(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120707
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】電動圧縮機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20230823BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230823BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023710
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】矢田 真也
(72)【発明者】
【氏名】西井 伸之
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB07
5H605BB10
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC06
5H605CC08
5H605DD09
5H605DD11
5H605EC20
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】メンテナンス作業の効率化が可能な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機100は、インバータ40(発熱部品)と、一方の第一主面33aに冷媒が当接し、他方の第二主面33b側でインバータ40を収容するインバータケース30(金属筐体)と、第二主面33bから突出しインバータ40を貫通した状態で、当該インバータ40を第二主面33bに固定する固定部50と、インバータ40を貫通した固定部50が貫通される基板70と、インバータ40と基板70との間に介在するように、固定部50が貫通されたスペーサ60とを有し、インバータ40のリード部42は、基板70に溶接されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、
一方の第一主面に冷媒が当接し、他方の第二主面側で前記発熱部品を収容する金属筐体と、
前記第二主面から突出し前記発熱部品を貫通した状態で、当該発熱部品を前記第二主面に固定する固定部と、
前記発熱部品を貫通した固定部が貫通される基板と、
前記発熱部品と前記基板との間に介在するように、前記固定部が貫通されたスペーサとを有し、
前記発熱部品のリード部は、前記基板に溶接されている
電動圧縮機。
【請求項2】
前記発熱部材と前記第二主面との間に配置された非接着性の熱伝導材を有する
請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記スペーサは、前記基板のみに接着されている
請求項1または2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記スペーサは、前記発熱部品よりも熱伝導率が低い樹脂材料により形成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記固定部は、前記金属筐体に設けられた雄ネジ部と、前記雄ネジ部にネジ止めされるナット部とを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記雄ネジ部は、ネジ軸と、前記ネジ軸の一端部に連続する頭部とを備えていて、前記頭部が前記筐体の第一主面側に配置されるように前記ネジ軸が前記金属筐体を貫通している
請求項5に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電動圧縮機の製造方法であって、
前記固定部に前記発熱部品、前記スペーサ及び前記基板が固定された状態で、前記発熱部品のリード部を前記基板に溶接する
電動圧縮機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動圧縮機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、発熱部品であるIPM(Intelligent Power Module)が、専用の第一ネジにより金属筐体に固定されており、基板も他の第二ネジにより金属筐体に固定されている。基板は、発熱部品を覆うように配置されているため、発熱部品のリードは、基板を貫通した状態で当該基板に半田により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、組み立て後に基板の裏面(発熱部品を向く面)の状態を確認するには、第二ネジを取り外したあとに半田を除去しなければならず、メンテナンス作業が煩雑なものになっていた。
【0005】
本開示の目的は、メンテナンス作業の効率化が可能な電動圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動圧縮機は、発熱部品と、一方の第一主面に冷媒が当接し、他方の第二主面側で前記発熱部品を収容する金属筐体と、前記第二主面から突出し前記発熱部品を貫通した状態で、当該発熱部品を前記第二主面に固定する固定部と、前記発熱部品を貫通した固定部が貫通される基板と、前記発熱部品と前記基板との間に介在するように、前記固定部が貫通されたスペーサとを有し、前記発熱部品のリード部は、前記基板に溶接されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電動圧縮機によれば、メンテナス作業の効率化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る電動圧縮機の一部分を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すインバータケースのモータハウジング側の一面が見えるように分解して回転させた分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るインバータケースの内部構造を示す断面図である。
【
図4】実施の形態に係るインバータの取付構造を示す模式図である。
【
図5】実施の形態に係るインバータの取付方法の一工程を示す模式図である。
【
図6】実施の形態に係るインバータの取付方法の一工程を示す模式図である。
【
図7】実施の形態に係るインバータの取付方法の一工程を示す模式図である。
【
図8】変形例に係るインバータの取付構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様に係る電動圧縮機は、発熱部品と、一方の第一主面に冷媒が当接し、他方の第二主面側で前記発熱部品を収容する金属筐体と、前記第二主面から突出し前記発熱部品を貫通した状態で、当該発熱部品を前記第二主面に固定する固定部と、前記発熱部品を貫通した固定部が貫通される基板と、前記発熱部品と前記基板との間に介在するように、前記固定部が貫通されたスペーサとを有し、前記発熱部品のリード部は、前記基板に溶接されている。
【0010】
これによれば、固定部は、基板、スペーサ及び発熱部品に対して貫通した状態でこれらを固定しているので、発熱部品のリード部が基板に溶接されていたとしても、固定部による固定を解除すれば、基板、スペーサ及び発熱部品を金属筐体から取り外すことができる。これにより、溶接を取り除かなくても基板の裏面の状態を確認することができる。したがって、メンテナンス作業を効率化することができる。
【0011】
また、電動圧縮機は、前記発熱部材と前記第二主面との間に配置された非接着性の熱伝導材を有してもよい。
【0012】
これによれば、発熱部材と第二主面との間に非接着性の熱伝導材が配置されているので、発熱部材からの熱を熱伝導材でスムーズに金属筐体に伝達することができ、放熱性を高めることが可能である。熱伝導材は非接着性であるので、基板、スペーサ及び発熱部品を金属筐体から取り外す際においても、スムーズに取り外すことが可能である。つまり、メンテナンス作業の効率化を阻害せずに放熱性を高めることが可能である。
【0013】
また、前記スペーサは、前記基板のみに接着されていてもよい。
【0014】
これによれば、スペーサが基板のみに接着されているので、スペーサと発熱部品とは非接着である。これにより、分解時においては発熱部品をスペーサから容易に取り外すことができるので、発熱部品を交換する場合のメンテナンス作業を効率化することができる。
【0015】
また、前記スペーサは、前記発熱部品よりも熱伝導率が低い樹脂材料により形成されていてもよい。
【0016】
これによれば、発熱部品よりも熱伝導率の低い樹脂材料によってスペーサが形成されているので、スペーサを断熱材として機能させることができる。これにより、発熱部品からの熱が基板に伝達されることをスペーサで抑制することができる。
【0017】
また、前記固定部は、前記金属筐体に設けられた雄ネジ部と、前記雄ネジ部にネジ止めされるナット部とを有してもよい。
【0018】
これによれば、固定部が雄ネジ部とナット部を有しているので、ネジ止めにより基板、スペーサ及び発熱部品を金属筐体に固定することができる。つまり、基板、スペーサ及び発熱部品の着脱を簡単に行うことができ、メンテナンス作業をより効率化することができる。
【0019】
また、前記雄ネジ部は、ネジ軸と、前記ネジ軸の一端部に連続する頭部とを備えていて、前記頭部が前記筐体の第一主面側に配置されるように前記ネジ軸が前記金属筐体を貫通していてもよい。
【0020】
これによれば、雄ネジ部の頭部が筐体の第一主面側に配置されているので、当該雄ネジ部を冷媒に晒すことができる。したがって、雄ネジ部を介して発熱部品を効率的に冷却することが可能である。
【0021】
また、上記電動圧縮機の製造方法であって、前記固定部に前記発熱部品、前記スペーサ及び前記基板が固定された状態で、前記発熱部品のリード部を前記基板に溶接してもよい。
【0022】
これによれば、固定部に発熱部品、スペーサ及び基板が固定された状態で、発熱部品のリード部が基板に溶接されるので、リード部を安定した状態で基板に溶接することができる。
【0023】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の包括的又は具体的な一例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0025】
[構成]
図1は、実施の形態に係る電動圧縮機100の一部分を示す斜視図である。
図1では、本実施の形態の電動圧縮機100における特徴的な部分を明確にするため、電動圧縮機100における一部分のみを示している。具体的には、
図1では、電動圧縮機100を構成するモータハウジング20のインバータケース30側の一部分と、インバータケース30のモータハウジング20側の一部分である壁部33とが示されている。また、
図2は、
図1に示すインバータケース30のモータハウジング20側の一面が見えるように分解して回転させた分解斜視図である。
図2では、壁部33を、図中の破線矢印に従って約90度回転させた状態を示している。なお、
図2では、モータハウジング20の向きを変更していない。また、
図2に示す破線部分は、重畳された物体を透過した場合に見える構成を示している。例えば、
図2では、吸入ポート21を成している空間部分や、インバータ40が透過して見えている。さらに、
図2では、吸入ポート21から吸入された冷媒の流れを模式的な白抜き矢印で示している。
【0026】
図1に示すように、電動圧縮機100は、モータハウジング20と、インバータケース30と、モータハウジング20に内蔵されたモータ10(
図3参照)と、ここでは露出した状態で示されているインバータケース30に内蔵されるインバータ40と、を備えている。なお、インバータ40は後述するように発熱部品の一例である。また、後述する
図4に示すように、インバータ40は、厚み方向に貫通孔41が設けられており、さらに、インバータ40の両端部から基板70に接続されるリード部42が突出している構成を備えるが、わかりやすく図示するために、
図1では、これらを省略している。
【0027】
モータハウジング20は、内部に空間を有し、この空間にモータ10を収納するように構成されている。モータハウジング20には、モータ10を回転自在に支持するための軸受機構が形成されており、ボールベアリングなどの潤滑部材を介してモータ10の回転子を回転自在に軸支している。モータハウジング20は、モータ10の固定子を固定的に保持している。このようにして、モータハウジング20とモータ10とによって、インバータ40から供給される電気エネルギーを回転の運動エネルギーに変換することができる。
【0028】
モータハウジング20は、インバータケース30と、図示しない圧縮機を含む圧縮ユニットとを接続する概略形状が円柱形状の筐体である。なお、モータハウジング20の形状に特に限定はなく、モータ10を収納する空間が内部に形成されていればよい。モータハウジング20は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属及び合金、ならびに強化樹脂等の材料を組み合わせて形成される。モータハウジング20には、モータ10よりもインバータケース30側の位置に、モータハウジング20の円柱形状における径方向に沿って延びる吸入ポート21が形成されている。吸入ポート21は、電動圧縮機100と、外部の機構(例えば、冷凍サイクルにおける還流路など)に接続されている。吸入ポート21は、外部の機構から流れてくる冷媒を電動圧縮機100の内部に吸入するための入り口である。
【0029】
モータハウジング20には、さらに、インバータケース30に面する外面であり、モータ10が収納された空間とは隔てられた部分に流路23が形成されている。流路23は、組み立て後の電動圧縮機100におけるモータハウジング20とインバータケース30との並び方向に沿って深さを有し、インバータケース30側が開口されている。
【0030】
図2に示すように、吸入ポートから吸入された冷媒は、モータ10が収納された空間に直接的に流入せずに、少なくとも一部が流路23に通流されるようになっている。ここでは、吸入ポート21と流路23とが一体的に接続されていることで、吸入された冷媒は、全て流路23を介した後に、モータ10が収納された空間に流入するようになっている。なお、冷媒の一部が、モータ10が収納された空間に直接的に流入するようになっていてもよい。この場合、吸入ポート21又は流路23の一部に、モータ10が収納された空間に連通する連通孔が形成される。
【0031】
一方で本実施の形態では、流路23よりも下流側に、モータ10が収納された空間に連通する接続ポート25が形成されている。冷媒は、吸入ポート21から接続ポート25に至るまでにモータ10に接触しないようになっている。これは、冷媒を流路23側においてインバータ40の冷却に用いる観点で、冷却効果を高めるために有効である。
【0032】
また、流路23は、モータハウジング20とインバータケース30との並び方向に交差する交差面内において、なめらかな曲線状に延びている。このように、冷媒が通流される流路23がなめらかな曲線状に延びていることで、流路23を通流することによる冷媒の圧力損失を低減でき、電動圧縮機100の駆動効率の低下を抑制することが可能となる。
【0033】
流路23が延びる曲線は、モータハウジング20の円柱形状をモータハウジング20とインバータケース30との並び方向に交差する断面で切断した円形断面における外周円に対して同心円となっている。このモータハウジング20の概形が円柱形状でない場合は、流路23が延びる曲線は、例えば、モータ10の回転軸を円心とする、モータハウジング20とインバータケース30との並び方向に交差する交差面内での円となっている。このようにすることで、吸入ポート21の位置を変更したとしても流路23の長さを変更するのみで同じ設計のもとモータハウジング20を作製できる。
【0034】
図3は実施の形態に係るインバータケース30の内部構造を示す断面図である。
図3に示すように、インバータケース30は、インバータ40を内蔵する金属筐体であり、モータハウジング20に対向する壁部33と、当該壁部33を外部から覆うインバータカバー35(
図3参照)を含む。壁部33及びインバータカバー35が機械的に接続されることによってインバータ40が覆われている。
【0035】
インバータ40は、壁部33の第二主面33bに配置されている。第一主面33aと第二主面33bとは、互いに背向して壁部33の2つの主面のそれぞれを成している。第一主面33aは、モータハウジング20を向き、第二主面33bは、インバータカバー35を向いている。このように第一主面33aは流路23の一部をなしている。このため第一主面33aには、流路23を流れる冷媒が当接する。
【0036】
インバータ40は、例えば、プリント基板と当該プリント基板上に実装される回路素子とを含む。インバータ40は、例えば、図示しない電源回路から電力の供給を受けてモータ10が駆動するための三相交流電力を生成する回路を含む。このような回路は複数のスイッチング素子を含み、発熱量が大きいことから効率的な放熱が要求される。このようにインバータ40は発熱部品の一例であると言える。したがって、ここでは特に複数のスイッチング素子からなる発熱部品の部分をインバータ40と述べる。
【0037】
[インバータの取付構造]
次に、インバータ40の取付構造について説明する。
図4は、実施の形態に係るインバータ40の取付構造を示す模式図である。
図4に示すように、インバータ40の取付構造は、固定部50と、一対のスペーサ60と、基板70と、を有している。
【0038】
インバータ40は、インバータケース30の壁部33と、インバータカバー35とがなす空間内に収容されている(
図3参照)。インバータ40の両端部には、当該インバータ40の厚み方向に貫通した一対の貫通孔41が形成されている。また、インバータ40の両端部から、基板70に接続されるリード部42が突出している。
【0039】
インバータケース30の第二主面33bには、インバータ40を固定する固定部50が設けられている。具体的には、固定部50は、第二主面33bから突出した一対の雄ネジ部51と、当該雄ネジ部51にネジ止めされる一対のナット部52とを有している。
【0040】
各雄ネジ部51は、壁部33に対し一体形成されている。各雄ネジ部51は、インバータ40の各貫通孔41に挿入されて、当該インバータ40を貫通している。ここで、インバータケース30の第二主面33bと、インバータ40との間には、非接着性の熱伝導材80が配置されている。熱伝導材80は、例えばスペーサ60よりも熱伝導率の高い材料から形成されている。熱伝導材80は、シート材であってもよいし、熱伝導グリスなどのペースト材であってもよい。
【0041】
各スペーサ60は、インバータ40と基板70との間に介在するように、雄ネジ部51が貫通された部材である。具体的には、各スペーサ60は、貫通孔61を有しており、当該貫通孔41内に雄ネジ部51が挿入され、スペーサ60を貫通している。各スペーサ60は、インバータ40よりも熱伝導率が低い樹脂材料により形成されている。
【0042】
基板70は例えばプリント基板であり、当該基板70に形成されたスルーホール71を介してインバータ40が電気的に接続されている。基板70は、各スペーサ60を介してインバータ40の上方に配置されている。基板70のスルーホール71には、インバータ40のリード部42が下方から挿入されて貫通し、当該基板70の上面で溶接(はんだ付け)されている。基板70には、各雄ネジ部51が挿入され、貫通する一対の貫通孔72が形成されている。各貫通孔72を貫通した各雄ネジ部51には、ナット部52が締め付けられている。これにより、インバータケース30の壁部33に、インバータ40、各スペーサ60及び基板70が固定される。なお、図示は省略しているが、固定部50以外の箇所で基板70が固定されていてもよい。
【0043】
[電動圧縮機の製造方法]
次に、電動圧縮機100の製造方法について、主にインバータ40の取付方法について説明する。
図5~
図7は、実施の形態に係るインバータ40の取付方法の各工程を示す模式図である。
【0044】
まず、
図5に示すように、作業者は壁部33の第二主面33bに熱伝導材80を配置してから、当該熱伝導材80上にインバータ40を設置する。このとき、作業者は、インバータ40の各貫通孔41に対し各雄ネジ部51を挿入し、貫通させる。
【0045】
次いで、
図6に示すように、作業者は、インバータ40上に各スペーサ60を設置する。このとき、作業者は、各スペーサ60の貫通孔41に対し各雄ネジ部51を挿入し、貫通させる。
【0046】
次いで、
図7に示すように、作業者は、各スペーサ60上に基板70を設置する。このとき、作業者は、基板70の各貫通孔72に対し各雄ネジ部51を挿入し、貫通させる。その後、作業者は、各雄ネジ部51に各ナット部52を締め付けることで、インバータケース30の壁部33に、インバータ40、各スペーサ60及び基板70を固定する。また、このとき、作業者は、インバータ40の各リード部42を基板70のスルーホール71に貫通させ、基板70の上面に溶接する(
図4参照)。これにより、インバータ40がインバータケース30の壁部33に取り付けられる。
【0047】
その後、例えばメンテナンス時においては、各ナット部52を各雄ネジ部51から取り外すことで、基板70、各スペーサ60及びインバータ40を一体化した状態のままでインバータケース30の壁部33から取り外すことができる。これにより、各リード部42から溶接を取り除かなくとも、基板70の裏面(
図4において下面)の状態を作業者が確認できる。
【0048】
[効果]
以上のように、本実施の形態に係る電動圧縮機100は、インバータ40(発熱部品)と、一方の第一主面33aに冷媒が当接し、他方の第二主面33b側でインバータ40を収容するインバータケース30(金属筐体)と、第二主面33bから突出しインバータ40を貫通した状態で、当該インバータ40を第二主面33bに固定する固定部50と、インバータ40を貫通した固定部50が貫通される基板70と、インバータ40と基板70との間に介在するように、固定部50が貫通されたスペーサ60とを有し、インバータ40のリード部42は、基板70に溶接されている。
【0049】
これによれば、固定部50は、基板70、スペーサ60及びインバータ40に対して貫通した状態でこれらを固定しているので、インバータ40のリード部42が基板70に溶接されていたとしても、固定部50による固定を解除すれば、基板70、スペーサ60及びインバータ40をインバータケース30から取り外すことができる。これにより、溶接を取り除かなくても基板70の裏面の状態を確認することができる。したがって、メンテナンス作業を効率化することができる。
【0050】
また、電動圧縮機100は、インバータ40と第二主面33bとの間に配置された非接着性の熱伝導材80を有する。
【0051】
これによれば、インバータ40と第二主面33bとの間に非接着性の熱伝導材80が配置されているので、インバータ40からの熱を熱伝導材80でスムーズにインバータケース30に伝達することができ、放熱性を高めることが可能である。熱伝導材80は非接着性であるので、基板70、スペーサ60及びインバータ40をインバータケース30から取り外す際においても、スムーズに取り外すことが可能である。つまり、メンテナンス作業の効率化を阻害せずに放熱性を高めることが可能である。
【0052】
また、スペーサ60は、インバータ40よりも熱伝導率が低い樹脂材料により形成されている。
【0053】
これによれば、インバータ40よりも熱伝導率の低い樹脂材料によってスペーサ60が形成されているので、スペーサ60を断熱材として機能させることができる。これにより、インバータ40からの熱が基板70に伝達されることをスペーサで抑制することができる。
【0054】
また、固定部50は、インバータケース30に設けられた雄ネジ部51と、雄ネジ部51にネジ止めされるナット部52とを有する。
【0055】
これによれば、固定部50が雄ネジ部51とナット部52を有しているので、ネジ止めにより基板70、スペーサ60及びインバータ40をインバータケース30に固定することができる。つまり、基板70、スペーサ60及びインバータ40の着脱を簡単に行うことができ、メンテナンス作業をより効率化することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る電動圧縮機100の製造方法は、固定部50にインバータ40、スペーサ60及び基板70が固定された状態で、インバータ40のリード部42を基板70に溶接する。
【0057】
これによれば、固定部50にインバータ40、スペーサ60及び基板70が固定された状態で、インバータ40のリード部42が基板70に溶接されるので、リード部42を安定した状態で基板70に溶接することができる。
【0058】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の一つ又は複数の態様に係る電動圧縮機について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0059】
例えば、上記実施の形態では、発熱部品としてインバータ40を例示したが、発熱部品としては、基板70よりも発熱量が大きい部品であれば如何なるものを採用することができる。その他の発熱部品としては例えばモータ駆動用IC、抵抗器などが挙げられる。
【0060】
上記実施の形態では、固定部50が基板70の貫通孔72を貫通する場合を例示した。しかしながら、固定部は、基板の縁辺に設けられた切欠に挿入されることで当該基板を貫通してもよい。これは、発熱部品、スペーサにおいても同様である。
【0061】
また、スペーサを基板のみに対して接着剤で接着してもよい。この場合、スペーサが基板のみに接着されているので、スペーサとインバータとは非接着である。これにより、分解時においてはインバータをスペーサから容易に取り外すことができるので、インバータを交換する場合のメンテナンス作業を効率化することができる。
【0062】
また、上記実施の形態では、インバータケース30の壁部33に対し一体形成された雄ネジ部51を例示した。しかしながら、雄ネジ部は壁部とは別体であってもよい。具体的には、
図8を参照して説明する。
図8は、変形例に係るインバータ40の取付構造を示す模式図である。
図8は
図4に対応する図である。なお、本変形例において上記実施の形態と同等の部分については同等の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0063】
図8に示すように、各雄ネジ部51aは、ネジ軸53aと、ネジ軸53aの一端部に連続する頭部54aとを備えている。各雄ネジ部51aは、頭部54aが壁部33の第一主面33a側に配置されるように、ネジ軸53aが壁部33を貫通している。このように、雄ネジ部51aの頭部54aが壁部33の第一主面33a側に配置されているので、当該雄ネジ部51aを冷媒に晒すことができる。したがって、雄ネジ部51aを介してインバータ40を効率的に冷却することが可能である。
【0064】
上記実施の形態では、雄ネジ部51と、ナット部52とを有する固定部50を例示した。しかしながら、固定部は、基板、スペーサ及び発熱部品を金属筐体に着脱自在に固定できるのであればその構成は如何様でもよい。固定部のその他の構成としては、例えばスナップフィット構造を採用したものなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は、例えば車両等に搭載される空気調和装置に使用され得る電動圧縮機などとして有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 モータ
20 モータハウジング
21 吸入ポート
23 流路
25 接続ポート
30 インバータケース
33 壁部
33a 第一主面
33b 第二主面
35 インバータカバー
40 インバータ(発熱部品)
41 貫通孔
42 リード部
50 固定部
51、51a 雄ネジ部
52 ナット部
53a ネジ軸
54a 頭部
60 スペーサ
61 貫通孔
70 基板
71 スルーホール
72 貫通孔
80 熱伝導材
100 電動圧縮機