(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120745
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05B 13/04 20060101AFI20230823BHJP
B05B 15/00 20180101ALI20230823BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230823BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20230823BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B15/00
B05D3/00 D
B05D1/02 A
B05D3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023767
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】唐崎 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA30
4D075AA01
4D075AA36
4D075AA37
4D075AA63
4D075AA67
4D075AA76
4D075AA81
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA08
4D075DC22
4D075EA05
4D075EC30
4F035CA05
4F035CB03
4F035CB04
4F035CD03
4F035CD05
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】塗布膜の表面を平滑化する。
【解決手段】開示される塗布装置10は、基板100が載置されるステージ30と、ステージ30と対向して配置され、樹脂および樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液Lをステージ30上の基板100に向けて噴霧するノズル40と、ステージ30とノズル40との相対位置を変更する位置変更部50と、ノズル40および位置変更部50を制御する制御部60と、を備える。制御部60は、原料液Lを噴霧しているノズル40を、基板100の上方で第1水平軸A1に関して一方向のみに移動させるように位置変更部50を制御する。塗布装置10は、ノズル40とステージ30との間の領域に一方向に向かう気流Fを生じさせるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージと、
前記ステージと対向して配置され、樹脂および前記樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液を前記ステージ上の前記基板に向けて噴霧するノズルと、
前記ステージと前記ノズルとの相対位置を変更する位置変更部と、
前記ノズルおよび前記位置変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるように前記位置変更部を制御し、
前記ノズルと前記ステージとの間の領域に前記一方向に向かう気流を生じさせるように構成される、塗布装置。
【請求項2】
前記ステージよりも前記一方向の上流側に設けられる給気部または開口と、
前記ステージよりも前記一方向の下流側に設けられる吸気部と、
を備え、
前記給気部または前記開口から前記吸気部に向かって前記気流を生じさせるように構成される、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルの噴霧軸は、前記ノズルから前記ステージに近づくにつれて前記一方向に向かうように前記ステージに対して傾いており、
前記ノズルが前記原料液を噴霧することにより前記気流を生じさせるように構成される、請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で前記第1水平軸に関して前記一方向のみに移動させる一方、前記基板の上方で前記第1水平軸と交差する第2水平軸に関して往復移動させるように前記位置変更部を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記位置変更部は、前記ノズルを移動させるノズル移動部と、前記ステージを回転させる回転機構と、を有し、
前記制御部は、前記基板が載置された前記ステージを回転させるように前記回転機構を制御すると共に、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で前記第1水平軸に関して前記一方向のみに移動させるように前記ノズル移動部を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項6】
基板をステージに載置する載置工程と、
前記ステージと対向して配置されたノズルに、樹脂および前記樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液を供給する供給工程と、
前記原料液を前記基板に向けて噴霧する噴霧工程と、
前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるノズル移動工程と、
前記ノズルと前記ステージとの間の領域に前記一方向に向かう気流を生じさせる気流発生工程と、
を備える、塗布方法。
【請求項7】
前記気流発生工程では、前記ステージよりも前記一方向の上流側に設けられる給気部または開口から、前記ステージよりも前記一方向の下流側に設けられる吸気部に向かって前記気流を生じさせる、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記気流発生工程では、前記ノズルの噴霧軸を、前記ノズルから前記ステージに近づくにつれて前記一方向に向かうように前記ステージに対して傾けた状態で、前記ノズルから前記原料液を噴霧することにより前記気流を生じさせる、請求項6または7に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記ノズル移動工程では、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で前記第1水平軸に関して前記一方向のみに移動させる一方、前記基板の上方で前記第1水平軸と交差する第2水平軸に関して往復移動させる、請求項6~8のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項10】
前記ノズル移動工程では、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板が載置された前記ステージを回転させながら、前記基板の上方で前記第1水平軸に関して前記一方向のみに移動させる、請求項6~8のいずれか1項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の表面に塗布膜を形成する塗布装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の塗布装置は、樹脂を含む原料液を供給する第1供給部と、揮発性溶剤を供給する第2供給部と、原料液および揮発性溶剤を基板に向けて噴霧するノズルとを備える。基板に噴霧された樹脂が固化することにより塗布膜が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原料液を噴霧するノズルは、基板の表面全体に原料液を噴霧できるように当該基板の面内方向に沿って移動される。このとき、基板の表面のうち原料液の噴霧および固化が完了した領域では、その後に噴霧された原料液のミストが付着して固化することにより、塗布膜の表面に微小な凹凸が形成されることがある。このような状況において、本開示は、塗布膜の表面を平滑化することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、塗布装置に関する。当該塗布装置は、基板が載置されるステージと、前記ステージと対向して配置され、樹脂および前記樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液を前記ステージ上の前記基板に向けて噴霧するノズルと、前記ステージと前記ノズルとの相対位置を変更する位置変更部と、前記ノズルおよび前記位置変更部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるように前記位置変更部を制御し、前記ノズルと前記ステージとの間の領域に前記一方向に向かう気流を生じさせるように構成される。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、塗布方法に関する。当該塗布方法は、基板をステージに載置する載置工程と、前記ステージと対向して配置されたノズルに、樹脂および前記樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液を供給する供給工程と、前記原料液を前記基板に向けて噴霧する噴霧工程と、前記原料液を噴霧している前記ノズルを、前記基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるノズル移動工程と、前記ノズルと前記ステージとの間の領域に前記一方向に向かう気流を生じさせる気流発生工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、塗布膜の表面を平滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の塗布装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施形態1の塗布装置におけるノズルの移動経路を矢印線で示す平面図である。
【
図3】実施形態1の変形例の塗布装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施形態2の塗布装置を模式的に示す断面図である。
【
図5】実施形態2の塗布装置におけるノズルの移動経路を矢印線で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る塗布装置および塗布方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(塗布装置)
本開示に係る塗布装置は、いわゆるスプレーコーターであって、ステージと、ノズルと、位置変更部と、制御部とを備える。
【0011】
ステージは、基板が載置される。ステージは、基板を載置するための水平な載置面を有してもよい。ステージは、載置面に載置された基板を固定する機能を有してもよい。例えば、ステージは、基板を固定するための真空吸着機能または静電吸着機能を有してもよい。基板の種類は、特に限定されない。基板の例には、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、セラミクス基板などが含まれる。半導体基板の例には、シリコン基板、III-V族化合物半導体基板、その他の半導体からなる基板が含まれる。基板は、複数材料で構成されてもよい。例えば、半導体基板は、絶縁部や金属部を含んでもよい。半導体基板は、絶縁部や金属部を含む素子領域を有してもよい。
【0012】
ノズルは、ステージと対向して配置される。ノズルは、例えば、ステージの載置面と対向するように当該ステージの上方に配置されてもよい。ノズルと基板の表面との間の距離(噴霧距離)は、例えば、60mm以上、120mm以下であってもよい。ノズルは、樹脂と樹脂を溶解させる溶剤とを含む原料液をステージ上の基板に向けて噴霧する。ノズルの噴霧角度は、例えば、15°以上、45°以下であってもよい。ノズルは、例えば、超音波を利用して原料液を噴霧する超音波ノズルであってもよい。樹脂は、プラズマ耐性のある樹脂であってもよい。
【0013】
位置変更部は、ステージとノズルとの相対位置を変更する。位置変更部は、ノズルおよびステージの少なくとも一方を動かすことにより、両者の相対位置を変更してもよい。例えば、位置変更部は、ノズルを水平方向に移動させることにより、ステージとノズルとの相対位置を変更してもよい。そのようなノズルの移動に加えて、位置変更部は、ステージを回転させてもよい。ステージとノズルとの相対位置が変化することにより、ステージ上の基板とノズルとの相対位置も変化する。位置変更部は、例えば、ノズルを移動させるロボットアームを有してもよい。
【0014】
制御部は、ノズルおよび位置変更部を制御する。制御部は、ノズルによる原料液の噴霧のオンオフを切り替えるように当該ノズルを制御してもよい。制御部は、原料液を噴霧しているノズルを、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるように位置変更部を制御する。換言すると、第1水平軸と交差する第2水平軸や鉛直軸に関するノズルの移動態様は特に限定されないが、制御部は、第1水平軸に関しては、ノズルを当該一方向と逆の方向には移動させないように位置変更部を制御する。制御部は、演算装置および演算装置によって実行可能なプログラムが格納された記憶装置を備えてもよい。ここで、水平軸とは、原則として水平方向(鉛直方向に垂直な方向)に沿った軸を意味するが、水平軸が水平方向と5°以下の角度をなしてもよい。水平軸は、通常、基板の面内方向に沿う軸であるが、当該面内方向と5°以下の角度をなしてもよい。
【0015】
塗布装置は、ノズルとステージとの間の領域に上記一方向に向かう気流を生じさせるように構成される。そのような気流によると、ノズルから噴霧される原料液のミストが、当該一方向の下流側、つまり基板における原料液の塗布が完了していない領域(以下、未塗布領域ともいう。)の方へ流される。換言すると、ノズルから噴霧される原料液のミストが、当該一方向の上流側、つまり基板における原料液の塗布が完了した領域(以下、塗布済み領域ともいう。)の方へ移動しにくい。塗布済み領域には、塗布された原料液が固化している領域も含まれるため、ここに原料液のミストが付着すると、当該ミストが固化して塗布膜表面に凹凸が発生するおそれがある。しかし、既述のとおり、本開示の塗布装置では、塗布済み領域の方へ原料液のミストが移動しにくいため、そのようなメカニズムによる塗布膜表面の凹凸の発生が起こりにくい。一方、未塗布領域の方へ流された原料液のミストは未塗布領域に付着し得るが、その後に塗布される原料液に含まれる溶剤で溶かされて、塗布膜表面の凹凸発生に寄与しにくい。以上のように、本開示の塗布装置によると、塗布膜の表面に凹凸が発生しにくく、塗布膜の表面を平滑化することが可能となる。
【0016】
塗布装置は、ステージよりも一方向の上流側に設けられる給気部または開口と、ステージよりも一方向の下流側に設けられる吸気部と、を備えてもよい。塗布装置は、給気部または開口から吸気部に向かって気流を生じさせるように構成されてもよい。この構成では、給気部または開口から吸気部に向かう気流によって、原料液のミストが未塗布領域の方へ流される。給気部は、ステージが配置された領域に空気を供給してもよい。開口は、ステージが配置された領域と、当該領域の外部空間とを連通させてもよい。吸気部は、ステージが配置された領域から空気を吸引(あるいは、排出)してもよい。
【0017】
ノズルの噴霧軸は、ノズルからステージに近づくにつれて一方向に向かうようにステージに対して傾いていてもよい。塗布装置は、ノズルが原料液を噴霧することにより気流を生じさせるように構成されてもよい。この構成では、ノズルの噴霧動作に伴って生じる気流によって、原料液のミストが未塗布領域の方へ流される。ノズルの噴霧軸は、下方に向かうにつれて当該一方向に向かうようにステージの載置面(あるいは、水平面)に対して傾いていてもよい。ノズルの噴霧軸は、基板の面内方向(水平面)に対して5°以上、30°以下だけ傾いていてもよい。
【0018】
制御部は、原料液を噴霧しているノズルを、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させる一方、基板の上方で第1水平軸と交差する第2水平軸に関して往復移動させるように位置変更部を制御してもよい。この構成では、ノズルは、水平面内で基板の上を方形波状(あるいは矩形波状)に走査するように移動される。それにより、基板の表面全体に原料液を噴霧することができる。第1水平軸と第2水平軸とは、互いに直交していてもよい。
【0019】
位置変更部は、ノズルを移動させるノズル移動部(例えば、ロボットアーム)と、ステージを回転させる回転機構と、を有してもよい。制御部は、基板が載置されたステージを回転させるように回転機構を制御すると共に、原料液を噴霧しているノズルを、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させるようにノズル移動部を制御してもよい。この構成では、ノズルは、回転する基板の上を第1水平軸に沿って直線的に移動する。それにより、基板の表面では、例えば渦巻き状に原料液の塗布が進行し得る。制御部は、例えば、基板の中心に対応する位置からノズルの移動を開始するようにノズル移動部を制御してもよい。ただし、基板の表面全体に原料液が塗布されるのであれば、ノズルの移動開始位置および移動終了位置は任意に設定可能である。
【0020】
(塗布方法)
本開示に係る塗布方法は、載置工程と、供給工程と、噴霧工程と、ノズル移動工程と、気流発生工程とを備える。塗布方法は、例えば、上述の塗布装置を用いて実行されてもよい。
【0021】
載置工程では、基板をステージに載置する。ステージは、その上に載置された基板を固定する機能(例えば、真空吸着機能または静電吸着機能)を有してもよい。
【0022】
供給工程では、ステージと対向して配置されたノズルに、樹脂および樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液を供給する。ノズルは、例えば、超音波ノズルであってもよい。樹脂は、例えば、プラズマ耐性のある樹脂であってもよい。
【0023】
噴霧工程では、原料液を基板に向けて噴霧する。例えば、ステージ上の基板から60mm以上、120mm以下だけ鉛直方向に離れて配置されたノズルによって、原料液を当該基板に向けて噴霧してもよい。噴霧工程により基板の表面に原料液が塗布され、当該原料液が固化することで塗布膜が形成され得る。ノズルの噴霧角度は、例えば、15°以上、45°以下であってもよい。
【0024】
ノズル移動工程では、原料液を噴霧しているノズルを、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させる。これにより、当該一方向の上流側では基板に塗布済み領域が形成される一方、当該一方向の下流側では基板に未塗布領域が残される。
【0025】
気流発生工程では、ノズルとステージとの間の領域に上記一方向に向かう気流を生じさせる。このような気流により、ノズルから噴霧される原料液のミストは、当該一方向の下流側、すなわち基板の未塗布領域の方へ流される。原料液のミストが未塗布領域に付着しても、その後に未塗布領域に噴霧される原料液が含む溶剤によって当該ミスト(あるいは、ミストの固化物)は溶かされる。このため、塗布膜の表面に凹凸が発生しにくく、塗布膜の表面を平滑化することが可能となる。
【0026】
気流発生工程では、ステージよりも一方向の上流側に設けられる給気部または開口から、ステージよりも一方向の下流側に設けられる吸気部に向かって気流を生じさせてもよい。給気部または開口から吸気部に向かう気流によって、原料液のミストが未塗布領域の方へ流される。
【0027】
気流発生工程では、ノズルの噴霧軸を、ノズルからステージに近づくにつれて一方向に向かうようにステージに対して傾けた状態で、ノズルから原料液を噴霧することにより気流を生じさせてもよい。ノズルの噴霧動作に伴って生じる気流によって、原料液のミストが未塗布領域の方へ流される。ノズルの噴霧軸は、水平面に対して5°以上、30°以下だけ傾けられてもよい。
【0028】
ノズル移動工程では、原料液を噴霧しているノズルを、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させる一方、基板の上方で第1水平軸と交差する第2水平軸に関して往復移動させてもよい。この場合、ノズルは、水平面内で基板の上を方形波状(あるいは矩形波状)に走査するように移動される。それにより、基板の表面全体に原料液を噴霧することができる。第1水平軸と第2水平軸とは、互いに直交していてもよい。
【0029】
ノズル移動工程では、原料液を噴霧しているノズルを、基板が載置されたステージを回転させながら、基板の上方で第1水平軸に関して一方向のみに移動させてもよい。この場合、ノズルは、回転する基板の上を第1水平軸に沿って直線的に移動する。それにより、基板の表面では、例えば渦巻き状に原料液の塗布が進行し得る。例えば、ノズルの移動は、基板の中心に対応する位置から開始されてもよい。ただし、基板の表面全体に原料液が塗布されるのであれば、ノズルの移動開始位置および移動終了位置は任意に設定可能である。
【0030】
以上のように、本開示によれば、基板表面に形成される塗布膜の表面を平滑化することができる。
【0031】
以下では、本開示に係る塗布装置および塗布方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の塗布装置および塗布方法の構成要素および工程には、上述した構成要素および工程を適用できる。以下で説明する一例の塗布装置および塗布方法の構成要素および工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の塗布装置および塗布方法の構成要素および工程のうち、本開示に係る塗布装置および塗布方法に必須ではない構成要素および工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0032】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。以下では、まず、本実施形態の塗布装置10について説明し、続けて、本実施形態の塗布方法について説明する。
【0033】
(塗布装置)
図1に示すように、本実施形態の塗布装置10は、いわゆるスプレーコーターであって、カップ20と、ステージ30と、ノズル40と、位置変更部50と、制御部60とを備える。
【0034】
カップ20は、ステージ30が配置されるベース部21と、ベース部21の周縁から立ち上がる側壁部27と、側壁部27の上端部から内周側へ延びる延出部28とを有する。ベース部21には、ステージ30が配置される領域に空気を供給する給気部22と、同領域から空気を吸引する吸気部25とが設けられている。
【0035】
給気部22は、ステージ30よりも第1水平軸A1に沿った一方向の上流側(
図1における左側)に設けられる。給気部22には、空気を供給するための給気装置(図示せず)が接続される。給気部22には、異物が侵入するのを抑止する第1蓋23が設けられる。給気部22は、第1水平軸A1と交差する第2水平軸A2に沿って延びる開口を含むが(
図2を参照)、給気部22の形状、数、および配置はこれに限られるものではない。
【0036】
吸気部25は、ステージ30よりも第1水平軸A1に沿った一方向の下流側(
図1における右側)に設けられる。吸気部25には、空気を吸引するための吸気装置(図示せず)が接続される。吸気部25には、異物が侵入するのを抑止する第2蓋26が設けられる。吸気部25は、第2水平軸A2に沿って延びる開口を含むが(
図2を参照)、吸気部25の形状、数、および配置はこれに限られるものではない。
【0037】
ステージ30は、カップ20のベース部21に設けられる。ステージ30は、基板100が載置される。ステージ30は、基板100を載置するための水平な載置面30aを有する。ステージ30は、載置面30aに載置された基板100を固定するための真空吸着機能を備える。ステージ30は、平面視で円形状になっているが、ステージ30の形状はこれに限られるものではない。
【0038】
ノズル40は、ステージ30と対向して配置される。より具体的に、ノズル40は、ステージ30の載置面30aと対向するように当該ステージ30の上方に配置される。ノズル40は、樹脂および樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液Lをステージ30上の基板100に向けて噴霧する。ノズル40は、超音波を利用して原料液Lを噴霧する超音波ノズルである。原料液Lに含まれる樹脂は、プラズマ耐性のある樹脂である。
【0039】
位置変更部50は、ステージ30とノズル40との相対位置を変更する。本実施形態の位置変更部50は、ノズル40を移動させるノズル移動部51を有する。ノズル移動部51は、例えば、ロボットアームで構成されてもよい。ノズル移動部51は、ノズル40を水平方向に移動させることにより、ステージ30とノズル40との相対位置を変更する。
【0040】
制御部60は、ノズル40および位置変更部50を制御する。
図2に示すように、制御部60は、原料液Lを噴霧しているノズル40を、基板100の上方で第1水平軸A1に関して一方向(
図2における左から右に向かう方向)のみに移動させる一方、基板100の上方で第2水平軸A2に関して往復移動させるように位置変更部50(ノズル移動部51)を制御する。これにより、ノズル40は、基板100の上方を方形波状(あるいは矩形波状)に走査しながら当該基板100に向けて原料液Lを噴霧する。
【0041】
塗布装置10は、ノズル40とステージ30との間の領域に上記一方向に向かう気流F(すなわち、上記給気部22から上記吸気部25に向かって流れる気流F)を生じさせるように構成される。そのような気流Fにより、ノズル40から噴霧される原料液LのミストMが、当該一方向の下流側、つまり基板100の未塗布領域R2の方へ流される。換言すると、当該ミストMが、当該一方向の上流側、つまり基板100の塗布済み領域R1の方へ移動しにくい。よって、塗布膜の表面に凹凸が発生するのを抑止して、塗布膜の表面を平滑化することができる。
【0042】
(塗布方法)
本実施形態の塗布方法は、例えば上述の塗布装置10を用いて実行可能であり、載置工程と、供給工程と、噴霧工程と、ノズル移動工程と、気流発生工程とを備える。なお、各工程の実行順序は、それらの記載順序に縛られるものではない。また、各工程は、必要に応じて、同時に実行されてもよいし個別に実行されてもよい。
【0043】
載置工程では、基板100をステージ30の載置面30aに載置する。
【0044】
供給工程では、ノズル40に、樹脂および樹脂を溶解させる溶剤を含む原料液Lを供給する。
【0045】
噴霧工程では、ノズル40により、原料液Lを基板100に向けて噴霧する。
【0046】
ノズル移動工程では、位置変更部50(ノズル移動部51)により、原料液Lを噴霧しているノズル40を、基板100の上方で第1水平軸A1に関して一方向(
図1および
図2における左から右に向かう方向)のみに移動させる一方、基板100の上方で第2水平軸A2に関して往復移動させる。
【0047】
気流発生工程では、ノズル40とステージ30との間の領域に上記一方向に向かう気流F(すなわち、給気部22から吸気部25に向かって流れる気流F)を生じさせる。
【0048】
《実施形態1の変形例》
本開示の実施形態1の変形例について説明する。本変形例の塗布装置10および塗布方法は、ノズル40が傾いている点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0049】
(塗布装置)
図3に示すように、ノズル40の噴霧軸40aは、ノズル40からステージ30に近づくにつれて上記一方向(
図3における右方)に向かうようにステージ30に対して傾いている。塗布装置10は、ノズル40が原料液Lを噴霧することによっても、当該一方向に向かう気流Fを生じさせるように構成される。なお、塗布装置10は、そのように傾いたノズル40による原料液Lの噴霧のみによって、当該一方向に向かう気流Fを生じさせるように構成されてもよい。
【0050】
(塗布方法)
本実施形態の気流発生工程では、
図3に示すように、ノズル40の噴霧軸40aを、ノズル40からステージ30に近づくにつれて上記一方向に向かうようにステージ30に対して傾けた状態で、ノズル40から原料液Lを噴霧させることによっても、当該一方向に向かう気流Fを生じさせる。なお、気流発生工程では、そのようにノズル40の噴霧軸40aを傾けた状態で、ノズル40から原料液Lを噴霧させることのみによって、当該一方向に向かう気流Fを生じさせてもよい。
【0051】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態の塗布装置10および塗布方法は、ノズル40の移動態様などが上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0052】
(塗布装置)
図4に示すように、本実施形態の位置変更部50は、ノズル40を移動させるノズル移動部51に加えて、ステージ30を回転させる回転機構52を有する。
【0053】
また、本実施形態の塗布装置10は、カップ20のベース部21に、給気部22に代えて開口24が形成されている。この開口24には給気装置が接続されておらず、吸気部25による吸引作用のみによって当該開口24から吸気部25へ向かう気流Fが生じる。開口24は、ステージ30が配置された領域と、当該領域の外部空間とを連通させる。
【0054】
制御部60は、
図5に示すように、基板100が載置されたステージ30を回転させるように回転機構52を制御すると共に、原料液Lを噴霧しているノズル40を、基板100の上方で第1水平軸A1に関して一方向(
図5における左から右に向かう方向)のみに移動させるようにノズル移動部51を制御する。これにより、基板100の表面では、渦巻き状に原料液Lの塗布が進行する。なお、基板100の表面に形成される塗布膜の膜厚分布を制御するために、制御部60は、基板100の上方におけるノズル40の位置に応じて、ステージ30の回転速度、ノズル40の移動速度、およびノズル40から噴霧される原料液Lの単位時間あたりの噴霧量を制御してもよい。具体的に、制御部60は、ステージ30の回転速度とノズル40の移動速度を一定に保ちながら、基板100の上方におけるノズル40の位置に応じて、ノズル40から噴霧される原料液Lの単位時間あたりの噴霧量を制御する第1制御を行ってもよい。また、制御部60は、ステージ30の回転速度とノズル40から噴霧される原料液Lの単位時間あたりの噴霧量を一定に保ちながら、基板100の上方におけるノズル40の位置に応じて、ノズル40の移動速度を制御する第2制御を行ってもよい。また、制御部60は、ノズル40の移動速度とノズル40から噴霧される原料液Lの単位時間あたりの噴霧量を一定に保ちながら、基板100の上方におけるノズル40の位置に応じて、ステージ30の回転速度を制御する第3制御を行ってもよい。また、制御部60は、基板100の上方におけるノズル40の位置に応じて、第1制御、第2制御、および第3制御を切り替えて行ってもよい。
【0055】
(塗布方法)
本実施形態のノズル移動工程では、
図5に示すように、原料液Lを噴霧しているノズル40を、基板100が載置されたステージ30を回転させながら、基板100の上方で第1水平軸A1に関して一方向(
図5における左から右に向かう方向)のみに移動させる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、塗布装置および塗布方法に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10:塗布装置
20:カップ
21:ベース部
22:給気部
23:第1蓋
24:開口
25:吸気部
26:第2蓋
27:側壁部
28:延出部
30:ステージ
30a:載置面
40:ノズル
40a:噴霧軸
50:位置変更部
51:ノズル移動部
52:回転機構
60:制御部
100:基板
A1:第1水平軸
A2:第2水平軸
F:気流
L:原料液
M:ミスト
R1:塗布済み領域
R2:未塗布領域