(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120736
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230823BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20230823BHJP
F21V 21/00 20060101ALI20230823BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230823BHJP
F21W 131/101 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
F21S2/00 630
F21V31/00 100
F21V21/00 110
F21Y115:10
F21W131:101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023748
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 優作
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆之
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA06
(57)【要約】
【課題】防水性能の低下を防止できる照明器具を提供する。
【解決手段】器具本体(10)と、前記器具本体(10)に取り付けられる板金金具(14)と、前記器具本体(10)と前記板金金具(14)とで挟み込まれる板状のパッキン(60)と、を備え、前記板金金具(14)は、第1貫通孔(54)が形成されており、前記パッキン(60)は、前記第1貫通孔(54)に対応する位置に、当該第1貫通孔(54)よりも大きな径での第2貫通孔(62)が形成されており、前記板金金具(14)は、前記パッキン(60)と対面する側の面内における前記第1貫通孔(54)の開口縁部に、前記パッキン(60)の前記第2貫通孔(62)に入り込んで前記器具本体(10)に当接する、前記パッキン(60)の厚みTpよりも高さが低い凸状の当て止め部(58)が形成されている照明器具。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、
前記器具本体に取り付けられる板金金具と、
前記器具本体と前記板金金具とで挟み込まれる板状のパッキンと、
を備え、
前記板金金具は、第1貫通孔が形成されており、
前記パッキンは、前記第1貫通孔に対応する位置に、当該第1貫通孔よりも大きな径での第2貫通孔が形成されており、
前記板金金具は、
前記パッキンと対面する側の面内における前記第1貫通孔の開口縁部に、
前記パッキンの前記第2貫通孔に入り込んで前記器具本体に当接する、前記パッキンの厚みよりも高さが低い凸状の当て止め部が形成されている、
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記パッキンは、前記第2貫通孔を囲む、1又は複数の環状の凸部が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記第1貫通孔、及び前記第2貫通孔に挿入されて前記板金金具を固定するボルトが、ヘッド部と、前記ヘッド部の底面から延びるねじ部と、を備え、
前記板金金具は、
前記ボルトのヘッド部の底面と対面する側の面内における前記第1貫通孔の開口縁部に段部が形成されており、
前記段部と前記ボルトのヘッド部との間でOリングが挟み込まれている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記段部の深さと前記当て止め部の高さとが略等しい、
ことを特徴とする請求項3に記載の照明器具。
【請求項5】
前記当て止め部の外周面がテーパー状に傾斜している、
ことを特徴とする請求項4に記載の照明器具。
【請求項6】
前記パッキンは、
前記器具本体と対面する側の面内であり、前記第2貫通孔の開口縁部を除く位置に凹み部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の照明器具。
【請求項7】
前記凹み部は、前記パッキンの縁部を除く位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
防水構造を有した器具本体を備える照明器具において、複数のねじ部材によって板金の金具を器具本体にねじ止めによって取り付ける金具取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の金具取付構造は、板金の取付板と器具本体とで挟み込まれる平板状のパッキンを備え、当該パッキンは、その表面に、ねじ部材を通す管状部が形成されている。そして、器具本体に取付板をねじ止めする際には、パッキンの管状部を取付板のねじ孔に嵌め込み、パッキンと取付板とを密着させた状態で、取付板のねじ孔(すなわち、パッキンの管状部)にねじ部材を通して固定する。この金具取付構造によれば、取付板と器具本体との間がパッキンによって防水され、また、取付板のねじ孔にパッキンの管状部が入り込んだ状態で固定されるため、ねじ孔からの水の浸入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金具取付構造は、ねじ止めに伴ってパッキンの管状部、或は、取付板自身が変形し、防水性能が低下する虞があった。また、ねじ部材の締め付けが不十分である場合、取付板及び器具本体とパッキンとが十分に密着せずに防水性能が低下するという問題もある。特に、従来の金具取付構造では、作業者は、パッキンの反力の具合を頼りに取付板のねじ部材の締め付け量が十分か否かを判断することとなり、締め付け量が不十分になり易いという問題がある。
【0005】
本発明は、防水性能の低下を防止できる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、器具本体と、前記器具本体に取り付けられる板金金具と、前記器具本体と前記板金金具とで挟み込まれる板状のパッキンと、を備え、前記板金金具は、第1貫通孔が形成されており、前記パッキンは、前記第1貫通孔に対応する位置に、当該第1貫通孔よりも大きな径での第2貫通孔が形成されており、前記板金金具は、前記パッキンと対面する側の面内における前記第1貫通孔の開口縁部に、前記パッキンの前記第2貫通孔に入り込んで前記器具本体に当接する、前記パッキンの厚みよりも高さが低い凸状の当て止め部が形成されている、ことを特徴とする照明器具である。
【0007】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記パッキンは、前記第2貫通孔を囲む、1又は複数の環状の凸部が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第1貫通孔、及び前記第2貫通孔に挿入されて前記板金金具を固定するボルトが、ヘッド部と、前記ヘッド部の底面から延びるねじ部と、を備え、前記板金金具は、前記ボルトのヘッド部の底面と対面する側の面内における前記第1貫通孔の開口縁部に段部が形成されており、前記段部と前記ボルトのヘッド部との間でOリングが挟み込まれている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記段部の深さと前記当て止め部の高さとが略等しい、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記当て止め部の外周面がテーパー状に傾斜している、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記パッキンは、前記器具本体と対面する側の面内であり、前記第2貫通孔の開口縁部を除く位置に凹み部が形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記凹み部は、前記パッキンの縁部を除く位置に形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、防水性能の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る照明器具の構成を示す斜視図である。
【
図2】ワイヤ固定金具の金具取付構造を示す分解斜視図であり、(A)はワイヤ固定金具の表側から視た分解斜視図、(B)はワイヤ固定金具の裏側から視た分解斜視図である。
【
図3】ワイヤ固定金具の金具取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、照明器具の一例としてトンネルや道路の照明に用いられる器具を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る照明器具1の構成を示す斜視図である。
本実施形態の照明器具1は、道路が延びるトンネルの天井面や壁面に設置され、当該トンネル内の道路の路面を照明する器具であり、器具本体10を備え、当該器具本体10には、一対の端板12と、2つのワイヤ固定金具14と、が設けられている。
【0017】
器具本体10は、一方向に長く、一面(以下、「正面」という)が開口した直方体状の筐体20と、前面の開口部15を塞ぐ前面カバー22と、を備え、開口部15から路面に向けて照明光を照射するものであり、屋外使用に耐え得る防水性能の防水構造を有している。
【0018】
筐体20は、アルミニウムなどの高熱伝導性の材料で形成されており、筐体20の内部には、当該筐体20の長手方向Aに並置された複数(図示例では3つ)の光源ユニット24と、各光源ユニット24に電力を供給する電源部26と、が収められている。
光源ユニット24は、照明光を放射する光源と、当該光源の配光を制御する光制御部材と、を備え、道路の交通方向に延びる照明光が得られるように配光が制御されている。本実施形態では、発光素子の一例であるLED(light emitting diode)が光源に用いられ、反射型光学素子である反射鏡が光制御部材に用いられている。複数の光源ユニット24が長手方向Aに並置されることで線状の光源部が形成されている。なお、光源ユニット24の数や配置、構成、及び、光源の種類は任意である。
【0019】
電源部26は、光源の点灯電力を生成する電源回路や当該光源の点灯を制御する点灯回路などの各種の電気回路を内蔵している。筐体20の下面には、ケーブルグランド(図示せず)が設けられており、当該ケーブルグランドには、外部の商用電源に電気的に繋がる電力ケーブル(図示せず)が接続されている。ケーブルグランドは、防水性を確保しつつ電力ケーブルを筐体20の内部に引き込む引込口を構成する部材である。
【0020】
左右両側の端板12には、複数(図示例では2つ)の取付部30が設けられており、取付部30には、トンネルの壁面や道路脇への設置のための固定部材(図示せず)が取り付けられる。なお、端板12は、図示を省略するが板状のパッキンを間に挟んで筐体20の側面にボルト32によって固定されることで防水が図られている。
【0021】
また、筐体20の上面には、上述の2つのワイヤ固定金具14がねじ止め固定されている。ワイヤ固定金具14は、落下防止ワイヤ34を取り付けるための板金金具であり、その詳細は後述する。落下防止ワイヤ34は、トンネル壁面と固定部材との締結が外れた場合や、端板12と固定部材との締結が外れた場合に筐体20の落下を防止するワイヤであり、トンネルの壁面や道路脇の適宜の部材に脱落不能に固定されている。
【0022】
器具本体10の開口部15は、筐体20の上下の縁部20Aと、左右の端板12に一体形成されたカバー受部12Aとによって形成されており、当該開口部15がパッキンを挟んで透光性の前面カバー22に覆われている。当該前面カバー22は、筐体20の上面にねじ止め固定された複数(図示例では3つ)の蝶番金具45Aによって開閉自在に支持され、筐体20の下面にねじ止め固定された複数(図示例では3つ)のラッチ金具45Bによって閉状態に係止される。
【0023】
図2は、ワイヤ固定金具14の金具取付構造を示す分解斜視図であり、
図2(A)はワイヤ固定金具14の表側から視た分解斜視図、
図2(B)はワイヤ固定金具14の裏側から視た分解斜視図である。また、
図3は、ワイヤ固定金具14の金具取付構造を示す断面図である。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、ワイヤ固定金具14は、略矩形の板金から成る板金金具であり、金具本体50と、当該金具本体50の一端部を略L字状に折り曲げてワイヤ固定部52とを備えている。金具本体50の面内には、取付用の締結部材であるボルト70を通す複数(図示例では2つ)の第1ボルト孔54と、1つのパッキン位置決め孔56とが形成されており、また、ワイヤ固定部52には、ワイヤ結合孔57が形成されている。これら第1ボルト孔54、パッキン位置決め孔56、及び、ワイヤ結合孔57はいずれも貫通孔である。
【0024】
本実施形態のワイヤ固定金具14の金具取付構造は、パッキン60と、各第1ボルト孔54に挿通され、ワイヤ固定金具14、及び、パッキン60を器具本体10にねじ止めする上記ボルト70と、当該ボルト70が螺合するナット80と、を備えている。
パッキン60は、ゴムなどの弾性材料(例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材)から形成された略矩形板状の部材であり、
図3に示すように、金具本体50の裏側に配置され、当該金具本体50と筐体20との間で挟み込まれることで、金具本体50(ワイヤ固定金具14)と筐体20(器具本体10)との隙間を防水する。
パッキン60の面内には、ボルト70を通す貫通孔である複数の第2ボルト孔62と、凸状の位置決め突起64とが形成されており、位置決め突起64がパッキン位置決め孔56に挿入されて互いに係合することで、金具本体50の第1ボルト孔54に重なる位置に、パッキン60の第2ボルト孔62が配置され、これら金具本体50とパッキン60とが正確に位置決めされる。また、第2ボルト孔62の径は、第1ボルト孔54の径よりも大きくなっており、当該第1ボルト孔54の後述する当て止め部58が第2ボルト孔62内に入り込むようになっている。
【0025】
ワイヤ固定金具14は、表面全体が耐食性を有している。かかる耐食性は、ワイヤ固定金具14の表面への塗装やメッキなどの表面処理によって付与することができ、又は、ワイヤ固定金具14が耐食性を有した金属材料(例えばステンレス材)から形成されることでも得られる。なお、ワイヤ固定金具14の材質が耐食性を有する場合でも、耐久性を高める等の目的により塗装が施されてもよい。本実施形態では、ワイヤ固定金具14は塗装によって耐食性が付与されており、パッキン位置決め孔56が、金具本体50の長手方向B(
図3)の略中央に形成されており、このパッキン位置決め孔56に吊り治具などを通してワイヤ固定金具14を吊下げた状態で、表面全体に上述の塗装が施される。また、本実施形態において、第1ボルト孔54は、当該パッキン位置決め孔56の長手方向Bの両側のそれぞれに当該パッキン位置決め孔56から略同じ距離だけ離れた位置に形成されている。ただし、これらパッキン位置決め孔56、及び第1ボルト孔54の金具本体50の面内における形成位置、及び、これらの数は、本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図3に示すように、ワイヤ固定金具14は、ボルト70のヘッド部70Aの底面に対面する側の面内における第1ボルト孔54の開口縁部が拡径することで当該開口縁部に平面視環状の凹んだ段部54Aが形成されている。
一方、ボルト70は、ヘッド部70Aと、当該ヘッド部70Aの底面から棒状に延び上記ナット80に螺合するネジ山が刻設されたねじ部70Bと、当該ねじ部70Bに装着されたOリング72と、を備えている。
かかるボルト70によってワイヤ固定金具14を固定することで、Oリング72が第1ボルト孔54の段部54Aに入り込み、当該段部54Aとボルト70のヘッド部70Aとで挟み込まれることで、ボルト70のヘッド部70Aと第1ボルト孔54との間が防水される。
本実施形態では、ボルト70には、ヘッド部70Aの底面に平面視円形のフランジ73が形成されたフランジボルトが用いられており、これにより、ボルト70のヘッド部70Aと第1ボルト孔54との間の防水性能が高められている。
【0027】
また、ワイヤ固定金具14は、
図2(B)及び
図3に示すように、パッキン60と対面する側の面内における第1ボルト孔54の開口縁部が断面視凸状を成しており、この断面視凸状の部位が当て止め部58を構成している。当て止め部58は、ボルト70によるワイヤ固定金具14の固定時に、
図3に示すように、パッキン60の第2ボルト孔62に入り込んで筐体20に当接する部位であり、これにより、ワイヤ固定金具14の金具本体50と筐体20との間の距離が当て止め部58の高さHaに維持される。
【0028】
図4は、
図3におけるC部の拡大図である。
同図に示すように、パッキン60の表面(ワイヤ固定金具14と当接する面)及び裏面(筐体20と当接する面)のそれぞれには、第2ボルト孔62を囲む1又は複数(図示例では2つ)のビード63が形成されている。ビード63は、第2ボルト孔62の周囲の面圧を部分的に上げることで防水性を高める凸部であり、前掲
図2(A)及び
図2(B)に示すように、第2ボルト孔62を囲む円環状に形成されている。
かかる構成のパッキン60において、第2ボルト孔62の近傍の厚みTpは、位置決め突起64及び凹み部68が設けられていない箇所のベースの厚みTpaに、表面及ぶ裏面に形成された上記ビード63の高さTpbを加えた厚みとなる。なお、仮にビード63が設けられない場合、パッキン60の厚みTpはベースの厚みTpaとなる。
本実施形態では、ベースの厚みTpaが1.7mm、ビード63の高さTpbが0.15mmとなっており、パッキン60の厚みTpは2.0mm(=1.7mm+0.15mm×2)となっている。
一方、ワイヤ固定金具14において、当て止め部58の高さHaはパッキン60の厚みTpよりも小さくなっている。これにより、作業員は、ワイヤ固定金具14の固定時に、当て止め部58が筐体20に当接するまでボルト70を締め付けることで、パッキン60を設計通りに押し潰した状態とすることができ、確実な防水性能が得られることとなる。したがって、ボルト70の締め付け量が作業員によって異なることも無く、十分な防水性能を確実に得ることができる。
【0029】
かかるワイヤ固定金具14の当て止め部58は、ダボ出し加工やハーフピアス等と称されるプレス成型によって形成することで、金具本体50の段部54Aとともに当て止め部58を1つのプレス工程で形成することができ、コストを抑えることができる。
本実施形態では、ワイヤ固定金具14の板厚Tk(
図4)は約4mmとなっており、第1ボルト孔54に対して表面側からプレス成型することで、公差寸法を除く設計上の寸法において1.5mmの深さHb(
図4)の段部54Aと、当該深さHbと等しい1.5mmの高さHaの当て止め部58とを同時に形成している。そして、パッキン60には、当て止め部58の高さHaよりも大きな厚みTp(本実施形態では、上述のように、Tp=2.0mm)のものが用いられる。なお、本実施形態では段部54Aの深さHbは0.2mm以下のプラスの公差、当て止め部58の高さHaは0.1mm以下のマイナスの公差で加工されており、加工後のワイヤ固定金具14において、当て止め部58の高さHaは、段部54Aの深さHbよりも僅かに低くなっている。
ワイヤ固定金具14の板厚Tkは3mm以上6mm以下であることが好ましい。すなわち、これよりも板厚Tkが厚くなるとプレス成型時の非常に大きなプレス力が必要となり、また、これよりも板厚Tkが薄くなると、ワイヤ固定金具14の剛性が弱くなり、ボルト70の締め付け時に歪み等の変形が生じ防水性能の低下を招くこととなる。
【0030】
また、本実施形態の当て止め部58は、
図4に示すように、断面視において、外周面58Sがテーパー状に傾斜する形状となっており、これにより、プレス成型時において、金型が抜き易くなり、応力が当て止め部58に集中することを防止できる。
【0031】
本実施形態のパッキン60は、前掲
図2(B)に示すように、器具本体10の筐体20と対面する側の面内に凹み部68が形成されている。凹み部68は、当該凹み部68以外の箇所にボルト70の締め付けによる圧力が集中的に加えられるようにする部位である。すなわち、この凹み部68は、第2ボルト孔62の開口縁部、及び、パッキン60の縁部を除いた適宜の範囲に形成されており、第2ボルト孔62の開口縁部、及びパッキン60の縁部が筐体20により強く押し当てられ密着性が高められている。これにより、パッキン60の縁部からパッキン60の面内への浸水、及び、第2ボルト孔62から筐体20への浸水が、より確実に抑えられる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0033】
本実施形態の照明器具1は、器具本体10と、この器具本体10に取り付けられるワイヤ固定金具14と、これら器具本体10とワイヤ固定金具14とで挟み込まれる板状のパッキン60と、を備えている。ワイヤ固定金具14の金具本体50は、パッキン60と対面する側の面内における第1ボルト孔54の開口縁部に、パッキン60の第2ボルト孔62に入り込んで筐体20に当接する、パッキン60の厚みTpよりも高さHaが低い凸状の当て止め部58が形成されている。
この構成によれば、作業員がワイヤ固定金具の固定時に、当て止め部58が筐体20に当接するまでボルト70を締め付けることで、パッキン60を設計通りに押し潰した状態とすることができ、確実な防水性能が得られる。したがって、ボルト70の締め付け量が作業員によって異なることも無く、十分な防水性能を確実に得ることができる。
【0034】
上述の照明器具1において、パッキン60は、第2ボルト孔62を囲む、1又は複数の環状の凸部が形成されている。
この構成によれば、第2ボルト孔62の周囲の防水性が高められる。
【0035】
上述の照明器具1において、金具本体50は、ボルト70のヘッド部70Aの底面と対面する側の面内における第1ボルト孔54の開口縁部に段部54Aが形成されており、当該段部54Aとボルト70のヘッド部70Aとの間でOリング72が挟み込まれている。
この構成によれば、ボルト70のヘッド部70Aと第1ボルト孔54との間をOリング72によって確実に防水することができる。
【0036】
上述の照明器具1において、段部54Aの深さHbと当て止め部58の高さHaとが略等しい。
この構成によれば、ダボ出し加工やハーフピアス等と称されるプレス成型を用いて、段部54Aとともに当て止め部58を1つのプレス工程で形成することができ、コストを抑えることができる。
【0037】
上述の照明器具1において、当て止め部58の外周面58Sがテーパー状に傾斜している。
この構成によれば、プレス成型時において、金型が抜き易くなり、応力が当て止め部58に集中することを防止できる。
【0038】
上述の照明器具1において、パッキン60は、器具本体10の筐体20と対面する側の面内であり、第2ボルト孔62の開口縁部を除く位置に凹み部68が形成されている。
この構成によれば、第2ボルト孔62の開口縁部が筐体20により強く押し当てられ密着性が高めら、第2ボルト孔62から筐体20への浸水が、より確実に抑えられる。
【0039】
上述の照明器具1において、凹み部68は、パッキン60の縁部を除く位置に形成されている。
この構成によれば、第2ボルト孔62の開口縁部に加えて、パッキン60の縁部も筐体20により強く押し当てられ密着性が高められるため、パッキン60の縁部からパッキン60の面内への浸水を抑えることができる。
【0040】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0041】
上述した実施形態において、照明器具1が備えるワイヤ固定金具14の金具取付構造は、端板12や蝶番金具45A、ラッチ金具45Bといった他の板金金具の取付構造にも適用することができる。
【0042】
本発明は、トンネルや道路を照明する照明器具の他にも、防水性能が求められる各種の照明器具に適用できる。
【0043】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0044】
1 照明器具
10 器具本体
14 ワイヤ固定金具(板金金具)
20 筐体
50 金具本体
54 第1ボルト孔(第1貫通孔)
54A 段部
56 パッキン位置決め孔
58 当て止め部
58S 外周面
60 パッキン
62 第2ボルト孔(第2貫通孔)
63 ビード(凸部)
64 位置決め突起
68 凹み部
70 ボルト
70A ヘッド部
70B ねじ部
72 Oリング
80 ナット
A、B 長手方向
Ha 当て止め部の高さ
Hb 段部の深さ
Tp パッキンの厚み