実施例1のポリイソシアネート組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムを
図1に示す。
【0126】
図1において、ピークNo.5は、イソシアヌレート1核体を示す。つまり、全ピーク面積に対するピークNo.5の面積率が、イソシアヌレート1核体のGPC面積率である。
【0127】
また、
図1において、ピークNo.4は、イソシアヌレート2核体を示す。つまり、全ピーク面積に対するピークNo.4の面積率が、イソシアヌレート2核体のGPC面積率である。
【0128】
また、
図1において、ピークNo.1~No.3は、イソシアヌレート3核以上体を示す。つまり、全ピーク面積に対するピークNo.1~No.3の面積率(合計)が、イソシアヌレート3核以上体のGPC面積率である。
【0129】
2.ブロックイソシアネートの製造
【0130】
(1)ポリイソシアネートの合成
合成例1
撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、トリレンジイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン社製 コスモネートT-80)を100質量部と、酢酸ブチル60質量部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(酸化防止剤)0.2質量部と、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(酸化防止剤)0.05質量部とを仕込み、フラスコ内を60℃に加温した。
【0131】
次いで、フラスコに、m-クレゾール(助触媒)0.1質量部を添加した。また、フラスコに、イソシアヌレート化触媒の溶液を30分かけて滴下した。
【0132】
なお、イソシアヌレート化触媒の溶液は、ナフテン酸カルシウムのミネラルスピリット溶液0.4質量部(固形分濃度47質量%、触媒固形分0.19質量部)と、酢酸ブチル40質量部と、n-ブタノール0.1質量部との混合物であった。
【0133】
次いで、フラスコ内の温度を、60℃±3℃に調整した。そして、イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が70質量%になるまで、上記の混合物を反応させた。
【0134】
その後、フラスコに、o-トルエンスルホン酸アミド(反応停止剤)0.5質量部を添加して、反応を停止させた。これにより、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有するトリレンジイソシアネート誘導体を得た。また、トリレンジイソシアネート誘導体を、酢酸ブチルで希釈し、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0135】
合成例2
撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、トリレンジイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン社製 コスモネートT-80、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート=80モル/20モル)100質量部と、酢酸ブチル60質量部と、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(酸化防止剤)0.2質量部と、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(酸化防止剤)0.05質量部とを仕込み、フラスコ内を60℃に加温した。
【0136】
次いで、フラスコに、m-クレゾール(助触媒)0.1質量部を添加した。また、フラスコに、イソシアヌレート化触媒の溶液を30分かけて滴下した。イソシアヌレート化触媒の溶液は、ナフテン酸カルシウム・ミネラルスピリット溶液(イソシアヌレート化触媒)0.4質量部と、酢酸ブチル40質量部およびn-ブタノール0.1質量部との混合物であった。
【0137】
次いで、フラスコ内の温度を、60℃±3℃に調整した。そして、イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が30質量%になるまで、上記の混合物を反応させた。
【0138】
次いで、フラスコに、o-トルエンスルホン酸アミド(反応停止剤)0.5質量部を添加して、反応を停止させた。これにより、反応生成液を得た。
【0139】
次いで、反応生成液を、薄膜蒸留(圧力:200PaA、温度:100℃、フィード量:10g/時間)した。これにより、酢酸ブチルを留去した。
【0140】
次いで、上記の薄膜蒸留で得られた高沸点液を、さらに、薄膜蒸留(圧力:50PaA、温度:160℃、フィード量:5g/時間)した。これにより、未反応のトリレンジイソシアネートを留去した。
【0141】
以上により、トリレンジイソシアネート誘導体を得た。トリレンジイソシアネート誘導体を、酢酸ブチルで希釈し、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0142】
合成例3
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が62%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例2と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0143】
合成例4
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が75%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例1と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0144】
合成例5
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が24%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例2と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0145】
合成例6
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が20%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例2と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0146】
合成例7
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が78%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例1と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0147】
合成例8
特開2021-85009号公報の実施例1に記載の方法で、キシリレンジイソシアネート誘導体を得た。
【0148】
すなわち、温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入管が装置された反応器に、窒素雰囲気下、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI、三井化学社製) 100質量部と、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、商品名:イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製)0.021質量部(0.02phr)とを仕込み、60℃~65℃において混合した。
【0149】
次いで、その混合物に、1,3-ブチレングリコール 2質量部を、70℃~75℃において添加して混合し、ウレタン化反応させた。
【0150】
次いで、得られたウレタン反応液に、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド(イソシアヌレート化触媒、TBAOH(37%メタノール溶液))のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度3.7質量%)を添加した。添加量は、ウレタン反応液に対して、TBAOH(37%メタノール溶液)が0.11質量部(有効成分として0.04質量部)となるように、調整した。
次いで、ウレタン反応液を混合しながら、70℃~75℃において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の転化率が、31%に到達するまで、1,3-キシリレンジイソシアネートをイソシアヌレート化反応させた。
【0151】
次いで、得られた反応生成液に、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、触媒失活剤)のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(有効成分濃度50質量%)を添加し、イソシアヌレート化反応を停止させた。添加量は、DDBSAが0.054質量部(DDBSAの添加割合が、反応生成液に対して500ppm)となるように、調整した。
【0152】
次いで、得られた反応生成液を、さらに、70~75℃で30分撹拌した。次いで、得られた反応生成液を薄膜蒸留(圧力:60PaA以下、温度:160℃、フィード量:5g/時間)して、キシリレンジイソシアネート誘導体を含有する分離液と、未反応のキシリレンジイソシアネートを含有する回収液とを、それぞれ分離した。そして、得られた分離液には、酢酸エチルを添加して固形分濃度を75質量%に調整し、耐熱安定剤として、パラトルエンスルホンアミド0.04質量部を添加した。これにより、キシリレンジイソシアネート誘導体の溶液を得た。
【0153】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体を、上記と同様にゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
【0154】
なお、キシリレンジイソシアネート誘導体において、ポリスチレン換算分子量500以上600未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn500-600面積率)を、イソシアヌレート1核体(3分子体)の含有割合とした。
【0155】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体において、ポリスチレン換算分子量1000以上10000未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn1000-10000面積率)を、イソシアヌレート3核以上体(7分子以上体)の含有割合とした。
【0156】
合成例9
イソシアネート基のイソシアヌレート転化率が35%になるまで、上記の混合物を反応させた。これ以外は、合成例2と同様の方法で、固形分濃度50%のポリイソシアネート溶液を得た。
【0157】
実施例1~6および比較例1~4
表1に記載の組み合わせで、ポリイソシアネート溶液とブロック剤とを配合した。なお、ポリイソシアネート溶液のイソシアネート基に対する、ブロック剤の活性基(イソシアネート基をブロックするブロック基)の比率(ブロック基/イソシアネート基)を、1.02に調整した。
【0158】
そして、ポリイソシアネート溶液とブロック剤とを、40~60℃で1~2時間反応させ、アミン当量が20,000以上となった時点で、反応を停止させた。その後、反応混合物に、酢酸ブチルを添加して、固形分濃度を60質量%に調整した。これにより、ブロックイソシアネートの溶液を得た。
【0159】
3.評価
(1)耐薬品性
主剤として、ポリエステルポリオール(タケラックU-25(商品名) 三井化学製 水酸基価:135mgKOH/g、固形分濃度75%)を準備した。また、硬化剤として、表1に記載のブロックイソシアネートの溶液を準備した。
【0160】
ポリエステルポリオールとブロックイソシアネートの溶液とを混合した。なお、ポリエステルポリオールの水酸基に対する、ブロックイソシアネートのイソシアネート基の当量比を、1.0とした。そして、これらの混合物に、シンナー(酢酸エチル:酢酸ブチル:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=1:1:1混合品)を添加し、23℃で5分間混合した。これにより、混合物の固形分濃度を、50質量%に調整した。
【0161】
その後、混合物を10分間超音波処理して、脱泡させた。これにより、コーティング液を得た。
【0162】
コーティング液を、4milアプリケーターにて、ガラス板(JIS,R,3202 厚さ2mm)に塗工した。次いで、塗膜を、150℃のオーブンで30分加熱した。その後、塗膜を、23℃、湿度55%の恒温室で3日間エージングした。これにより、硬化膜を得た。
【0163】
ペーパーウエスを1cm角に切り取った。また、ペーパーウエスに、4-ヒドロキシブチルアクリレート(三菱ケミカル社製 4HBA 商品名)を染み込ませた。そして、ペーパーウエスを、コーティング液の硬化膜に貼り付けた。次いで、ペーパーウエスおよび硬化膜を、80℃のオーブンで30分加熱した。その後、ペーパーウエスを硬化膜から取り除いた。また、硬化膜の表面を拭き取り、表面の状態を、目視で観察した。評価基準を下記する。
【0164】
◎:硬化膜表面に変化が確認されなかった。
〇:硬化膜表面に薄い痕が確認された。しかし、硬化膜の曇りは確認されなかった。
△:硬化膜の曇りは確認されなかった。
×:硬化膜の膨潤、シュリンクおよび/または剥離が確認された。
【0165】
(2)濁り
ブロックイソシアネートの溶液を製造した直後に、ブロックイソシアネートの溶液を100mLガラス瓶に入れた。そして、ブロックイソシアネートの溶液にライトを照らしながら、濁りの有無を、目視で確認した。評価基準を下記する。
【0166】
〇:濁りが確認されなかった。
△:濁りがわずかに確認された。
×:濁りが明らかに確認された。
【0167】
【0168】
表中の略号の詳細を下記する。
DMP:3,5-ジメチルピラゾール
MEKO:メチルエチルケトンオキシム