(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120633
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】床材及び床の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/12 20060101AFI20230823BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20230823BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
E04F15/12 B
E04F15/00 R
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023585
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】591167278
【氏名又は名称】中外商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】若野 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】少路 巧
(72)【発明者】
【氏名】徳田 誠司
【テーマコード(参考)】
2E176
2E220
【Fターム(参考)】
2E176AA03
2E176AA05
2E176BB01
2E176BB04
2E220AA29
2E220AA51
2E220AC05
2E220FA11
2E220FA13
2E220GA35X
2E220GB14X
2E220GB22X
2E220GB23X
2E220GB32X
(57)【要約】
【課題】 建物内の床部分は、人々の往来等によって劣化するため、一定期間で床部分を改修する必要がある。なお、床部分を改修する場合、改修している部分を使用することができないため、短時間での施工が望まれている。特に、発泡(ピンホール)や炭酸ガスなどによる膨れ防止、塗膜の性能の向上などのメリットを有する下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)を行う場合、2回塗布しなければいけないため短時間で施工することが困難であった。そのため、本発明では、短時間で硬化する床材および当該床材を使用した施工方法を提供する。
【解決手段】 樹脂を含む主剤と、硬化剤と、セメントと珪砂とを含む骨材と、を含むセメント組成物であって、前記セメントは、ケイ酸カルシウムと、アルミン酸カルシウムと、硫酸カルシウムとを含み、室温20度、湿度50%の条件下において、凝結の終わる終結時間が40分以内であることを特徴とする床材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む主剤と、硬化剤と、セメントと珪砂とを含む骨材と、を含むセメント組成物であって、
前記セメントは、ケイ酸カルシウムと、アルミン酸カルシウムと、硫酸カルシウムとを含み、室温20度、湿度50%の条件下において、凝結の終わる終結時間が40分以内であることを特徴とする床材。
【請求項2】
請求項1に記載の床材を使用する床の施工方法であって、
下地層に対して下処理を行う下地処理工程と、
下処理工程後の前記下地層に前記床材を塗布し、下塗り層を形成する工程と、
前記下塗り層に前記床材を塗布してから4時間以内に前記下塗り層に前記床材を塗布し、上塗り層を形成する工程と、を含むことを特徴とする床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材及び当該床材を使用した床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の床部分は、人々の往来等によって劣化するため、一定期間で床部分を改修する必要がある。なお、床部分を改修する場合、改修している部分を使用することができないため、場合によっては営業を休む必要がある。そのため、短時間での施工が望まれている。
【0003】
床部分を短時間に改修する工法として、樹脂モルタル組成物を塗布する方法(特許文献1 参照)が知られている。当該施工方法を使用すれば、8~10時間程度で床部分の施工が完了する。この場合、営業を休むことなく床の改修を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の施工方法は、下塗りを行わずに、上塗り1回で仕上げる工法(モルタル工法)であるため、求められる用途・状況によって、当該工法を使用することができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)を行う場合であっても、8~10時間程度で床部分の施工を完了可能とする床材及び当該床材を使用した床の施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0008】
本発明の床材は、樹脂を含む主剤と、硬化剤と、セメントと珪砂とを含む骨材と、を含むセメント組成物であって、前記セメントは、ケイ酸カルシウムと、アルミン酸カルシウムと、硫酸カルシウムとを含み、室温20度、湿度50%の条件下において、凝結の終わる終結時間が40分以内であることを特徴とする。
かかる構成により、下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)を行う場合であっても、8~10時間程度で床部分の施工を行うことができるため、1日で施工完了することができる。また、ペースト工法を行うことで、発泡(ピンホール)や炭酸ガスなどによる膨れ防止、塗膜の性能の向上などのメリットを有する。
【0009】
本発明の床の施工方法は、本発明に係る床材を使用する床の施工方法であって、下地層に対して下処理を行う下地処理工程と、下処理工程後の前記下地層に前記床材を塗布し、下塗り層を形成する工程と、前記下塗り層に前記床材を塗布してから4時間以内に前記下塗り層に前記床材を塗布し、上塗り層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
かかる構成により、下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)であっても1日で施工することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)であっても1日で施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る床材を使用して形成した舗装体10の断面を示す図である。
【
図2】本発明に係る床の施工方法S100の工程を示すフローチャートである。
【0012】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る床材を使用して形成した舗装体10の断面を示す図である。舗装体10は、下地層20、下塗り層30、上塗り層40から構成されている。下地層20の上には、下塗り層30が形成されており、下塗り層30の上には上塗り層40が形成されている。なお、下地層20と下塗り層30との間にプライマを塗布して構わない。また、下地層20には、グリップ目地21が設けられており、その部分には床材が塗布されている。
【0014】
下地層20は、施工する対象物の基礎となっている層であり、主に、コンクリートで形成されている。
【0015】
下塗り層30及び上塗り層40は、後述する本発明に係る床材により形成されている。本発明に係る床材を下塗りして形成した層が下塗り層30であり、本発明に係る床材を上塗りして形成した層が上塗り層40である。
【0016】
本発明に係る床材は、樹脂を含む主剤と、硬化剤と、セメントと珪砂とを含む骨材と、を含んでいる。また、必要に応じて硬化促進剤や希釈剤、遅延剤、着色のためのトナー、消泡剤等の添加剤を配合しても構わない。具体的には、硬化促進剤には硬化促進剤HRを使用するのが好ましく、希釈剤にはST―3500を使用するのが好ましく、遅延剤には遅延剤HRを使用するのが好ましい。
【0017】
本発明に係る床材に含まれる、主剤と硬化剤と骨材との比率は、1:1:4~1:1:7程度の範囲が好ましい。
【0018】
本発明に係る床材の主剤は、樹脂、例えばポリオールを含むものであり、具体的には、HR主剤を使用している。
【0019】
本発明に係る床材の硬化剤は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むものであり、具体的には、HR硬化剤を使用している。
【0020】
本発明に係る床材の骨材は、セメントと珪砂を含んでいる。なお、セメントは、ケイ酸カルシウムと、アルミン酸カルシウムと、硫酸カルシウムとを含み、室温20度、湿度50%の条件下において、凝結の終わる終結時間が40分以内のものを使用している。具体的には、セメントには、住友大阪セメント株式会社のライオンシスイ115(登録商標)を使用している。当該セメントを使用することによって、下塗り施工後、3~4時間後に上塗りを行うことができる。これにより、舗装体10を8時間程度で形成することができるため、施工が当日中(1日)で完了する。
【0021】
珪砂としては、珪砂6号及び珪砂7号を使用している。珪砂6号と珪砂7号との比率は、1:1~1:2の範囲であり、珪砂7号の方を多く入れるのが好ましい。なお、必要に応じて適切な粒径の珪砂を使用しても構わない。
【0022】
次に、本発明に係る床材を使用した床の施工方法S100について説明する。
図2は、本発明に係る床の施工方法S100の工程を示すフローチャートである。なお、床の施工方法S100は、小規模、つまり施工面積が狭い厨房などの床に施工する場合を想定している。床の施工方法S100は、床の下地層20に対して下地処理を行う下地処理工程S110と、本発明に係る床材を塗布して下塗り層30を形成する下塗り工程S120と、本発明に係る床材を塗布して上塗り層40を形成する上塗り工程S130とを含む。また、下地処理工程S110の後にグリップ目地を形成するグリップ目地形成工程S111を行う。また、下塗り工程S120の後は、下塗りが硬化して次工程である上塗り工程S130が行えるまで待機する待機工程S121が必要である。なお、待機工程S121の待機時間としては、3~4時間程度である。
【0023】
下地処理工程S110としては、既存の床材の除去、機械研磨等を行い、モルタルクズ、泥、レイタンス等の除去を行う。
【0024】
グリップ目地形成工程S111では、下地層の端部(壁際、溝やエキスパンションジョイント廻り、出入り口、機械台、柱廻り)にグリップ目地21を形成(設置)する。グリップ目地は、幅8mm、深さ8mm程度である。グリップ目地を設ける間隔としては、端部以外では、縦5m、横5m以内を目安とする。なおグリップ目地を設ける工具としてはダイヤモンドカッター等を使用して形成する。
【0025】
下塗り工程S120では、下地処理工程S110及びグリップ目地形成工程S111が完了した下地層20に本発明に係る床材を塗布して下塗り層30を形成する。厚さとしては、約1mm程度であり、金鏝を使用して形成する。
【0026】
待機工程S121では、下塗り工程S120で形成した下塗り層30が十分に硬化するまで待機する。十分に硬化する前に次工程を行うと下塗り層30が変形等してしまい、不都合が生じるためである。なお、下塗り層30の硬化時間は気温によって変化するため、気温が低い場合(5℃以下の場合)、ジェットヒーター等を使用して10℃以上になるように加温する必要がある。
【0027】
上塗り工程S130では、十分に硬化した下塗り層30が形成された後に本発明に係る床材を塗布して上塗り層40を形成する。厚さとしては、2mm~3mm程度であり、金鏝を使用して形成する。
【0028】
なお、本発明に係る床材は、高速撹拌機に主剤及び添加剤を入れて撹拌し、その後、硬化剤を入れて30秒~2分程度撹拌する。最後に骨材を入れて、各種材料が均一になるまで撹拌して製造する。
【0029】
次に、本発明に係る床材について実施例及び比較例にて説明する。
【実施例0030】
<実施例1>
HR主剤100重量部と、HR硬化剤100重量部と、HRトナー7.5重量部と、骨材424.7重量部と、硬化促進剤6重量部と、希釈剤20重量部とを均一に混合して実施例1の床材とした。なお、骨材は、セメントとしてライオンシスイ115(住友大阪セメント株式会社)を170.6重量部、珪砂6号を111重量部、珪砂7号を115.2重量部、消石灰を21.3重量部、ディフォーマー14HPを1.7重量部、AFソルベント5号を3.5重量部、ポゾリスNo8を1.7重量部、を混合したものである。
【0031】
<比較例1>
HR主剤100重量部と、HR硬化剤100重量部と、HRトナー7.5重量部と、骨材424.7重量部と、硬化促進剤6重量部と、希釈剤20重量部とを均一に混合して実施例1の床材とした。なお、骨材は、セメントとして白色セメントを170.6重量部、珪砂6号を111重量部、珪砂7号を115.2重量部、消石灰を21.3重量部、ディフォーマー14HPを1.7重量部、AFソルベント5号を3.5重量部、ポゾリスNo8を1.7重量部、を混合したものである。
【0032】
<評価方法>
実施例1と比較例1との評価については、5℃の条件下において、コンクリートの床面上に実施例1及び比較例1の床材を塗布して、時間経過による硬化状態を指触により確かめた。また、指触状態が良好な場合は、硬度(ショアD)を測定した。
【0033】
<評価結果>
実施例1は、3時間後には指触状態は良好、つまり次工程を行える程度に硬化しており、4時間経過時においては、硬度(ショアD)の値は30であり、5時間経過時においては、硬度(ショアD)の値は37であった。一方、比較例1は5時間経過時においてもタックありの状態で、次工程を行えない状態であった。実施例1と比較例1との主な違いは使用するセメントであり、凝結の終わる終結時間が40分以内のセメントを使用することによる効果であると考えられる。
本発明の床材を使用すれば、下塗り及び上塗りを行う工法(ペースト工法)を行う場合であっても、8~10時間程度で床部分の施工を行うことができるため、1日で施工完了することができる。そのため、比較的狭い範囲を施工する場合、例えば、厨房等の床を施工する場合に特に有用である。