IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車載用の電力供給制御装置 図1
  • 特開-車載用の電力供給制御装置 図2
  • 特開-車載用の電力供給制御装置 図3
  • 特開-車載用の電力供給制御装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120665
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】車載用の電力供給制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230823BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
B60R16/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023632
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 将実
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CC02
5G503DA05
5G503FA06
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】高圧バッテリからの電力を変換し得る電力変換部を備えた車載システムにおいて、電力変換部からの電力供給が停止していても、高圧バッテリを利用して低圧負荷に電力を供給する。
【解決手段】車載システム2は、高圧バッテリ90から供給される電力を変換して導電路82に電力を出力する電力変換部4と、高圧バッテリ90に基づく電力を電力変換部4とは異なる経路を介して導出する導出部60と、を有するシステムである。電力供給制御装置10は、車載システム2に用いられる。電力供給制御装置10は、電力変換部4から導電路82に出力される電力と、低圧バッテリ98からの電力と、導出部60からの電力と、が入力される調整部20を有する。調整部20は、電力変換部4から導電路82への電力供給が停止する停止中に導出部60に基づく電力を低圧負荷88に供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧バッテリと、低圧負荷に電力を供給するための供給源であり且つ前記高圧バッテリよりも出力電圧が低い低圧バッテリと、を有する車載システムに用いられる車載用の電力供給制御装置であって、
前記車載システムは、前記高圧バッテリから供給される電力を変換して導電路に電力を出力する電力変換部と、前記高圧バッテリに基づく電力を前記電力変換部とは異なる経路を介して導出する導出部と、を有するシステムであり、
前記電力変換部から前記導電路に出力される電力と、前記低圧バッテリからの電力と、前記導出部からの電力と、が入力される調整部を有し、
前記調整部は、前記電力変換部から前記導電路への電力供給が停止する停止中に前記導出部に基づく電力を前記低圧負荷に供給する
車載用の電力供給制御装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記導出部からの電力に基づく入力電圧を降圧又は昇圧して前記低圧負荷に向けた出力電圧を生成する電圧変換回路を有し、前記停止中に、前記低圧バッテリ及び前記電圧変換回路の少なくともいずれかに基づく電力を前記低圧負荷に供給する
請求項1に記載の車載用の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記停止中に前記低圧バッテリからの電力及び前記電圧変換回路からの電力をいずれも前記低圧負荷に供給する
請求項2に記載の車載用の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記低圧バッテリからの電力が供給される経路であって且つ前記低圧負荷に電力を供給する経路である供給路と、前記電圧変換回路を制御する制御部と、を有し、
前記電圧変換回路は、前記供給路に電圧を出力し、
前記制御部は、前記停止中に、前記低圧バッテリが前記供給路に印加する電圧と前記電圧変換回路が前記供給路に印加する電圧を近づけるように前記電圧変換回路を制御する
請求項3に記載の車載用の電力供給制御装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記停止中に、前記低圧負荷に供給する電力を、前記低圧バッテリからの電力と前記電圧変換回路からの電力とで切り替える
請求項3に記載の車載用の電力供給制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用の電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、補機のバックアップ用の専用電源を追加することなく、補機に対する電力供給のバックアップを実現することを課題とする車両用電源回路が開示されている。特許文献1の車両用電源回路では、第1分電池及び第2分電池のうち、出力電圧が低圧バッテリの出力電圧に近い方の分電池は、第1DCDCコンバータ及び第2DCDCコンバータを介することなく補機に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-124060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用電源回路は、高圧バッテリの一部が直接的に補機に接続され、DCDCコンバータからの電力、低圧バッテリからの電力、高圧バッテリからの電力を分配及び調整する部分が補機の外部に設けられていない。
【0005】
本開示は、高圧バッテリからの電力を変換し得る電力変換部を備えた車載システムにおいて、電力変換部からの電力供給が停止していても、高圧バッテリを利用して低圧負荷に電力を供給し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである車載用の電力供給制御装置は、
高圧バッテリと、低圧負荷に電力を供給するための供給源であり且つ前記高圧バッテリよりも出力電圧が低い低圧バッテリと、を有する車載システムに用いられる車載用の電力供給制御装置であって、
前記車載システムは、前記高圧バッテリから供給される電力を変換して導電路に電力を出力する電力変換部と、前記高圧バッテリに基づく電力を前記電力変換部とは異なる経路を介して導出する導出部と、を有するシステムであり、
前記電力変換部から前記導電路に出力される電力と、前記低圧バッテリからの電力と、前記導出部からの電力と、が入力される調整部を有し、
前記調整部は、前記電力変換部から前記導電路への電力供給が停止する停止中に前記導出部に基づく電力を前記低圧負荷に供給する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、高圧バッテリからの電力を変換し得る電力変換部を備えた車載システムにおいて、電力変換部からの電力供給が停止していても、高圧バッテリを利用して低圧負荷に電力を供給し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る車載用の電力供給制御装置を含む車載システムを概略的に例示するブロック図である。
図2図2は、図1に開示される電力供給制御装置における調整部等を具体的に例示するブロック図である。
図3図3は、図1に開示される電力供給制御装置における選択部等を具体的に例示するブロック図である。
図4図4は、図1の車載システムで行われる制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される特徴は、矛盾しない内容でどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕高圧バッテリと、低圧負荷に電力を供給するための供給源であり且つ前記高圧バッテリよりも出力電圧が低い低圧バッテリと、を有する車載システムに用いられる車載用の電力供給制御装置であって、
前記車載システムは、前記高圧バッテリから供給される電力を変換して導電路に電力を出力する電力変換部と、前記高圧バッテリに基づく電力を前記電力変換部とは異なる経路を介して導出する導出部と、を有するシステムであり、
前記電力変換部から前記導電路に出力される電力と、前記低圧バッテリからの電力と、前記導出部からの電力と、が入力される調整部を有し、
前記調整部は、前記電力変換部から前記導電路への電力供給が停止する停止中に前記導出部に基づく電力を前記低圧負荷に供給する
車載用の電力供給制御装置。
【0011】
上記の〔1〕の電力供給制御装置は、電力変換部からの電力供給が停止している停止中であっても、高圧バッテリの電力を利用して低圧バッテリに電力を供給することができる。しかも、調整部が、電力変換部から導電路に出力される電力と、低圧バッテリからの電力と、導出部からの電力と、を自身に入力させて調整することができる。
【0012】
〔2〕前記調整部は、前記導出部からの電力に基づく入力電圧を降圧又は昇圧して前記低圧負荷に向けた出力電圧を生成する電圧変換回路を有し、前記停止中に、前記低圧バッテリ及び前記電圧変換回路の少なくともいずれかに基づく電力を前記低圧負荷に供給する
〔1〕に記載の車載用の電力供給制御装置。
【0013】
上記の〔2〕の電力供給制御装置は、電力変換部の停止中に、高圧バッテリの電力を電力変換部とは別経路で利用する際に、導出部に基づく入力電圧を降圧又は昇圧して利用することができる。
【0014】
〔3〕前記調整部は、前記停止中に前記低圧バッテリからの電力及び前記電圧変換回路からの電力をいずれも前記低圧負荷に供給する
〔2〕に記載の車載用の電力供給制御装置。
【0015】
上記の〔3〕の電力供給制御装置は、電力変換部の停止中に使用する電力が低圧バッテリのみに偏ったり、高圧バッテリのみに偏ったりすることを抑えることができる。
【0016】
〔4〕前記調整部は、前記低圧バッテリからの電力が供給される経路であって且つ前記低圧負荷に電力を供給する経路である供給路と、前記電圧変換回路を制御する制御部と、を有し、
前記電圧変換回路は、前記供給路に電圧を出力し、
前記制御部は、前記停止中に、前記低圧バッテリが前記供給路に印加する電圧と前記電圧変換回路が前記供給路に印加する電圧を近づけるように前記電圧変換回路を制御する
〔3〕に記載の車載用の電力供給制御装置。
【0017】
上記の〔4〕の電力供給制御装置は、電力変換部の停止中に、電圧変換回路の出力を低圧バッテリと同程度に合わせることができ、両方からバランスよく供給されやすくなる。
【0018】
〔5〕前記調整部は、前記停止中に、前記低圧負荷に供給する電力を、前記低圧バッテリからの電力と前記電圧変換回路からの電力とで切り替える
〔3〕に記載の車載用の電力供給制御装置。
【0019】
上記の〔5〕の電力供給制御装置は、電力変換部の停止中に使用する電力が低圧バッテリ及び高圧バッテリの一方のみに偏ることを、より簡易な方法で抑えることができる。
【0020】
〔6〕前記高圧バッテリにおける複数の候補部位の中から電力供給元を選択する選択部を有し、
前記導出部は、前記選択部が選択した前記電力供給元からの電力を導出する
〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の車載用の電力供給制御装置。
【0021】
上記の〔6〕の電力供給制御装置は、常に高圧バッテリの特定の箇所のみを利用するのではなく、複数の候補部位の中から選択して用いることができるため、利用部位が偏ることを抑えることができる。
【0022】
〔7〕前記選択部は、複数の前記候補部位のうちのSOC(State Of Charge)が閾値以上である部位の中から、SOH(State Of Health)が最も高い部位を前記候補部位として選択する
〔6〕に記載の車載用の電力供給制御装置。
【0023】
上記の〔7〕の電力供給制御装置は、電力変換部の停止中に高圧バッテリを利用する際に、SOCが低い部位が選択されることを抑えつつ、SOHが高い部位を優先的に用いることができる。
【0024】
〔8〕前記調整部は、前記電力変換部からの電力が入力される経路である第1入力路と、前記低圧バッテリからの電力が入力される経路である第2入力路と、前記第1入力路及び前記第2入力路のいずれにも電気的に接続される出力路と、を備え、
前記第1入力路には当該第1入力路を遮断可能な第1ヒューズが設けられ、
前記第2入力路には当該第2入力路を遮断可能な第2ヒューズが設けられ、
更に、前記第1入力路、前記第2入力路、前記出力路、前記第1ヒューズ、及び前記第2ヒューズを収容する収容体を有する
〔1〕から〔7〕のいずれか一つに記載の車載用の電力供給制御装置。
【0025】
上記の〔8〕の電力供給制御装置は、収容体の内部に第1入力路、第2入力路、出力路、第1ヒューズ、及び第2ヒューズを収容したユニットにおいて、高圧バッテリを利用して低圧負荷に電力を供給する機能を付加することができる。
【0026】
〔9〕前記調整部は、前記電力変換部及び前記低圧バッテリのいずれからも正常に電力が供給されない供給抑制状態を検出する検出部を有し、前記検出部によって前記供給抑制状態が検出された場合に前記導出部に基づく電力を前記低圧負荷に供給する
〔1〕から〔8〕のいずれか一つに記載の車載用の電力供給制御装置。
【0027】
上記の〔9〕の電力供給制御装置は、電力変換部及び低圧バッテリから十分な電力が供給されない場合であっても、低圧負荷に電力を供給することができる。「正常に電力が供給されない供給抑制状態」は、例えば、電力変換部及び低圧バッテリのいずれからも閾値を超える直流電圧が供給されない状態であってもよく、電力変換部及び低圧バッテリのいずれからも閾値を超える直流電力が供給されない状態であってもよく、電力変換部及び低圧バッテリのいずれの出力も停止している状態であってもよい。
【0028】
<第1実施形態>
【0029】
1.車載システム2の概要
図1には、第1実施形態の車載用の電力供給制御装置10を備えた車載システム2が示される。以下の説明では、車載用の電力供給制御装置10は、電力供給制御装置10とも称される。車載システム2は、車両(図示省略)に搭載されるシステムであり、様々な負荷に電力を供給し得るシステムである。車載システム2が搭載れる車両は、例えば、電気自動車、ブラグインハイブリッド車、ハイブリッド車等の車両であり、その他の種類の車両であってもよい。
【0030】
図1のように、車載システム2は、高圧バッテリ90、低圧バッテリ98、高圧負荷80、低圧負荷88、電力変換部4、電力供給制御装置10などを備える。
【0031】
高圧バッテリ90は、高圧負荷80に高電圧を供給し得るバッテリである。高圧バッテリ90は、リチウムイオン電池などの二次電池によって構成されてもよく、その他の種類の蓄電池によって構成されてもよい。高圧バッテリ90は、満充電時に所定の高電圧(例えば、約400V)を電力路86A,86B間に印加する。高圧バッテリ90が満充電時に電力路86A,86B間に印加する出力電圧は、低圧バッテリ98の満充電時の出力電圧(グラウンド電位を基準とする導電路84の電圧)よりも高い。
【0032】
高圧バッテリから電力路86A,86Bに供給される電力は、図示されていないインバータを介して駆動モータ(図示省略)に供給され得る。なお、図1では、電力路86A,86Bからインバータに電力を供給するための構成は省略されている。高圧バッテリ90は、図示されていない駆動モータに電力を供給する供給源であり、具体的には、上記インバータが上記駆動モータを駆動するための三相交流電力を生じさせるように動作し得る。上記駆動モータは、高圧バッテリ90から供給される電力に基づいて車両(車載システム2が搭載された車両)の車輪を回転させる駆動力を発生させる装置である。
【0033】
低圧バッテリ98は、鉛蓄電池などの二次電池によって構成されていてもよく、その他の種類の蓄電池によって構成されていてもよい。低圧バッテリ98は、満充電時に所定の低電圧(例えば12V)を導電路84に印加する。低圧バッテリ98が導電路84に印加する出力電圧は、導電路84とグラウンド(図1では図示省略)との電位差である。低圧バッテリ98は、低圧負荷88に電力を供給し得る供給源である。低圧バッテリ98の満充電時の出力電圧は、高圧バッテリ90の満充電の出力電圧よりも低い。上記車両の走行時には、高圧バッテリ90の出力電圧は低圧バッテリ98の出力電圧よりも高い状態で維持される。
【0034】
低圧負荷88は、低電圧が与えられる負荷である。低圧負荷88は、例えば、セルモータ、オルタネータ及びラジエータクーリングファン等であってもよく、電動パワーステアリングシステム、電動パーキングブレーキ、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置等であってもよく、その他の装置であってもよい。
【0035】
高圧負荷80は、高電圧が与えられる負荷である。高圧負荷80は、例えばエアコンやヒータなどであってもよく、これら以外の負荷であってもよい。
【0036】
電力路86A,86Bは、高圧バッテリ90と電力変換部4との間で電力を伝送する経路である。電力路86A,86Bの一方の電力路86Aは、高電位側の電力路として機能し、高圧バッテリ90の高電位側の電極と電力変換部4の一端との間の導電路をなす。電力路86A,86Bの他方の電力路86Bは、高圧バッテリ90の低電位側の電極と電力変換部4の他端の間の導電路をなす。図1の例では、リレー85A,85Bがいずれもオン状態のときに、電力路86Aと電力路86Bとの間に直流電圧が印加されつつ電力路86A,86Bを介した電力の伝送が可能となる。
【0037】
リレー85A,85Bは、電力路86A,86Bにおいて導通を遮断する遮断状態と遮断状態を解除した解除状態とに切り替わるリレーである。リレー85A,85Bがいずれもオフ状態のときには、リレー85A,85Bを介しての通電が双方向に遮断され、リレー85A,85Bがいずれもオン状態のときには、リレー85A,85Bを介しての通電が双方向に許容される。
【0038】
電力変換部4は、例えば、絶縁型DCDCコンバータなどのDCDCコンバータによって構成される。電力変換部4は、高圧バッテリ90から電力路86A,86Bを介して供給される電力を変換し、導電路82に電力を出力する機能を有する。具体的には、電力変換部4は、電力路86A,86B間に印加される直流電圧を入力電圧とし、この入力電圧を降圧して導電路82に対して出力電圧を印加するように降圧動作を行い得る。電力変換部4が降圧動作を行う場合、導電路82とグラウンド(図1では図示省略)との間の電圧を目標電圧に調整するように直流電圧を出力する降圧動作を行う。なお、電力変換部4は、導電路82に印加される電圧(導電路82とグラウンドとの間の電圧)を入力電圧とし、この入力電圧を昇圧して電力路86A,86B間に直流電圧を印加するように昇圧動作を行う機能を有していてもよい。
【0039】
2.電力供給制御装置10の基本構成
電力供給制御装置10は、車載システム2に用いられ、図1の例では、車載システム2の一部をなす。電力供給制御装置10は、調整部20、導出部60、監視部68などを備える。
【0040】
導出部60は、高圧バッテリ90に基づく電力を電力変換部4とは異なる経路を介して導出する部分である。導出部60は、主に、選択部61と導電路62とを備え、選択部61が選択した電力供給元からの電力を導出するように機能する。導電路62は、電圧変換回路22に電気的に接続される導電路である。導電路63は、グラウンドに電気的に接続される導電路である。図2の例では、導電路62,63間に印加される電圧が、電圧変換回路22に対する入力電圧とされる。
【0041】
選択部61は、高圧バッテリ90における複数の候補部位の中から電力供給元を選択する機能を有する。図1の例では、複数の候補部位として、候補部位92A,92B,92C,92Dが例示されており、選択部61は、候補部位92A,92B,92C,92Dのうちのいずれか一の候補部位から電力を導入し他の候補部位から電力を導入しないように動作し得る。候補部位92A,92B,92C,92Dは、いずれも電池として機能する部分である。
【0042】
図3のように、選択部61は、切替部100と制御装置65とを有する。切替部100は、導電路62,63と高圧バッテリ90の一部とを短絡させる通電状態と、導電路62,63と高圧バッテリ90との間の導通を遮断する遮断状態とに切り替わる。図3の例では、切替部100は、スイッチ101A,101B,102A,102B,103A,103B,104A,104Bを有する。スイッチ101Aの一端と候補部位92Aの高電位側の電極とは導電路71Aによって短絡している。位置P1は、導電路71Aが接続される位置である。スイッチ101Bの一端と候補部位92Aの低電位側の電極とは導電路71Bによって短絡している。位置P2は、導電路71Bが接続される位置である。スイッチ102Aの一端と候補部位92Bの高電位側の電極とは導電路72Aによって短絡している。位置P3は、導電路72Aが接続される位置である。スイッチ102Bの一端と候補部位92Bの低電位側の電極とは導電路72Bによって短絡している。位置P4は、導電路72Bが接続される位置である。スイッチ103Aの一端と候補部位92Cの高電位側の電極とは導電路73Aによって短絡している。位置P5は、導電路73Aが接続される位置である。スイッチ103Bの一端と候補部位92Cの低電位側の電極とは導電路73Bによって短絡している。位置P6は、導電路73Bが接続される位置である。スイッチ104Aの一端と候補部位92Dの高電位側の電極とは導電路74Aによって短絡している。位置P7は、導電路74Aが接続される位置である。スイッチ104Bの一端と候補部位92Dの低電位側の電極とは導電路74Bによって短絡している。位置P8は、導電路74Bが接続される位置である。
【0043】
例えば、切替部100において、スイッチ101A,101Bがオン状態とされ、スイッチ102A,102B,103A,103B,104A,104Bがオフ状態とされることで、候補部位92Aのうちの最も電位が高い電極と導電路62とが短絡し、候補部位92Aのうちの最も電位が低い電極と導電路63とが短絡する。このように、候補部位92Aが選択されることにより、候補部位92Aの両端の電位差に応じた電圧が導電路62に印加される。同様に、切替部100において、スイッチ102A,102Bがオン状態とされ、スイッチ101A,101B,103A,103B,104A,104Bがオフ状態とされることで、候補部位92Bのうちの最も電位が高い電極と導電路62とを短絡させ、候補部位92Bのうちの最も電位が低い電極と導電路63とを短絡させる。このように、候補部位92Bが選択されることにより、候補部位92Bの両端の電位差に応じた電圧が導電路62に印加される。スイッチ101A,101B,102A,102B,103A,103B,104A,104Bの各々をオンオフさせる制御は制御装置65が行う。制御装置65は、情報処理機能や演算機能を有する情報処理装置であり、例えば、記憶部やCPUなどを有する。制御装置65は、制御部28とは異なる装置として構成されてもよく、制御部28によって実現されてもよい。
【0044】
調整部20は、電力変換部4から導電路82に出力される電力と、低圧バッテリ98から導電路84に出力される電力と、導出部60から導電路62を介して供給される電力と、が入力される装置である。図2のように、調整部20は、第1入力路31、第2入力路32、供給路33、第1ヒューズ41、第2ヒューズ42、第1スイッチ51、第2スイッチ52、電圧変換回路22、制御部28などを備える。第1スイッチ51は、スイッチ51とも称される。第2スイッチ52は、スイッチ52とも称される。
【0045】
第1入力路31は、一端が導電路82に電気的に接続される導電路であり、電力変換部4からの電力が入力される経路である。第1入力路31は、スイッチ51がオン状態のときに、供給路33と導電路82とを短絡させる。
【0046】
第2入力路32は、一端が導電路84に電気的に接続される導電路であり、低圧バッテリ98からの電力が入力される経路である。第2入力路32は、スイッチ52がオン状態のときに、供給路33と導電路84とを短絡させる。
【0047】
第1ヒューズ41は、第1入力路31の途中に介在して設けられ、第1入力路31に過電流が生じた場合に第1入力路31の通電を双方向に遮断する機能を有する。第2ヒューズ42は、第2入力路32の途中に介在して設けられ、第2入力路32に過電流が生じた場合に第2入力路32の通電を双方向に遮断する機能を有する。例えば、導電路82に地絡が生じることで第1ヒューズ41が遮断された場合、供給路33及び第2入力路32は、導電路82とは電気的に切り離される。また、導電路84に地絡が生じることで第2ヒューズ42が遮断された場合、供給路33及び第1入力路31は、導電路84とは電気的に切り離される。
【0048】
第1スイッチ51は、第1入力路31の途中に介在して設けられ、自身がオン状態となった場合に第1入力路31の通電を許容し、自身がオフ状態になった場合に第1入力路31の通電を双方向に遮断する。第2スイッチ52は、第2入力路32の途中に介在して設けられ、自身がオン状態となった場合に第2入力路32の通電を許容し、自身がオフ状態になった場合に第2入力路32の通電を双方向に遮断する。
【0049】
供給路33は、出力路の一例に相当する。供給路33は、第1入力路31の他端及び第2入力路32の他端に電気的に接続される。供給路33は、低圧バッテリ98からの電力が供給される経路であり、電力変換部4から電力が供給される経路でもある。供給路33は、低圧負荷88に電気的に接続され、低圧負荷88に電力を供給する経路である。
【0050】
電圧変換回路22は、導出部60からの電力に基づく入力電圧を降圧又は昇圧して低圧負荷88に向けた出力電圧を生成するように動作し得る。電圧変換回路22は、例えば、DCDCコンバータとして構成され、供給路33に対して直流電圧を出力する電圧変換動作を行い得る。電圧変換回路22は、導電路62に印加された直流電圧を降圧して供給路33に直流電圧を印加する降圧動作や、導電路62に印加された直流電圧を昇圧して供給路33に直流電圧を印加する昇圧動作を行い得る。
【0051】
制御部28は、演算機能、情報処理機能を有する情報処理装置であり、例えば、CPUや記憶部などを有する。制御部28は、電圧変換回路22の降圧動作や昇圧動作を制御する機能を有する。具体的には、制御部28は、電圧変換回路22から供給路33に対して目標電圧が出力されるように電圧変換回路22の降圧動作又は昇圧動作を制御する機能を有する。制御部28は、第1スイッチ51のオンオフや第2スイッチ52のオンオフを制御する機能を有する。
【0052】
図2のように、調整部20は、第1入力路31、第2入力路32、供給路33、第1ヒューズ41、第2ヒューズ42、第1スイッチ51、第2スイッチ52、電圧変換回路22、制御部28などを収容する収容体20Aを有する。収容体20Aは、例えば、樹脂製又は金属製のケースによって構成されている。図2では、収容体20Aが二点鎖線によって概念的に示される。
【0053】
監視部68は、高圧バッテリ90における複数の候補部位を監視する機能を有する。具体的には、監視部68は、候補部位92A,92B,92C,92Dの各々のSOH(State Of Health)及びSOC(State Of Charge)を公知の方法を用いて検出する機能を有する。監視部68は、選択部61と通信を行う機能を有し、候補部位92A,92B,92C,92Dの各々のSOH及びSOCの情報を定期的に又は所定条件成立時に検出して送信する。
【0054】
3.電力供給制御装置10の動作
調整部20は、電力変換部4から導電路82への電力供給が停止する停止中に導出部60に基づく電力を低圧負荷88に供給する機能を有する。具体的には、調整部20は、電力変換部4から導電路82への電力供給が停止する停止中に、低圧バッテリ98及び電圧変換回路22の少なくともいずれかに基づく電力を低圧負荷88に供給するように動作し得る。この動作は、例えば、図4のような流れで行われる。
【0055】
図4の制御は、制御部28によって、又は制御部28及び制御装置65によって実行される。なお、制御部28及び制御装置65が同一の装置によって構成されてもよく、この場合、この装置が図4の制御を実行してもよい。
【0056】
図4の制御は、図4の制御を実行する装置(例えば、制御部28及び制御装置65)において所定の開始条件が成立した場合に開始され、短い時間間隔で繰り返し実行される。開始条件は、図4の制御を実行する装置に対する電力供給が開始されたことであってもよく、その他の条件であってもよい。
【0057】
制御部28は、図4の制御の開始後、ステップS1の判断を実行し、低圧バッテリ98からの電力供給が異常であるか否かを判定する。例えば、制御部28は、導電路84に印加される電圧が閾値未満である場合に低圧バッテリ98からの電力供給が異常であると判定し(ステップS1でYes)、処理をステップS8に進める。制御部28は、導電路84に印加される電圧が閾値以上である場合に低圧バッテリ98からの電力供給が異常でないと判定し(ステップS1でNo)、処理をステップS2に進める。ステップS1の判定は、スイッチ52がオフ状態のときに導電路84に印加される電圧が閾値未満である場合に低圧バッテリ98からの電力供給が異常であると判定してもよい。或いは、電力変換部4及び電圧変換回路22の停止中の導電路84の電圧が閾値未満である場合に低圧バッテリ98からの電力供給が異常であると判定してもよい。或いは、その他の故障判定方法で低圧バッテリ98が故障と判定された場合に低圧バッテリ98からの電力供給が異常であると判定してもよい。なお、代表例では、例えば、制御部28が、導電路84に印加される電圧を検出する機能及び導電路82に印加される電圧を検出する機能を有している。
【0058】
制御部28は、ステップS2において、電力変換部4からの電力供給が異常であるか否かを判定する。ステップS2では、電力変換部4の動作条件が成立し且つスイッチ51がオフ状態のときに導電路82に印加される電圧が閾値未満である場合に電力変換部4からの電力供給が異常であると判定し、そうでない場合に電力変換部4からの電力供給が異常でないと判定してもよい。或いは、電力変換部4の動作中に出力電流が適正範囲を外れた場合に電力変換部4からの電力供給が異常であると判定してもよく、その他の故障判定方法で電力変換部4が故障と判定された場合に電力変換部4からの電力供給が異常であると判定してもよい。いずれにしても、制御部28は、ステップS2において電力変換部4からの電力供給が異常でないと判定した場合に処理をステップS3に進め、異常であると判定した場合に処理をステップS4に進める。
【0059】
制御部28は、ステップS3において、電力変換部4が正常動作中であるか否かを判定する。具体的には、制御部28は、電力変換部4が上記異常(ステップS2の異常)ではない状態で動作している場合には、ステップS3においてYesと判定し、処理をステップS7に進める。制御部28が、電力変換部4が動作していない場合には、ステップS3においてNoと判定し、処理をステップS4に進める。
【0060】
制御部28は、ステップS2において電力変換部4からの電力供給が異常であると判定した、又は、ステップS3において電力変換部4が動作中ではないと判定した場合、ステップS4において低圧バッテリ98及び導出部60の2系統を使用するように動作する。具体的には、制御部28は、ステップS4において、スイッチ51をオフ状態とし、スイッチ52をオン状態とし、電圧変換回路22の動作を開始させる。なお、制御部28は、ステップS4の開始時点で既に低圧バッテリ98及び導出部60の2系統を使用されている場合には、その状態を維持する。
【0061】
制御装置65は、ステップS4の後、電力供給元を選択する動作を行う(ステップS5)。なお、代表例では、ステップS4の後にステップS5の動作が行われるが、ステップS5の動作は、ステップS4の前に行われてもよく、ステップS4と並行して行われてもよい。
【0062】
制御装置65は、監視部68から候補部位92A,92B,92C,92DのSOH及びSOCの情報を取得する毎に、候補部位92A,92B,92C,92Dの最新のSOH及びSOCを、調整部20に設けられた記憶部(図示省略)に記憶する。制御装置65がステップS5で電力供給元を選択する場合、複数の候補部位92A,92B,92C,92Dのうちの最新のSOCが閾値以上である部位の中から、最新のSOHが最も高い部位を候補部位として選択するように切替部100を切り替える。例えば、複数の候補部位92A,92B,92C,92Dの各々の最新のSOHのうち、候補部位92AのSOHが最も高く且つ候補部位92AのSOCが閾値以上である場合、制御装置65は、候補部位92Aを電力供給元とするように切り替える。この場合、制御装置65は、スイッチ101A,101Bをオン状態とし、スイッチ102A,102B,103A,103B,104A,104Bをオフ状態とすることで、候補部位92Aのうちの高電位側電極と導電路62とを短絡させ、候補部位92Aのうちの低電位側電極と導電路63とを短絡させる。このように、候補部位92Aが選択されることにより、候補部位92Aの両端の電位差に応じた電圧が導電路62,63間に印加される。
【0063】
制御部28は、ステップS5の後、ステップS6の処理を行う。なお、代表例では、ステップS5の後にステップS6の処理が行われるが、ステップS6の処理は、ステップS5の前に開始されてもよく、ステップS5と同時期に開始されてもよい。制御部28は、ステップS6では、ステップS4で実行した状態(スイッチ51をオフ状態とし、スイッチ52をオン状態とした状態)を維持しつつ、導電路62に印加された直流電圧を昇圧又は降圧して供給路33に直流電圧を印加するように電圧変換回路22に電圧変換動作を行わせる。制御部28は、例えば、ステップS6の処理の実行前又は実行中に低圧バッテリ98の出力電圧(例えば、導電路84に印加される電圧)を検出するとともに、この出力電圧を目標電圧Vtとし、電圧変換回路22が供給路33に印加する直流電圧を上記目標電圧Vtとするように電圧変換回路22を制御する。低圧バッテリ98の出力電圧は、スイッチ52がオフ状態のときに導電路84に印加される電圧であってもよく、電力変換部4及び電圧変換回路22が動作していないときに導電路84に印加される電圧であってもよい。低圧バッテリ98の出力電圧の検出は、定期的に行われてもよく、所定条件が成立する毎に行われてもよい。
【0064】
このように、制御部28は、電力変換部4の停止中に行われるステップS6において、スイッチ52をオフ状態としつつ低圧バッテリ98が供給路33に印加する電圧(低圧バッテリ98の上記出力電圧)と電圧変換回路22が供給路33に印加する電圧とを近づけるように(具体的には一致させるように)電圧変換回路22を制御する。調整部20は、このような動作を行うことで、電力変換部4の停止中に低圧バッテリ98からの電力及び電圧変換回路22からの電力をいずれも低圧負荷88に供給する。なお、制御部28は、ステップS6の開始時点で既に電圧変換回路22に電圧変換動作を行わせている場合には、電圧変換回路22に電圧変換動作を行わせた状態を継続する。
【0065】
制御部28は、ステップS6の後、図4の制御を終了する。なお、制御部28は、図4の制御が終了した後、再び、図4の制御を開始するように繰り返す。
【0066】
制御部28は、ステップS3において電力変換部4が動作中であると判定した場合、ステップS7において低圧バッテリ98及び電力変換部4の2系統を使用するように動作する。具体的には、スイッチ51及びスイッチ52をいずれもオン状態とし、電圧変換回路22の動作は停止させる。ステップS3においてYesと判断される状況では、電力変換部4は、例えば、低圧バッテリ98の出力電圧(例えば、12Vの充電電圧)よりも少し高い電圧(例えば、14.5Vの電圧)を導電路82に印加するように動作する。
【0067】
制御部28は、ステップS1において低圧バッテリ98からの電力供給が異常である判定した場合、ステップS8において、電力変換部4からの電力供給が異常であるか否かを判定する。ステップS8での判定方法は、ステップS2での判定方法と同一である。制御部28は、ステップS8において電力変換部4からの電力供給が異常でないと判定した場合、処理をステップS9に進める。制御部28は、ステップS9において、異常が生じていない1系統(電力変換部4)を使用するように動作する。具体的には、スイッチ52をオフ状態とし、スイッチ51をオン状態とし、電圧変換回路22の動作は停止させる。
【0068】
制御部28は、ステップS8において電力変換部4からの電力供給が異常であると判定した場合、処理をステップS10に進める。制御部28は、ステップS10では、導出部60を使用するように動作し、具体的には、スイッチ51及びスイッチ52をオフ状態とし、電圧変換回路22の動作を開始させる。なお、制御部28は、ステップS10の開始時点で導出部60のみを使用している場合には、その使用状態を継続する。制御装置65は、ステップS10の後、ステップS11の処理を行う。ステップS11の処理は、ステップS5の処理と同様である。なお、代表例では、ステップS10の後にステップS11の動作が行われるが、ステップS11の動作は、ステップS10の前に行われてもよく、ステップS10と並行して行われてもよい。制御部28は、ステップS11の後、ステップS12の処理を行う。ステップS12の処理は、ステップS6と同様である。なお、代表例では、ステップS11の後にステップS12の処理が行われるが、ステップS12の処理は、ステップS11の前に開始されてもよく、ステップS11と同時期に開始されてもよい。
【0069】
4.効果の例
電力供給制御装置10は、電力変換部4から導電路82への電力供給が停止している停止中であっても、高圧バッテリ90の電力を利用して低圧バッテリ98に電力を供給することができる。しかも、調整部20は、電力変換部4から導電路82に出力される電力と、低圧バッテリ98からの電力と、導出部60からの電力と、を自身に入力させて調整することができる。
【0070】
電力供給制御装置10は、電圧変換回路22を有しているため、電力変換部4の停止中に、高圧バッテリ90の電力を電力変換部4とは別経路で利用する際に、導出部60に基づく入力電圧を降圧又は昇圧して利用することができる。
【0071】
電力供給制御装置10は、電力変換部4の停止中に低圧バッテリ98及び電圧変換回路22からの電力をいずれも低圧負荷88に供給し得るため、上記停止中に使用する電力が低圧バッテリ98のみに偏ったり、高圧バッテリ90のみに偏ったりすることを抑え得る。
【0072】
調整部20は、上記停止中に、低圧バッテリ98が供給路33に印加する電圧と電圧変換回路22が供給路33に印加する電圧を近づけるように電圧変換回路22を制御してもよい。調整部20がこの方式を採用すれば、電力変換部4の停止中に、電圧変換回路22の出力が低圧バッテリ98の出力電圧に近づけられ、両方からバランスよく供給されやすくなる。
【0073】
電力供給制御装置10は、電力変換部4からの電力供給停止中に高圧バッテリ90の電力を利用する上で、常に高圧バッテリ90の特定の箇所のみを利用するのではなく、複数の候補部位の中から選択して用いることができる。よって、この電力供給制御装置10は、上記停止中に高圧バッテリ90における利用部位が偏ることを抑えることができる。
【0074】
電力供給制御装置10は、電力変換部4の停止中に高圧バッテリ90を利用する際に、SOCが低い部位が選択されることを抑えつつ、SOHが高い部位を優先的に用いることができる。
【0075】
電力供給制御装置10は、収容体20Aの内部に第1入力路31、第2入力路32、供給路33(出力路)、第1ヒューズ41、及び第2ヒューズ42を収容したユニットを構成することができる。そして、このユニットが、高圧バッテリ90を利用して低圧負荷88に電力を供給することができる。
【0076】
電力供給制御装置10では、制御部28が検出部として機能し、「電力変換部4及び低圧バッテリ98のいずれからも閾値を超える直流電圧が供給されない供給抑制状態」を検出する。そして、電力供給制御装置10では、制御部28(検出部)によって上記供給抑制状態が検出された場合に導出部60に基づく電力を低圧負荷88に供給する。このような動作がなされるため、電力変換部4及び低圧バッテリ98から十分な電力が供給されない場合であっても、低圧負荷88に電力を供給することができる。
【0077】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0078】
上述の実施形態では、ステップS6が繰り返し実行される期間(電力変換部4の動作停止中に電圧変換回路22が動作する期間)において、供給路33と低圧バッテリ98とが継続的に短絡し、電圧変換回路22が継続的に動作するが、この例に限定されない。例えば、制御部28は、電力変換部4の動作停止中に、低圧負荷88に供給する電力を、低圧バッテリ98からの電力と電圧変換回路22からの電力とで切り替えるように制御を行ってもよい。例えば、制御部28は、電力変換部4の動作停止中に、「低圧バッテリ98の出力電圧よりも高い電圧を供給路33に印加する動作を電圧変換回路22に行わせる期間又はスイッチ52をオフ状態としつつ供給路33に電圧を印加する動作を電圧変換回路22に行わせる期間である第1期間」と「スイッチ52をオン状態としつつ低圧バッテリ98の出力電圧よりも低い電圧を供給路33に印加する動作を電圧変換回路22に行わせる期間又はスイッチ52をオン状態としつつ電圧変換回路22の動作を停止させる期間である第2期間」とを交互に設定してもよい。このようにすれば、低圧負荷88に供給する電力を、低圧バッテリ98からの電力と電圧変換回路22からの電力とで切り替えることができる。調整部20が上記方式を採用すれば、電力変換部4の停止中に使用する電力が低圧バッテリ98及び高圧バッテリ90の一方のみに偏ることが、より簡易な方法で抑えられる。
【0079】
上述の実施形態では、電力供給制御装置10が導出部60を含んでいたが、電力供給制御装置10が導出部60を含まない構成であってもよい。即ち、調整部20によって電力供給制御装置10が構成されていてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、導出部60が高圧バッテリ90の複数の候補部位の中から利用する部位を選択する構成であるが、導出部60が高圧バッテリ90の特定の部位のみを利用する構成であってもよい。つまり、高圧バッテリ90の特定の一部(例えば、候補部位92D)の電力のみが導出部60を介して導出されてもよい。
【0081】
上述の実施形態では、選択部61が選択し得る候補部位として4つの候補部位92A,92B,92C,92Dが例示されるが、高圧バッテリ90において、これら以外の候補部位が更に選択可能とされていてもよく、各候補部位の範囲が図1の例とは異なっていてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、4つの候補部位92A,92B,92C,92Dが全て直列に接続されているが、並列に接続される部分があってもよい。
【0083】
上述の実施形態では、電圧変換回路22がDCDCコンバータによって構成されるが、例えば、LDO(Low Drop Out regulator)等のレギュレータによって構成されていてもよい。
【0084】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
2 :車載システム
4 :電力変換部
10 :電力供給制御装置
20 :調整部
20A :収容体
22 :電圧変換回路
28 :制御部
31 :第1入力路
32 :第2入力路
33 :供給路
41 :第1ヒューズ
42 :第2ヒューズ
51 :第1スイッチ
52 :第2スイッチ
60 :導出部
61 :選択部
62 :導電路
63 :導電路
65 :制御装置
68 :監視部
71A :導電路
71B :導電路
72A :導電路
72B :導電路
73A :導電路
73B :導電路
74A :導電路
74B :導電路
80 :高圧負荷
82 :導電路
84 :導電路
85A :リレー
85B :リレー
86A :電力路
86B :電力路
88 :低圧負荷
90 :高圧バッテリ
92A :候補部位
92B :候補部位
92C :候補部位
92D :候補部位
98 :低圧バッテリ
100 :切替部
101A :スイッチ
101B :スイッチ
102A :スイッチ
102B :スイッチ
103A :スイッチ
103B :スイッチ
104A :スイッチ
104B :スイッチ
図1
図2
図3
図4