(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120715
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】微動アレイ観測装置の設置治具
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20230823BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01V1/00 Z
G01C15/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023721
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敦子
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
(57)【要約】
【課題】微動アレイ観測装置の設置位置を正確かつ短時間で特定でき、作業負担を軽減可
能な微動アレイ観測装置の設置治具を提供することを目的とする。
【解決手段】設置治具1は、仮想の正三角形50の中心点50aに設置されるレーザー距
離計2と、このレーザー距離計2が出射するレーザー光を反射する反射面3aを有する反
射部材3と、レーザー距離計2を保持するレーザー保持台4と、反射部材3を保持する反
射部材保持台5を備え、レーザー距離計2は、中心点50aを中心とした周方向に120
度毎の放射線51に沿ってレーザー光を出射し、反射部材3は、中心点50aを中心とす
るアレイ半径Rを有する円60と、放射線51との三個の交点にそれぞれ設置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の正三角形の中心点に設置されるレーザー距離計と、
このレーザー距離計が出射するレーザー光を反射する反射面を有する反射部材と、
前記レーザー距離計を保持するレーザー保持台を備え、
前記レーザー距離計は、前記中心点を中心とした周方向に120度毎の放射線に沿って
前記レーザー光を出射し、
前記反射部材は、前記中心点を中心とするアレイ半径を有する円と、前記放射線との三
個の交点にそれぞれ設置されることを特徴とする微動アレイ観測装置の設置治具。
【請求項2】
前記レーザー距離計は、第1乃至第3の距離計からなり、
前記反射部材は、第1乃至第3の反射板からなり、
前記第1乃至第3の距離計を集約して配置する集約部を備え、
この集約部は、前記第1乃至第3の距離計から出射される前記レーザー光の各光軸が前
記放射線に一致するように、前記第1乃至第3の距離計をそれぞれ配置するガイド体を備
えることを特徴とする請求項1に記載の微動アレイ観測装置の設置治具。
【請求項3】
前記レーザー保持台は、台座と、この台座を支持する第1の脚部と、前記台座に取り付
けられる第1の水準器を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微動アレ
イ観測装置の設置治具。
【請求項4】
前記反射部材を保持する反射部材保持台を備え、
この反射部材保持台は、前記反射部材を保持する保持部と、この保持部を支持する第2
の脚部と、一端が前記保持部に連結され、他端が前記レーザー保持台に連結される連結部
と、前記保持部または前記連結部に設けられる第2の水準器と、前記第2の脚部に設けら
れる高さ調整部を備え、前記保持部は、その下端面が含まれる面に対し前記反射面が直交
するように前記反射部材を立設して保持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のい
ずれか1項に記載の微動アレイ観測装置の設置治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微動アレイ観測装置の設置に用いる設置治具に係り、特に、微動アレイ観測
装置の設置位置を正確かつ短時間で特定可能な微動アレイ観測装置の設置治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤調査で用いられる微動アレイ観測においては、次のような手順で微動アレイ
観測装置を設置する箇所を特定している。
まず手順1として、正三角形を形成するために、アレイ半径に応じた正三角形の三辺と
なる長さをメジャーで測定する。手順2として、正三角形の一つの頂点からこれに対向す
る底辺に向かって2対1の距離になる位置を正三角形の中心点とし、この中心点にコーン
等の目印を置く。手順3として、正三角形の三つの角部に目印を置く。手順4として、微
動アレイ観測装置を四か所の目印の位置にそれぞれ置く。手順5として、アレイ半径を5
回程度変化させて、その都度メジャーで、アレイ半径に応じた正三角形の三辺の長さを計
測し、正三角形の中心点と、三つの角部の四か所の位置を特定する。この四か所の位置が
、微動アレイ観測装置を設置する箇所である。
このように、微動アレイ観測装置の設置箇所を特定する際には、効率的な方法や治具が
無い状況であり、人員や時間がかかっているという課題が生じていた。また、ある程度熟
練した技術者でなければ、微動アレイ観測を精度良く行うことが困難であるという課題も
あった。
そこで、近年、上記の課題を解決するための技術が開発されており、それに関して既に
発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「微動計測機器および治具付き微動計測機器」という名称で、熟練者で
なくても、容易に微動計を設置することができる治具付き微動計測機器に関する発明が開
示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された治具付
き微動計測機器は、一方向に延在した第1の棒状部材と、第1の棒状部材に取り付けられ
た第2の棒状部材と、第1の棒状部材に微動計測機器の設置位置を指示する第1指示部お
よび第2指示部と、第2の棒状部材に微動計測機器の設置位置を指示する第3指示部およ
び第4指示部と、を含み、第2指示部、第3指示部、第4指示部は、仮想円の円周上で、
かつ仮想円に内接する仮想正三角形の頂点にそれぞれ微動計測機器が設置されるように形
成され、第1指示部は、仮想円の中心位置に微動計測機器が設置されるように形成され、
治具の第1指示部、第2指示部、第3指示部および第4指示部に、微動計測機器がそれぞ
れ設置されたことを特徴とする。
このような構成の治具付き微動計測機器によれば、第1指示部により設置された機器を
中心に、第2指示部により設置された機器、第3指示部により設置された機器、および第
4指示部により設置された機器を一定の距離で等間隔に設置することができる。特に熟練
者でなくても、機器(微動計測機器)を正確に容易に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、第1の棒状部材と、第2の棒
状部材は、それぞれ複数の長尺部材を連結させることが必要であり、さらに第1の棒状部
材と、第2の棒状部材を垂直に取り付けて治具付き微動計測機器を組み立てることから、
1名の作業者のみが組み立てを行うと負担になったり、短時間で微動計測機器を設置でき
なかったりする可能性がある。
また、微動計測機器は、配置位置を検出するGPS機能部や、通信システム部、報知部
等を備え、微動アレイの微動計測機器の設置位置をGPS機能部により計測し、設置位置
に移動した場合に、報知部から報知を行わせる。そのため、微動計測機器自体が高価とな
り、容易な導入が困難である。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、微動アレイ観測装置
の設置位置を正確かつ短時間で特定できるとともに、作業負担を軽減可能であり、しかも
安価な導入が可能な微動アレイ観測装置の設置治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、仮想の正三角形の中心点に設置されるレーザ
ー距離計と、このレーザー距離計が出射するレーザー光を反射する反射面を有する反射部
材と、レーザー距離計を保持するレーザー保持台を備え、レーザー距離計は、中心点を中
心とした周方向に120度毎の放射線に沿ってレーザー光を出射し、反射部材は、中心点
を中心とするアレイ半径を有する円と、放射線との三個の交点にそれぞれ設置されること
を特徴とする。
このような構成の発明において、仮想の正三角形は、その中心点を中心とするアレイ半
径を有する円に内接したものである。よって、反射部材が設置される「中心点を中心とす
るアレイ半径を有する円と、放射線との三個の交点」は、正三角形の三個の角部である。
【0008】
上記構成の発明においては、レーザー距離計が反射部材によって反射したレーザー光を
受光し、レーザー距離計の距離測定の基準点から反射部材までの距離が計測される。次に
、基準点から正三角形の中心点までの既知の距離を、計測した基準点から反射部材までの
距離に加える補正を行い、アレイ半径が得られる。
よって、計測したアレイ半径と予め設定したアレイ半径が一致しているか否かを知るこ
とができるため、反射部材を設置すべき正確な位置、すなわち微動アレイ観測装置の設置
箇所が特定される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、レーザー距離計は、第1乃至第3の距離計からな
り、反射部材は、第1乃至第3の反射板からなり、第1乃至第3の距離計を集約して配置
する集約部を備え、この集約部は、第1乃至第3の距離計から出射されるレーザー光の各
光軸が放射線に一致するように、第1乃至第3の距離計をそれぞれ配置するガイド体を備
えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、レーザー距離計は、第
1乃至第3の距離計からなるため、3枚の反射板までの距離が同時に計測される。
また、集約部がガイド体を備えるため、第1乃至第3の距離計から出射されるレーザー
光の各光軸が放射線からずれることが防止されるので、第1乃至第3の距離計から反射板
までの各距離が精度良く計測される。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、レーザー保持台は、台座と、この台座を
支持する第1の脚部と、台座に取り付けられる第1の水準器を備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、レーザー保持
台は、台座に取り付けられる第1の水準器を備えるため、台座が水平に維持される。これ
により、レーザー光が水平に対し傾斜して出射されることが防止される。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、反射部材を保持する反射部材
保持台を備え、この反射部材保持台は、反射部材を保持する保持部と、この保持部を支持
する第2の脚部と、一端が保持部に連結され、他端がレーザー保持台に連結される連結部
と、保持部または連結部に設けられる第2の水準器と、第2の脚部に設けられる高さ調整
部を備え、保持部は、その下端面が含まれる面に対し反射面が直交するように反射部材を
立設して保持することを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、連
結部の他端が例えばレーザー保持台の台座と連結される場合、第2の水準器によって保持
部の水平が維持される。
また、保持部は、その下端面が含まれる面に対し反射面が直交するように反射部材を立
設して保持することから、保持部の水平が維持されると、反射部材の反射面が鉛直に保持
されることになる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、レーザー距離計と、反射部材等によって、微動アレイ観測装置の
設置箇所を短時間で特定することができる。また、第1の発明は、レーザー距離計と、反
射部材と、レーザー保持台からなり簡易な構成であるため、安価な導入が可能である。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、第1乃至第3の距離計により、3枚
の反射板までの距離が同時に計測されることから、微動アレイ観測装置の設置箇所を一層
短時間で特定することができるとともに、作業負担を軽減できる。
また、ガイド体によって、第1乃至第3の距離計から反射板までの各距離が精度良く計
測されるため、微動アレイ観測装置の設置位置を正確に特定できる。
【0014】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、第1の水準器によって、レ
ーザー光が水平に対し傾斜して出射されることが防止されるため、レーザー距離計から反
射板までの距離の計測値が、レーザー距離計の設置姿勢を原因とする鉛直方向成分の誤差
を含むことを抑制できる。
【0015】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、反射部材保持台
を備えることにより、反射部材を安定的に保持することができる。
また、保持部の水平が維持されるときに、反射部材の反射面が鉛直に保持されることに
なるため、レーザー距離計から反射板までの距離の計測値が、反射部材の設置姿勢を原因
とする鉛直方向成分の誤差を含むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具の構成を示す平面図である。
【
図2】実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具を構成するレーザー距離計及び集約部の構成を示す平面図である。
【
図4】実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具を構成するレーザー保持台の構成を示す側面図である。
【
図5】実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具を構成する反射部材保持台の構成を示す側面図である。
【
図6】実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具の使用方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0017】
本発明の実施の形態に係る微動アレイ観測装置の設置治具について、
図1乃至
図4を用
いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具の構成を示す
平面図である。
図1に示すように、実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具1(以下、設置治具1
という。)は、仮想の正三角形50の中心点50aの周囲に設置されるレーザー距離計2
と、このレーザー距離計2が出射するレーザー光を反射する反射面3aを有する反射部材
3と、レーザー距離計2を保持するレーザー保持台4と、反射部材3を保持する反射部材
保持台5を備える。
このうち、レーザー距離計2は、中心点50aを中心とした周方向に120度毎の放射
線51に沿ってレーザー光を出射するものであって、市販製品が使用される。
また、反射部材3は、第1の反射板3Aと、第2の反射板3Bと、第3の反射板3Cか
らなり、中心点50aを中心とするアレイ半径Rを有する円60と、放射線51との三個
の交点60a~60cにおいて、円60の接線方向に沿ってそれぞれ設置される。なお、
反射部材3は、公知のものが使用される。
【0018】
次に、実施例に係る設置治具を構成するレーザー距離計及び集約部の構成について、図
2及び
図3を用いて詳細に説明する。
図2は、実施例に係る設置治具を構成するレーザー
距離計及び集約部の構成を示す平面図である。
図3は、
図2におけるA方向矢視図である
。なお、
図1で示した構成要素については、
図2及び
図3においても同一の符号を付して
、その説明を省略する。また、
図3においては、集約部をレーザー保持台に固定するため
の留めネジの図示も省略する。
図2及び
図3に示すように、レーザー距離計2は、第1の距離計2Aと、第2の距離計
2Bと、第3の距離計2Cからなる。第1の距離計2Aは、レーザー光を出射する出射窓
2aと、計測した距離を表示する表示画面2bを備える。第2の距離計2Bと、第3の距
離計2Cにおいても同様である。なお、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cは、いず
れも、距離を計測する基準点が出射窓2aに設定されている。
【0019】
また、設置治具1は、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cを集約して配置する集約
部6を備える。この集約部6は、略正三角形の盤部6aと、この盤部6aの三辺に立設さ
れる平板状の縁部7a~7cを備える。縁部7aと縁部7cの間と、縁部7aと縁部7b
の間と、縁部7bと縁部7cの間は、それぞれ開放口8a~8cとなっており、第1の距
離計2A乃至第3の距離計2Cの各出射窓2aがそれぞれ配置される。
なお、盤部6aの面方向と平行な方向における開放口8a~8cの横幅は、第1の距離
計2A乃至第3の距離計2Cの短手方向の幅よりもそれぞれ狭く設計されている。よって
、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cが、開放口8a~8cから脱落することがない
とともに、盤部6aの中心(バツ印)から各出射窓2aまでの距離が一定となる。なお、
盤部6aの中心は、正三角形50の中心点50a(
図1参照)と一致する。
さらに、
図3に示すように、設置治具1は、開放口8a~8cにおいて、盤部6aから
下方に突出する平板状の足部9a~9cを備える。
【0020】
また、
図2に示すように、盤部6aには、ガイド体10A~10Cと、このガイド体1
0A~10Cの各摺動ピン10b,10bが摺動するスリット11が形成されるとともに
、盤部6aの中心にネジ孔12が形成される。このネジ孔12は、集約部6をレーザー保
持台4に固定するための留めネジ13を貫通させるためのものである。
なお、ガイド体10A~10Cは、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cから出射さ
れるレーザー光の各光軸A
Xが放射線51(
図1参照)に一致するように、第1の距離計
2A乃至第3の距離計2Cをそれぞれ配置することを目的としている。
【0021】
ガイド体10Aは、スリット11の中央部分に固定される固定ピン10aと、この固定
ピン10aから離れた位置に配置され、スリット11に沿って摺動する摺動ピン10b,
10bと、固定ピン10aと摺動ピン10b,10bをそれぞれ結んで設けられる引きバ
ネ10c,10cからなる。
よって、摺動ピン10b,10bの間に第1の距離計2Aを嵌め込むと、第1の距離計
2Aは引きバネ10c,10cによる均等な付勢力を受けて、摺動ピン10b,10bに
よって挟持される。これにより、第1の距離計2Aから出射されるレーザー光の光軸A
X
は、放射線51(
図1参照)に一致することになる。
ガイド体10B,10Cにおいても、上記と同様であり、第2の距離計2B及び第3の
距離計2Cから出射されるレーザー光の各光軸も放射線51に一致することになる。
したがって、盤部6aの中心から各出射窓2aまでの距離が一定であり既知であるとと
もに、盤部6aの中心が正三角形50の中心点50aと一致しているため、第1の距離計
2A乃至第3の距離計2Cの各出射窓2aから第1の反射板3A乃至第3の反射板3Cま
での距離が計測されると、中心点50aから第1の反射板3A乃至第3の反射板3Cまで
の距離がそれぞれ求められる。
【0022】
続いて、レーザー保持台の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施例に係
る微動アレイ観測装置の設置治具を構成するレーザー保持台の構成を示す側面図である。
なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、
その説明を省略する。
図4に示すように、レーザー保持台4は、円盤状の台座14と、この台座14を支持す
る第1の脚部15と、台座14に取り付けられる第1の水準器16を備える。
このうち、第1の脚部15は、公知の三脚構造が使用されており、それぞれ入れ子式の
脚部15A~15Cを備える。さらに、脚部15A~15Cの上端15aには、脚部15
A~15Cの下端15bを開閉させるジョイント15cがそれぞれ設けられ、脚部15A
~15Cの途中には、脚部15A~15Cを伸縮させる高さ調整部15dがそれぞれ設け
られる。
高さ調整部15dは、入れ子式の脚部15Aに形成された複数のネジ孔と、このネジ孔
に螺合するネジ体を備えた公知の構成を有する。この構成は、脚部15B,15Cにおい
ても同様である。
また、台座14は、ジョイント15cの上方に設けられる軸部15eに固定される。
さらに、第1の水準器16は、具体的には二次元方向の水平を検知する丸形気泡管であ
り、台座14に埋設されている。
【0023】
さらに、反射部材保持台の構成及び使用方法について、
図5及び
図6を用いて説明する
。
図5は、実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具を構成する反射部材保持台の構成
を示す側面図である。
図6は、実施例に係る微動アレイ観測装置の設置治具の使用方法を
説明するための平面図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5及
び
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5及び
図6に示すように、設置治具1を構成する反射部材保持台5は、反射部材3(
図1参照)を保持する保持部17と、この保持部17を支持する第2の脚部18と、一端
19aが保持部17に連結され、他端19bがレーザー保持台4に連結される連結部19
と、保持部17に設けられる第2の水準器20と、第2の脚部18に設けられる高さ調整
部21を備える。
【0024】
このうち、第2の脚部18は、第1の脚部15と同様に公知の三脚構造が使用されてお
り、それぞれ入れ子式の脚部18A~18Cを備える。さらに、脚部18A~18Cの上
端18aには、脚部18A~18Cの下端18bを開閉させるジョイント18cがそれぞ
れ設けられる。
また、高さ調整部21は、脚部18A~18Cの下端18b寄りにそれぞれ設けられる
。高さ調整部21は、レーザー保持台4の高さ調整部15dと同様に、入れ子式の脚部1
8Aに形成された複数のネジ孔と、このネジ孔に螺合するネジ体を備えた公知の構成を有
する。この構成は、脚部18B,18Cにおいても同様である。
さらに、ジョイント18cの上方には、軸部18dが設けられる。
【0025】
次に、保持部17は、反射部材3を嵌め込むことができるスリット部17aと、このス
リット部17aを支持する一様な厚みを有する円盤状の台座17bと、スリット部17a
及び台座17bを軸部18dに固定する留めネジ17cを備える。
また、スリット部17aの底部と、台座17bには、留めネジ17cを貫通させるネジ
孔17d,17eがそれぞれ形成され、軸部18dにもネジ孔18eが形成されている。
なお、保持部17のスリット部17aは、台座17bの下端面が含まれる面Sに対し反
射部材3の反射面3a(
図1参照)が直交するように反射部材3を立設して保持する。
そして、第2の水準器20も、第1の水準器16と同様の丸形気泡管であり、台座17
bに埋設されている。このほか、第2の水準器20は、後述する連結部19の一端19a
付近に設けられてもよい。
【0026】
そして、台座17bは、連結部19の一端19aを接続するための接続部22を備える
。この接続部22は、台座17bの裏面に配置され、一端19aを挿脱可能な挿脱孔が形
成される箱状の挿脱部22aと、挿脱部22aと台座17bを貫通するボルト22bと、
このボルト22bの先端に螺合するナット22cからなる。
【0027】
次に、
図4を参照すると、レーザー保持台4の台座14は、連結部19の他端19bを
連結するための接続部23を備える。この接続部23は、台座14の裏面に配置され、他
端19bを挿脱可能な挿脱孔が形成される箱状の挿脱部23aと、挿脱部23aと台座1
4を貫通するボルト23bと、このボルト23bの先端に螺合するナット23cからなる
。なお、接続部23は、開放口8a~8cの外側に、それぞれ設けられる。
【0028】
また、
図6に示すように、連結部19は、異なる内径を有する複数段の長尺体19A~
19Dが入れ子式に形成されてなり、連結部19の全長を変更可能である。
よって、連結部19の全長を変更することで、アレイ半径R(
図1参照)を変更可能で
ある。
したがって、連結部19の全長を変更させる毎に、第1の水準器16及び第2の水準器
20を視認し、台座14と台座17bがいずれも水平となっていることを確認する。台座
14と台座17bがいずれも水平となっていない場合には、高さ調整部15dと高さ調整
部21を操作して、これらを水平とする。
その後、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cによって、各出射窓2aから第1の反
射板3A乃至第3の反射板3Cまでの距離を計測し、さらにこの計測値に基準点である出
射窓2aから正三角形50の中心点50aまでの距離を加えると、複数種類のアレイ半径
Rが求められる。
【0029】
以上説明したように、設置治具1によれば、レーザー距離計2と、反射部材3と、レー
ザー保持台4と、反射部材保持台5と、集約部6によって、正三角形50の中心点50a
と、反射部材3の設置箇所、すなわち微動アレイ観測装置の設置箇所を短時間で特定する
ことができる。また、設置治具1は、市販のレーザー距離計2や反射部材3等からなり簡
易な構成であるため、安価な導入が可能である。
また、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cにより、第1の反射板3A乃至第3の反
射板3Cまでの各距離が同時に計測されることから、微動アレイ観測装置の設置箇所を一
層短時間で特定することができるとともに、作業負担を軽減できる。
また、集約部6に設けられるガイド体10A~10Cによって、第1の距離計2A乃至
第3の距離計2Cから第1の反射板3A乃至第3の反射板3Cまでの各距離が精度良く計
測されるため、微動アレイ観測装置の設置位置を正確に特定できる。
【0030】
さらに、第1の水準器16によって、レーザー光が水平に対し傾斜して出射されること
が防止されるため、第1の距離計2A乃至第3の距離計2Cから第1の反射板3A乃至第
3の反射板3Cまでの各距離の計測値が、これらレーザー距離計2の設置姿勢を原因とす
る鉛直方向成分の誤差を含むことを抑制できる。
加えて、反射部材保持台5を備えることにより、第1の反射板3A乃至第3の反射板3
Cを安定的に保持することができる。そのため、第1の距離計2A乃至第3の距離計2C
の計測値の時間的な変動を抑制できる。
また、保持部17の水平が維持されるときに、第1の反射板3A乃至第3の反射板3C
の各反射面3aが鉛直に保持されることになるため、レーザー距離計2から反射部材3ま
での距離の計測値が、反射部材3の設置姿勢を原因とする鉛直方向成分の誤差を含むこと
を抑制できる。
【0031】
なお、本発明に係る設置治具は、実施例に示すものに限定されない。例えば、レーザー
保持台4の高さ調整部15dは省略されてもよい。また、反射部材保持台5の連結部19
は、複数段の長尺体19A~19Dの代わりにメジャーが用いられてもよい。