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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012068
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】ボイド装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 15/06 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
E04G15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115488
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】金谷 勝
(72)【発明者】
【氏名】星田 義明
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150AA36
2E150HF09
2E150HF15
2E150HF19
2E150MA11Z
2E150MA12Z
(57)【要約】
【課題】コンクリート面に竪穴を形成する際に再利用可能にして、廃棄作業を不要にしつつコストの低廉化を図ることができるボイド装置を提供する。
【解決手段】コンクリートを打設する際にコンクリート面に竪穴を形成するボイド装置として、底板11の略中心より棒材12が立設された芯体1と、コンクリートを打設する際に用いられる型枠の桟木に対し棒材12の上端を吊下した状態で固定する固定具2と、底板11上に載置した状態で棒材12を中心にしてその上端よりも下側の周囲に配置され、弾性変形可能な略半円柱形状の半円弾性片31を接着してなる弾性体3と、棒材12の周囲に弾性体3を配置した状態で、当該弾性体3の外周面を内周面に対し圧接させる合成樹脂製の円筒体4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設する際にそのコンクリート面に竪穴を形成するボイド装置であって、
底板の略中心より棒材が立設された芯体と、
前記コンクリートを打設する際に用いられる型枠の桟木に対し前記棒材の上端が吊下された状態で前記芯体を固定する固定具と、
前記底板上に載置された状態で前記棒材を中心にしてその上端よりも下側の周囲に配置される弾性変形可能な略円柱形状の弾性体と、
前記棒材の下側の周囲に前記弾性体が配置された状態で、当該弾性体の外周面が内周面に対し圧接する合成樹脂製の円筒体と、
を備えていることを特徴とするボイド装置。
【請求項2】
前記弾性体は、前記棒材を中心にして複数に分割されている請求項1に記載のボイド装置。
【請求項3】
前記棒材を中心にして複数に分割された各分割片は、それぞれの分割面が接着剤により固定されている請求項2に記載のボイド装置。
【請求項4】
前記固定具は、
前記型枠の桟木に固定され、かつ前記棒材の上端が挿通される挿通孔を有する固定片と、
前記固定片に螺着され、前記挿通孔に挿通された前記棒材の上端を押圧する螺着部材と、
を備えている請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のボイド装置。
【請求項5】
前記棒材を中心にして前記弾性体の上面に積層され、かつ前記円筒体の内周面に対し圧接する弾性変形可能な略円柱形状の薄型弾性体を備えている請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のボイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを打設する際にコンクリート面に竪穴を形成するボイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリートを用いて工事を行う際にコンクリート面からくり抜いたような竪穴を形成する作業では、ボイド装置を設置して、その周囲にコンクリートを流し込み、コンクリートの硬化後にボイド装置を抜き取ることで、コンクリート面に竪穴を形成するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来のボイド装置は、ボイド管本体と、このボイド管本体から引き抜き可能に当該ボイド管本体に螺旋状に巻き付けた中間部材と、この中間部材を介してボイド管本体に螺旋状に巻き付けたテープ部材とを備えている。このテープ部材は、一方側の側縁端が互いに重なるように巻き付けられ、テープ部材の重なり部は、接着剤により固定されており、ボイド管本体とテープ部材との間には、空隙部が設けられている。
【0004】
そして、ボイド装置の抜き取りは、コンクリートの硬化後にボイド管本体とテープ部材との間から中間部材を引き抜き、空隙部を拡げた状態でボイド管本体を抜き取れば完了する。このとき、テープ部材はコンクリートの竪穴に張り付いた状態で残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6792917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来のボイド装置では、コンクリートの硬化後にボイド管本体とテープ部材との間から中間部材を引き抜かなければならず、中間部材を再利用することが非常に難しい。そのため、コンクリート面に竪穴を形成する都度、新たなボイド装置を用意しなければならず、コストが嵩むことになる。しかも、引き抜いた中間部材がゴミとなり、廃棄作業に手間を要する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリート面に竪穴を形成する際に再利用可能にして、廃棄作業を不要にしつつコストの低廉化を図ることができるボイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、コンクリートを打設する際にそのコンクリート面に竪穴を形成するボイド装置を前提とする。そして、底板の略中心より棒材が立設された芯体と、前記コンクリートを打設する際に用いられる型枠の桟木に対し前記棒材の上端が吊下された状態で前記芯体を固定する固定具と、前記底板上に載置された状態で前記棒材を中心にしてその上端よりも下側の周囲に配置される弾性変形可能な略円柱形状の弾性体と、前記棒材の下側の周囲に前記弾性体が配置された状態で、当該弾性体の外周面が内周面に対し圧接する合成樹脂製の円筒体と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、前記弾性体を、前記棒材を中心にして複数に分割していてもよい。
【0010】
更に、前記棒材を中心にして複数に分割された各分割片のそれぞれの分割面を接着剤により固定していてもよい。
【0011】
また、前記固定具に、前記型枠の桟木に固定され、かつ前記棒材の上端が挿通される挿通孔を有する固定片と、前記固定片に螺着され、前記挿通孔に挿通された前記棒材の上端を押圧する螺着部材と、を設けていてもよい。
【0012】
更に、前記棒材を中心にして前記弾性体の上面に積層され、かつ前記円筒体の内周面に対し圧接する弾性変形可能な略円柱形状の薄型弾性体を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上、要するに、コンクリートを打設する際に型枠の桟木に対し棒材の上端を固定具により固定し、吊下した棒材を中心とする略円柱形状の弾性体を底板に載せ、この弾性体の外周面を合成樹脂製の円筒体の内周面に対し圧接することで、コンクリート硬化後に固定具による上端の固定を解除した棒材を底板に弾性体を載せた状態で引き抜くと、円筒体がコンクリートとの接触面から離脱してコンクリート面に竪穴が形成される。
【0014】
このとき、棒材を引き抜くと、弾性体の圧接力により合成樹脂製の円筒体がコンクリートの竪穴から離型する。これにより、棒材及び固定具はもちろんのこと、弾性体及び円筒体もコンクリート面に竪穴を形成する際に再利用可能であり、廃棄作業を不要にしつつボイド装置のコストの低廉化を図ることができる。
【0015】
また、棒材を中心にして弾性体を複数に分割することで、弾性体を略円柱形状に成形する必要がなくなってコンパクトな形状で済み、弾性体の分割化により分割片の成形型がコンパクトなものとなって、成形作業の省スペース化を図ることができる。
【0016】
更に、棒材を中心にして複数に分割した各分割片の分割面を接着剤により固定することで、弾性体の分割化により各分割片の成形作業のコンパクト化を図りつつ、略円柱形状の弾性体としての機能を確保することができる。
【0017】
また、型枠の桟木に固定した固定片の挿通孔に棒材の上端を挿通し、この棒材の上端を、固定片に螺着した螺着部材の螺着に伴い押圧することで、固定具として機能させている。これにより、挿通孔及び螺着孔を有する固定片と螺着部材とで固定具を簡単に構成することができる。
【0018】
更に、弾性体の上面に薄型弾性体を積層することで、弾性体の軸線方向の長さが嵩上げされる。このため、コンクリート面が傾斜している場合にその傾斜するコンクリート面よりも弾性体の上面の一部が下方に位置していても、薄型弾性体によって弾性体の軸線方向の長さが嵩上げされ、傾斜するコンクリート面よりも上方に薄型弾性体の上面を位置させることが可能となる。これにより、コンクリートの打設時にコンクリート圧による円筒体の変形が薄型弾性体により回避され、コンクリート面が傾斜していても竪穴を円滑に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るボイド装置の分解斜視図である。
図2図1のボイド装置のコンクリート打設前の斜視図である。
図3図2のボイド装置を一方の型枠側から見た側面図である。
図4図3のボイド装置の固定具付近の拡大図である。
図5図2のボイド装置を上方から見た平面図である。
図6図2のボイド装置を正面側から見た正面図である。
図7図2のボイド装置のコンクリート打設後の斜視図である。
図8図7のボイド装置の固定具をコンクリート硬化後に取り外した状態を示す斜視図である。
図9図8のボイド装置の棒材、円筒体及び弾性体を竪穴から取り外した状態を示す斜視図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るボイド装置の弾性体に薄型弾性体を積層する状態でのコンクリート打設前の斜視図である。
図11図10のボイド装置を正面側から見た正面図である。
図12図10のボイド装置のコンクリート打設後の斜視図である。
図13図10のボイド装置を一方の型枠を取り外した状態で側方から見た側面図である。
図14図13のボイド装置をコンクリート硬化後に竪穴から取り外した状態を示す斜視図である。
図15図13のボイド装置をコンクリート硬化後に竪穴から取り外した状態で側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係るボイド装置の分解斜視図、図2図1のボイド装置のコンクリート打設前の斜視図をそれぞれ示している。
【0022】
図1及び図2に示すように、Xはコンクリートを打設する際に竪穴を形成するボイド装置であって、ボイド装置Xは、底板11の略中心より棒材12が立設された芯体1と、コンクリートを打設する際に用いられる型枠A,Aに対し棒材12をその上端が吊下されるように固定する固定具2と、底板11上に載置された状態で棒材12よりも短い円柱形状を呈する弾性変形可能な弾性体3と、この弾性体3の外周面を内周面に対し圧接させる円筒体4と、を備えている。
【0023】
底板11は、弾性体3の下面からはみ出さないような略矩形状の平板により形成されている。棒材12は、鉄筋よりなり、その下端が底板11の略中心に一体的に固定されている。また、型枠A,Aは、互いに向き合うように一対で設けられている。
【0024】
図3図2のボイド装置Xを一方の型枠A側から見た側面図、図4図3のボイド装置Xの固定具2付近の拡大図をそれぞれ示している。図5図2のボイド装置Xを上方から見た平面図、図6図2のボイド装置Xを正面側から見た正面図をそれぞれ示している。
【0025】
図3図6にも示すように、固定具2は、両型枠A,Aの上方に架設された桟木A1に取り付けられた固定片21と、この固定片21に螺着され、棒材12の上端を押圧する螺着部材22とを備えている。桟木A1は、両型枠A,A間を延びる断面略矩形状の板材よりなり、両型枠A,Aの上面にそれぞれ設置された台座A2,A2上に両端が固着されている。また、螺着部材22は、螺子部221と、この螺子部221の基端に一体的に設けられ、後述する螺子孔216に対し螺子部221を手で把持した状態で締緩する把持部222とを備えている。
【0026】
固定片21は、上片211とこの上片211よりも長い下片212とを桟木A1の厚さよりも短い縦片213により連結する断面略コの字状に形成されている。上片211及び下片212には、棒材12の上端を挿通する挿通孔214(図では上片211側のみ示す)が設けられている。また、固定片21の上片211には、下片212の先端を桟木A1の縦面に当接させた状態で釘材215,215,…が打込まれる3つの釘孔219,219,…が設けられ、その打込まれた各釘材215により固定片21が桟木A1の上面に固着されている。そして、ボイド装置Xは、桟木A1の上面に対する固定片21の固着によって桟木A1に対し位置決めされた状態で固定される。
【0027】
また、固定片21の縦片213には螺子孔216が設けられている。この螺子孔216には、上片211及び下片212の各挿通孔214に挿通された棒材12の上端をその軸線と直交する方向から押圧する螺着部材217が螺着されている。
【0028】
弾性体3は、ポリウレタン系スポンジからなる再生スポンジ材により軸線方向の長さが210mm程度の略円筒形状のものが用いられている。この弾性体3は、棒材12を中心にして2つに分割された断面略半円柱形状の半円弾性片31,31(分割片)を接着剤(図示せず)により接着して略円筒形状に形成されている。弾性体3としては、コンクリートからの打設時から硬化時までの外圧に十分に反発し得る高反発のものが適用される。
【0029】
そして、弾性体3としては、再生スポンジ材を粉砕してチップ状にする粉砕工程と、この粉砕工程により粉砕したチップ状にした同スポンジ及び複数の他のスポンジチップとを結合剤と共に略円柱形状の型に入れ、圧縮しながら蒸気で加熱して再生スポンジ体を成形する成形工程と、この成形工程により成形した再生スポンジ体を製品形状となる半円筒形状に切断する仕上げ工程とを経て再生スポンジを得る。このとき、複数の他のスポンジチップを混合させた再生スポンジを用いることで、好みの硬さに成形される。なお、ポリウレタン系スポンジに代えて、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどのスポンジ材のように、接着剤による張り合わせに適した素材が用いられていてもよい。
【0030】
また、半円弾性片31,31を接着する接着剤としては、主にSBS熱可塑性ゴム(スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー)とする接着剤が用いられている。この接着剤としては、コンクリートから引抜く時に剥離が生じないものであれば、いずれの接着剤も使用可能である。また、接着剤としては、合成接着剤や天然系の接着剤も利用可能である。このとき、合成接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等が挙げられる。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等、各種助剤を適宜使用してもよい。
【0031】
円筒体4は、略水平状の平坦なコンクリート面K1に凹設した竪穴Tからの剥離性を考慮してポリウレタン(PU)よりなる合成樹脂製のものが適用されている。この円筒体4は、コンクリート面K1に形成される直径100mmかつ竪穴Tの深さが約200mmに設定されているため、軸線方向の長さとして240mm程度のものが用いられている。この円筒体4に圧入される弾性体3の軸線方向の長さが210mmに設定されているため、弾性体3はコンクリート面K1よりも10mm程度上方に、円筒体4はコンクリート面K1よりも40mm程度上方にそれぞれ位置している。なお、円筒体4は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂製のものであってもよい。
【0032】
ここで、型枠A,Aに対し打設されるコンクリートKのコンクリート面K1にボイド装置Xにより竪穴Tを形成する際の手順について説明する。
【0033】
先ず、両型枠A,Aの上面にそれぞれ設置された台座A2,A2上に桟木A1の両端を固着し、竪穴Tの上方に対応する桟木A1の対応位置に固定片21を取り付ける。このとき、竪穴Tの中心軸上に固定片21の上片211及び下片212の挿通孔214の中心が合致するように、上片211の各釘孔219に対し釘材215を打ち込んで固定片21を桟木A1の対応位置に固着する。
【0034】
それから、固定片21の上片211及び下片212の挿通孔214に対し芯体1の棒材12を下方から挿通し、縦片213の螺子孔216に対し螺着部材22の螺子部221を締め付けて棒材12の上端を押圧して固定する。このとき、型枠A,A内に打設したコンクリートKのコンクリート面K1に深さ約200mmの竪穴Tを形成するに当たり、円筒体4の上端がコンクリート面K1よりも40mm程度上方に、弾性体3の上端がコンクリート面K1よりも30mm程度上方にそれぞれ位置するように、棒材12を位置決めした状態で、螺子孔216に対し螺着部材22の螺子部221を締め付けて棒材12の上端を押圧して固定する。
【0035】
図7図2のボイド装置Xのコンクリート打設後の斜視図、図8図7のボイド装置Xの固定具2をコンクリート硬化後に取り外した状態を示す斜視図、図9図8のボイド装置Xの棒材12、円筒体4及び弾性体3を竪穴から取り外した状態を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0036】
図7図9に示すように、コンクリートKの硬化後は、螺着部材22を緩めて棒材12の上端を押圧する螺子部221を離間させ、各釘材215を外してから固定具2を桟木A1から取り外し、両型枠A,Aの離脱に伴い桟木A1及び台座A2を取り外す。それから、棒材12と共に円筒体4を弾性体3の圧接力により引き抜き、平坦なコンクリート面K1に竪穴Tを形成する。
【0037】
したがって、本実施の形態では、コンクリートKを打設する際に両型枠A,Aの桟木A1に対し棒材12の上端を固定具2により固定し、吊下した棒材12を中心とする略円柱形状の弾性体3を底板11に載せ、この弾性体3の外周面が合成樹脂製の円筒体4の内周面に対し圧接されているので、コンクリートKの硬化後に固定具2による上端の固定を解除した棒材12を底板11に弾性体3を載せた状態で引き抜くと、円筒体4がコンクリートKとの接触面(竪穴Tの周面)から離脱してコンクリート面K1に竪穴Tが形成される。
【0038】
このとき、棒材12を引き抜くと、弾性体3の圧接力により合成樹脂製の円筒体3がコンクリートKの竪穴Tから離型する。これにより、棒材12及び固定具2はもちろんのこと、弾性体3及び円筒体4もコンクリート面K1に竪穴Tを形成する際に再利用可能であり、廃棄作業を不要にしつつボイド装置Xのコストの低廉化を図ることができる。
【0039】
また、弾性体3が棒材12を中心にして2つの半円弾性片31,31に分割されているので、弾性体3を略円柱形状に成形する必要がなくなってコンパクトな略半円柱形状で済み、弾性体3の分割化により半円弾性片31,31の成形作業のコンパクト化を図ることができる。
【0040】
更に、棒材12を中心にして2つに分割した各半円弾性片31の分割面が接着剤により固定されているので、弾性体3の分割化により各半円弾性片31の成形作業のコンパクト化を図りつつ、略円柱形状の弾性体3としての機能を確保することができる。
【0041】
また、両型枠Aの桟木A1に固定した固定片21の上下両片211,212の挿通孔214に棒材12の上端を挿通し、この棒材12の上端を、固定片21に螺着した螺着部材22の螺着に伴い押圧することで、固定具2として機能させている。これにより、上下の挿通孔214及び螺着孔216を有する固定片21と螺着部材22とで固定具2を簡単に構成することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施の形態を図10図15に基づいて説明する。
【0043】
この実施の形態では、コンクリート面が傾斜する場合の弾性体の構成を変更している。なお、ボイド装置の構成は前記第1の実施の形態を同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0044】
図10は本発明の第2の実施の形態に係るボイド装置の弾性体に薄型弾性体を積層する状態でのコンクリート打設前の斜視図を示している。また、図11図10のボイド装置Xを正面側から見た正面図、図12図10のボイド装置Xのコンクリート打設後の斜視図をそれぞれ示している。更に、図13図10のボイド装置Xを一方の型枠Aを取り外した状態で側方から見た側面図、図14図13のボイド装置Xをコンクリート硬化後に竪穴Tから取り外した状態を示す斜視図、図15図13のボイド装置Xをコンクリート硬化後に竪穴Tから取り外した状態で側方から見た側面図をそれぞれ示している。
【0045】
すなわち、本実施の形態では、図10及び図11に示すように、桟木A1の両端は両型枠A,Aの上端に固着されている。この桟木A1は、ほぼ水平な状態で両型枠A,Aの上端に架設されている。このとき、図12図15に示すように、両型枠A,Aに対し打設されるコンクリートKがその両型枠A,Aの互いに向き合う面上において傾斜するコンクリート面K2を形成することがあり、その場合、コンクリート面K2は、両型枠A,Aの一側(図13では右側)が高所に、他側(図13では左側)が低所となるように傾斜する。
【0046】
また、コンクリート面K2が傾斜して高低差があると、ボイド装置Xの円筒体4の谷側(コンクリート面K2の低所側)に比して山側(コンクリート面K2の高所側)の方にコンクリートKが被ってしまい、弾性体3の山側がコンクリート面K2よりも下方に位置することがある。このため、円筒体4の山側において弾性体3による反発力が得られないと、コンクリートKの打設時及び硬化時のコンクリート圧による円筒体の変形が余儀なくされる。そこで、弾性体3の上面に棒材12を中心にして略円柱形状の薄型弾性体5を積層して弾性体3を嵩上げし、この弾性変形可能とする薄型弾性体5の反発力により円筒体4の内周面に対し圧接させている。
【0047】
この薄型弾性体5も、弾性体3と同様にポリウレタン系スポンジからなる再生スポンジ材により軸線方向の長さが20mm程度の薄い略円筒形状のものが用いられている。この薄型弾性体5は、棒材12を中心にした薄い略円筒形状に形成され、棒材12を貫通させる挿通孔51を備えている。薄型弾性体5としては、コンクリートKの打設時から硬化時までの外圧に十分に反発し得る高反発のものが適用される。なお、ポリウレタン系スポンジに代えて、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどのスポンジ材のように、接着剤による張り合わせに適した素材が用いられていてもよい。
【0048】
このとき、型枠A,A内に打設したコンクリートKのコンクリート面K2に深さ約200mmの竪穴Tを形成するに当たり、竪穴Tの谷側(低所側)を基準にした深さとする必要がある。そのため、円筒体4の谷側の上端がコンクリート面K2よりも40mm程度上方に、弾性体3の谷側の上端がコンクリート面K1よりも30mm程度上方にそれぞれ位置するように、棒材12を位置決めした状態で、螺子孔216に対し螺着部材22の螺子部221を締め付けて棒材12の上端を押圧して固定する。
【0049】
したがって、本実施の形態では、弾性体3の上面に薄型弾性体5を積層することで、弾性体3の軸線方向の長さが嵩上げされる。このため、傾斜するコンクリート面K2よりも弾性体3の上面の山側が下方に位置していても、薄型弾性体5によって弾性体3の軸線方向の長さが嵩上げされ、傾斜するコンクリート面K2よりも上方に薄型弾性体5の上面を位置させることが可能となる。これにより、コンクリート面K2が傾斜していても、打設時及び硬化時のコンクリートK圧による円筒体4の変形が薄型弾性体5により回避され、傾斜するコンクリート面K2に竪穴Tを円滑に形成することができる。
【0050】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において適宜の径あるいは長さ変更可能である。前記各実施の形態では、コンクリート面K1,K2に形成される竪穴Tを直径100mmでかつ深さ約200mmに設定したが、竪穴が径50mm~300mmでかつ深さ100mm~600mmに設定されていてもよい。その場合、コンクリート面を傾斜させる必要がある際に薄型弾性体を使用することを考慮して、竪穴の深さに対しその竪穴の深さの20%程度のマージンを円筒体の軸線方向の長さに見込んでおくことも可能である。
【0051】
また、前記各実施の形態では、弾性体3を2つの半円弾性片31,31に分割したが、棒材を中心にして3つ以上に分割されていてもよく、一方、分割されずに略円柱形状のままであってもよい。
【0052】
更に、前記各実施の形態では、2分割した半円弾性片31,31の分割面同士を接着剤により接着したが、接着剤により半円弾性片同士が接着されずに円筒体の内部に嵌入された状態で棒材に挿通されていてもよい。
【0053】
また、前記第2の実施の形態では、薄型弾性体5を単一の薄い円柱形状に形成したが、薄型弾性体が棒材を中心にした複数の分割片に分割されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 芯体
11 底板
12 棒材
2 固定具
21 固定片
214 挿通孔
22 螺着部材
3 弾性体
31 半円弾性片(分割片)
4 円筒体
5 薄型弾性体
A 型枠
A1 桟木
K コンクリート
K1 コンクリート面
K2 コンクリート面
T 竪穴
X ボイド装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15