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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120645
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230823BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230823BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230823BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20230823BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/16 F
B60W30/10
B60W60/00
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023603
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 光二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】福庭 一志
(72)【発明者】
【氏名】松岡 悟
(72)【発明者】
【氏名】舟久保 晃
(72)【発明者】
【氏名】関口 誠
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA70
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC42Z
3D241DD04Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】 限られた時間内で車両を路肩スペースに停車させるに際して、複数の停止先候補から好適な路肩スペースを選択することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】 車両制御装置は、路肩スペースを検知する車両外部検知手段1と、車両の走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段30と、走行可能距離に基づいて停止先候補となる路肩スペースの総候補数を算出する総候補数算出手段31と、総候補数からカットオフ閾値を算出するカットオフ閾値算出手段32と、路肩スペースの評価値を算出する評価値算出手段33と、カットオフ閾値以下の候補番号の路肩スペースの評価値の最大値を基準評価値に設定する基準評価値設定手段34と、基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースを停止位置に選択する停止位置選択手段35を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を路肩スペースに路肩停止させるための制御を行う車両制御装置において、
停止先の候補となる路肩スペースを検知する路肩スペース検知手段と、
前記路肩スペース手段により検出された前記路肩スペースの評価値を算出する評価値算出手段と、
停止先の候補となる路肩スペースの総数として総候補数を算出する総候補数算出手段と、
前記総候補数の平方根、前記総候補数の平方根の小数点以下を切り捨てた整数、前記総候補数の平方根の小数点以下を切り上げた整数のいずれか1つの値をカットオフ閾値に設定するカットオフ閾値算出手段と、
前記路肩スペースに制御開始位置に近い順の通し番号である候補番号を付するとともに、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースの評価値の中で最大の評価値を基準評価値に設定する基準評価値算出手段と、
検知された路肩スペースの評価値を前記基準評価値と比較し、前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースを、停止先となる路肩スペースに選択する停止位置選択手段と
を備えた車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車速検出手段によって検出された車速と、路肩停止までの制限時間とに基づいて、前記車両の走行が許容される走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段とを備え、
前記総候補数算出手段は、前記走行可能距離に基づいて前記総候補数を算出する車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記総候補数算出手段は、前記車両の外部の地図情報及び/又は前記車両内部に記憶した地図情報を参照することにより、前記走行可能距離の範囲内に存在すると想定される路肩スペースの総数として前記総候補数を算出する車両制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記候補数算出手段は、前記走行可能距離を前記総候補数に設定し、
前記カットオフ閾値算出手段は、前記走行可能距離の平方根であるカットオフ距離を前記カットオフ閾値に設定し、
前記基準評価値算出手段及び前記停止位置算出手段は、制御開始以降の前記車両の走行距離を前記候補番号として、前記基準評価値の算出及び停止先の路肩スペースの選択を行う車両制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記停止位置選択手段は、所定の十分閾値以上の評価値を有する路肩スペースが発見された場合には、前記基準評価値算出手段により前記基準評価値が算出される以前であっても、前記十分閾値以上の評価値を有する路肩スペースを停止先として選択する車両制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記停止位置選択手段は、路肩スペースの評価値が所定の必要閾値未満である場合には、その路肩スペースの評価値が前記基準評価値以上であったとしても、停止先の路肩スペースとして選択しない車両制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記基準評価値算出手段は、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースの評価値に基づいて算出された基準評価値が、所定の必要閾値未満であるときには、前記必要閾値を基準評価値に設定する車両制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、
前記停止位置選択手段は、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースであっても、前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースがあれば、停止先の路肩スペースとして選択する車両制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、
前記停止位置選択手段は、前記基準評価値以上の評価値を有する複数の路肩スペースが同時に発見された場合には、最も大きな評価値を有する路肩スペースを、停止先の路肩スペースとして選択する車両制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、
前記停止位置選択手段は、前記基準評価値以上の評価値を有する複数の路肩スペースが同時に発見された場合には、前記車両に最も近い路肩スペースを、停止先の路肩スペースとして選択する車両制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記停止位置選択手段は、前記総候補数の路肩スペースの中に前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースが発見されなかった場合には、最後に検知された路肩スペースの評価値が所定の必要閾値以上であれば、前記最後に検知された路肩スペースを停止先に選択し、前記最後に検知された路肩スペースの評価値が所定の必要閾値未満であれば、走行車線上の適切な場所を停止先に選択する車両制御装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記評価値算出手段は、前記路肩スペースの長さ及び/又は幅に基づいて評価値を算出する車両制御装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の車両制御装置において、
前記車両の自動運転を制御する自動運転制御手段を備え、
前記自動運転制御手段は、前記停止位置選択手段により選択された停止先に停止するように前記車両を制御する車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の運転を制御する車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の自動運転制御においては、ドライバに異常(体調不良)が発生した場合等に、車両を道路の路肩スペースに停車させる制御を行うことがある。このような自動運転による路肩停止制御技術としては、例えば、特開2020-97315号公報(特許文献1)に、所定幅及び所定長さ以上の路肩スペースがある場合に、その路肩スペースに車両を停車させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-97315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライバ異常時対応システムにおいては、異常発生後、速やかに(例えば180秒以内という制限時間内に)、路肩停止を完了する必要がある。その一方で、停車先の路肩スペースは、できるだけ路肩停止への適合度(例えば安全度)の高いものであることが求められる。例えば、路肩スペースは、車両をスムーズに停車させることができ、停車後の救護も容易に行えるように、十分な広さを有することが望ましい。路肩停止制御は、このような条件の下で、次々と現れてくる複数の路肩スペースから、好適な路肩スペースを選択することになる。
【0005】
このような選択に際して、停止可能な停止先として最初に検出された路肩スペースが、十分な適合度を有するものであればよいが、停止可能ではあるが適合度が十分とまでは言えない場合もある。このような場合に、その路肩スペースへの停止を行うか、より適合度の高い停止先の探索を続けるかの判断を行う必要があるが、この判断は非常に難しい。
【0006】
本発明は、以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、限られた時間内で車両を路肩スペースに停車させるに際して、複数の停止先候補から好適な路肩スペースを選択することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、次のような解決方法を採択している。すなわち、請求項1に記載のように、車両を路肩スペースに路肩停止させるための制御を行う車両制御装置において、停止先の候補となる路肩スペースを検知する路肩スペース検知手段と、前記路肩スペース手段により検出された前記路肩スペースの評価値を算出する評価値算出手段と、停止先の候補となる路肩スペースの総数として総候補数を算出する総候補数算出手段と、前記総候補数の平方根、前記総候補数の平方根の小数点以下を切り捨てた整数、前記総候補数の平方根の小数点以下を切り上げた整数のいずれか1つの値をカットオフ閾値に設定するカットオフ閾値算出手段と、前記路肩スペースに制御開始位置に近い順の通し番号である候補番号を付するとともに、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースの評価値の中で最大の評価値を基準評価値に設定する基準評価値算出手段と、検知された路肩スペースの評価値を前記基準評価値と比較し、前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースを、停止先となる路肩スペースに選択する停止位置選択手段とを備えた。
【0008】
上記解決手法によれば、停止先候補となる複数の路肩スペースの中から、評価値(路肩停車に対する適合度)の期待値が最大となる路肩スペースを選択することができる。よって、限られた時間内で路肩スペースを探索する場合でも、評価値が比較的高い路肩スペースを遅滞なく選択して、好適な路肩停止を行うことができる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載の通りである。すなわち、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記車速検出手段によって検出された車速と、路肩停止までの制限時間とに基づいて、前記車両の走行が許容される走行可能距離を算出する走行可能距離算出手段とを備え、前記総候補数算出手段は、前記走行可能距離に基づいて前記総候補数を算出する(請求項2対応)。この場合、総候補数は、路肩停止までの制限時間を適切に反映したものとなり、的確に設定される。また、車両の車速が変化した場合には、総候補数は適切に調整される。
【0010】
前記総候補数算出手段は、前記車両の外部の地図情報及び/又は前記車両内部に記憶した地図情報を参照することにより、前記走行可能距離の範囲内に存在すると想定される路肩スペースの総数として前記総候補数を算出する(請求項3対応)。この場合、地図情報に基づいて、総候補数を精度良く算出することができる。
【0011】
前記候補数算出手段は、前記走行可能距離を前記総候補数に設定し、前記カットオフ閾値算出手段は、前記走行可能距離の平方根であるカットオフ距離を前記カットオフ閾値に設定し、前記基準評価値算出手段及び前記停止位置算出手段は、制御開始以降の前記車両の走行距離を前記候補番号として、前記基準評価値の算出及び停止先の路肩スペースの選択を行う(請求項4対応)。この場合、総候補数、カットオフ閾値、候補番号は、実数値となるので、位置毎に連続的に評価値が変化する場合等を的確に扱うことができる。
【0012】
前記停止位置選択手段は、所定の十分閾値以上の評価値を有する路肩スペースが発見された場合には、前記基準評価値算出手段により前記基準評価値が算出される以前であっても、前記十分閾値以上の評価値を有する路肩スペースを停止先として選択する(請求項5対応)。この場合、十分に評価値の高い路肩スペースに、いち早く停止することができるので、迅速な路肩停止を実現できる。
【0013】
前記停止位置選択手段は、路肩スペースの評価値が所定の必要閾値未満である場合には、その路肩スペースの評価値が前記基準評価値以上であったとしても、停止先の路肩スペースとして選択しない(請求項6対応)。この場合、安全度が低く不適切な路肩スペースが停止先に選択されてしまうことを回避できる。
【0014】
前記基準評価値算出手段は、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースの評価値に基づいて算出された基準評価値が、所定の必要閾値未満であるときには、前記必要閾値を基準評価値に設定する(請求項7対応)。この場合、必要閾値による評価が基準評価値に組み込まれるので、路肩スペースを選択するための処理を単純化できる。
【0015】
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、前記停止位置選択手段は、前記候補番号が前記カットオフ閾値以下である路肩スペースであっても、前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースがあれば、停止先の路肩スペースとして選択する(請求項8対応)。この場合、評価値の期待値が最大となる路肩スペースを、いち早く選択して、路肩停止することができる。
【0016】
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、前記停止位置選択手段は、前記基準評価値以上の評価値を有する複数の路肩スペースが同時に発見された場合には、最も大きな評価値を有する路肩スペースを、停止先の路肩スペースとして選択する(請求項9対応)。この場合、より安全な路肩スペースを選択して路肩停止を行うことができる。
【0017】
前記路肩スペース検知手段は、複数の路肩スペースを同時に検知可能であり、前記停止位置選択手段は、前記基準評価値以上の評価値を有する複数の路肩スペースが同時に発見された場合には、前記車両に最も近い路肩スペースを、停止先の路肩スペースとして選択する(請求項10対応)。この場合、十分に好適な路肩スペースを遅滞なく選択することができる。
【0018】
前記停止位置選択手段は、前記総候補数の路肩スペースの中に前記基準評価値以上の評価値を有する路肩スペースが発見されなかった場合には、最後に検知された路肩スペースの評価値が所定の必要閾値以上であれば、前記最後に検知された路肩スペースを停止先に選択し、前記最後に検知された路肩スペースの評価値が所定の必要閾値未満であれば、走行車線上の適切な場所を停止先に選択する(請求項11対応)。この場合、不適切な路肩スペースに無理に停止してしまうことが回避される。
【0019】
前記評価値算出手段は、前記路肩スペースの長さ及び/又は幅に基づいて評価値を算出する(請求項12対応)。この場合、路肩スペースの評価値(安全度)は、重要な要素である路肩スペースの長さと幅に基づいて適切に設定される。
【0020】
前記車両の自動運転を制御する自動運転制御手段を備え、前記自動運転制御手段は、前記停止位置選択手段により選択された停止先に停止するように前記車両を制御する(請求項13対応)。この場合、ドライバ異常対応時等の自動運転において、適切な路肩スペースへの迅速な路肩停止を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、限られた時間内で車両を路肩停止させる際に、停止先候補となる複数の路肩スペースの中から、評価値の期待値が最大となる路肩スペースを選択して、好適な路肩停止を遅滞なく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の概略を説明するための図。
図2】本発明の制御系の一例を示すブロック構成図。
図3】本発明の制御系の一例を示すブロック構成図。
図4】本発明の動作の一例を説明するための図
図5】本発明の制御の一例の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明の制御系の一例をブロック構成図で示す。図示されるように、制御系は、電子制御ユニット(ECU)Uを備えている。電子制御ユニットUは、例えばマイクロコンピュータから構成された制御装置である。制御系は、車両外部検知手段(路肩スペース検知手段)1、車両状態検出手段2、情報取得手段3、ドライバ状態検出手段4が備えており、電子制御ユニットUには、各手段1~4から、信号(情報)が入力されるようになっている。また、電子制御ユニットUからは、車両制御システム5に向けて制御信号が送信されるようになっている。
【0024】
車両外部検知手段1は、走行中の道路の状況や周辺の他車両等、自車両の外部状況を検出する手段であり、車外カメラ10とレーダ探知機11を備えている。本発明において、車両外部検知手段1は、路肩スペースを検知する路肩スペース検知手段として機能する。
【0025】
車両状態検出手段3は、自車両の走行状態を検出する手段であり、車速センサ12、加速度センサ13、ジャイロセンサ14、舵角センサ15、アクセルセンサ16、ブレーキセンサ17の各センサを備えている。
【0026】
情報取得手段3は、車両の走行に関連した各種情報を取得する手段であり、GPSからなる測位センサ18と、地図情報システム等から情報を取得する地図情報取得手段19を備えている。車室内状態監視手段4は、ドライバ等の車両室内の状況を監視する手段であり、ドライバの状態を撮影する車内カメラ20を備えている。
【0027】
車両制御システム5は、車両の運転を制御するための手段であり、ステアリンス制御手段21と、エンジン制御手段22と、ブレーキ制御システム23から構成されている。
【0028】
図2に示すように、電子制御ユニットUは、路肩停止制御を実行するための機能として、走行可能距離算出手段30、総候補数算出油断31、カットオフ閾値算出手段32、評価値検出手段33、基準評価値検出手段34、停止位置選択手段35、自動運転制御手段36を備えている。なお、これらの手段は、電子制御ユニットU内にプログラムとして備えられているものである。
【0029】
本発明の車両制御装置は、以上のような構成により、自車両(制御対象車両)を(例えば自動運転で)路肩に停止させるのに際して、順次現れる複数の停止先候補の中から好適な路肩スペースを選択して、その路肩スペースに車両を停止させる路肩停止制御を実行する。なお、本発明でいう路肩とは、走行車線の側方に存在するスペース一般を意味するもので、通常の意味でいう路肩(全路肩等)の他、非常駐車帯や待避所等も含み、その形態は特に限定されない。また、路肩スペースは、路肩上にある空きスペースであり、車両の停止先候補となり得るものであれば、任意の形態をとり得るものである。
【0030】
路肩停止制御は、例えば、車内カメラ20によりドライバに異常(体調不良等)が発生したことが検出され、車両が手動運転から自動運転に切り換えられたのを契機に開始される。制御が開始されると、まず走行可能距離算出手段30により走行可能距離lが算出される。走行可能距離lは、制御開始から車両の走行が許容される距離であり、詳しくは後述するように、路肩停止を完了すべき制限時間(走行可能時間)と自車両の車速とから算出される。
【0031】
路肩停止先の路肩スペースは、制御開始地点から走行可能距離lの道のりの区間(走行可能範囲L)内で探索される。したがって、この場合は、走行可能範囲Lが探索区間となる。ここで、探索区間とは、停止先の候補となる路肩スペースが探索される区間である。なお、ここでは、走行可能範囲Lを探索区間としているが、探索区間を走行可能範囲Lと異なる区間に設定することも可能である(例えば、図3の例を参照)。
【0032】
停止先候補となる路肩スペースは、車両外部検知手段(路肩スペース検知手段)1により検出され、評価値算出手段33により評価値Eが算出されていく。詳しく説明すると、評価値算出手段33は、車外カメラ10で撮影された画像の解析及びレーダ探知機11による検知に基づいて、順次接近してくる路肩スペースの寸法及び形状を検出し、検出結果に基づいて路肩スペースの評価値Eを算出する。なお、図4に示す例において後述するように、路肩スペースの検出及び評価値Eの算出は、複数の路肩スペースについて同時に行ってもよい。
【0033】
ここで、評価値Eは、路肩スペースの路肩停止に関する適合度(例えば安全度)の高さを表す指標であり、評価値Eが高いほど適合度が高くなるように設定される。本発明において、評価値Eの具体的な設定は、特に限定されないが、例えば、以下のように設定され得る。
【0034】
評価値Eを決定する要素としては、路肩スペースの寸法(広さ)及び形状等の様々なものが考えられるので、評価値Eは、複数の要素を組み合わせて設定し得る。例えば、評価値Eは、路肩幅に関する評価値Ewと路肩長さに関する評価値Elのペアにより設定され得る。なお、ペアの大小比較は、適切な規則を定義しておき、その規則にしたがって行う。
【0035】
路肩スペースは、その幅が広い方が、評価値Eが高く設定される。すなわち、幅が広い路肩スペースであれば、路肩停止した車両が車線側にはみ出してしまわず、路肩内に余裕をもって停止をすることができ、要救護者の救護のための車両への出入りもし易く、車両周辺における通行にも支障を生じてしまうことも少ないので、路肩停止に対する適合度(安全度)が高いと言える。
【0036】
また、路肩スペースは、長さがあった方が、アクセスし易く、また余裕をもって停車し易く有利であるし、自車両の後方に他の車両(例えば救急車)を停止させる意味でも有利であるので、路肩停止に対する適合度(安全度)が高いと言える。したがって、路肩スペースの長さが長いほど、評価値Eは高く設定される。
【0037】
また、路肩スペースの評価値Eは、路肩スペースの周囲の状況によっても変わってくる。例えば、路肩スペースがブラインドコーナーの直後にある場合は、他車両による衝突の危険性が高まり、安全性は低くなる。したがって、評価値Eには、そのスペース周囲の状況による調整を加えてもよい。
【0038】
このような評価値Eに基づく路肩スペースの選択(路肩停止可否の判断)を効果的に行うために、本発明では、基本報酬問題の知見を利用する。ここで、基本報酬問題とは、最適停止問題の一種(秘書問題のバリエーション)であり、順次現れる複数の候補から1つの候補を選択するに際し、最適ポリシーを採用することにより、選択した候補の報酬の期待値を最大化するものである。基本報酬問題の最適ポリシーにおいては、選択をスキップすべき候補数についての整数の閾値があるが、この閾値は、候補の総数をNとして、floor(N1/2)又はceil(N1/2)となることが知られている。ここで、floor(x)は床関数(小数点以下を切り下げる関数)であり、ceil(x)は天井関数(小数点以下を切り上げる関数)である。基本報酬問題自体は、周知のものであるので、これ以上の説明は省略する。
【0039】
基本報酬問題の知見を利用するため、総候補数算出手段31により、停止先候補となる路肩スペースの総候補数Nを算出する。総候補数Nは、走行可能距離L(探索区間)内に存在する(と推定される)路肩スペースの総数である。総候補数Nは、走行可能距離Lと、地図情報取得手段19から取得された地図情報等に基づいて算出される。総候補数Nの算出の詳細については、図4の例の説明において後述する。
【0040】
続いて、カットオフ閾値算出手段32により、総候補数Nに基づいてカットオフ閾値Cを算出する。ここで、カットオフ閾値Cは、基本報酬問題の最適ポリシー(カットオフ規則)における閾値に相当するものであり、期待値が最大となる候補を選択するためにスキップすべき候補数である。カットオフ閾値算出手段32は、基本報酬問題に準じて、総候補数Nの平方根の床関数、又は総候補数Nの平方根の天井関数、又は総候補数Nの平方根を、カットオフ閾値Cに設定する。すなわち、カットオフ閾値Cは、以下の式(1)~式(3)のいずれかで算出される。
C=floor(N1/2) …(1)
C=ceil(N1/2) …(2)
C=N1/2 …(3)
続いて、カットオフ閾値Cを用いて、路肩スペースの選択を行う。詳しく説明すると、検知された各路肩スペースに、制御開始位置に近い順に(検出時に自車両に近い順に)、路肩スペースを識別するための通し番号である候補番号を付与する。そして、検出された路肩スペースの候補番号がカットオフ閾値Cに達するまで、各候補番号の路肩スペースの評価値Eを検出していく。このようにして、候補番号Cの路肩スペースの評価値Eが検出されたならば、候補番号がカットオフ閾値C以下の路肩スペース同士で互いの評価値Eを比較し、その中で最大の評価値Emaxを基準評価値ETに設定する。
【0041】
基準評価値ETが算出された後は、停止位置選択手段35が、順次検出されていく路肩スペースの評価値Eを基準評価値ETと比較していく。そして、評価値Eが基準評価値ETに満たない路肩スペースには停止せず、通過の判断をしていく一方、評価値Eが基準評価値ET以上の路肩スペースが発見されたならば、その路肩スペースを停止先に選択する。これにより、選択された路肩スペースの評価値Eの期待値を最大化することができる。
【0042】
自動運転制御手段36は、停止位置選択手段35により選択された路肩スペースに停止させるべく、自車両の走行経路を生成し、車両状態検出手段2からの検出信号を参照しつつ、車両制御システム5を制御して、路肩停止を実行する。
【0043】
本発明の路肩停止制御では、上記のような制御に加えて、評価値Eについて設定された十分閾値ESと必要閾値ENに基づく制御が行われる。ここで、十分閾値とは、路肩スペースがそれ以上の評価値を有すれば、非常に安全な路肩停止を実行できると考えられ、直ちに路肩停止しても問題がないと判断される評価値の閾値である。十分閾値ES以上の評価値を有する路肩スペースが発見された場合には、いち早く、その路肩スペースへの停止を行うのが合理的であるので、基準評価値ETが算出される前であっても、直ちに、その路肩スペースへの停止を実行する。
【0044】
また、必要閾値とは、車両を安全に路肩停止させるために最低限必要となる評価値である。必要閾値ENに満たない評価値を有する路肩スペースは、安全な停止を行うことができないので、その路肩スペースへの停止は行わず、路肩スペースの探索を継続することになる。なお、制御を簡略化するためには、基準評価値ETの決定時に、最大評価値Emaxと必要閾値ENを比較して、大きい方を基準評価値ETに設定しておくことも可能である。
【0045】
このように、本発明の路肩停止制御は、必要閾値ENと十分閾値ESの間の評価値Eを有する停止先候補、つまり、路肩停止を極めて安全に行うことができる程度には達していない(すなわち、十分閾値ESには達していない)が、路肩停止が可能ではある(すなわち、必要閾値ENよりも大きい)中途半端な評価値Eを有する路肩スペースの中から、好適な路肩スペースを選択するための制御である。
【0046】
以下、図3以降の図面を参照して、本発明の車両制御装置による路肩制御の内容を更に詳細に説明する。図3には、路肩停止制御が実行される状況の一例を示す。図示されるように、本例は、全路肩Sを持つ片側1車線道路Rにおいて、路肩S上に多数の駐車車両VPが存在する状況で、駐車車両VPの間の路肩スペース(停止できる可能性のある空きスペース)への路肩停止を試みる場合のものである。すなわち、道路Rを自動運転走行中の自車両VEが、路肩スペースG1、G2、G3の横を順次通過して行く状況において、停止先の路肩スペースの評価値Eが好適なものとなるように、その路肩スペースに停止するか、さらに先に進んで他の路肩スペースに停止するかの判断を、逐次実行していく。
【0047】
本例においては、路肩スペースの評価値Eとして、単純に、路肩スペースの長さを採用する。すなわち、路肩スペースG1、G2、G3の評価値E1、E2、E3は、それぞれE1=5.5m、E2=5.0m、E3=6mである。
【0048】
また、本例では、路肩停止制御開始時における見通し範囲を探索区間とし、車両外部検知手段1により見通し範囲内に検出された路肩スペースG1、G2、G3の3個を路肩スペースの全候補とする。すなわち、総候補数Nは3である。
【0049】
なお、路肩スペースG1、G2、G3は、路肩停止制御開始時に発見されてはいるが、評価値Eの検出はできていないものとする。すなわち、本例は、探索区間内において、停止先候補となる路肩スペースG1~G3は全て発見されているが、各路肩スペースの評価値までは検出できていない場合の制御に関するものである。
【0050】
総候補数Nが算出されたならば、総候補数Nからカットオフ閾値Cを上記式(1)~式(3)のいずれかに基づいて算出する。本例では総候補数N=3であるから、上記式(1)から、カットオフ閾値C=1とする。
【0051】
車両制御装置は、自車両VEが路肩スペースG1、G2、G3の側方をG1→G2→G3の順で進んでいく間に、順番に、各路肩スペースの評価値Eを検出していく。すなわち、路肩スペースG1、G2、G3の候補番号は、ぞれぞれ、1、2、3である。なお、本例においては、同時に評価値Eを検出可能な路肩スペース数は1個だけであり、路肩スペースG1、G2、G3の評価値E1、E2、E3は、G1→G2→G3の順で、1個ずつ検出されていくものとする。
【0052】
このように、路肩スペースの評価値の検出が候補番号順に実行されていくが、路肩スペースの候補番号がカットオフ閾値Cに達して、基準評価値ETが設定されるまでは、所定の十分閾値ES以上の評価値を有する路肩スペースが発見されない限り、路肩スペースへの停止は行わず、評価値検出のみを実行する。図1の例の場合、カットオフ閾値C=1であり、候補番号が1を超えるまでは基準評価値ETの設定がなされないから、候補番号が1を超えない路肩スペースG1には停止せず、評価値E1の算出のみが実行される。
【0053】
候補番号がカットオフ閾値Cに達したならば、基準評価値ETを決定する。基準評価値ETには、カットオフ閾値C以下の候補番号の路肩スペースの評価値の中で最大の評価値Emaxが設定される。本例においては、カットオフ閾値C以下の候補番号の路肩スペースは、路肩スペースG1だけであるから、路肩スペースの評価値E1が基準評価値ETに設定される。本例では、基準評価値ET=5.5mとなる。
【0054】
路肩スペースの候補番号がカットオフ閾値Cを超えて、基準評価値ETが設定された後は、路肩スペースの評価値を基準評価値ETと順次比較していき、評価対象の路肩スペースの評価値が基準評価値ET以上となったところで、その評価値が所定の必要閾値ENに満たないものでない限り、その路肩スペースへの路肩停止を実行する。
【0055】
すなわち、カットオフ閾値C=1を超えた候補番号(2以上の候補番号)の路肩スペースG2、G3について、順次、評価値E2、E3を算出し、各路肩スペースへの路肩停止の可否を判定していく。具体的に、まず、候補番号2の路肩スペースG2の評価値E2を取得し、基準評価値ETと比較するが、E2=5.0mは、ET=5.5mより小さいので、路肩スペースG2への停車は行わず、次の候補番号(=3)の路肩スペースG3に向けて自車両VEを進行させる。
【0056】
続いて、路肩スペースG3の評価値検出及び判定に移行すると、路肩スペースG3の評価値E3=6.0mは、基準評価値ET=5.5m以上である。したがって、路肩スペースG3を路肩停止先に選択し、路肩スペースG3への停止を実行する(ただし、評価値E3は必要閾値EN以上であるとする)。これにより、評価値Eの期待値が最大となる路肩スペースG3を選択して路肩停止することができる。
【0057】
なお、本例において、各路肩スペースは、評価値検出及び路肩スペースへの停止の可否の判断終了時に、自車両から最短停止距離以上、離れた位置にあるものとしている。ここで、最短停止距離とは、安全に車両を路肩スペースに停止させるために必要とされる距離のことであり、例えば、自車両のウィンカー表示中の走行距離に実制動距離を加えた距離として算出される。自車両から見て最短停止距離より手前の位置には、そもそも車両を安全に停止させることができない。したがって、最短停止距離より手前にある路肩スペースは、路肩停止先の候補からは除外される。ただし、最短停止距離より手前にある路肩スペースであっても、基準評価値ETの決定のための路肩スペースとしては利用される。
【0058】
また、本例では、最後の候補番号3の路肩スペースCの評価値ECが基準評価値ET以上であったので、路肩スペースCへの停止が可能であったが、最後の候補番号の路肩スペースの評価値が基準評価値ET以上とならない場合もあり得る。このような場合には、例えば、最後の路肩スペースが停止不可能なもの(評価値Eが必要閾値EN未満)でない限り、最後の路肩スペースへの停止を実行することになる。
【0059】
以上、本発明の車両制御装置による路肩停止制御の一例について説明してきたが、上述したように、本例は、探索区間内の退避先候補となる路肩スペースは全て発見されているが、各路肩スペースの評価値が不明な場合の制御に相当する。以下の説明では、さらに複雑な状況で路肩停止制御を実現するための制御例について、詳細に述べる。
【0060】
図4には、本発明の車両制御装置による路肩停止制御の他の例を示す。図示されるように、本例においては、車両の走行可能範囲Lを探索区間としている。上述したように、走行可能範囲Lは、路肩停止を完了すべき制限時間中に車両が走行し得る区間である。
【0061】
ドライバ異常対応として路肩停止制御を行う場合には、車両のドライバの異常が検出され(例えば、ドライバが突っ伏した状態になったことを車内カメラ20で確認してから所定時間(例えば3秒)が経過し)、自動運転への切り換えがなされてから(路肩停止制御が開始してから)、所定の制限時間内(例えば、制御開始から180秒以内)に車両を停止させるように制御を行うことになる。このため、この制限時間の残り時間を走行可能時間Trに設定して、この走行可能時間Trに基づいて走行可能範囲Lを算出する。
【0062】
この場合、車両速度vが一定であれば、車両は、走行可能時間Trに自車両の車両速度vをかけた距離だけ走行できることになるが、車両速度vは、制御中に時々刻々変化する。例えば、ドライバ異常対応の路肩停止制御の場合、安全性確保のため、自車両の速度を徐々に低下させていく。したがって、走行可能距離Lの算出においては、走行可能時間Trとともに、車両速度vも時間の関数として扱う必要がある。
【0063】
具体的に、時刻tにおける走行可能時間Trと車両速度vの積を、その時点での残走行可能距離lrに設定する。そして、制御開始地点X0からその時点における自車両の位置Xegoまでの道のりの長さdeをを残走行可能距離lrに加えた距離lr+deを、走行可能距離lに設定する。
【0064】
このように、本制御では、時間の経過とともに逐次更新される走行可能距離lで決まる走行可能範囲L(制御開始位置X0から走行可能距離Lの道のりの終点Xtに至る区間)を、その時点における探索区間に設定して、その時点における総候補数N、カットオフ閾値Cを算出し、路肩スペースの選択を行う。すなわち、時々刻々変わっていく条件の下で、最適な路肩スペースの選択を行う。このため、選択される路肩スペースが、時間の経過によって変わってくることがある。例えば、車両速度vが低下した場合には、停止先としない予定だった候補を、停止先の路肩スペースに採用する場合もある。
【0065】
走行可能距離lが算出されたならば、算出された走行可能距離lに基づいて、路肩停止場所の候補となる路肩スペースの総候補数Nを算出する。総候補数Nの具体的な算出方法としては、以下のような手法が考えられる。
【0066】
走行可能距離L(探索区間)内における路肩スペースの存在状況が、地図情報から分かっている場合には、当該地図情報を参照して、走行可能距離L内の路肩スペース(例えば、非常駐車帯、離合スペース等)の数を数えて、総候補数Nとする。参照する地図情報としては、地図情報取得手段21により外部(地図情報システム)から取得した地図情報を利用してもよいし、自車両において普段から周辺情報を検知して記録することにより作成した自前の地図を利用してもよい。または、路車間通信や車車間通信により取得した情報に基づいて、路肩スペースの数を数えるようにしてもよい。
【0067】
なお、詳細な地図情報を参照できる場合には、路肩スペースの詳細情報(広さ等)も取得できる場合もあるが、路肩スペースの実際の状況までは確定できない。例えば、路肩スペースに既に他の車両が停車している場合もあるし、路肩スペースの状態が地図情報から変わっている場合もある。したがって、詳細な地図情報がある場合でも、路肩スペースの選択は、本発明の路肩停止制御にしたがって、自車両の車両外部検知手段1による評価値Eの検出に基づいて行う必要性がある。
【0068】
一方、参照できる地図情報等がない場合や、地図情報等から不十分な情報しか得られない場合には、走行可能範囲L内にある路肩スペースの数を推定により決定する。例えば、山道等、詳細な地図まではない場合でも、県道であれば所定距離毎に離合スペースが設けられていると考えられ、また高速道路であれば所定距離毎に非常駐車帯が存在しているはずである。このような各種情報を利用し得る場合には、大まかな地図に当該各種情報を組み合わせて総候補数Nを推定し得る。
【0069】
また、自車両の車両外部検知手段1(カメラ10、レーダ12等)を利用して、総候補数Nの推定を行うこともできる。例えば、路肩停止制御開始後の道路の状況は、路肩停止制御開始直前に走行してきた道路の状況と類似していると予測できるので、普段から道路周辺の状況を検知・記録しておき、制御開始直前に走行していた道路状況から総候補数Nを推定してもよい。または、走行していく先方の道路における路肩スペースの存在状況をできる限り検出することにより、検出できた範囲の状況から、走行可能距離L全体の状況を予測し、総候補数Nを推定してもよい。
【0070】
走行可能距離L内に路肩スペースが一様に分布していると仮定できる場合には、走行可能距離Lを所定の単位距離で除した値として、総候補数Nを見積もることもできる。この場合には、走行可能距離Lを単位距離で分割した各区間に候補番号を割り当てる。これにより、所定距離毎に非常停車帯等があることが保証されない一般道等、路肩スペース数の推定が難しい場合でも、総候補数Nを設定することができる。
【0071】
ここで、単位距離とは、ある地点と当該地点から一定距離離れた地点の評価値を比較したとき、それらの相関が十分に小さくなる距離である。単位距離は、チューニングパラメータであり、例えば、検知手段の検知可能距離に設定される。
【0072】
総候補数Nが算出されたならば、図3に示す実施例と同様の処理を行う。すなわち、上記式(1)から式(3)のいずれかに基づいてカットオフ閾値Cを算出し、検出された路肩スペースの候補番号(制御開始位置から数えた通し番号)がカットオフ閾値C以下の間は、(十分閾値ES以上の評価値Eを有する路肩スペースが発見されない限り)路肩スペースへの停止は行わず、各路肩スペースの評価値Eを検出していき、カットオフ閾値C以下の候補番号の路肩スペースの評価値Eの最大値Emaxを基準評価値ETに設定する。
【0073】
候補番号がカットオフ閾値Cを超えた後は、検出された路肩スペースの評価値Eを基準評価値ETと比較し、基準評価値ET以上の評価値を有する路肩スペースが発見されたならば、(当該評価値Eが必要閾値ENを下回っていない限り)その路肩スペースを選択して、車両を停止させる。
【0074】
カットオフ閾値Cは、上記のように総候補数Nから求めてもよいが、走行可能距離lから直接算出した値を、カットオフ閾値Cとして採用することもできる。すなわち、走行可能距離Lの平方根をとることにより、カットオフ距離lcを求め、カットオフ閾値Cに設定する。すなわち、
C=lc=l1/2 …(2)
とする。
【0075】
図4には、このように算出されるカットオフ距離lcを示す。図示されるように、制御開始位置X0からカットオフ距離lcの道のりの地点をカットオフ位置Xcとし、検出可能位置Xc(自車両VEの位置Xegoから検出可能距離d2だけ離れた位置)がカットオフ位置Xcを超えるまでは、路肩スペースへの停止は行わず、路肩スペースの評価値Eの検出のみを行う(ただし、十分閾値ES以上の路肩スペースがあれば、そこに停止する)。
【0076】
検出可能位置Xcがカットオフ位置Xcに達したならば、それまでに検出された評価値Eの最大値を基準評価値ETに設定する。そして、検出された路肩スペースの評価値Eを基準評価値ETと比較し、基準評価値ETを超える評価値Eを有する路肩スペースが発見されたならば、その路肩スペースを選択して、車両を停止する(ただし、その路肩スペースの評価値Eが必要閾値ENに達していない場合には、停止を見送る)。
【0077】
このようにカットオフ距離lcをカットオフ閾値Cとして用いることにより、自然数である総候補数Nは実数の走行可能距離lに置き換えられる(走行可能距離lが総候補数となる)とともに、停止先候補となる路肩スペースは、自然数の候補番号iに代えて、実数である位置X(制御開始地点X0からの道のり)で表現される。すなわち、路肩スペースの候補番号は、実数である位置(道のり)Xとなり、評価値は位置Xの関数E(X)となる。これにより、路肩の位置毎に連続的に評価値が変化する場合等を的確に扱うことができる。
【0078】
図4に示すように、自車両VEは、最短停止距離d1と検出可能距離d2を備えている。最短停止距離d1は、上述したように、安全に車両を路肩スペースに停止させるために必要とされる距離である。したがって、自車両VEから最短停止距離d1以内の地点にある路肩スペース(すなわち、自車両VEの位置Xegoから最短停止距離d1だけ車両進行方向に進んだ地点を最短停止位置Xbとして、位置Xegoから位置Xbに至る最短停止区間D2内にある路肩スペース)は、停止先の候補からは除外される(ただし、基準評価値ET算出のための路肩スペースとしては利用される)。
【0079】
検出可能距離d2は、自車両VEの車両外部検知手段1(車外カメラ10、レーダ探知機11)によって、路肩スペースの評価値Eを検出可能な距離である。すなわち、自車両VEの位置Xegoから検出可能距離d2だけ車両進行方向に進んだ地点を検出可能位置Xsとして、自車両位置Xegoから検出可能位置Xsに至る検出可能範囲D2内にある道路位置の側方の路肩スペースは、評価値Eを検出することができる。
【0080】
本実施形態においては、検出可能範囲内にある路肩スペースの評価値Eを全て同時に検出する。すなわち、検出可能範囲D2内に複数の路肩スペースが存在すれば、その複数の路肩スペースの評価値Eが同時に検出される。
【0081】
一方、検出可能範囲D2内にある路肩スペースにおいて、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースが発見されたとしても、その路肩スペースが停止不能範囲D1内にある場合には、自車両VEを安全に停止させることが不可能であるから、路肩停止先の候補とすることはできない。すなわち、その時点において路肩停止先候補とできる路肩スペースは、最短停止位置Xbから検出可能位置Xsに至る区間(選択可能範囲D3)内にある路肩スペースである。
【0082】
選択可能範囲D3は、自車両VEの走行とともに、走行可能距離Lの終点Xtに向けて移動していく。図4に示すように、検出可能位置Xsがカットオフ位置Xcを超えておらず、選択可能範囲D3全体がカットオフ範囲Lc(X0からXcに至る区間)内にあるときには、まだ基準評価値ETが決定されていないので、選択可能範囲D3内にある複数の路肩スペースは、評価値Eが十分閾値ES以上とならない限り、基準評価値ETの算出に利用されるだけで、停止先候補として選択されない。
【0083】
一方、自車両VEが進行して、検出可能位置Xsがカットオフ位置Xcに至ると、カットオフ距離Lc内の路肩スペースの評価値Eは全て検出され、基準評価値ETが決定するので、それ以降は、選択可能範囲D3内の路肩スペースの評価値Eを基準評価値ETと比較することが可能となる。
【0084】
この場合、カットオフ位置Xcを超えない位置(カットオフ閾値C以下の候補番号)の路肩スペースの中に、基準評価値ETを超える評価値Eを有する路肩スペースが発見された場合には、その路肩スペースを停止先候補に選択する。すなわち、その位置がカットオフ位置Xcを超えていなくても(候補番号がカットオフ閾値Cを超えていなくても)、選択可能範囲D3内にある路肩スペースであれば、停止先候補とする。
【0085】
したがって、路肩停止先候補がカットオフ位置Xcを超えた位置の路肩スペースに限られる場合と比較して、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースを、より早く選択することができる。すなわち、基本報酬問題において、選択可能範囲D3の長さd3だけ遡って路肩停止先候補を選択することができることになるので、より効率的な選択を行うことができる。
【0086】
選択可能範囲D3には、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースが複数含まれる場合があり得る。このような場合には、路肩停止先の安全度と選択の迅速性のバランスをとって、路肩停止先を決定すればよい。
【0087】
例えば、停止先の安全度(評価値Eの高さ)を重視する場合には、最大の評価値Eを有する路肩スペースを停止先に選択する。これにより、より安全度の高い路肩スペースに、それほどの遅延をせずに停止することができる。なお、この場合、選択可能範囲D3の進行とともに、停止先として当初に選択されていた第1の路肩スペースより先の地点に、より評価値Eの高い第2の路肩スペースが発見されることがあるが、この場合には、第1の路肩スペースを不採用とし、新たに登場した第2の路肩スペースを、停止先に選択することになる。
【0088】
一方、選択の迅速性を重視する場合には、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースの中で、最も近くにある路肩スペースを選択する。これにより、より早く路肩停止を行うことが可能となり、後に新たな候補が発見されて停止が先延ばしとなってしまうことも回避できる。また、この場合でも、選択された路肩スペースは、基準評価値ET以上の評価値Eを有しているので、十分に高い評価値Eを持つ路肩スペースを選択できる。
【0089】
あるいは、安全性と迅速性のバランスをとった選択をすることも可能である。例えば、最も近くにある路肩スペースを選択することを基本としつつ、後に現れた候補の評価値Eが大幅に高いものであるとき(例えば、当初の候補の評価値Eが十分閾値ESより小さいものである一方で、後に現れた候補の評価値Eが十分閾値ES以上のものであった場合等)には、後に現れた候補を停止先に変更する制御を行うことも考えられる。
【0090】
次に、図5のフローチャートにしたがって、本発明の路肩停止制御の制御手順の一例を詳細に説明する。路肩停止制御は、例えば、自車両を運転中のドライバに異常が生じて自動運転への切り換えがなされた場合の自動運転における路肩停止の意図の発現等を契機として開始される。
【0091】
路肩停止制御が開始すると、まずステップS1において、それまでの最大評価値を初期化する。続いて、ステップS2において、車両の状態から走行可能距離lを算出し、この走行可能距離l内の路肩スペースの総候補数Nを算出する。続くステップS3においては、ステップS2で算出した総候補数Nに基づいてカットオフ閾値Cを算出する(または、走行可能距離lに基づいてカットオフ距離lcを算出する)。
【0092】
ステップS4においては、検出可能範囲D2内に存在する総ての路肩スペースを検出し、各路肩スペースの評価値Eを算出する。続くステップS5においては、走行可能範囲Lの全体が検出されたか(検出可能位置Xsが走行可能範囲Lの終点Xtに達したか)否かを判定する。ステップS5において、走行可能範囲Lの全体が検出されていないと判定された場合には、まだ評価値Eの算出がなされていない路肩スペースがあるということなので、ステップS6以下の制御に進む。
【0093】
ステップS6においては、それまでに算出された路肩スペースの評価値のなかに、路肩停止のための十分閾値ES以上の評価値Eを有し且つ停止可能範囲D3内の路肩スペースが存在するか否かを判定し、存在する場合には、ステップS12に進み、その路肩スペース(十分閾値ES以上の評価値Eを有する路肩スペースが複数ある場合には、そのうちの1つ(例えば最も近い路肩スペース))を停止位置に決定して、一連の制御を終了する。すなわち、十分閾値ES以上の評価値Eを有する路肩スペースが存在する場合には、その路肩スペースにいち早く停車するのが合理的であり、以降の路肩スペースの探索を続行する必要性はないので、その路肩スペースを停止先として、一連の制御を終了する。
【0094】
一方、ステップS6において、十分閾値ES以上の評価値を有する路肩スペースがないと判定された場合には、ステップS7に進み、検出済みの路肩スペースの候補番号が、カットオフ閾値Cを超えているか否かを判定し、カットオフ閾値Cを超えていなければ、ステップS2に戻り、ステップS2からステップS6までの処理(路肩スペースの検出)を繰り返す。なお、ステップS2における走行可能距離l及び総候補数N、ステップS3におけるカットオフ閾値Cは、車両の走行状態(車速v)に応じて変わってくるので、ループ度に更新されることになる。
【0095】
ステップS7において、候補番号がカットオフ閾値Cを超えたと判定された場合には、ステップS8に進み、基準評価値Eを設定(2巡目以降は更新)する。すなわち、カットオフ閾値C以下の候補番号を有する路肩スペースの評価値Eのうちで最大の評価値Emaxを基準評価値ETに設定する。走行可能距離l、総候補数N、カットオフ閾値Cが更新された場合には、それに伴い、基準評価値ETを更新する。
【0096】
続くステップS9においては、検出済みの路肩スペースに基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースがあるか否かを判定し、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースが存在しない場合には、ステップS2に戻り、路肩スペースの検出を続ける。一方、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースが存在する場合には、その路肩スペースを、停止する路肩スペースの候補として、ステップS10に進む。
【0097】
ステップS10においては、候補となった路肩スペースの評価値Eが、必要閾値EN以上であるか否かを判定し、必要閾値EN以上でなければ、ステップS2に戻る。すなわち、候補となった路肩スペースの評価値Eが必要閾値ENに達していなければ、その路肩スペースへの停止は不適切であるので、ステップS2に戻って、新たな候補の検出を続ける。
【0098】
一方、ステップ10において、停止先候補の路肩スペースの評価値が必要閾値EN以上であると判定されたならば、ステップS11に進み、停止先候補の路肩スペースが停止可能なものであるか否か(停止不能範囲D1に入っていないか)を判定し、停止不能範囲D1内にあれば、その路肩スペースへの停止を行うことは不可能であるので、そのスペースへの停止は断念して、ステップS2に戻り、新たな候補の検出を継続する。
【0099】
ステップS11において、停止先候補の路肩スペースが、停止可能であると判定された場合には、ステップS12に進み、その候補を路肩停車位置に決定して、一連の制御を終了する。すなわち、その候補は、基準評価値ET以上且つ必要閾値EN以上の評価値を有し、また停止可能なものでもあるので、その候補の路肩スペースに車両を停止させる制御を行う。
【0100】
なお、ステップS9において、基準評価値ET以上の評価値Eを持つ路肩スペースが複数発見された場合には、そのうちの適切な1つ(例えば、最も近い路肩スペース、又は最も大きな評価値Eを有する路肩スペース)を路肩停車位置に決定する。また、候補番号がカットオフ閾値C以下の路肩スペースであっても、条件を満たしさえすれば、その路肩スペースを停止位置に決定する。
【0101】
このように、ステップS7以下の制御においては、検出された路肩スペースの候補番号がカットオフ閾値Cを超えるまでは、路肩停車位置の決定を行わずにやり過ごし、路肩スペースの検出を継続する一方で、路肩スペースの検出がカットオフ閾値Cを超えた候補番号に達したところで、基準評価値ETを設定し、この基準評価値ET以上の路肩スペースが発見されたところで、その路肩スペースが必要閾値EN以上の評価値Eを有し且つ停止不能範囲D1内に無いことを条件に、その路肩スペースへの路肩停止制御を実行する。
【0102】
一方、フローチャートを遡って、ステップS5において、走行可能範囲Lの全体が検出されたと判定された場合には、走行可能範囲L内の全ての候補の評価値Eが得られたということなので、ステップS21に進む。ステップS21においては、検出済みの路肩スペースの中に、評価値Eが必要閾値EN以上のものがあるか否かを判定し、必要閾値EN以上のものがあれば、ステップS12に進み、その路肩スペースを停止先に選定して、一連の制御を終了する。
【0103】
すなわち、例えば、ステップS6以下の処理を繰り返しても、基準評価値ET以上の評価値Eを有する路肩スペースが見つからないままで、走行可能範囲L内の全ての候補の探索が終了してしまった場合には、その時点での残りの候補から最善の路肩スペース(少なくとも評価値Eが必要閾値EN以上の路肩スペース)を選ぶよりないので、その路肩スペースに車両を停止させる。
【0104】
一方、ステップS21において、必要閾値EN以上の評価値Eを有する路肩スペースがないと判定された場合には、ステップS22に進み、走行車線内に適切な停車位置を選定して、一連の制御を終了する。すなわち、走行可能範囲L内に、路肩停止のための必要閾値ENを満たす路肩スペースが存在しない以上、走行車線内で停止するよりなく、不適切な路肩スペースに停止させるよりは、走行車線内での停車の方が、停車後の救助等のためにも有利であるので、走行車線内の適切な位置(例えば、できる限り路肩に寄せた位置)に車両を停車させて、一連の制御を終了する。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲において適宜の変更が可能である。例えば、上記実施形態は、本発明を自動運転に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではなく、広く運転支援一般を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、自動車等の車両の自動運転制御に利用できる。
【符号の説明】
【0107】
U 電子制御ユニット
1 車両外部検知手段
2 車両状態検出手段
3 情報取得手段
4 車室内状態監視手段
5 車両制御システム
10 車外カメラ
11 レーダ探知機
12 車速センサ
13 加速度センサ
14 ジャイロセンサ
15 舵角センサ
16 アクセルセンサ
17 ブレーキセンサ
18 測位センサ
19 地図情報取得手段
20 車内カメラ
21 ステアリング制御手段
22 エンジン制御手段
23 ブレーキ制御手段
30 走行可能距離算出手段
31 総候補数算出手段
32 カットオフ閾値算出手段
33 評価値検出手段
34 基準評価値算出手段
35 停止位置選択手段
36 自動運転制御手段
VE 自車両
VP 駐車車両
R 道路
S 路肩
G1 路肩スペース
G2 路肩スペース
G3 路肩スペース
L 走行可能範囲
D1 停止不能範囲
D2 検出可能範囲
D3 選択可能範囲
図1
図2
図3
図4
図5