(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120684
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】やわらか食品及びそれを製造するための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20230823BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230823BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230823BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20230823BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L35/00
A23L5/00 A
A23L17/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023665
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】行光 由莉
【テーマコード(参考)】
4B018
4B034
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B018LB05
4B018LB06
4B018MD02
4B018MD34
4B018MD36
4B018MD61
4B018MD70
4B018MD91
4B018MD93
4B018ME14
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4B018MF08
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4B035LC03
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4B035LG19
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4B035LK15
4B035LP03
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4B036LF13
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH38
4B036LH44
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、ペースト状又はミンチ状とした食材を利用した成形加熱食品は、冷めると硬くなるところ、冷めても又は冷凍解凍してもやわらかい性状のままの食品とすることにあり、そのような食品を調製するための組成物及びそのような食品の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部と、DE1~7のデキストリン1~5質量部を添加することにより、45℃及び20℃における当該成形加熱食品の硬さが50,000N/m2以下のやわらかい食品を提供することができ、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部に対し、DE1~7のデキストリンを1~5質量部の割合で含む、ミンチ状又はペースト状の食材を加熱成形するための組成物。
【請求項2】
澱粉が、さらにアジピン酸又はリン酸により架橋された澱粉である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉を2~10質量部とDE1~7のデキストリンを1~5質量部の割合で含み、45℃及び20℃における硬さが50,000N/m2以下である、成形加熱食品。
【請求項4】
ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部とDE1~7のデキストリン1~5質量部を、(A)そのまま混合する、又は(B)水若しくは調味液に懸濁若しくは溶解してから混合する、45℃及び20℃における硬さが50,000N/m2以下である成形加熱食品の製造方法。
【請求項5】
ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部とDE1~7のデキストリン1~5質量部を添加する、成形加熱食品の20℃におけるやわらかさを維持する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理後又は冷凍解凍後の冷めた状態において、調理直後のやわらかさを維持した成形加熱食品、及びそのような食品を調製するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品咀嚼・嚥下困難者は摂食時に窒息・誤嚥しやいため、咀嚼・嚥下困難者に食事を提供する際は、固形状食品であれば十分に柔らかくなるまで加熱し、マッシャーなどで舌や歯茎で容易につぶすことができるミンチ状にするか、ミキサーなどで飲み込みやすいペースト状にすることがほとんどである。そして、それが液分離する状態であれば、気管に流入しないようゲル化剤でゲル化又はゾル化させて、咀嚼・嚥下困難者の咀嚼・嚥下に適切な物性とすることもある。しかし、ミンチやペーストをゲル化剤でゲル化又はゾル化させた場合であっても、経時的に又は冷凍解凍を繰り返すなどにより離水を生じるため、これを誤嚥し、誤嚥性肺炎の危険が生じる。したがって、そのような離水を極力抑える必要がある。
【0003】
咀嚼・嚥下困難者用の食品を簡便に調製するための補助剤等がこれまでに提案されている。例えば、加熱不可逆性のゲルを形成可能なカードランとセルロースを併用したゼリー状食品用ゲル化剤(特許文献1)や、カードランと加工デンプンを併用した咀嚼困難者用食品の離水抑制剤(特許文献2)が開示されている。また、温かい状態でも冷たい状態でも良好な物性を得るために、熱可逆性のある加熱凝固ゲル化剤(メチルセルロース又はヒドロキシピロピルメチルセルロース)と熱可逆性のある冷却凝固ゲル化剤(寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、ゼラチン、ローカストビーンガム及びキサンタンガム、グルコマンナン及びキサンタンガム、タラガム及びキサンタンガム、並びにカシアガム及びキサンタンガムより選ばれる1以上)を併用した摂食・嚥下補助剤が開示されている(特許文献3)。
【0004】
しかし、カードランとセルロース、カードランと加工澱粉の各組み合わせ、加熱凝固ゲル化剤(置換型セルロース)では、ペースト食品に保形性を与えるものの硬さを生じるため食感が好ましくない。これは、タンパク質を多く含む食材、たとえば畜肉や魚肉をペースト状又はミンチ状としたものに対して使用したときに顕著であり、冷めた状態や冷凍解凍後にはさらに硬くなるため、より食感に違和感を生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-319048号公報
【特許文献2】国際公開WO2017/017953号
【特許文献3】特開2014-236700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ペースト状又はミンチ状とした食材を利用した成形加熱食品について、冷たい状態で又は冷凍解凍しても、硬くなることなくやわらかい性状のままとすること、及びそのような食品を調製するための組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ワキシータピオカを原料とする加工澱粉と低DEデキストリンを併用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下[1]~[5]からなるものである。
[1]ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部に対し、DE1~7のデキストリンを1~5質量部の割合で含む、ミンチ状又はペースト状の食材を加熱成形するための組成物。
[2]澱粉が、さらにアジピン酸又はリン酸により架橋された澱粉である、[1]記載の組成物。
[3]ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉を2~10質量部とDE1~7のデキストリンを1~5質量部の割合で含み、45℃及び20℃における硬さが50,000N/m2以下である、成形加熱食品。
[4]ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部とDE1~7のデキストリン1~5質量部を、(A)そのまま混合する、又は(B)水若しくは調味液に懸濁若しくは溶解してから混合する、45℃及び20℃における硬さが50,000N/m2以下である成形加熱食品の製造方法。
[5]ミンチ状又はペースト状の食材100質量部に対し、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の加工を施してなるワキシータピオカ澱粉2~10質量部とDE1~7のデキストリン1~5質量部を添加する、成形加熱食品の20℃におけるやわらかさを維持する方法。
【発明の効果】
【0009】
ミンチ状又はペースト状の食材を成形調理する際に、本発明の組成物を使用すれば、調理後の冷めた状態又は冷凍解凍後にも硬くなることなく、やわらかい性状のままの食品(介護食)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における「成形加熱食品」とは、野菜、果物、豆、穀類、肉、魚介、卵、乳製品、若しくはこれらの加工食品などの食材をそのまま又は加熱してからマッシャーやミキサーなどで破砕、磨砕、裏ごしなどして得た破砕物、磨砕物若しくはペースト(以下、ミンチ、ペーストとも呼ぶ)に対し、必要に応じて調味料や助剤等を混合し、加熱により保形又は成形した食品であり、介護食、やわらか食などを含む。なお、本発明にいう「成形加熱食品」は、製造時の成形と加熱の順は問わず、「加熱成形食品」と同義であり、以降、単に「本発明の食品」などということもある。
【0011】
介護食とは、一般に、(1)健康増進法第43条第1項に基づく消費者庁長官の許可を受けて表示販売が可能となる「特別用途食品」の範疇にある「えん下困難者用食品」、(2)日本介護食品協議会が策定する自主規格「ユニバーサルデザインフード」(区分1~4)に該当する「高齢者食品」又は「そしゃく困難者食品」のいずれかをいう。本明細書で用いる「介護食」は、具体的には、上記(2)の「ユニバーサルデザインフード」における「区分2」の物性規格「かたさ上限値50000N/m2」(ゲル)を満たす食品群を意図する(当該かたさ値は、直径20mm円柱型プランジャーを10mm/秒の速度でサンプル厚みの70%まで押し込んだ際の荷重値)。
【0012】
本発明の組成物の必須成分のひとつは、澱粉である。澱粉は、ワキシー種の澱粉を用いることを必須とし、ワキシー種のなかでも、ワキシータピオカを原料とする澱粉を用いるのが好ましい。また、当該ワキシー種の澱粉は、エーテル化又はエステル化のいずれか一以上の加工が施されたものが好ましく、エーテル化の処理は、澱粉の水酸基をエーテル化できる基剤であればどのようなものを用いても行うことができるが、酸化プロピレンを用いたヒドロキシプロピル化が好ましく、エステル化は、酢酸ビニルや無水酢酸を用いたアセチル化のほか、オクテニルコハク酸基やリン酸基を導入するのでもよいが、アセチル化のほうがより好ましい。以上のエーテル化又はエステル化の処理に際しては、同時又は異時に架橋化剤のトリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンなどを作用させて架橋してもよく、そのようにして得られる加工澱粉は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉である。
【0013】
以上のとおり、本発明の組成物の一として用いる澱粉は、ワキシータピオカ澱粉を原料とするヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉のいずれか一以上を選択することが好ましく、そのなかでもヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉がもっとも好ましい。なお、そのヒドロキシプロピル化の程度はとくに限定するものではないが、ヒドロキシプロピルによる置換度(澱粉を構成するグルコース残基の3つのフリーの水酸基すべてが置換されたときの置換度を3とする)が、0.03~0.2のものが好ましく、0.07~0.18、さらには0.09~0.16のものがより好ましい。また、リン酸による架橋度(後述する方法で測定される沈降積)は、8~10mlが好ましく、9~10ml、10ml程度がさらに好ましい。
【0014】
加工澱粉の架橋度の一般的な測定方法(以降、「定法」という。)は、以下である。まず、塩化アンモニウム26質量部、塩化亜鉛10質量部及び水64質量部からなる溶液15mlを、澱粉試料0.15gが秤量された試験管に注いで懸濁液とする。次に、これを沸騰浴中で10分間加熱後、流水で冷却し、10ml容メスシリンダーの10mlの目盛りまで流し込む。そして、25℃で20時間静置後、沈降物の目盛りを沈降積とする。
【0015】
本発明の組成物における上記澱粉の使用割合は、食品における内部離水防止の観点及びやわらかさ維持の観点から、ペースト状又はミンチ状とした食材100質量部に対し、少なくとも2質量部以上であることが好ましく、やわらかい食感をより重視する場合は、3質量部以上、4質量部以上、6質量部以上とするのがよい。もっとも、過剰に添加するとコスト面から好ましくなく、効果とのバランスを考慮して10質量部までにとどめるのがよい。
【0016】
本発明の組成物のもうひとつの必須成分は、低DEのデキストリンである。 デキストリンとは、澱粉を酵素又は酸により分解した澱粉分解物であり、冷水可溶である。本発明で用いるデキストリンは、DE(Dextrose Equivalentの略。完全に分解されてすべてグルコースとなった場合はDE100となる。)の値が低い、具体的には、DEが0.5以上19未満であることが好ましく、1以上9未満、さらには1以上7未満がより好ましい。デキストリンの原料となる澱粉種はとくに限定されず、タピオカ、甘藷、コーン、米、馬鈴薯、小麦、及びこれらの糯種など、どのような種であってもよいが、本発明の効果を効率よく得る観点からはタピオカ、甘藷、コーンから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の組成物におけるデキストリンの使用割合は、ペースト状又はミンチ状とした食材100質量部に対し少なくとも1質量部以上であることを要するが、多用すると生地粘度の低下における成形不良及び糊感(滑る食感)が出現するため、10質量部を超えないことが望ましい。すなわち、デキストリンの好ましい添加量は、1~10質量部であり、より好ましくは2~8質量部、さらに好ましくは3~5質量部である。デキストリンは、粉状のまま材料に混ぜ込んでもよいが、材料のひとつである水や調味液といった液体に予め溶解しておき、これを他の材料(ミンチ肉や魚肉ペーストなど)に混ぜ込むほうがより均一に分散され、本発明の効果が効率よく発揮される。
【0018】
本発明の食品の特徴は、調理後冷めてもやわらかい、又は冷凍解凍後にもやわらかいまま保形されることにあり、具体的には、20℃及び45℃のいずれにおいても硬さが5,000N/m2以下であることをいう。この硬さは、食感計測器、例えば、CREEPMETER RE-33005B((株)山電)のテクスチャー解析ソフトを用い、20mmプランジャー、圧縮速度10mm/sec、及びクリアランス30%の条件で2回圧縮し、測定することができる。一方、凝集性及び付着性は、硬さ測定と同様の機器及び条件で測定することができ、硬さが1 回目の圧縮ピークの高さ(N/m2)で表されるのに対し、付着性は1回目の圧縮直後の引っ張り過程の負の応力を示すピーク面積(J/m3)、凝集性は2回目の圧縮ピークと1回目の圧縮ピークの面積比で表される。
【0019】
本発明の食品の特徴は、上述のとおり、20℃及び45℃のいずれにおいても硬さが5,000N/m2以下であることが必須である。また、食品加熱後に「歩留まり」を測定しておくことは、食品の離水の確認に役立つ。本明細書における歩留まりとは、「加熱前重量に対する加熱後重量の割合(%)」である。歩留まり(%)が高いほど食品が水分を保持しているということであり、歩留まりが高いということは、食感のやわらかさにつながる。
【0020】
以下、本発明について具体的に詳述するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【実施例0021】
<やわらか鶏だんご>
以下の表1の原料のうち、デキストリンと加工澱粉を水に溶解・懸濁しておき、これを残りの原料とともにミキサーで混合し、20gずつ取り分けて団子状に成形する。次に、蒸気の上がった蒸し器に入れて蒸し上げ(90℃、8分)、-40℃で急速冷凍(数時間)後、-18℃で1晩以上保存する。
【0022】
上述の冷凍した鶏だんごを電子レンジ(500W、6個当たり2~2分30秒加熱)で解凍し、一部(比較例8と実施例3)は、冷蔵庫に一晩置いて自然解凍した。その硬さ、凝集性及び付着性は、クリープメーター(山電(株)「RE2-3305B」)とテクスチャー解析ソフトを用い、20mmプランジャー、圧縮速度10mm/sec、及びクリアランス30%の条件で2回圧縮して測定した。また、鶏だんごの加熱前後の重量を測定しておき、歩留まり((加熱後重量÷加熱前重量)×100%)を算出した。以上の測定結果を表1に示す。なお、表中、「PDx#1」及び「PDx#100」は、それぞれ、松谷化学工業(株)の澱粉分解物製品「パインデックス#1」(DE7~9)及び「パインデックス#100」(DE2~5)の略であり、「レアタップST」は、同社のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(ワキシータピオカ原料、DS0.13、沈降積10)、「松谷マリーゴールド」は、同社のヒドロキシプロピル澱粉(タピオカ原料、DS0.16、沈降積10)「WR-1」は同社の漂白もち米澱粉である。
【0023】
【0024】
鶏モモミンチ100質量部に対してレアタップSTを2質量部添加すると、45℃における硬さが50,000N/m2を超え、冷めたときにさらに硬い食感となった(比較例2)。そこで、さらにPDx#1を3質量部添加してみたところ、依然、20℃における硬さは50,000N/m2を超え、冷めると硬い食感となった(比較例7)。しかし、PDx#1でなくPDx#100を3質量部さらに添加したときは、20℃における硬さは47,537N/m2であり、冷めてもやわらかい食感を維持していた(実施例1)。次に、レアタップSTは添加せずに、PDx#100を3質量部のみ添加してみると、20℃における硬さは50,000N/m2を超え、冷めたときにさらに硬い食感となった(比較例1)。ここまでで、PDx#1でなくPDx#100がやわらかさ維持に効果的であることが判明したので、以降、PDx#100を用いた配合でさらに検討することとした。
【0025】
PDx#100がやわらかさ維持に効果的であったので、レアタップSTを2から1質量部に減らして鶏だんごを作製したところ、20℃における硬さは71,087N/m2であり、50,000N/m2を超えていた(比較例3)。そこで、PDx#100の添加量を3質量部から5質量部に増やしたところ、20℃における硬さは66,740N/m2であり、いまだ50,000N/m2を超えていた(比較例4)。次に、PDx#100を3質量部のままとし、レアタップSTを6質量部まで増やしたところ、20℃における硬さは38,303N/m2であり、レアタップSTの添加量を増やすほどに冷めてもやわらかい食感を維持していた(実施例2)。
【0026】
レアタップST以外の各澱粉による効果を検討するため、レアタップSTをヒドロキシルプロ化タピオカ澱粉の「松谷マリーゴールド」(比較例5)、又は漂白もち米澱粉の「WR-1」(比較例6)に置き換えて鶏だんごの硬さを確認したところ、20℃における硬さは50,000N/m2を超えており、本発明にいうところの効果は見られなかった。
【0027】
また、以上において本発明にいう効果がみられた実施例1の鶏だんごについて、加熱解凍でなく自然解凍による影響を検討したところ、自然解凍によっても20℃における硬さは50,000N/m2未満であり、解凍方法による影響はほとんどみられなかった(実施例3)。
【0028】
<やわらかから揚げ>
下の表2の原料のうち、デキストリンと加工澱粉を水に溶解・懸濁しておき、これを残りの原料とともにミキサーで混合し、20gずつ取り分けて団子状に成形する。次に、蒸気の上がった蒸し器に入れて蒸し上げ(90℃、2分30秒)、から揚げ粉(日清フーズ株式会社製)をまぶし、油調(170℃、2分30秒)する。その後、-40℃で急速冷凍(数時間)後、-18℃で1晩以上保存する。
【0029】
上述の冷凍から揚げを電子レンジ(500W、6個当たり2~2分30秒加熱)で解凍した。その硬さ、凝集性及び付着性は、クリープメーター(山電(株)「RE2-3305B」)とテクスチャー解析ソフトを用いて、20mmプランジャー、圧縮速度10mm/sec、及びクリアランス30%の条件で2回圧縮して測定した。測定結果(表2)のとおり、から揚げの場合も、鶏モモミンチ100質量部に対してPDx#100を3質量部及びレアタップSTを2質量部添加しておくと、20℃における硬さは50,000N/m2未満となり、冷めてもやわらかい状態が維持されていた。
【0030】
【0031】
<やわらかかまぼこ>
下の表3の配合の冷凍すり身に対し、水(氷)、塩、その他紛体原料、液体原料の順に添加して擂潰したものを団子状に成形し(20g)、蒸気の上がった蒸し器に入れて蒸し上げ(90℃、15分)、冷蔵(4℃)で24時間保存する。
【0032】
上述のかまぼこを常温に戻し。その硬さ、凝集性及び付着性を、クリープメーター(山電(株)「RE2-3305B」)及びテクスチャー解析ソフトを用い、20mmプランジャー、圧縮速度10mm/sec、及びクリアランス30%の条件で2回圧縮して測定した。測定結果(表3)のとおり、魚のすり身100質量部に対してPDx#100を3質量部及びレアタップSTを2質量部添加しておくと、20℃における硬さは50,000N/m2未満となり、冷めてもやわらかさが維持されていた。一方、いずれも添加しない、又はPDx#100のみを3質量部添加しても、硬さは50,000N/m2未満にならなかった。
【0033】