(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120614
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】自律走行型配達ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20230823BHJP
B60P 1/00 20060101ALI20230823BHJP
B60P 1/44 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
B60P1/00 G
B60P1/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023561
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 章
(72)【発明者】
【氏名】中津 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】金澤 一成
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS21
3C707CS08
3C707CU04
3C707HS27
3C707HT12
3C707KS20
3C707KV01
3C707MT05
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】荷物を置き配することができるとともに、荷物を安定して排出することが可能な自律走行型配達ロボットを提供する。
【解決手段】自律走行可能な走行手段Tと、荷室を有するロボット本体1に搭載された置き配装置2と、置き配処理を実行する制御部Cとを備えた自律走行型配達ロボットRであり、荷物を収容可能な可動カゴ部3を荷室に収容される収容位置(3A)から可動カゴ部3の底板部31が配送先の床Fに接触する置き配位置(3B)までリフトダウンさせるリフトダウン機構4と、リフトダウン機構4によって可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)にリフトダウンさせる際に底板部31が荷物配送面Fに所定距離まで近付いた際に底板部31よりも優先して荷物配送面Fに接地する優先接地部8とを備え、優先接地部8に作用する接地反力によって底板部31を傾斜させる構成にした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な走行手段と、内部空間の一部を荷室に設定したロボット本体と、前記ロボット本体に搭載された置き配装置と、少なくとも置き配処理を実行する制御部とを備えた自律走行型配達ロボットであり、
前記置き配装置は、
荷物を収容可能な可動カゴ部と、
前記可動カゴ部を当該可動カゴ部全体が前記荷室に収容される収容位置から前記可動カゴ部の底板部の少なくとも一部が配送先の荷物配送面に接触または近接する置き配位置までリフトダウンさせるリフトダウン機構と、
前記リフトダウン機構によって前記可動カゴ部を前記収容位置から前記置き配位置にリフトダウンさせる際に、前記可動カゴ部のうち荷物が載置されている底板部が前記荷物配送面に所定距離まで近付いた際に前記底板部よりも優先して前記荷物配送面に接地する優先接地部とを備えたものであり、
前記制御部によって前記リフトダウン機構を作動させて置き配処理を実行中において、前記底板部に取り付けられた前記優先接地部が前記荷物配送面に接地した以降に、前記優先接地部の下端に加わる接地反力で前記底板部を荷物搬出方向に漸次傾斜可能に構成していることを特徴とする自律走行型配達ロボット。
【請求項2】
前記可動カゴ部を前記収容位置から前記置き配位置に向かってリフトダウンさせる方向に張り出した状態で前記荷物配送面にアウトリガー接地部の先端部を接地させるアウトリガー機構と、
前記制御部によって前記アウトリガー機構を作動させて前記荷物配送面に前記アウトリガー接地部の先端部を接地させた時点の接地角度を検出する接地角度検出部と、
前記接地角度検出部による検出値に基づいて前記リフトダウン機構のリフトダウン目標角度を算出するリフトダウン目標角度算出部とを備えている請求項1に記載の自律走行型配達ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行型ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)に関し、特にロボット内部の荷室に収容された荷物を配達先である目的地に置き配可能な自律走行型配達ロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EC(electronic commerce)の普及・拡大、また新型コロナウイルス禍によるEC特需等を背景に近年は荷物数が急増しており、宅配便市場は活況を呈している。国土交通省によれば、緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、宅配便の荷物数は前年を1割ほど上回った状況が続いている。一方で、宅配荷物の増加に伴い、宅配ドライバーの負荷は増大し、人手不足が物流業界で問題となっている。また、新型コロナウイルス禍で求められる非対面や非接触の配送需要も増大しており、新型コロナウイルス禍中及びアフターコロナでは非接触の配送需要は益々増大するものと考えられる。
【0003】
このような宅配荷物の増加と宅配ドライバーの負荷増大、人手不足への対応の1つとして、宅配ドライバーの仕事の一部を自律走行型ロボット(AMR)に任せて、自動配達することにより、業務負荷の増大を抑えようとする国内実証が進んでおり、海外では実用化が進んでいる(下記、非特許文献1参照)。
【0004】
また、宅配ドライバーの負荷増大、人手不足、さらには非接触配送需要への対応の1つとして、宅配ドライバーの仕事のうち置き配(配達員が受取人に荷物を直接手渡しするのではなく、指定された場所に荷物を置く配達方式)に関しては自律走行型ロボットに任せて、届け先において当該ロボットにより自動で置き配する実証実験が進められている(下記、非特許文献2参照)。置き配については、配達員が荷物を手渡しせず、在宅でも留守であっても指定された場所に荷物を置くことで配達が済むため、再配達の手間・時間を効果的に省くことで作業効率(配送効率)の向上に大きく貢献するという側面もある。なお、コロナ禍で外出自粛という状況下において再配達率が大幅に低下したことで、配送効率が改善しているという報告もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“配達ロボット・デリバリーロボット DeliRo(デリロ)”,[online],[令和3年5月20日検索],インターネット,<URL:https://www.zmp.co.jp/products/lrb/deliro>
【非特許文献2】“Amoeba Energy、日本郵便/ロボットによる連続置き配に成功”,[online],[令和3年5月20日検索],インターネット,<URL:https://www.lnews.jp/2020/01/m0130401.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の配達ロボットを利用すると、荷物の受取人は配達ロボットのボックスから荷物を取り出すことで荷物を受け取ることができる一方、配達先において受取人が不在の場合には、ロボットが配達先で一定期間待機し続けるか、拠点へと引き返した後に再配達しなければならない。
【0007】
また、非特許文献2に記載の配達ロボットであれば、ロボット単体で自動置き配することができるため、受取人が不在の場合であっても、配達先で一定期間待機し続けたり、拠点へと引返した後に再配達するという事態を回避することができるものの、以下のような不具合がある。先ず、非特許文献2に記載の配達ロボットであれば、荷物の床置きに適するように荷物の搭載スペースを床付近に設定しているため、通常配送時であっても受取人は荷物を受け取るために一旦しゃがみこむ姿勢になることが強いられる。このことは、配送拠点等において配送する荷物を搭載スペースに出し入れする作業時においても同様であり、作業員による荷物搭載作業の効率性が低下する要因になる。また、非特許文献2に記載の配達ロボットは、走行手段として左右一対の専用のクローラー部を採用しているため、より実用的なタイヤ等を有する配達ロボットに適用・置換することは不可能または極めて困難であり、その点での自由度は低いといえる。
【0008】
なお、人手不足をカバーしつつ非接触配送にも対応可能な配達ロボットの需要は、宅配業界に限らず、小売りや病院、ホテル業界等にもあるとみられ、ラストワンマイルの物流サービス(最終拠点からエンドユーザへの物流サービス)をどのような手段によって実現するのかということは、荷物の配送を必要とする業界にとっても重要な問題になっている。
【0009】
本出願人は、このような現状を考慮し、
図12に示すような、自律走行型配達ロボットR’を開発し、実用化へ向けて試験を重ねている(特願2021-101787)。自律走行型配達ロボットR’は、自律走行可能な走行手段T’と、荷室を有するロボット本体1’に搭載された置き配装置2’とを備え、置き配装置2’のリフトダウン機構4’によって可動カゴ部3’の底板部31’が配送先の床に接触する置き配位置までリフトダウンさせて実行する置き配処理と、リフトダウン機構4’を作動させることなく通常配送を実行する処理とを選択可能に構成されたものである。
【0010】
このような配達ロボットR’では、荷物N’のリフトダウン動作に伴うリフトダウン機構4’の動きに連動するメカニカルなリンク部材を介して可動カゴ部3’の底板部31’を傾斜させることで、荷物N’を排出する構成が採用されている。
【0011】
しかしながら、このような構成であれば、リフトダウン動作完了時における可動カゴ部の底板部の最終傾斜角度(荷物排出時の底板部の傾斜角度)の設定角度が大きいほど、可動カゴ部の底板部がリフトダウン中の比較的早いタイミングで傾斜し始めることになり、荷物が空中に放出されて地面に落下し、その衝撃で荷物及び梱包箱に想定外のダメージを与える可能性があることがその後の検証で分かってきた。また、底板部の最終傾斜角度(荷物排出時の底板部の傾斜角度)の設定角度を小さく設定することで、リフトダウン中の比較的早いタイミングで底板部が傾斜し始める事態を回避することも考えられるが、底板部の最終傾斜角度が小さいことで荷物の排出をスムーズに行うことができず、底板部上に荷物が残ってしまう可能性がある。同様に、置き配する場所がロボットの着地面よりも高い台である場合には、リフトダウンに伴う底板部の動作連動が不十分になり、想定されている最終傾斜角度に到達しない時点(傾斜勾配が浅い時点)で底板部から荷物を排出しなければならない状況になり、結果、排出不良を起こしてしまう事態も考えられる。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、荷物を置き配することができるとともに、荷物を安定して排出することが可能な自律走行型配達ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係る自律走行型配達ロボットは、自律走行可能な走行手段と、内部空間の一部を荷室に設定したロボット本体と、ロボット本体に搭載された置き配装置と、少なくとも置き配処理を実行する制御部とを備えたものであり、置き配装置として、荷物を収容可能な可動カゴ部と、可動カゴ部を当該可動カゴ部全体が荷室に収容される収容位置から可動カゴ部の底板部の少なくとも一部が配送先の荷物配送面に接触または近接する置き配位置までリフトダウンさせるリフトダウン機構と、リフトダウン機構によって可動カゴ部を収容位置から置き配位置にリフトダウンさせる際に、可動カゴ部のうち荷物が載置されている底板部が荷物配送面に所定距離まで近付いた際に底板部よりも優先して荷物配送面に接地する優先接地部とを備えたものを適用し、制御部によってリフトダウン機構を作動させて置き配処理を実行中において、底板部に取り付けられた優先接地部が荷物配送面に接地した以降に、優先接地部の下端に加わる接地反力で底板部を荷物搬出方向に漸次傾斜可能に構成していることを特徴としている。
【0014】
このような本発明に係る自律走行型配達ロボットであれば、リフトダウン機構を作動させて可動カゴ部を置き配位置まで移動(リフトダウン移動)させることによって、荷室に収容されていた荷物を配達先の荷物配送面(床、地面等)に移動させることができる。特に、本発明に係る自律走行型配達ロボットであれば、優先接地部が底板部よりも優先して接地し、当該接地時点以降もリフトダウン移動を継続することによって、接地している優先接地部には上方への大きな接地反力が作用する。したがって、荷物配送面を基準として、当該荷物配送面から常に一定の高さ位置で可動カゴ部の底板部が傾斜し始めることになり、荷物排出時点における底板部の傾斜角度(最終傾斜角度)も一定になる。そのため、リフトダウン機構の動きに連動するメカニカルなリンク部材を介して可動カゴ部の底板部を傾斜させることで荷物を排出する態様と比較して、底板部の最終傾斜角度(荷物排出時の底板部の傾斜角度)の設定角度を比較的大きく設定することが、リフトダウン移動中の比較的早いタイミング、すなわち底板部が荷物搬送面から比較的上方に離れているタイミングで底板部が傾斜し始める事態(結果)を招来するという関係性は成立せず、荷物が空中に放出されて地面に落下して荷物にダメージを与えるという事態を回避して、安定した荷物排出処理(置き配処理)を行うことができる。また、本発明に係る自律走行型配達ロボットであれば、荷物排出時点における底板部の傾斜角度(最終傾斜角度)を一定にすることができるため、リフトダウン移動中の比較的早いタイミングで底板部が傾斜し始める事態を回避すべくリフトダウン完了時点で底板部上に荷物が残ってしまうような小さい最終傾斜角度に設定せざるを得ないという事態に陥ることもなく、荷物の排出をスムーズに行うことが可能な底板部の最終傾斜角度を積極的に採用することができる。したがって、置き配する場所(荷物配送面)が走行手段の走行面(ロボットの着地面)よりも高い台である場合であっても、荷物排出時点における底板部の最終傾斜角度は、予め設定した荷物排出に適した角度になり、排出不良の発生を効果的に防止することができる。本発明における優先接地部としては、優先接地部を荷物配送面に接地させたままロボット全体を移動させる場合があることを考慮すると車輪(補助輪)が好適であるが、これに限定されず、素材や形状も適宜選択・変更することができる。
【0015】
加えて、本発明に係る自律走行型配達ロボットが、可動カゴ部を収容位置から置き配位置に向かってリフトダウンさせる方向に張り出した状態で荷物配送面にアウトリガー接地部の先端部を接地させるアウトリガー機構を備えたものであれば、リフトダウン機構による可動カゴ部のリフトダウン移動時にロボット全体が重心移動に伴って傾倒する事態を防止することができる。さらに、制御部によってアウトリガー機構を作動させて荷物配送面にアウトリガー接地部の先端部を接地させた時点の接地角度を検出する接地角度検出部と、接地角度検出部による検出値(接地検出角度)に基づいてリフトダウン機構のリフトダウン目標角度を算出するリフトダウン目標角度算出部とを備えた自律走行型配達ロボットであれば、荷物の置き場所が地面であっても、地面とは異なる高さの台であっても、リフトダウン目標角度算出部で算出したリフトダウン目標角度までリフトダウン動作させることで、優先接地部が接地する面である荷物配送面を基準として、常に荷物配送面から一定の高さ位置で底板部が傾斜し始めることになり、地面を含んだ荷物を置く面の高さが変化しても安定した荷物排出が可能な置き配を実行することができる。したがって、本発明に係る自律走行型配達ロボットによって荷物を自動置き配できる荷物配送面の選択肢が広がり、実用性が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷物を載置した可動カゴ部の底板部が荷物搬送面に所定距離まで近付いた時点以降に底板部を強制的に傾斜させ始めて、底板部が荷物搬送面に接地または近接した時点における底板部の最終傾斜角度を常に一定にすることができるため、安定した荷物排出を確保した置き配処理を実施することができる自律走行型配達ロボットを提供することが可能となる。なお、本発明に係る自律走行型配達ロボットは、宅配分野に限定されず、小売りや病院、ホテル等の分野でも利用可能なものである。したがって、本発明に係る自律走行型配達ロボットは、物を送り届ける機能、物を運び届ける機能、あるいは物を運び送る機能を有する自律走行型ロボットとして、多くの業種・分野で活用可能な汎用性に富むものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自律走行型配達ロボットの全体概略図。
【
図2】同実施形態において置き配完了時点の自律走行型配達ロボットの全体斜視図。
【
図3】同実施形態において通常配送処理実行中の自律走行型配達ロボットを示す図。
【
図4】同実施形態におけるイニシャル動作直後の置き配装置の機構を一部省略して示す側面図。
【
図5】同実施形態におけるイニシャル動作直後の置き配装置の機構を一部省略して示す背面図。
【
図6】同実施形態におけるリフトダウン処理完了時点を
図4に対応して示す図。
【
図7】同実施形態におけるリフトダウン処理完了時点を
図5に対応して示す図。
【
図8】同実施形態においてアウトリガー接地処理完了後であってリフトダウン処理中の状態を
図4に対応して示す図。
【
図9】同実施形態においてリフトダウン処理中であって補助輪の接地開始時点の状態を
図4に対応して示す図。
【
図10】同実施形態においてリフトダウン処理中であって補助輪の接地反力によって底板部が傾動している状態を
図4に対応して示す図。
【
図11】同実施形態における置き配処理に関するフローチャート。
【
図12】本出願人が先に特許出願した自律走行型配達ロボットの全体図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、
図1及び
図2に示すように、自律走行可能な走行手段Tと、内部空間の一部を荷室1Sに設定したロボット本体1と、ロボット本体1に搭載された置き配装置2と、選択された配送種別(配達方法)に応じて置き配処理または通常配送処理を実行するように当該自律走行型配達ロボットRの作動を制御する制御部Cとを備えたものである。なお、
図1には、配達先到着時において配達処理を実行していない状態(ノーマル状態)の自律走行型配達ロボットRの全体外観図を示し、
図2には、置き配処理を実行している自律走行型配達ロボットRの全体外観図を示している。なお、何れの図面にも荷物を図示していないが、本実施形態の自律走行型配達ロボットRは、
図12に示す荷物N’のように例えば外観形状が箱型(荷物を梱包した箱)の荷物の置き配処理に適したものである。もちろん外観形状が箱型以外の荷物であっても本実施形態の自律走行型配達ロボットRによって置き配することが可能である。
【0020】
本実施形態では、走行手段Tとして、前輪T1及び後輪T2をそれぞれ2本ずつ備え、前輪T1及び後輪T2が並ぶ前後方向Xに進退移動が可能であり、停車した状態ですえ切り(前輪T1及び後輪T2をそれぞれ90度旋回させて進退移動方向を異ならせる処理)を行うことで横方向Yへの移動が可能なものを適用している。前輪T1や後輪T2の向きを変える(首振りする)ことで左折・右折することもできる。自律走行型配達ロボットRのうち、このような走行手段Tが設けられ且つロボット本体1を支持する部分を台車Bとして捉えることができる。
【0021】
ロボット本体1は、走行手段Tによって自律的に目的地に移動可能なものであり、周辺状況を認識する機能を有する自律走行型ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)である。本実施形態のロボット本体1は、箱状をなし、内部空間を開閉可能な扉Dを備えている。ロボット本体1の内部空間の一部を荷物を収容可能な荷室1Sに設定している(
図2参照)。本実施形態では、前輪T1及び後輪T2が並ぶ前後方向Xに長尺な平面形状を有し、所定の高さ寸法を有する略直方体状のロボット本体1を適用し、ロボット本体1のうち一方の側面にのみ形成した開口部Kを扉D(右扉D1、左扉D2)によって開閉可能に構成している。具体的には、一対の扉D(右扉D1、左扉D2)を観音開き方式で開閉可能に構成している(
図2参照)。本実施形態では、一対の扉Dを前後方向Xに並べて配置している。以下の説明では、前輪T1側の扉Dを左扉D2とし、後輪T2側の扉Dを右扉D1とする。
【0022】
本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、荷室1Sにセットされた可動カゴ部3に荷物を収容可能に構成している。そして、
図3に示すように、左右の扉D(右扉D1、左扉D2)の少なくとも一方の扉Dが開状態(DB)にあればユーザ(荷物受取人P、あるいは荷分け作業員等)は開口部Kを通じて荷室1Sにアクセスすることができ、荷物受取人Pであれば荷室1Sにセットされた荷物を取り出すことが可能になり、荷分け作業員であれば荷室1Sに荷物を搭載(収容)したり、荷室1Sから荷物を取り出す(集荷)ことができる。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、荷室1Sにセットされた可動カゴ部3に対して平均的な身長の成人Pがしゃがむことなくアクセスすることが可能な高さ位置に可動カゴ部3を実装している。すなわち、通常配送である場合に荷室1Sにセットされた可動カゴ部3に対して荷物受取人Pが荷物を取出し易い適正な高さ位置に可動カゴ部3を実装している。このことは、配送元(配達元)において荷分け作業員が荷室1Sにセットされた可動カゴ部3に対して荷物を収容・集荷し易い適正な高さ位置に可動カゴ部3を実装しているということでもある。
【0024】
可動カゴ部3は、
図2、
図4及び
図5に示すように、荷物を置くことが可能な底板部31と、底板部31のうち前輪T1側の縁部及び後輪T2側の縁部からそれぞれ起立姿勢で配置された一対の起立板部32とを備えたものである。可動カゴ部3の底板部31のうち荷物に直接接する所定領域に回転可能なコロ34を複数列状に配置している(
図2参照)なお、
図4及び
図5ではコロ34を含む底板部31の一部を省略している。起立板部32の上端部同士は棒状の連結部35によって連結している(
図4及び
図5参照)。可動カゴ部3は、置き配装置2を構成するものであり、リフトダウン機構4によって移動可能なものである。
【0025】
置き配装置2は、荷室1Sにセットされている可動カゴ部3を床Fに接触または近接する位置までリフトダウンさせる機能を発揮するリフトダウン機構4と、ロボット本体1の外側に向かって張り出して転倒を防止する機能を発揮するアウトリガー機構5と、扉D(右扉D1、左扉D2)を開閉する機能を発揮する扉開閉機構(図示省略)とを備えている。本実施形態では、制御部Cによって台車Bの走行及び各機構(リフトダウン機構4、アウトリガー機構5、扉開閉機構)の作動を制御可能に構成したものである。なお、制御部Cは、自律走行型配達ロボットRにおける適宜の位置に搭載されるものであり、
図1にのみ模式的に示している。
【0026】
本実施形態の自律走行型配達ロボットRは、上述した各機能を持つアセンブリ(リフトダウン機構4、アウトリガー機構5、扉開閉機構)等からなる置き配装置2とその制御部Cを台車Bの上部に実装している。
【0027】
リフトダウン機構4は、
図4乃至
図7に示すように、可動カゴ部3を当該可動カゴ部3全体が荷室1Sに収容される収容位置(3A)から可動カゴ部3の底板部31の少なくとも一部が配送先の床Fに接触または近傍する置き配位置(3B)までリフトダウンさせるものである。なお、
図4、
図5は、それぞれ可動カゴ部3を収容位置(3A)にセットした状態の置き配装置2の内部機構を一部省略して示す側面図、背面図である。また、
図6、
図7は、それぞれ可動カゴ部3を置き配位置(3B)に移動させた状態を
図4、
図5に対応して示す図である。
【0028】
本実施形態では、平行リンク機構41を用いてリフトダウン機構4を構成している。平行リンク機構41は、一端部を駆動入力軸42(平行リンク第1軸42)に取り付けた第1リンクアーム43と、平行リンク第1軸42に比較的近い位置に固定された平行リンク第2軸44に一端部を取り付けた第2リンクアーム45とを備え、第1リンクアーム43の他端側を可動カゴ部3の起立板部32に軸(平行リンク第3軸46)を介して取り付けるとともに、第2リンクアーム45の他端部を可動カゴ部3の起立板部32に軸(平行リンク第4軸47)を介して取り付けたリンク機構である。このような平行リンク機構41は、第1リンクアーム43及び第2リンクアーム45が起立姿勢(所定角度傾斜した起立姿勢)で略平行に並んだ姿勢でロボット本体1の内部空間に収納される収納姿勢(4A)(
図4及び
図5参照)と、荷室1Sから可動カゴ部3をロボット本体1の開口部Kを通じて荷室1S外へ放り出す方向に第1リンクアーム43及び第2リンクアーム45を傾倒させてこれら第1リンクアーム43及び第2リンクアーム45が横向きの姿勢(所定角度傾斜した横向き姿勢)で高さ方向に重なるリフトダウン姿勢(4B)(
図6及び
図7参照)との間で切り替わる。このような平行リンク機構41を収納姿勢(4A)からリフトダウン姿勢(4B)に切り替えることで、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)までリフトダウンさせることができ、荷室1Sに収容された荷物を配送先の床Fの近傍まで降ろすように構成している。
【0029】
リフトダウン機構4は、平行リンク機構41を収納姿勢(4A)とリフトダウン姿勢(4B)との間で駆動させるリフト駆動用モータ(図示省略)を備えている。本実施形態では、リフト駆動用モータを駆動させることで、駆動出力軸(ギヤヘッド出力軸)の回転が各平行リンク機構41に関連付けて設けた減速ギヤ列を介して、平行リンク機構41のうち第1リンクアーム43の下端部に取り付けた入力軸(平行リンク第1軸42)が回転し、その結果、平行リンク機構41が収納姿勢(4A)とリフトダウン姿勢(4B)との間で姿勢変更するように設定している。
【0030】
リフトダウン機構4は、平行リンク機構41を構成する第1リンクアーム43または第2リンクアーム45のうち少なくとも何れか一方の絶対角度を検出するリフトダウン角度エンコーダ4Eを備えている(
図5及び
図7参照)。本実施形態では、何れか一方の平行リンク機構41のうち第1リンクアーム43の下端部にリフトダウン角度エンコーダ4Eを設けている。リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出値(検出角度)に基づいて、平行リンク機構41を予めセットされる目標角度範囲(0度乃至目標角度)で往復動(収納姿勢(4A)とリフトダウン姿勢(4B)との間での往復動)するように設定している。
【0031】
また、リフトダウン機構4は、可動カゴ部3が収容位置(3A)に戻る際の物理的なストロークリミットを検出する収容位置側リミッタ(例えばフォトセンサ、図示省略)を備え、収容位置側リミッタで可動カゴ部3が収容位置(3A)に到達したことを検出した時点でリフト駆動用モータを停止するように設定している。なお、リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出角度に基づいて可動カゴ部3が収容位置(3A)に到達したことを検出した時点でリフト駆動用モータを停止するように設定してもよい。
【0032】
リフトダウン機構4は、可動カゴ部3を配達先の床F付近まで降りた置き配位置(3B)に移動させた際の物理的なストロークリミットを検出する置き配位置側リミッタ(例えばフォトセンサ、図示省略)を備え、置き配位置側リミッタで可動カゴ部3が置き配位置(3B)に到達したことを検出した時点でリフト駆動用モータを停止するように設定している。なお、リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出角度に基づいて可動カゴ部3が置き配位置(3B)に到達したことを検出した時点でリフト駆動用モータを停止するように設定してもよい。
【0033】
このようなリフトダウン機構4は、イニシャル動作後にリフトダウン角度エンコーダ4Eの値(絶対角度)が0度(原点位置)であるか、収容位置側リミッタで可動カゴ部3が収容位置(3A)にあることを検出している。この状態で、リフト駆動用モータを駆動させると、駆動出力軸(ギヤヘッド出力軸)の回転が各平行リンク機構41に関連付けて設けた減速ギヤ列を介して、平行リンク機構41のうち第1リンクアーム43の下端部に取り付けた入力軸(平行リンク第1軸42)が回転し、その結果、平行リンク機構41が収納姿勢(4A)からリフトダウン姿勢(4B)に姿勢変更する。この際、リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出値は増加する。
【0034】
本実施形態の自律走行型配達ロボットRは、
図8乃至
図10に示すように、リフトダウン機構4によって可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせる際に、可動カゴ部3のうち荷物が載置されている底板部31が荷物配送面F(床)に所定距離まで近付いた時点で、底板部31よりも優先して荷物配送面F(床)に接地する優先接地部8を備えている。優先接地部8は、底板部31に取り付けられたものであり、具体的には、底板部31に固定したブラケット81と、ブラケット81の下端部に回転可能に支持された補助輪82とを備えたものである。本実施形態では、
図5及び
図7に示すように、底板部31の幅方向wの両端部(底板部31の両サイド)にそれぞれ優先接地部8を設けている。本実施形態における底板部31の幅方向wは、
図1中のX方向と同一方向であり、平面において底板部31の幅方向wに直交する方向d(底板部31の奥行き方向)は、
図1中のY方向と同一方向である。優先接地部8は、底板部31よりも下方に突出する向きで底板部31に固定されている。
【0035】
このような優先接地部8を下方に突出する姿勢で一体的に設けた底板部31は、底板部31のうち荷物搬出方向31x側の端部に配置した底板部回転軸31Aを中心に回動可能に構成されている(
図2参照)。したがって、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせる途中で優先接地部8が荷物配送面F(床)に接地した時点(
図9参照)以降、さらに置き配位置(3B)に向かって可動カゴ部3を降下させると、底板部31は、優先接地部8が受ける接地反力によって底板部回転軸31Aを中心に荷物搬出方向31xに向かって回動して、全体的に漸次傾斜する(
図10参照)。本実施形態では、可動カゴ部3を置き配位置(3B)に到達させた時点(
図6及び
図7参照)で、底板部31の傾斜角度が予め設定している荷物排出に適した最大傾斜角度になるように設定している。その結果、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせることによって、荷物を自重で底板部31の傾斜方向(荷物搬出方向31xと同一方向、
図2参照)に滑らせて荷物配送面F(床)に排出することができる。
【0036】
本実施形態では、
図4に示すように、可動カゴ部3の起立板部32に、底板部31の傾斜動作をガイドする部分円弧状のガイド溝36を形成し、底板部31に設けたガイドピン37がガイド溝36に沿って移動することで、底板部31の傾斜動作時の移動軌跡及び傾斜姿勢から通常姿勢(底板部31が略フラットな姿勢)に戻る時の移動軌跡が一定になるように構成している。特に、本実施形態では、底板部31を幅方向wに挟むように対面する一対の起立板部32にそれぞれガイド溝36を形成し、各ガイド溝36にそれぞれ底板部31に設けたガイドピン37を挿入した状態で傾斜動作をガイドするように構成している。これにより、底板部31が傾斜動作時に底板部31の幅方向wにずれないように適正な位置に規制することが可能である。また、可動カゴ部3の起立板部32には、傾動する優先接地部8との干渉とを回避する切欠38を形成している(
図4等参照)。
【0037】
アウトリガー機構5は、
図2、
図4乃至
図10に示すように、リフトダウン機構4による荷物の昇降時に自律走行型配達ロボットRが転倒しないように支持するための機構である。アウトリガー機構5は、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせる方向に張り出した状態で先端部が床Fに接地する接地アーム51(本発明の「アウトリガー接地部」に相当)を備えている。本実施形態では、接地アーム51の先端部に設けた脚輪52が床Fに接地するように構成している。具体的には、床Fのうち後に接地してくることになる可動カゴ部3の底板部31の幅方向w両端の近傍であって、且つ底板部31を幅方向wに挟んで対峙する位置に左右の脚輪52が床Fに接地するように構成している(
図7参照)。接地アーム51は、可動カゴ部3の起立板部32の外側(外向き面側)において外部に露出しない収納姿勢(5A)と、収納姿勢(5A)からロボット本体1の開口部Kを通じて先端部の脚輪52が床Fに接地する角度まで傾倒した接地姿勢(5B)との間で切り替わる。可動カゴ部3の各起立板部32の外側に設けた接地アーム51の基端部同士を回転軸53に連結し、回転軸53を中心に一対の接地アーム51が収納姿勢(5A)と接地姿勢(5B)との間で回動する。アウトリガー機構5は、接地アーム51の収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)までの回動角度を検出するアウトリガー角度エンコーダ5Eを備えている(
図5及び
図7参照)。接地アーム51を収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)まで回動させた際のアウトリガー角度エンコーダ5Eによる検出値(接地検出角度)をリフトダウン機構4の目標角度(置き配位置(3B)の角度)の設定に利用することができる。すなわち、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、制御部Cによってアウトリガー機構5を作動させて荷物配送面F(床)にアウトリガー接地部である接地アーム51の先端部(脚輪52)を接地させた時点の接地角度を検出する接地角度検出部と、接地角度検出部による検出値(接地検出角度)に基づいてリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度を算出するリフトダウン目標角度算出部C1とを備えている。本実施形態では、アウトリガー角度エンコーダ5Eを用いて接地角度検出部を構成し、特に、アウトリガー角度エンコーダ5Eとして回転角度の絶対値を出力するアブソリュートエンコーダを適用している。そして、リフトダウン目標角度算出部C1は、このアブソリュートエンコーダ5Eの出力値に基づいてリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度を算出するものであり、本実施形態では、荷物配送面F(床)にアウトリガー接地部である接地アーム51の先端部(脚輪52)が接地した時点のアウトリガー角度エンコーダ5Eの検出値をリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度として算出するように設定している。リフトダウン目標角度算出部C1は、
図7にのみ模式的に示している。なお、本実施形態では、イニシャル動作後において接地アーム51を収納姿勢(5A)に位置付けた際のアウトリガー角度エンコーダ5Eの絶対角度が原点位置(0度)にあるように設定している。
【0038】
アウトリガー機構5は、アウトリガー駆動用モータ(図示省略)を備え、接地アーム51が収納姿勢(5A)にある状態で、アウトリガー駆動用モータを駆動(FW)させると、ギヤ列を介して回転軸53(例えば減速比1/200)が回転し、アウトリガー駆動用モータに関して接地検出相当の電流を検出したらアウトリガー駆動用モータを停止し、この時点におけるアウトリガー角度エンコーダ5Eの検出値を記録する。アウトリガー駆動用モータの停止後はアウトリガー駆動用モータに内包される無励磁作動型の電磁ブレーキにより接地アーム51を接地姿勢(5B)に保持する。
【0039】
このようなアウトリガー機構5は、リフトダウン機構4の動作前に脚輪52が床Fに接地することで、リフトダウン機構4の動作に伴うロボットRの重心移動に起因するロール方向への転倒を防止することができる。接地アーム51を接地姿勢(5B)から収納姿勢(5A)に戻す場合は、リフトダウン機構4によって可動カゴ部3を収容位置(3A)に移動させた後にアウトリガー駆動用モータを駆動(BW)させて、アウトリガー角度エンコーダ5Eの検出値が0度に達した時点(収納姿勢(5A)となる原点位置に到達した時点)でアウトリガー駆動用モータを停止する。この際、前回のアウトリガー動作時に記録したアウトリガー角度エンコーダ5Eの値(アウトリガー駆動用モータに関して接地検出相当の電流を検出してアウトリガー駆動用モータを停止した時点におけるアウトリガー角度エンコーダ5Eの検出値)をクリアすることで、次回のアウトリガー接地処理実施時における接地アーム51の収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)まで回動させた際のアウトリガー角度エンコーダ5Eの値を新たに記録することができる。
【0040】
アウトリガー機構5は、アウトリガー角度エンコーダ5Eによる接地アーム51の収納姿勢(5A)時の検出値の誤差を考慮して、接地アーム51の先端部に設けた脚輪52の位置(接地アーム51の収納姿勢(5A)時における脚輪52の位置または接地アーム51の接地姿勢(5B)時における脚輪52の位置)を検出する第1サブセンサ(図示省略)を備えることもできる。第1サブセンサによって設計上の接地姿勢(5B)時の脚輪52の位置より少し高い位置に脚輪52が到達したことを検出して電流検出モードへの切り替え判断に使用することも可能である。また、アウトリガー機構5は、脚輪52が接地して大きなトルクが必要になった瞬間を検出してアウトリガー駆動用モータを停止する第2サブセンサ(図示省略)を備えたものであってもよい。脚輪52が接地して大きなトルクが必要になった瞬間を第2サブセンサで検出し、当該検出時点でアウトリガー駆動用モータを停止するように設定することができる。第2サブセンサとしては、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)に電流検出機能を発揮するものを挙げることができる。なお、自律走行型配達ロボットRが斜めになっているとき、アウトリガー機構5及びリフトダウン機構4も斜めになっているため、IMUによる目標角度の補正が不要であれば第2サブセンサを省略することもできる。
【0041】
本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、このような各機構(リフトダウン機構4、アウトリガー機構5)の作動を制御部Cによって制御する。また、走行手段Tの作動も共通の制御部Cによって制御している。
【0042】
次に、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRが行う配達処理について
図11に示すフローチャートを参照して説明する。以下では、荷室1Sにセットした可動カゴ部3に1つの荷物を収容した状態で、この荷物を配送先に置き配する場合について説明する。
【0043】
配送元において配送作業員等のオペレータによって荷物が荷室1Sの可動カゴ部3に搭載された時点以降であって、配送先(目的地)に到着した時点(
図1参照)で、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、置き配装置2を起動させる信号(置き配対象荷物の指定情報を含む)に基づき、制御部Cが置き配装置2の扉開閉機構を作動させて閉状態(DA)にある右扉D1及び左扉D2を開状態(DB)に切り替える(開扉処理S1)。次いで、制御部Cがアウトリガー機構5を作動させて当該アウトリガー機構5の先端部(脚輪52)を荷物配送面である床Fに設地させる(アウトリガー接地処理S2)。
【0044】
アウトリガー接地処理S2は、アウトリガー機構5のアウトリガー駆動用モータを駆動(アウトリガー機構5を起動)させることで接地アーム51を収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)に切り替える処理である。本実施形態では、接地アーム51を収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)まで回動させた時点のアウトリガー角度エンコーダ5Eによる検出値(接地角度に関するエンコーダ情報)を取得し、この検出値に基づいて、リフトダウン目標角度算出部C1によりリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度を算出する。
【0045】
次に、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、制御部Cがリフトダウン機構4を作動させて、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に移動させる処理(リフトダウン処理S3)を実行する。なお、可動カゴ部3は、リフトダウン処理S3開始前までは、荷室1Sに固定された置き配装置2のベースフレーム20上にセットされた収容位置(3A)に維持される(
図4参照)。
【0046】
リフトダウン処理S3は、リフト駆動用モータを駆動させることで、リフトダウン機構4の平行リンク機構41を収納姿勢(4A)からリフトダウン姿勢(4B)に姿勢変更し、可動カゴ部3を配送先の床F面まで降下させる処理である。この際、制御部Cは、リフトダウン角度エンコーダ4E(アブソリュートエンコーダ)の検出値をチェックしながら、リフトダウン角度エンコーダ4E(アブソリュートエンコーダ)の検出値がリフトダウン目標角度算出部C1で算出したリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度と同角度になるまでリフトダウン機構4を降下させる。
図8には、リフトダウン処理S3の実行開始直後であって、可動カゴ部3が収容位置(3A)から荷物搬出方向31xに向かって所定距離移動した時点(荷室1Sに固定された置き配装置2のベースフレーム20上から離れて底板部31がベースフレーム20よりも低い位置まで移動した時点)のリフトダウン機構4及びアウトリガ機構5を示す。
【0047】
そして、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、
図9に示すように、リフトダウン機構4によって可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせる際に、可動カゴ部3の底板部31が荷物配送面F(床)に所定距離(本実施形態では荷物配送面F(床)から10cm程度まで近付いた時点で、底板部31に取り付けられた優先接地部8が底板部31よりも優先して荷物配送面F(床)に接地する。当該時点では、リフトダウン角度エンコーダ4E(アブソリュートエンコーダ)の検出値は、リフトダウン目標角度算出部C1で算出したリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度に到達していない。つまり、可動カゴ部3は置き配位置(3B)に到達していない。当該時点以降、可動カゴ部3を置き配位置(3B)に向かってさらにリフトダウンさせていくと(リフトダウン目標角度に近付けると)、
図10に示すように、優先接地部8の下端に加わる接地反力(優先接地部8が受ける接地反力の方向を同図中に相対的に太い矢印で模式的に示す)で底板部31が底板部回転軸31Aを中心に回動し、荷物搬出方向31xに漸次傾斜する。リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出値が、リフトダウン目標角度算出部C1で算出した目標値であるリフトダウン目標角度(接地アーム51を収納姿勢(5A)から接地姿勢(5B)まで回動させた時点のアウトリガー角度エンコーダ5Eによる検出値を参照して設定された目標値)に一致する時点まで可動カゴ部3をリフトダウンさせると、可動カゴ部3は置き配位置(3B)に到達し、この時点で底板部31の傾斜角度は置き配処理中における最大傾斜角度になる(
図2、
図5及び
図6参照)。その結果、荷物が自重で底板部31の傾斜方向(荷物搬出方向31xと同一方向)に滑り、底板部31のうち荷物との接触部分に設けたコロ34によってスムーズに滑りながら底の一部(底の一辺)が床Fに接触する位置まで移動する。
【0048】
このように、本実施形態では、平行リンク機構41を収納姿勢(4A)からリフトダウン姿勢(4B)に姿勢変更する過程(リフトダウン処理S3)において、優先接地部8が荷物配送面F(床)に接地する時点まで可動カゴ部3の底板部31は水平または略水平の姿勢に維持され(
図4及び
図8参照)、優先接地部8が荷物配送面F(床)に接地し始めた時点(
図9参照)から底板部31が徐々に傾斜するように設定している(
図10及び
図6参照)。リフトダウン処理S3の実行中、底板部31に設けたガイドピン37が、可動カゴ部3の起立板部32に形成したガイド溝36に沿って移動することで、底板部31の傾斜動作時の移動をスムーズに行うことができ、底板部31が傾動しながら幅方向wにずれるという事態も回避することができる(
図4乃至
図10参照)。
【0049】
リフトダウン角度エンコーダ4Eによる検出値が、リフトダウン目標角度算出部C1で算出したリフトダウン目標角度に到達した時点でリフト駆動用モータを停止し、リフトダウン機構4によるリフトダウン処理S3を終了する。なお、置き配位置側リミッタによって可動カゴ部3が置き配位置(3B)に到達したことを検出した時点でリフト駆動用モータを停止し、リフトダウン機構4によるリフトダウン処理S3を終了してもよい。
【0050】
リフトダウン処理S3に続いて、制御部Cが自律走行型配達ロボットRの台車Bの走行手段T(前輪T1、後輪T2)をすえ切りする処理(すえ切り処理S4)を実行して、台車Bを横方向Yに移動(カニ歩き)させると、荷物は可動カゴ部3から配送先の荷物配送面F(床)に完全に搬出される。以上の手順により置き配対象の荷物を目的地に置き配することができる。
【0051】
置き配完了後は、制御部Cがリフトダウン機構4を作動させて荷物が載置されていない可動カゴ部3を置き配位置(3B)から収容位置(3A)に移動させ(リフトダウン復帰処理S5)、次いで、アウトリガー機構5を作動させて接地アーム51を接地姿勢(5B)から収納姿勢(5A)に切り替え(アウトリガー復帰処理S6)、これら各機構(リフトダウン機構4、アウトリガー機構5)をロボット本体1の内部空間であって荷室1Sに露出しないスペースに収納し、最後に、扉開閉機構を作動させて扉D(右扉D1、左扉D2)を開状態(DB)から閉状態(DA)に切り替え(閉扉処理S7)、制御部Cが置き配処理を完了した旨の信号(置き配完了信号)を出力する。最後に、すえ切りした状態にある走行手段T(前輪T1、後輪T2)を元に戻して(すえ切り復帰処理S8)、置き配処理を完了する。
【0052】
このように、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRによれば、リフトダウン機構4による可動カゴ部3のリフトダウン移動を許容する状態(左右の扉Dを開いた状態)でリフトダウン機構4を作動させて可動カゴ部3を置き配位置(3B)までリフトダウン移動させることによって、荷室1Sに収容されていた置き配対象荷物を配達先の床Fに移動させることができる。
【0053】
特に、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRによれば、置き配処理時に、荷物配送面F(床)を基準として、常に荷物配送面Fから一定高さで可動カゴ部3の底板部31が傾斜し始めることになり、荷物排出時点における底板部31の傾斜角度(最終傾斜角度)も一定になるため、荷物を配達先の荷物配送面Fに降下させる際に荷物の底辺が荷物配送面Fに接触する位置まで荷物を自重で滑らせながらスムーズに移動させることができ、荷物にダメージを与えることなく、安定した状態で荷物を荷物配送面F(床)に排出することができる。加えて、本実施形態では、可動カゴ部3の底板部31のうち少なくとも荷物と接触する領域に転動可能なコロ34を設けた構成を採用しているため、底板部31が傾斜した時点以降、荷物をより一層スムーズ且つ的確にコロ34上を滑らせながら移動させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRによれば、可動カゴ部3を収容位置(3A)から置き配位置(3B)に向かってリフトダウンさせる方向に張り出した状態で荷物配送面F(床)にアウトリガー接地部51の先端部(脚輪52)を接地させるアウトリガー機構5を備えているため、リフトダウン機構4による可動カゴ部3のリフトダウン移動時にロボットR全体が重心移動に伴って傾倒する事態を防止することができる。特に、本実施形態では接地アーム51の先端部に設けた脚輪52が床Fに接地するように構成したアウトリガー機構5を採用しているため、比較的簡単な構成でありながら脚輪52を床Fに接地させることで床Fの不陸にも柔軟に対応することが可能な安定した接地状態を確保することができる。そして、本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRは、制御部Cによってアウトリガー機構5を作動させて荷物配送面F(床)にアウトリガー接地部51の先端部(脚輪52)を接地させた時点の接地角度を検出する接地角度検出部5Eと、接地角度検出部5Eによる検出値(接地検出角度)に基づいてリフトダウン機構4のリフトダウン目標角度を算出するリフトダウン目標角度算出部C1とを備えているため、荷物の置き場所が地面(車輪Tが接地している面と同じ高さの面)であっても、地面とは異なる高さの台(車輪Tが接地している面とは異なる高さの台)であっても、リフトダウン目標角度算出部C1で算出したリフトダウン目標角度までリフトダウン動作させることで、優先接地部8が接地する面である荷物配送面F(床)を基準として、常に荷物配送面Fから一定の高さ位置で底板部31が傾斜し始めることになり、荷物を置く面(荷物配送面)の高さが変化しても安定した荷物排出処理が可能な置き配を実行することができる。したがって、自律走行型配達ロボットRによって荷物を自動置き配できる荷物配送面の選択肢が広がり、実用性が高まる。
【0055】
このような本実施形態に係る自律走行型配達ロボットRを利用することによって、一度の巡回配送で複数の配達先に荷物を配達することができ、通常配送と置き配配達を柔軟に組み合わせた運用を実施することが可能になる。したがって、荷物の増加や配達ドライバーの負荷増大、ドライバー不足、非接触の配送需要といった現状の問題点を悉く解消することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、優先接地部を底板部の幅方向両端部にそれぞれ取り付けた態様を例示したが、底板部の幅方向中央部に単一の優先接地部を取り付けた態様や、3以上の優先接地部を底板部に取り付けた態様であってもよい。
【0057】
優先接地部として、補助輪に代えて他の部品や、異なる形状のものを適用することもできる。優先接地部の高さ寸法を変更・調整することで底板部の最終傾斜角度を変更・調整可能に構成することも可能である。
【0058】
接地角度検出部として、アブソリュートエンコーダ以外のエンコーダやセンサを適用してもよい。
【0059】
また、接地角度検出部による検出値(接地検出角度)に基づいてリフトダウン機構のリフトダウン目標角度を算出するリフトダウン目標角度算出部を備えていない構成であってもよい。
【0060】
扉は、観音開きタイプの扉に限定されず、シャッタータイプの扉、折り畳み動作可能な扉、或いは閉状態にある扉の上端部に水平姿勢で設けた作動回転軸を中心に回転させることによって開状態に切替可能な扉(アッパータイプの扉)を適用するとこもできる。
【0061】
本発明では、リフトダウン機構として、可動カゴ部を収容位置と置き配位置の間で昇降移動させる油圧式のリフトを適用しても構わない。なお、油圧式のリフトによって可動カゴ部を収容位置と置き配位置の間で昇降移動させる場合には、可動カゴ部を昇降移動させるアクチュエータと、荷室から開口部を通じて外部に向かう方向へ可動カゴ部を移動させるアクチューエタが必要である。
【0062】
本発明におけるロボット本体は箱状のものに限らず、筒状等の適宜の内部空間を有する形状を有するものであればよく、内部空間や荷室の大きさも仕様等に応じて適宜変更することができる。また、扉によって開閉可能な開口部の大きさも適宜変更することができる。特に、上述の実施形態では、ロボット本体の一方の側面にのみ開口部を設定し、当該開口部を扉によって開閉する態様を例示したが、ロボット本体の内部空間や荷室の大きさ等に応じてロボット本体の両方の側面にそれぞれ開口部を設定し、それぞれの開口部を扉によって開閉する態様を採用してもよい。この場合、各開口部を通じて可動カゴ部をリフトダウン機構によって収容位置から置き配位置へ移動可能に構成すれば、荷物の搬出方向の選択肢が増え、置き配作業の効率化に貢献することが期待できる。また、ロボット本体の前面または背面の何れか一方あるいは両方に開口部を設定し、扉によって開口部を開閉する態様を採用することもできる。
【0063】
本発明に係る自律走行型配達ロボットには、ロボット本体に複数の置き配装置を搭載した構成や、共通の台車に複数のロボット本体を実装し、各ロボット本体にそれぞれ置き配装置を搭載した構成も含まれる。このような構成により、置き配装置の数を増大させることで、配達先の対応数の増加(配達対象荷物の増大)にも対応することができる。
【0064】
走行手段として、すえ切りしないものを適用したり、差動二輪タイプを適用し、左右の車輪を逆回転したスピンターン、前進後進移動、ピボットターン等を実行可能に設定することで、上述と同様の置き配サービスを提供可能な自律走行型ロボットを実現できる。
【0065】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1S…荷室
1…ロボット本体
2…置き配装置
3…可動カゴ部
31…底板部
(3A)…収容位置
(3B)…置き配位置
4…リフトダウン機構
5…アウトリガー機構
5E…接地角度検出部
8…優先接地部
C…制御部
C1…リフトダウン目標角度算出部
R…自律走行型配達ロボット
T…走行手段