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  • 特開-受信装置、車上装置及び受信方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120648
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】受信装置、車上装置及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20230823BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H04L1/00 B
B60L15/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023610
(22)【出願日】2022-02-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人電気学会 電気学会論文誌D Vol.141 No.3 2021 産業応用部門誌 2021年3月号
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】517251812
【氏名又は名称】株式会社社会システム開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】西田 賢史
(72)【発明者】
【氏名】望月 寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 英夫
【テーマコード(参考)】
5H125
5K014
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC05
5K014AA01
5K014BA05
5K014EA01
5K014FA08
(57)【要約】
【課題】シンドロームのような値を用いずに、誤り訂正能力を制限する方法を実現すること。
【解決手段】送信装置20は、所与の送信情報を誤り訂正符号処理及び変調した送信信号をレールRに送信する。受信装置40は、レールRから受信した受信信号を復調して受信語を生成し、さらに誤り訂正復号処理して受信情報を生成し、この受信情報から生成した想定符号語と受信語との各ビットの一致を比較する。この比較結果を用いて受信情報を採用するか否かを判定する。例えば、不一致ビット数が所定の許容条件を満たす場合に受信情報を採用すると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の送信情報を誤り訂正符号処理した符号語が変調されて送信された信号を受信し、受信信号を復調した受信語から情報を復号する受信装置であって、
前記受信語に対して、前記誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を行って受信情報を生成する復号部と、
前記受信情報から想定符号語を生成する符号化部と、
前記受信語と前記想定符号語とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果を用いて前記受信情報を採用するか否かを判定する判定部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記比較部は、前記受信語と前記想定符号語との各ビットの一致を比較することで、誤り量を推定する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記誤り量が所定の許容条件を満たす場合に前記受信情報を採用すると判定する、
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記受信語を硬判定して当該受信語の硬判定値を生成する硬判定部、
を更に備え、
前記比較部は、
前記受信語の前記硬判定値と前記想定符号語とを比較する、
請求項1~3の何れか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の受信装置を具備し、列車に搭載される車上装置であって、
前記送信情報は、前記列車の制御用の情報であり、
前記変調された信号は、レールを伝送媒体として送信され、
前記受信装置は、前記レールに伝送された信号を受信する、
車上装置。
【請求項6】
所与の送信情報を誤り訂正符号処理した符号語が変調されて送信された信号を受信し、受信信号を復調した受信語から情報を復号する受信方法であって、
前記受信語に対して、前記誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を行って受信情報を生成することと、
前記受信情報から想定符号語を生成することと、
前記受信語と前記想定符号語とを比較することと、
前記比較した結果を用いて前記受信情報を採用するか否かを判定することと、
を含む受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の列車制御装置における情報伝送では、受信側でCRC(Cyclic Redundancy Check)符号による誤り検出を行い、受信した情報に誤りがあった場合にはその情報を破棄するようにしている。また、受信した情報の誤りが継続する場合には、列車を停止させる等のフェールセーフを考慮した更なる安全側の制御がなされる。このため、通信路の品質が悪いと、誤り検出の頻度が高くなり頻繁に列車を停止させることになってしまうという問題が起こり得た。
【0003】
鉄道の情報伝送では、誤り検出は行うが、誤り訂正符号を用いた誤り訂正までは行わないことが一般的である。これは、鉄道では高い安全性が求められており、誤り訂正を行ったとしてもその誤り訂正が完全でない可能性があり、訂正の結果、危険側の制御がなされるおそれがあるからである。
【0004】
そこで、鉄道の情報伝送において、受信側で受信した情報に含まれる誤りの量を把握し、その誤り量が所定の誤り訂正基準値を超えない場合に誤り訂正した情報を採用するといったように誤り訂正能力を制限することで、誤り訂正符号を用いる際の信頼性及び安全性を確保する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-138867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の誤り訂正能力を制限する方法では、受信側で受信した情報の誤り量を把握する必要がある。このため、用いることができる誤り訂正符号は、リード・ソロモン符号やBCH符号等の、複数ビットの誤り訂正が可能であるとともに誤り訂正復号処理において誤り量が把握できる符号に限定される。BCH符号やリード・ソロモン符号では、誤り訂正復号処理において誤りの位置を示す値であるシンドロームが求められるので、このシンドロームを参照することで、受信した情報に含まれる誤り量を把握することができる。
【0007】
最近では、リード・ソロモン符号よりも誤り訂正能力の高いターボ符号やLDPC符号の利用が進んでいる。しかし、ターボ符号やLDPC符号では、受信語を復号して受信情報を得る際に誤り位置を求めずに復号すると、受信した情報に含まれる誤り量を把握することができない。BCH符号やリード・ソロモン符号で求められるシンドロームのような値が得られない。従って、上述の誤り訂正能力を制限する方法には用いることができない。従来の誤り訂正能力を制限する方法は、シンドロームのような値を用いることで実現されていたからである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述したシンドロームのような値を用いずに、誤り訂正能力を制限する方法を実現すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、
所与の送信情報を誤り訂正符号処理した符号語が変調されて送信された信号を受信し、受信信号を復調した受信語から情報を復号する受信装置であって、
前記受信語に対して、前記誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を行って受信情報を生成する復号部と、
前記受信情報から想定符号語を生成する符号化部と、
前記受信語と前記想定符号語とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果を用いて前記受信情報を採用するか否かを判定する判定部と、
を備える受信装置である。
【0010】
他の発明として、
所与の送信情報を誤り訂正符号処理した符号語が変調されて送信された信号を受信し、受信信号を復調した受信語から情報を復号する受信方法であって、
前記受信語に対して、前記誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を行って受信情報を生成することと、
前記受信情報から想定符号語を生成することと、
前記受信語と前記想定符号語とを比較することと、
前記比較した結果を用いて前記受信情報を採用するか否かを判定することと、
を含む受信方法を構成してもよい。
【0011】
第1の発明等によれば、誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を受信語に対して行って生成した受信情報をもとに想定符号語を生成する。想定符号語の生成は、誤り訂正復号処理が受信情報を含む符号語全体を出力できる場合にはその符号語を想定符号語とし、誤り訂正復号処理が受信情報のみを出力する場合には受信情報をもとにさらに誤り訂正符号処理をすることで想定符号語を得る。この想定符号語と受信語とを比較し、比較結果を用いて、受信情報を採用するか否かを判定する。すなわち、比較結果に応じて、誤り訂正能力を制限することができる。従って、BCH符号やリード・ソロモン符号で求められるシンドロームのような値を用いずに、誤り訂正能力を制限する方法を実現することができる。
【0012】
より具体的に説明すると、信号が送信された通信路における雑音の重畳等によって受信語に誤りが含まれる可能性がある。受信語に誤りがあるとして、その受信語を誤り訂正復号処理した受信情報が取り得るケースとして、誤り訂正復号処理によって誤りが完全に訂正された情報である場合と、完全に訂正されていない情報である場合との2通りが考えられる。誤り量によって、完全に訂正できるか否かが変わるからである。完全に訂正された場合は、誤りを含んでいる受信語と、訂正された受信情報を送信側と同じ誤り訂正符号処理した想定符号語とは一致しない。この不一致の量は、誤り量と推定することができる。一方、完全に訂正されていない場合も、想定符号語と受信語とは一致しない。この不一致から推定される誤り量は、誤り訂正復号処理により訂正されずに残った誤り量の分だけ大きくなる。以上のことから、受信情報から生成した想定符号語と受信語とを比較し、その比較結果を用いることで、シンドロームのような値を用いずに、誤り訂正能力を制限する方法を実現することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
前記比較部は、前記受信語と前記想定符号語との各ビットの一致を比較することで、誤り量を推定する、
受信装置である。
【0014】
第2の発明によれば、受信語に含まれる誤り量を、受信語と想定符号語とで一致しないビット数で推定することができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、
前記判定部は、前記誤り量が所定の許容条件を満たす場合に前記受信情報を採用すると判定する、
受信装置である。
【0016】
第3の発明によれば、許容条件を、例えば所定ビット数以下といった条件とすることで、受信語と想定符号語との不一致ビット数が所定ビット数以下である場合には、受信語を誤り訂正復号処理した受信情報を採用することができる。また、不一致ビット数が所定ビット数を超えると受信情報を採用せず、誤り訂正能力を制限することができる。これにより、誤り訂正符号を用いる際の信頼性及び安全性を確保することができる。
【0017】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記受信語を硬判定して当該受信語の硬判定値を生成する硬判定部、
を更に備え、
前記比較部は、
前記受信語の前記硬判定値と前記想定符号語とを比較する、
受信装置である。
【0018】
誤り訂正復号部が行う誤り訂正復号処理には軟判定及び硬判定があるが、軟判定のほうが硬判定に比較して高い誤り訂正能力が得られる。しかし、誤り訂正復号処理に軟判定を採用した場合、想定符号語は硬判定に相当する値であり受信語と直接比較することができない。この場合、第4の発明のように、受信語の硬判定値を求めて想定符号語と比較することで、軟判定の高い誤り訂正能力を生かしながら、通信路で生じた誤りを評価し、誤訂正の確率を下げて、誤り訂正符号を用いる際の信頼性及び安全性を確保することができる。
【0019】
第5の発明は、第1~第4の何れかの発明の受信装置を具備し、列車に搭載される車上装置であって、
前記送信情報は、前記列車の制御用の情報であり、
前記変調された信号は、レールを伝送媒体として送信され、
前記受信装置は、前記レールに伝送された信号を受信する、
車上装置である。
【0020】
第5の発明によれば、列車の制御用の情報である送信情報を、レールを伝送媒体として車上装置へ送信する地上・車上間の情報伝送において、鉄道に求められる高い信頼性及び安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】情報伝送システムの構成図。
図2】送信装置及び受信装置の構成図。
図3】実験結果のグラフ。
図4】受信装置の変形例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0023】
[全体構成]
図1は、本実施形態における受信装置40及び車上装置30を含む情報伝送システムの構成例を示す図である。図1によれば、情報伝送システムは、指令所や保守区、駅の機器室等に設置される地上装置10と、列車3に搭載される車上装置30とを備え、伝送媒体(通信路)であるレールRを介して地上装置10から車上装置30への情報伝送を行うシステムである。
【0024】
地上装置10は、地上制御装置12と、送信装置20とを備える。地上制御装置12は、速度制限情報や線路情報等の列車3の制御用の情報を生成する。送信装置20は、地上制御装置12により生成された列車3の制御用の情報である送信情報を誤り訂正符号処理及び変調して送信信号を生成し、生成した送信信号をレールRへ送信する。
【0025】
車上装置30は、受信装置40と、車上制御装置32とを備える。受信装置40は、列車3の車体底部に設けられた受電器5を介してレールRに送信されている送信信号を受信し、受信信号を復調及び誤り訂正復号処理して受信情報を生成する。車上制御装置32は、受信装置により生成された受信情報である列車3の制御用の情報を用いて、列車3の走行制御を行う。
【0026】
[送信装置及び受信装置]
図2は、送信装置20及び受信装置40の構成例を示す図である。図2によれば、送信装置20は、誤り訂正符号化部21と、変調部22とを有する。
【0027】
誤り訂正符号化部21は、地上制御装置12により生成された列車3の制御用の情報である送信情報を誤り訂正符号処理して符号語を生成する。誤り訂正符号化部21が用いる誤り訂正符号は、例えば、LDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティ検査)符号やターボ符号等の複数ビットの誤り訂正が可能な符号である。
【0028】
変調部22は、誤り訂正符号化部21により生成された符号語を変調して送信信号を生成し、生成した送信信号を、伝送媒体であるレールRに送信する。変調部22が用いる変調方式は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4値位相偏移)変調である。
【0029】
受信装置40は、復調部41と、誤り訂正復号部42と、誤り訂正符号化部43と、比較部45と、判定部46とを有する。
【0030】
復調部41は、受信信号を復調して受信語を生成する。復調部41が用いる復調方式は、送信装置20の変調部22が用いた変調方式に応じた復調方式である。
【0031】
誤り訂正復号部42は、復調部41により生成された受信語を誤り訂正復号処理して受信情報を生成する。誤り訂正復号部42が用いる誤り訂正復号は、送信装置20の誤り訂正符号化部21が用いた誤り訂正符号に応じた誤り訂正復号である。
【0032】
誤り訂正符号化部43は、誤り訂正復号部42により生成された受信情報を誤り訂正符号処理して想定符号語を生成する。誤り訂正符号化部43が用いる誤り訂正符号は、送信装置20の誤り訂正符号化部21が用いた誤り訂正符号と同じである。
【0033】
なお、誤り訂正復号部42が、誤り訂正復号処理によって受信情報のみではなく符号語をも生成できる場合には、その符号語を想定符号語として誤り訂正符号化部43を省略することができる。
【0034】
比較部45は、誤り訂正符号化部43により生成された想定符号語と、復調部41により生成された受信語とを比較する。具体的には、想定符号語と受信語との各ビットの一致を比較し、一致しないビット数(不一致ビット数)を受信語の誤り量として推定する。
【0035】
判定部46は、比較部45の比較結果を用いて、誤り訂正復号部42により生成された受信情報を採用するか否かを判定する。具体的には、比較部45により推定された誤り量(不一致ビット数)が所定の許容条件を満たす場合に、受信情報を採用すると判定する。許容条件は、例えば、所定のビット数以下であること、とすることができる。
【0036】
誤り訂正復号部42の誤り訂正処理により受信語に含まれる誤りが完全に訂正されて受信情報が“正しい”情報である場合には、この受信情報から生成される想定符号語(すなわち、受信情報を誤り訂正符号化部21が誤り訂正符号処理した後の想定符号語)は、送信装置20において誤り訂正符号化部21が送信情報を誤り訂正符号処理した後の符号語に等しい。しかし、受信語自体には誤りが含まれているため、想定符号語と受信語とは一致せず、その不一致ビット数は、受信語に含まれる誤り量に相当することとなる。受信語に誤りが含まれていない場合には、想定符号語と受信語とは一致するからである。
【0037】
では、受信語に含まれる誤り量が多く、誤り訂正復号部42の誤り訂正処理によって完全に誤りを訂正されずに、受信情報が“正しくない”情報である場合にはどうなるであろうか。この場合も、想定符号語と受信語とは一致しないこととなる。不一致ビット数は、誤り訂正復号処理により訂正されずに残った誤り量の分だけ大きくなると推定される。この推定は実験結果を参照して後述する。このことから、受信語を誤り訂正復号処理した後の受信情報に対して再度誤り訂正符号処理をして生成した想定符号語と、受信語とを比較し、比較した不一致の程度を、受信語に含まれる誤り量として推定することができる。
【0038】
[実験結果]
図3は、本実施形態の情報伝送システムの実験結果である。本実験では、ランダムデータとして生成した送信情報を変調及び誤り訂正符号処理した送信信号に、雑音を重畳して受信信号とし、この受信信号を復調した受信語に含まれる誤り量を推定するシミュレーションを行った。誤り量は、誤り率(BER:Bit error rate)として求めた。また、変調方式をQPSK変調、誤り訂正符号をLDPC符号とし、これに対応して復調はQPSK復調、復号はLDPC復号とした。
【0039】
図3では、横軸をS/N比、縦軸を誤り率とした誤り率特性のグラフを示している。本実施形態の処理で求まる不一致ビット数から算出した誤り率特性のグラフを「本実施形態」として図3に示す。比較例として、QPSK復調及びLDPC復号処理を行った受信情報そのものの誤り率特性のグラフを「第1比較例」とし、送信時にQPSK変調のみを行って受信時にQPSK復調のみを行った場合(すなわち誤り訂正符号の処理をしなかった場合)の誤り率特性のグラフを「第2比較例」として示す。第2比較例は、いわば、正解の誤り率特性を示しているといえる。
【0040】
先ず、受信情報そのものの誤り率特性(第1比較例)は、S/N比の悪化に対する誤り率の改善がみられるが、LDPC方式の復号で誤りが生じるS/N比の範囲は極めて狭く、LDPC復号処理による誤り訂正がなされたエラーフリー領域でのS/N比では誤り率の算定が不可能であった。本実施形態の誤り率特性は、S/N比全体のレンジにおいて、第2比較例とほぼ一致する特性を示している。このことは、伝送の過程で生じる誤り量を、ほぼ正確に推定できることを示している。
【0041】
[作用効果]
本実施形態によれば、誤り訂正符号処理に応じた誤り訂正復号処理を受信語に対して行って生成した受信情報から想定符号語を生成する。想定符号語の生成は、誤り訂正復号処理が受信情報を含む符号語全体を出力できる場合にはその符号語を想定符号語とし、誤り訂正復号処理が受信情報のみを出力する場合には受信情報をもとにさらに誤り訂正符号処理をすることで想定符号語を得る。この想定符号語と受信語とを比較し、比較結果を用いて、受信情報を採用するか否かを判定する。すなわち、比較結果に応じて、誤り訂正能力を制限することができる。従って、BCH符号やリード・ソロモン符号で求められるシンドロームのような値を用いずに、誤り訂正能力を制限する方法を実現することができる。
【0042】
より詳細に説明すると、伝送媒体(通信路)であるレールRにおける雑音の重畳等によって受信語に誤りが含まれる可能性がある。受信語に誤りがあるとして、その受信語を誤り訂正復号処理した受信情報が取り得るケースとして、誤り訂正復号処理によって誤りが完全に訂正された情報である場合と、完全に訂正されていない情報である場合との2通りが考えられる。誤り量によって、完全に訂正できるか否かが変わるからである。完全に訂正された場合は、誤りを含んでいる受信語と、訂正された受信情報を送信側と同じ誤り訂正符号処理した想定符号語とは一致しない。この不一致の量は、誤り量と推定することができる。一方、完全に訂正されていない場合も、想定符号語と受信語とは一致しない。この不一致から推定される誤り量は、誤り訂正復号処理により訂正されずに残った誤り量の分だけ大きくなる。このように、受信情報から生成した想定符号語と受信語とを比較することで、誤り訂正符号の方式に関わらず、受信語に含まれる誤り量を推定することができるため、シンドロームのような値を用いずに誤り訂正能力を制限する方法を実現することができる。
【0043】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0044】
(A)受信語の硬判定
例えば、受信語の硬判定値と想定符号語とを比較するようにしてもよい。具体的には、図4に示すように、受信語の硬判定値を生成する硬判定部44を更に備える受信装置40Aを構成する。硬判定部44は、復調部41により生成された受信語を硬判定して、受信語の硬判定値を生成する。硬判定は、ビットの“1”と“0”を決定する処理である。受信語に含まれるビット列が“1”又は“0”ではなく、アナログ値の連続値をとる場合には、硬判定によって受信語をビット列のデジタルデータとすることができる。
【0045】
そして、比較部45Aは、誤り訂正符号化部43により生成された想定符号語と、硬判定部44により生成された受信語の硬判定値とを比較する。つまり、想定符号語と受信語の硬判定値との各ビットの一致を比較し、一致しないビット数(不一致ビット数)を受信語の誤り量として推定する。
【0046】
誤り訂正復号部が行う誤り訂正復号処理には軟判定及び硬判定があるが、軟判定のほうが硬判定に比較して高い誤り訂正能力が得られる。しかし、誤り訂正復号処理に軟判定を採用した場合、想定符号語は硬判定に相当する値であり受信語と直接比較することができない。このような場合に、受信語の硬判定値を求めて想定符号語と比較することで、軟判定の高い誤り訂正能力を生かしながら、通信路で生じた誤りを評価し、誤訂正の確率を下げて、誤り訂正符号を用いる際の信頼性及び安全性を確保することができる。
【0047】
(B)情報伝送システム
また、上述した実施形態では、鉄道における地上と車上との間の情報伝送システムに本発明を適用した例を説明した。しかし、鉄道に限らず、他の情報伝送システムに本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…地上装置
12…地上制御装置
20…送信装置
21…誤り訂正符号化部
22…変調部
3…列車
5…受電器
30…車上装置
40(40A)…受信装置
41…復調部
42…誤り訂正復号部
43…誤り訂正符号化部
44…硬判定部
45(45A)…比較部
46…判定部
32…車上制御装置
R…レール
図1
図2
図3
図4