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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120617
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】フレキソインキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20230823BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20230823BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20230823BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C09D11/02
A61F13/42 B
A61F13/514 400
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023564
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000205410
【氏名又は名称】大阪印刷インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】村松 謙一
(72)【発明者】
【氏名】辻内 秀治
【テーマコード(参考)】
2H113
3B200
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113BA01
2H113BB08
2H113BC02
2H113DA43
2H113EA10
3B200DD09
3B200DF02
4J039AB02
4J039AB09
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD14
4J039AF01
4J039AF03
4J039AF07
4J039BC13
4J039BC18
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA38
4J039EA42
4J039EA43
4J039EA44
4J039FA02
4J039GA09
(57)【要約】
【課題】フレキソ印刷方式によって様々な絵柄や文字を形成して、無色から有色へと変色するインジケータとして使用することができるフレキソインキ組成物であって、水分によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを実現するためのフレキソインキ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、
前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることを特徴とする、フレキソインキ組成物。
【請求項2】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項3】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項4】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項5】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比が19:1~1:1であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項6】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項7】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項8】
前記溶媒(C)として、アルコール系、グルコールエーテル系、ケトン系、エステル系溶媒、及び、これらの混合溶媒からなる群の中からいずれか1つを用いることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項9】
紙おむつ用透湿性防水フィルムへの印刷に使用されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に使用されるフレキソインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつを着用している際に排尿や排便等の排泄があったときに、液体状の排泄物と接触して変色することにより、外部から排泄があったことを知ることができるようにするためのインジケータを備えた紙おむつが用いられている。このような紙おむつのインジケータとしては、様々なインジケータが用いられており、排泄物の水分による変色を利用したインジケータ、排泄物によるpH変化を利用したインジケータ等が存在している。
【0003】
水分による変色を利用したインジケータの一例として、特許文献1には、インジケータに用いられるインジケータインキ組成物の発明が開示されており、前記インジケータインキ組成物を用いたインジケータは、排尿、排便等の水分によってインキが溶解し、溶解したインキが水分吸収体へ吸収されることで絵柄が消えることで、外部に排泄があったことを知らせることができる。
【0004】
排泄物によるpH変化を利用したインジケータとして、特許文献2には、湿り度インジケータを備える吸収性物品の発明が開示されており、湿り度インジケータには、pHによってオレンジ色から紫色へ変色するホットメルト組成物が用いられており、インジケータが排尿、排便等のpHに応じて変色することで、外部に排泄があったことを知らせることができる。特許文献3には、印刷が可能なpH変色性インキ組成物の発明が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載されているようなインジケータインキ組成物を用いた絵柄が消えるインジケータは、視認性が劣り消費者に対してのインパクトが弱いという問題があった。また安全性に配慮した設計ではあるが、溶解したインキが使用者の肌に接触する可能性があり、肌荒れやおむつかぶれ等が生じるという問題もある。
【0006】
特許文献2に記載されているようなホットメルト組成物を用いたインジケータの場合、その加工方法の特性上、極めて単純なライン等を形成することしかできず、単調なデザインのインジケータしか製造することができないという問題がある。pH変化を利用したインジケータは淡い色から濃色への変化に限られることから、視認性が劣り消費者に対してのインパクトが弱いという問題がある。特許文献3のインキ組成物は、特許文献2の問題点であるデザインの多様性を改善することは可能であるが、高温、多湿の条件下で紙おむつを保管した場合に、湿度によって自然に変色が進行するという問題があった。
【0007】
紙おむつのユーザの使用方法を調査した結果、一度の排尿で紙おむつを交換することは少なく、2~3回の排尿後に交換するケースが殆どであることが分かった。そのため、インジケータに関しては排尿後に敏感な発色性を求めるのではなく、排尿後10~30分で徐々に視認性が得られるインジケータを求めているユーザが多数存在していることが分かった。しかしながら、従来のインジケータは、排泄後に直ちにその機能が現れることから、このようなユーザには、インジケータの機能が現れる時間のコントロールも求められていることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-15664号公報
【特許文献2】特許第5602872号公報
【特許文献3】特許第6767021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、フレキソ印刷方式によって紙おむつ用透湿性防水フィルム等に様々な絵柄や文字を印刷してインジケータを形成するためのフレキソインキ組成物であって、前記インジケータが排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から、有色へと変色することが可能であり、視認性が高く、インパクトが強く、さらに、排尿等によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを形成するためのフレキソインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることを特徴とする。
【0011】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いる、そして、前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることができる。
【0012】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることができる。
【0013】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比が19:1~1:1である。
【0014】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いる。
【0015】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆している。
【0016】
前記溶媒(C)として、アルコール系、グルコールエーテル系、ケトン系、エステル系溶媒、及び、これらの混合溶媒からなる群の中からいずれか1つを用いることができる。
【0017】
前記フレキソインキ組成物は、紙おむつ用透湿性防水フィルムへの印刷に使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることにより、フレキソインキ組成物を用いて、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に絵柄や文字を印刷すると、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から、有色へと変色する視認性が高く、インパクトが強く、デザイン性の高いインジケータを提供することができるという効果を奏し、さらに、排尿等の水分によって直ぐに発色せず、10~30分かけて徐々に発色することができ、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現することで、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせることが可能となるという効果を奏する。
【0019】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることができ、前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、本発明のフレキソインキ組成物で紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷すると、紙おむつ用透湿性防水フィルムに対して適度な密着性及び経時安定性を有することができ、さらに、印刷された紙おむつ用透湿性防水フィルムをロール状に巻き取った際に、フィルム背面に対しての耐ブロッキング性を有することが可能となる。
【0020】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることにより、排尿によって水発色性色素(D)をより鮮明に発色させることができ、さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0021】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比を19:1~1:1とすることにより、印刷機の運転中に印刷機上からインキが飛散して、印刷物に汚れが発生する現象であるミスティングという印刷トラブル、及び、印刷物をロール状に巻き取った際のブロッキングを防止することができるようになり、また、水発色性色素(D)の発色性が著しく低下することを防止することができる。
【0022】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることにより、フレキソインキ組成物のインキの状態での安定性(水発色性色素(D)から剥がれない)及び酸変性樹脂(B)の発色特性を維持したまま、発色時間を10~30分以内に発色をコントロールすることが可能となる。
【0023】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆していることにより、フレキソインキ組成物による印刷物の水発色速度を遅くすることができ、さらに、印刷物の耐溶出性及び高温高湿度下の印刷物の安定性を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のフレキソインキについて詳細に説明する。本発明のフレキソインキ組成物は、紙おむつ用透湿性防水フィルム等にフレキソ印刷方式で絵柄や文字を印刷するためのインキであり、紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷された絵柄や文字は、液体状の排泄物と接触して無色から有色へと変色することにより、外部に排泄があったことを知らせるためのインジケータとして機能する。
【0025】
フレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成される。
【0026】
前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素に、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂(例えば、トルエンにマレイン酸変性ポリブタジエンを添加し、攪拌して樹脂を溶解させた溶液)で表面が被覆されている。溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂で表面を被覆することにより、本発明のフレキソインキをインジケータとして用いた場合、排尿等の水分によって従来のように直ぐに発色するのではなく、10~30分かけて徐々に発色することから、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現し、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせることが可能となるという優れた効果を奏する。
【0027】
変性繊維素系樹脂(A)としては、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることが好ましく、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることがより好ましい。このような水発色性色素(D)の発色を阻害しない材質の変性繊維素系樹脂(A)を用いることにより、本発明のフレキソインキを紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷すると適度な密着性を有し、且つ印刷物をロール状に巻き取った際に、フィルム背面に対する耐ブロッキング性を有することができる。また、変性繊維素系樹脂の分類に入るニトロセルロース樹脂は、印刷後、印刷物が常温下でも経時で黄変するという問題があったが、このような材質の変性繊維素系樹脂(A)を用いると、紙おむつ用透湿性防湿フィルムに対して適度な密着性、耐ブロッキング性を有することができ、且つ、経時安定性を有することができるようになる。
【0028】
酸変性樹脂(B)としては、溶媒(C)に溶解する樹脂であり、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることが好ましい。このような酸変性樹脂(B)を用いることによって、排尿によって水発色性色素(D)をより鮮明に発色させることができ、さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0029】
変性繊維素系樹脂(A)と酸変性樹脂(B)との重量比を19:1~1:1とする。酸変性樹脂(B)の比率がこの範囲以上になると、印刷機の運転中に印刷機上からインキが飛散して、印刷物に汚れが発生する現象であるミスティングという印刷トラブルが発生する。また、酸変性樹脂(B)の比率がこの範囲以下になると、水発色性色素(D)の発色性が著しく低下するという問題が生じる。
【0030】
水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることができる。水発色性色素(D)の酸変性樹脂の酸価を限定することにより、フレキソインキ組成物のインキの状態での安定性(水発色性色素(D)から剥がれない)及び酸変性樹脂(B)の発色特性を維持したまま、発色時間を10~30分以内に発色をコントロールすることが可能となる。水発色性色素(D)の酸変性樹脂の酸価が10mgKOH/gより低くなると、水を添加した際に発色が著しく遅くなる傾向があり、酸価が150mgKOH/gを超えると、水発色性色素(D)に酸変性樹脂(B)を表面被覆した時点で発色する場合がある。
【0031】
水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性色素を担持させた色素を100重量部として、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆することが好ましい。溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂の比率が0.5重量部より少ない場合は、印刷物の水発色速度が速く、印刷物の耐溶出性が悪く、高温高湿度下の印刷物の安定性が悪くなる。また、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂の比率が10重量部より多い場合は、水を添加した際に十分に水と水発色色素が反応しないため、発色が悪くなる。
【0032】
本発明のフレキソインキ組成物は、水発色性の特性を阻害しない範囲であれば、変性繊維素系樹脂(A)及び酸変性樹脂(B)以外に、溶媒(C)に溶解する樹脂を併用することも可能であり、また、白色系の無機フィラー、有機フィラー、ワックス、表面調整剤、消泡剤、脱泡剤、沈降防止剤、増粘剤、滑剤、離型剤、架橋剤等の添加剤も、水発色性の特性を阻害しない範囲であれば、様々な条件に応じて適宜使用することができる。
【0033】
本発明のフレキソインキ組成物は、フレキソ印刷方式によって、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に簡単に様々な絵柄や文字を印刷することができ、印刷された絵柄や文字を、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から有色へと変色するインジケータとして使用することができる。本発明における無色及び発色については、次のように定義する。
【0034】
無色・・・透湿性防水シートは乳白色を示しているが、フレキソインキ組成物を印刷した後のインキ乾燥被膜による印刷柄が常温下で透明もしくは透湿性防水シートと同じ白色の状態を維持している為、印刷柄を視認することが出来ない状態
発色・・・フレキソインキ組成物による印刷柄が視認できない状態の印刷物において、水分がインキ乾燥被膜による印刷柄に接触した時点で、印刷柄が有色へ変化した状態
【0035】
本発明のフレキソインキ組成物によって印刷して形成したインジケータは、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から有色へと変色し、視認性が高く、インパクトが強く、デザイン性の高いインジケータを提供することができる効果を奏する。特に、フレキソ印刷方式によって印刷することができるので、従来に比べて多様な形状の絵柄、文字を印刷することができるようになる。そして、排尿等の水分によって直ぐに発色せず、10~30分かけて徐々に発色することができ、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現することで、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせすることが可能となるという効果を奏する。さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0036】
次に、本発明のフレキソインキ組成物について、実施例1~12及び比較例1~13を用いて説明する。
【実施例0037】
初めに実施例1~5及び比較例1~5について説明する。実施例1~5及び比較例2~5で使用する水発色性色素(D)の調整について最初に説明する。
【0038】
表面被覆用の酸変性樹脂溶液の調整
トルエン85重量部にマレイン酸変性ポリブタジエン(商品名「Ricon 130MA20」、酸価120、クライバレー社製)を15重量部添加し、撹拌機によって30分間攪拌して樹脂を溶解させ、表面被覆用の酸変性樹脂溶液を調整する。
【0039】
色素の表面被覆
次に、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)を用意する。前記色素80重量部をFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて、高速攪拌下で表面被覆用酸変性樹脂溶液20重量部を10分かけて徐々に滴下した。その後50℃以下の温度で10分間高速攪拌を維持した。その後、中速攪拌を行いながら減圧下でトルエンを除去し、水発色性色素(D)を調整した。
【実施例0040】
実施例1のフレキソインキ組成物として、水発色性色素(D)30重量部、変性繊維素系樹脂(A)としてエチルセルロース樹脂4.5重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)、酸変性樹脂(B)としてロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)、溶媒(C)として1-メトキシ-2-プロパノール59重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、変性繊維素系樹脂(A)/酸変性樹脂(B)の構成重量比が3:1のインキ組成物が得られた。
【実施例0041】
実施例2のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、セルロースアセテートブチレート樹脂4.5重量部(商品名「CAB 381-0.5」、イーストマン社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0042】
実施例3のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、セルロースアセテートプロピオネート樹脂4.5重量部(商品名「CAP 482-0.5」、イーストマン社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0043】
実施例4のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、酢酸セルロース樹脂4.5重量部(商品名「酢酸セルロース L-20」、株式会社ダイセル社製)に変更し、実施例1の溶媒(C)として使用した1-メトキシ-2-プロパノール59重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を、1-メトキシ-2-プロパノールを32重量部及びメチルエチルケトン32重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0044】
実施例5のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)を、エチルセルロース樹脂4重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)、及び、ヒドロキシプロピルセルロース樹脂0.5重量部(「NISSO HPC SL」、日本曹達株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0045】
比較例1
比較例1のフレキソインキ組成物として、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素、つまり、表面被覆をしていない水発色性色素29重量部(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)、変性繊維素系樹脂(A)としてエチルセルロース樹脂4.5重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)、酸変性樹脂(B)としてロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)、溶媒(C)として1-メトキシ-2-プロパノール60重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行い、比較例1のインキ組成物が得られた。
【0046】
比較例2
実施例1で使用した水発色性色素(D)を30重量部、ニトロセルロース樹脂6重量部(商品名「硝化綿SS 1/8」、CRYSTAL NC社製)、溶媒(C)として1-メトキシ-2-プロパノール59重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、比較例2のインキ組成物が得られた。
【0047】
比較例3
実施例1で使用した水発色性色素(D)を30重量部、FPOTメジウム:ポリアミド・ニトロセルロース系樹脂70重量部(大阪印刷インキ製造株式会社製)を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、比較例3のインキ組成物が得られた。
【0048】
比較例4
実施例1で使用した水発色性色素(D)を30重量部、FPVSメジウム:アクリル・セルロースアセテートブチレート系樹脂70重量部(大阪印刷インキ製造株式会社製)を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、比較例4のインキ組成物が得られた。
【0049】
比較例5
実施例1で使用した水発色性色素(D)を30重量部、フレキソNCI:メジウム:ウレタン・ニトロセルロース系樹脂70重量部(大阪印刷インキ製造株式会社製)を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、比較例5のインキ組成物が得られた。
【0050】
実施例1~5のインキ組成物、及び、比較例1~5のインキ組成物を以下の表1に記載する。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1~5のインキ組成物、及び、比較例1~5のインキ組成物の評価を行うために、各インキ組成物を用いて以下のような印刷物を作製した。
【0053】
印刷物の作製
実施例1~5のインキ組成物、及び、比較例1~5のインキ組成物を、それぞれ、透湿性防水シート(炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれ、ミクロな細孔を有したポリエチレンシート)に、アニロックス線数200Lpiを用いてフレキソ印刷方式によって塗布し、乾燥させて、実施例1~5の印刷物、及び、比較例1~5の印刷物を得た。
【0054】
得られた印刷物及びインキ組成物について以下のような評価を行った。評価の結果については表2に記載している。
【0055】
(印刷物の状態)
インキの塗布部分(水発色部分)の状態を目視にて観察し、以下に示す評価基準に従って各インキの水発色前の状態を評価した。
〇:透湿性防水シートと同色で印刷部分が容易に視認できない
△:淡青色
×:青色
【0056】
(印刷物の水発色性)
インキの塗布部分(水発色部分)にイオン交換水を滴下し、30分後の色相変化を以下に示す評価基準に従って目視にて評価した。
〇:青色に発色
△:若干青色に発色
×:発色しない
【0057】
(印刷物の水発色速度)
インキの塗布部分(水発色部分)にイオン交換水を滴下し、滴下してから色の変化があるまでに要する時間を測定して、以下に示す評価基準に従って評価した。
〇:水滴下後10~30分以内に青色に発色
△:水滴下直後~10分以内に青色に発色
×:水滴下後30分以降も発色しない
※水添加後の発色速度は10~30分以内が最適とする。
【0058】
(印刷物の耐溶出性)
インキの塗布部分(水発色部分)にイオン交換水を滴下してから30分後にティッシュペーパーで水分を拭き取った。水分を拭き取った際のティッシュペーパーへの色の付き具合を目視で確認して、以下に示す評価基準に従って評価した。
〇:ティッシュペーパーへの着色がない
△:ティッシュペーパーへの着色が若干ある
×:ティッシュペーパーへの着色が多くある
【0059】
(高温高湿度下での印刷物の安定性)
印刷物を温度50℃、湿度60%の条件下の恒温槽で3日間保管し、各印刷物の色変化を以下の評価基準に従って目視で評価した。
〇:保管前と同様で変化がない
△:若干青色に発色
×:青色に発色
【0060】
(インキの安定性)
インキを温度50℃の条件下の恒温槽で3日間保管し、各インキの安定性を以下の評価基準に従って目視で評価した。
〇:保管前のものと同じで変化がない
△:保管前のものと比較するとインキに若干の着色変化があり
×:保管前のものと比較するとインキに大きな着色変化あり(黄変)
【0061】
(密着性)
インキ塗布部分にセロハンテープを貼り付けた後に剥離し、各インキの透湿性防水シートへの密着性を以下の評価基準に従って評価した。
〇:剥がれなし
△:若干の剥がれあり
×:大幅な剥がれあり
【0062】
(耐ブロッキング性)
印刷物の印刷面と印刷をしていない透湿性防水シートを重ね合わせ、温度50℃、湿度60%の条件の恒温槽で2kg/cm2の荷重をかけ、7日間保管した。そして、以下の評価基準に従ってインキの耐ブロッキング性を評価した。
〇:透湿性防水シートへのインキの転写がない
△:透湿性防水シートへのインキの転写が若干ある
×:透湿性防水シートへのインキの転写が大幅にある
【0063】
【表2】
【0064】
表2を参照すると、実施例1~5のインキ組成物は、印刷物の耐溶出性以外は、全ての評価が〇となっており、比較例1~5と比べて優れていることがわかる。実施例2,3,5については、印刷物の耐溶出性の評価は△ではあるが、ティッシュペーパーへの色の付き具合については、フレキソインキ組成物に求められる性能としては問題はない。
【0065】
印刷物の水発色速度の評価については、実施例1~5は全て〇であるのに対し、比較例1~5は△又は×であることから、本発明のインキ組成物の効果の1つである排尿等によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを形成することができることがわかる。特に、表面被覆をしていない水発色性色素を用いた比較例1は、印刷物の水発色速度が速く、印刷物の耐溶出性が悪く、高温高湿度下の印刷物の安定性が悪くなっていることから、本発明のフレキソインキ組成物は、水発色性色素(D)が、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂で被覆することにより、フレキソインキ組成物による印刷物の水発色速度を遅くすることができ、さらに、印刷物の耐溶出性及び高温高湿度下の印刷物の安定性を高くするために必要であることがわかる。
【0066】
次に、実施例6~12、及び、比較例6~13を用いて、本発明のフレキソインキ組成物について説明する。
【実施例0067】
実施例6のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、マレイン酸変性スチレン樹脂1.5重量部(商品名「ハイロス-X X-220」、酸価150、星光PMC株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0068】
実施例7のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、スチレン変性アクリル樹脂1.5重量部(商品名「ハイロス-X ZS-1417」、酸価156、星光PMC株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0069】
実施例8のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、アクリル樹脂1.5重量部(商品名「ハイロス-X RS-1190」、酸価150、星光PMC株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0070】
実施例9のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、セラック樹脂1.5重量部(商品名「脱色セラックPEARL-N811」、酸価75、株式会社岐阜セラック製造所製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0071】
実施例10のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、ロジン変性マレイン酸樹脂0.8重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)及びマレイン酸変性スチレン樹脂0.7重量部(商品名「ハイロス-X X-220」、酸価150、星光PMC株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0072】
実施例11のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、3.0重量部に変更し、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部を、3.0重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【実施例0073】
実施例12のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、5.5重量部に変更し、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部を、0.5重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0074】
実施例6~12のインキ組成物を以下の表3に記載する。
【0075】
【表3】
【0076】
比較例6~13のフレキソインキ組成物の説明に当たり、初めに、比較例11,12で使用する水発色性色素(E)及び水発色性色素(F)の調整について説明する。
【0077】
水発色性色素(E)の表面被覆用樹脂溶液の調整
トルエン85重量部にポリブタジエン(商品名「Ricon130」、酸価0、クライバレー社製)を15重量部添加し、撹拌機によって30分間攪拌して樹脂を溶解させ、表面被覆用樹脂溶液を調整する。
【0078】
水発色性色素(E)の表面被覆
次に、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)を用意する。前記色素80重量部をFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れ、高速攪拌下で表面被覆用樹脂溶液20重量部を10分かけて徐々に滴下した。その後50℃以下の温度で10分間高速攪拌を維持した。その後、中速攪拌を行いながら減圧下でトルエンを除去し、水発色性色素(E)を調整した。
【0079】
水発色性色素(F)の表面被覆用酸変性樹脂溶液の調整
トルエン85重量部にマレイン酸変性ポリブタジエン(商品名「Ricon 130MA20」、酸価120、クライバレー社製)を15重量部添加し、撹拌機によって30分間攪拌して樹脂を溶解させ、表面被覆用の酸変性樹脂溶液を調整する。
【0080】
水発色性色素(F)の表面被覆
次に、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)を用意する。前記色素50重量部をFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて、高速攪拌下で表面被覆用酸変性樹脂溶液50重量部を10分かけて徐々に滴下した。その後50℃以下の温度で10分間高速攪拌を維持した。その後、中速攪拌を行いながら減圧下でトルエンを除去し、水発色性色素(D)を調整した。
【0081】
比較例6
比較例6のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、5.8重量部に変更し、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、0.2重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0082】
比較例7
比較例7のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の変性繊維素系樹脂(A)として使用したエチルセルロース樹脂4.5重量部を、2.0重量部に変更し、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、4.0重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0083】
比較例8
比較例8のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、ロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.5」、酸価25、荒川化学工業株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0084】
比較例9
比較例9のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の酸変性樹脂(B)として使用したロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)を、酸変性ロジン樹脂1.5重量部(商品名「パインクリスタル KR-120」、酸価320、荒川化学工業株式会社製)に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0085】
比較例10
比較例10のフレキソインキ組成物として、実施例1の溶媒(C)として使用した1-メトキシ-2-プロパノール59重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を、ノルマルプロピルアセテート20重量部及びトルエン44重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0086】
比較例11
比較例11のフレキソインキ組成物として、実施例1のフレキソインキ組成物の水発色性色素(D)30重量部を、上述の水発色性色素(E)30重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0087】
比較例12
比較例12のフレキソインキ組成物として、実施例1の溶媒(C)として使用した1-メトキシ-2-プロパノール59重量部を、55.5重量部に変更し、実施例1のフレキソインキ組成物の水発色性色素(D)30重量部を、上述の水発色性色素(F)33.5重量部に変更し、その他は実施例1と同じで条件で製造したインキ組成物を用意した。
【0088】
比較例13
比較例13のフレキソインキ組成物として、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素、つまり、表面被覆をしていない水発色性色素29重量部(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)、変性繊維素系樹脂(A)としてエチルセルロース樹脂4.5重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)、酸変性樹脂(B)としてマレイン酸変性ポリブタジエン樹脂1.5重量部(商品名「Ricon 130MA20」、酸価120、クライバレー社製)、溶媒(C)として1-メトキシ-2-プロパノール20重量部、ノルマルプロピルアセテート25重量部、及び、トルエン20重量部を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行い、比較例13のインキ組成物が得られた。
【0089】
比較例6~13のインキ組成物を以下の表4に記載する。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例6~12、及び、比較例6~13についても、インキ組成物の評価を行うために、実施例1~5、及び、比較例1~5と同様の手順によって、各インキ組成物を用いて印刷物を作製し、得られた印刷物及びインキ組成物について、印刷物の状態、印刷物の水発色性、印刷物の水発色速度、印刷物の耐溶出性、高温高湿度下での印刷物の安定性、インキの安定性、密着性及び耐ブロッキング性について評価を行った。実施例6~12の評価の結果を表5に記載し、比較例6~13の評価の結果を表6に記載している。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
表5,6を参照すると、実施例6~12のインキ組成物は、印刷物の耐溶出性以外は、全ての評価が〇となっており、比較例6~13と比べて優れていることがわかる。実施例11については、印刷物の耐溶出性の評価は△ではあるが、ティッシュペーパーへの色の付き具合については、フレキソインキ組成物に求められる性能としては問題はない。
【0095】
印刷物の水発色速度の評価については、実施例6~12は全て〇であるのに対し、比較例6~13は△又は×であることから、本発明のインキ組成物の効果の1つである排尿等によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを形成することができることがわかる。比較例11は、水発色性色素の酸変性樹脂として酸価0の樹脂を用いたことにより、印刷物の水発色速度が著しく遅くなっていた。
【0096】
本発明のフレキソインキ組成物は、視認性が高く、インパクトが強いインジケータを形成することができるだけでなく、徐々に変色するインジケータを形成することができることから、排尿等の水分によって直ぐに発色せず、10~30分かけて徐々に発色するインジケータを実現し、2~3回の排尿後にオムツを交換するユーザの希望を叶えることができる。