(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120746
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】無線通信ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20230823BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20230823BHJP
H04W 76/23 20180101ALI20230823BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20230823BHJP
【FI】
H04B1/38
H04W72/04 132
H04W76/23
H04W72/08 110
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023769
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【テーマコード(参考)】
5K011
5K067
【Fターム(参考)】
5K011AA10
5K067AA34
5K067BB01
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】特定小電力の無線通信機からなるネットワーク(NetW)では、複信通信の実行中に割り込みをかけてNW構成を変更することが不可能である。
【解決手段】無線通信機A,Bは、ペアチャネル(No.CHm)で複信通信を行うと共に、別のペアチャネル(No.CHx)を割り込み用周波数とした受信復調部を開いておき、その受信復調部の出力を、入力音声信号と合成して送信させる一方、複信通信の受信信号と合成して音声出力させる。無線通信機C~Eは、ペアチャネル(No.CHm)に係る2つの受信復調部を開いて複信通信を傍受する。無線通信機Cからキャリアセンスを行って割り込み用周波数で無線通信機Aへ割り込み要求をかけ、NetW制御コマンドと通信終了信号を送信すると、無線通信機A,Bが複信通信を終了させ、すべての無線通信機が対応プログラムを実行して要求されたNetW構成へ移行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定小電力無線局である3台以上の無線通信機で構成される無線通信ネットワークであって、
前記ネットワーク内の2台の無線通信機(以下、「第1及び第2の無線通信機」という)が、第1のペアチャネルを用いて複信通信を実行すると共に、それぞれにおいて前記第1のペアチャネルと異なる第2のペアチャネルにおける自機の前記複信通信の受信側周波数帯と同一周波数帯側の周波数(以下、「割り込み用周波数」という)の受信復調手段をアクティブに保ち、且つ、前記割り込み用周波数の受信復調手段の出力信号を音声入力手段からの音声信号と合成して前記複信通信に係る変調送信手段へ出力し、また前記複信通信に係る受信復調手段の出力信号と合成して音声出力手段へ出力する複信通信状態にある一方、
前記ネットワーク内の前記第1及び第2の無線通信機以外の無線通信機が、前記第1のペアチャネルの各周波数をそれぞれの受信周波数とする2つの受信復調手段をアクティブに保つと共に、それらの受信復調手段の各出力信号を合成して音声出力手段へ出力する通信傍受状態にあるネットワークの状態(以下、「第1のネットワーク状態」という)において、
前記通信傍受状態にある無線通信機が、前記割り込み用周波数を用いて、自機を複信通信の一方側端末とするネットワーク状態に移行させるための割り込み要求を行うことを特徴とする無線通信ネットワークシステム。
【請求項2】
前記第1のネットワーク状態において、
通信傍受状態にあるいずれかの無線通信機(以下、「第3の無線通信機」という)が、PTT(Push to Talk)ボタンの操作により又はVOX(Voice Operated Relay)機能により前記割り込み用周波数に係る変調送信手段をアクティブにして、自機と自機以外の特定の無線通信機(以下、「第4の無線通信機」という)との間での通信を要求する旨の音声信号と共に、自機と前記第4の無線通信機の各識別情報及び前記第1又は第2のペアチャネルのいずれを利用するのかを示すペアチャネル情報を含む割り込み要求信号を送信した場合に、
前記第1又は第2の無線通信機は、前記割り込み要求信号を受信することにより、前記第3及び第4の無線通信機が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記ペアチャネル情報が示すペアチャネルを用いた複信通信状態となり、前記第3及び第4の無線通信機以外の無線通信機が通信傍受状態となる第2のネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、
前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態を前記第2のネットワーク状態へ移行させることとした請求項1に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記割り込み要求信号を受信した前記第1又は第2の無線通信機において、前記割り込み要求を許可する場合には、前記割り込み要求信号の受信時から所定時間内に、PTTボタンの操作を伴った又はVOX機能を作動させる前記割り込み要求を許可する旨の入力音声信号と共に前記応答信号を送信し、前記割り込み要求を許可しない場合には、その要求を無視することとした請求項2に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項4】
特定小電力無線局である4台以上の無線通信機で構成された前記第1のネットワーク状態において、前記第1又は第2の無線通信機が、前記第3の無線通信機から前記割り込み要求信号を受信した後、前記応答信号を送信する前に、更に前記無線通信ネットワーク内の他の無線通信機(以下、「第5の無線通信機」という)から別の割り込み要求信号を受信した場合において、
前記第1又は第2の無線通信機は、前記2つの割り込み要求信号を受信することにより、PTTボタンの操作を伴った又はVOX機能を作動させる前記第3及び第5の無線通信機間の通信を要請する旨の入力音声信号と共に、前記第3及び第5の無線通信機が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記ペアチャネル情報が示すペアチャネルでの複信通信状態となり、前記第3及び第5の無線通信機以外の無線通信機が通信傍受状態となる第3のネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、
前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態を前記第3のネットワーク状態へ移行させることとした請求項3に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項5】
前記第3の無線通信機と前記第5の無線通信機からの前記各割り込み要求が、前記第1又は第2の無線通信機がそれぞれ設定している前記第2のペアチャネルの各割り込み用周波数に対して個別に行われた場合には、前記第1又は第2の無線通信機の内、先になされた前記第3の無線通信機からの前記割り込み要求を直接受信した方の無線通信機が前記入力音声信号と前記応答信号を送信することとした請求項4に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項6】
特定小電力無線局である4台以上の無線通信機で構成された前記第1のネットワーク状態において、
通信傍受状態にある複数台の無線通信機のそれぞれが、PTTボタンの操作を伴って又はVOX機能により前記割り込み用周波数に係る変調送信手段をアクティブにして、任意の音声信号と自機の識別情報からなる割り込み要求信号を送信し、
前記第1又は第2の無線通信機が最先の割り込み要求信号を受信した時点から所定時間内に別の割り込み要求信号を受信した場合には、前記第1又は第2の無線通信機は、それらの割り込み要求信号を送信した無線通信機同士が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記第1又は第2のペアチャネルを用いた複信通信状態となり、それ以外の無線通信機が通信傍受状態となる新たなネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、
前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態から前記新たなネットワーク状態へ移行することとした請求項1に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項7】
前記第1及び第2の無線通信機が、それぞれに設定されている割り込み用周波数の受信復調部で前記所定時間内に前記各割り込み信号を別々に直接受信した場合には、前記第1又は第2の無線通信機の内、最先の割り込み要求信号を直接受信した方の無線通信機が前記応答信号を送信することとした請求項6に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項8】
前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、複信通信を実行している2台の無線通信機、その複信通信で用いられているペアチャネル、及び前記2台の無線通信機が受信状態にしている各割り込み用周波数に係る各情報を自機の表示部に表示させることとした請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の無線通信ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定小電力無線局である無線通信機で構成する無線通信ネットワークにおいて、内2台の無線通信機が1つのペアチャネルを用いた複信通信を実行中に、その通信の傍受状態にある他の無線通信機が別のペアチャネルを用いて割り込み要求をかけ、自機と他のいずれかの無線通信機とが複信通信を行うネットワーク状態へ移行させる無線通信ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定小電力規格の無線通信機は400MHz帯(複信方式については421MHz帯と440MHz帯からそれぞれ選択された一対の周波数で27組のペアチャネルが提供されている)を使用した近距離の音声通信を行うものであり、免許不要局でもあることから、屋外の場合は建設現場などの様々な工事現場において、屋内の場合は比較的大きな飲食店や小売店等において、それぞれ従業者相互間の業務上の連絡に利用されている。
また、小電力無線であり、医療機器等に影響を及ぼす可能性が小さいことから、最近では総合病院やクリニックにおける医師と看護師と受付担当者の相互連絡にも用いられつつある。
【0003】
この特定小電力規格の無線通信機については下記非特許文献1においてその標準規格が詳細に策定されており、本発明と関連ある事項を挙げると次のようなものがある。
(1) 空中線電力10mWでの複信方式による通話においては、第1-5~1-6頁の表3.2及び表3.4に示されるチャネル番号(1~19,32~40)のペアチャネル(対波)を用いる。ただし、チャネル番号19の2波は周波数制御チャネルとされている。
(2) 周波数切替方式は、固定、手動又は自動切替方式とする。(第1-6頁参照)
(3) 送信時間制限装置(電波を発射してから次に示す送信時間内にその電波の発射を停止し、かつ、送信休止時間を経過した後でなければその後の送信を行わない機能を有する装置をいう。)の送信時間及び送信休止時間は次のとおりとする。ただし、通信時間を自動的に3分以内に制限し、かつ、通信終了後2秒経過しなければその後の通信を行わない機能を有するもの・・・(中略)・・・は、送信時間制限装置の備え付けを要しないものとする。(第1-10頁参照)
ア 通話チャネルを使用する場合の送信時間は、30秒以内とする。
イ 周波数制御チャネルを使用する場合の送信時間は、0.5秒以内とする。
ウ 送信休止時間は、2秒以上とする。
(4) 無線設備にはキャリアセンスを備えるものとする。キャリアセンスは、無線通信回線の設定に先立ち、他の無線局の規定以上の電波を受信した場合、当該無線局の発射電波と同一の周波数(複信方式及び半複信方式のものにあっては受信周波数に対応する送信周波数)の電波の発射を行わないものとする。(第1-10頁参照)
(5) 回線の接続のための制御信号、選択呼出信号、チャネル指定信号及び応答信号等の変調方式、変調速度及び信号の構成については、規定しない。(第1-10頁参照)
【0004】
そして、3台以上の無線通信機で前記のような相互連絡用のネットワークを構成する場合には、2台の無線通信機がチャネル番号1~18,32~40のいずれかのペアチャネルを用いて複信方式で同時通話を行うと共に、他の無線通信機が前記同時通話に係るペアチャネルの各周波数に同調する2つの受信復調手段をONにして通話を傍受するネットワークシステムとなる。
その場合、この種の無線通信機の上記のような利用態様からみて、傍受側の無線通信機のユーザが複信通話側の無線通信機のユーザに取って代わって同時通話を行いたい状況が発生することは必然である。
【0005】
したがって、傍受側の無線通信機から複信通話側の無線通信機に対して何時でも割り込みをかけて、オンデマンド方式で同時通話の当事者が入れ替わることができるようなネットワークシステムが求められる。
しかしながら、下記非特許文献1の前記注目事項(3)と(4)に係る規格上の制約のため、複信通話に使用しているペアチャネルを用いた割り込みは実質的に不可能である。
すなわち、複信通話側の無線通信機同士は、通信時間の制限最長時間である3分間を利用し、必要に応じて2秒間の休止時間を挟んで再度回線接続を行って、通話を連続的に行うことが多く、その通信時間帯では傍受側の無線通信機からキャリアセンスをかけてもビジー状態となるため、傍受側の無線通信機からの割り込みは殆ど不可能である。
それ故か、特定小電力無線局の無線通信機で構成されるネットワークにおいては“割り込み”という概念がなく、傍受側の無線通信機は、複信通話側の無線通信機同士の通話が終わって複信回線の切断が行われるタイミングを見計らって、連絡をとるべき無線通信機を被呼局として発呼をかけるのが通例である。
【0006】
ところで、下記特許文献1には、
図17(a),(b)に示すような三者以上の同時通話が可能な無線通信システムが開示されている。
図17(a)の無線通信システムは、中継機として動作する親機110と3台の子機120-1~3とからなる。
ここで、親機110は、受信手段(RX21-4)でキャリアセンス(CS)を行い、所定のペアチャネル(CH0)で無線信号を送信する変調送信手段(TX23)と、そのペアチャネル(CH0)とは異なる3つのチャネル(440MHz帯-CH1,CH2,CH3)の各無線信号を受信する各受信復調手段(RX21-1~3)と、それらの受信復調手段(RX21-1~3)で得られる各音声信号を合成して変調送信手段(TX23)へ出力する信号合成手段111とからなるものである。
一方、各子機120-1~3は、キャリアセンス(CS)用の受信復調手段(RX11-1:CH1,CH2,CH3)及び通信用の受信復調手段(RX11-2:CH0)と共に、それぞれが前記親機110の各受信復調手段(RX21-1~3)のチャネル(440MHz帯-CH1,CH2,CH3)に対応する変調送信手段(TX13:440MHz帯-CH1/CH2/CH3)を備えている。
したがって、親機110におけるキャリアセンス(CS)で当該周波数に受信入力がない状態にあれば、各子機120-1~3は、それぞれのキャリアセンス(CS)で当該周波数に受信入力がないことを条件に、子機相互間での複信方式による同時通話を行うことができる。
なお、
図17(a)では子機が3台になっているが、親機110側が440MH帯のチャネルの受信復調手段を追加すれば、4台以上の子機が参加した複信方式での同時通話も可能である。
【0007】
図17(b)の無線通信システムは、
図17(a)のように中継機としての親機を要さずに、子機同士で三者同時通話を実現しようとするものである。
第1の子機130は、所定のペアチャネル(421MHz帯-CH1,440MHz帯-CH1)で無線信号を送受信する変調送信手段(TX13)及び受信復調手段(RX11-1:キャリアセンスも実行)と、そのペアチャネル(CH1)とは異なるチャネル(440MHz帯-CH2)に係る受信復調手段(RX11-2)と、2つの信号合成手段131,132を備え、前記各受信復調手段(RX11-1),(RX11-2)が受信・復調して得られる各音声信号を信号合成手段131で合成してスピーカー133へ出力すると共に、信号合成手段131が合成した音声信号とマイクロホン134から入力された音声信号とを信号合成手段132で合成して変調送信手段(TX13)へ出力するものである。
第2の子機140は、キャリアセンス(CS)も兼ねた受信復調手段(RX11-1:421MHz帯-CH1)と変調送信手段(TX13: 440MHz帯-CH1)により前記第1の子機130と同時通話を行う。
第3の子機141は、キャリアセンス(CS)用の受信復調手段(RX11-1:421MHz帯-CH2)と通信用の受信復調手段(RX11-2: 421MHz帯-CH1)と変調送信手段(TX13:440MHz帯-CH2)により第1の子機130と同時通話を行う。
この
図17(b)の無線通信システムによれば、第1の子機130における音声信号の合成によって第2及び第3の子機でも音声情報を共有できるため、複信方式での三者同時通話が実現できる。
なお、第1の子機130側において、受信復調手段(RX11-2:440MHz帯-CH2)の他に別チャネルの受信復調手段(RX11-n:440MHz帯-CHn)を設けるようにすれば、4台以上の子機間での同時通話も可能である。
【0008】
一方、
図17の無線通信システムに対して、本願出願人は下記特許文献2の音声無線通信システムの提案を行っている。
この発明によれば、
図18に示すように、無線通信機201と無線通信機202が複信用のペアチャネルを介して同時通話している状態で、無線通信機203-1~nは、両者の同時通話を傍受ながら、単信方式のチャネルを介して、キャリアセンス(CS)で当該チャネルに受信入力がないことを条件に、PTT方式でその同時通話に参加することができる。
無線通信機203-1~nの同時通話への参加は一台に限定されるが、無線通信機203-2が参加した場合において、参加していない無線通信機203-1,3~nでも無線通信機201,202,203-2の間での通話は傍受することができる。
無線通信機203-1~nはキャリアセンス・PTT方式での同時通話への参加となるが、複信通信での通話よりも単信通信での通話の方が簡潔に要点を絞ったメッセージを発信できる傾向もあり、むしろ情報交換の質的効率化が図れることが少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6072337号公報
【特許文献2】特許第6861861号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】社団法人電波産業会、「特定小電力無線局/無線電話用無線設備/標準規格」,RCR STD-20 5.1版、令和3年10月29日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に係る無線通信システム(
図17)は、三者以上の同時通話を実現しているが、多人数での同時通話は会話が錯綜してしまう傾向があり、業務上の情報交換においては必ずしも適応するシステムとは言えない。
また、各無線通信機での出力音声はすべての無線通信機に対する入力音声を合成したものになるため、より多くの環境雑音が混入して、結果的に再生音の品質が悪くなる傾向がある。
そして、通話者が増加すればその人数分だけ利用する通信チャネルが増加するシステムであるため、より多くの電波資源を使用してしまうという課題がある。
【0012】
一方、上記特許文献2に係る無線通信システム(
図18)は、二者の複信同時通話に対する単信方式での参加になるため、上記特許文献2の無線通信システムのような問題点は生じないが、無線通信機203-1~nのユーザの何れかが無線通信機201,202のユーザと緊急に情報交換する必要がある場合には、単信方式での参加であることによる不円滑さやもどかしさが生じることは避けられない。
【0013】
そこで、本発明は、3台以上の特定小電力無線局である無線通信機からなる無線通信ネットワークにおいて、複信通信中の無線通信機に対して、その通話を傍受している他の無線通信機が何時でも割り込みをかけて、通話を希望する相手方無線通信機と複信通信を行うことができるネットワークへ移行させることが可能な無線通信ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、特定小電力無線局である3台以上の無線通信機で構成される無線通信ネットワークであって、前記ネットワーク内の2台の無線通信機(以下、「第1及び第2の無線通信機」という)が、第1のペアチャネルを用いて複信通信を実行すると共に、それぞれにおいて前記第1のペアチャネルと異なる第2のペアチャネルにおける自機の前記複信通信の受信側周波数帯と同一周波数帯側の周波数(以下、「割り込み用周波数」という)の受信復調手段をアクティブに保ち、且つ、前記割り込み用周波数の受信復調手段の出力信号を音声入力手段からの音声信号と合成して前記複信通信に係る変調送信手段へ出力し、また前記複信通信に係る受信復調手段の出力信号と合成して音声出力手段へ出力する複信通信状態にある一方、前記ネットワーク内の前記第1及び第2の無線通信機以外の無線通信機が、前記第1のペアチャネルの各周波数をそれぞれの受信周波数とする2つの受信復調手段をアクティブに保つと共に、それらの受信復調手段の各出力信号を合成して音声出力手段へ出力する通信傍受状態にあるネットワークの状態(以下、「第1のネットワーク状態」という)において、前記通信傍受状態にある無線通信機が、前記割り込み用周波数を用いて、自機を複信通信の一方側端末とするネットワーク状態に移行させるための割り込み要求を行うことを特徴とする無線通信ネットワークシステムに係る。
【0015】
この発明の無線通信ネットワークでは、上記非特許文献1の第1-5~1-6頁の表3.2及び表3.4に示されているチャネル番号(1~18,32~40)の複信通信用のペアチャネルを利用する。
第1及び第2の無線通信機は、それぞれが全27組あるペアチャネルの内の一つを第1のペアチャネルとして、その2つの帯域(421MHz帯と440MHz帯)に係る各周波数を変調送信手段と受信復調手段で相互に逆の関係において使用することで複信通信を実行する。
また、第1のペアチャネルとチャネル番号の異なる第2のペアチャネルに係る周波数であって、自機が複信通信に使用している受信復調手段の周波数と同一帯域の周波数の受信復調手段をアクティブに保ち、その周波数を割り込み用周波数として割り込み要求を受信できる状態になっている。
そして、第1及び第2の無線通信機においては、割り込み要求を受信する受信復調手段の出力が、自機の音声入力手段の出力信号と合成されて複信通信に係る変調送信手段へ入力されると共に、複信通信に係る受信復調手段の出力信号と合成されて音声出力手段へ出力されており、一方、第1及び第2の無線通信機以外の無線通信機は、第1のペアチャネルの各周波数に係る2つの受信復調手段をアクティブにして、それらの出力信号を合成して音声出力手段へ出力しており、第1及び第2の無線通信機の複信通信を傍受できる状態になっている。
したがって、この無線通信ネットワークによれば、通信傍受状態の無線通信機から第1及び第2の無線通信機へ、第2のペアチャネルを用いて常にオンデマンド方式でネットワーク構成の変更を求める割り込み要求を行うことができる。
また、その割り込み要求がなされたことについても、ネットワーク内のすべての無線通信機おいてリアルタイムに確認できる。
【0016】
第2の発明は、前記第1のネットワーク状態において、通信傍受状態にあるいずれかの無線通信機(以下、「第3の無線通信機」という)が、PTT(Push to Talk)ボタンの操作により又はVOX(Voice Operated Relay)機能により前記割り込み用周波数に係る変調送信手段をアクティブにして、自機と自機以外の特定の無線通信機(以下、「第4の無線通信機」という)との間での通信を要求する旨の音声信号と共に、自機と前記第4の無線通信機の各識別情報及び前記第1又は第2のペアチャネルのいずれを利用するのかを示すペアチャネル情報を含む割り込み要求信号を送信した場合に、前記第1又は第2の無線通信機は、前記割り込み要求信号を受信することにより、前記第3及び第4の無線通信機が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記ペアチャネル情報が示すペアチャネルを用いた複信通信状態となり、前記第3及び第4の無線通信機以外の無線通信機が通信傍受状態となる第2のネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態を前記第2のネットワーク状態へ移行させることとした無線通信ネットワークシステムに係る。
【0017】
この発明は、第1の発明に従属するものであり、第1のネットワークにおいて、通信傍受状態側の無線通信機から割り込み要求信号を送信することにより、複信通信を実行する無線通信機の組み合わせを変更した第2のネットワークへ移行させるネットワークシステムに関する。
第1のネットワークの構成において、通信傍受状態にある第3の無線通信機が、第1及び第2の無線通信機のいずれかの割り込み周波数に相当する周波数の変調送信手段をアクティブにして割り込み要求信号を送信すると、ネットワーク内のすべての無線通信機でその信号を受信でき、割り込み要求があったことを確認できる。
ここに、第3の無線通信機の割り込み要求信号は、PTTボタンの操作を伴って又はVOX機能により送信されるものであり、音声信号(自機と第4の無線通信機の間での複信通信を要求)とその2台の無線通信機の識別情報とペアチャネル情報(次の複信通信で用いるペアチャネル)とからなる。
ただし、第4の無線通信機は自機以外の特定の無線通信機であり、第1及び第2の無線通信機だけでなく、第3の無線通信機以外の通信傍受状態にある無線通信機も含まれる。
なお、VOX機能とは、マイクロホンからの入力信号を検知し、その信号レベルに応じて自動的に送信を開始/終了する機能である。
【0018】
この第2の発明において、第1又は第2の無線通信機は、割り込み要求信号を受信すると、自動的にネットワーク制御コマンドと通信終了信号からなる応答信号を返送する。
この場合、ネットワーク制御コマンドは割り込み要求信号に基づく第2のネットワークを構成するためのコマンド信号、通信終了信号は現状での複信通信を終了させるための信号であり、割り込み要求信号を直接受信した第1又は第2の無線通信機の複信通信に係るペアチャネルの送信周波数にて送信される。
したがって、この発明では第3の無線通信機の割り込み要求が強制され、第3の無線通信機のユーザの意思がそのまま反映される。
【0019】
ネットワーク制御コマンドと通信終了信号が送信されると、通信終了信号によって第1及び第2の無線通信機による複信通信が終了せしめられ、無線通信ネットワーク内の各無線通信機がネットワーク制御コマンドに基づいてそれぞれ自機を制御することで、第1のネットワークから第2のネットワークへ移行せしめられる。
その場合、ネットワーク制御コマンドは、第2のネットワークにおいて複信通信を実行する2台の無線通信機の組み合わせ情報とその複信通信で用いるペアチャネルが第1又は第2のペアチャネルのいずれかに係る選択情報に対応付けられたコードデータであり、ネットワーク内にn台(n≧3)の無線通信機が存在する場合、その中の2台の組み合わせ数(=nC2)の倍数だけが用意されており、一方、各無線通信機には各ネットワーク制御コマンドに対応させた自機の制御プログラムが格納されており、割り込み要求の内容に応じて各無線通信機が制御プログラムを実行することで第2のネットワークへ自動的に移行することになる。
【0020】
第3の発明は、第2の発明に従属するものであり、前記割り込み要求信号を受信した前記第1又は第2の無線通信機において、前記割り込み要求を許可する場合には、前記割り込み要求信号の受信時から所定時間内に、PTTボタンの操作を伴った又はVOX機能を作動させる前記割り込み要求を許可する旨の入力音声信号と共に前記応答信号を送信し、前記割り込み要求を許可しない場合には、その要求を無視することとした無線通信ネットワークシステムに係る。
【0021】
このように、割り込み要求先である第1又は第2の無線通信機にその要求に対する許可/不許可の権限を認めておくことにより、第1の無線通信機と第2の無線通信機の間での複信通信での通話の継続が必要な場合などに、それが勝手に切断されてしまうという不合理が生じないようにすることができ、また、割り込み要求を許可する音声信号を伴って応答信号が送信されるため、より合理的で円滑な無線通信ネットワークの運用が可能になる。
【0022】
第4の発明は、前記第3の発明に従属するものであり、特定小電力無線局である4台以上の無線通信機で構成された前記第1のネットワーク状態において、前記第1又は第2の無線通信機が、前記第3の無線通信機から前記割り込み要求信号を受信した後、前記応答信号を送信する前に、更に前記無線通信ネットワーク内の他の無線通信機(以下、「第5の無線通信機」という)から別の割り込み要求信号を受信した場合において、前記第1又は第2の無線通信機は、前記2つの割り込み要求信号を受信することにより、PTTボタンの操作を伴った又はVOX機能を作動させる前記第3及び第5の無線通信機間の通信を要請する旨の入力音声信号と共に、前記第3及び第5の無線通信機が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記ペアチャネル情報が示すペアチャネルでの複信通信状態となり、前記第3及び第5の無線通信機以外の無線通信機が通信傍受状態となる第3のネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態を前記第3のネットワーク状態へ移行させることとした請求項3に記載の無線通信ネットワークシステムに係る。
【0023】
上記第1のネットワーク状態において、前記第3の発明のように、第1又は第2の無線通信機に割り込み要求に対する許可/不許可の権限を認めた場合、第3の無線通信機から割り込み要求があった後、応答信号を送信するまでに他の無線通信機(第5の無線通信機)からの割り込み要求がなされることがあり得る。
その場合に、第1又は第2の無線通信機において、双方の割り込み要求を無視しないときには、先行した割り込み要求を許可する方法も採り得るが、後行の割り込み要求が喫緊であることが少なくない傾向があり、また、前後して割り込み要求がなされたということは、同じ事柄に関連して通話を求めているようなケースが想定されるため、むしろ2つの割り込み要求の当事者である第3及び第5の無線通信機の各ユーザ間で話し合いによって調整させた方が合理的であることが多い。
【0024】
そこで、第3及び第5の無線通信機からの2つの割り込み要求信号を受信した第1又は第2の無線通信機は、第3及び第5の無線通信機相互間の通話を要請する旨の入力音声信号と共に、それら無線通信機同士が複信通信状態となり、それ以外の無線通信機がその複信通信の傍受状態となる第3のネットワークを構成するためのネットワーク制御コマンドと、第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を送信する。
その結果、第1及び第2の発明と同様に、通信終了信号により第1及び第2の無線通信機の複信通信が終了せしめられると共に、無線通信ネットワーク内の各無線通信機がネットワーク制御コマンドに基づいて対応制御プログラムを実行することで第3のネットワークへ自動的に移行する。
【0025】
前記第4の発明においては、前記第3の無線通信機と前記第5の無線通信機からの前記各割り込み要求が、前記第1又は第2の無線通信機がそれぞれ設定している前記第2のペアチャネルの各割り込み用周波数に対して個別に行われた場合には、前記第1又は第2の無線通信機の内、先になされた前記第3の無線通信機からの前記割り込み要求を直接受信した方の無線通信機が前記入力音声信号と前記応答信号を送信することが望ましい。
【0026】
前記第1のネットワーク状態において、割り込み要求は第1又は第2の無線通信機の双方でアクティブに設定されている第2のペアチャネルの一方側のチャネルで受信できるため、2つの割り込み用周波数での要求受付けが可能であるため、第3及び第5の無線通信機からの2つの割り込み要求が第1及び第2の無線通信機に対して個別に行われる場合がある。
その場合には、先になされた第3の無線通信機からの割り込み要求を直接受信した方の第1又は第2の無線通信機が入力音声信号と応答信号を送信するようにする。
ここに、「直接受信した」とは、第1又は第2の無線通信機の内、第3の無線通信機の割り込み要求信号を割り込み用周波数を介して受信した方の無線通信機を示し、複信通信を介して受信した方の無線通信機ではないことを意味する。
【0027】
第5の発明は、第1の発明に従属するものであり、特定小電力無線局である4台以上の無線通信機で構成された前記第1のネットワーク状態において、通信傍受状態にある複数台の無線通信機のそれぞれが、PTTボタンの操作を伴って又はVOX機能により前記割り込み用周波数に係る変調送信手段をアクティブにして、任意の音声信号と自機の識別情報からなる割り込み要求信号を送信し、前記第1又は第2の無線通信機が最先の割り込み要求信号を受信した時点から所定時間内に別の割り込み要求信号を受信した場合には、前記第1又は第2の無線通信機は、それらの割り込み要求信号を送信した無線通信機同士が前記第1及び第2の無線通信機と入れ替わる態様で前記第1又は第2のペアチャネルを用いた複信通信状態となり、それ以外の無線通信機が通信傍受状態となる新たなネットワーク状態を構成するためのネットワーク制御コマンドと、前記第1及び第2の無線通信機の複信通信を終了させるための通信終了信号とからなる応答信号を複信通信に係る変調送信手段から送信し、前記応答信号を送受信した前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、前記通信終了信号と前記ネットワーク制御コマンドに基づいて、予め自機が格納している対応制御プログラムを実行することにより、前記第1のネットワーク状態から前記新たなネットワーク状態へ移行することとした無線通信ネットワークシステムに係る。
【0028】
上記の第2から第4までの発明は、通信傍受状態にある無線通信機からの割り込み要求において特定の相手方無線通信機が指定され、自機とその無線通信機とが複信通信状態となるネットワークを構成させるためのものであるが、割り込み要求が行われる場合としては、必ずしも特定の相手方との接続を希望する場合に限らず、例えば、ネットワーク内の他の無線通信機のユーザ全体に質問を投げ掛ける場合のように、その時点では任意の相手方からの回答を待つようなことも少なくない。
この第5の発明はそのような事例などに対応するものであり、質問者の割り込み要求と回答者の割り込み要求とが所定時間内にあれば、自動的に両者の無線通信機同士が複信通信状態となるネットワークの構成に移行させる。
したがって、基本的には第4の発明において第3の無線通信機と第5の無線通信機とがそれぞれ相手方を特定しない割り込み信号を送出した場合に相当し、割り込み要求信号は任意の音声信号と自機の識別情報だけで構成すればよく、新たなネットワーク状態で複信通信に使用されるペアチャネルについては予め第1又は第2のペアチャネルに設定しておくか、又は交互に使用するように規則化しておけば足りる。
したがって、この第5の発明によれば、前記第1のネットワーク状態において、通信傍受状態にある無線通信機側から所定時間内に2つの割り込み要求信号が発出される度に、複信通信を行う無線通信機の組み合わせが自動的に変更されて、新たなネットワーク状態に移行してゆくことになる。
【0029】
なお、この第5の発明においても、前記第4の発明の場合と同様に2つの割り込み用周波数での要求受付けが可能であることから、前記第1及び第2の無線通信機が、それぞれに設定されている割り込み用周波数の受信復調部で前記所定時間内に前記各割り込み信号を別々に直接受信した場合には、前記第1又は第2の無線通信機の内、最先の割り込み要求信号を直接受信した方の無線通信機が前記応答信号を送信することが望ましい。
【0030】
そして、以上の前記第1から第5の発明においては、前記無線通信ネットワーク内の各無線通信機が、複信通信を実行している2台の無線通信機、その複信通信で用いられているペアチャネル、及び前記2台の無線通信機が受信状態にしている各割り込み用周波数に係る各情報を自機の表示部に表示させるようにすることが望ましい。
【0031】
特定小電力無線局である無線通信機同士の通信においては、その通信フレームフォーマットのヘッダに自機の個別IDやチャネル情報を含めて音声信号の送受信を行うが、前記第1から第5の発明では複信通信をネットワーク内のすべての無線通信機において受信でき、また割り込み用周波数は複信通信のチャネルに対して一定の関係にある周波数であるため、複信通信を実行している2台の無線通信機とその使用ペアチャネルに係る情報と共に、2台の無線通信機が開いている各割り込み用周波数をヘッダから抽出して表示させることができる。
このことにより、ネットワーク内のすべての無線通信機においては常にそれらの情報を視覚的に共有でき、特に割り込み要求を行う際には便利である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の無線通信ネットワークシステムは、3台以上の特定小電力無線局である無線通信機で構成される無線通信ネットワークにおいて、2つのペアチャネルを用い、2台の無線通信機が一方のペアチャネルを利用して複信通信を行うと共に、他方のペアチャネルを他の無線通信機からの割り込み要求用として用いるのに対し、ネットワーク内の他の無線通信機が前記一方のペアチャネルの電波を受信して前記複信通信を傍受するネットワーク構成を採用したことにより、通信傍受側の無線通信機から複信通信側の無線通信機へ割り込みをかけてネットワークの構成をオンデマンド方式で逐次円滑に変更することが可能になり、無線通信ネットワークの迅速で柔軟な運用を実現する。
また、本発明は、多人数での同時通話でみられる環境雑音の混入に伴う通話品質の低下や会話が錯綜する傾向を避けることができ、ネットワーク内の通話への参加がオンデマンド方式の下で常に管理されて、使い勝手の良い無線通信ネットワーク環境が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態の無線通信ネットワークシステムに適用されている無線通信機のブロック図である。
【
図2】実施形態の無線通信ネットワークシステムで使用される通信フレームフォーマット図である。
【
図3】実施形態1に関して、(a)は初期状態の無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図4】実施形態1に関して、(a)は割り込み要求がなされた状態を示す無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図5】実施形態1における無線通信ネットワークシステムでの通信シーケンスフロー図である。
【
図6】実施形態1に関して、(a)は割り込み要求により移行された後の無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図7】実施形態1における無線通信ネットワークシステムでの通信シーケンスフロー図である。
【
図8】実施形態1に関して、(a)は割り込み要求により移行された後の無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図9】実施形態1に関して、(a)は割り込み要求がなされた状態を示す無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図10】実施形態1における無線通信ネットワークシステムでの通信シーケンスフロー図である。
【
図11】実施形態1に関して、(a)は割り込み要求により移行された後の無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図12】実施形態2に関して、(a)は割り込み要求がなされた状態を示す無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図13】実施形態2における無線通信ネットワークシステムでの通信シーケンスフロー図である。
【
図14】実施形態2に関して、(a)は割り込み要求により移行された後の無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図15】実施形態2に関して、(a)は割り込み要求がなされた状態を示す無線通信ネットワークの模式的構成図、(b)は表示部での表示内容を示す図である。
【
図16】実施形態3における無線通信ネットワークシステムでの通信シーケンスフロー図である。
【
図17】先行技術に係る無線通信システムを示す図である。
【
図18】先行技術に係る無線通信システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の無線通信ネットワークシステムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、下記の各実施形態で用いられる特定小電力無線局である無線通信機は、
図1のブロック図に示す基本的構成を共通に備えており、
図3から
図15までのネットワークの模式的構成図と信号シーケンスフロー図で示されている各無線通信機A~Eの動作や状態の説明においては、
図1で示されている各構成要素とその符号を適宜共通に用いることとする。
【0035】
受信系については、アンテナ51で受信した電波信号が2つの受信復調部52,53に入力されており、異なる受信チャネルに設定された各受信復調部52,53で無線信号を選択して受信・復調することにより、各受信チャネルの音声信号の出力を得る。
自機が複信通信状態にある場合には、受信復調部52が複信通信での受信側チャネルに、受信復調部53が割り込み用チャネルにそれぞれ設定され、通話傍受状態にある場合には、受信復調部52,53の各チャネルは複信通信で使用されているペアチャネルに設定される。
そして、いずれの状態においても2つの受信復調部52,53で復調された音声信号は入出力制御部54において合成され、その合成された音声信号が増幅器55で増幅されてスピーカー(又はイヤホン)56から音声再生される。
【0036】
一方、送信系については、マイクロホン57からの音声信号が増幅器58で増幅されて入出力制御部54へ入力されているが、自機が複信通信状態にある場合には、入出力制御部54が割り込み用チャネルに設定された受信復調部53の出力信号とマイクロホン57からの入力信号を増幅器58で増幅した音声信号を合成して変調送信部59へ出力し、自機が通話傍受状態にある場合には、入出力制御部54が増幅器58で増幅されたマイクロホン57からの音声信号を割り込み用チャネルに設定された変調送信部59へそのまま出力する。
そして、変調送信部59ではキャリア信号を音声信号で変調し、その変調されたキャリア信号を電力増幅してアンテナ60から発射送信させるが、音声信号の送信については、PTTボタンの操作による場合の外に、予めVOXモードを設定しておいてVOX機能を用いることもできる。
【0037】
前記無線通信機のシステム全体の動作制御はシステム制御部63によって行われる。
すなわち、システム制御部63は、操作部61からの指示信号や受信復調部52,53での復調信号から得られる各種制御信号やタイマー62のカウント信号などに基づいて、受信復調部52,53や変調送信部59のチャネル設定や入出力制御部54での信号合成手段の切り替えのほか、割り込み要求信号やそれに対応したネットワーク制御信号などの生成を行う。
さらに、システム制御部63は、複信通信中の無線通信機に係る識別情報やペアチャネルの使用情報及び割り込み用チャネルの情報を受信復調部52,53での復調信号から抽出して液晶表示部64に表示させるための表示制御や、VOXモードが設定されている場合にはその制御も実行する。
【0038】
なお、この実施形態の無線通信ネットワークシステムで使用される通信フレームフォーマットは
図2に示されるものであり、MSK(filtered minimum shift keying)等の音声帯域の信号を使用して通話チャネルを用いて送受信される。
この実施形態における後述の割り込み要求信号や応答信号は、送信側の無線通信機の変調送信部59において前記通信フレームフォーマット中のヘッダに組み込んで送信され、受信側の無線通信機の受信復調部52,53で抽出される。
【0039】
<実施形態1>
この実施形態における初期状態の無線通信ネットワークは
図3(a)に示され、5台の無線通信機A~Eの内2台A,Bが複信通信状態にあり、他の3台C~Eが前記複信通信の傍受状態にあるが、上記のとおり、各無線通信機A~Eは
図1で示した構成を有しており、受信復調部52,53と変調送信部59に対するチャネル設定の制御と、入出力制御部54での信号合成手段などの切り替え制御により、複信通信状態と通信傍受状態になることができる。
【0040】
複信通信状態の無線通信機A,Bでは、その変調送信部59と受信復調部52に対して非特許文献1の表3.2及び表3.4に示されているチャネル番号(1~18,32~40)の中の1つのペアチャネル(チャネル番号:CHm)が無線通信機AとBで送受信のチャネル設定が逆の関係で設定されており、受信復調部53には別のペアチャネル(チャネル番号:CHx)であって受信復調部52側に設定したチャネルと周波数帯が同一のチャネルが設定されている。
また、各無線通信機A,Bでは、双方の受信復調部52,53からの復調信号が入出力制御部54で合成されて増幅器55へ出力され、スピーカー56から合成信号による音声出力がなされる一方、受信復調部53の復調信号とマイクロホン57からの入力信号が入出力制御部54で合成されて変調送信部59へ入力されており、キャリア信号がその合成信号で変調されて電力増幅された信号がペアチャネル(チャネル番号:CHm)の送信側チャネルでアンテナ60から発射される。
【0041】
一方、通話傍受状態にある無線通信機C~Eでは、2つの受信復調部52,53を前記ペアチャネル(チャネル番号:CHm)の2つのチャネルに設定しており、各受信復調部52,53が前記無線通信機A,Bの各送信信号を受信・復調して入出力制御部54へ出力するが、入出力制御部54ではそれらの復調信号を合成し、その合成信号が増幅器55で増幅されてスピーカー56から音声出力される。
【0042】
図3(a)における各無線通信機A~Eとそれら相互間の送受信関係を示す結線(複信接続は太実線、傍受接続は細破線)は、前記無線通信機の構成と機能を考慮して無線通信ネットワークの模式的構成を表したものである。
各無線通信機A~Eについては、この実施形態で利用する2つのペアチャネル(チャネル番号:CHm及びCHx)の各々について2つのチャネル(421MHz帯と440MHz帯の各チャネル)があることと、複信通信では変調送信部59と受信復調部52が一方のペアチャネルの使用状態になり、受信復調部53が割り込み要求用に他方のペアチャネルの使用状態になることから、この実施形態で変調送信部59(TX)と受信復調部52,53(RX)が採り得るチャネル制御状態を8つのブロック[(TX-421MH帯-CHm,TX-440MH帯-CHm,TX-421MH帯-CHx,TX-440MH帯-CHx)と(RX-421MH帯-CHm,RX-440MH帯-CHm,RX-421MH帯-CHx,RX-440MH帯-CHx)]として、ペアチャネル(CHm及びCHx)で区分した態様で仮想的に表現し、且つアクティブ状態にあるものを白色地で、インアクティブ状態にあるものを灰色地で示してある。
また、入出力制御部54の機能に関しては、変調送信部59(TX)/受信復調52,53(RX)のブロック部分とマイクロホン57-増幅器58/スピーカー56-増幅器55の間に構成されている信号合成部を含む回路部分で表されている。
そして、それらの事項は以下の
図4(a)、
図6(a)、
図8(a)、
図9(a)、
図11(a)、
図12(a)、
図14(a)及び
図15(a)においても同様である。
【0043】
図3のネットワークに戻って、無線通信機A,Bは相互にペアチャネル(CHm)を用いて複信通信を実行しており、この場合は、無線通信機AがTX-440MHz帯-CHmとRX-421MHz帯-CHmをアクティブに、無線通信機BがTX-421MHz帯-CHmとRX-440MHz帯-CHmをアクティブにして各ユーザが複信通信による通話を行っている。
また同時に、無線通信機Aはペアチャネル(CHx)であって複信通信側のRX-421MHz帯-CHmと同一周波数帯側のチャネルに係るRX-421MHz帯-CHxをアクティブに設定し、無線通信機Bも別のペアチャネル(CHx)であって複信通信側のRX-440MHz帯-CHmと同一周波数帯側のチャネルに係るRX-440MHz帯-CHxをアクティブに設定して、それぞれを割り込み用チャネルとして開放している。
ここで、無線通信機A,Bにおいて、ペアチャネル(CHx)であって複信通信側のRX-421MHz帯-CHm,RX-440MHz帯-CHmと同一周波数帯側のチャネルである421MHz帯-CHx,440MHz帯-CHxを割り込み用チャネルとして開放するのは、複信通信側のTX-440MHz帯-CHm,TX-421MHz帯-CHmのチャネルと前記割り込み用周波数とが同一周波数帯になると、信号の回り込みが発生しやすくなって出力音声に割れやひずみが生じて音声品質の劣化を招くからである。
【0044】
一方、無線通信機C~Eは無線通信機A,Bの複信通信に係るTX-440MHz帯-CHm,TX-421MHz帯-CHmに対応するRX-440Mz帯-CHm,RX-421Mz帯-CHmをアクティブに設定している。
すなわち、ペアチャネル(CHm)の2つのチャネルを受信復調部52,53に設定して、無線通信機A,Bの複信通信を傍受する状態になっている。
【0045】
ところで、無線通信機A,Bは複信通信で音声通信を行っているが、
図2に示した通信フレームフォーマットのヘッダに自局IDやチャネル情報を含めて音声信号を送信しており、
図3(a)のネットワークではそれらの情報がすべての無線通信機A~Eにおいて受信できる。
そこで、無線通信機A,BはそれぞれRX-421Mz帯-CHm,RX-440Mz帯-CHmで受信した通信フレームのヘッダの各情報に基づき、また、無線通信機C~Eは自機のRX-440Mz帯-CHmとRX-421Mz帯-CHmで受信した通信フレームのヘッダの各情報に基づいて、
図3(b)に示すように、複信通信状態にある無線通信機がA,Bであり、その使用しているペアチャネル番号がCHmであり、無線通信機A,Bが開放している割り込み用周波数がチャネル番号CHmのペアチャネルであることを自機の液晶表示部64に表示させる。
【0046】
ここで、
図3のネットワーク状態において、無線通信機A,Bの複信通信を傍受している無線通信機Cのユーザが無線通信機Aのユーザとの通信を希望する場合には、無線通信機Cのユーザはペアチャネル(CHx)に係るTX-421MHz帯-CHx又はTX-440MHz帯-CHxをアクティブにして、複信通信状態にある無線通信機A,Bが割り込み用にアクティブにしているRX-421MHz帯-CHx又はRX-440MHz帯-CHxに対して割り込み要求信号を送信する。
図4(a)はその割り込み要求がなされた状態を示すものである。
ただし、ここでは無線通信機CがTX-421MHz帯-CHxから無線通信機AのRX-421MHz帯-CHxに割り込み要求を送信した場合を示してあり、したがって、この場合は無線通信機Cの通話希望先と割り込み要求先とが無線通信機Aで一致している事例である。
なお、この割り込み要求以降については、各無線通信機A~Eの状態及びネットワーク内での信号の送受信などについて、
図5の信号シーケンスフローも参照しながら説明することとする。
【0047】
具体的なシーケンスとしては、無線通信機Cのユーザにおいて、予め通話希望先としての無線通信機A(この場合は、割り込み要求先でもある)の指定操作を行った後、割り込み要求先としての無線通信機Aの割り込み用チャネルである421MHz帯-CHxを設定してPTTボタンのON操作を行うと、無線通信機Cのシステム制御部63はRX-421MHz帯-CHmをインアクティブとし、それに入れ替わってRX-440MHz帯-CHxを一時的にアクティブにしてキャリアセンス(CS)を実行させ、そのキャリアセンス(CS)で440MHz帯-CHxのチャネルに他の無線局の電波を検出しなければ、TX-421MHz帯-CHxをアクティブにして、マイクロホン57からのユーザによる割り込み要求を行う旨の音声信号と共に、割り込み要求信号を通信フレームのデータペイロードとPHYヘッダに組み込んで送信する。
なお、無線通信機Cにおいて、TX-421MHz帯-CHxをアクティブにするについては、その前に同一周波数帯域のRX-421MHz帯-CHmがインアクティブにされているため、信号の回り込みによる出力音声の劣化は生じない。
【0048】
この“割り込み要求を行う旨の音声”としては、例えば「Cです。Aさんと話させて下さい。」というような簡単な言葉によるものである。
また、割り込み要求信号としては、自機の識別コード(C-ID)、通話希望先の無線通信機の識別コード(この場合は無線通信機Aの識別コード:A-ID)及び次の複信通信で使用するペアチャネル番号(この場合はCHx)を含んだ信号とされる。
もっとも、自機の識別コード(C-ID)については通常の通信においても通信フレームのPHYヘッダに組み込まれているものである。
【0049】
そして、無線通信機Cから送信された音声信号は無線通信機AのRX-421MHz帯―CHxで受信・復調されるが、無線通信機Aではその復調信号と自機のマイクロホン57からの音声信号とを合成し、複信通信に係るTX-440MHz帯-CHmからキャリアをその合成信号で変調した信号として送信される。
また、無線通信機Aでは、割り込み要求がRX-421MHz帯―CHxで受信・復調されたことをシステム制御部63が確認した時点で、システム制御部63がタイマー62のカウントを開始させて時間を計測する。
なお、割り込み要求に係る音声信号は、無線通信機A,Cだけでなく、他の無線通信機B,D,EでもRX-440MHz帯-CHmで受信・復調されてスピーカー56から音声再生されるため、割り込み要求がなされた事実はネットワーク全体でリアルタイムに共有できる。
一方、無線通信機Cから音声信号と共に送信された割り込み要求信号は、無線通信機AのRX-421MHz帯―CHxで受信・復調されるとシステム制御部63に取り込まれ、各識別コード(C-ID),(A-ID)とペアチャネル番号(CHx)が抽出されて一旦メモリにセーブされる。
【0050】
次いで、割り込み要求信号を受信した無線通信機Aのユーザにおいて、その要求を許可する場合には、その受信時点から所定時間(例えば3sec)内にPTTボタンのON操作を行って割り込みを許可する旨の音声(例えば「Aです。許可します。」)をマイクロホン57に入力する。
その音声は、複信通信での通話の場合と同様に、無線通信機AのTX-440MHz-CHmから送信され、他の無線通信機B~EのRX-440MHz-CHmで受信・復調されて、スピーカー56から音声再生されるため、割り込み要求が許可された事実に関してもネットワーク全体でリアルタイムに共有できる。
なお、前記所定時間内にPTTボタンのON操作を行わない場合は、タイマー62のカウントアウトにより、割り込み要求を不許可として無視することになる。
【0051】
そして、無線通信機Aでは、PTTボタンのON操作があると、システム制御部63が先にセーブさせた各識別コード(C-ID),(A-ID)とペアチャネル番号(CHx)に基づいてネットワーク制御コマンド[NET-CONT(a)]を作成し、そのコマンドと現在の複信通信を終了させるための終話信号(CDS)とからなる応答信号を作成して複信通信に係るTX-440MHz帯-CHmから順次送信する。
【0052】
ここに、ネットワーク制御コマンドは5台の無線通信機A~Eについての2台の組み合わせ及び次の複信通信で用いるペアチャネル番号(CHm又はCHx)に係る情報をコード化したものであり、予め20[=5C2×2]通り用意されており、この場合は無線通信機A,Cの組み合わせ及びペアチャネル番号CHxを選択したコマンドとなる。
また、終話信号(CDS)は、ネットワーク内の複信通信(この場合は無線通信機A,B間の複信通信)を終了させると共に、ネットワーク内のすべての無線通信機A~Eを待受状態にする信号である。
【0053】
そして、音声信号と同様に、前記応答信号も440MHz帯-CHmのチャネルを通じて無線通信機B~EのRX-440MHz帯-CHmで受信され、無線通信機Aは自機が作成した応答信号に基づいて、また無線通信機B~Eでは受信した応答信号に基づいて、それぞれの無線通信機A~Eのシステム制御部63が自機の動作状態を制御して変更する。
【0054】
すなわち、まず終話信号(CDS)に基づいて無線通信機A,Bが相互間で回線切断手順を実行して複信通信を終了させた後、各無線通信機A~Eがネットワーク制御コマンド[NET-CONT(a)]をインデックスとしてそれに対応する制御プログラムを実行することにより、自機をそれぞれの所定状態へ移行させることになる。
【0055】
より具体的には、各無線通信機A~Eは、2台の無線通信機が複信通信を行い、他の無線通信機がその複信通信を傍受する状態となる20パターンのネットワーク状態に対応したネットワーク制御コマンドデータをインデックスとして、自機をそれぞれのネットワーク状態における個別の動作状態へ変更するための制御プログラムを備えており、ネットワーク制御コマンドを受信すると、それをインデックスとする自機の制御プログラムを実行して自機を所定の動作状態へ移行させることにより、ネットワークをネットワーク制御コマンドで指令された構成へ移行させる。
この場合は、ネットワーク制御コマンド[NET-CONT(a)]が各識別コード(C-ID),(A-ID)とチャネル番号(CHx)とからなるものであるから、
図6に示すように、無線通信機A,Cがチャネル番号(CHx)のペアチャネルで複信通信を実行し、他の無線通信機B,D,Eがその複信通信を傍受するというネットワーク状態へ移行させることになる。
【0056】
すなわち、各無線通信機A~Eがネットワーク制御コマンド[NET-CONT(a)]に対応する制御プログラムを実行して次のような動作状態となる。
(1) 無線通信機A,Cは、相互に回線接続手順を実行してチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態になる。
(2) 無線通信機A,Cは、チャネル番号CHmのチャネルであって、それぞれの複信通信における各受信側周波数帯(421MHz帯及び440MHz帯)と同一周波数帯側のチャネル(割り込み用チャネル)を受信復調部53に設定し、RX-421MHz帯-CHm及びRX-440MHz帯-CHmをアクティブに保つ。
(3) 各無線通信機A,Cにおいて、前記割り込み用チャネルに係るRX-421MHz帯-CHm,RX-440MHz帯-CHmの出力信号が、入出力制御部54でマイクロホン57からの入力信号と合成されて複信通信に係るTX-440MHz帯-CHx,TX-421MHz帯-CHxへ入力されると共に、複信通信に係るRX-421MHz帯-CHx,RX-440MHz帯-CHxの出力信号と合成されて増幅器55・スピーカー56側へ出力されるような信号回路を構成する。
(4) 無線通信機B,D,Eにおいて、各受信復調手段52,53を無線通信機A,Cの複信通信に係るチャネル番号CHxのペアチャネルに設定して、RX-440MHz帯-CHx,RX-421MHz帯-CHxをアクティブとし、その各復調信号を入出力制御部54で合成し、増幅器55・スピーカー56側へ出力されるような信号回路を構成する。
【0057】
その結果、ネットワークは
図4の構成から
図6の構成へ移行するが、無線通信機A,B間のチャネル番号CHmのペアチャネルを用いた複信通信が、無線通信機Cの割り込み要求での希望どおり、無線通信機A,C間のチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信へ入れ替わり、複信通信の傍受することになる無線通信機B,D,Eがチャネル番号CHmのペアチャネルを受信するように切り替わるだけであり、また、新たなネットワークでの無線通信機A,Cはそれぞれがチャネル番号CHxのペアチャネルの一方を割り込み用チャネルとしてアクティブに保っているため、その新たなネットワークおいても、無線通信機A,C以外の無線通信機からの割り込み要求により複信通信を行う2台の無線通信機を変更させたネットワークを構成することができ、オンデマンド方式で複信通信を変遷させてゆくことが可能なネットワークシステムを構築できる。
なお、ネットワーク構成が変更された場合において、各無線通信機A~Eの液晶表示部64に表示されている複信通信状態にある無線通信機の識別情報、その複信通信で使用されているチャネルの情報及び割り込み用周波数の情報は、この実施形態における
図4(b)から
図6(b)への変化に見られるように、各無線通信機A~Eのシステム制御部63が受信信号に基づいて表示制御を行うことにより、その都度変更後の内容に書き替えて表示される。
【0058】
ところで、
図4から
図6に示されるネットワークシステムでは、無線通信機Cの割り込み要求において、変更後のネットワークの複信通信で使用するペアチャネルをチャネル番号CHxとして、変更前の複信通信で使用するペアチャネル(チャネル番号CHm)から切り替えているが、このように切り替えを行わずに、複信通信には常にチャネル番号CHmのペアチャネルを使用し、割り込み要求用にチャネル番号CHxのペアチャネルを使用するようにしてもよい。
【0059】
その場合には、
図7の信号シーケンスフローに示すように、無線通信機Cが割り込み要求信号で指定するペアチャネルのチャネル番号がCHmとされるだけでよう、無線通信機Aが割り込み要求を許可した場合の応答信号のネットワーク制御コマンド[NET-CONT(b)]により、
図7の信号シーケンスフローと
図8のネットワーク構成に示されるように、無線通信機A,C間の複信通信がチャネル番号CHmのペアチャネルで実行され、それら無線通信機A,Cに対する各割り込み要求用のチャネルがチャネル番号CHxのペアチャネルで設定される一方、無線通信機B,D,Eではチャネル番号CHmのペアチャネルの受信状態となる。
そして、
図8(a)と
図3(a)のネットワーク構成を比較すれば明らかなように、
図8のネットワーク構成は、
図3の無線通信機Bと無線通信機Cが入れ替わっただけである。
このように、複信通信に常に同一のチャネル番号のペアチャネルを使用する利点としては、割り込み要求に基づいてネットワーク構成を変更する際に、直前まで使用していたペアチャネルを使用することになるため、新たな複信通信のための回線接続手順においてキャリアセンスの結果が不可になる可能性が低いことを挙げられる。
【0060】
なお、2つのペアチャネル(チャネル番号:CHm及びCHx)の使用方式については、前記のように交番的使用や定常的使用とするのではなく、現状の複信通信においてSN比が所定レベル以下である場合に、その複信通信で使用しているペアチャネルから他方のペアチャネルに切り替えるようにしてもよい。
【0061】
次に、
図9のネットワーク構成図と
図10の信号シーケンスフロー図は、
図3のネットワーク構成から移行した
図6のネットワーク構成において、通信傍受状態にある無線通信機Bから無線通信機Aへ、複信接続要求先を無線通信機Dとし、使用するペアチャネルのチャネル番号をCHmとした割り込み要求がなされた場合の各無線通信機A~Eの状態と信号シーケンスフを示すものである。
この場合は、割り込み要求元である無線通信機Bの割り込み要求先は無線通信機Aであるが、無線通信機Bが希望する通信要求先が無線通信機Dであり、無線通信機Aが割り込み要求を受け付けて許可すると、次のネットワークにおいて無線通信機B,D間で複信通信となり、無線通信機Aは無線通信機C,Eと共に通信傍受側になる。
【0062】
割り込み要求とネットワーク制御に係る手順は、基本的には
図5で説明した手順と同様である。
ただし、割り込み要求元と複信接続要求先及び次の複信通信で使用するペアチャネルが相違している。
すなわち、
図5と
図10を比較すると明らかなように、割り込み要求に関しては、割り込み要求元が無線通信機Cから無線通信機Bとなり、次の複信通信で使用するペアチャネルのチャネル番号がCHxからCHmとなり、割り込み要求元の複信接続要求先が無線通信機A(A-ID)から無線通信機D(D-ID)となって、無線通信機B,D間が複信接続となるネットワーク構成への移行を求めたものである。
そのため、割り込み要求元である無線通信機Bにおける受信復調部52,53と変調送信部59のチャネル設定制御も当然に
図5の場合と異なっており、無線通信機Bのユーザが入力する音声も「Bです。Dさんと話させて下さい。」などのようになるが、手順だけからみれば
図5と
図10では無線通信機Cと無線通信機Bが入れ替わったに過ぎない。
【0063】
また、割り込み要求に対する許可応答についても、無線通信機AがPTTボタンのON操作に伴った音声での許可通知と共に、ネットワーク制御コマンドと終話信号(CDS)を送信する点では
図5と
図10での手順は共通している。
ただし、
図10におけるネットワーク制御コマンド[NET-CONT(c)]は、無線通信機B,Dがチャネル番号CHxのペアチャネルを使用した複信通信を行い、他の無線通信機A,C,Eがその複信通信を傍受するという新たなネットワーク構成に対応するものである。
【0064】
したがって、まず終話信号(CDS)に基づいて無線通信機A,Cが相互間で回線切断手順を実行して複信通信を終了させて、各無線通信機A~Eを待受け状態にした後、各無線通信機A~Eがネットワーク制御コマンド[NET-CONT(c)]をインデックスとしてそれに対応する制御プログラムを読み出して実行することにより、
図11に示すような態様で、無線通信機B,Dがチャネル番号(CHm)のペアチャネルで複信通信を実行し、他の無線通信機A,C,Eがその複信通信を傍受するというネットワーク構成へ移行させることになるが、
図5と
図10で対比させてみると、回線切断手順と回線接続手順を実行する無線通信機の組み合わせが異なり、複信通信と割り込み用周波数に適用される各ペアチャネルがチャネル番号(CHxとCHm)で逆転しているだけで、その手順については基本的に同様である。
【0065】
以上から、この実施形態に係る無線通信ネットワークシステムによれば、特定小電力無線局である無線通信機A~Eで構成され、2台の無線通信機がペアチャネルを使用した複信通信を実行し、その他の無線通信機がその2台の無線通信機の複信通信を傍受しているネットワーク構成において、2台の無線通信機のいずれかに対してそれ以外の任意の無線通信機から任意の通信要求先の無線通信機を指定した割り込み要求を行うことにより、割り込み要求元の無線通信機と前記通信要求先の無線通信機とが前記2台の無線通信機と入れ替わって複信通信を行うネットワーク構成に移行させることができ、オンデマンド方式で複信通信を行う無線通信機を逐次変遷させてゆくことが可能である。
【0066】
なお、以上では音声信号がPTTボタンのON操作を伴って送信されるようになっているが、予めVOXモードを設定しておいて、VOX機能を用いた音声入力による自動送信を行うようにしてもよく、これは以下の実施形態2,3においても同様である。
【0067】
<実施形態2>
実施形態1の無線通信ネットワークシステムでは単一の割り込み要求があった場合について説明しているが、この実施形態は、一つの割り込み要求があった後、その割り込み要求を直接受信した無線通信機において応答信号を送信するまでの間に、別の割り込み要求があった場合の処理に関する。
【0068】
この実施形態では、
図12及び
図13に示すように、無線通信機A,Bが複信通信(ペアチャネルのチャネル番号:CHm)を実行し、他の無線通信機C~Eがその複信通信を傍受している状態(
図3の初期状態)において、無線通信機Cから無線通信機Aへ割り込み要求(IRQ1)があった後、無線通信機Aがその割り込み要求(IRQ1)に対する応答信号を送信する前に、さらに無線通信機Eから割り込み要求(IRQ2)があった場合を例にとって説明する。
ただし、各割り込み要求(IRQ1),(IRQ2)での複信接続要求先は双方とも無線通信機Aであるが、複信通信で使用するペアチャネルについては割り込み要求(IRQ1)ではチャネル番号CHxであり、割り込み要求(IRQ2)ではチャネル番号CHmになっている。
【0069】
この場合、無線通信機C,Eは双方とも割り込み要求信号IRQ1,IRQ2をTX-421MHz帯-CHxで送信し、無線通信機Aでは割り込み用に開いているRX-421MHz帯-CHxでそれらの割り込み要求信号IRQ1,IRQ2を前後して受信する。
そして、システム制御部63は各割り込み要求信号IRQ1,IRQ2の送信元を同信号に含まれている識別コードC-ID,E-IDから確認してネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]を生成する。
また、無線通信機C,Eでは、割り込み要求信号を送信する前に、ユーザがPTTボタンをON操作して無線通信機Aとの通信を要求する旨の音声メッセージ(例えば、「C/Eです。Aさんと話させて下さい。」)をマイクロホン57から入力してTX-421MHz帯-CHxで送信しているため、無線通信機Aのユーザは無線通信機C,Eから割り込み要求があったことを確認している。
【0070】
そこで、無線通信機Aのユーザは、PTTボタンをON操作して無線通信機C,Eの間で話し合って貰いたい旨の音声メッセージ(例えば、「Aです。CさんとEさん、話し合って下さい。」)をマイクロホン57から入力してTX-440MHz帯-CHmから送信すると共に、応答信号としてネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]と終話信号(CDS)も送信する。
このネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]は、無線通信機C,Eがチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態にすると共に、それぞれがチャネル番号CHmのペアチャネルにおける自機の複信通信の受信側周波数帯と同一周波数帯側のチャネルを割り込み用周波数として設定し、無線通信機A,B,Dを無線通信機C,Eの複信通信を傍受する状態にするものである。
【0071】
したがって、ネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]と終話信号(CDS)を送信した無線通信機Aとそれを受信した他の無線通信機B~Eは、終話信号(CDS)に基づいて無線通信機A,Bが回線切断手順を実行して複信通信を終了させて、各無線通信機A~Eを待受状態にした後、各無線通信機A~Eがネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]をインデックスとしてそれに対応する制御プログラムを自機のメモリから読み出して実行することにより、
図14に示すように、無線通信機C,Eが回線接続手順を実行してチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態になり、無線通信機A,B,Dがその複信通信の傍受状態となった新たなネットワークへ移行する。
なお、無線通信機C,Eがチャネル番号CHmのペアチャネルを使用したRX-LB-CHm,RX-HB-CHmをアクティブに保って割り込み要求を受信できるようにしていることは、実施形態1での複信通信に係る各無線通信機の場合と同様である。
【0072】
ところで、以上では、
図12及び
図13に示すとおり、2つの割り込み要求(IRQ1),(IRQ2)が無線通信機AのRX-421NHz-CHxに対して前後してなされた場合について説明しているが、複信通信を実行している無線通信機A,Bはそれぞれ割り込み用チャネルの受信復調部53(RX-421MHz-CHx),(RX-440MHz-CHx)を開いており、無線通信機C,Eからは無線通信機A,Bのいずれに対しても割り込み要求を行うことができる。
【0073】
したがって、
図15に示すように、無線通信機Cから無線通信機Aへ割り込み要求(IRQ1)がなされた後、無線通信機Eから無線通信機Bへ割り込み要求(IRQ2)がなされるような場合もある。
そのような場合には、先になされた無線通信機Cからの割り込み要求(IRQ1)を直接受信している無線通信機Aが、音声メッセージと応答信号([NET-CONT(d)],(CDS))を送信する処理を担当する。
【0074】
その結果、無線通信機C,Eの各割り込み要求について、新たに移行したネットワークの中で無線通信機C,Eのユーザ間の通話による調整が図られ、無線通信機C,Eのいずれかが無線通信機Aとの複信通話へ移行することで割り込み要求の抵触を回避できることや、通話の中で無線通信機Aが当事者とならない他の複信通信へ移行する方が良い等の結論が得られることがあり、この実施形態での調整的運用には合理性がある。
【0075】
<実施形態3>
上記の実施形態1及び2の無線通信ネットワークシステムは、通信傍受状態にある無線通信機が他の特定の無線通信機を指定して自機と複信接続となるネットワーク状態へ移行させることを要求するものであるが、この実施形態では、割り込み要求がそのような目的を持たず、したがって、特定の無線通信機を指定しない場合に係る。
例えば、通信傍受状態にある1台の無線通信機がネットワーク全体に対して質問を投げ掛けるような場合がこれに相当し、その質問に対して回答可能な無線通信機から割り込み要求があったときに、双方の無線通信機を複信接続させる。
【0076】
この実施形態では、無線通信機A,Bが複信通信(ペアチャネルのチャネル番号:CHm)を実行しており、他の無線通信機C~Eがその複信通信を傍受している状態(
図3の初期状態)において、無線通信機Cから無線通信機AのRX-421NHz-CHxへ割り込み要求(IRQ1’)があり、その要求時点から所定時間(例えば3sec)内に無線通信機Eから割り込み要求(IRQ2’)があった場合を例にとって説明する。
実際には、さらに無線通信機Dから前記所定時間内に割り込み要求(IRQ3’)がなされることもあり得るが、この実施形態では最先の2つの割り込み要求(IRQ1’,IRQ2’)だけを処理対象として取り扱う。
【0077】
割り込み要求(IRQ1’,IRQ2’)を受信した無線通信機Aはネットワーク制御信号と通信終了信号を送信し、無線通信機A,Bの複信通信を終了させた後、無線通信機C,Eが回線接続手順を実行してチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態になり、無線通信機A,B,Dがその複信通信の傍受状態になった新たなネットワーク状態が構成されることになる。
したがって、この実施形態における無線通信ネットワークの模式的構成図は、実施形態2で用いた
図12、
図14及び
図15を参照することができる。
一方、信号シーケンスについてみると、基本的には
図13の場合と類似した手順で進行するが、信号等の内容に相違があり、
図16の信号シーケンスフロー図が参照される。
【0078】
まず、
図12及び
図16を参照して、前記所定時間内に無線通信機Cと無線通信機Eから無線通信機AのRX-421NHz-CHxに2つの割り込み要求(IRQ1’,IRQ2’)が送信されるが、実施形態2の場合の割り込み要求(IRQ1,IRQ2)とは異なり、各割り込み要求(IRQ1’,IRQ2’)は特定の接続先を指定するものではなく、
図17に示すように、PTTボタンのON操作を伴う音声信号と各自機の識別コード(C-ID,E-ID)だけである。
【0079】
具体的には、無線通信機CのユーザがPTTボタンをON操作して、例えば「〇〇について知っている方はいますか?」という音声メッセージと自機の識別コード(C-ID)とからなる割り込み要求(IRQ1’)を送信すると、無線通信機Aでは割り込み用のRX-421MHz帯-CHxで受信復調した割り込み要求(IRQ1’)を複信通信に係る送信音声信号に合成して送信していることから複信通信を傍受中の無線通信機D,Eにおいても割り込み要求(IRQ1’)が確認でき、この場合は、割り込み要求(IRQ1’)の送信時点から前記所定時間内に、無線通信機EのユーザがPTTボタンをON操作して、例えば「私が知っています!」という音声メッセージと自機の識別コード(E-ID)からなる割り込み要求(IRQ2’)を送信したような場合が想定される。
【0080】
一方、2つの割り込み要求(IRQ1’,IRQ2’)を確認した無線通信機Aでは、それらの信号に含まれている識別コードC-ID及びE-IDに基づいて、自動的にネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]と終話信号(CDS)からなる応答信号を送信する。
この場合、実施形態2のように無線通信機AのユーザがPTTボタンをON操作して音声メッセージを介在させることは行わず、応答信号だけでの自動的な対応になっている。
【0081】
ここに、ネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]は、実施形態2の場合と同様であり、無線通信機C,Eをチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態になると共に、それぞれがチャネル番号CHmのペアチャネルにおける自機の複信通信の受信側周波数帯と同一周波数帯側のチャネルを割り込み用周波数として設定する一方、無線通信機A,B,Dを無線通信機C,Eの複信通信を傍受することとなるネットワーク状態に対応したコマンドであり、また、終話信号(CDS)は、無線通信機A,B間の複信通信を終了させると共に、ネットワーク内のすべての無線通信機A~Eを待受状態にする信号である。
【0082】
したがって、以降のネットワーク構成の変更については実施形態2(
図13及び
図14)の場合と同様であり、終話信号(CDS)に基づいて無線通信機A,Cが相互間で回線切断手順を実行して複信通信を終了させ、各無線通信機A~Eを待受け状態にした後、各無線通信機A~Eがネットワーク制御コマンド[NET-CONT(d)]をインデックスとしてそれに対応する制御プログラムを読み出して実行することにより、
図14に示すように、無線通信機C,Eが回線接続手順を実行してチャネル番号CHxのペアチャネルを用いた複信通信状態になり、無線通信機A,B,Dがその複信通信の傍受状態となった新たなネットワークへ移行する。
なお、新たなネットワークで複信通信に使用するペアチャネルとして、移行前のネットワーク状態における割り込み用周波数側のペアチャネルを使用するか、移行前の複信通信側のペアチャネルを継続して使用するかについては、予めいずれか一方を使用することを定めておけばよく、それを前記制御プログラムに反映させておけばよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、特定小電力無線局である業務用の無線通信機からなる無線通信ネットワークに利用できる。
【符号の説明】
【0084】
51…アンテナ、52,53…受信復調部、54…入出力制御部、55…増幅器、56…スピーカー、57…マイクロホン、58…増幅器、59…変調送信部、60…アンテナ、61…操作部、62…タイマー、63…システム制御部、64…表示部、110…親機、120-1~3…子機、130…第1の子機、131,132…信号合成手段、133…スピーカー、134…マイクロホン、140…第2の子機、141…第3の子機、201,202,203-1~n…無線通信機。