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  • 特開-遮熱シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120625
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】遮熱シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/027 20190101AFI20230823BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230823BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230823BHJP
【FI】
B32B7/027
B32B27/00 M
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023576
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】松田 和也
(72)【発明者】
【氏名】高津 浩気
(72)【発明者】
【氏名】谷上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川添 公美子
(72)【発明者】
【氏名】森永 彰
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AA07C
4F100AA08B
4F100AA08C
4F100AA21C
4F100AA34C
4F100AB10C
4F100AC05C
4F100AC10C
4F100AD00C
4F100AK05B
4F100AK07B
4F100AK17C
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK41C
4F100AK51C
4F100AK52C
4F100AK53C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA23C
4F100DJ01A
4F100JD10C
4F100JJ02
4F100JL09C
4F100JL14A
4F100JN06C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J004AA10
4J004AC03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA08
(57)【要約】
【課題】直射日光が照射される設備装置の筐体の表面に遮熱シートを貼付した場合に、設備装置の筐体内の内部温度と外気温度との差が5℃以下に納まるようにする。
【解決手段】遮熱シート100を、表面に吸盤を有しており貼付対象に対して離剥可能な貼付層20と、貼付層20が第1の面に形成された基材30と、基材30の第2の面に形成された可視光領域及び近赤外線領域の光を反射する反射フィラー40Aを含有する耐候性樹脂層40と、によって構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に吸盤を有しており貼付対象に対して離剥可能な貼付層と、
前記貼付層が第1の面に形成された基材と、
前記基材の第2の面に形成された可視光領域及び近赤外線領域の光を反射する反射フィラーを含有する耐候性樹脂層と、
を備える遮熱シート。
【請求項2】
前記反射フィラーは、酸化チタン、チタン酸バリウム、ガラスビーズ、セラミックバルーン、アルミニウム粉体、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、モンモリロナイトのいずれかであり、
前記耐候性樹脂層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂のいずれかからなる、
請求項1記載の遮熱シート。
【請求項3】
前記耐候性樹脂層は、前記反射フィラーが20wt%~40wt%の割合で含有されている、請求項1記載の遮熱シート。
【請求項4】
前記貼付層は、50μm~140μmの厚さ、
前記基材は、20μm~140μmの厚さ、
前記耐候性樹脂層は、20μm~140μmの厚さ、
である、請求項1記載の遮熱シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シートに関し、特に、夏場に太陽光が照射される遮熱が必要な物品に貼付される遮熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遮熱性に優れ、均一で品質安定性に優れた遮熱性フィルムが開示されている。この遮光性フィルムは、離型性層とこの上に積層された接着剤又は粘着剤で形成された接合剤層を有し、接合剤層の表面に、以下の遮熱性塗料を塗装してなる遮熱性フィルムであって、遮熱性塗料の樹脂成分の固形分合計100重量部に対して、ぺリレン系顔料及び/又はアゾメチン系顔料をアルミニウム顔料の表面にアルミニウムの表面積1m当たり0.1gから2.0g被覆してなる遮熱性化合物を0.1~100重量部含有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-153471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでエアーコンディショナーの室外機、電柱に付帯する変圧器、制御盤などは、直射日光が照射される屋外環境に設置せざるを得ないこともある。近年、日本国では、真夏の外気温度は40℃近い日が少なくなく、その場合、直射日光が当たる設備装置の筐体の表面温度は、その着色にもよるが60℃~80℃近い温度となる。
【0005】
特許文献1に記載された遮光性フィルムの遮熱効果については、具体的に、どの程度の温度上昇が回避できたかについて開示がないようであるが、本願では、電子機器の保証温度及び放熱温度なども考慮して、直射日光が照射される設備装置の筐体の表面に遮熱シートを貼付した場合に、設備装置の筐体内の内部温度と外気温度との差が5℃以下に納まるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の遮熱シートは、
表面に吸盤を有しており貼付対象に対して離剥可能な貼付層と、
前記貼付層が第1の面に形成された基材と、
前記基材の第2の面に形成された可視光領域及び近赤外線領域の光を反射する反射フィラーを含有する耐候性樹脂層と、
を備える。
【0007】
前記反射フィラーは、酸化チタン、チタン酸バリウム、ガラスビーズ、セラミックバルーン、アルミニウム粉体、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、モンモリロナイトのいずれかであり、
前記耐候性樹脂層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂のいずれかからなる、とよい。
【0008】
さらに、前記耐候性樹脂層は、前記反射フィラーが20wt%~40wt%の割合で含有されているとよい。
【0009】
また、
前記貼付層は、50μm~140μmの厚さ、
前記基材は、20μm~140μmの厚さ、
前記耐候性樹脂層は、20μm~140μmの厚さ、
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の遮熱シートの概要説明図である。
【符号の説明】
【0011】
10 剥離紙
20 貼付層
30 基材
40 耐候性樹脂層
100 遮熱シート
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の遮熱シートについて説明する。なお、図面は、本発明の内容の理解に用いるため、実際の製品とは各部のサイズ、寸法比などが異なる場合がある点に留意されたい。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の遮熱シート100の模式的な構成を示す側面図である。図1に示す遮熱シート100は、以下説明する、剥離紙10と、貼付層20と、基材30と、耐候性樹脂層40と、を備えている。
【0014】
剥離紙10は、シリコーン製などの離型剤のものである。剥離紙10自体は既知のものであるため、特に説明はしない。
【0015】
貼付層20は、使用前に剥離紙10によって覆われており、使用時に剥離紙10を剥離してから貼付対象に対して貼付するものである。貼付層20は、太陽光が直接照射されることはないが、基材30を透過する紫外線によっても劣化しにくいように、紫外線吸収剤、光安定剤を含有するなどして、ある程度の耐候性を有していてもよい。
【0016】
貼付層20は、例えば-50℃~0℃のガラス転移温度を有する、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂などの合成樹脂で構成し、かつ表面に直径5μm~100μm程度の吸盤が100個/mm~1000個/mmの割合で有している。
【0017】
一例をあげると、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンシロキサン-オルガノシロキサンコポリマーからなるシリコーン組成物を、付加反応により硬化したものとすることができる。
【0018】
貼付層20は、アスカーFP硬度が40以上、アスカーCSC2硬度が5以下であり、かつ前記吸着層のゲル分率が60%以上、80%以下とするとよい。貼付層20は、既述の紫外線吸収剤、光安定剤に加えて、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、充填剤などを含有してもよい。
【0019】
貼付層20の厚さは、貼付対象に対して無用な厚さとならないように、50μm~140μm程度とするとよい。また、貼付層20は、ガラスを貼付対象とした場合には、その剥離力が0.01N/25mm~0.04N/25mm程度であるとよい。貼付層20の硬度は、アスカーCSC2硬度でいうと5以下とするとよい。
【0020】
なお、ここでいう貼付対象とは、これらに限定されるものではないが、エアーコンディショナーの室外機の筐体、電柱に付帯する変圧器の筐体、屋外に設置されている物置、制御盤の筐体、自動車などの乗物のハンドル・インストルメントパネルなど人が触れる可能性があるものなどが挙げられる。
【0021】
基材30は、貼付層20が第1の面30Aに形成され、耐候性樹脂層40が第2の面30Bに形成されたものである。このように、基材30は、貼付層20と耐候性樹脂層40との中間に位置するものであるので、これらのいずれとも相性が良い材料とすることが必要である。なお、基材30の厚さは、20μm~140μm程度とすればよい。
【0022】
基材30として適用し得る材料としては、これらに限定されるものではないが、アルミニウム・銅などの金属箔、紙、セルロース、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。したがって、基材30は、貼付層20と耐候性樹脂層40として選定した材料との関係で、例えばこれらの中から適宜決定すればよい。
【0023】
耐候性樹脂層40は、反射フィラー40Aが含有された樹脂体40Bからなる。樹脂体40Bは、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。
【0024】
反射フィラー40Aは、太陽光を反射するものである。本実施形態では、貼付対象に対する遮熱を実現するために、遮熱シート100が蓄熱しないようにしている。なお、耐候性樹脂層40の厚さは、20μm~140μm程度とすればよい。
【0025】
反射フィラー40Aは、これらに限定されるものではないが、1又は2種以上の、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、ガラスビーズ、セラミックバルーン、アルミニウム粉体、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、マイカ、モンモリロナイトを用いることができる。
【0026】
反射フィラー40Aの大きさは、平均1次粒径でいうと、例えば、0.01μm~0.5μm程度とするとよい。形状は不問であり、例えば、粒状・柱状・鱗片状と称されるものを用いることができる。これにより、太陽光に含まれる可視光領域及び近赤外線領域の光を効果的に反射することが可能となる。
【0027】
つぎに、図1に示す遮熱シート100の製造方法について説明する。
【0028】
1.基材30について
基材30は、例えば、以下のように3層構造のものとすることができる。第1層及び第3層は、プロピレン単独重合体50wt%~55wt%、高密度ポリエチレン1wt%~5wt%及び炭酸カルシウム40wt%~55wt%を、それぞれ別々の押し出し機にて約250℃で溶融混練した後、約250℃に設定したダイに供給しシート状に押し出すことによって製造する。
【0029】
第2層は、プロピレン単独重合体70wt%~75wt%、高密度ポリエチレン8wt%~12wt%及び炭酸カルシウム13wt%~18wt%を、約250℃で溶融混練した後、約250℃に設定したダイに供給しシート状に押し出すことによって製造する。
【0030】
つぎに、第1層と第3層とによって第2層を挟み込む態様で積層してから冷却して、再び約180℃まで加熱してテンターなどで横方向に訳9倍の倍率で延伸する。その後、約160℃でアニーリング処理した後、常温に戻す。以上の高低によって、基材30が完成する。
【0031】
2.貼付層20及び剥離紙10について
まず、貼付層20の前駆体を製造する。貼付層20の前駆体としては、例えば、アクリル樹脂を用意し、これに空気を混ぜることによって、これに微細気泡を含ませ、微細気泡を含むアクリル樹脂を、基材30の第1の面30Aに、スピン法、刷毛塗り法、ロール法、ワイヤーバー法、ダイ法などによって均一な厚さに塗布する。その後、これらを例えば80℃から120℃まで約6分間、一定昇温速度で乾燥させる。その後、貼付層20の表面を剥離紙10によって覆う。
【0032】
3.耐候性樹脂層40について
まず、耐候性樹脂層40の前駆体を製造する。樹脂体40Bの前駆体として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、反射フィラー40A、溶剤を用意し、アクリル樹脂40を30wt%~50wt%、反射フィラー40Aを20wt%~40wt%、溶剤を15wt%~35wt%の比率で混合し、例えばミキサーを用いて十分に攪拌する。なお、溶剤は、例えば、酢酸ブチルとキシレンとを例えばwt%比率で1~2:2~1で混合したものを用いるとよい。
【0033】
つづいて、攪拌後のアクリル樹脂等の混合体に対して、ウレタン樹脂を10wt%~20wt%の割合で混合し、それが硬化する前に、基材30の第2の面30Bに、スピン法、刷毛塗り法、ロール法、ワイヤーバー法、ダイ法などによって均一な厚さに塗布し、その後、これらを例えば80℃から140℃まで約2分~約6分間加熱乾燥させ、その後、例えば常温下で1週間程度、自然乾燥させる。こうして、遮熱シート100が完成する。
【0034】
遮熱シート100は、繰り返し貼付対象に対して貼付及び剥離が可能である。したがって、例えば、所望の位置に貼付できなかったり、遮熱シート100と貼付対象との間に意図しない気泡が生じたりする場合、購入者が簡単に再貼付作業を行うことができる。
【0035】
特に、貼付層20自体に紫外線吸収剤を含有させることには限度があるところ、耐候性樹脂層40によって紫外線を効果的に反射することで、貼付層20まで紫外線を到達しにくくしているため、貼付層20の劣化が少なくて済む。
【0036】
遮熱シート100は、目標としていた、設備装置の筐体の表面に遮熱シートを貼付した場合に、設備装置の筐体内の内部温度と外気温度との差が5℃以下に納められることができた。
図1