(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120617
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】フレキソインキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20230823BHJP
A61F 13/42 20060101ALI20230823BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20230823BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C09D11/02
A61F13/42 B
A61F13/514 400
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023564
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000205410
【氏名又は名称】大阪印刷インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】村松 謙一
(72)【発明者】
【氏名】辻内 秀治
【テーマコード(参考)】
2H113
3B200
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113BA01
2H113BB08
2H113BC02
2H113DA43
2H113EA10
3B200DD09
3B200DF02
4J039AB02
4J039AB09
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD14
4J039AF01
4J039AF03
4J039AF07
4J039BC13
4J039BC18
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA38
4J039EA42
4J039EA43
4J039EA44
4J039FA02
4J039GA09
(57)【要約】
【課題】フレキソ印刷方式によって様々な絵柄や文字を形成して、無色から有色へと変色するインジケータとして使用することができるフレキソインキ組成物であって、水分によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを実現するためのフレキソインキ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、
前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることを特徴とする、フレキソインキ組成物。
【請求項2】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項3】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることを特徴とする請求項1に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項4】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項5】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比が19:1~1:1であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項6】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項7】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項8】
前記溶媒(C)として、アルコール系、グルコールエーテル系、ケトン系、エステル系溶媒、及び、これらの混合溶媒からなる群の中からいずれか1つを用いることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【請求項9】
紙おむつ用透湿性防水フィルムへの印刷に使用されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のフレキソインキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に使用されるフレキソインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつを着用している際に排尿や排便等の排泄があったときに、液体状の排泄物と接触して変色することにより、外部から排泄があったことを知ることができるようにするためのインジケータを備えた紙おむつが用いられている。このような紙おむつのインジケータとしては、様々なインジケータが用いられており、排泄物の水分による変色を利用したインジケータ、排泄物によるpH変化を利用したインジケータ等が存在している。
【0003】
水分による変色を利用したインジケータの一例として、特許文献1には、インジケータに用いられるインジケータインキ組成物の発明が開示されており、前記インジケータインキ組成物を用いたインジケータは、排尿、排便等の水分によってインキが溶解し、溶解したインキが水分吸収体へ吸収されることで絵柄が消えることで、外部に排泄があったことを知らせることができる。
【0004】
排泄物によるpH変化を利用したインジケータとして、特許文献2には、湿り度インジケータを備える吸収性物品の発明が開示されており、湿り度インジケータには、pHによってオレンジ色から紫色へ変色するホットメルト組成物が用いられており、インジケータが排尿、排便等のpHに応じて変色することで、外部に排泄があったことを知らせることができる。特許文献3には、印刷が可能なpH変色性インキ組成物の発明が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載されているようなインジケータインキ組成物を用いた絵柄が消えるインジケータは、視認性が劣り消費者に対してのインパクトが弱いという問題があった。また安全性に配慮した設計ではあるが、溶解したインキが使用者の肌に接触する可能性があり、肌荒れやおむつかぶれ等が生じるという問題もある。
【0006】
特許文献2に記載されているようなホットメルト組成物を用いたインジケータの場合、その加工方法の特性上、極めて単純なライン等を形成することしかできず、単調なデザインのインジケータしか製造することができないという問題がある。pH変化を利用したインジケータは淡い色から濃色への変化に限られることから、視認性が劣り消費者に対してのインパクトが弱いという問題がある。特許文献3のインキ組成物は、特許文献2の問題点であるデザインの多様性を改善することは可能であるが、高温、多湿の条件下で紙おむつを保管した場合に、湿度によって自然に変色が進行するという問題があった。
【0007】
紙おむつのユーザの使用方法を調査した結果、一度の排尿で紙おむつを交換することは少なく、2~3回の排尿後に交換するケースが殆どであることが分かった。そのため、インジケータに関しては排尿後に敏感な発色性を求めるのではなく、排尿後10~30分で徐々に視認性が得られるインジケータを求めているユーザが多数存在していることが分かった。しかしながら、従来のインジケータは、排泄後に直ちにその機能が現れることから、このようなユーザには、インジケータの機能が現れる時間のコントロールも求められていることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-15664号公報
【特許文献2】特許第5602872号公報
【特許文献3】特許第6767021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、フレキソ印刷方式によって紙おむつ用透湿性防水フィルム等に様々な絵柄や文字を印刷してインジケータを形成するためのフレキソインキ組成物であって、前記インジケータが排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から、有色へと変色することが可能であり、視認性が高く、インパクトが強く、さらに、排尿等によってすぐに変色するのではなく、徐々に変色するインジケータを形成するためのフレキソインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることを特徴とする。
【0011】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いる、そして、前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることができる。
【0012】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることができる。
【0013】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比が19:1~1:1である。
【0014】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いる。
【0015】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆している。
【0016】
前記溶媒(C)として、アルコール系、グルコールエーテル系、ケトン系、エステル系溶媒、及び、これらの混合溶媒からなる群の中からいずれか1つを用いることができる。
【0017】
前記フレキソインキ組成物は、紙おむつ用透湿性防水フィルムへの印刷に使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成されたフレキソインキ組成物であって、前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させ、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂でその表面が被覆されていることにより、フレキソインキ組成物を用いて、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に絵柄や文字を印刷すると、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から、有色へと変色する視認性が高く、インパクトが強く、デザイン性の高いインジケータを提供することができるという効果を奏し、さらに、排尿等の水分によって直ぐに発色せず、10~30分かけて徐々に発色することができ、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現することで、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせることが可能となるという効果を奏する。
【0019】
前記変性繊維素系樹脂(A)として、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることができ、前記変性繊維素系樹脂(A)として、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、本発明のフレキソインキ組成物で紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷すると、紙おむつ用透湿性防水フィルムに対して適度な密着性及び経時安定性を有することができ、さらに、印刷された紙おむつ用透湿性防水フィルムをロール状に巻き取った際に、フィルム背面に対しての耐ブロッキング性を有することが可能となる。
【0020】
前記酸変性樹脂(B)として、前記溶媒(C)に溶解する樹脂であって、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることにより、排尿によって水発色性色素(D)をより鮮明に発色させることができ、さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0021】
前記変性繊維素系樹脂(A)と前記酸変性樹脂(B)との重量比を19:1~1:1とすることにより、印刷機の運転中に印刷機上からインキが飛散して、印刷物に汚れが発生する現象であるミスティングという印刷トラブル、及び、印刷物をロール状に巻き取った際のブロッキングを防止することができるようになり、また、水発色性色素(D)の発色性が著しく低下することを防止することができる。
【0022】
前記水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることにより、フレキソインキ組成物のインキの状態での安定性(水発色性色素(D)から剥がれない)及び酸変性樹脂(B)の発色特性を維持したまま、発色時間を10~30分以内に発色をコントロールすることが可能となる。
【0023】
前記水発色性色素(D)は、前記多孔性無機材料に前記水発色性色素を担持させたものを100重量部として、前記溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆していることにより、フレキソインキ組成物による印刷物の水発色速度を遅くすることができ、さらに、印刷物の耐溶出性及び高温高湿度下の印刷物の安定性を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のフレキソインキについて詳細に説明する。本発明のフレキソインキ組成物は、紙おむつ用透湿性防水フィルム等にフレキソ印刷方式で絵柄や文字を印刷するためのインキであり、紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷された絵柄や文字は、液体状の排泄物と接触して無色から有色へと変色することにより、外部に排泄があったことを知らせるためのインジケータとして機能する。
【0025】
フレキソインキ組成物は、1種類以上の変性繊維素系樹脂(A)、酸価が30~300mgKOH/gの1種類以上の酸変性樹脂(B)、溶媒(C)、及び、水発色性色素(D)から構成される。
【0026】
前記水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素に、さらに、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂(例えば、トルエンにマレイン酸変性ポリブタジエンを添加し、攪拌して樹脂を溶解させた溶液)で表面が被覆されている。溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂で表面を被覆することにより、本発明のフレキソインキをインジケータとして用いた場合、排尿等の水分によって従来のように直ぐに発色するのではなく、10~30分かけて徐々に発色することから、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現し、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせることが可能となるという優れた効果を奏する。
【0027】
変性繊維素系樹脂(A)としては、ニトロセルロース以外の変性繊維素系樹脂を用いることが好ましく、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、又は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることがより好ましい。このような水発色性色素(D)の発色を阻害しない材質の変性繊維素系樹脂(A)を用いることにより、本発明のフレキソインキを紙おむつ用透湿性防水フィルムに印刷すると適度な密着性を有し、且つ印刷物をロール状に巻き取った際に、フィルム背面に対する耐ブロッキング性を有することができる。また、変性繊維素系樹脂の分類に入るニトロセルロース樹脂は、印刷後、印刷物が常温下でも経時で黄変するという問題があったが、このような材質の変性繊維素系樹脂(A)を用いると、紙おむつ用透湿性防湿フィルムに対して適度な密着性、耐ブロッキング性を有することができ、且つ、経時安定性を有することができるようになる。
【0028】
酸変性樹脂(B)としては、溶媒(C)に溶解する樹脂であり、且つ、マレイン酸変性スチレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性アクリル樹脂、アクリル樹脂、又は、セラックを用いることが好ましい。このような酸変性樹脂(B)を用いることによって、排尿によって水発色性色素(D)をより鮮明に発色させることができ、さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0029】
変性繊維素系樹脂(A)と酸変性樹脂(B)との重量比を19:1~1:1とする。酸変性樹脂(B)の比率がこの範囲以上になると、印刷機の運転中に印刷機上からインキが飛散して、印刷物に汚れが発生する現象であるミスティングという印刷トラブルが発生する。また、酸変性樹脂(B)の比率がこの範囲以下になると、水発色性色素(D)の発色性が著しく低下するという問題が生じる。
【0030】
水発色性色素(D)の酸変性樹脂として、酸価が10~150mgKOH/gであり、且つ、マレイン酸変性オレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリブタジエン系樹脂、酸変性石油系樹脂、及び、アクリル系樹脂の少なくとも1つである樹脂を用いることができる。水発色性色素(D)の酸変性樹脂の酸価を限定することにより、フレキソインキ組成物のインキの状態での安定性(水発色性色素(D)から剥がれない)及び酸変性樹脂(B)の発色特性を維持したまま、発色時間を10~30分以内に発色をコントロールすることが可能となる。水発色性色素(D)の酸変性樹脂の酸価が10mgKOH/gより低くなると、水を添加した際に発色が著しく遅くなる傾向があり、酸価が150mgKOH/gを超えると、水発色性色素(D)に酸変性樹脂(B)を表面被覆した時点で発色する場合がある。
【0031】
水発色性色素(D)は、多孔性無機材料に水発色性色素を担持させた色素を100重量部として、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂を0.5~10重量部の比率で被覆することが好ましい。溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂の比率が0.5重量部より少ない場合は、印刷物の水発色速度が速く、印刷物の耐溶出性が悪く、高温高湿度下の印刷物の安定性が悪くなる。また、溶媒(C)に溶解しない酸変性樹脂の比率が10重量部より多い場合は、水を添加した際に十分に水と水発色色素が反応しないため、発色が悪くなる。
【0032】
本発明のフレキソインキ組成物は、水発色性の特性を阻害しない範囲であれば、変性繊維素系樹脂(A)及び酸変性樹脂(B)以外に、溶媒(C)に溶解する樹脂を併用することも可能であり、また、白色系の無機フィラー、有機フィラー、ワックス、表面調整剤、消泡剤、脱泡剤、沈降防止剤、増粘剤、滑剤、離型剤、架橋剤等の添加剤も、水発色性の特性を阻害しない範囲であれば、様々な条件に応じて適宜使用することができる。
【0033】
本発明のフレキソインキ組成物は、フレキソ印刷方式によって、紙おむつ用透湿性防水フィルム等に簡単に様々な絵柄や文字を印刷することができ、印刷された絵柄や文字を、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から有色へと変色するインジケータとして使用することができる。本発明における無色及び発色については、次のように定義する。
【0034】
無色・・・透湿性防水シートは乳白色を示しているが、フレキソインキ組成物を印刷した後のインキ乾燥被膜による印刷柄が常温下で透明もしくは透湿性防水シートと同じ白色の状態を維持している為、印刷柄を視認することが出来ない状態
発色・・・フレキソインキ組成物による印刷柄が視認できない状態の印刷物において、水分がインキ乾燥被膜による印刷柄に接触した時点で、印刷柄が有色へ変化した状態
【0035】
本発明のフレキソインキ組成物によって印刷して形成したインジケータは、排尿等による水分によって目視では認識できない無色の状態から有色へと変色し、視認性が高く、インパクトが強く、デザイン性の高いインジケータを提供することができる効果を奏する。特に、フレキソ印刷方式によって印刷することができるので、従来に比べて多様な形状の絵柄、文字を印刷することができるようになる。そして、排尿等の水分によって直ぐに発色せず、10~30分かけて徐々に発色することができ、発色時間をコントロールすることが出来るインジケータを実現することで、おむつの交換時期を適正に使用者に知らせすることが可能となるという効果を奏する。さらに、高温、高湿度下で自然発色することなく安定性に優れた前記インジケータを実現することができる。
【0036】
次に、本発明のフレキソインキ組成物について、実施例1~12及び比較例1~13を用いて説明する。
【実施例0037】
初めに実施例1~5及び比較例1~5について説明する。実施例1~5及び比較例2~5で使用する水発色性色素(D)の調整について最初に説明する。
【0038】
表面被覆用の酸変性樹脂溶液の調整
トルエン85重量部にマレイン酸変性ポリブタジエン(商品名「Ricon 130MA20」、酸価120、クライバレー社製)を15重量部添加し、撹拌機によって30分間攪拌して樹脂を溶解させ、表面被覆用の酸変性樹脂溶液を調整する。
【0039】
色素の表面被覆
次に、多孔性無機材料に水発色性の色素を担持させた色素(商品名「アクアインジケータ」、株式会社 松井色素化学工業所社製)を用意する。前記色素80重量部をFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れて、高速攪拌下で表面被覆用酸変性樹脂溶液20重量部を10分かけて徐々に滴下した。その後50℃以下の温度で10分間高速攪拌を維持した。その後、中速攪拌を行いながら減圧下でトルエンを除去し、水発色性色素(D)を調整した。
実施例1のフレキソインキ組成物として、水発色性色素(D)30重量部、変性繊維素系樹脂(A)としてエチルセルロース樹脂4.5重量部(商品名「エトセル スタンダード 7 工業品」ダウケミカル日本株式会社製)、酸変性樹脂(B)としてロジン変性マレイン酸樹脂1.5重量部(商品名「マルキードNo.33」、酸価300、荒川化学工業株式会社製)、溶媒(C)として1-メトキシ-2-プロパノール59重量部及びノルマルプロピルアセテート5重量部を用意し、撹拌機によって30分間攪拌し溶解混合を行った。その後サンドミルにて水発色性色素(D)の分散を行い、変性繊維素系樹脂(A)/酸変性樹脂(B)の構成重量比が3:1のインキ組成物が得られた。