(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120635
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】プライマーセット、ならびにテンサイ根腐病の検診キット及び検診方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/689 20180101AFI20230823BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230823BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230823BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20230823BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z ZNA
G01N33/53 M
G01N33/569 F
C12Q1/6844 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023587
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145126
【弁理士】
【氏名又は名称】金丸 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小田 一登
(72)【発明者】
【氏名】内野 浩克
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ06
4B063QQ09
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS10
4B063QS24
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】 テンサイ根腐病の病原菌である特定のリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセット、当該プライマーセットを含むテンサイ根腐病の検診キット、ならびに、当該プライマーセット及び当該検診キットの少なくともいずれかを用いて、被験体から得られた検体において特定のリゾクトニア・ソラニを検出する工程を含むテンサイ根腐病の検診方法を提供する。
【解決手段】 LAMP法により、特定のリゾクトニア・ソラニ由来の核酸を特異的に増幅する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LAMP法により、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセットであって、以下の(a)、(b)、(c)及び(d)のプライマーを含むプライマーセット;
(a)配列番号2の配列により示されるポリヌクレオチドからなるFIPプライマー、
(b)配列番号3の配列により示されるポリヌクレオチドからなるBIPプライマー、
(c)配列番号4の配列により示されるポリヌクレオチドからなるF3プライマー、
(d)配列番号5の配列により示されるポリヌクレオチドからなるB3プライマー。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドがリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IVのリボソームDNAのITS領域及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBのリボソームDNAのITS領域に由来する、請求項1に記載のプライマーセット。
【請求項3】
アファノミセス・コクリオイデス(Aphanomyces cochlioides)由来の核酸を増幅しない、請求項1または請求項2に記載のプライマーセット。
【請求項4】
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG1-1由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG4由来の核酸を増幅しない、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプライマーセット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプライマーセットを含む、テンサイ根腐病の検診キット。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプライマーセット及び請求項5に記載の検診キットの少なくともいずれかを用いて、LAMP法により、被験体から得られた検体においてリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBを検出する工程を含む、テンサイ根腐病の検診方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LAMP法により、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するためのプライマーセット、当該プライマーセットを含むテンサイ根腐病の検診キット、及び、当該プライマーセット等を用いて、LAMP法により、被験体から得られた検体においてリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを検出する工程を含む、テンサイ根腐病の検診方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テンサイ根腐病(Rhizoctonia root rot)は、一般的にはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV、まれにリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBによる、テンサイの重要病害の一つである。テンサイ根腐病に罹病したテンサイ(甜菜、サトウダイコン、Beta vulgaris L.)には、発症の初期では葉柄の基部や冠部に茶褐色の病斑が形成され、それが徐々に根部まで進展していく(非特許文献1)。そして、重症個体においては、根部全体が腐敗枯死してしまう。
【0003】
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)は、土壌に棲息する植物病害の病原菌であり、イネ、畑作物、野菜など多くの作物に感染する。リゾクトニア属は、菌糸融合反応に基づいて13群以上に分類されており、日本では主にAG1~AG5が農作物へ被害を及ぼす群として注意が向けられている。そのうち、テンサイ根腐病の病原菌となるのは、AG2の中から亜群として区分されるAG2-2IV及びAG2-2IIIBである(非特許文献2)。
【0004】
リゾクトニア・ソラニAG2-2IVやリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBが感染したテンサイは、生育が遅滞し、根中糖分が減少するとともに品質も低下することから、耕作者にとって、直接、収入の減少につながるとともに、製糖業者にとっても作業効率が低下する大きな要因となり、また、収穫されてから製糖工程に入るまでの貯蔵期間中に、腐敗が進行して品質が低下する場合があり、多方面で大きな問題となっている。
【0005】
リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBは、菌核などの耐久体の形で越冬し、地温の上昇ともに菌糸を発芽させ、土壌中では菌糸の状態で存在する。寄主がなくとも土壌中の植物残渣などを分解して棲息し、寄主となる植物がその土壌に植えられることにより、その植物に感染する。感染は時期を問わないが、比較的高い温度を好み、根部の肥大率が大きい6月下旬から7月中旬にかけて特に感染し、罹病が発生しやすい。
【0006】
テンサイ根腐病の薬剤防除は広く行われており、発症直後に病状の進行を抑制する目的で行う場合の他、感染前に予防目的で行う場合があり、それぞれで薬剤の種類が使い分けされる。前者においては、発症の早期発見が病状の進行を抑制するうえで特に重要となるところ、前者において用いられる薬剤は、テンサイ根腐病の病状の進行抑制に対しては効果があるものの、テンサイ根腐病と原因菌の種類が全く異なるにもかかわらず、病徴のみから判別することが困難なテンサイ黒根病などの、他の病害には効果を示さないため、テンサイ根腐病の感染や罹病についての正確な検診に基づいて防除しなければ、病害の抑制ができないとともに、薬剤散布が無意味となってしまいかねない。他方、後者においては、テンサイ根腐病による被害をより効果的に回避するために、病害の初発時期より前に、土壌中にリゾクトニア・ソラニAG2-2IVやリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB棲息することを特定したうえで、病害の予防を目的とする薬剤散布を行うという方法が取られている。
【0007】
病害を発見する方法としては、例えば、テンサイの罹病組織を所定の培地で培養し、検鏡により同定する方法が用いられているが、罹病組織の切片を培地上に置いてから検出することができるまでに7~10日を要するため、その間に病状が進行してしまい、早期にテンサイ根腐病の発病を発見して効果的な防除を行うということができなくなる。また、この方法は、検出感度が低いため、判定に際してはさらに顕微鏡を用いて形態観察する必要があり、植物病理学的な専門知識や技術が必要となってしまう。
【0008】
他の作物においては、分子生物学的手法によりリゾクトニア・ソラニを検出する方法として、PCR法を用いてリゾクトニア・ソラニAG2-2を検出する方法が採用されている(特許文献1)。また、LAMP法により、リゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBのリボソームDNAのITS領域に基づいて設計されたLAMPプライマーを用いて、リゾクトニア・ソラニAG2-2IVやリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB、その他の菌糸融合群(Anastomosis group(以下、「AG」という。))の菌体を検出することにより、芝生の紋枯病を検診する方法が用いられている(特許文献2)。
【0009】
しかしながら、特許文献1のPCR法を用いた検出方法では、精密な温度制御と迅速な温度変化を要するポリメラーゼ連鎖反応を経る必要があることから、温度の制御が不可欠となり、サーマルサイクラーや電気泳動装置が必須となる。また、多段階の工程を経る必要がある他、検出までに時間を要するうえに、操作には一定の技術習得も必要である。また、特許文献2の検出方法において用いられているプライマーは、テンサイ根腐病の病原菌であるリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの他、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBとは異なるAGに属するリゾクトニア・ソラニAG-1やリゾクトニア・ソラニAG-4をも検出してしまい、テンサイ根腐病の検診においてそのプライマーを用いると、正確かつ迅速に検診することが困難になり、ひいてはテンサイ根腐病の病害防除を早期かつ適正に行うことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10-234381号公報
【特許文献2】特表2021-512609号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Plant Disease / Vol. 96 No. 3
【非特許文献2】微生物遺伝資源利用マニュアル(41)(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、テンサイ根腐病の病原菌であるリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセット、当該プライマーセットを含むテンサイ根腐病の検診キット、ならびに、当該プライマーセット及び当該検診キットの少なくともいずれかを用いて、被験体から得られた検体においてリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを検出する工程を含むテンサイ根腐病の検診方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、テンサイ根腐病の病原菌であるリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸に特異的に反応するLAMPプライマーを設計し、LAMPプライマーセットを完成させ、そして、当該LAMPプライマーセットを用いたテンサイ根腐病の検診キットや、当該LAMPプライマーセットや当該検診キットを用いた、LAMP法によりテンサイ根腐病を検診する方法を見出し、下記の各発明を完成した。
【0014】
(1)LAMP法により、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセットであって、以下の(a)、(b)、(c)及び(d)のプライマーを含むプライマーセット;
(a)配列番号2の配列により示されるポリヌクレオチドからなるFIPプライマー、
(b)配列番号3の配列により示されるポリヌクレオチドからなるBIPプライマー、
(c)配列番号4の配列により示されるポリヌクレオチドからなるF3プライマー、
(d)配列番号5の配列により示されるポリヌクレオチドからなるB3プライマー。
【0015】
(2)前記ポリヌクレオチドがリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IVのリボソームDNAのITS領域及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBのリボソームDNAのITS領域に由来する、(1)に記載のプライマーセット。
【0016】
(3)アファノミセス・コクリオイデス(Aphanomyces cochlioides)由来の核酸を増幅しない、(1)または(2)に記載のプライマーセット。
【0017】
(4)リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG1-1由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG4由来の核酸を増幅しない、(1)から(3)のいずれか一項に記載のプライマーセット。
【0018】
(5)(1)から(4)のいずれか一項に記載のプライマーセットを含む、テンサイ根腐病の検診キット。
【0019】
(6)(1)から(4)のいずれか一項に記載のプライマーセット及び請求項5に記載の検診キットの少なくともいずれかを用いて、LAMP法により、被験体から得られた検体においてリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBを検出する工程を含む、テンサイ根腐病の検診方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、LAMP法を用いて、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅することができる新規のプライマーセットが提供される。当該プライマーセットを用いることにより、農場現場において、テンサイ根腐病の病原菌であるリゾクトニア・ソラニAG2-2IVやリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを即時に高感度で検出し得るうえに、感染初期の個体を正確に検診できることから早期に防除や排水対策などを講じることができ、その結果、当該病害の進行を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】リゾクトニア・ソラニAG2-2IVのリボソームDNAのITS領域の塩基配列における、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB検出用プライマーが認識する塩基配列の位置関係を示す。
【
図2】実施例1におけるLAMP反応後の反応チューブの色の変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るプライマーセット、テンサイ根腐病の検診キット、及び、テンサイ根腐病の検診方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明に係るプライマーセットは、LAMP法により、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセットであって、以下の(a)、(b)、(c)及び(d)のプライマーを含む;
(a)配列番号2の配列により示されるポリヌクレオチドからなるFIPプライマー、
(b)配列番号3の配列により示されるポリヌクレオチドからなるBIPプライマー、
(c)配列番号4の配列により示されるポリヌクレオチドからなるF3プライマー、
(d)配列番号5の配列により示されるポリヌクレオチドからなるB3プライマー。
【0024】
LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法は、納富らによって開発され、PCR(Polymerase Chain Reaction)法で不可欠とされる温度制御を不要とする核酸の増幅方法であり、日本特許第3313358号公報に報告されている。一般的に、LAMP法は、PCRを用いた方法に比べて短時間で簡易に遺伝子を増幅できるうえ、特異性が高く、サンプル中の不純物の影響も受けにくい。そのため、簡便なサンプルの前処理で目的の核酸の増幅を行うことが可能である。
【0025】
LAMP法は、6つの遺伝子領域を認識する4つのプライマーを用いて、鋳型となるヌクレオチドに当該プライマーの3‘末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とする。また、プライマーの3’末端が、常に試料に由来する領域に対してアニールしており、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能することとなり、高感度かつ特異性の高い核酸増幅反応を可能とする。
【0026】
LAMP法では、2本鎖の鋳型DNAの一方の鎖の3‘末端側から順にF3c、F2c、F1c、B1、B2、B3と称する領域をそれぞれ規定し、これらの領域の塩基配列に基づいて設計されるF3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、B3プライマーと称する4種類で1セットとなるプライマーを使用する。
【0027】
F3プライマーは、F3c領域と相補的な塩基配列であるF3領域の塩基配列を持つように設計する。FIPプライマーは、F2c領域と相補的な塩基配列であるF2領域の塩基配列を3’末端側に持ち、5’末端側にF1c領域の塩基配列と同じ塩基配列を持つように設計する。BIPプライマーは、B2領域の塩基配列を3’末端側に持ち、5’末端側にB1領域と相補的な塩基配列であるB1c領域の塩基配列を持つように設計する。B3プライマーは、B3領域の塩基配列を持つように設計する。
【0028】
これらのプライマーのうち、FIPプライマー、BIPプライマーをインナープライマーと、F3プライマー、B3プライマーをアウタープライマーと称される。ここで、インナープライマーは、標的領域上の特定の塩基配列領域を認識し、かつ合成起点を与える塩基配列を3’末端に有し、同時にこのプライマーを起点とする核酸合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を5’末端に有するポリヌクレオチドである。このインナープライマーは、F2領域とF1c領域の間、またはB2領域とB1c領域の間に、塩基数0~50のいずれかの長さの任意の塩基配列を有していてもよい。
【0029】
一方、アウタープライマーは、標的領域上の特定の塩基配列領域の3'末端側に存在する配列領域を認識かつ合成起点を与える塩基配列を有するポリヌクレオチドである。
【0030】
LAMP法によるDNAの増幅反応は、インナープライマーを起点に合成されたDNA鎖を鋳型DNAから一本鎖として剥がすために用いられる2種類のアウタープライマーにより生成する、ステムループ構造を持つダンベル型の構造を起点とし、伸長反応と鎖置換型伸長反応を繰り返すことにより進行する。また、ダンベル構造の5’末端側のループの一本鎖部分に相補的な配列を持つ2種類のループプライマーを用いることにより、DNA合成の起点を増やし、反応時間を短縮することが可能となる。
【0031】
以下、LAMP法によるリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBの検出について、(1)検体からの核酸の抽出、(2)プライマーセットの設計、(3)核酸の増幅、(4)増幅産物の有無の確認の順に説明する。
【0032】
(1)検体からの核酸の抽出
本発明において、検体としては、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを含有するものすべてを対象とすることができるが、テンサイ(甜菜、サトウダイコン、Beta vulgaris L.)の根、葉、茎、苗などを用いることが好ましい。特に検出に適しているのはテンサイの根であり、検出率を高めることができる。
【0033】
その他、土壌を検体とすることができる。リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBは、土壌中にも広く存在し、土壌を介して感染することから、土壌を検体としてリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの有無を確認することにより、テンサイ根腐病の発生や拡大を未然に防ぐことができる。
【0034】
検体からDNAを調製する方法としては、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、未精製の状態でも使用できるが、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルム抽出による精製や、市販の抽出キットを用いた精製によって、核酸の純度を高めて使用することができる。
【0035】
(2)プライマーセットの設計
<プライマーセット>
本発明に係るプライマーセットは、リゾクトニア・ソラニAG2-2IVの塩基配列及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの塩基配列に特異的であり、かつ、種保存性が高いリボソームDNAのITS領域(Internal Transcribed Spacers)に基づいて設計される。当該標的領域は、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの多様性をカバーし得る塩基配列領域である。
【0036】
本発明におけるプライマーは、係る標的塩基配列を増幅対象として設計しうる限り特に限定されるものではなく、PCR法やLAMP法などの核酸増幅方法に用いる際のプライマーとして使用することができるが、LAMPプライマーであることが好ましい。
【0037】
本発明に係るプライマーセットは、次のように設計する。まず、Clustal Xなどのアラインメントソフトを用いて、複数のリゾクトニア・ソラニAG2-2IVのリボゾームDNAのITS領域における塩基配列のアライメントを行う。次に、得られたアライメント情報をもとに、Primer Explorer V5(栄研化学株式会社製)等のソフトを用いて保存性の高い領域において、F3、F2、F1c、B1c、B2、B3領域を選定し、LAMP法のプライマーを設計する。従って、本発明に係るプライマーセットは、LAMPプライマーセットであることが好ましい。
【0038】
各プライマーにおいては、LAMP法におけるプライマー機能を有する限り、1または数個(例えば、1~10個)の塩基が欠失、置換または付加した塩基配列を有するプライマーを代替的に用いることができる。
【0039】
本発明に係るプライマーセットとして、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの特異的な塩基配列であり、配列番号1の配列により示される当該菌体のリボソームDNAのITS領域(
図1)をコードする塩基配列を標的とし、その塩基配列の一部と相補的となるように化学合成されたポリヌクレオチドであって、配列番号2~5の配列により示されるプライマーセットを選定した。
【0040】
リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB検出用のプライマーセット(塩基配列(5’-3’))
FIP(配列番号2) CCATCCATGTCTCTGCCTCACCTTTTGCTCTTTTTTTAATCCAC
BIP(配列番号3) TACCCCCCCTCTGTCTACTCTGCGTTACATCCATTACATTC
F3(配列番号4) AGCTGGCTCCATTAGTTTG
B3(配列番号5) AAGAGATCCGTTGTTGAAAC
【0041】
すなわち、本発明に係るプライマーセットは、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅するプライマーセットであって、以下の(a)、(b)、(c)及び(d)のプライマーを含むプライマーセットである;
(a)配列番号2の配列により示されるポリヌクレオチドからなるFIPプライマー、
(b)配列番号3の配列により示されるポリヌクレオチドからなるBIPプライマー、
(c)配列番号4の配列により示されるポリヌクレオチドからなるF3プライマー、
(d)配列番号5の配列により示されるポリヌクレオチドからなるB3プライマー。
【0042】
そしてそれ故、前記ポリヌクレオチドは、リゾクトニア・ソラニAG2-2IVのリボソームDNAのITS領域及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBのリボソームDNAのITS領域に由来する。
【0043】
ここで、本発明において、「リゾクトニア・ソラニAG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB由来の核酸を特異的に増幅する」とは、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB由来の核酸については、通常の条件で核酸増幅反応を行ったときに増幅が可能であるが、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIB以外の他の菌体由来の核酸については実質的に増幅しない(増幅したとしても検出限界以下である)ことを意味する。実際のところ、本発明に係るプライマーセットは、リゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBとは異なるAGに属するリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG1-1由来の核酸及びリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG4由来の核酸を増幅しない。
【0044】
また、本発明に係るプライマーセットは、テンサイ黒根病の原因菌であるアファノミセス・コクリオイデス(Aphanomyces cochlioides)由来の核酸を増幅しない。このことは、テンサイ根腐病と原因菌の種類が全く異なるにもかかわらず、病徴のみから判別することが困難なテンサイ黒根病と、テンサイ根腐病を判別することができることを示している。
【0045】
(3)核酸の増幅
LAMP法によるDNAの増幅反応においては、検体から抽出された核酸、及びプライマーセット、ならびにDNA増幅試薬として、核酸合成の基質となる4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素などのDNAポリメラーゼと、酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、補助因子としての塩類(マグネシウム塩またはマンガン塩等)、及び酵素や鋳型を安定化する保護剤を、等温で一定時間静置すればよい。
【0046】
酵素活性に適した温度は、60~70℃、好ましくは63~65℃にてDNAの増幅反応を行う。反応時間は、15分以上であればDNAの増幅を検出することができるが、好ましくは30分~120分、より好ましくは60~90分の範囲に設定することができる。
【0047】
核酸合成で使用する酵素は、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、例えば、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントなどを挙げることができ、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)を好適な酵素として挙げることができる。また、上記DNA増幅試薬は、等温核酸増幅法用キットとして市販されており、例えば、Loopamp(登録商標)DNA増幅試薬キット(栄研化学株式会社製)、LAMP法用DNA増幅試薬セット-動物種・植物病検査専用A-(ニッポンジーン)などを使用することができる。
【0048】
DNA増幅するための反応液は以下の組成が一般的に用いられる。
Tris-HCl(pH7~9) 10mM~25mM
KCl 5mM~15mM
MgSO4 5mM~40mM
界面活性剤 0.1%~0.4%
ベタイン 0.5~1M
dNTPs 各1mM~1.5mM
鎖置換型核酸伸長酵素 0.2~0.6U/μL
【0049】
(4)増幅産物の有無の確認
<病原菌の検出>
核酸増幅反応後の溶液において増幅されたDNAの存在を確認する。被験試料中にリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBが含まれている場合、核酸増幅反応によりリボソームDNAのITS領域における標的領域上のDNAが増幅される。逆に、被験試料中にリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBが含まれていなければ、核酸増幅反応によって増幅されるDNAはない。
【0050】
核酸増幅反応により増幅されたDNAの有無の判定には公知の技術が適用できる。例えば、目視による判定方法として、核酸合成の副産物であるピロリン酸マグネシウムにより生成される濁度の肉眼での確認や、反応液にあらかじめHNB試薬やマラカイトグリーンを添加すること、目視検出試薬があらかじめ添加されたDNA増幅試薬キットを用いたLAMP反応による該反応液の変色によりDNAの増幅の判定を容易にする方法を挙げることができる。当該DNA増幅試薬キットとして、例えば、WarmStart(登録商標) Colorimetric LAMP 2X Master Mix(New England Biolabs社製)などを挙げることができる。増幅されたDNAの有無の判定方法として他に、リアルタイム濁度測定装置(例えば、栄研化学株式会社製のLoopampEXIA)で光学的に確認する方法や、Loopamp(登録商標)蛍光・目視検出試薬(栄研化学株式会社製)などの蛍光インターカレーターを添加して増幅反応させた液をUV照射して、核酸の増幅を示す発光を目視により検出する方法を挙げることができる。
【0051】
さらに、当該増幅産物の有無の判断は、本発明に係るプライマーセットの代わりに水を加えた陰性対照(ネガティブコントロール)との対比で行うことも好ましい。陰性対照を用いることにより、偽陽性に基づく判断を防止することができる。また、本発明のプライマーセットによってLAMP反応が正常に進行する系となっていることを確認するために陽性対照(ポジティブコントロール)を用いてもよい。
【0052】
次に、本発明に係るプライマーセットは、単独で、またはLAMPに必要な試薬とともに、テンサイ根腐病の検診キットとして提供することができる。LAMPに必要な試薬としては、例えば、上述した鎖置換型核酸伸長酵素、dNTP、Tris-HCl(pH7~9)などの緩衝液、滅菌水、反応生成物の検出に必要な試薬などを挙げることができる。
【0053】
さらに、本発明は、以上に説明した本発明に係るプライマーセットまたはテンサイ根腐病の検診キットの少なくともいずれかを用いて、LAMP法により、被験体から得られた検体においてリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IV及び/またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IIIBを検出する工程を含む、テンサイ根腐病の検診方法に関する。本発明に係る方法により、当該テンサイ根腐病の検診を可能とする。
【実施例0054】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕LAMPプライマーによるリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの検出
(1)プライマーセットの設計
GenBank(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)からリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)AG2-2IVのリボソームDNAにおけるITS領域の塩基配列データを収集し、Clustal Xを用いたアラインメント解析により、ITS領域上におけるリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBの特異的な塩基配列を抽出した。
【0056】
得られたアラインメント情報をもとに、配列番号1の33塩基から262塩基領域を用いLAMP法プライマーを設計した(
図1)。LAMP法プライマーを設計には、Primer Explorer V5(http://primerexplorer.jp/)を用いた。設計したLAMPプライマーを下掲の表1に示す。
【0057】
【0058】
(2)病原菌からのDNA抽出
リゾクトニア・ソラニAG2-2IVからのDNA抽出は、次の手順により行った。まず、腐敗したテンサイ根の黒変部と健全部の境界部を切り出し、水洗した後、1.5mLのチューブに入れ、ジルコニアビーズと振盪破砕機を用いて組織を破砕した。次に、破砕組織片からNucleospin(登録商標) DNA Plant(タカラバイオ株式会社製)を用いてからDNAを抽出した。
【0059】
(3)LAMP法による病原菌の検出
本実施例(2)で抽出したDNAは、10μg/mLの濃度に調製して鋳型DNA溶液とした。実施例1のLAMP法を用いた検出方法(以下、単に「LAMP法」という。)は、下掲の表2の通り、鋳型DNA溶液、WarmStart(登録商標) Colorimetric LAMP 2X Master Mix(New England Biolabs社製)、滅菌蒸留水、及び、上掲の表1に記載の各プライマーセットを混合して調整した反応液を63℃で60分間反応させることにより行った。一方、検体として、リゾクトニア・ソラニAG2-1、リゾクトニア・ソラニAG4、テンサイ黒根病の病原菌であるアファノミセス・コクリオイデスを用いた以外は、同様の工程及び条件により、DNAを増幅する反応を行った。さらに、ネガティブコントロールとして、当該鋳型DNA溶液に代えて滅菌蒸留水を添加したものを用いた。
【0060】
【0061】
(4)DNA増幅の確認
病原菌のDNAの増幅評価は、目視により行った。その結果を
図2に示す。
図2に示す通り、リゾクトニア・ソラニAG2-2IVから抽出したDNAの反応液では、赤色から黄色に変色(黄色に呈色)したのに対し(
図2の(b)すべて及び(c)5,6,7)、ネガティブコントロール(
図2の(a)1及び(c)1)、リゾクトニア・ソラニAG2-1(
図2の(a)2及び(c)2)、リゾクトニア・ソラニAG4(
図2の(a)3及び(c)3)、ならびに、アファノミセス・コクリオイデス(
図2の(c)4)では、反応液の色調の変化がなく赤色であった(赤色に呈色)。これより、リゾクトニア・ソラニAG2-2IVから抽出したDNAの反応液でのみ、DNAの増幅反応が生じたことが示された。
【0062】
〔実施例2〕設計したLAMPプライマーの特異性の検証
設計したLAMPプライマーについて、以下の表3に示す各種のリゾクトニア・ソラニを24菌体、テンサイ黒根病の病原菌であるアファノミセス・コクリオイデスを7菌体、その近縁種3菌体を供して、実施例1(3)の条件でLAMP反応を行った。その結果を下掲の表3に示す。
【0063】
【0064】
上掲の表3に示すように、テンサイ根腐病の病原菌であるリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを特異的に検出した。一方で、他のAGのリゾクトニア・ソラニAG1の核酸、リゾクトニア・ソラニAG2-1の核酸、リゾクトニア・ソラニAG3の核酸、リゾクトニア・ソラニAG4の核酸、及び、リゾクトニア・ソラニAG5の核酸の増幅反応は起こらなかった。さらに、テンサイ黒根病の病原菌であるアファノミセス・コクリオイデス及びその近縁種の核酸の増幅反応は起こらなかった。このことから、設計したLAMPプライマーは、リゾクトニア・ソラニのうち、テンサイ根腐病の病原菌となるリゾクトニア・ソラニAG2-2IV及びリゾクトニア・ソラニAG2-2IIIBを特異的に検出し、さらにテンサイ黒根病の病原菌であるアファノミセス・コクリオイデスを検出しないことから、当該設計したLAMPプライマーを用いて、テンサイ根腐病とテンサイ黒根病の判別が可能であることが確認された。
【0065】
〔実施例3〕腐敗テンサイ根を使用した従来の検出方法(テンサイ根腐菌用培地による培養物の検鏡による検出法)との検出感度の比較
腐敗テンサイ根35個体を使用して、テンサイ根腐菌用培地を用いた検出方法(以下、「従来法」という。)と、実施例1のLAMP法を用いた検出方法(以下、単に「LAMP法」という。)との検出感度を比較した。
【0066】
従来法は、次の手順より行った。腐敗したテンサイ根の黒変部と健全部の境界部分を切り出し、流水と滅菌水で洗浄した。滅菌ろ紙を用いて組織片の水分を十分に取り除いた後、素寒天培地に乳酸を添加した根腐病菌用培地に置床した。4~7日後に菌叢が生えた培地の培養物をPDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)に移して培養後、検鏡して同定した。さらに、テンサイ黒根病の検出方法に関する特願2022-023335に記載のアファノミセス選択分離培地を用いた従来の検出方法及びLAMP法による検出方法より、同じ腐敗テンサイ根35個体を被験体として病原菌の同定を行った。両病原菌の検出における従来法とLAMP法による結果を下掲の表4に示す。
【0067】
【0068】
上掲の表4に示すように、テンサイ根腐病の検出における従来法では、35個体中14個体がテンサイ根腐病と判定された。一方、テンサイ根腐病の検出におけるLAMP法では、35個体中21個体がテンサイ根腐病と判定された。テンサイ根腐病の検出における従来法で陽性と判定された個体が、LAMP法で陰性判定となることはなかった。また、検診にかかる時間は、従来法では早くとも1週間以上を要していたのに対し、LAMP法では1~2日で完了した。さらに、テンサイ黒根病と判定された個体がテンサイ根腐病と判定されること及びテンサイ根腐病と判定された個体がテンサイ黒根病と判定されることはなかった。
【0069】
以上の結果から、腐敗症状を呈したテンサイ根からDNAを抽出し、LAMPプライマーを用いてLAMP法を行うことで、従来法と比較して精度よく、迅速にテンサイ黒根病とテンサイ根腐病の判別を行うことができると示唆された。