(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120698
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ドア係脱装置及びこのドア係脱装置を備えたドア装置
(51)【国際特許分類】
E05B 63/16 20060101AFI20230823BHJP
E05D 15/54 20060101ALI20230823BHJP
E05B 15/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
E05B63/16
E05D15/54
E05B15/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023690
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】重村 正和
(72)【発明者】
【氏名】長峰 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒平
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井部 弘美
(72)【発明者】
【氏名】慶野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小峰 正子
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】野末 嵩博
(57)【要約】
【課題】 扉体の両側において扉体を押して開放操作するのを阻む。
【解決手段】 扉体20を一方側と他方側の何れにも回動し開放可能なドア装置1に設けられるドア係脱装置Aであって、二つのノブ51,52のそれぞれの回転操作に連動して、突出状態のラッチ32を没入するとともに、回転操作された前記ノブと同じ側にある第一の係脱部41又は第二の係脱部42を係合凸部12bに近接するように突出させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体を一方側と他方側の何れにも回動し開放可能なドア装置に設けられるドア係脱装置であって、
前記扉体から戸先方向へ出没するラッチと、前記扉体の厚さ方向の一方側と他方側に露出するノブと、前記ラッチよりも前記一方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第一の係脱部と、前記ラッチよりも前記他方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第二の係脱部と、突出した場合の前記第一の係脱部と前記第二の係脱部の何れに対しても近接するように、前記扉体の戸先部に対向する不動部位に設けられた係合凸部と、突出した場合の前記ラッチに嵌り合うように前記係合凸部に設けられた凹状のラッチ受部とを備え、
二つの前記ノブのそれぞれの回転操作に連動して、突出状態の前記ラッチを没入するとともに、回転操作された前記ノブと同じ側にある前記第一の係脱部又は前記第二の係脱部を前記係合凸部に近接するように突出させることを特徴とするドア係脱装置。
【請求項2】
一方側の前記ノブと他方側の前記ノブの間で、回転力が伝達されないようにしたことを特徴とする請求項1記載のドア係脱装置。
【請求項3】
一方側の前記ノブと一体的に回転する第一の回転軸と、他方側の前記ノブと一体的に回転する第二の回転軸とを備え、
一方側の前記ノブが回転操作された際に、前記第一の回転軸の回転力により前記第一の係脱部を突出させるとともに前記ラッチを没入し、
他方側の前記ノブが回転操作された際に、前記第二の回転軸の回転力により前記第二の係脱部を突出させるとともに前記ラッチを没入するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のドア係脱装置。
【請求項4】
前記第一の回転軸と前記第二の回転軸の間に、回転力により前記ラッチを没入させる第三の回転軸を設け、
前記第一の回転軸と前記第三の回転軸の間には、一方側の前記ノブによる開放操作に伴う前記第一の回転軸の一方向の回転力のみを前記第三の回転軸に伝達する第一のクラッチ機構が設けられ、
前記第二の回転軸と前記第三の回転軸の間には、他方側の前記ノブによる開放操作に伴う前記第二の回転軸の一方向の回転力のみを前記第三の回転軸に伝達する第二のクラッチ機構が設けられていることを特徴とする請求項3記載のドア係脱装置。
【請求項5】
前記第一の回転軸と前記第二の回転軸にそれぞれ第一の歯車と第二の歯車を設けるとともに、前記第一の歯車に噛み合って進退する第一の進退歯車と前記第二の歯車に噛み合って進退する第二の進退歯車とを、それぞれ前記第一の係脱部と前記第二の係脱部に設け、前記第一の係脱部と前記第二の係脱部が、それぞれ前記第一の進退歯車と第二の進退歯車の進退により出没動作するようにしたことを特徴とする請求項3又は4記載のドア係脱装置。
【請求項6】
前記第三の回転軸に第三の歯車を設けるとともに、前記ラッチに前記第三の歯車に噛み合って進退する第三の進退歯車を設け、この第三の進退歯車の進退に伴って前記ラッチが出没するようにしたことを特徴とする請求項4又は5記載のドア係脱装置。
【請求項7】
前記ラッチを突出方向へ付勢する付勢部材を設けたことを特徴とする請求項1~6何れか1項記載のドア係脱装置。
【請求項8】
請求項1~7何れか1項記載のドア係脱装置を備えたことを特徴とするドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノブの操作によりラッチを没入させて係合状態を解除するドア係脱装置、及びこのドア係脱装置を備えたドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア装置には、例えば特許文献1に記載されるように、扉体を奥側と手前側の両方へ回動できるようにしたものがある。
このドア装置では、扉体の戸尻部分と、対向する縦枠との間が自由蝶番により連結されている。自由蝶番は、扉厚方向の一方側と他方側にそれぞれ回転軸を有し、これら二つの回転軸により、扉体を両方向へ開放できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、扉体を境にした何れか一方側に人がいる状態で、他方側から扉体が押されて開放動作すると、その開放動作した扉体が前記一方側の人に衝突してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
扉体を一方側と他方側の何れにも回動し開放可能なドア装置に設けられるドア係脱装置であって、前記扉体から戸先方向へ出没するラッチと、前記扉体の厚さ方向の一方側と他方側に露出するノブと、前記ラッチよりも前記一方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第一の係脱部と、前記ラッチよりも前記他方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第二の係脱部と、突出した場合の前記第一の係脱部と前記第二の係脱部の何れに対しても近接するように、前記扉体の戸先部に対向する不動部位に設けられた係合凸部と、突出した場合の前記ラッチに嵌り合うように前記係合凸部に設けられた凹状のラッチ受部とを備え、二つの前記ノブのそれぞれの回転操作に連動して、突出状態の前記ラッチを没入するとともに、回転操作された前記ノブと同じ側にある前記第一の係脱部又は前記第二の係脱部を前記係合凸部に近接するように突出させることを特徴とするドア係脱装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、扉体の両側において扉体を押して開放操作するのを阻むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るドア係脱装置の一例を具備したドア装置を示す正面図である。
【
図2】
図1の(II)-(II)線に沿う断面図である。
【
図3】
図1の(III)-(III)線に沿う断面図である。
【
図4】同断面において、一方側のノブを回転させた状態を示す図である。
【
図5】同断面において、他方側のノブを回転させた状態を示す図である。
【
図6】
図2の(VI)-(VI)線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、扉体を一方側と他方側の何れにも回動し開放可能なドア装置に設けられるドア係脱装置であって、前記扉体から戸先方向へ出没するラッチと、前記扉体の厚さ方向の一方側と他方側に露出するノブと、前記ラッチよりも前記一方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第一の係脱部と、前記ラッチよりも前記他方側で前記扉体から戸先方向へ出没する第二の係脱部と、突出した場合の前記第一の係脱部と前記第二の係脱部の何れに対しても近接するように、前記扉体の戸先部に対向する不動部位に設けられた係合凸部と、突出した場合の前記ラッチに嵌り合うように前記係合凸部に設けられた凹状のラッチ受部とを備え、二つの前記ノブのそれぞれの回転操作に連動して、突出状態の前記ラッチを没入するとともに、回転操作された前記ノブと同じ側にある前記第一の係脱部又は前記第二の係脱部を前記係合凸部に近接するように突出させる(
図1~
図6参照)。
【0009】
第二の特徴として、一方側の前記ノブと他方側の前記ノブの間で、回転力が伝達されないようにした(
図4及び
図5参照)。
【0010】
第三の特徴として、一方側の前記ノブと一体的に回転する第一の回転軸と、他方側の前記ノブと一体的に回転する第二の回転軸とを備え、一方側の前記ノブが回転操作された際に、前記第一の回転軸の回転力により前記第一の係脱部を突出させるとともに前記ラッチを没入し、他方側の前記ノブが回転操作された際に、前記第二の回転軸の回転力により前記第二の係脱部を突出させるとともに前記ラッチを没入するようにした(
図4及び
図5参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記第一の回転軸と前記第二の回転軸の間に、回転力により前記ラッチを没入させる第三の回転軸を設け、前記第一の回転軸と前記第三の回転軸の間には、一方側の前記ノブによる開放操作に伴う前記第一の回転軸の一方向の回転力のみを前記第三の回転軸に伝達する第一のクラッチ機構が設けられ、前記第二の回転軸と前記第三の回転軸の間には、他方側の前記ノブによる開放操作に伴う前記第二の回転軸の一方向の回転力のみを前記第三の回転軸に伝達する第二のクラッチ機構が設けられている(
図2~
図6参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記第一の回転軸と前記第二の回転軸にそれぞれ第一の歯車と第二の歯車を設けるとともに、前記第一の歯車に噛み合って進退する第一の進退歯車と前記第二の歯車に噛み合って進退する第二の進退歯車とを、それぞれ前記第一の係脱部と前記第二の係脱部に設け、前記第一の係脱部と前記第二の係脱部が、それぞれ前記第一の進退歯車と第二の進退歯車の進退により出没動作するようにした(
図2参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記第三の回転軸に第三の歯車を設けるとともに、前記ラッチに前記第三の歯車に噛み合って進退する第三の進退歯車を設け、この第三の進退歯車の進退に伴って前記ラッチが出没するようにした(
図2及び
図6参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記ラッチを突出方向へ付勢する付勢部材を設けた(
図3~
図6参照)。
【0015】
第八の特徴は、上記ドア係脱装置を備えてドア装置を構成した(
図1参照)。
【0016】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、「扉幅方向」とは、扉体20の横幅方向を意味する。また、「扉厚方向」とは、扉幅方向に略直交する扉体20の厚みの方向を意味する。
「見付け方向」とは、枠体10の横幅方向(
図1によれば左右方向)を意味する。また、「見込み方向」とは、「見付け方向」に略直交する枠厚の方向を意味する。
【0017】
図1は、本発明に係る建具装置の一例を示す。
ドア装置1は、内側に開口部を有する枠体10と、前記開口部を開放可能に閉鎖する扉体20と、扉体20の戸先側を枠体10に対し係脱するドア係脱装置Aとを具備している。
このドア装置1は、扉体20が扉厚方向の一方側と他方側の何れにも回動して開放動作するドアであり、スイングドアや、カウンター扉、ウェスタン扉、バッタリ、自由扉等と呼称されるドアの基本構造を有する。
【0018】
枠体10は、閉鎖状態の扉体20の戸尻部に対向する戸尻側枠部材11と、閉鎖状態の扉体20の戸先部に対向する戸先側枠部材12と、閉鎖状態の扉体20の上端部に対向する上側枠部材13とを具備して、中央側の開口部を囲む正面視逆凹字状に構成される。
この枠体10は、当該ドア装置1の設置対象である建築物等の躯体壁面の開口に固定される。
【0019】
枠体10の下方側は、床面や地面としてもよいし、戸尻側枠部材11と戸先側枠部材12の下端部間にわたる沓摺(下枠部材)等としてもよい。
【0020】
戸先側枠部材12は、上下方向へわたる長尺状の縦枠本体12aと、この縦枠本体から突出して、全閉状態の扉体20に対向する係合凸部12bとを有し、例えば金属材料により上下方向へ連続する長尺状に形成される(
図3~
図5参照)。
【0021】
縦枠本体12aは、床面等の下方側面と上側枠部材13との間にわたる長尺状に形成され、図示例によれば、扉体20の戸先部に対向する面を平坦状に形成している。
【0022】
係合凸部12bは、縦枠本体12aにおける前記対向する面から突出している。
この係合凸部12bは、扉厚方向において第一の係脱部41と第二の係脱部42の間に位置し、第一の係脱部41と第二の係脱部42の何れかが突出した場合に、その何れに対しても近接する。
【0023】
係合凸部12bには、突出した場合のラッチ32に嵌り合うように横断面凹状(図示例によれば凹溝状)のラッチ受部12cが設けられる。
【0024】
係合凸部12b及びラッチ受部12cは、図示例によれば、戸先側枠部材12の略全長にわたる長尺状に形成される。
なお、係合凸部12bは、少なくとも後述する第一の係脱部41及び第二の係脱部42に対応する高さ位置にあればよく、また、ラッチ受部12cは、少なくとも後述するラッチに対応する高さ位置にあればよい。したがって、これら係合凸部12b及びラッチ受部12cは、上下方向において部分的に設けることも可能である。
【0025】
また、縦枠本体12aと係合凸部12bは、図示例によれば、一体の部材としているが、他例としては、縦枠本体12aに対し別体の係合凸部12bを一体的に接続した構成とすることが可能である。
【0026】
扉体20は、厚み方向に間隔を置いた二枚の外板21をその内側の芯材及び骨材等(図示せず)により支えて、所定の厚みを有する正面視矩形状の扉体を構成している。
また、扉体20の戸先面には、後述する、ラッチ32、第一の係脱部41、第二の係脱部42をそれぞれ出没させるための貫通孔が設けられる。
なお、
図3に示すように、扉体20の戸先側には、必要に応じて、各外板21から戸先方向へ延設されるようにして隠し板22が設けられる。この隠し板22は、扉体20の戸先面と縦枠本体12aの隙間や、係合凸部12b等を隠すようにして上下方向へ連続的に延設される。この隠し板22は、係合凸部12bに干渉して扉体20の開閉動作を妨げることのないように、例えばゴム等の弾性材料により変形可能に構成されたり、戸先方向への突出量が適宜に調整されたりする。
【0027】
上記構成の扉体20は、枠体10内の開口部を塞いだ状態から、扉厚方向の一方側又は他方側へ回動することで、前記開口部を開放し、逆方向へ回動することで同開口部を閉鎖する。
【0028】
扉体20の戸尻側部分は、自由蝶番等の軸状部材23を介して、枠体10に対し回転自在に支持される(
図1参照)。扉体20は、この軸状部材23を中心軸にして扉厚方向の一方側と他方側の両方向へ回動可能である。
【0029】
ドア係脱装置Aは、扉体20の戸先側に位置するドアノブユニット30と、不動部位である縦枠本体12aと一体的な係合凸部12b及びラッチ受部12c等により構成される。
【0030】
ドアノブユニット30は、扉体20内の戸先側に装着される基体31と、基体31及び扉体20から戸先方向へ出没するラッチ32と、ラッチ32を突出方向へ付勢する付勢部材33と、ラッチ32よりも扉厚方向の一方側で基体31及び扉体20から戸先方向へ出没する第一の係脱部41と、ラッチ32よりも扉厚方向の他方側で扉体20から戸先方向へ出没する第二の係脱部42と、扉体20における厚さ方向の一方側と他方側に露出するノブ51,52とを備える。
【0031】
さらに、ドアノブユニット30は、一方側のノブ51と一体的に回転する第一の回転軸61と、他方側のノブ52と一体的に回転する第二の回転軸62と、第一の回転軸61と第二の回転軸62の間にて回転力によりラッチ32を没入させる第三の回転軸63とを備える。
【0032】
さらに、ドアノブユニット30は、第一の回転軸61と第三の回転軸63の間にて一方側のノブ51による開放操作に伴う第一の回転軸61の一方向の回転力のみを第三の回転軸63に伝達する第一のクラッチ機構71と、第二の回転軸62と第三の回転軸63の間にて他方側のノブ52による開放操作に伴う第二の回転軸62の一方向の回転力のみを第三の回転軸63に伝達する第二のクラッチ機構72とを備える。
【0033】
基体31は、図示例によれば、中空箱状に形成される。
この基体31の戸先側の壁部には、ラッチ32、第一の係脱部41、第二の係脱部42をそれぞれ出没させるための貫通孔が設けられる。
また、この基体31の一方側の壁部と他方側の壁部には、それぞれ、第一の回転軸61と第二の回転軸62を挿通するための貫通孔が設けられる。
【0034】
ラッチ32は、扉幅方向に長尺なブロック状に形成される。このラッチ32の戸先方向の端部側は、扉厚方向の両側のテーパ面32b,32cにより、横断面横向き台形状に幅を徐々に狭めている。各テーパ面32b,32cは、傾斜する平坦面や、傾斜する凸曲面等とすればよい。
【0035】
このラッチ32の下部側には、後述する第三の歯車66に噛み合って進退する第三の進退歯車32aを一体的に設けられる。
第三の進退歯車32aは、ラッチ32が出没する方向にわたって複数の歯部を有し、これら歯部を下方へ向けている(
図2及び
図6参照)。
この第三の進退歯車32aは、ラッチ32に一体に加工されたものであってもよいし、ラッチ32とは別体の部材をラッチ32に一体的に接続したものであってもよい。
このラッチ32は、扉幅方向へスライドするように、図示しないガイド部材により案内されている。
したがって、第三の歯車66の回転に伴って第三の進退歯車32aが進退すると、この進退に連動するようにラッチ32が出没動作する。
【0036】
付勢部材33は、基体31に対しラッチ32を戸先方向へ付勢する部材であればよく、図示例によれば、ラッチ32と基体31の戸尻側壁部との間に設けられた圧縮コイルバネである。
この付勢部材33の他例としては、ラッチ32を戸先方向へ引っ張るようにした引っ張りバネや、ラッチ32を戸先方向へ付勢するように第三の歯車66を一方向へ回転させるねじりバネ等とすることも可能である。
【0037】
第一の係脱部41は、扉幅方向に長尺なブロック状に形成され、その下部側に、第一の歯車64に噛み合って進退する第一の進退歯車41aを一体的に有する。第一の進退歯車41aは、第一の係脱部41が出没する方向にわたって複数の歯部を有し、これら歯部を上方へ向けている(
図2参照)。
この第一の係脱部41は、扉幅方向へスライドするように、図示しないガイド部材によって案内される。
したがって、第一の歯車64の回転に伴って第一の進退歯車41aが進退すると、この進退に連動するように第一の係脱部41が出没動作をする。
【0038】
第二の係脱部42は、扉幅方向に長尺なブロック状に形成され、その下部側に、後述する第二の歯車65に噛み合って進退する第二の進退歯車42aを一体的に有する。第二の進退歯車42aは、第二の係脱部42が出没する方向にわたって複数の歯部を有し、これら歯部を上方へ向けている(
図2参照)。
そして、この第二の係脱部42は、扉幅方向へスライドするように、図示しないガイド部材に案内される。
したがって、第二の歯車65の回転に伴って第二の進退歯車42aが進退すると、この進退に連動するように第二の係脱部42が出没動作をする。
【0039】
なお、第一の係脱部41と第二の係脱部42は、共通部品を用いることが可能である。
また、図示例の第一の係脱部41と第二の係脱部42は、戸先側の両角寄り部分に、一般的な面取り(C面取りやR面取り)を設けており、第一の係脱部41とは形状が異なるが、図示例以外の他例としては、第一の係脱部41、第二の係脱部42及びラッチ32をすべて共通部品化することも可能である。
【0040】
一方側のノブ51は、扉体20の一方側の外板21面から突出しており、外部から回転操作される。このノブ51の回転軸部分には、後述する第一の回転軸61が一体回転可能に固定される。
なお、図中、符号51aは、一方側のノブ51の回転軸部分を覆うようにして外板21に止着された丸座である。
【0041】
他方側のノブ52は、扉体20の他方側の外板21面から突出しており、外部から回転操作される。このノブ52の回転軸部分には、後述する第二の回転軸62が一体回転可能に固定される。
なお、図中、符号52aは、一方側のノブ51の回転軸部分を覆うようにして外板21に止着された丸座である。
【0042】
第一の回転軸61は、一方側が基体31及び外板21を貫通しており、その端部側に一方側のノブ51を着脱可能に接続している。
第一の回転軸61の他方側には、第一のクラッチ機構71の片半部が接続される。
この第一の回転軸61は、基体31内の図示しない軸受け部材により回転自在に支持される。
【0043】
第一の回転軸61の中央寄りには、第一の歯車64(図示例によれば、ピニオン歯車)が一体回転可能に固定される。
第一の歯車64は、第一の回転軸61と同軸状に配置され、第一の進退歯車41a(図示例によれば、ラック歯車)に噛み合っている。
【0044】
第二の回転軸62は、前記一方側に対する他方側が基体31及び外板21を貫通しており、その端部側に他方側のノブ52を着脱可能に接続している。
第二の回転軸62の前記一方側には、第二のクラッチ機構72の片半部が接続される。
この第二の回転軸62は、基体31内の図示しない軸受け部材により回転自在に支持される。
【0045】
第二の回転軸62の中央寄りには、第二の歯車65(図示例によれば、ピニオン歯車)が一体回転可能に固定される。
第二の歯車65は、第二の回転軸62と同軸状に配置され、第二の進退歯車42a(図示例によれば、ラック歯車)に噛み合っている。
【0046】
第一のクラッチ機構71は、同軸状に並ぶ一半部と他半部を備え、前記一半部の一方向の回転力のみを前記他半部に伝達するように構成される。
この第一のクラッチ機構71には、ワンウェイクラッチや、フリーホイール等と呼称されるクラッチ機構を適用可能である。
第一のクラッチ機構71の一半部は、第一の回転軸61の他方側の端部に対し一体回転可能に接続される。また、第一のクラッチ機構71の他半部は、第三の回転軸63の一方側の端部に対し一体回転可能に接続される。
【0047】
第一のクラッチ機構71によれば、一方側のノブ51による開放操作に伴う第一の回転軸61の一方向(図示例によれば、扉厚方向の一方側から視て時計方向)の回転力は、第三の回転軸63及び第三の歯車66に伝達される。
しかし、一方側のノブ51による逆方向(図示例によれば、扉厚方向の一方側から視て反時計方向)の回転力は、第三の回転軸63及び第三の歯車66に伝達されない。
【0048】
また、第二のクラッチ機構72は、第一のクラッチ機構71と同様に、一半部の一方向の回転力のみを他半部に伝達するように構成される。
この第二のクラッチ機構72は、第一のクラッチ機構71と同一構成の部品を、扉厚方向において逆向きになるように設ければよい。
第二のクラッチ機構72の一半部は、第二の回転軸62の一方側の端部に対し一体回転可能に接続される。また、第二のクラッチ機構72の他半部は、第三の回転軸63の他方側の端部に対し一体回転可能に接続される。
【0049】
第二のクラッチ機構72によれば、他方側のノブ52による開放操作に伴う第二の回転軸62の一方向(図示例によれば、扉厚方向の他方側から視て反時計方向)の回転力は、第三の回転軸63及び第三の歯車66に伝達される。
しかし、他方側のノブ52による逆方向(図示例によれば、扉厚方向の他方側から視て時計方向)の回転力は、第三の回転軸63及び第三の歯車66に伝達されない。
【0050】
第三の回転軸63は、第一の回転軸61と第二の回転軸62の間に同軸状に位置し、基体31に対し図示しない軸受け部材等を介して回転自在に支持されている。
この第三の回転軸63の中央寄りには、第三の歯車66(図示例によれば、ピニオン歯車)が一体回転可能に固定される。
第三の歯車66は、第三の回転軸63と同軸状に配置され、第三の進退歯車32a(図示例によれば、ラック歯車)に噛み合っている。
【0051】
そして、上記構成のドアノブユニット30は、扉体20の戸先側壁部の裏面に当接するようにして、扉体20内に固定される。
【0052】
次に、上記構成のドア装置1及びドア係脱装置Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、扉体20が開口部を閉鎖している初期状態では、
図3に示すように、ラッチ32が、付勢部材33の付勢力により戸先方向へ突出し、戸先側枠部材12のラッチ受部12cに嵌り合うとともに、第一の係脱部41及び第二の係脱部42が扉体20内に没入した状態にある。
【0053】
前記初期状態において、例えば、
図4に示すように、一方側のノブ51が時計方向へ回転操作されると、この回転操作に連動して、第一の回転軸61及び第一の歯車64が回転する。
このため、回転操作されたノブ51と同じ側にある第一の係脱部41が、第一の歯車64の回転力により突出し、係合凸部12bに対し見込み方向の一方側から近接する。
【0054】
また、第一の係脱部41における前記回転力は、第一のクラッチ機構71を介して第三の回転軸63に伝達され、第三の回転軸63及び第三の歯車66が、第一の回転軸61と同方向(図示例によれば、時計方向)へ回転する。
このため、第一の回転軸61の回転力により、ラッチ32が後退し扉体20内へ没入する。
【0055】
第三の回転軸63の他方側の端部においては、第二のクラッチ機構72が第一のクラッチ機構71とは逆向きに設けられているため、第三の回転軸63の回転力が第二のクラッチ機構72を介して第二の回転軸62に伝達されることはない。すなわち、一方側のノブ51と他方側のノブ52の間で、回転力は伝達しない。
このため、第二の係脱部42は、没入状態を維持する。
【0056】
したがって、一方側のノブ51を回動して扉体20を開放しようとする者は、扉体20を手前方向へ引いて開放する動作のみを行うことができる。すなわち、扉体20を前方へ押す開放動作は、第一の係脱部41が係合凸部12bに当接することで阻まれる。
【0057】
そして、扉体20が開放した後、一方側のノブ51に対する回転操作力が解除された場合には、ラッチ32が付勢部材33の付勢力によって突出し、これに連動して、第一の係脱部41が没入する。
【0058】
また、ラッチ32が突出し開放した状態にある扉体20を、閉鎖方向へ押動した場合には、ラッチ32が、テーパ面32b又は32cを係合凸部12bに摺接させて、係合凸部12bを乗り越えるようにしてラッチ受部12cに嵌り合う。
このため、扉体20は、一方側と他方側の何れにも開放しないように静止する。
【0059】
また、上記初期状態において、例えば、
図5に示すように、他方側のノブ52が、他方側から視て反時計方向へ回転操作されると、この回転操作に連動して、第二の回転軸62及び第二の歯車65が回転し、この回転力は、第二のクラッチ機構72を介して第三の回転軸63及び第三の歯車66に伝達されるが、第一の回転軸61及び第一の歯車64、一方側のノブ51等には伝達されない。
このため、回転操作された他方側のノブ52と同じ側にある第二の係脱部42が突出し、係合凸部12bに対し見込み方向の他方側から近接するとともに、ラッチ32が没入する。
したがって、他方側のノブ52を回動して扉体20を開放しようとする者は、扉体20を手前方向へ引いて開放する動作のみを行うことができる。扉体20を前方へ押す開放動作は、第二の係脱部42と係合凸部12bの当接により阻まれる。
【0060】
よって、上記構成のドア装置1及びドア係脱装置Aによれば、扉体20を挟む両側の何れにおいても、扉体20を引く動作による手前側への開放のみが行われ、扉体20を押す動作による奥側への開放を阻むことができる。
【0061】
なお、上記実施態様によれば、基体31内の機械的な構成により、二つのノブ51,52のそれぞれの回転操作に連動して、突出状態のラッチ32を没入するとともに、回転操作された前記ノブと同じ側にある第一の係脱部41又は第二の係脱部42を係合凸部12bに近接するように突出させたが、他例としては、電磁ソレノイドと制御回路等を備えた構成により、同様の動作を実現することも可能である。
【0062】
また、上記実施態様によれば、第一の歯車64と第一の進退歯車41a、第二の歯車65と第二の進退歯車42a、及び、第三の歯車66と第三の進退歯車32aを、ラックアンドピニオン機構としたが、この機構は、回転運動を直進運動に変換する機構であればよく、他例としては、ウォームギヤによりラックギヤを進退させるようにした機構としてもよく、さらに他例としては、ラック歯車、ピニオン歯車、ウォームギヤ、スプロケット、ベベルギア等を適宜に組み合わせた機構とすることが可能である。
【0063】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:ドア装置
10:枠体
12:戸先側枠部材
12b:係合凸部
12c:ラッチ受部
20:扉体
30:ドアノブユニット
31:基体
32:ラッチ
32a:第三の進退歯車
33:付勢部材
41:第一の係脱部
41a:第一の進退歯車
42:第二の係脱部
42a:第二の進退歯車
51:一方側のノブ
52:他方側のノブ
61:第一の回転軸
62:第二の回転軸
63:第三の回転軸
64:第一の歯車
65:第二の歯車
71:第一のクラッチ機構
72:第二のクラッチ機構
A:ドア係脱装置