(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120701
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230823BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20230823BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G03B17/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023696
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
(72)【発明者】
【氏名】水間 功
【テーマコード(参考)】
2H044
2H104
【Fターム(参考)】
2H044AA10
2H044AD02
2H104CC00
(57)【要約】
【課題】フレキシブルプリント基板のヒータ部が取り付けられたレンズをレンズ鏡筒に組み込むことが容易なレンズユニットを提供すること。
【解決手段】レンズユニット1は、第1レンズ11を保持する第1筒部21、第2レンズ12を保持する第2筒部22および第1筒部21と第2筒部22とを接続する環状の接続部24を備えるレンズ鏡筒20と、環状の弾性部材40と、環状のヒータ部35を備える環状部31および環状部31から延びる延伸部32を備えるフレキシブルプリント基板30と、を有する。接続部24は、第1レンズ11のフランジ面115に当接する環状の位置決め部26と、位置決め部26の径方向外側に設けられた環状の溝部27と、位置決め部26の径方向内側に設けられた貫通孔28とを備える。弾性部材40は、溝部27に配置される。環状部31は、第1レンズ11のフランジ面115に接触し、延伸部32は、貫通孔28を貫通する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿った光軸方向の最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズの像側に位置する第2レンズと、
前記第1レンズを保持する第1筒部、前記第1筒部より外径寸法が小さく前記第2レンズを収容する第2筒部、および前記第1筒部と前記第2筒部とを径方向で接続する環状の接続部を備える樹脂製のレンズ鏡筒と、
前記第1レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する環状の弾性部材と、
環状のヒータ部を備える環状部、および前記環状部から外周側に延びる延伸部を備えるフレキシブルプリント基板と、
を有し、
前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記接続部は、前記像側フランジ面に当接して前記第1レンズを前記光軸方向に位置決めする環状の位置決め部と、前記位置決め部の径方向外側で前記弾性部材を収容する環状の溝部と、前記位置決め部の径方向内側で前記接続部の周方向の一部分を前記光軸方向に貫通する貫通孔と、を備え、
前記環状部は、前記位置決め部の径方向内側で前記像側フランジ面に接触し、
前記延伸部は、前記貫通孔を貫通して前記接続部の前記像側に引き出されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記接続部は、前記像側を向く面に、前記物体側に凹む凹部を備え、
前記凹部には、前記貫通孔が開口し、
前記延伸部は、前記凹部に充填された封止部材により前記接続部に固定されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記接続部における前記貫通孔の開口縁は、周方向に直線状に延びる第1開口縁部分と、前記第1開口縁部分の外周側で前記第1開口縁部分と平行に延びる第2開口縁部分と、前記第1開口縁部分の周方向の一方側の端と前記第2開口縁部分の周方向の一方側の端とを接続する第3開口縁部分と、前記第1開口縁部分の周方向の他方側の端と前記第2開口縁部分の周方向の他方側の端とを接続する第4開口縁部分と、を備え、
前記第2筒部の外周面は、前記第1開口縁部分から前記光軸方向を前記像側に延びる平面部分を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第2筒部の内周面は、前記光軸方向に延びる複数のリブを備え、
複数の前記リブは、前記第2レンズに外周側から当接して当該第2レンズを径方向で位置決めし、
複数の前記リブのうちの一つの前記リブは、前記光軸と直交する方向から見た場合に、前記平面部分と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記第2筒部の前記物体側の端部分には、環状のカシメ部が設けられており、
前記カシメ部は、径方向外側を向く外周面に前記物体側に向かって内周側に傾斜するテーパー面部分を備える環状部分と、前記環状部分の前記物体側の端から径方向内側に屈曲して前記第2レンズの外周縁に前記物体側から当接する屈曲部分と、を備え、
径方向における前記位置決め部と前記テーパー面部分との間には、空間が設けられており、
前記テーパー面部分の前記像側の端は、前記リブの前記物体側の端よりも像側に位置することを特徴とする請求項4に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記位置決め部は、前記光軸方向から見た場合に、前記第2筒部の一部と重なることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記位置決め部は、周方向の一部分に、径方向外側に切り欠かれた切欠き部を備え、
前記貫通孔は、前記切欠き部の内側に設けられている
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒内で発生する結露を抑制することができるレンズユニットに関する。
【0002】
光学機器に用いられるレンズユニットは特許文献1に記載されている。同文献のレンズユニットは、最も物体側に配置された第1レンズと、第1レンズより像側に配置された第2レンズと、第1レンズおよび第2レンズを収容するレンズ鏡筒と、第1レンズとレンズ鏡筒との間に配置されたOリングと、を備える。また、レンズユニットは、屋外での使用の際にレンズ鏡筒内で結露が発生することを抑制するためのヒータ部を有するフレキシブルプリント基板を備える。
【0003】
レンズ鏡筒は、第1レンズを収容する大径部と、第2レンズを収容する中径部と、大径部と中径部とを接続する接続部とを備える。Oリングは、第1レンズの径方向外側を向く面と大径部の内周面との間に配置されている。フレキシブルプリント基板は、ヒータ部が設けられた環状の板状部と、板状部から径方向に延びる延伸部とを備える。板状部は、第1レンズの像側を向くフランジ面に接着されている。延伸部は、接続部を光軸方向に貫通する貫通孔を貫通して、像側に引き出されている。貫通孔は、光軸方向においてOリングと重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレンズユニットでは、第1レンズをレンズ鏡筒に組み込む際に、Oリングは、第1レンズの径方向外側を向く面に保持される。また、フレキシブルプリント基板の板状部は、第1レンズのフランジ面に接着剤などで接着された状態とされ、フレキシブルプリント基板の延伸部がOリングに近い位置まで延設される。さらに、延伸部を貫通させる貫通孔と、Oリングとが、光軸方向で重なる。したがって、延伸部を貫通孔に貫通させながら、第1レンズをレンズ鏡筒に組み込む作業が容易ではない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、フレキシブルプリント基板の延伸部をレンズ鏡筒に設けられた貫通孔に貫通させながら、フレキシブルプリント基板のヒータ部が取り付けられたレンズをレンズ鏡筒に組み込むことが容易なレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレンズユニットは、光軸に沿った光軸方向の最も物体側にある第1レンズと、前記第1レンズの像側に位置する第2レンズと、前記第1レンズを保持する第1筒部、前記第1筒部より外径寸法が小さく前記第2レンズを収容する第2筒部、および前記第1筒部と前記第2筒部とを径方向で接続する環状の接続部を備える樹脂製のレンズ鏡筒と、前記第1レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する環状の弾性部材と、環状のヒータ部を備える環状部、および前記環状部から外周側に延びる延伸部を備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、前記接続部は、前記像側フランジ面に当接して前記第1レンズを前記光軸方向に位置決めする環状の位置決め部と
、前記位置決め部の径方向外側で前記弾性部材を収容する環状の溝部と、前記位置決め部の径方向内側で前記接続部の周方向の一部分を前記光軸方向に貫通する貫通孔と、を備え、前記環状部は、前記位置決め部の径方向内側で前記像側フランジ面に接触し、前記延伸部は、前記貫通孔を貫通して前記接続部の前記像側に引き出されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1レンズの像側フランジ面に、フレキシブルプリント基板のヒータ部が接触する。したがって、ヒータ部への通電により第1レンズの像側の温度を上昇させることができる。よって、第1レンズと第2レンズとの間の空間で結露して、光学性能が低下することを抑制することができる。また、弾性部材は、光軸方向から第1レンズに対向する溝部に配置されている。したがって、弾性部材が径方向で第1レンズと第1筒部との間に配置されている場合と比較して、第1レンズを第1筒部に保持させやすい。さらに、フレキシブルプリント基板の延伸部は、位置決め部の径方向内側に設けられた貫通孔を貫通する。したがって、径方向における弾性部材とフレキシブルプリント基板との間には位置決め部が介在する。よって、フレキシブルプリント基板を取り付けた第1レンズをレンズ鏡筒に組み込む際に、弾性部材とフレキシブルプリント基板の延伸部とが干渉することがない。したがって、第1レンズをレンズ鏡筒の第1筒部に組み込むことが容易となる。
【0009】
本発明において、前記接続部は、前記像側を向く面に、前記物体側に凹む凹部を備え、前記凹部には、前記貫通孔が開口し、前記延伸部は、前記凹部に充填された封止部材により前記接続部に固定されるものとすることができる。このようにすれば、接続部の貫通孔を貫通するフレキシブルプリント基板の延伸部を接続部に固定することができる。
【0010】
本発明において、前記接続部における前記貫通孔の開口縁は、周方向に直線状に延びる第1開口縁部分と、前記第1開口縁部分の外周側で前記第1開口縁部分と平行に延びる第2開口縁部分と、前記第1開口縁部分の周方向の一方側の端と前記第2開口縁部分の周方向の一方側の端とを接続する第3開口縁部分と、前記第1開口縁部分の周方向の他方側の端と前記第2開口縁部分の周方向の他方側の端とを接続する第4開口縁部分と、を備え、前記第2筒部の外周面は、前記第1開口縁部分から前記光軸方向を前記像側に延びる平面部分を備えるものとすることができる。このようにすれば、貫通孔を貫通して接続部の物体側から像側に引き出された延伸部を、平面部分に沿って引き回すことができる。
【0011】
本発明において、前記第2筒部の内周面は、前記光軸方向に延びる複数のリブを備え、複数の前記リブは、前記第2レンズに外周側から当接して当該第2レンズを径方向で位置決めし、複数の前記リブのうちの一つの前記リブは、前記光軸と直交する方向から見た場合に、前記平面部分と重なる位置に設けられているものとすることができる。このようにすれば、第2筒部において平面部分が設けられた部分の肉厚を厚くすることができる。これにより、第2筒部において平面部分が設けられた部分と設けられていない部分との肉厚の差を小さくできるので、樹脂製のレンズ鏡筒を成形する際に、第2筒部に成形不良が発生することを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記第2筒部の前記物体側の端部分には、環状のカシメ部が設けられており、前記カシメ部は、径方向外側を向く外周面に前記物体側に向かって内周側に傾斜するテーパー面部分を備える環状部分と、前記環状部分の前記物体側の端から径方向内側に屈曲して前記第2レンズの外周縁に前記物体側から当接する屈曲部分と、を備え、径方向における前記位置決め部と前記テーパー面部分との間には、空間が設けられており、前記テーパー面部分の前記像側の端は、前記リブの前記物体側の端よりも像側に位置するものとすることができる。このようにすれば、第2筒部に第2レンズを保持する際に、環状部分の径方向外側に設けられた空間に治具を挿入してカシメを行い、環状部分の物体側に位置する部分を内周側に屈曲させて当接部分とすることができる。また、テーパー面部分
の像側の端は、光軸と直交する方向において、リブの物体側の端と重なるので、環状部分にテーパー面部分を設けても、環状部分の肉厚が薄くなることを抑制することができる。よって、レンズ鏡筒を成形する際に、カシメ部に成形不良が発生することを抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記位置決め部は、前記光軸方向から見た場合に、前記第2筒部の一部と重なるものとすることができる。このようにすれば、第1レンズをレンズ鏡筒に組み込む際に、第1レンズをレンズ鏡筒に押し込む力が位置決め部に伝わっても、位置決め部が光軸方向において第2筒部の一部と重なっているので、レンズ鏡筒が変形することを抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記位置決め部は、周方向の一部分に、径方向外側に切り欠かれた切欠き部を備え、
前記貫通孔は、前記切欠き部の内側に設けられているものとすることができる。このようにすれば、環状部から外周側に延びる延伸部を貫通孔に貫通させる際に、延伸部の一部分を切欠き部に収容できる。したがって、延伸部を像側に屈曲させて、貫通孔に挿入することが容易となる。また、切欠き部を備えていない場合には、環状部と延伸部との境界部分からフレキシブルプリント基板を屈曲させて貫通孔に挿入しなければならず、環状部を位置決め部の内周側で大きくすることが困難となる。これに対して、切欠き部を備えれば、延伸部を外周側に延ばした後に、切欠き部に収容した部分を屈曲させて、貫通孔に挿入できる。したがって、環状部を位置決め部の内周側で大きくすることができる。よって、ヒータ部を大きくすることが容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1レンズの像側フランジ面に、フレキシブルプリント基板のヒータ部が接触する。したがって、ヒータ部への通電により第1レンズの像側の温度を上昇させることができる。よって、第1レンズと第2レンズとの間の空間で結露して、光学性能が低下することを抑制することができる。また、弾性部材は、光軸方向から第1レンズに対向する溝部に配置されているので、第1レンズを第1筒部に保持させやすい。さらに、フレキシブルプリント基板の延伸部は、位置決め部の径方向内側に設けられた貫通孔を貫通する。したがって、径方向における弾性部材とフレキシブルプリント基板との間には位置決め部が介在する。よって、フレキシブルプリント基板を取り付けた第1レンズをレンズ鏡筒に組み込む際に、弾性部材とフレキシブルプリント基板の延伸部とが干渉することがない。したがって、第1レンズをレンズ鏡筒の第1筒部に組み込むことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
【
図8】フレキシブルプリント基板とレンズ鏡筒との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットの実施形態について説明する。
【0018】
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
図2は、レンズユニットの分解斜視図である。本形態のレンズユニット1は、撮像装置等の光学装置に用いられる。レンズユニット1は、光軸L周りの全体にわたって略同様な構成を有している。
図1に示すレンズユニット1は、光軸Lに沿った光軸L方向にレンズが複数枚配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持するレンズ鏡筒20と、導電体層からなるヒータ部35を備えるフレキシブルプリント基板30を有する。レンズ鏡筒20の像側Lbには、撮像素子が設けられる。撮像素子は、CMOSなどである。
【0019】
(広角レンズ)
図1および
図2に示すように、広角レンズ10は、例えば、5群6枚のレンズ構成を備えている。本形態では、広角レンズ10は、最も物体側Laに配置された第1レンズ11と、第1レンズ11の像側Lbに配置された第2レンズ12と、第2レンズ12の像側Lbに配置された複数のレンズとを備える。より具体的には、広角レンズ10は、物体側Laから像側Lbに向かって、負のパワーを持つ第1レンズ11と、負のパワーを持つ第2レンズ12と、正のパワーを有する第3レンズ13と、正のパワーを有する第4レンズ14と、正のパワーを有する接合レンズ18(第5レンズ15および第6レンズ16)とを有している。複数のレンズは、第3レンズ13~接合レンズ18で構成される。
【0020】
第1レンズ11は、ガラスレンズまたはプラスチックレンズである。第1レンズ11は、メニスカスレンズである。第1レンズ11は、物体側Laの第1レンズ面111(物体側レンズ面)に物体側Laに向けて突出した凸面形状を備え、像側Lbの第2レンズ面112(像側レンズ面)に物体側Laに向けて凹んだ凹面形状を備える。第1レンズ11は、第1レンズ部113と、第1レンズ部113を囲む第1フランジ部114とを備える。第1レンズ面111と第2レンズ面112は、第1レンズ部113を構成する。第1フランジ部114の像側Lbを向くフランジ面115(像側フランジ面)は、第2レンズ面112の径方向外側に位置する。フランジ面115には、遮光のための黒墨が塗布されている。
【0021】
第2レンズ12は、プラスチックレンズである。第2レンズ12は、物体側Laの面に向けて突出した凸面形状を備え、像側Lbの面に物体側Laに向けて凹んだ凹面形状を備える。第3レンズ13は、プラスチックレンズである。第3レンズ13は、物体側Laの面に物体側Laに向けて突出した凸面形状を備え、像側Lbの面に物体側Laに向けて凹んだ凹面形状を備える。
【0022】
第4レンズ14は、ガラスレンズである。第4レンズ14は、枠状のホルダ5に固定された状態でレンズ鏡筒20との内側に配置される。接合レンズ18は、第5レンズ15と第6レンズ16との接合レンズである。第5レンズ15は、負のパワーを有するプラスチックレンズである。第6レンズ16は、正のパワーを有するプラスチックレンズである。
【0023】
レンズユニット1は、第2レンズ12と第3レンズ13との間に円環状の遮光シート2を有し、第4レンズ14と第5レンズ15との間に円環状の絞り3を有している。
【0024】
第1レンズ11は、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14、および接合レンズ18より外径が大きい。第2レンズ12、第3レンズ13、および接合レンズ18は外径が略等しく、接合レンズ18において、第5レンズ15は、第6レンズ16より外形が大きい。第4レンズ14は、第2レンズ12等より外径が小さい。
【0025】
(レンズ鏡筒)
図3は、レンズ鏡筒を物体側から見た斜視図である。
図4は、レンズ鏡筒を像側から見た斜視図である。
図5は、貫通孔の部分拡大図である。
図6は、レンズ鏡筒の部分断面図
である。なお、
図5は、貫通孔を物体側から見ている。
【0026】
レンズ鏡筒20は、樹脂製である。レンズ鏡筒20の材料としては、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)、吸湿が比較的低い非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)などが用いられる。レンズ鏡筒20は、筒状である。
図1から
図6に示すように、レンズ鏡筒20は、第1レンズ11を保持する第1筒部21と、第2レンズ12および複数のレンズを保持する第2筒部22と、第1筒部21の像側Lbから延伸する外径筒部23とを備える。外径筒部23と第2筒部22との間には、肉盗み用の環状の凹部29が形成されている。
【0027】
また、レンズ鏡筒20は、第1筒部21と第2筒部22とを径方向で接続する環状の接続部24と、第2筒部22の内周面から径方向内側に張り出した位置決め段部25と、を備える。
【0028】
第1筒部21は、円筒形状であり、第1レンズ11の外周面を囲む。第1筒部21の物体側Laの端部には、第1レンズ11を固定するカシメ部211が設けられている。第1筒部21の内径寸法は、第1レンズ11の外径寸法より僅かに大きい。
【0029】
接続部24は、第1筒部21の像側Lbの端部と第2筒部22の物体側Laの端部とを接続する。接続部24は、物体側Laに突出する環状の位置決め部26と、位置決め部26の径方向外側において像側Lbに凹む環状の溝部27と、位置決め部26の径方向内側で接続部24の周方向の一部分を光軸L方向に貫通する貫通孔28とを備える。
【0030】
位置決め部26は第1レンズ11のフランジ面115と当接して、第1レンズ11を光軸L方向に位置決めする。位置決め部26は、周方向の一部に、径方向外側に切り欠かれた切欠き部26aを備える。溝部27には、第1レンズ11と接続部24との間を封止する環状の弾性部材40が配置される。本例では、弾性部材40は、Oリング41である。Oリング41は、フランジ面115と溝部27の底部との間で光軸L方向に圧縮されている。
【0031】
貫通孔28は、切欠き部26aの内側に設けられている。
図5に示すように、本例では、貫通孔28は、光軸L方向で見た場合に、切欠き部26aの内側に設けられるとともに、位置決め部26の内周面で形成される仮想円Cより外側に位置する。貫通孔28は、第2筒部22と外径筒部23との隙間に連通している。後述するように、フレキシブルプリント基板30は、貫通孔28に挿入され、外径筒部23の内周面と第2筒部22の外周面との隙間を通って、レンズ鏡筒20の像側Lbに引き出される。なお、貫通孔28は、切欠き部26aの内側に設けられていれば、位置決め部26の内周面で形成される仮想円Cより外側に位置していなくてもよい。
【0032】
貫通孔28の開口縁は、周方向に直線状に延びる第1開口縁部分281aと、第1開口縁部分281aの外周側で第1開口縁部分281aと平行に延びる第2開口縁部分281bとを備える。また、貫通孔28の開口縁は、第1開口縁部分281aの周方向の一方側の端と第2開口縁部分281bの周方向の一方側の端とを接続する第3開口縁部分282aと、第1開口縁部分281aの周方向の他方側の端と第2開口縁部分281bの周方向の他方側の端とを接続する第4開口縁部分282bと、を備える。本例では、第3開口縁部分282aおよび第4開口縁部分282bは、円弧形状である。
【0033】
また、
図1、
図4および
図6に示すように、接続部24は、像側Lbを向く像側面241に、貫通孔28を囲むように物体側Laに凹む凹部280を備える。凹部280には、貫通孔28が開口する。
図1に示すように、凹部280には、接続部24とフレキシブル
プリント基板30とを固定するとともに、貫通孔28を塞ぐ封止部材60が設けられる。本例では、封止部材60は、熱硬化性樹脂などの接着剤61である。
【0034】
図1および
図2に示すように、第2筒部22は、円筒形状である。第2筒部22の外径寸法は、第1筒部21の外径寸法より小さい。ここで、
図1示すように、位置決め部26は、光軸L方向から見た場合に、第2筒部22の一部と重なっている。
【0035】
図4に示すように、第2筒部22の外周面は、第1開口縁部分281aから像側Lbに延びる平らな平面部分22aを備える。
【0036】
図1に示すように、第2筒部22の内径は、像側Lbに向かって僅かに小さくなっている。
図3に示すように、第2筒部22の内周面には、リブ221が周方向に複数設けられている。リブ221は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延びる。リブ221は、第2レンズ12から接合レンズ18までが第2筒部22に圧入された際に、各レンズに外周側から当接して、各レンズを径方向で位置決めする。
図6に示すように、リブ221のうち一つのリブ221は、光軸Lと直交する方向から見た場合に、平面部分22aと重なる位置に設けられている。
【0037】
図6に示すように、第2筒部22の物体側Laの端部分には、環状のカシメ部222が設けられている。カシメ部222は、径方向外側を向く外周面に物体側Laに向かって内周側に傾斜するテーパー面部分224を備える環状部分225と、環状部分225の物体側Laの端から径方向内側に屈曲して第2レンズ12の外周縁に物体側Laから当接する屈曲部分223と、を備える。径方向における位置決め部26とテーパー面部分224との間には、空間Sが設けられている。テーパー面部分224の像側Lbの端224aは、リブ221の物体側Laの端221aよりも像側に位置する。
【0038】
図1および
図2に示すように、位置決め段部25は、最も像側に配置された接合レンズ18に像側Lbから当接する。位置決め段部25は、像側Lbの端部で径方向内側に張り出した張出部251を備える。
【0039】
(フレキシブルプリント基板)
図7は、フレキシブルプリント基板30の斜視図である。
図8は、フレキシブルプリント基板30とレンズ鏡筒20との関係を説明する図である。なお、
図8は、フレキシブルプリント基板30とレンズ鏡筒20とを物体側から見ている。
【0040】
図1および
図2に示すように、フレキシブルプリント基板30は、第1レンズ11と第2レンズ12との間に配置されている。
図7に示すように、フレキシブルプリント基板30には、ヒータ部35および、ヒータ部35に電気的に接続して、ヒータ部35に給電するため給電配線36が配置される。
【0041】
図2および
図7に示すように、フレキシブルプリント基板30は、フランジ面115に重なる環状の環状部31と、環状部31から外周側に延びる延伸部32とを備える。環状部31の中央部には、第2レンズ12のレンズ面が露出するように、開口穴33が形成されている。
図2および
図8に示すように、環状部31の外径は、位置決め部26の内径より僅かに小さい。環状部31は、位置決め部26の径方向内側においてフランジ面115に当接する。本例では、環状部31は、接着剤によりフランジ面115に張り付けられている。
【0042】
図1、
図2および
図8に示すように、延伸部32は、環状部31に対して直角に折り曲げられ、貫通孔28に挿入される。このとき、延伸部32の一部である屈曲部分32aは
、切欠き部26aに収容される。貫通孔28に挿入された延伸部32は、外径筒部23の内周面と第2筒部22の外周面との隙間を通って、レンズ鏡筒20の像側Lbに引き出される。貫通孔28と延伸部32とは、凹部280に設けられた接着剤61によって固定されている。
【0043】
図7に示すように、ヒータ部35は、フレキシブルプリント基板30の表面に環状に形成されたヒータ線からなる。ヒータ線は、環状部31に配置される。給電配線36は、延伸部32に配置されている。
【0044】
フレキシブルプリント基板30は、ポリイミドなどの樹脂フィルムからなる。フレキシブルプリント基板30には、銅箔などの導電体層によってヒータ部35および給電配線36が形成される。
【0045】
フレキシブルプリント基板30は、基板に電気的に接続されており、基板から給電配線36に電力が供給されると、ヒータ部35が発熱する。ヒータ部35が発熱すると、環状部31と当接する第1レンズ11が加熱される。したがって、低い外気温下でレンズユニット1を使用する場合において、ヒータ部35により第1レンズ11が加熱されるので、第1レンズ11の第2レンズ面112が結露することを抑制することができる。
【0046】
(作用効果)
本例のレンズユニットによれば、第1レンズ11のフランジ面115に、フレキシブルプリント基板30のヒータ部35が接触する。したがって、ヒータ部35への通電により第1レンズ11の像側Lbの温度を上昇させることができる。よって、第1レンズ11と第2レンズ12との間の空間で結露して、光学性能が低下することを抑制することができる。また、Oリング41は、光軸L方向から第1レンズ11に対向する溝部27に配置されている。したがって、Oリング41が径方向で第1レンズ11と第1筒部21との間に配置されている場合と比較して、第1レンズ11を第1筒部21に保持させやすい。さらに、フレキシブルプリント基板30の延伸部32は、位置決め部26の径方向内側に設けられた貫通孔28を貫通する。したがって、径方向におけるOリング41とフレキシブルプリント基板30との間には位置決め部26が介在する。よって、フレキシブルプリント基板30を取り付けた第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み込む際に、Oリング41とフレキシブルプリント基板30の延伸部32とが干渉することがない。したがって、第1レンズ11をレンズ鏡筒20の第1筒部21に組み込むことが容易となる。
【0047】
本例では、接続部24は、像側面241に、物体側Laに凹む凹部280を備える。凹部280には、貫通孔28が開口する。延伸部32は、凹部280に充填された接着剤61により接続部24に固定される。よって、接続部24の貫通孔28を貫通するフレキシブルプリント基板30の延伸部32を接続部24に固定することができる。
【0048】
本例において、接続部24における貫通孔28の開口縁は、周方向に直線状に延びる第1開口縁部分281aと、第1開口縁部分281aの外周側で第1開口縁部分281aと平行に延びる第2開口縁部分281bと、第1開口縁部分281aの周方向の一方側の端と第2開口縁部分281bの周方向の一方側の端とを接続する第3開口縁部分282aと、第1開口縁部分281aの周方向の他方側の端と第2開口縁部分281bの周方向の他方側の端とを接続する第4開口縁部分282bと、を備える。第2筒部22の外周面は、第1開口縁部分281aから光軸L方向を前記像側に延びる平面部分22aを備える。よって、貫通孔28を貫通して接続部24の物体側Laから像側Lbに引き出された延伸部32を、平面部分22aに沿って引き回すことができる。
【0049】
本例において、第2筒部22の内周面は、光軸L方向に延びる複数のリブ221を備え
る。複数のリブ221は、第2レンズ12に外周側から当接して第2レンズ12を径方向で位置決めする。複数のリブ221のうちの一つのリブ221Aは、光軸Lと直交する方向から見た場合に、平面部分22aと重なる位置に設けられている。よって、第2筒部22において平面部分22aが設けられた部分の肉厚を厚くすることができる。これにより、第2筒部22において平面部分22aが設けられた部分と設けられていない部分との肉厚の差を小さくできるので、樹脂製のレンズ鏡筒20を成形する際に、第2筒部22に成形不良が発生することを抑制することができる。
【0050】
本例において、第2筒部22の物体側Laの端部分には、環状のカシメ部222が設けられている。カシメ部222は、径方向外側を向く外周面に物体側Laに向かって内周側に傾斜するテーパー面部分224を備える環状部分225と、環状部分225の物体側Laの端から径方向内側に屈曲して第2レンズ12の外周縁に物体側Laから当接する屈曲部分223と、を備える。径方向における位置決め部26とテーパー面部分224との間には、空間Sが設けられる。テーパー面部分224の像側Lbの端224aは、リブ221の物体側Laの端221aよりも像側Lbに位置する。よって、第2筒部22に第2レンズ12を保持する際に、環状部分225の径方向外側に設けられた空間Sに治具を挿入してカシメを行い、環状部分225の物体側Laに位置する部分を内周側に屈曲させて当接部分とすることができる。また、テーパー面部分224の像側の端224aは、光軸Lと直交する方向において、リブ221の物体側Laの端221aと重なるので、環状部分225にテーパー面部分224を設けても、環状部分225の肉厚が薄くなることを抑制することができる。よって、レンズ鏡筒20を成形する際に、カシメ部222に成形不良が発生することを抑制することができる。
【0051】
本例において、位置決め部26は、周方向の一部分に、径方向外側に切り欠かれた切欠き部26aを備える。貫通孔28は、切欠き部26aの内側に設けられている。よって、環状部31から外周側に延びる延伸部32を貫通孔28に貫通させる際に、延伸部32の一部である屈曲部分32aを切欠き部26aに収容できる。したがって、延伸部32を像側Lbに屈曲させて、貫通孔28に挿入することが容易となる。また、切欠き部26aを備えていない場合には、環状部31と延伸部32との境界部分からフレキシブルプリント基板30を屈曲させて貫通孔28に挿入しなければならず、環状部31を位置決め部26の内周側で大きくすることが困難となる。これに対して、切欠き部26aを備えれば、延伸部32を外周側に延ばした後に、切欠き部26aに収容した部分を屈曲させて、貫通孔28に挿入できる。したがって、環状部31を位置決め部26の内周側で大きくすることができる。よって、ヒータ部35を大きくすることが容易となる。
【符号の説明】
【0052】
1…レンズユニット、2…遮光シート、5…ホルダ、10…広角レンズ、11…第1レンズ、12…第2レンズ、13…第3レンズ、14…第4レンズ、15…第5レンズ、16…第6レンズ、18…接合レンズ、20…レンズ鏡筒、21…第1筒部、22…第2筒部、22a…平面部分、23…外径筒部、24…接続部、25…位置決め段部、26…位置決め部、26a…切欠き部、27…溝部、28…貫通孔、29…凹部、30…フレキシブルプリント基板、31…環状部、32…延伸部、32a…屈曲部分、33…開口穴、35…ヒータ部、36…給電配線、40…弾性部材、41…Oリング、60…封止部材、61…接着剤、111…第1レンズ面、112…第2レンズ面、113…第1レンズ部、114…第1フランジ部、115…フランジ面、211…カシメ部、221・221A…リブ、221a…上端部、222…カシメ部、223…屈曲部分、224…傾斜面、224a…下端部、225…環状部分、241…像側面、251…張出部、280…凹部、281・281a…第1部分、282…第2部分、C…仮想円、L…光軸、La…物体側、Lb…像側