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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120641
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023598
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 郁夫
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB06
4C316AB08
4C316AB12
4C316FY01
4C316FY03
4C316FY04
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】被検眼の角膜の形状の影響を低減しつつ、簡素な構成で、角膜反射光を除去するための新たな技術を提供する。
【解決手段】眼科装置は、投射光学系と、受光光学系と、偏向部材とを含む。投射光学系は、被検眼の眼底に光を投射する。受光光学系は、被検眼からの戻り光を受光する。偏向部材は、眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、戻り光を偏向して受光光学系に導く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に光を投射する投射光学系と、
前記被検眼からの戻り光を受光する受光光学系と、
前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記戻り光を偏向して前記受光光学系に導く偏向部材と、
を含む、眼科装置。
【請求項2】
前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置な位置に配置可能な光スキャナを含み、
前記投射光学系は、前記光スキャナを介して、前記眼底に光を投射し、
前記受光光学系は、前記光スキャナを介して、前記戻り光を受光し、
前記偏向部材は、前記光スキャナと前記受光光学系との間の前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記光スキャナと前記偏向部材との間に配置された第1光集束部材を含み、
前記偏向部材は、前記第1光集束部材の後側焦点位置又はその近傍に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
凹面状の反射面を有し、前記光スキャナと前記被検眼との間に配置された凹面鏡を含み、
前記凹面鏡は、前記光スキャナにより偏向された光を前記眼底に導くと共に、前記被検眼からの前記戻り光を前記光スキャナに導く
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記光スキャナと前記凹面鏡との間に配置され、前記凹面鏡の反射面に対向するように配置された反射面を有する反射部材を含み、
前記反射部材は、前記光スキャナにより偏向された光を前記凹面鏡の反射面に導くと共に、前記凹面鏡の反射面からの前記戻り光を前記光スキャナに導く
ことを特徴とする請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記凹面鏡は、楕円面状の反射面を有する楕円面鏡であり、
前記光スキャナは、前記楕円面鏡が有する前記反射面の第1焦点位置又はその近傍に配置され、
前記被検眼の虹彩は、前記楕円面鏡が有する前記反射面の第2焦点位置又はその近傍に配置可能である
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記偏向部材と前記受光光学系との間に配置された黒点板を含む
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記偏向部材と前記黒点板との間に配置された第2光集束部材を含み、
前記偏向部材は、前記第2光集束部材の前側焦点位置又はその近傍に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記黒点板の角膜反射光除去サイズは、前記偏向部材の偏向面のサイズより大きい
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記偏向面のサイズは変更可能に構成される
ことを特徴とする請求項9に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記角膜反射光除去サイズは変更可能に構成される
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記角膜反射光除去サイズは、前記偏向面のサイズに対応して変更される
ことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患のスクリーニングなどを行うための眼科装置には、簡便に広い視野で被検眼の眼底などの観察や撮影が可能なものが求められている。このような眼科装置として、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)が知られている。SLOは、光で眼底をスキャンし、その戻り光を受光デバイスで検出することにより眼底の画像を形成することが可能である。
【0003】
このようなSLOでは、形成された眼底画像に眼底からの戻り光以外のノイズ光に起因したアーチファクトが出現する場合があることが知られている。ノイズ光には、角膜反射光や、対物レンズのレンズ面による反射光などがある。
【0004】
そこで、眼底からの戻り光に含まれるノイズ光を除去する手法が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、穴あきミラーに形成された穴部に角膜反射光を結像させることで、眼底からの戻り光から角膜反射光の大部分を除く手法が開示されている。例えば、特許文献2には、受光光学系において眼底と光学的に共役な位置にピンホールを設け、対物レンズのレンズ面による不要な反射光がピンホールを通過することを防止する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-072027号公報
【特許文献2】特開2021-153890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被検眼の瞳孔を通じて眼底に照射される光は、角膜によって散乱(反射を含む)される。角膜の形状は、被検眼によって異なる。これは、角膜における光の散乱状態が被検眼によって異なることを意味する。特許文献1及び特許文献2に開示された手法では、角膜の形状の差異が考慮されていないため、被検眼によっては、眼底からの戻り光に含まれる角膜反射光を十分に除去することができなかったり、角膜反射光と共に眼底からの反射光の一部を除去してしまったりする場合がある。このように、従来の手法では、被検眼の角膜の形状の影響を受けるという問題がある。
【0008】
従って、被検眼の角膜の形状の影響を低減又は削減しつつ、簡素な構成で、ノイズ光(特に、角膜反射光)を除去することが可能な技術が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、被検眼の角膜の形状の影響を低減しつつ、簡素な構成で、角膜反射光を除去するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の第1の態様は、被検眼の眼底に光を投射する投射光学系と、前記被検眼からの戻り光を受光する受光光学系と、前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能であり、前記戻り光を偏向して前記受光光学系に導く偏向部材と、を含む、眼科装置である。
実施形態の第2態様は、第1態様において、前記被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置な位置に配置可能な光スキャナを含み、前記投射光学系は、前記光スキャナを介して、前記眼底に光を投射し、前記受光光学系は、前記光スキャナを介して、前記戻り光を受光し、前記偏向部材は、前記光スキャナと前記受光光学系との間の前記眼底と光学的に略共役な位置に配置可能である。
実施形態の第3態様は、第2態様において、前記光スキャナと前記偏向部材との間に配置された第1光集束部材を含み、前記偏向部材は、前記第1光集束部材の後側焦点位置又はその近傍に配置されている。
実施形態の第4態様は、第2態様又は第3態様において、凹面状の反射面を有し、前記光スキャナと前記被検眼との間に配置された凹面鏡を含み、前記凹面鏡は、前記光スキャナにより偏向された光を前記眼底に導くと共に、前記被検眼からの前記戻り光を前記光スキャナに導く。
実施形態の第5態様は、第4態様において、前記光スキャナと前記凹面鏡との間に配置され、前記凹面鏡の反射面に対向するように配置された反射面を有する反射部材を含み、前記反射部材は、前記光スキャナにより偏向された光を前記凹面鏡の反射面に導くと共に、前記凹面鏡の反射面からの前記戻り光を前記光スキャナに導く。
実施形態の第6態様では、第4態様又は第5態様において、前記凹面鏡は、楕円面状の反射面を有する楕円面鏡であり、前記光スキャナは、前記楕円面鏡が有する前記反射面の第1焦点位置又はその近傍に配置され、前記被検眼の虹彩は、前記楕円面鏡が有する前記反射面の第2焦点位置又はその近傍に配置可能である。
実施形態の第7態様は、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、前記偏向部材と前記受光光学系との間に配置された黒点板を含む。
実施形態の第8態様は、第7態様において、前記偏向部材と前記黒点板との間に配置された第2光集束部材を含み、前記偏向部材は、前記第2光集束部材の前側焦点位置又はその近傍に配置されている。
実施形態の第9態様では、第7態様又は第8態様において、前記黒点板の角膜反射光除去サイズは、前記偏向部材の偏向面のサイズより大きい。
実施形態の第10態様では、第9態様において、前記偏向面のサイズは変更可能に構成される。
実施形態の第11態様では、第9態様又は第10態様において、前記角膜反射光除去サイズは変更可能に構成される。
実施形態の第12態様では、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、前記角膜反射光除去サイズは、前記偏向面のサイズに対応して変更される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検眼の角膜の形状の影響を低減しつつ、簡素な構成で、角膜反射光を除去するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の具体的な構成の一例を表す概略図である。
図3】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の説明図である。
図4】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の説明図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の説明図である。
図6】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の説明図である。
図7】実施形態に係る眼科装置の制御系の構成の一例を表す機能ブロック図である。
図8】実施形態の変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0014】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼に光を投射し、ノイズ光を低減又は削減しつつ被検眼からの戻り光を受光するように構成される。このとき、被検眼からの戻り光のうちノイズ光(特に、角膜反射光)が除去され、眼底反射光を信号光とするS/N比(Signal-to-Noise Ratio)が向上した戻り光を受光するように構成される。眼科装置は、眼底反射光のS/N比が向上した戻り光の受光結果を用いて被検眼の画像を形成することが可能である。いくつかの実施形態に係る眼科装置は、更に、光スキャナを含み、光スキャナにより光を偏向して被検眼に投射し、上記のように戻り光を受光する走査型レーザー検眼鏡(SLO)である。
【0015】
この明細書では、SLOによって取得される画像をSLO画像と総称することがある。また、SLO画像を形成するための計測動作をSLO計測と呼ぶことがある。
【0016】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、眼科撮影装置と、眼科測定装置と、眼科治療装置とのうちのいずれか1つ以上を更に含む。眼科装置に含まれる眼科撮影装置の例として、眼底カメラ、スリットランプ検眼鏡、及び手術用顕微鏡のいずれか1つ以上がある。また、眼科装置に含まれる眼科測定装置の例として、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、視野計、及びマイクロペリメータのいずれか1つ以上がある。また、眼科装置に含まれる眼科治療装置の例として、レーザー治療装置、手術装置、手術用顕微鏡のいずれか1つ以上がある。
【0017】
以下の実施形態において、被検眼の眼底と光学的に略共役な位置を「眼底共役位置」と表記する場合がある。この場合、「眼底共役位置」は、眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。同様に、被検眼の虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置を「虹彩共役位置」(瞳孔共役位置)と表記する場合がある。この場合、「虹彩共役位置」は、虹彩と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。
【0018】
図1に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。
【0019】
実施形態に係る眼科装置1は、投射光学系10と、受光光学系20と、偏向部材50とを含む。
【0020】
投射光学系10は、被検眼Eの瞳孔を通じて眼底Efに光を投射する。投射光学系10は、光源と、投影レンズとを含み、所定の波長領域を有する光、又は中心波長が異なる2以上の波長領域のいずれか1つを有する光を被検眼Eに投射することが可能である。いくつかの実施形態では、投射光学系10は、2以上の波長領域を有する光を合成することにより得られた合成光を被検眼Eに投射する。いくつかの実施形態では、投射光学系10は、2以上の波長領域のいずれか1つを順次に選択して、選択された波長領域を有する光を順次に被検眼Eに投射する。
【0021】
受光光学系20は、眼底Efからの戻り光を受光する。受光光学系20は、結像レンズと、受光素子とを含み、投射光学系10により投射された光の波長領域に対応した波長領域を有する戻り光を受光することが可能である。いくつかの実施形態では、受光光学系20は、光の検出に有効な受光感度を有する波長領域が異なる2以上の受光素子を含み、各受光素子が、波長領域ごとに波長分離された戻り光を受光するように構成される。いくつかの実施形態では、受光光学系20は、2以上の波長領域を有する戻り光を単一の受光素子で順次に、又は同時に受光するように構成される。
【0022】
偏向部材50は、眼底Efからの戻り光を偏向して受光光学系20に導く。偏向部材50は、眼底Efからの戻り光の光路上における眼底Efと光学的に略共役な位置(眼底共役位置)Pに配置可能である。偏向部材50の例として、反射ミラー(平面ミラー)などがある。
【0023】
偏向部材50により被検眼Eからの戻り光の光路の光軸を任意の方向に偏向することができる。それにより、後段の光学系の配置の自由度を向上させ、眼科装置1の光学系の構成の小型化を図ることが可能になる。
【0024】
また、偏向部材50により被検眼Eからの戻り光のうち眼底Efからの反射光(眼底反射光)以外のノイズ光を除去しつつ眼底Efからの反射光の全部を受光光学系20に導くことができる。それにより、被検眼Eの角膜の形状の影響を低減しつつ眼底反射光のS/N比が向上した戻り光を受光光学系20に導くことが可能になる。
【0025】
更に、偏向部材50における戻り光の偏向面のサイズを眼底反射光のスポットサイズに合わせることができる。それにより、偏向面のサイズを小さくすることが可能になる。例えば、偏向部材50は、偏向面の径のサイズが小さい小径丸ミラーであってよい。
【0026】
この実施形態では、眼科装置1は、投射光学系10の光路と受光光学系20の光路とを光学的に結合する光路結合部材30を含む。いくつかの実施形態では、光路結合部材30は、投射光学系10と受光光学系20との双方の光軸が略一致するように同軸に結合する。光路結合部材30の例として、ビームスプリッタ、クイックリターンミラーなどがある。ビームスプリッタの例として、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)などがある。
【0027】
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、更に、偏向部材50と受光光学系20との間に配置された黒点板60を含む。黒点板60は、偏向部材50により受光光学系20に向けて偏向された光の光路の光軸に相当する位置を含む所定の領域を通過する光を遮断したり、当該所定の領域を通過する光を光軸と異なる方向に反射したりするように構成される。これにより、被検眼Eからの戻り光のうち偏向部材50により偏向された角膜反射光(偏向部材50により除去されなかった角膜反射光)を黒点板60により除去することができる。
【0028】
以上のような構成を有する眼科装置1では、投射光学系10からの光は、光路結合部材30により被検眼Eに向けて反射され、瞳孔を通じて眼底Efに投射される。眼底Efからの反射光(眼底反射光)及び角膜反射光等のノイズ光を含む被検眼Eからの戻り光は、光路結合部材30を透過し、偏向部材50により偏向される。このとき、被検眼Eからの戻り光のうち眼底反射光の全部が受光光学系20に向けて偏向され、受光光学系20に導かれる被検眼Eからの戻り光から角膜反射光の一部(ノイズ光の一部)が除去される。偏向部材50により偏向された戻り光は、黒点板60を経由して、受光光学系20に導かれる。このとき、偏向部材50により偏向された角膜反射光(偏向部材50により除去されなかった角膜反射光)が黒点板60により除去される。受光光学系20は、眼底反射光のS/N比が向上した戻り光を検出する。
【0029】
従って、被検眼Eの角膜の形状の影響を低減しつつ、簡素な構成で、角膜反射光を除去することが可能になる。
【0030】
以下、実施形態に係る眼科装置1の具体的な構成例について説明する。
【0031】
以下では、眼科装置1が、光スキャナと、楕円面状の反射面を有する楕円面鏡とを備え、広角の眼底画像を取得可能な構成を有する場合を例に説明するが、実施形態に係る構成は、これに限定されるものではない。例えば、眼科装置1は、楕円面鏡に代えて、凹面状の反射面を有する凹面鏡、又は自由曲面状の反射面を有する自由曲面鏡を備えていてもよい。
【0032】
図2図6に、実施形態に係る眼科装置1の光学系の具体的な構成例を示す。図2図6において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図3図6において、図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図2図5、及び図6では、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置である眼底共役位置Pと、被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置である虹彩共役位置(瞳孔共役位置)Qとが図示されている。
【0033】
図2は、2色の擬似カラーの眼底画像を取得する場合の眼科装置1の光学系の構成例を表したものである。図2において、眼科装置1の光学系の光軸方向をz方向と表し、z方向に直交する垂直方向をy方向と表し、z方向に直交する水平方向をx方向と表す。なお、図2では、眼底Efから虹彩に向かう方向をz方向として表しているが、z方向は虹彩から眼底Efに向かう方向であってもよい。図3は、図2の平面ミラー71の説明図を表す。図4は、光スキャナ40の偏向面の位置と平面ミラー71の反射面の位置の関係を模式的に表したものである。図5は、図2に示す眼科装置1における眼底反射光の光路図を模式的に表したものである。図6は、図2に示す眼科装置1における角膜反射光の光路図を模式的に表したものである。
【0034】
図2に示すように、眼科装置1は、投射光学系10と、受光光学系20と、光路結合部材30と、光スキャナ40と、偏向部材50と、楕円面鏡70と、平面ミラー71とを含む。
【0035】
更に、光路結合部材30と光スキャナ40との間の光路には、光スキャナ40の側から順に、1/4波長板(1/4λ板)31とコンデンサレンズ32とが配置される。光路結合部材30と偏向部材50との間の光路には、光路結合部材30の側から順に、反射ミラー33と、リレーレンズ51とが配置されている。偏向部材50と受光光学系20との間の光路には、偏向部材50の側から順に、リレーレンズ52と、黒点板60とが配置されている。
【0036】
(投射光学系10)
投射光学系10は、光源11A、11Bと、コリメーターレンズ12A、12Bと、ダイクロイックミラー13と、偏光板14とを含む。
【0037】
光源11Aは、赤色の波長領域を有する光を出力する赤色光源である。光源11Bは、緑色の波長領域を有する光を出力する緑色光源である。光源11A、11Bのそれぞれは、眼底共役位置Pに配置される。光源11A、11Bのそれぞれは、LD(Laser Diode)光源、LED(Light Emitting Diode)光源、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)光源、又はレーザードリブンライトソース(Laser Driven Light Source:LDLS)光源であってよい。
【0038】
コリメーターレンズ12Aは、光源11Aによって出力された光をコリメートして、ダイクロイックミラー13に導く。コリメーターレンズ12Bは、光源11Bによって出力された光をコリメートして、ダイクロイックミラー13に導く。
【0039】
ダイクロイックミラー13は、緑色の波長領域の光を透過し、赤色の波長領域の光を反射する。ダイクロイックミラー13は、コリメーターレンズ12Aによりコリメートされた光を偏光板14に向けて反射すると共に、コリメーターレンズ12Bによりコリメートされた光を透過して偏光板14に導く。
【0040】
偏光板14は、ダイクロイックミラー13から導かれてきた光の偏光成分のうち所定の第1偏光方向の偏光成分を有する光を通過させ、光路結合部材30に導く。ダイクロイックミラー13から導かれてきた光が偏光板14を通過することにより、光源11A、11Bのそれぞれが出力する光の偏光状態のばらつきを抑制することができる。
【0041】
なお、図2において、投射光学系10が、青色の波長領域を有する光を出力する青色光源と、青色光源によって出力された光をコリメートするコリメーターレンズとを更に含み、眼科装置1は、3色のカラーの眼底画像を取得可能に構成されていてもよい。
【0042】
図2に示す光路結合部材30は、例えば、PBS(偏光ビームスプリッタ)である。光路結合部材30は、上記のように、投射光学系10と受光光学系20とを同軸に結合する。光路結合部材30は、偏光板14を通過した第1偏光方向の偏光成分を有する光を反射してコンデンサレンズ32に導くと共に、被検眼Eからの戻り光のうち第1偏光方向に直交する第2偏光方向の偏光成分を有する光を透過させて反射ミラー33に導く。
【0043】
コンデンサレンズ(凸レンズ)32は、光路結合部材30により反射された投射光学系10からの光を集光し、例えば、図2に示す位置(平面ミラー71と光スキャナ40との間の眼底共役位置P)に結像(集束)させる。これにより、楕円面鏡70の反射面で集束光を反射させて、略平行光とされた光を被検眼Eに入射させることができる。その結果、眼科装置1の内部の光学系を、正視の眼を基準に配置させることができる。特に、光学系の調整時に既存の模型眼を用いることができ、低コスト化を図ることが可能になる。
【0044】
コンデンサレンズ32を透過した光は、1/4波長板31に導かれる。1/4波長板31は、偏光板14により偏向状態が直線偏光にされた光に位相差を与え、偏光状態を円偏光に変更する。これにより、被検眼E(眼球内の組織)の偏光特性に応じて変化し、且つ、平均化された偏光情報を含む戻り光を受光することができる。また、1/4波長板31は、被検眼Eからの戻り光の偏向状態を直線偏光に変更する。
【0045】
1/4波長板31を通過した光は、光スキャナ40に導かれる。
【0046】
(光スキャナ40)
光スキャナ40は、コンデンサレンズ32を透過した光を偏向する。光スキャナ40の偏向面は、虹彩共役位置Qに配置可能である。また、光スキャナ40の偏向面は、後述の楕円面鏡70が有する楕円面状の反射面の2つの焦点位置のうちの第1焦点位置又はその近傍に配置される。
【0047】
光スキャナ40は、例えば、1軸又は2軸の光スキャナである。
【0048】
光スキャナ40が1軸の光スキャナである場合、光スキャナ40は、所定のスキャン中心方向を含む所定の1次元の偏向角度範囲で偏向面の向きを1次元的に変更することで、眼底Efにおける光の投射位置を所定の軸方向(x方向又はy方向)に移動する。このような光スキャナ40の例として、ガルバノミラー、レゾナントミラー、ポリゴンミラー、又は1軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:以下、MEMS)ミラーなどがある。
【0049】
光スキャナ40が2軸の光スキャナである場合、光スキャナ40は、所定のスキャン中心方向を含む所定の2次元の偏向角度範囲で偏向面の向きを2次元的に変更することで、眼底Efにおける光の投射位置を所定の2軸方向(x方向及びy方向)に移動する。このような光スキャナ40の例として、1軸の第1光スキャナと1軸の第2光スキャナとを組み合わせたもの、2軸のMEMSミラーなどがある。第1光スキャナと第2光スキャナとを組み合わせる場合、例えば、第1光スキャナが眼底Efにおいてx方向に光の投射位置を変更させ、第2光スキャナが眼底Efにおいてy方向に光の投射位置を変更させる。第1光スキャナ及び第2光スキャナの一方は、ガルバノミラーなどの低速スキャナであり、他方は、レゾナントミラーやポリゴンミラー、又はMEMSミラーなどの高速スキャナであってよい。この場合、第1光スキャナ又は第2光スキャナの偏向面、第1光スキャナと第2光スキャナとの間の中間位置、又は2軸のMEMSミラーの偏向面が、後述の楕円面鏡70が有する楕円面状の反射面の2つの焦点位置のうちの第1焦点位置又はその近傍に配置される。このような光スキャナ40により実行されるスキャンモードの例として、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャン、リサジュースキャンなどがある。
【0050】
光スキャナ40は、投射光学系10からの光を偏向して平面ミラー71に導くと共に、平面ミラー71からの戻り光を受光光学系20に導く。すなわち、投射光学系10は、光スキャナ40を介して、眼底Efに光を投射し、受光光学系20は、光スキャナを介して、戻り光を受光するように構成される。
【0051】
(平面ミラー71)
平面ミラー71は、光スキャナ40と凹面鏡としての楕円面鏡70の間に配置され、楕円面鏡70の反射面に対向するように配置される反射面を有する。平面ミラー71は、光スキャナ40により偏向された光を楕円面鏡70の反射面に導くと共に、楕円面鏡70の反射面からの戻り光を光スキャナ40に導く。
【0052】
図3に示すように、楕円面鏡70が有する楕円面状の反射面(楕円面)に対して、光学的に共役な関係を有する2つの焦点位置F1、F2が規定される。実施形態では、楕円面鏡70の反射面に対向するように平面ミラー71に配置することで、焦点位置F1を焦点位置F1’に移動させることができる。焦点位置F1’もまた、焦点位置F1と同様に、焦点位置F2と光学的に共役な関係を有する。
【0053】
このように、光スキャナ40と楕円面鏡70との間に平面ミラー71を配置することにより、SLO計測時に配置される被検眼E(すなわち、焦点位置F2)の上方(y方向)にスペースを設けることができ、被検者の額などを配置するスペースを確保することができる。
【0054】
また、平面ミラー71の位置及び反射面の向きを調整することで、光スキャナ40の偏向面に対する平面ミラー71からの戻り光の入射角度(平面ミラー71に向けて偏向される光の出射角度)を調整することができる。
【0055】
図4に示すように、光スキャナ40は、所定のスキャン中心方向SCを中心に所定の偏向角度範囲で偏向面の向きを変更する。例えば、光スキャナ40の偏向面に対して平面ミラー71の位置を相対的に変更することで、スキャン中心方向SCと平面ミラー71からの戻り光の入射方向とのなす角度αが変化する。図4では、光スキャナ40に対して平面ミラー71の位置を相対的に変更した場合を示すが、光スキャナ40の偏向面の向きに対して平面ミラー71の反射面の向きを相対的に変更した場合でも同様である。
【0056】
一般的に、図4に示すスキャン中心方向SCを中心とする偏向角度範囲を狭くするほど、光スキャナ40の偏向動作の線形性、高速性、及び高確度は良好である。そこで、実施形態では、光スキャナ40の偏向面におけるスキャン中心方向SCと平面ミラー71からの戻り光の入射方向(平面ミラー71に向けて偏向される光の出射角度)とのなす角度αが45度以下(すなわち、角度αが鋭角)になるように平面ミラー71の反射面の位置及び向きの少なくとも一方が調整される。これにより、簡素な構成で、光スキャナ40の偏向動作の線形性、高速性、及び高確度を確保することができる。
【0057】
(楕円面鏡70)
楕円面鏡70は、上記のように、楕円面状の反射面を有する。楕円面鏡70は、凹面鏡の一例である。いくつかの実施形態では、眼科装置1は、楕円面鏡70に代えて、反射面が凹面状に形成された凹面鏡を含み、凹面鏡は、光スキャナ40により偏向された光を眼底Efに導くと共に、被検眼Eからの戻り光を光スキャナ40に導く。いくつかの実施形態では、凹面鏡の反射面は、自由曲面になるように形成される。
【0058】
楕円面鏡70が有する反射面により規定される焦点位置F1’又はその近傍には、光スキャナ40の偏向面が配置され、焦点位置F2又はその近傍には、被検眼Eの虹彩が配置可能である。
【0059】
楕円面鏡70は、平面ミラー71によって反射された、光スキャナ40により偏向された光を眼底Efに導くと共に、被検眼Eからの戻り光を平面ミラー71を介して光スキャナ40に導く。
【0060】
以上のように、投射光学系10から出力された光は、光路結合部材30、コンデンサレンズ32、1/4波長板31、光スキャナ40、平面ミラー71、及び楕円面鏡70を経由して、被検眼Eに投射される。被検眼Eに投射された光の大部分は、瞳孔を通じて、眼底Efに照射され、一部は、角膜で反射されたり、眼球内の組織で散乱されたりする。眼底Efからの反射光、及び角膜で反射された反射光を含むノイズ光は、被検眼Eからの戻り光として、楕円面鏡70、平面ミラー71、光スキャナ40、1/4波長板31、及びコンデンサレンズ32を経由して、光路結合部材30に導かれる。
【0061】
光路結合部材30に導かれてきた被検眼Eからの戻り光のうち、被検眼Eに投射された光の第1偏光方向に直交する第2偏光方向の偏光成分を有する光は、光路結合部材30を透過し、反射ミラー33に導かれる。
【0062】
反射ミラー33は、光路結合部材30を透過した戻り光をリレーレンズ51を介して偏向部材50に導く。
【0063】
(リレーレンズ51)
リレーレンズ(凸レンズ)51は、反射ミラー33(光スキャナ40)と偏向部材50との間に配置されている。偏向部材50は、リレーレンズ51の後側焦点位置又はその近傍に配置されている。これにより、楕円面鏡70の反射面により反射され、コンデンサレンズ32を透過した戻り光のうち眼底反射光を偏向部材50の偏向面に結像する(集束させる)ことができる。
【0064】
(偏向部材50)
偏向部材50(偏向面)は、光スキャナ40と受光光学系20との間の眼底共役位置Pに配置可能である。偏向部材50は、リレーレンズ51を透過した被検眼Eからの戻り光のうち眼底Efからの反射光(眼底反射光)の全部をリレーレンズ52(受光光学系20)に導く。それにより、角膜からの反射光を含むノイズ光の大部分を除去することができる。その結果、被検眼Eの角膜の形状の影響を低減しつつ眼底反射光のS/N比が向上した戻り光を受光光学系20に導くことが可能になる。
【0065】
(リレーレンズ52)
リレーレンズ(凸レンズ)52は、偏向部材50と黒点板60との間に配置されている。偏向部材50は、リレーレンズ52の前側焦点位置又はその近傍に配置されている。これにより、偏向部材50により偏光された戻り光(角膜反射光の一部を含む)を略平行光にすることができる。
【0066】
(黒点板60)
黒点板60は、リレーレンズ52と受光光学系20との間に配置されている。黒点板60は、偏向部材50と後述の受光光学系20の検出器との間の光路において、眼底反射光を含む戻り光の光束径が大きい位置に配置されることが望ましい。図2では、リレーレンズ52により戻り光が略平行光にされた光路上の位置に黒点板60が配置される。これにより、黒点板60により遮断される戻り光のうち、眼底反射光の大部分を通過させつつ(眼底反射光を除去する割合を小さくしつつ)、偏向部材50により偏向された角膜反射光(偏向部材50により除去されなかった角膜反射光)を除去することが可能になる。
【0067】
(受光光学系20)
受光光学系20は、検出器21A、21Bと、結像レンズ22A、22Bと、ビームスプリッタ23とを含む。
【0068】
検出器21Aは、光源11Aが出力する光の波長領域に対して検出に有効な受光感度を有する1以上の受光素子を含む。結像レンズ22Aは、ビームスプリッタ23と検出器21Aとの間に配置され、ビームスプリッタ23からの戻り光を検出器21Aの検出面に結像させる。
【0069】
検出器21Bは、光源11Bが出力する光の波長領域に対して検出に有効な受光感度を有する1以上の受光素子を含む。結像レンズ22Bは、ビームスプリッタ23と検出器21Bとの間に配置され、ビームスプリッタ23からの戻り光を検出器21Bの検出面に結像させる。
【0070】
検出器21A、21Bのそれぞれは、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode:APD)又は光電子増倍管(PhotoMultiplier Tube:PMT)であってよい。
【0071】
ビームスプリッタ23は、黒点板60を通過した戻り光を結像レンズ22A、22Bの双方に導く。いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ23は、戻り光のうち緑色の波長領域の光を透過し、赤色の波長領域の光を反射するダイクロイックミラーである。いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ23は、戻り光の一部分を反射し、残りの部分を透過するハーフミラーである。
【0072】
以上のような構成において、光路結合部材30を透過した戻り光は、反射ミラー33により反射され、リレーレンズ51により偏向部材50の偏向面に結像(集束)する。偏向部材50は、リレーレンズ51を透過した戻り光を偏向してすることで、戻り光のうち眼底Efからの反射光(眼底反射光)の全部をリレーレンズ52(受光光学系20)に導き、角膜反射光等のノイズ光の大部分がリレーレンズ52に導かれるのを抑制する。偏向部材50により偏向された戻り光は、リレーレンズ52により略平行光となり、黒点板60に導かれる。黒点板60は、戻り光が略平行光にされた光路上の位置において、戻り光のうち、眼底反射光の大部分を通過させつつ、偏向部材50により偏向された角膜反射光を更に除去する。
【0073】
黒点板60を通過した戻り光のうち、赤色の波長領域を有する戻り光はビームスプリッタ23により反射され、結像レンズ22Aにより検出器21Aの検出面に結像する。検出器21Aは、検出面に結像した戻り光を検出する。黒点板60を通過した戻り光のうち、緑色の波長領域を有する戻り光はビームスプリッタ23を透過し、結像レンズ22Bにより検出器21Bの検出面に結像する。検出器21Bは、検出面に結像した戻り光を検出する。
【0074】
すなわち、図5に示すように、被検眼Eからの戻り光のうち眼底反射光の全部は、偏向部材50の偏向面で反射され、リレーレンズ52により略平行光にされ、検出器21A、21Bにより受光される。一方、図6に示すように、被検眼Eからの戻り光のうち角膜反射光の大部分は、偏向部材50により偏向されることなく除去され、角膜反射光の残りの部分が黒点板60により遮断される。
【0075】
リレーレンズ51は、実施形態に係る「第1光集束部材」の一例である。リレーレンズ52は、実施形態に係る「第2光集束部材」の一例である。楕円面鏡70は、実施形態に係る「凹面鏡」の一例である。平面ミラー71は、実施形態に係る「反射部材」の一例である。焦点位置F1’(F1)は、実施形態に係る「第1焦点位置」の一例である。焦点位置F2は、実施形態に係る「第2焦点位置」の一例である。
【0076】
図7に、実施形態に係る眼科装置1の制御系の構成例を示す。図7において、図1図6と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0077】
眼科装置1の制御系は、制御部100を中心に構成される。制御部100は、眼科装置1の各部の制御を行う。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101の機能は、例えばプロセッサにより実現される。記憶部102には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、各種の光源制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、各種の検出器制御用プログラム、画像形成用プログラム、及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部101が動作することにより、制御部100は制御処理を実行する。
【0078】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0079】
(主制御部101)
主制御部101は、投射光学系10、受光光学系20、光スキャナ40、画像形成部200、操作部110、及び表示部120の各部を制御する
【0080】
投射光学系10に対する制御には、光源11A、11Bに対する制御などがある。光源11A、11Bに対する制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。例えば、投射光学系10に含まれる光源が出力する光の波長領域を変更可能な場合、主制御部101は、光源を制御して、出力する光の波長領域を変更することが可能である。
【0081】
受光光学系20に対する制御には、検出器21A、21Bに対する制御などがある。検出器21A、21Bに対する制御には、受光素子の露光調整、検出面における受光範囲の調整、ゲイン調整、検出レート調整などがある。例えば、受光光学系20に含まれる検出器が検出に有効な受光感度を有する光の波長領域を変更可能な場合、主制御部101は、検出器を制御して、検出に有効な受光感度を有する光の波長領域を変更することが可能である。
【0082】
光スキャナ40に対する制御には、眼底Efにおけるスキャン位置、スキャン範囲(スキャン開始位置、スキャン終了位置)、スキャン速度、スキャンモード、スキャン中心方向の制御などがある。
【0083】
また、主制御部101は、画像形成部200を制御することが可能である。
【0084】
(画像形成部200)
画像形成部200は、検出器21A、21Bから入力される検出信号と、制御部100から入力される画素位置信号とに基づいて、被検眼Eの眼底画像(SLO画像)の画像データを形成する。ここで、画素位置信号は、光スキャナ40に対する偏向制御信号に対応する。例えば、光スキャナ40によりスキャンされる眼底Efにおけるスキャン範囲内のスキャン位置を示す画素位置信号は、偏向制御信号に対応する。画像形成部200は、画素位置信号により特定される画素位置に対し、当該画素位置に対応したスキャン位置における戻り光の受光結果に対応した画素値を求めることで、スキャン範囲に対応した眼底画像を形成することができる。
【0085】
画像形成部200は、検出器21Aにより得られた検出信号と、制御部100からの画素位置信号とに基づいて、赤色成分の眼底画像(SLO画像)の画像データを形成する。また、画像形成部200は、検出器21Bにより得られた検出信号と、制御部100からの画素位置信号とに基づいて、緑色成分の眼底画像の画像データを形成する。画像形成部200は、赤色成分の眼底画像と緑色成分の眼底画像との位置合わせを行い、商法の眼底画像を合成することにより、赤色成分と緑色成分の2色の擬似カラーの眼底画像を形成することが可能である。
【0086】
画像形成部200により形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部102に保存される。
【0087】
例えば、画像形成部200の機能は、画像形成部200の機能を実現する画像形成プロセッサにより実現される。
【0088】
(記憶部102)
記憶部102は、各種のデータを記憶する。記憶部102に記憶されるデータとしては、例えば、眼底画像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
【0089】
また、記憶部102には、眼科装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0090】
(操作部110)
操作部110は、ユーザが眼科装置1を動作させるための情報、動作の指示などを入力するための入力デバイスを含む。例えば、操作部110は、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。主制御部101は、操作部110に対する操作内容を受け、操作内容に対応した制御信号を各部に出力することが可能である。
【0091】
(表示部120)
表示部120は、ユーザに対して眼科装置1が提供をする情報を表示する出力デバイスである。表示部120は、各種の情報を表示させる。例えば、表示部120は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを含み、主制御部101からの制御を受け、上記の情報を表示する。表示部120に表示される情報には、制御部100による制御結果に対応した情報、画像形成部200による演算結果に対応した情報(画像)、受光光学系20により取得された情報(画像)、操作部110を用いてユーザが入力した情報などがある。
【0092】
操作部110の少なくとも一部と表示部120の少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0093】
以上説明したように、実施形態によれば、簡素な構成で、投射光学系10からの光で眼底Efに設定されたスキャン範囲に対してSLO計測が実行され、被検眼Eからの戻り光のうち少なくとも角膜反射光が除去された眼底反射光を受光することができる。このとき、眼底共役位置に配置された偏向部材50で戻り光を偏向した後、黒点板60を用いて角膜反射光を除去することができるため、被検眼Eの角膜の形状の影響を低減しつつ、簡素な構成で、眼底反射光のS/N比を向上させた戻り光を受光することができる。
【0094】
<変形例>
実施形態に係る眼科装置の構成は、図1図7で説明した構成に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る眼科装置は、投射光学系が単一の光源を含み、受光光学系が単一の検出器を含んでもよい。
【0095】
図8に、実施形態の変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。図8において、図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0096】
実施形態の変形例に係る眼科装置1aの構成が、図2に示す眼科装置1の構成と異なる点は、投射光学系10に代えて投射光学系10aが設けられている点と、受光光学系20に代えて受光光学系20aが設けられている点である。
【0097】
投射光学系10aは、光源11Cと、コリメーターレンズ12Cと、偏光板14とを含む。
【0098】
光源11Cは、所定の波長領域を有する光を出力する光源である。光源11Cは、眼底共役位置Pに配置される。光源11Cは、光源11A、11Bと同様に、LD光源、LED光源、SLD光源、LDLS光源であってよい。コリメーターレンズ12Cは、光源11Cによって出力された光をコリメートして偏光板14に導く。
【0099】
受光光学系20aは、検出器21Cと、結像レンズ22Cとを含む。
【0100】
検出器21Cは、光源11Cが出力する光の波長領域に対して検出に有効な受光感度を有する1以上の受光素子を含む。結像レンズ22Cは、黒点板60と検出器21Cとの間に配置され、黒点板60を通過した戻り光を検出器21Cの検出面に結像させる。検出器21Cは、検出器21A、21Bと同様に、APD又はPMTであってよい。
【0101】
本変形例において、受光光学系20aは、受光光学系20と同様に、互いに異なる波長領域が異なる光の検出に有効な受光感度を有する2以上の検出器を含んでもよい。この場合、光源11Cが互いに中心波長が異なる2以上の波長領域を有する光を出力し、波長領域毎に波長分離された被検眼Eからの戻り光が導かれる受光光学系20aに含まれる2以上の検出器のそれぞれが、各波長領域を有する戻り光を受光するように構成される。
【0102】
本変形例において、投射光学系10aは、投射光学系10と同様に、互いに中心波長が異なる波長領域を有する光を出力する2以上の光源を含んでもよい。この場合、検出器21Cは、2以上の光源が出力する2以上の波長領域を有する戻り光の検出に有効な受光感度を有する1以上の受光素子を含むように構成される。
【0103】
いくつかの実施形態又はその変形例では、眼科装置1は、内部固視又は外部固視を含む。この場合、主制御部101は、手動又は自動で設定された固視位置に固視を誘導するように被検眼Eに対して固視標を呈示することが可能である。
【0104】
いくつかの実施形態又はその変形例では、眼科装置1は、合焦レンズを含む。例えば、合焦レンズは、光スキャナ40と偏向部材50との間の光路に配置される。この場合、主制御部101は、合焦レンズを制御することにより、被検眼Eの戻り光の焦点位置を変更することが可能である。この場合、眼底Efと偏向部材50とが光学的に略共役な関係になるように合焦レンズが移動される。
【0105】
いくつかの実施形態又はその変形例では、角膜反射光を遮断又は反射する黒点板60の角膜反射光除去サイズは、偏向部材50の偏向面のサイズより大きい。これにより、偏向部材50の偏向面のサイズを最小眼にしつつ、角膜反射光をほぼ完全に除去することが可能になる。
【0106】
いくつかの実施形態又はその変形例では、偏向部材50の偏向面のサイズは変更可能に構成される。例えば、主制御部101は、被検眼Eの屈折度数に応じて偏向部材50の偏向面のサイズを変更可能であってよい。例えば、主制御部101は、図1等に示す被検眼Eからの戻り光の光路に、偏向面のサイズが異なる複数の偏向部材を選択的に配置する。これにより、被検眼Eの屈折度数に応じて偏向部材50の偏向面のサイズを最適なサイズとすることで、被検眼Eからの戻り光のうち眼底反射光の全部を偏向する効果を維持しつつ光学系の小型化を図ることが可能になる。
【0107】
いくつかの実施形態又はその変形例では、角膜反射光を遮断又は反射する黒点板60の角膜反射光除去サイズは変更可能に構成される。例えば、主制御部101は、被検眼Eの屈折度数に応じて黒点板60の角膜反射光除去サイズを変更可能であってよい。例えば、主制御部101は、図1等に示す被検眼Eからの戻り光の光路に、角膜反射光除去サイズが異なる複数の黒点板を選択的に配置する。これにより、被検眼Eの屈折度数に応じて黒点板60の角膜反射光除去サイズを最適なサイズとすることで、被検眼Eからの戻り光のうち角膜反射光の全部を除去する効果を維持しつつ光学系の小型化を図ることが可能になる。
【0108】
いくつかの実施形態又はその変形例では、角膜反射光を遮断又は反射する黒点板60の角膜反射光除去サイズは、偏向部材50の偏向面のサイズに対応して変更される。例えば、主制御部101は、被検眼Eの屈折度数に応じて、黒点板60の角膜反射光除去サイズと偏向部材50の偏向面のサイズとを連動して変更する。
【0109】
[作用]
実施形態に係る眼科装置について説明する。
【0110】
いくつかの実施形態の第1態様は、投射光学系(10)と、受光光学系(20)と、偏向部材(50)とを含む眼科装置である。投射光学系は、被検眼(E)の眼底(Ef)に光を投射する。受光光学系は、被検眼からの戻り光を受光する。偏向部材は、眼底と光学的に略共役な位置(眼底共役位置P)に配置可能であり、戻り光を偏向して受光光学系に導く。
【0111】
このような態様によれば、投射光学系により被検眼の眼底に光を投射するように構成された眼科装置において、眼底と光学的に略共役な位置に配置された偏向部材により被検眼からの戻り光が受光光学系に向けて偏向される。それにより、角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去しつつ、眼底反射光のS/N比が向上した被検眼の戻り光を受光光学系に導くことが可能になる。従って、簡素な構成で、角膜反射光を含むノイズ光を除去することが可能になる。
【0112】
いくつかの実施形態の第2態様は、第1態様において、被検眼の虹彩と光学的に略共役な位置な位置(虹彩共役位置Q)に配置可能な光スキャナ(40)を含む。投射光学系は、光スキャナを介して、眼底に光を投射する。受光光学系は、光スキャナを介して、戻り光を受光する。偏向部材は、光スキャナと受光光学系との間の眼底と光学的に略共役な位置に配置可能である。
【0113】
このような態様によれば、光スキャナを用いて眼底をスキャンした場合に、角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去しつつ、眼底反射光のS/N比が向上した被検眼の戻り光を受光光学系に導くことが可能になる。
【0114】
いくつかの実施形態の第3態様は、第2態様において、光スキャナと偏向部材との間に配置された第1光集束部材(リレーレンズ51)を含む。偏向部材は、第1光集束部材の後側焦点位置又はその近傍に配置されている。
【0115】
このような態様によれば、光スキャナで略平行光を偏向しつつ、偏向部材の偏向面に戻り光を結像(集束)させることが可能になり、偏向部材の偏向面のサイズを小さくすることが可能になる。
【0116】
いくつかの実施形態の第4態様は、第2態様又は第3態様において、凹面状の反射面を有し、光スキャナと被検眼との間に配置された凹面鏡(楕円面鏡70)を含む。凹面鏡は、光スキャナにより偏向された光を眼底に導くと共に、被検眼からの戻り光を光スキャナに導く。
【0117】
このような態様によれば、被検眼の眼底を広角にスキャンしつつ、角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去し、眼底反射光のS/N比が向上した被検眼の戻り光を受光光学系に導くことが可能になる。
【0118】
いくつかの実施形態の第5態様は、第4態様において、光スキャナと凹面鏡との間に配置され、凹面鏡の反射面に対向するように配置された反射面を有する反射部材(平面ミラー71)を含む。反射部材は、光スキャナにより偏向された光を凹面鏡の反射面に導くと共に、凹面鏡の反射面からの戻り光を光スキャナに導く。
【0119】
このような態様によれば、被検者の顔を配置するスペースを確保しつつ、角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去し、眼底反射光のS/N比が向上した被検眼の戻り光を受光光学系に導くことが可能になる。
【0120】
いくつかの実施形態の第6態様では、第4態様又は第5態様において、凹面鏡は、楕円面状の反射面を有する楕円面鏡(70)である。光スキャナは、楕円面鏡が有する反射面の第1焦点位置(焦点位置F1’)又はその近傍に配置される。被検眼の虹彩は、楕円面鏡が有する反射面の第2焦点位置(焦点位置F2)又はその近傍に配置可能である。
【0121】
このような態様によれば、楕円面鏡を用いて広角で被検眼の眼底を高精度に収差を抑えてスキャンしつつ、角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去し、眼底反射光のS/N比が向上した被検眼の戻り光を受光光学系に導くことが可能になる。
【0122】
いくつかの実施形態の第7態様は、第1態様~第6態様のいずれかにおいて、偏向部材と受光光学系との間に配置された黒点板(60)を含む。
【0123】
このような態様によれば、偏向部材により角膜反射光を含むノイズ光の大部分を除去した後、黒点板で角膜反射光の残りの成分を除去することが可能になり、眼底反射光のS/N比をより向上させることができる。
【0124】
いくつかの実施形態第8態様は、第7態様において、偏向部材と黒点板との間に配置された第2光集束部材(リレーレンズ52)を含む。偏向部材は、第2光集束部材の前側焦点位置又はその近傍に配置されている。
【0125】
このような態様によれば、第2光集束部材により戻り光の光束径が大きい位置で黒点板により眼底反射光を除去する割合を小さくしつつ角膜反射光をマスクすることができるので、眼底反射光のS/N比をより向上させることができる。
【0126】
いくつかの実施形態の第9態様では、第7態様又は第8態様において、黒点板の角膜反射光除去サイズは、偏向部材の偏向面のサイズより大きい。
【0127】
このような態様によれば、黒点板のサイズを最小限に抑えて角膜反射光を除去することができ、光学系の小型化を図ることができるようになる。
【0128】
いくつかの実施形態の第10態様では、第9態様において、偏向面のサイズは変更可能に構成される。
【0129】
このような態様によれば、被検眼の状態に応じて最適なサイズの偏向面を有する偏向部材を用いることで、眼底反射光の全部を偏向する効果を維持しつつ、光学系の小型化を図ることが可能になる。例えば、被検眼の屈折度数に応じて最適なサイズの偏向面を有する偏向部材を用いることが可能になる。
【0130】
いくつかの実施形態の第11態様では、第9態様又は第10態様において、角膜反射光除去サイズは変更可能に構成される。
【0131】
このような態様によれば、被検眼の状態に応じて最適なサイズの角膜反射光除去サイズを有する黒点板を用いることで、角膜反射光の全部を除去する効果を維持しつつ、光学系の小型化を図ることが可能になる。例えば、被検眼の屈折度数に応じて最適なサイズの角膜反射光除去サイズを有する黒点板を用いることが可能になる。
【0132】
いくつかの実施形態の第12態様では、第9態様~第11態様のいずれかにおいて、角膜反射光除去サイズは、偏向面のサイズに対応して変更される。
【0133】
このような態様によれば、被検眼の状態に応じて最適なサイズの偏向面を有する偏向部材と最適なサイズの角膜反射光除去サイズを有する黒点板とを用いることで、眼底反射光の全部を偏向し、且つ、角膜反射光の全部を除去する効果を維持しつつ、光学系の小型化を図ることが可能になる。例えば、被検眼の屈折度数に応じて最適なサイズの偏向面を有する偏向部材と最適なサイズの角膜反射光除去サイズを有する黒点板とを用いることが可能になる。
【0134】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1、1a 眼科装置
10、10a 投射光学系
20、20a 受光光学系
30 光路結合部材
40 光スキャナ
50 偏向部材
51、52 リレーレンズ
60 黒点板
70 楕円面鏡
71 平面ミラー
100 制御部
101 主制御部
102 記憶部
E 被検眼
Ef 眼底
F1、F1’、F2 焦点位置
P 眼底共役位置
Q 虹彩共役位置
図1
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図3
図4
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図6
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図8