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特開2023-120705位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120705
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A61N5/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023707
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC04
4C082AE01
4C082AG52
4C082AJ07
4C082AP07
4C082AP08
4C082AP12
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】計算時間を低減しながら精度の高い患者位置決めを可能とする位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法を提供する。
【解決手段】画像取得部21は、被検者を撮影した複数の透視X線画像を取得する。疑似透視X線画像作成部22は、透視X線画像の撮影軸のそれぞれについて、被検者の3次元透視画像を当該撮影軸に対する検出面に投影した疑似透視画像を作成する。画像照合部24は、複数の撮影軸のそれぞれについて、その撮影軸に応じた透視X線画像と疑似透視X線画像とのズレ量である2次元移動量に基づいて撮影軸を補正した補正軸を求め、各撮影軸の交点から各補正軸の共通垂線における中点までの移動量を、寝台を移動させる寝台移動量として算出する。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が搭載される寝台の位置を制御する位置決め装置であって、
複数の撮影軸のそれぞれについて光源からの光を前記被検者を介して検出面で検出することで前記被検者を撮影した複数の透視画像を取得する画像取得部と、
前記複数の撮影軸のそれぞれについて、前記被検者の3次元透視画像を当該撮影軸に対する検出面に投影した疑似透視画像を作成する作成部と、
前記複数の撮影軸のそれぞれについて、当該撮影軸に応じた前記透視画像と前記疑似透視画像とのズレ量に基づいて当該撮影軸を補正した補正軸を求め、前記複数の撮影軸の交点から各補正軸の共通垂線における中点までの移動量を、前記寝台を移動させる寝台移動量として算出する計算処理部と、を有する位置決め装置。
【請求項2】
前記計算処理部は、前記複数の撮影軸のそれぞれについて、前記ズレ量だけ前記交点を移動させた位置と前記光源とを結ぶ軸を前記補正軸として求める、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記計算処理部は、前記透視画像及び前記疑似透視画像から算出される位相限定相関関数のピークの位置に基づいて、前記ズレ量を算出する、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記計算処理部は、前記透視画像及び疑似透視画像上に設定された関心領域から前記位相限定相関関数を算出する、請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記計算処理部は、前記共通垂線の長さが閾値以上の場合、前記透視画像及び前記疑似透視画像の少なくとも一方を変更して、前記補正軸を再び求める、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記計算処理部は、前記透視画像及び前記疑似透視画像の少なくとも一方に対して所定の画像処理を行うことで、前記透視画像及び前記疑似透視画像の少なくとも一方を変更する、請求項5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記計算処理部は、各疑似透視画像を前記寝台移動量に基づいて補正した各補正疑似透視画像と各透視画像との類似度に基づいて、前記寝台の並進方向及び回転方向の移動量をさらに算出する、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項8】
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置にて算出された寝台移動量に基づいて前記寝台を移動させる寝台制御装置と、
前記移動された寝台に搭載された被検者に放射線を照射する照射装置と、を有する放射線治療装置。
【請求項9】
被検者が搭載される寝台の位置を制御する位置決め装置による位置決め方法であって、
複数の撮影軸のそれぞれについて光源からの光を前記被検者を介して検出面で受光することで前記被検者を撮影した複数の透視画像を取得し、
前記複数の撮影軸のそれぞれについて、前記被検者の3次元透視画像を当該撮影軸に対する検出面に投影した疑似透視画像を作成し、
前記複数の撮影軸のそれぞれについて、当該撮影軸に応じた前記透視画像と前記疑似透視画像とのズレ量に基づいて当該撮影軸を補正した補正軸を求め、各補正軸の共通垂線における足から中点までの移動量を、前記寝台を移動させる寝台移動量として算出する、位置決め方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療法の1つとして、放射線を患者に照射する放射線治療が知られている。放射線治療で用いられる放射線は、X線又はガンマ線のような非荷電粒子線と、陽子線又は炭素線のような荷電粒子線とに大別される。後者の荷電粒子線を使用した放射線治療は、一般に粒子線治療と呼ばれている。
【0003】
非荷電粒子線の場合、線量は体内で浅い位置から深い位置にかけて一定の割合で減少する。一方、荷電粒子線の場合、特定の深さにエネルギー損失のピークを有する線量分布(ブラックカーブ)を形成することができる。このため、荷電粒子線のエネルギー損失のピークを腫瘍の位置に合わせることにより、腫瘍よりも深い位置にある正常な組織へ照射される荷電粒子線の線量を大幅に低下させることが可能となる。
【0004】
このため、放射線治療では、所望の線量の放射線を正確に標的となる腫瘍に照射することが治療効果の向上にとって重要である。放射線の腫瘍への正確な照射を実現するためには、予め作成した治療計画によって決められた計画位置と同じ位置に患者の位置を合わせる必要がある。この患者の位置を合わせることを患者の位置決めと呼ぶ。
【0005】
放射線治療における患者の位置決めの方法として、寝台の上に寝ている患者を、2組のX線管と平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)により互いに異なる2方向から撮影した透視X線画像(Digital Radiography:DR)を用いる方法がある。この方法では、放射線治療時に患者を撮影した透視X線画像と、治療計画を作成する際に用いたCT(Computed Tomography)画像から作成した疑似透視X線画像とを比較して、骨のような位置決め対象構造物の位置が透視X線画像と疑似透視X線画像とで一致するように患者の位置決めが行われる。
【0006】
また、一般的に、透視X線画像には患者の固定具及び軟組織のような位置決め対象構造物以外の構造物が写り込んだり、位置決め対象構造物である骨の配置が治療計画時から変化したりすることがある。このような状況では、透視X線画像と疑似透視X線画像とに写された構造が画像全体にわたって一致しない。この場合、透視X線画像上で位置決め対象構造物が存在する領域として設定された関心領域(Region of Interest:ROI)を用いた患者の位置決めが行われる。なお、関心領域の設定は、通常、医療従事者であるユーザが画像上に関心領域を描画することで行われる。
【0007】
患者の位置決めを行う自動位置合わせは、患者が寝ている寝台の並進量及び回転量をパラメータとし、そのパラメータの最適値を最適化計算により算出することで行われる。通常、並進量は、互いに直交する3軸(x、y、z)に沿った3成分を有し、回転量は、その3軸を回転軸とした3成分(Pitch、Roll、Yaw)を有するため、最適化計算では、6成分のそれぞれに対する最適化プロセスが繰り返し行われることで、パラメータの最適値が算出される。また、並進量を規定する3軸は、患者を計画位置に配置するための寝台の移動軸と一致し、x軸は仰向けに寝台に横たわった患者から見て右から左に向かう方向(Right-Left direction:RL方向)、y軸は足から頭に向かう方向(Superior-Inferior direction:SI方向)、z軸は背中から腹部に向かう方向(Anterior-Posterior:AP方向)を向いている。
【0008】
しかしながら、位置決め開始時の患者の位置が計画位置から大きく離れている場合、最適化計算において、その判断指標となる画像間の類似度の変化が小さくなり、最適な位置に向かって類似度が高くなるような特徴を利用することができず、パラメータの最適値に到達できなかったり、最適化計算における繰り返し計算回数の増加により計算時間が増加したりすることがある。
【0009】
これに対して、特許文献1及び2には、最適値により少ない繰り返し計算回数で到達するための技術が開示されている。これらの技術では、最適化計算において、各成分に対する最適化プロセスが終了した後で透視X線画像を撮影する撮影軸に沿った方向に対する1次元方向の最適化プロセスを追加することで、最適化計算における最適化プロセスを繰り返す計算回数の軽減化が図られている。
【0010】
また、特許文献3には、撮影軸に沿った方向に対する並進量の最適化を、その透視撮影軸に直交する1方向によってのみ評価することで、透視X線画像の枚数を削減して、患者の位置決めに係る時間の短縮化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6668902号
【特許文献2】国際公開第2018/225234号
【特許文献3】特開2013―99431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1~3に記載の技術では、画像の類似度を用いた最適化を行っていることには変わりがないため、位置決め開始時の患者の位置が計画位置から大きく離れ、画像間の類似度の変化が小さくなる場合などでは、最適化計算における繰り返し計算回数の増加により計算時間が増加することを抑制できないことがある。
【0013】
本開示の目的は、計算時間をより低減することが可能な位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様に従う位置決め装置は、被検者が搭載される寝台の位置を制御する位置決め装置であって、複数の撮影軸のそれぞれについて光源からの光を前記被検者を介して検出面で検出することで前記被検者を撮影した複数の透視画像を取得する画像取得部と、
前記複数の撮影軸のそれぞれについて、前記被検者の3次元透視画像を当該撮影軸に対する検出面に投影した疑似透視画像を作成する作成部と、前記複数の撮影軸のそれぞれについて、当該撮影軸に応じた前記透視画像と前記疑似透視画像とのズレ量に基づいて当該撮影軸を補正した補正軸を求め、前記複数の撮影軸の交点から各補正軸の共通垂線における中点までの移動量を、前記寝台を移動させる寝台移動量として算出する計算処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計算時間をより低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係る粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
図2】患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】2次元移動量から補正軸を求める処理を説明するための図である。
図4】補正軸から3次元移動量を求める処理を説明するための図である。
図5図4に示す共通垂線の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
なお、以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でもよい。また、実施形態を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。また、同一あるいは同様の構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係る粒子線治療システムの全体構成を示す図である。図1に示す粒子線治療システムAは、被検者である患者Bを標的として粒子線を照射するための装置群を有する放射線治療装置である。粒子線治療システムAは、加速器1と、ビーム輸送装置2と、ガントリ3と、照射ノズル4と、FPD5A及び5Bと、X線管6A及び6Bと、寝台7と、ロボットアーム8と、通信装置9と、データサーバ10と、治療計画装置11と、透視X線画像撮影装置12と、寝台制御装置13と、患者位置決め装置20とを備える。
【0020】
加速器1は、患者Bに照射する粒子線を生成する粒子線生成器であり、粒子線を、患者Bの治療に適したエネルギーになるまで加速して出力する。ビーム輸送装置2は、加速器1から出力された粒子線をガントリ3まで輸送する。粒子線の種類は、特に限定されず、例えば、陽子線又は炭素線などである。
【0021】
ガントリ3及び照射ノズル4は、加速器1から輸送された粒子線を患者Bに照射する照射装置である。ガントリ3は、加速器1から輸送された粒子線を患者Bに照射する照射角度を調整する。具体的には、ガントリ3は、患者Bを囲って360°の回転することが可能な回転機構を有し、回転することにより照射角度を調整する。照射ノズル4は、ガントリ3に備わっており、ガントリ3まで輸送された粒子線を患者Bに照射する。照射ノズル4には、粒子線の形状を患者の患部の形状に合うように調整する機構が組み込まれていてもよい。
【0022】
FPD5A及び5BとX線管6A及び6Bとは、患者Bの透視撮影を行う撮影体系を構成する。FPD5A及び5Bは、撮影用の光であるX線を検出面で検出することで患者Bを撮影する平面検出器である。X線管6A及び6Bは、X線を出力する光源である。FPD5A及びX線管6Aは、X線管6Aから出力されたX線が患者Bを介してFPD5Aにて検出されるように対向して配置され、FPD5B及びX線管6Bは、X線管6Bから出力されたX線が患者Bを介してFPD5Bにて検出されるように対向して配置される。FPD5Aの中心とX線管6Aとを結ぶ軸と、FPD5Bの中心とX線管6Bとを結ぶ軸とが患者Bを撮影する2つの撮影軸となる。2つの撮影軸は、互いに直交することが好ましいが、互いに直交していなくてもよい。また、粒子線治療システムAは、FPD及びX線管をそれぞれ3つ以上備えてもよい。この場合、撮影軸も3つ以上となる。
【0023】
寝台7は、患者Bに粒子線を照射する際に患者Bを載せる台である。ロボットアーム8は、寝台7を移動させる装置である。具体的には、ロボットアーム8は、寝台7に対して、複数の移動軸のそれぞれに沿った複数の並進方向への並進移動と、複数の回転軸を中心とした複数の回転方向への回転移動とを行う。本実施形態では、移動軸と回転軸同一であり、移動軸(回転軸)は3つある。また、各移動軸は、寝台7に仰向けに横たわった患者Bから見て右から左に向かう方向(RL方向)、患者Bの足から頭に向かう方向(SI方向)、背中から腹部に向かう方向(AP方向)を向いている。
【0024】
通信装置9は、データサーバ10、治療計画装置11及び患者位置決め装置20を互いに通信可能に接続する。
【0025】
データサーバ10は、患者Bの粒子線治療に関する種々の情報を格納する格納装置である。データサーバ10は、例えば、患者Bの3次元透視画像と、患者Bの治療計画を示す治療計画情報とを格納する。3次元透視画像は、患者の形状及び電子密度をボクセル単位で示す情報を含む。3次元透視画像は、例えば、コンピュータ断層(Computed Tomography:CT)撮影画像であり、事前(患者Bの治療計画情報を作成する前)に生成される。治療計画情報は、3次元透視画像に基づいて生成される。また、治療計画情報は、治療時の患者Bの配置である計画配置を示す計画配置情報を含む。患者Bの配置は、患者Bの位置及び角度(姿勢)を示し、寝台7の位置及び角度によって定まる。
【0026】
治療計画装置11は、データサーバ10に格納された3次元透視画像に基づいて、患者Bの治療計画を作成し、その治療計画を示す治療計画情報をデータサーバ10に格納する。
【0027】
透視X線画像撮影装置12は、FPD5A及びX線管6Aと、FPD5B及びX線管6Bとをそれぞれ制御して、患者Bを互いに異なる角度から撮影した複数の透視X線画像を透視画像として取得し、その取得した透視X線画像を患者位置決め装置20に送信する。透視X線画像は、本実施形態では、2つある。
【0028】
寝台制御装置13は、ロボットアーム8を制御して寝台7の配置を調整することで、患者Bの配置を調整する。
【0029】
患者位置決め装置20は、データサーバ10に格納された3次元透視画像及び治療計画情報と、透視X線画像撮影装置12にて取得された透視X線画像とに基づいて、患者Bの位置決め処理を実行する。
【0030】
患者Bの位置決め処理は、患者Bの粒子線治療の開始前に、寝台7に載せられた患者Bを治療計画情報にて示される計画配置と同じ配置にする処理である。患者位置決め装置20は、寝台制御装置13を介してロボットアーム8を制御して寝台7の位置及び角度を調整することで、患者Bを計画配置と同じ配置にする。
【0031】
位置決め処理が終了すると、実際に患者Bの粒子線治療が行われる。具体的には、加速器1にて治療に適したエネルギーまで加速された粒子線がビーム輸送装置2を介してガントリ3に輸送される。粒子線は、ガントリ3にて適切な方向に偏向され、照射ノズル4を通過して患者Bの患部に照射される。
【0032】
以下、患者位置決め装置20についてより詳細に説明する。
【0033】
患者位置決め装置20は、図1に示すように、画像取得部21と、疑似透視X線画像作成部22と、ROI描画部23と、画像照合部24と、画像表示部25と、制御部26とを有する。
【0034】
画像取得部21は、データサーバ10から通信装置9を介して3次元透視画像を取得し、透視X線画像撮影装置12から透視X線画像を取得する。
【0035】
疑似透視X線画像作成部22は、画像取得部21にて取得された3次元透視画像を、透視X線画像を撮影する各撮影軸に応じた複数の面のそれぞれに投影した複数の疑似透視画像である複数の疑似透視X線画像を作成する作成部である。疑似透視X線画像作成部22は、透視X線画像を生成した撮影体系と同じ仮想的な空間上で患者Bの3次元画像を配置して投影処理することで疑似透視X線画像を作成する。撮影軸に応じた面は、例えば、撮影軸に対応するFPDの検出面、つまり撮影軸に略直交する面である。
【0036】
ROI描画部23は、疑似透視X線画像における患者の位置決めに使用する関心領域であるROIを特定する。具体的には、ROI描画部23は、疑似透視X線画像を表示して、ユーザに疑似透視X線画像上にROIを描画させることで、ROIを特定する。ROIは、例えば、骨のような位置決め対象構造物を含むように描画される。
【0037】
画像照合部24は、透視X線画像と疑似透視X線画像に基づいて、寝台7を移動させる寝台移動量を算出する計算処理部である。ROI描画部23にてROIが指定されている場合、画像照合部24は、ROIにおける透視X線画像と疑似透視X線画像とに基づいて、寝台移動量を算出してもよい。なお、寝台移動量は、本実施形態では、複数の並進方向のそれぞれの移動量を含む。
【0038】
画像表示部25は、種々の情報及び画像を表示する表示部である。例えば、画像表示部25は、透視X線画像、疑似透視X線画像、及び、ROI領域を示すROI画像などを表示する。
【0039】
制御部26は、画像照合部24にて算出された寝台移動量に基づいて、寝台制御装置13を制御して、寝台7を移動させることで、患者Bの配置を調整する。
【0040】
以上の機能を有する患者位置決め装置20は、コンピュータ装置のような種々の情報処理が可能な情報処理装置にて実現することができる。情報処理装置は、例えば、演算素子、記憶媒体及び通信インターフェースを有し、さらに、必要に応じてマウス及びキーボードのような入力部と、ディスプレイのような表示部とを有する。
【0041】
演算素子は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサである。記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びSSD(Solid State Drive)などの半導体記憶媒体などである。また、記憶媒体として、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスク及び光ディスクドライブの組み合わせが用いられてもよい。さらに、記憶媒体として、磁気テープメディアのような他の高値の記憶媒体が用いられてもよい。
【0042】
記憶媒体には、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。患者位置決め装置20の動作開始時(例えば電源投入時)に、演算素子がプログラムを記憶媒体から読み出して実行することにより、患者位置決め装置20の各部21~27が実現され、全体の一連の制御が実行される。また、記憶媒体には、プログラム以外にも、患者位置決め装置20の各処理に必要なデータ等が格納される。
【0043】
なお、本実施形態の患者位置決め装置20は、複数の情報処理装置が通信ネットワークを介して通信可能に構成された、いわゆるクラウドコンピューティングにて構成されてもよい。
【0044】
以下、患者位置決め装置20による患者位置決め処理について、図2から図5を用いてより詳細に説明する。
【0045】
図2は、患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0046】
なお、患者Bは寝台7のセットアップポジションに配置されているものとする。セットアップポジションとは、患者Bを計画配置と同じ配置にするための位置である。例えば、寝台7上の患者Bの体表の位置が治療室内に設置された赤外線レーザを用いて測定され、その位置に基づいて、患者Bが寝台7のセットアップポジションに配置される。
【0047】
患者位置決め処理では、先ず、制御部26は、データサーバ10から治療計画情報を取得し、その治療計画情報に含まれる計画配置情報に基づいて、寝台制御装置13を介してロボットアーム8を制御して、患者Bの配置が計画配置情報にて示される計画配置となるように、患者Bを載せた寝台7を移動させる(ステップS100)。このとき、寝台7に載せられた患者Bの位置決め対象構造物が、FPD5A及び5BとX線管6A及び6Bとで形成されるX線の照射領域に含まれる。
【0048】
その後、画像取得部21は、透視X線画像撮影装置12を介して、患者Bを互いに異なる複数の方向から撮影した複数の透視X線画像を取得する(ステップS101)。本実施形態では、画像取得部21は、2つの撮影軸に沿った2つの方向から撮影した2つ透視X線画像を取得する。
【0049】
疑似透視X線画像作成部22は、データサーバ10から3次元透視画像を取得し、その3次元透視画像から、2つの撮影軸のそれぞれに応じた2つの疑似透視X線画像を作成する(ステップS102)。
【0050】
画像照合部24は、撮影軸ごとに、その撮影軸に応じた透視X線画像と疑似透視X線画像との2次元方向のズレ量を、撮影軸に応じたFPDの検出面上における2次元移動量として算出する(ステップS103)。
【0051】
画像のズレ量を算出する算出方法には、疑似透視X線画像を、透視X線画像に対して横方向及び縦方向に走査してそれらの画像の類似度が最も高くなる位置を探索する方法が知られているが、この方法では、類似度の逐次算出が必要であり計算量が多くなる。そこで、本実施形態では、高速な画像照合が可能な手法として知られるPOC(Phase-Only Correlation method:位相限定相関)法を用いた算出方法について説明する。
【0052】
POC法は、画像に対する2次元離散フーリエ変換から得られる位相成分のみを用いて画像のマッチング(位置合わせ)を行う方法であり、画像の輝度変化などの外乱に強いという特徴を有する。また、POC法は、エッジ又はコーナーのような画像の特徴点に基づいてマッチングを行う方法とは異なり、明確な特徴が存在しない画像に対しても精度良く位置合わせを行うことができる。
【0053】
本実施形態では、画像照合部24は、POC法によるマッチングの評価指標として使用されるPOC関数(位相限定相関関数)を用いて、透視X線画像と疑似透視X線画像とのズレ量である2次元移動量を算出する。
【0054】
ここで、POC法による算出方法の対象となる2つの画像を画像f(n,n)及びg(n,n)とする。画像f(n,n)及びg(n,n)は、両方ともN×Nピクセルの画像である。n及びnは、ピクセルを示す離散空間インデックスであり、n=-M,…,M、n=-M,…,Mである。なお、n及びnは整数であり、M及びMは正の整数であり、N=2M+1、N1=2M+1を満たす。
【0055】
画像f(n,n)及びg(n,n)の2次元離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform: DFT)は、次の式(1)及び(2)で表される。
【数1】
ここで、k(=-M,…,M)及びk(=-M,…,M)は、離散周波数インデックス(整数)であり、WN1=exp(-j・2π/N1)及びWN1=exp(-j・2π/N)は、回転因子である。A(k,k)及びA(k,k)は、振幅スペクトルであり、θ(k,k)及びθ(k,k)は、位相スペクトルである。また、総和Σn1,n2は、離散空間インデックスの全域に渡る総和Σn1=-M1 M1Σn2=-M2 M2を示す。
【0056】
また、画像f(n,n)及びg(n,n)のの正規化相互パワースペクトルは、フーリエ変換後の関数F(k,k)及びG(k,k)を用いて、次の式(3)で表される。
【数2】
ここで、
【数3】
は、G(k,k)の複素共役を示す。また、{θ(k,k)-θ(k,k)}は、画像f(n,n)及びg(n,n)の位相差スペクトルである。
【0057】
POC関数r(n,n)は、正規化相互パワースペクトルの2次元逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform:IDFT)として、次の式(4)で定義される。
【数4】
ここで、総和Σk1,k2は、離散周波数インデックスの全域に渡る総和Σk1=-M1 M1Σk2=-M2 M2を示す。
【0058】
POC関数は、対象の画像f(n,n)及びg(n,n)が互いに類似している場合、相関ピークと呼ばれる鋭いピークを有する。相関ピークの高さは、画像f(n,n)及びg(n,n)の位相差スペクトルの周波数に対する線形性を表しており、位相差スペクトルが周波数に対して線形であれば、相関ピークの高さは1となる。相関ピークの高さは、画像の類似性を表す尺度として有用であり、画像照合などにおいて使用されている。また、相関ピークの座標は、画像の相対的なズレ量を表す。例えば、画像の原点(n1=0,n2=0)に対する相関ピークの座標のズレ量を画像f(n,n)及びg(n,n)のズレ量として利用することができる。
【0059】
なお、2次元DFTでは、対象の画像の端部で循環することを仮定しているため、画像端に本来は存在しないはずの不連続性が現れる。本実施形態では、この不連続性を軽減するために、画像照合部24は、画像f(n,n)及びg(n,n)として、透視X線画像及び疑似透視X線画像に窓関数を乗算した画像を使用して、2次元移動量を算出する。窓関数は、例えば、式(5)で表される2次元ハニング窓(Hanning window)w(n,n)である。
【数5】
【0060】
画像照合部24は、以上説明したようなPOC法を用いて、撮影軸ごとに、透視X線画像及び疑似透視X線画像から算出される位相限定相関関数の相関ピークの位置と原点との2次元方向のズレ量を2次元移動量として算出する。
【0061】
図2の説明に戻る。画像照合部24は、各撮影軸の2次元移動量に基づいて、寝台7を移動させる寝台移動量として3次元移動量を算出する3次元移動量算出処理を実行する(ステップS104)。
【0062】
3次元移動量算出処理では、画像照合部24は、先ず、撮影軸ごとに、その撮影軸に応じた透視X線画像と疑似透視X線画像とのズレ量である2次元移動量に基づいて、撮影軸を補正した補正軸を求める。そして、画像照合部24は、各撮影軸の交点から各補正軸の共通垂線における中点までの移動量を、寝台移動量である3次元移動量として算出する。
【0063】
図3図5は、3次元移動量算出処理をより詳細に説明するための図である。具体的には、図3は、2次元移動量から補正軸を求める処理を説明するための図であり、図4は、補正軸から3次元移動量を求める処理を説明するための図であり、図5は、図4に示す共通垂線の拡大図である。なお、FPD5A及び5Bの配置角度などによって透視X線画像の歪みは予め歪み補正により除去されているものとする。歪み補正は、例えば、透視X線画像を撮影する撮影装置で行われてもよいし、患者位置決め装置20で行われてもよい。また、歪み補正が行われていなくても、以下の3次元移動量算出処理を行うことは可能である。
【0064】
図3に示すように、FPD5Aの検出面5A1の中心点をO、FPD5Bの検出面5B1の中心点をOとしている。撮影軸は、検出面5A1の中心点OとX線管6Aとを結ぶ線L、検出面5B1の中心点OとX線管6Bとを結ぶ線Lとなる。
【0065】
画像照合部24は、撮影軸L及びLの交点を基準位置IC(座標系の原点)とし、基準位置ICを撮影軸Lに応じた2次元移動量だけFPD5Aの検出面5A1上に沿って移動させた位置とX線管6Aを結ぶ線lと、撮影軸L2に応じた2次元移動量だけFPD5Bの検出面5B1上に沿って移動させた位置とX線管6Bを結ぶ線lと、を補正軸とする。
【0066】
ここで、図4に示すように、X線管6Aの位置をA(x,y,z)、FPD5Aの検出面5A1上のマッチングした中心点の位置をB(x,y,z)、X線管6Bの位置をC(x,y,z)、FPD5Bの検出面5B1上のマッチングした中心点の位置をD(x,y,z)とする。各位置A~Dの座標は、ガントリ3及び寝台7が配置された治療室内に予め設定された座標系(X,Y,Z)における3次元座標であり、基準位置ICを座標系の原点としている。また、マッチングした中心点は、補正軸l及びlと検出面5A1及び5B1との交点である。
【0067】
補正軸である線l及びlは、理想的には互いに交わるが、実際には、画像解像度に依存したマッチングした中心点の位置の微小誤差、FPD5A及び5BとX線管6A及び6Bと機械配置の微小なずれなどのために、互いに交わらない場合がある。
【0068】
線l及び線lが互いに交わらない場合、画像照合部24は、線l及び線l上における、線lと線lとの距離が最も小さくなる点を点P及び点Qとし、その点Pと点Qとを結ぶ線分lの中点の位置を3次元座標で算出する。線lは互いにねじれ関係にある線lと線lの両方に垂直な共通垂線である。以下、線lの長さを共通垂線長と呼ぶ。また、点P及びQは、共通垂線lの足となる。
【0069】
線lの点Pと線lの点Qは、媒介変数s及びtを用いて以下のようにベクトル表記することができる。
p=a+su
q=c+tv
【0070】
ここで、pは点Pの位置ベクトル(x,y,z)、qは点Qの位置ベクトル(x,y,z)、aは点Aの位置ベクトル(x,y,z)、cは点Cの位置ベクトル(x,y,z)、uは線lの方向ベクトル、vは線lの方向ベクトルである。
【0071】
線分PQは方向ベクトルu及びvのそれぞれと直交するため、線分PQの方向ベクトルwと方向ベクトルu及びvとの内積はゼロとなる。つまり、w・u=0、w・v=0である。なお、演算子「・」は内積を示す。
【0072】
この内積の2式を連立一次方程式として解くことで、媒介変数s及びtの値を求めることができる。これにより、点P及びQの座標、並びに、線分PQの長さである共通垂線長LがL=|q-p|=(|p|+|q|-2p・q)1/2={(x-x+(y-y+(z-z1/2と求まる。
【0073】
さらに、線分PQの中点Mの座標(x,y,z)M(x,y,z)=((x+x)/2,(y+y)/2,(z+z)/2)が求まる。これにより、3次元移動量は、各撮影軸の交点から線分PQの中点Mまでの移動量であり、本実施形態では、各撮影軸の交点を原点としているため、線分PQの中点Mの座標の値を、寝台移動量である3次元移動量として算出することができる。
【0074】
画像照合部24は、上記の方法に従って3次元移動量及び共通垂線長を算出する。なお、補正軸である線l及びlが互いに交わる場合、画像照合部24は、線l及びlの交点を線分PQの中点Mとみなして、3次元移動量を算出する。
【0075】
図3の説明に戻る。画像照合部24は、ステップ104において上記の方法に従って3次元移動量及び共通垂線長を算出すると、共通垂線長が閾値(例えば、1mm)未満か否かを判定する(ステップS105)。なお、共通垂線長は理想的にはゼロである、つまり線l及びlは互いに交わる。共通垂線長が長いほど、疑似透視X線画像及び透視X線画像の2次元移動量と3次元移動量との整合性がとれていないことを表す。また、画像照合部24は、共通垂線長の代わりにPOC関数の相関ピークが閾値未満か否かを判定してもよい。
【0076】
共通垂線長が閾値以上である場合(ステップS105:No)、画像照合部24は、透視X線画像及び疑似透視X線画像の少なくとも一方を変更して(ステップS106)、ステップS102の処理に戻る。
【0077】
画像の変更は、例えば、透視X線画像及び疑似透視X線画像の少なくとも一方である変更対象画像に所定の画像処理を実行することで行われる。所定の画像処理は、例えば、変更対象画像のエッジを強調するフィルタ処理、変更対象画像から特定の部分画像を抽出する処理などである。部分画像は、例えば、ROIを示す画像であり、ROI描画部23にて実行されてもよい。また、ステップS103~S104の処理が最初に実行される際に、透視X線画像及び疑似透視X線画像から抽出されたROIを示す画像が使用されてもよい。この場合、画像の変更は、ROIを示す部分画像を元の透視X線画像及び疑似透視X線画像に戻すことで実行されてもよい。また、画像の変更は、透視X線画像撮影装置12から別の透視X線画像を取得したり、別の3次元透視画像から別の疑似透視X線画像を作成したりすることで実現されてもよい。
【0078】
一方、共通垂線長が閾値未満である場合(ステップS105:Yes)、制御部26は、画像照合部24にて算出した3次元移動量に基づいて、寝台制御装置13を介して寝台7を移動させ(ステップS107)、患者位置決め処理を終了する。これにより、患者を現在の配置から治療計画時の配置へと移動させることが可能となり、その後、実際の粒子線の照射が行われる。
【0079】
以上説明した患者位置決め処理は単なる一例であって、これに限定されるものではない。例えば、画像照合部24は、上記の処理により寝台移動量を算出した後で、疑似透視X線画像を寝台移動量に基づいて補正した各補正疑似透視画像と各透視画像との類似度に基づく最適化計算により、寝台7の並進量及び回転量を算出する微調整処理を行ってもよい。この場合、制御部26は、画像照合部24にて算出した3次元移動量と、微調整処理にて算出した並進量及び回転量に基づいて、寝台制御装置13を介して寝台7を移動させる。例えば、制御部26は、寝台7を3次元移動量だけ移動させ、その後、寝台7を微調整処理にて算出した並進量及び回転量だけ、寝台7を平行移動及び回転させる。なお、並進量は、寝台7の複数の移動軸のそれぞれに対して算出され、回転量は寝台7の複数の回転軸のそれぞれについて算出される。
【0080】
微調整処理では、画像照合部24は、例えば、特許文献1~3に記載の処理を行ってもよい。また、画像照合部24は、上記の類似度に基づいて、複数の撮影軸を含む複数の最適化軸のそれぞれに沿った複数の並進方向と、複数の回転軸を中心とした複数の回転方向とのそれぞれについて、各透視画像と各疑似透視画像とが最も一致するような、寝台7の移動量を算出する処理を行ってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、放射線治療装置として、粒子線治療システムを例示したが、放射線治療装置は、粒子線治療システムに限らず、X線などの非粒子線を用いた放射線治療システムでもよい。この場合、加速器1は、例えば、X線を出力する電子線加速器で構成される。
【0082】
以上説明したように本実施形態によれば、画像取得部21は、被検者を撮影した複数の透視X線画像を取得する。疑似透視X線画像作成部22は、透視X線画像の撮影軸のそれぞれについて、被検者の3次元透視画像を当該撮影軸に対する検出面に投影した疑似透視画像を作成する。画像照合部24は、複数の撮影軸のそれぞれについて、その撮影軸に応じた透視X線画像と疑似透視X線画像とのズレ量である2次元移動量に基づいて撮影軸を補正した補正軸を求め、各撮影軸の交点から各補正軸の共通垂線における中点までの移動量を、寝台を移動させる寝台移動量として算出する。したがって、最適化計算における繰り返し計算を行わなくても患者の位置決めが可能となるため、計算時間をより低減することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態では、画像照合部24は、複数の撮影軸のそれぞれについて、2次元移動量だけ撮影軸の交点を移動させた位置とX線管とを結ぶ軸を補正軸として求める。この場合、透視X線画像と疑似透視X線画像とのズレに応じた適切な補正軸を算出することが可能となるため、精度のより良い位置決めが可能となる。
【0084】
また、本実施形態では、画像照合部24は、透視X線画像及び疑似透視X線画像から算出される位相限定相関関数のピークの位置に基づいて、2次元移動量を算出する。この場合、最適化計算のような逐次計算を行わなくても2次元移動量を算出することができるため、計算時間をより低減することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、画像照合部24は、透視X線画像及び疑似透視X線画像上に設定されたROIから位相限定相関関数を算出する。このため、2次元移動量をより適切に算出することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、画像照合部24は、各補正軸の共通垂線の長さが閾値以上の場合、透視X線画像及び疑似透視X線画像の少なくとも一方を変更して、補正軸を再び求める。この場合、疑似透視X線画像及び透視X線画像の2次元移動量と3次元移動量とがより整合した補正軸を求めることが可能となるため、より精度の良い位置決めが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、画像の変更は、所定の画像処理を行うことで実行される。このため、透視X線画像を撮影し直したり、3次元透視画像から疑似透視X線画像を作成し直したりする必要がないため、計算時間をより低減することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、画像照合部24は、各疑似透視X線画像を寝台移動量に基づいて補正した各補正疑似透視画像と各透視画像との類似度に基づいて、寝台7の並進方向及び回転方向の移動量をさらに算出する。この場合、精度のより良い位置決めが可能となる。なお、この場合でも、寝台移動量に基づいて各疑似透視画像が補正されているため、微調整開始時の患者の位置が計画位置から大きく離れることを抑制できるため、最適化計算における繰り返し計算回数の増加を抑制することができる。したがって、計算時間をより低減することが可能となる。
【0089】
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
A…粒子線治療システム、B…患者、1…加速器、2…ビーム輸送装置、3…ガントリ、4…照射ノズル、5A…FPD、5B…FPD、6A…X線管、6B…X線管、7…寝台、8…ロボットアーム、9…通信装置患者、10…データサーバ、11…治療計画装置、12…透視X線画像撮影装置、13…寝台制御装置、20…患者位置決め装置、21…疑似透視X線画像作成部、23…ROI描画部、24…画像照合部、25…画像表示部、26…制御部

図1
図2
図3
図4
図5