(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120712
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】保冷庫
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
B65D81/38 N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023716
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】井上 峰幸
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067EA32
3E067EA38
3E067EB17
3E067EB27
3E067EE59
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA04
3E067GA14
(57)【要約】
【課題】保冷性能を向上させると共に内容物を確実に出し入れすることができる保冷庫を提供すること。
【解決手段】開口部5を有する保冷容器2と、この保冷容器2の開口部5を塞ぐ内蓋3と、この内蓋3を覆うように前記開口部5を塞ぐ外蓋4とを有する保冷庫1において、前記内蓋3の表面に伝熱層28が設けられ、前記保冷容器2及び/又は前記外蓋4に加熱源としてのヒータ18が設けられると共に、このヒータ18と前記伝熱層28とが伝熱関係とされることにより、前記ヒータ18が発生させる熱を前記内蓋3の伝熱層28に与えることで、前記保冷容器2の開口部5と前記内蓋3の外周部との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋3の前記保冷容器2に対する着脱を確実に行わせることができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する保冷容器と、この保冷容器の開口部を塞ぐ内蓋と、この内蓋を覆うように前記開口部を塞ぐ外蓋とを有する保冷庫において、
前記内蓋の表面に伝熱層が設けられ、前記保冷容器及び/又は前記外蓋に加熱源が設けられると共に、この加熱源と前記伝熱層とが伝熱関係とされることを特徴とする保冷庫。
【請求項2】
前記伝熱層が、前記内蓋における前記保冷容器との接触部位に設けられることを特徴とする請求項1記載の保冷庫。
【請求項3】
前記内蓋の外周部にフランジ部が設けられ、このフランジ部に伝熱層が設けられ、前記フランジ部が前記保冷容器と外蓋とによって挟持されることを特徴とする請求項1記載の保冷庫。
【請求項4】
前記フランジ部の外周部を露出させないように、前記保冷容器及び/又は外蓋に囲い部が設けられることを特徴とする請求項3記載の保冷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内を低温に保つ保冷庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の保冷庫としては、上方が開口した収容室(本願発明の容器本体に相当する)と、この収容室の開口部を開閉する蓋体(本願発明の外蓋に相当する)とを有する保冷庫が知られている(例えば、特許文献1参照。)。なお、このような保冷庫において、断熱性を有する内蓋で前記開口部を覆い、この内蓋の外側を前記外蓋で覆うことも行われていた。このように構成することにより、前記保冷庫からの冷熱の漏れを抑えて、保冷性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような保冷庫は、前記外蓋の開閉等により、収容空間に外気が入り込み、この外気に含まれる水分が前記保冷容器の開口部と前記内蓋の外周部との間で凍結し、前記内蓋が前記開口部から取り外せなくなる虞があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、保冷性能を向上させると共に内容物を確実に出し入れすることができる保冷庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の保冷庫は、開口部を有する保冷容器と、この保冷容器の開口部を塞ぐ内蓋と、この内蓋を覆うように前記開口部を塞ぐ外蓋とを有する保冷庫において、前記内蓋の表面に伝熱層が設けられ、前記保冷容器及び/又は前記外蓋に加熱源が設けられると共に、この加熱源と前記伝熱層とが伝熱関係とされるものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の保冷庫は、請求項1において、前記伝熱層が、前記内蓋における前記保冷容器との接触部位に設けられるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の保冷庫は、請求項1において、前記内蓋の外周部にフランジ部が設けられ、このフランジ部に伝熱層が設けられ、前記フランジ部が前記保冷容器と外蓋とによって挟持されるものである。
【0009】
更に、本発明の請求項4に記載の保冷庫は、請求項3において、前記フランジ部の外周部を露出させないように、前記保冷容器及び/又は外蓋に囲い部が設けられるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の保冷庫は、以上のように構成することにより、前記加熱源が発生させる熱を前記内蓋の伝熱層に与えることで、前記保冷容器の開口部と前記内蓋の外周部との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋の前記保冷容器に対する着脱を確実に行わせることができる。
【0011】
なお、前記伝熱層を、前記内蓋における前記保冷容器との接触部位に設けることにより、前記加熱源が発生させる熱を前記内蓋の伝熱層に伝導させて、前記保冷容器の開口部と前記内蓋の外周部との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋の前記保冷容器に対する着脱を確実に行わせることができる。
【0012】
また、前記内蓋の外周部にフランジ部を設け、このフランジ部に伝熱層を設け、前記フランジ部を前記保冷容器と外蓋とで挟持することにより、前記伝熱層及び加熱源を前記保冷容器の収容空間から離れた位置にして、収容空間内の温度上昇を最小限にすると共に、前記伝熱層と加熱源とを接触させ続けることができる。
【0013】
更に、前記フランジ部の外周部を露出させないように、前記保冷容器及び/又は外蓋に囲い部を設けることにより、外気の熱により伝熱層の温度を上昇させすぎないようにすることができるばかりでなく、伝熱層の熱が外気に放出されないようにして、効率的に前記保冷容器の開口部と前記内蓋との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋の前記保冷容器に対する着脱を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す保冷庫の構造の説明図である。
【
図2】同、製造工程を順に示す説明図であり、内容器に支持部を取り付けた状態を示すものである。
【
図3】同、製造工程を順に示す説明図であり、
図2にサーモサイフォン及び凝縮器を取り付けた状態を示すものである。
【
図4】同、製造工程を順に示す説明図であり、
図3を断熱材ケーシングに収容した状態を示すものである。
【
図5】同、製造工程を順に示す説明図であり、
図4の断熱材ケーシングに断熱材を充填した状態を示すものである。
【
図6】同、製造工程を順に示す説明図であり、
図5にスターリング冷凍機を取り付けた状態を示すものである。
【
図7】同、
図1における破線の円で囲んだ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、
図1乃至
図7に基づいて説明する。1は保冷庫である。この保冷庫1は、保冷容器2と、内蓋3と、外蓋4とを有して構成される。そして、前記保冷容器2は、上方に開口部5を有する保冷区画部6と、機関部7とを有して構成される。
【0016】
前記保冷区画部6は、容器8と、この容器8の外側に設けられる外殻体9と、冷却配管としてのサーモサイフォン10と、このサーモサイフォン10における最高位近傍に伝熱的に設けられる、アルミニウムや銅等の熱良導性金属からなる接続部としての伝熱ブロック11と、この伝熱ブロック11が前記容器8に対して所定の位置となるように前記伝熱ブロック11を支持するための支持部12と、前記容器8と外殻体9との間に設けられる断熱部13とを有して構成される。前記容器8は側面部8Wと底部8Bを有し、少なくとも側面部8Wがアルミニウム等の熱良導性金属によって構成される。なお、前記容器8全体をアルミニウム等で構成してもよい。一方、前記外殻体9は、熱伝導率の低い合成樹脂等によって構成される。そして、前記サーモサイフォン10の蒸発部10Vは、前記容器8の側面部8Wの庫外側に伝熱的に接続される。また、前記外殻体9には、前記機関部7側に突出する突出部14が形成される。この突出部14内には、前記伝熱ブロック11と、前記支持部12と、前記サーモサイフォン10における蒸発部10Vを除く部分が収容される。なお、前述したように、前記サーモサイフォン10における最高位近傍に前記伝熱ブロック11が接続されることで、前記サーモサイフォン10の最高位近傍が凝縮部10Cとなる。また、前記突出部14には、上端開口部15Uと下端開口部15Dとを有する筒状部15が形成され、この筒状部15の上端開口部15Uが前記伝熱ブロック11によって塞がれる。即ち、この伝熱ブロック11の下面が前記筒状部15内に露出する。更に、前記突出部14を含む外殻体9と前記容器8との間には、単一の前記断熱部13が設けられる。即ち、前記容器8とサーモサイフォン10と伝熱ブロック11と支持部12は、単一の前記断熱部13によって覆われる。一方、前記筒状部15の上端開口部15Uが前記伝熱ブロック11によって塞がれることで、前記伝熱ブロック11の下面が前記断熱部13の非形成部16となる。
【0017】
前記外殻体9には、前記開口部5を囲むように、前記外蓋4の下面と対向する上面部17が設けられる。この上面部17は、前記外殻体9の一部により構成される。そして、
図7に示すように、前記上面部17の中央よりもやや庫外側寄りに、加熱源としてのヒータ18が設けられる。このヒータ18は、前記上面部17の略全周に亘って設けられる。更に、前記上面部17の外縁部には、前記機関部7に沿う部分を除いて、上方に突出した囲い部19が形成される。この囲い部19の高さは一定であり、前記開口部5を前記外蓋4で閉じた際に、この外蓋4との間に僅かな間隙を生じる程度の高さに形成される。
【0018】
前記機関部7は、前記保冷区画部6の側方に設けられる。また、前述したように、前記機関部7の外殻体20内には、前記保冷区画部6の一部である前記突出部14が位置する。更に、前記機関部7の外殻体20内には、冷凍機としてのスターリング冷凍機21が設けられる。このスターリング冷凍機21は、吸熱部22と排熱部23とを有する。そして、前記スターリング冷凍機20の吸熱部22に、アルミニウムや銅等の熱良導性金属からなる連結ブロック24が取り付けられると共に、この連結ブロック24の前記排熱部23側に、断熱栓25が設けられる。この断熱栓25は、発泡ゴム等の弾性変形可能な発泡性材料により形成されると共に、その外寸が前記筒状部15の内寸よりもやや大きく形成される。
【0019】
前記スターリング冷凍機20の吸熱部22に設けられた連結ブロック24は、前記下端開口部15Dから前記筒状部15に挿入され、その上面が前記伝熱ブロック11の下面、即ち前記非形成部16に伝熱的に接触する。即ち、前記スターリング冷凍機20の吸熱部22は、前記連結ブロック24を介して前記非形成部16に伝熱的に接触する。また、前記断熱栓25は、前記筒状部15の下端開口部15Dから前記筒状部15内に挿入され、その内面に圧接状態で当接する。これによって、前記筒状部15が前記断熱栓25によって隙間なく塞がれることになり、前記非形成部16を外部に露出させないようにすることができる。
【0020】
前記内蓋3は、前記開口部5に挿入されると共に断熱性を有する内蓋本体26と、この内蓋本体26の外周部から側方に突出して設けられるフランジ部27とを有する。そして、前記内蓋本体26の外周面から前記フランジ部27の底面にかけて、伝熱層28が環状に設けられる。この伝熱層28は、アルミニウム等の熱良導性金属によって形成される。前記内蓋本体26は、前記開口部5と略同形状に形成される。そして、前記伝熱層28を含む前記内蓋本体26の外寸は、前記開口部5の内寸よりも僅かに小さく形成される。従って、前記内蓋本体26は、前記容器8の側面部8Wの上部との間に僅かな空隙を有した状態で、前記開口部5内に挿入される。また、前記フランジ部27は、前記上面部17と略同形状で且つその外寸が前記囲い部19の内寸よりも僅かに小さく形成される。また、前記フランジ部27は、その下面に設けられた前記伝熱層28が前記ヒータ18と当接する程度の外寸を有する。更に、前記フランジ部27は、前記開口部5を前記外蓋4で閉じた際に、この外蓋4と前記ヒータ18とで挟持される程度の厚さに形成される。即ち、前記開口部5を前記外蓋4で閉じることで、前記伝熱層28は前記ヒータ18に密着し、伝熱的に接続されることになる。なお、前記伝熱層28の内端は、前記内蓋3における前記内蓋本体26の外周面、即ち前記容器8の側面部8Wの上部と僅かな空隙を隔てて対向する部分であり、前記内蓋本体26の下面までは延びていない。
【0021】
更に、前記外蓋4は、断熱性を有すると共に、前記保冷容器2の外殻体9に対し、図示しないヒンジ機構によって開閉可能に枢支される。
【0022】
次に、製造工程について説明する。まず、
図2に示すように、前記容器8の側面部8Wの庫外側に、前記支持部12を取り付ける。
【0023】
そして、
図3に示すように、この支持部12に前記伝熱ブロック11を取り付けると共に、この伝熱ブロック11に接続されるサーモサイフォン10の蒸発部10Vを、前記容器8の側面部8Wの庫外側に伝熱的に接続する。このように、前記支持部12に伝熱ブロック11を取り付けることで、前記容器8と伝熱ブロック11との位置関係が固定されると共に、前記サーモサイフォン10の前記容器8に対する傾斜角度も一定に保つことができる。
【0024】
次に、
図4に示すように、
図3の状態の組立体を、前記外殻体9に収容する。この際、前記サーモサイフォン10の凝縮部10C、前記伝熱ブロック11、及び前記支持部12は、前記突出部14内に位置する。また、前記伝熱ブロック11は、前記突出部14に形成された前記筒状部15の上端開口部15Uを塞ぐ。
【0025】
次に、
図5に示すように、
図4の状態の組立体に対し、前記容器8と外殻体9との間に前記断熱部13を形成する。これは、前記容器8と外殻体9との間に発泡ポリウレタン等を注入することで行われる。この際、前記伝熱ブロック11及びサーモサイフォン10に発泡による圧力が加わるが、前述したように、前記支持部12によって前記伝熱ブロック11が支持されるので、先記伝熱ブロック11の移動や前記サーモサイフォン10の変形が抑えられる。なお、本例では、説明の簡略化のため、前記断熱部13として発泡断熱部のみの説明としたが、例えば真空断熱パネルを組み合わせた構造であっても良い。このような場合であっても、前記非形成部16を除いて、前記突出部14を含む外殻体9と前記容器8との間の全体に、発泡体からなる単一の断熱部13が形成されることになる。この場合、単一の断熱部13に加えて真空断熱パネルが組み合わされると言い換えることができる。
【0026】
更に、
図6に示すように、前記下端開口部15Dから、前記スターリング冷凍機21の吸熱部22に取り付けられた連結ブロック24を、前記筒状部15に挿入する。そして、前記連結ブロック24の上面を、前記伝熱ブロック11の下面、即ち前記非形成部16に当接させ、これらを伝熱的に結合させることで、前記スターリング冷凍機21を前記伝熱ブロック11に固定する。また、前記スターリング冷凍機21の吸熱部22と前記筒状部15の内面との間に形成される間隙を、前記断熱栓25によって塞ぐ。
【0027】
そして、前記突出部14及びスターリング冷凍機21を前記機関部7の外殻体20で覆い、前記上面部17にヒータ18を取り付け、前記外蓋4を前記外殻体9に枢支させ、前記内蓋3を前記開口部5に挿入し、前記外蓋4を閉じることで、
図1に示す状態の前記保冷庫1が形成される。
【0028】
このように、前記断熱部13の非形成部16を除いて、前記容器8の庫外側と、前記サーモサイフォン10全体と、前記伝熱ブロック11とが、単一の前記断熱部13によって覆われることで、前記断熱部13の継目を削減して、前記スターリング冷凍機21が発生させた冷熱の漏れを最小限に抑えることができる。また、前記筒状部15の内壁と前記断熱栓25との間に継目が存在するが、前記断熱栓25が前記筒状部15の内壁に圧接することで両者の間に隙間が生じないので、この継目での冷熱の漏れを抑えることができる。これによって、前記容器8と内蓋3とで囲まれる収容空間内を効率的に冷却することができる。更に、前記支持部12も前記断熱部13によって覆われるので、前記支持部12からの冷熱の漏れも削減することができる。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。まず、使用者は図示しない操作部を操作し、前記スターリング冷凍機21を作動させる。これによって、前記スターリング冷凍機21の吸熱部22から排熱部23に熱が流れる。即ち、前記吸熱部22に冷熱が発生する。この冷熱によって、前記サーモサイフォン10内の冷媒が冷却され、液化する。液化した冷媒は、重力によって前記サーモサイフォン10内を下降し、蒸発部10Vに至る。そして、前記冷媒は、前記蒸発部10Vにて前記容器8内の熱を奪って気化し、前記サーモサイフォン10内を上昇する。そして、この上昇した前記冷媒は、前記凝縮部10Cにて再び熱を奪われ、液化する。これが繰り返されることで、前記容器8と内蓋3とで囲まれた空間が冷却される。なお、前述したように、前記容器8の庫外側全体と、前記サーモサイフォン10全体と、前記伝熱ブロック11の下面を除く部分と、前記支持部12全体が、単一の前記断熱部13によって覆われるので、前記スターリング冷凍機21が発生させた冷熱が漏れる虞のある箇所を最小限とし、前記容器8と内蓋3とで囲まれる収容空間内を効率的に冷却することができる。
【0030】
また、前記スターリング冷凍機21を作動させると、前記ヒータ18にも通電される。これによって、前記ヒータ18が発熱する。この熱は、前記ヒータ18から前記伝熱層28に伝導する。これによって、前記伝熱層28の温度が上昇する。なお、前述した通り、前記ヒータ18は、
図7に示すように、前記上面部17の中央よりもやや庫外側寄りに設けられる。また、前記伝熱層28の内端は、前記容器8の側面部8Wの上部と僅かな空隙を隔てて対向する前記内蓋本体26の外周面にあり、前記内蓋本体26の下面までは延びていない。このため、前記ヒータ18及び伝熱層28は、前記容器8と内蓋とで囲まれる収容空間から離れた位置にある。これによって、前記収容空間内の温度上昇を最小限にすることができる。更に、前記伝熱層28が前記フランジ部27に設けられると共に、このフランジ部27が前記保冷容器2の上面部17と前記外蓋4の下面部とで挟持されることで、前記伝熱層28とヒータ18とを接触させ続けることができる。
【0031】
そして、前記容器8と内蓋3とで囲まれる収容空間を冷却し続けると、前記断熱部13及び断熱性を有する前記内蓋3、外蓋4で囲まれていても、前記収容空間から冷熱が漏れる。特に、前記容器8の側面部8Wから前記外殻体9の表面を経て、前記保冷庫1の外部へ冷熱が漏れやすい。一方、前記収容空間からの冷熱の漏れを抑えるために、前記内蓋本体26の外周面、即ち前記伝熱層28と前記側面部8Wとの間隔は狭くしておく必要がある。このように、前記伝熱層28と前記側面部8Wとの間隔が狭いと、前記収容空間内の空気中に含まれる水分が凍結した場合、前記側面部8Wに前記内蓋3が貼り付いて、この内蓋3が前記保冷容器2から取り外しにくくなる虞があった。また、前述のように、漏れた冷熱により、外気に含まれる水分が前記フランジ部27の下面、即ち前記伝熱層28と前記上面部17との間で凍結して貼り付き、前記内蓋3が前記保冷容器2から取り外しにくくなる虞があった。特に、外蓋や内蓋の開閉を繰り返すと、外気に含まれる水分が前記側面部8Wと上面部17と伝熱層28との間で凍結しやすくなり、前記内蓋3を前記保冷容器2から取り外せなくなる虞があった。しかしながら、前述したように、前記伝熱層28が前記ヒータ18によって加熱されるので、前記伝熱層28の凍結が抑制される。そして、このように前記伝熱層28の凍結が抑制されることで、前記内蓋3を前記保冷容器2から取り外せなくなる虞を減ずることができる。
【0032】
なお、このように前記伝熱層28の加熱を続けたとしても、前記収容空間内が極低温まで冷却される場合、前記伝熱層28と側面部8Wとの間における空気中の水分の凍結、及び外気に含まれる水分の凍結を阻止できない虞がある。この場合、図示しない操作部を操作し、前記ヒータ18の発熱量を増大させることで、前記側面部8Wと上面部17と伝熱層28との間に形成された氷を融解させることができる。これによって、前記内蓋3を前記保冷容器2から取り外すことができるようになる。
【0033】
また、前述したように、前記フランジ部27の外周縁が前記囲い部19によって囲まれており、この囲い部19の上端と前記外蓋4との間に形成される隙間が僅かであるので、前記上面部17と外蓋4との間に流入する外気の量を抑えることができる。このため、前記外蓋4の開閉回数を抑えることで、前記内蓋3のフランジ部27と前記保冷容器2の上面部17との間の凍結を抑えることができる。また、前記ヒータ18が発生させる熱の庫外への流出を前記囲い部19によって抑えることで、凍結予防或いは解氷を効率的に行うことができる。
【0034】
以上のように本発明は、開口部5を有する保冷容器2と、この保冷容器2の開口部5を塞ぐ内蓋3と、この内蓋3を覆うように前記開口部5を塞ぐ外蓋4とを有する保冷庫1において、前記内蓋3の表面に伝熱層28が設けられ、前記保冷容器2及び/又は前記外蓋4に加熱源としてのヒータ18が設けられると共に、このヒータ18と前記伝熱層28とが伝熱関係とされることにより、前記ヒータ18が発生させる熱を前記内蓋3の伝熱層28に与えることで、前記保冷容器2の開口部5と前記内蓋3の外周部との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋3の前記保冷容器2に対する着脱を確実に行わせることができるものである。
【0035】
また、本発明は、前記伝熱層28を、前記内蓋3における前記保冷容器2との接触部位に設けることにより、前記ヒータ18が発生させる熱を前記内蓋3の伝熱層28に伝導させて、前記保冷容器2の開口部5と前記内蓋3の外周部との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋3の前記保冷容器2に対する着脱を確実に行わせることができるものである。
【0036】
また、本発明は、前記内蓋3の外周部にフランジ部27を設け、このフランジ部27に伝熱層28を設け、前記フランジ部27を前記保冷容器2と外蓋4とで挟持することにより、前記伝熱層28及び加熱源18を前記保冷容器2の収容空間から離れた位置にして、収容空間内の温度上昇を最小限にすると共に、前記伝熱層28とヒータ18とを接触させ続けることができるものである。
【0037】
更に、本発明は、前記フランジ部27の外周部を露出させないように、前記保冷容器2及び/又は外蓋4に囲い部19を設けることにより、外気の熱により伝熱層28の温度を上昇させすぎないようにすることができるばかりでなく、伝熱層28の熱が外気に放出されないようにして、効率的に前記保冷容器2の開口部5と前記内蓋3との間での凍結を防止するか又はこれらの間で生じた氷を融解させ、前記内蓋3の前記保冷容器2に対する着脱を確実に行わせることができるものである。
【0038】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、保冷容器の上面部に加熱源を設けたが、外蓋の下面に加熱源を設けてもよい。また、上記実施形態では、加熱源と伝熱層を接触させたが、両者が伝熱関係にあれば、間隔を開けて両者を設けてもよい。更に、上記実施形態では、保冷容器の上面部に囲い部を設けたが、外蓋の下面部に囲い部を設けてもよく、また、保冷容器の上面部と外蓋の下面部の両方に囲い部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 保冷庫
2 保冷容器
3 内蓋
4 外蓋
5 開口部
18 ヒータ(加熱源)
19 囲い部
21 スターリング冷凍機(冷凍機)
27 フランジ部
28 伝熱層