(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120685
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】スイング機構を備えた車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20230823BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023666
(22)【出願日】2022-02-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】304003837
【氏名又は名称】有限会社藤原ホイル
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久男
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AD01
3D011AD03
(57)【要約】
【課題】運転状態に応じて車体を適切に傾斜させる。
【解決手段】フレーム1に設けられるセンターポスト4と、センターポスト4に対して軸回り回転自在のハンドル軸3と、車体の幅方向に並列する2つの車輪W,Wを転動自在に支持する対の車輪支持部材60,60と、ハンドル軸3と対の車輪支持部材60,60との間に設けられる操舵機構40と、センターポスト4と対の車輪支持部材60,60とを車体幅方向へ揺動自在に支持するスイング機構10と、ハンドルポスト3の軸回り回転によってセンターポスト4を車体の幅方向へ傾斜させる傾倒機構70を備え、傾倒機構70は、センターポスト4よりも上方でハンドル軸3に取り付けられハンドル軸3とともに軸回り回転動作する回動部材73と、スイング機構10に接続された作用部材71とを備えた前二輪車両とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(F)に車体の幅方向に並列する2つの車輪(W,W)を備えた車両において、
フレーム(1)と、前記フレーム(1)に設けられる上下方向のセンターポスト(4)と、前記センターポスト(4)に対して軸回り回転自在のハンドル軸(3)と、前記幅方向に並列する前記2つの車輪(W,W)を転動自在に支持する対の車輪支持部材(60,60)と前記ハンドル軸(3)と前記対の車輪支持部材(60,60)との間に設けられる操舵機構(40)と、前記センターポスト(4)と前記対の車輪支持部材(60,60)とを前記幅方向へ揺動自在に支持するスイング機構(10)と、前記ハンドル軸(3)の軸回り回転によって前記センターポスト(4)を前記幅方向へ傾斜させる傾倒機構(70)を備え、
前記傾倒機構(70)は、前記センターポスト(4)よりも上方で前記ハンドル軸(3)に取り付けられ前記ハンドル軸(3)とともに軸回り回転動作する回動部材(73)と、前記スイング機構(10)に接続された作用部材(71)とを備え、
前記回動部材(73)の軸回り回転動作が前記作用部材(71)に対して伝達されることによって前記作用部材(71)に対して前記センターポスト(4)の上端を相対移動させることで前記センターポスト(4)を前記幅方向へ傾斜させる車両。
【請求項2】
前記スイング機構(10)は、前記対の車輪支持部材(60,60)間を結ぶ上部リンクバー(11)と、前記上部リンクバー(11)よりも下方に設けられる下部リンクバー(12)と、前記上部リンクバー(11)の中央部及び前記下部リンクバー(12)の中央部をそれぞれ前記センターポスト(4)に揺動自在に連結する揺動連結部(15,16)とを備え、前記作用部材(71)は、前記上部リンクバー(11)に接続されている請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記スイング機構(10)は、前記対の車輪支持部材(60,60)間を結ぶ上部リンクバー(11)と、前記上部リンクバー(11)よりも下方に設けられる下部リンクバー(12)と、前記上部リンクバー(11)の中央部及び前記下部リンクバー(12)の中央部をそれぞれ前記センターポスト(4)に揺動自在に連結する揺動連結部(15,16)と、前記上部リンクバー(11)と前記下部リンクバー(12)との間に配置され前記センターポスト(4)に揺動自在に連結される受け部材(13)と、前記下部リンクバー(12)と前記受け部材(13)との間に配置される弾性部材(31)とを備え、前記作用部材(71)は、前記受け部材(13)に接続されている請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記作用部材(71)に対する前記センターポスト(4)の上端の相対移動を規制する切替機構(90)を備えている請求項2または3に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイング機構を備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、前輪に車体幅方向に並列する2つの車輪を備えた自転車、いわゆる前二輪自転車がある。
【0003】
例えば、特許文献1の前二輪自転車は、操向ハンドル28に連なる操向軸27がハンドルポスト21に回動自在に支承されている。ハンドルポスト21には、リンク機構45を介して左右のサイドポスト29L,29Rが連結されている。左右のサイドポスト29L,29Rの下端には、左右の前輪WFL,WFRをそれぞれ回転自在に支持する左右のフロントフォーク30L,30Rが接続されている(符号は該当する特許文献のものを記載。以下同じ。)。
【0004】
リンク機構45は4節リンク機構からなり、左右のフロントフォーク30L,30Rに連結され、左右のサイドポスト29L,29Rに両端がピン結合される上部リンク35Uと、上部リンク35Uよりも下方に配置されて左右のサイドポスト29L,29Rに両端がピン結合される下部リンク35Dを備えている。上部リンク35Uの中央部と、下部リンク35Dの中央部は、ハンドルポスト21に回動自在に連結されている。また、左右のサイドポスト29L,29Rは、上方に向かうにつれて両サイドポスト29L,29Rの間隔が小さくなるように傾斜して配置されている。
【0005】
また、特許文献2の前二輪自転車は、フレームポスト2に操向回転自在に支持されているハンドル軸7と、左右の前輪9L,9Rをそれぞれ回転自在に支持する左右のホークバー11L,11Rと、左右のホークバー11L,11Rを連結して4節リンク機構(平行リンク)を形成する上下のリンクバー12U,12Dと、ハンドル軸7を上下のリンクバー12U,12Dの各中央部に揺動自在に連結する連結部19,22と、平行リンクとハンドル軸7間に設けられた左右の前輪9L,9R軸間の高さ位置の変化を防止する方向に復元力を与えるばね手段13L,13Rとを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-337779号公報(請求項1、
図2及び
図9等参照)
【特許文献2】特開2010-042710号公報(請求項1、
図1及び
図2等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2に記載の自転車では、左右の車輪を支持するフォーク部材又はそのフォーク部材を支持するサイドポストと、操舵用のハンドルを支持するハンドルポストとの間に4節リンク機構を備えたことにより、車体を車輪とともに車体の幅方向(左右方向)へスイングさせることが可能である。さらに、特許文献2の自転車は、車体の幅方向へのスイング機能に加えて、路面から車体に作用する衝撃を緩和するサスペンション機能を備えている。
【0008】
上記のようなスイング機構を備えた自転車では、交差点やカーブを通過する時に車体を傾斜させることでスムーズな走行が可能である。しかし、従来のスイング機構を備えた自転車では、運転者が意図的に体重を横移動させることで、運転者自らが車体の傾斜を制御しなければならないという問題があった。このため、特に高齢者等が運転する場合には、体重の横移動がうまくいかず、運転状態に応じて車体を適切に傾斜させることができない場合があった。また、従来のスイング機構を備えた自転車では、運転者が乗降する際に意に反して車体が傾斜してしまい、運転者がバランスを崩して転倒するおそれがあった。このような問題は、自転車だけではく、前二輪形式の原動機付自転車やバイク等、車輪に対してフレームを傾斜させることができるスイング機構を備えた各種車両においても生じ得る。
【0009】
そこで、この発明は、スイング機構を備えた車両において、運転状態に応じて車体を適切に傾斜させることを第一の課題とし、車体のスイングにより運転者がバランスを崩す事態を防止することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第一の課題を解決するために、この発明は、前輪に車体の幅方向に並列する2つの車輪を備えた車両において、フレームと、前記フレームに設けられる上下方向のセンターポストと、前記センターポストに対して軸回り回転自在のハンドル軸と、前記幅方向に並列する前記2つの車輪を転動自在に支持する対の車輪支持部材と前記ハンドル軸と前記対の車輪支持部材との間に設けられる操舵機構と、前記センターポストと前記対の車輪支持部材とを前記幅方向へ揺動自在に支持するスイング機構と、前記ハンドル軸の軸回り回転によって前記センターポストを前記幅方向へ傾斜させる傾倒機構を備え、前記傾倒機構は、前記センターポストよりも上方で前記ハンドル軸に取り付けられ前記ハンドル軸とともに軸回り回転動作する回動部材と、前記スイング機構に接続された作用部材とを備え、前記回動部材の軸回り回転動作が前記作用部材に対して伝達されることによって前記作用部材に対して前記センターポストの上端を相対移動させることで前記センターポストを前記幅方向へ傾斜させる車両を採用した。
【0011】
ここで、前記スイング機構は、前記対の車輪支持部材間を結ぶ上部リンクバーと、前記上部リンクバーよりも下方に設けられる下部リンクバーと、前記上部リンクバーの中央部及び前記下部リンクバーの中央部をそれぞれ前記センターポストに揺動自在に連結する揺動連結部とを備え、前記作用部材は、前記上部リンクバーに接続されている構成を採用できる。
【0012】
また、前記スイング機構は、前記対の車輪支持部材間を結ぶ上部リンクバーと、前記上部リンクバーよりも下方に設けられる下部リンクバーと、前記上部リンクバーの中央部及び前記下部リンクバーの中央部をそれぞれ前記センターポストに揺動自在に連結する揺動連結部と、前記上部リンクバーと前記下部リンクバーとの間に配置され前記センターポストに揺動自在に連結される受け部材と、前記下部リンクバーと前記受け部材との間に配置される弾性部材とを備え、前記作用部材は、前記受け部材に接続されている構成を採用できる。
【0013】
また、前記作用部材に対する前記センターポストの上端の相対移動を規制する切替機構を備えている構成を採用できる。
【発明の効果】
【0014】
前輪に、車体の幅方向に並列する2つの車輪を備え、車体の幅方向へのスイング機能を備えた車両において、運転状態に応じて車体を適切に傾斜させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第一の実施形態を示す要部拡大斜視図
【
図5】
図1の状態から操舵用ハンドルを進行方向左側にきろうとした状態を示す斜視図
【
図7】この発明の第二の実施形態を示す要部拡大正面図
【
図11】この発明の第三の実施形態を示す要部右側面図
【
図13】第三の実施形態において、操舵用ハンドルを進行方向左側にきろうとした状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1~
図6は第一の実施形態を、
図7~
図10は第二の実施形態を、
図11~
図13は第三の実施形態を、
図14は自転車100の全体図を示している。
【0017】
自転車100の基本構成は、
図1及び
図14に示すように、車体の前後方向に延びるフレーム1と、フレーム1の前端に車輪支持ユニットUを介して取り付けられる車輪W(前輪F)と、フレーム1に前後方向中ほどにシートポストを介して昇降自在に取り付けられるサドル5と、フレーム1の後端に取り付けられる車輪W(後輪R)等を備えている。
【0018】
フレーム1の前端には、上下方向に伸びる円筒状のセンターポスト4が設けられている。センターポスト4は、ペダルを備えたクランク軸を回転自在に支持するボトムブラケット部から、前方へ向かって上方へ傾斜するように設けられたメインフレームの前端に突出して設けられている。センターポスト4には断面円形のハンドル軸3が挿通され、そのハンドル軸3はベアリングを介して軸回り回転自在に支持されている。ハンドル軸3の上端3aには、クランプ部材によって操舵用ハンドル2が接続されている。操舵用ハンドル2の両端のグリップ部2aを運転者が掴んで操作する。また、操舵用ハンドル2の両端には前輪F及び後輪Rに付与する制動力を調整するブレーキレバーが設けられている。以下、この第一の実施形態では、センターポスト4をハンドルポスト4と称する。
【0019】
ハンドル軸3は、ハンドルポスト4から下方へ突出してその下部に車輪Wを転動自在に支持する車輪支持部材60が取り付けられている。一般的な前一輪自転車の車輪支持部材60は、ハンドル軸3側が1本の軸で構成され、車輪W側は二股に分かれてその先端で車輪Wのハブ軸の両端を支持する構造となっている。これに対して、この発明では、フレーム1に、前二輪に対応した車輪支持ユニットUを取り付けるために、ハンドル軸3はハンドルポスト4の下端付近までの部材で構成されている。
【0020】
第一の実施形態の車輪支持ユニットUは、
図1~
図6に示すように、ハンドルポスト4の外側に固定される中央部材14を備えている。この実施形態では、中央部材14はハンドルポスト4とは別体の部材とし、中央部材14をハンドルポスト4に対して着脱自在としている。車輪支持ユニットUの中央部材14を、ハンドルポスト4に着脱自在としたことから、前一輪自転車を前二輪自転車に改造することができる。中央部材14は、円筒状を成すハンドルポスト4を前後左右から嵌め込み、ボルト及びナット等の適宜の手段で締め付けて固定されている。ただし、中央部材14を着脱自在としない仕様も可能である。この場合、中央部材14とハンドルポスト4とを溶接等で一体化した部材で構成してもよいし、あるいは、ハンドルポスト4自身を中央部材14としてもよい。
【0021】
また、車輪支持ユニットUは、車体幅方向に並列する2つの車輪W,Wを転動自在に支持する対の車輪支持部材60,60と、対の車輪支持部材60,60と中央部材14との間、すなわち、対の車輪支持部材60,60とハンドルポスト4との間に設けられ、ハンドルポスト4と対の車輪支持部材60,60とを車体幅方向へ揺動自在に支持する第一のリンク機構(スイング機構)10と、対の車輪支持部材60,60とハンドルポスト4との間に配置され車輪W,Wからフレーム1への衝撃を緩和する弾性部材31を備えたサスペンション機構30と、対の車輪支持部材60,60とハンドル軸3との間に設けられる第二のリンク機構(操舵機構)40と、を備えている。この実施形態では、対の車輪支持部材60,60として、それぞれフォーク部材を採用している。フォーク部材は、前述の一般的なものと同様に、上方側が1本の軸で構成され、車輪W側は二股に分かれてその先端で車輪Wのハブ軸の両端を支持する構造となっている。
【0022】
対の車輪支持部材60,60の上端は、それぞれ筒状を成す対のサイドポスト50,50内に挿通されてその対のサイドポスト50,50に支持されている。左側の車輪支持部材60は、左側のサイドポスト50に軸回り回転自在に支持され、右側の車輪支持部材60は、右側のサイドポスト50に軸回り回転自在に支持されている。左右の車輪Wの回転中心面、タイヤを保持するリム部の幅方向中心線を含む面は、左右それぞれのサイドポスト50の軸線を含む位置、又は、そのサイドポスト50の軸線と平行な位置に配置されている。なお、左右のサイドポスト50,50の軸線同士は、互いに平行であるか、あるいは、上方へ向かって徐々に近づくようにややキャンバーを付けた構成であってもよい。
【0023】
第一のリンク機構10は、上部リンクバー11と、上部リンクバー11よりも下方に設けられる下部リンクバー12と、上部リンクバー11の中央部及び下部リンクバー12の中央部をそれぞれ中央部材14に対して、すなわちハンドルポスト4に対して揺動自在に連結する揺動連結部15,16とを備えている。
【0024】
上部リンクバー11及び下部リンクバー12の両端は、それぞれ対のサイドポスト50,50間にピン結合されて、その接続部はピンの軸回りに揺動自在である。上部リンクバー11とサイドポスト50,50とは、それぞれピン17を介して接続されている。また、下部リンクバー12とサイドポスト50,50とは、それぞれピン18を介して接続されている。ピン17,18の軸線は車体の前後方向を向き、且つ、サイドポスト50,50の軸線に直交するように設定されている。また、上部リンクバー11の中央部及び下部リンクバー12の中央部をそれぞれ中央部材14に対して揺動自在に連結する揺動連結部15,16もピンで構成されており、その揺動連結部15,16のピンの軸方向は、ピン17,18に平行な配置となっている。
【0025】
第二のリンク機構40は、
図1~
図3に示すように、ハンドル軸3の下端3bに接続される横方向へ伸びる中央接続片46と、その中央接続片46の前端部に設けられる上下方向の接続軸46a,46bを備えている。ハンドル軸3と中央接続片46とは嵌め込み固定であり、
図6に示すように、ハンドル軸3と中央接続片46とが下方から締め付けられるように固定されている。
【0026】
図1に示すように、対の車輪支持部材60の上端には、前方へ突出する接続片41a,41bが設けられ、その接続片41a,41bの端部に上下方向の支持軸45a,45bが設けられている。運転者から見て右側の車輪支持部材60から伸びる接続片41aの支持軸45aと、ハンドルポスト4の下端に設けられた中央接続片46から立ち上がる接続軸46aとの間は、操舵用リンクバー43aで接続されている。また、運転者から見て左側の車輪支持部材60から伸びる接続片41bの支持軸45bと、中央接続片46から立ち上がる接続軸46bとの間は、同じく操舵用リンクバー43bで接続されている。各操舵用リンクバー43a,43bの両端は、それぞれ環状の接続部42a,42b及び環状の接続部44a,44bを介して、支持軸45a,45b及び接続軸46a,46bの軸回りに揺動自在である。運転者が操舵用ハンドル2を旋回動作させると、第二のリンク機構40の機能によって、左右それぞれの車輪支持部材60がサイドポスト50の軸回りに回転して、車輪W,Wが同方向に回転する。直進方向に対する各車輪W,Wの操舵角は、操舵用ハンドル2の旋回量(回転角度)によって調整することができる。これにより、交差点やカーブを通過する際の旋回が可能である。
【0027】
サスペンション機構30は、上部リンクバー11と下部リンクバー12との間に配置され、中央部材14に揺動自在、すなわち、ハンドルポスト4に揺動自在に連結される受け部材13を備えている。受け部材13は、連結部19によってハンドルポスト4に支持されている。弾性部材31は、下部リンクバー12と受け部材13との間に配置されるコイルバネで構成されている。
図2及び
図3に示すように、弾性部材31の下端は下部リンクバー12の両端に当接した状態に保持され、弾性部材31の上端は受け部材13の両端に当接した状態に保持されている。図中の符号32は、上方側のバネ受けを示し、符号33は下方側のバネ受けを示している。また、符号34は、上部リンクバー11と受け部材13との相対移動を案内するガイドを示している。
【0028】
なお、この実施形態では、上部リンクバー11は、中央部材14を挟んで車体幅方向一方側(運転者から見て右側)に配置される第一上部リンクバー11aと、他方側(運転者から見て左側)に配置される第二上部リンクバー11bとに分割して構成されているが、これを、全長に亘って連続する一つの部材で構成してもよい。また、下部リンクバー12についても同様に、中央部材14を挟んで車体幅方向一方側に配置される第一下部リンクバー12aと、他方側に配置される第二下部リンクバー12bとに分割して構成されているが、これを、全長に亘って連続する一つの部材で構成してもよい。受け部材13については、左右両側に弾性部材31を配置しているため、左右で部材を分割せずに全長に亘って連続する一つの部材で構成することが望ましい。
【0029】
また、車輪支持ユニットUは、ハンドル軸3の軸回り回転によってハンドルポスト4を、車体幅方向へ傾斜させる傾倒機構70と、第一のリンク機構10を構成する上部リンクバー11と下部リンクバー12との車体幅方向への相対移動をロックすることで、第一のリンク機構10のスイング機能を停止する切替機構90(
図6参照)とを備えている。
【0030】
傾倒機構70は、
図3~
図5に示すように、ハンドル軸3の軸回り回転によって動作する回動部材73と、スイング機構10に接続された作用部材71とを備えている。回動部材73の動作によって、作用部材71に対してハンドルポスト4の上端を車体幅方向へ相対移動させることで、ハンドルポスト4の上端と下端とを結ぶラインを車体幅方向へ傾斜させることができる。
【0031】
第一の実施形態では、作用部材71は、ハンドル軸3の後方側に位置して、スイング機構10の受け部材13に対して2箇所のピン77,77で接続されている。ピン77,77は、作用部材71のピン孔78a,78aと受け部材13のピン孔78b,78bに固定されて、作用部材71と受け部材13とは相対移動不能である(
図4参照)。なお、自転車100の仕様によっては、受け部材13が省略される場合もある。受け部材13が省略される場合は、サスペンション機構30の弾性部材31は、上部リンクバー11と下部リンクバー12との間に配置される。また、弾性部材31を備えたサスペンション機構30が省略される場合もある。受け部材13が省略される場合、作用部材71はスイング機構10を構成する他の部材に接続することができる。例えば、作用部材71は、上部リンクバー11や、その上部リンクバー11をハンドルポスト4に支持する揺動連結部15に接続することができる。
【0032】
作用部材71の上端縁は、
図5に示すように、上方へ向かって突出する円弧状である。その円弧状の上縁に沿って、その円弧の方向に並列する複数の歯72が設けられている。また、回動部材73には、その後縁に沿って並列する複数の歯74が設けられている。作用部材71の歯72と、回動部材73の歯74とは互いに噛み合っている。例えば、自転車100が、
図5に示す正面図のように、左方向へ旋回するようにハンドル軸3が軸回り回転すると、回動部材73がハンドル軸3と同じ方向へ回転する。歯72と歯74の噛み合いによって、固定の作用部材71に対して回動部材73が軸回り回転しながら車体幅方向に沿って相対移動していく。ハンドルポスト4の上端が、
図5に示す右方向へ移動するので、ハンドルポスト4は上端が車体幅方向に対して運転者から見て左へ(
図5中の右へ)、下端が車体幅方向に対して右へ(
図5中の左へ)傾斜する。これにより、フレーム1を左旋回に対応した方向へ、すなわち、車体及び運転者の重量の重心を車体幅方向に対して左側へ偏心させる方向へ傾斜させることができる。なお、自転車100が右方向へ旋回する場合は、
図5と反対方向にそれぞれの部材が動作して、フレーム1を右旋回に対応した方向へ、すなわち、車体及び運転者の重量の重心を車体幅方向に対して右側へ偏心させる方向へ傾斜させることができる。
【0033】
ここで、切替機構90は、作用部材71の回転を規制するロック状態と、そのロックを解除したロック解除状態とに切り替える機能を有している。停車時や、乗員の昇降時等、傾倒機構70による車体の傾斜を禁止したい場合は、切替機構90によって車体が傾斜しないようにロックすることができる。車体の傾斜をロックすることができれば、特に、運転者が自転車に乗り降りする際に車体が安定するので、運転者がバランスを崩して転倒する事態を防止することができる。
【0034】
切替機構90は、
図1及び
図6に示すように、回動部材73の前方寄り部分に設けられた穴94と、その穴94に向かって進退自在の係合部材(係合ピン)93を備えている。係合ピン93は、中央部材14の前端寄り部分に設けられたケーシング92内に進退自在に収容されている。ケーシング92は、プレート96を介して中央部材14に固定されている。また、ケーシング92内には、係合ピン93を回動部材73側へ突出する方向へ付勢するコイルバネからなる係合弾性部材91が収容されている。係合ピン93にはワイヤ95の先端部95aが接続されている。先端部95aはボール状を成し、そのボール状の部分が係合ピン93に設けられた上向き凹部に係合している。また、ワイヤ95は、操舵用ハンドル2のグリップ部2a近くに設けられる操作部2b(
図1参照)へと導かれている。
【0035】
操作部2bは、例えば、ダイヤルを一方向に回転することによってワイヤ95が引っ張られ、ダイヤルをその反対方向へ回転させることにより引っ張りが解除されるダイヤル式、あるいは、同様な作用を発揮するレバー式のものを採用することができる。運転者が操作部2bを操作してワイヤ95を引くことにより、係合ピン93は、ワイヤ95の先端部95aに引かれ、係合弾性部材91の付勢力に抗してケーシング92内に引き込まれる。これにより、回動部材73のロックが解除された状態になる。また、運転者が操作部2bを操作してワイヤ95の引っ張りを解除すれば、係合ピン93は係合弾性部材91の付勢力によってケーシング92外に突出して回動部材73の穴94内へ進入する。これにより、回動部材73の回動がロックされた状態となり、すなわち、操舵ができないハンドルロック状態となる。
【0036】
この発明の第二の実施形態を、
図7~
図10に基づいて説明する。第二の実施形態の主たる構成は第一の実施形態と共通であるので、以下、第一の実施形態との差異点を中心に説明する。
【0037】
第二の実施形態は、第一の実施形態におけるサスペンション機構30が省略されている。このため、第一の実施形態における受け部材13は設置されていない。また、弾性部材31、上方側のバネ受け32、下方側のバネ受け33、ガイド34等も省略されている。
【0038】
傾倒機構70が、ハンドル軸3の軸回り回転によって動作する回動部材73と、スイング機構10に接続された作用部材71とを備えている点は、前述の実施形態と同様である。作用部材71は、ハンドル軸3の後方側に位置して、スイング機構10の上部リンクバー11に対して2箇所のピン(ネジ)77,77で接続されている。これにより、作用部材71と上部リンクバー11とは相対移動不能である。作用部材71の上端縁は、
図11及び
図12に示すように、上方へ向かって突出する円弧状である。その円弧状の上縁に沿って、その円弧の方向に並列する複数の歯72が設けられている。また、回動部材73には、その後縁に沿って並列する複数の歯74が設けられている。作用部材71の歯72と、回動部材73の歯74とは互いに噛み合っている。傾倒機構70については、第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。回動部材73の動作によって、作用部材71に対してセンターポスト4の上端を車体幅方向へ相対移動させることで、センターポスト4の上端と下端とを結ぶラインを車体幅方向へ傾斜させることができる。
【0039】
この発明の第三の実施形態を、
図11~
図13に基づいて説明する。以下、同じく、前述の実施形態との差異点を中心に説明する。第三の実施形態は、第二の実施形態と同様に、サスペンション機構30が省略されている。また、第一の実施形態における受け部材13等も設置されていない。
【0040】
傾倒機構70は、前述の実施形態と同様に、ハンドル軸3の軸回り回転によって動作する回動部材73と、スイング機構10に接続された作用部材71とを備えている。
【0041】
作用部材71は、
図11及び
図12に示すように、上部リンクバー11に固定されている。作用部材71と上部リンクバー11とは相対移動不能である。回動部材73の基本構成は、第一の実施形態及び第二実施形態と同様であるが、この第三の実施形態では、回動部材73に設けられる歯74を、ハンドル軸3の前方側のみ設定している。
【0042】
また、傾倒機構70は、
図12及び
図13に示すように、回動部材73と作用部材71との間に連動部材78を備えている。連動部材78の上端縁は、上方へ向かって突出する円弧状である。その円弧状の上縁に沿って、その円弧の方向に並列する複数の歯76が設けられている。連動部材78の歯76と、回動部材73の歯74とは互いに噛み合っている。また、連動部材78の下端縁は、下方へ向かって突出する円弧状である。その円弧状の下縁に沿って、その円弧の方向に並列する複数の歯77が設けられている。連動部材78は、その中央に設けられた接続孔に連結軸79が挿通されて、連結軸79の軸回りに回動可能である。連動部材78の歯77と、作用部材71の歯72とは互いに噛み合っている。連動部材78の回動可能な方位(範囲)は、図示しないストッパによって規制されている。
【0043】
例えば、自転車100が左方向へ旋回するようにハンドル軸3が軸回り回転すると、回動部材73がハンドル軸3と同じ方向へ回転する。そして、
図13に示すように、歯74と歯76の噛み合いによって、連動部材78が、図中に示すように時計回り方向へ回転する。これにより、固定の作用部材71に対してセンターポスト4の上端が、車体幅方向に対して運転者から見て左へ(図中の右へ)、下端が車体幅方向に対して運転者から見て右へ(図中の左へ)傾斜する。これにより、フレーム1を左旋回に対応した方向へ、すなわち、車体及び運転者の重量の重心を車体幅方向に対して左側へ偏心させる方向へ傾斜させることができる。なお、自転車100が右方向へ旋回する場合は、その反対方向にそれぞれの部材が動作して、フレーム1を右旋回に対応した方向へ、すなわち、車体及び運転者の重量の重心を車体幅方向に対して右側へ偏心させる方向へ傾斜させることができる。このように、回動部材73及び連動部材78の動作によって、作用部材71に対してセンターポスト4の上端を車体幅方向へ相対移動させることで、センターポスト4の上端と下端とを結ぶラインを車体幅方向へ傾斜させることができる。
【0044】
なお、切替機構90(
図11参照)の構成及び作用は、第一の実施形態と共通であるのでその説明を省略する。
【0045】
第三の実施形態では、第二の実施形態と同様にサスペンション機構30の設置を省略したが、この第三の実施形態に、前述のサスペンション機構30を設置してもよい。
【0046】
上記の各実施形態では、自転車を例にこの発明の構成を説明したが、この発明は、自転車だけではく、前二輪形式の原動機付自転車やバイク等、車輪に対してフレームを傾斜させることができるスイング機構を備えた各種車両においても適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 フレーム
2 操舵用ハンドル
3 ハンドル軸
4 センターポスト
10 第一のリンク機構(スイング機構)
11 上部リンクバー
12 下部リンクバー
13 受け部材
30 サスペンション機構
31 弾性部材
40 第二のリンク機構(操舵機構)
50 サイドポスト
60 車輪支持部材(フォーク部材)
70 傾倒機構
71 作用部材
90 切替機構
100 自転車