(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120757
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】火災及び不審者検知システム、火災及び設備不具合検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20230823BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230823BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20230823BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230823BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230823BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230823BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G08B21/00 E
G08B17/12 A
G08B17/00 C
H04N7/18 D
H04N7/18 N
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023789
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518423191
【氏名又は名称】株式会社ヒューマンサポートテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 八雲
【テーマコード(参考)】
5C054
5C085
5C086
5C087
5G405
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
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5C087AA09
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5C087EE07
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5C087GG02
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5C087GG66
5C087GG70
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5C087GG84
5G405AB01
5G405AB05
5G405CA22
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5G405DA21
5G405EA52
5L096BA02
5L096CA05
5L096DA03
5L096HA02
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】火災の発生や不審者の存在を確実かつ迅速に検知することができる火災及び不審者検知システムを提供すること。
【解決手段】火災及び不審者検知システム1は、可視画像判定手段、第1の熱画像判定手段及び第2の熱画像判定手段を備える。可視画像判定手段は、可視画像に炎A1、煙A2及び不審者の少なくとも1つが映っているか否かを判定する。第1の熱画像判定手段は、熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定し、第2の熱画像判定手段は、熱画像に含まれる温度情報を第2の基準温度に基づいて判定する。また、火災報知手段31,32は、可視画像判定手段や第1の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、火災の発生を報知する。不審者報知手段31,32は、可視画像判定手段や第2の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、不審者の存在を報知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域内の火災及び不審者を検知するシステムであって、
前記監視領域を撮像して可視画像を取得する可視画像撮像手段と、
前記監視領域を撮像して熱画像を取得する熱画像撮像手段と、
前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段と、
前記可視画像に炎、煙及び不審者の少なくとも1つが映っているか否かを判定する可視画像判定手段と、
前記熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する第1の熱画像判定手段と、
前記熱画像に含まれる温度情報を第2の基準温度に基づいて判定する第2の熱画像判定手段と、
前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での火災の発生を報知する火災報知手段と、
前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第2の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での不審者の存在を報知する不審者報知手段と
を備えることを特徴とする火災及び不審者検知システム。
【請求項2】
前記温度情報は、前記監視領域を撮像して取得した前記熱画像である第1の熱画像と、前記監視領域を異なる時刻または期間に撮像して取得した前記熱画像である第2の熱画像とを比較して得た温度差情報であることを特徴とする請求項1に記載の火災及び不審者検知システム。
【請求項3】
前記可視画像判定手段は、前記監視領域を一定期間撮像して得た前記可視画像に映る生命体の体の動きを算出し、算出した体の動きに基づいて、前記可視画像に映る前記生命体を不審者であると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の火災及び不審者検知システム。
【請求項4】
前記可視画像及び前記熱画像に炎、煙及び不審者が映っていると判定する方法を学習する学習手段と、前記学習手段による学習結果を学習済データとして記憶する記憶手段とを備え、
前記可視画像判定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記学習済データに基づいて、前記可視画像に炎、煙及び不審者が映っているか否かを判定し、
前記第2の熱画像判定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記学習済データに基づいて、前記熱画像に不審者が映っているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の火災及び不審者検知システム。
【請求項5】
複数の貫通孔を有するマーカーボードを加熱または冷却した状態で撮像する前記可視画像撮像手段及び前記熱画像撮像手段と、
前記可視画像と前記熱画像とに存在する前記マーカーボードの形状情報に基づいて、前記可視画像と前記熱画像との位置合わせを行う画像処理手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の火災及び不審者検知システム。
【請求項6】
監視領域内の火災及び設備不具合を検知するシステムであって、
前記監視領域を撮像して可視画像を取得する可視画像撮像手段と、
前記監視領域を撮像して熱画像を取得する熱画像撮像手段と、
前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段と、
前記可視画像に炎及び煙の少なくとも一方が映っているか否かを判定する可視画像判定手段と、
前記熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する第1の熱画像判定手段と、
前記熱画像に含まれる温度情報を第3の基準温度に基づいて判定する第3の熱画像判定手段と、
前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での火災の発生を報知する火災報知手段と、
前記第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、前記監視領域での設備不具合の発生を報知する設備不具合報知手段と
を備えることを特徴とする火災及び設備不具合検知システム。
【請求項7】
前記温度情報は、前記監視領域を撮像して取得した前記熱画像である第1の熱画像と、前記監視領域を異なる時刻または期間に撮像して得た前記熱画像である第2の熱画像とを比較して得た温度差情報であることを特徴とする請求項6に記載の火災及び設備不具合検知システム。
【請求項8】
複数の貫通孔を有するマーカーボードを加熱または冷却した状態で撮像する前記可視画像撮像手段及び前記熱画像撮像手段と、
前記可視画像と前記熱画像とに存在する前記マーカーボードの形状情報に基づいて、前記可視画像と前記熱画像との位置合わせを行う画像処理手段と
を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の火災及び設備不具合検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域内の火災等を検知する火災及び不審者検知システム、火災及び設備不具合検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の主要箇所に設定された複数の監視領域内において、火災を検知するシステムが用いられている(例えば、特許文献1~5参照)。また、このようなシステムには、火災を検知して報知する火災検知器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-127333号公報(
図2,
図4,
図7等)
【特許文献2】特開2018-130416号公報(
図1,
図2等)
【特許文献3】特開2005-091343号公報(
図1~
図6等)
【特許文献4】特開2019-062970号公報(請求項1、
図5,
図7等)
【特許文献5】特開2017-167616号公報(
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火災検知器としては、通常、煙式のものや熱式のものが用いられる。しかし、煙式や熱式の火災検知器は、カバーできるエリアが限定的であるため、火災を確実に検知できない場合がある。しかも、煙式の火災検知器は、発火源から煙が流れてくるまでは火災を検知することができない。また、熱式の火災検知器は、周辺の空気が高温になるまでは火災を検知することができない。このため、発火源が少し離れているだけでも、火災発生から検知までに時間がかかる場合がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、火災の発生や不審者の存在を確実かつ迅速に検知することができる火災及び不審者検知システムを提供することにある。また、第2の目的は、火災の発生や設備不具合の発生を確実かつ迅速に検知することができる火災及び設備不具合検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、監視領域内の火災及び不審者を検知するシステムであって、前記監視領域を撮像して可視画像を取得する可視画像撮像手段と、前記監視領域を撮像して熱画像を取得する熱画像撮像手段と、前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段と、前記可視画像に炎、煙及び不審者の少なくとも1つが映っているか否かを判定する可視画像判定手段と、前記熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する第1の熱画像判定手段と、前記熱画像に含まれる温度情報を第2の基準温度に基づいて判定する第2の熱画像判定手段と、前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での火災の発生を報知する火災報知手段と、前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第2の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での不審者の存在を報知する不審者報知手段とを備えることを特徴とする火災及び不審者検知システムをその要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、可視画像判定手段が、可視画像撮像手段が撮像して取得した可視画像に炎、煙及び不審者の少なくとも1つが映っているか否かを判定する。また、第1の熱画像判定手段が、熱画像撮像手段が撮像して取得した熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する。さらに、第2の熱画像判定手段が、熱画像に含まれる温度情報を第2の基準温度に基づいて判定する。そして、可視画像判定手段による判定結果及び第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、火災報知手段が火災の発生を報知する。また、可視画像判定手段による判定結果及び第2の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、不審者報知手段が不審者の存在を報知する。即ち、火災及び不審者検知システムは、従来の火災検知器よりも広いエリアをカバーできるため、監視領域を撮像した画像に火災や不審者が映っている場合には、画像に基づいて火災や不審者を確実に検知することができる。しかも、火災及び不審者検知システムは、監視領域を撮像した画像に基づいて、監視領域内の火災や不審者を迅速に検知することができる。また、火災報知手段は、複数存在する監視領域のうち、可視画像判定手段や第1の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域において、火災の発生を報知するため、発火源の特定が容易になる。さらに、不審者報知手段は、可視画像判定手段や第2の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域において、不審者の存在を報知するため、不審者の位置の特定が容易になる。
【0008】
なお、火災の発生を報知する火災報知手段としては、例えば、火災の発生を発光(点灯・点滅等)にて報知するライト等の発光手段、火災の発生を音声(報知音等)にて報知するアラーム等の音声出力手段、火災の発生を文字、記号、絵等が表示された画像にて報知する液晶式表示装置等の表示手段、などが挙げられる。
【0009】
同様に、不審者の存在を報知する不審者報知手段としては、例えば、不審者の存在を発光(点灯・点滅等)にて報知するライト等の発光手段、不審者の存在を音声(報知音等)にて報知するアラーム等の音声出力手段、不審者の存在を文字、記号、絵等が表示された画像にて報知する液晶式表示装置等の表示手段、などが挙げられる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記温度情報は、前記監視領域を撮像して取得した前記熱画像である第1の熱画像と、前記監視領域を異なる時刻または期間に撮像して取得した前記熱画像である第2の熱画像とを比較して得た温度差情報であることをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、撮像時刻または撮像期間が異なる2つの熱画像同士を比較して得た温度差情報が、熱画像に含まれる温度情報となる。このため、温度情報、第1の基準温度及び第2の基準温度に基づいて、撮像した熱画像に対応する監視領域内での温度変化を正確に管理することができる。これにより、管理者は、どの監視領域の温度変化が大きいのか、即ち、どの監視領域で火災が発生し、どの監視領域に不審者が存在しているのかを、正確に認識することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記可視画像判定手段は、前記監視領域を一定期間撮像して得た前記可視画像に映る生命体の体の動きを算出し、算出した体の動きに基づいて、前記可視画像に映る前記生命体を不審者であると判定することをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、可視画像判定手段が、生命体の体の動きに基づいて、生命体の動作が不審であるか否かを判断し、動作が不審であると判断した際に、生命体を不審者であると判定する。これにより、生命体が不審者であるか否かを正確に判断することができる。なお、体の動きの具体例としては、生命体の位置の動き(移動)や、頭、手、足の動き等が挙げられる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記可視画像及び前記熱画像に炎、煙及び不審者が映っていると判定する方法を学習する学習手段と、前記学習手段による学習結果を学習済データとして記憶する記憶手段とを備え、前記可視画像判定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記学習済データに基づいて、前記可視画像に炎、煙及び不審者が映っているか否かを判定し、前記第2の熱画像判定手段は、前記記憶手段に記憶されている前記学習済データに基づいて、前記熱画像に不審者が映っているか否かを判定することをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明では、学習手段による学習結果に基づいて炎、煙及び不審者の有無を判定することにより、炎、煙及び不審者が映っているか否かを正確に判定することができる。しかも、学習手段による学習機会を多くすれば、炎、煙及び不審者の有無を判定する判定精度が高くなる。また、請求項4では、可視画像判定手段が可視画像に炎、煙及び不審者が映っているか否かを判定し、第2の熱画像判定手段が熱画像に不審者が映っているか否かを判定することにより、炎、煙及び不審者の有無を確認している。このため、可視画像判定手段及び第2の熱画像判定手段のいずれか1つによって、不審者の有無を確認する場合に比べて、不審者の有無を精度良く確認することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、複数の貫通孔を有するマーカーボードを加熱または冷却した状態で撮像する前記可視画像撮像手段及び前記熱画像撮像手段と、前記可視画像と前記熱画像とに存在する前記マーカーボードの形状情報に基づいて、前記可視画像と前記熱画像との位置合わせを行う画像処理手段とを備えることをその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明では、1つのマーカーボードを用いて、可視画像及び熱画像の両方を位置合わせできるため、炎、煙及び不審者の場所を精度良く検知することができる。また、マーカーボードの形状情報に基づいた位置合わせの制御が容易になるため、画像処理手段にかかる負担を低減することができる。さらに、位置合わせに際してマーカーボードが加熱または冷却されるため、熱画像撮像手段でマーカーボードを撮像して取得した熱画像に、マーカーボードを確実に映り込ませることができる。その結果、可視画像と熱画像とに存在するマーカーボードの形状情報に基づいて、位置合わせを確実に行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、監視領域内の火災及び設備不具合を検知するシステムであって、前記監視領域を撮像して可視画像を取得する可視画像撮像手段と、前記監視領域を撮像して熱画像を取得する熱画像撮像手段と、前記可視画像及び前記熱画像を表示する表示手段と、前記可視画像に炎及び煙の少なくとも一方が映っているか否かを判定する可視画像判定手段と、前記熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する第1の熱画像判定手段と、前記熱画像に含まれる温度情報を第3の基準温度に基づいて判定する第3の熱画像判定手段と、前記可視画像判定手段による判定結果及び前記第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、前記監視領域での火災の発生を報知する火災報知手段と、前記第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、前記監視領域での設備不具合の発生を報知する設備不具合報知手段とを備えることを特徴とする火災及び設備不具合検知システムをその要旨とする。
【0019】
請求項6に記載の発明では、可視画像判定手段が、可視画像撮像手段が撮像して取得した可視画像に炎及び煙の少なくとも一方が映っているか否かを判定する。また、第1の熱画像判定手段が、熱画像撮像手段が撮像して取得した熱画像に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する。さらに、第3の熱画像判定手段が、熱画像に含まれる温度情報を第3の基準温度に基づいて判定する。そして、可視画像判定手段による判定結果及び第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、火災報知手段が火災の発生を報知する。また、第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、設備不具合報知手段が設備不具合の発生を報知する。即ち、火災及び設備不具合検知システムは、従来の火災検知器よりも広いエリアをカバーできるため、監視領域を撮像した画像に火災や設備不具合が発生している様子が映っている場合には、画像に基づいて火災や設備不具合を確実に検知することができる。しかも、火災及び設備不具合検知システムは、監視領域を撮像した画像に基づいて、監視領域内の火災や設備不具合を迅速に検知することができる。また、火災報知手段は、複数存在する監視領域のうち、可視画像判定手段や第1の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域において、火災の発生を報知するため、発火源の特定が容易になる。さらに、設備不具合報知手段は、第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域において、設備不具合の発生を報知するため、設備不具合が発生した位置の特定が容易になる。
【0020】
なお、設備不具合の発生を報知する設備不具合報知手段としては、例えば、設備不具合の発生を発光(点灯・点滅等)にて報知するライト等の発光手段、設備不具合の発生を音声(報知音等)にて報知するアラーム等の音声出力手段、設備不具合の発生を文字、記号、絵等が表示された画像にて報知する液晶式表示装置等の表示手段、などが挙げられる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記温度情報は、前記監視領域を撮像して取得した前記熱画像である第1の熱画像と、前記監視領域を異なる時刻または期間に撮像して得た前記熱画像である第2の熱画像とを比較して得た温度差情報であることをその要旨とする。
【0022】
請求項7に記載の発明では、撮像時刻または撮像期間が異なる2つの熱画像同士を比較して得た温度差情報が、熱画像に含まれる温度情報となる。このため、温度情報、第1の基準温度及び第3の基準温度に基づいて、撮像した熱画像に対応する監視領域内での温度変化を正確に管理することができる。これにより、管理者は、どの監視領域の温度変化が大きいのか、即ち、どの監視領域で火災や設備不具合が発生しているのかを、正確に認識することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7において、複数の貫通孔を有するマーカーボードを加熱または冷却した状態で撮像する前記可視画像撮像手段及び前記熱画像撮像手段と、前記可視画像と前記熱画像とに存在する前記マーカーボードの形状情報に基づいて、前記可視画像と前記熱画像との位置合わせを行う画像処理手段とを備えることをその要旨とする。
【0024】
請求項8に記載の発明では、1つのマーカーボードを用いて、可視画像及び熱画像の両方を位置合わせできるため、炎及び煙の場所や設備不具合の発生場所を精度良く検知することができる。また、マーカーボードの形状情報に基づいた位置合わせの制御が容易になるため、画像処理手段にかかる負担を低減することができる。さらに、位置合わせに際してマーカーボードが加熱または冷却されるため、熱画像撮像手段でマーカーボードを撮像して取得した熱画像に、マーカーボードを確実に映り込ませることができる。その結果、可視画像と熱画像とに存在するマーカーボードの形状情報に基づいて、位置合わせを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、請求項1~5に記載の発明によると、火災の発生や不審者の存在を確実かつ迅速に検知することができる。また、請求項6~8に記載の発明によると、火災の発生や設備不具合の発生を確実かつ迅速に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態における検知システムを示す概略構成図。
【
図3】煙及び人間が映っている可視画像を示す概略図。
【
図4】煙及び人間が映っている熱画像を示す概略図。
【
図7】異なるカメラ同士から同じマーカーボードを撮像する様子を示す説明図。
【
図8】火災を検知する処理、不審者を検知する処理及び設備不具合を検知する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
図1,
図2に示されるように、本実施形態の検知システム1は、ビル10の主要箇所に設定された複数の監視領域11(エリアA、エリアB、エリアC、…)内の火災及び不審者A4を検知する火災及び不審者検知システムである。なお、検知システム1は、監視領域11内の火災及び設備不具合を検知する火災及び設備不具合検知システムとしての機能も有している。
【0029】
また、検知システム1には、可視カメラ21(可視画像撮像手段)及びサーモカメラ22(熱画像撮像手段)を有する撮像手段群20が、複数の監視領域11ごとに設けられている。可視カメラ21は、監視領域11を撮像して可視画像24(
図3,
図5参照)を取得し、取得した可視画像24の画像データを出力する。また、サーモカメラ22は、監視領域11を撮像して熱画像25(
図4参照)を取得し、取得した熱画像25の画像データを出力する。なお、可視画像24はカラー画像であり、熱画像25は赤外線画像である。
【0030】
図1に示されるように、ビル10の管理室12内には、検知システム1を構成するモニター31(表示手段)が設けられている。モニター31の表示画面には、可視画像24及び熱画像25が撮像手段群20ごとに表示されている。なお、可視画像24には、炎A1、煙A2及び人間A3(生命体)が映るようになっている(
図3,
図5参照)。また、熱画像25に人間A3が映っている場合、熱画像25には、人間A3を認識する矩形状の枠26が人間A3を囲むように表示されている(
図4参照)。本実施形態の枠26は、赤色の直線からなっているが、赤色でなくてもよいし、破線であってもよい。また、枠26は表示されていなくてもよい。なお、熱画像25に炎A1が映っている場合、熱画像25に、炎A1を認識する矩形状の枠を炎A1を囲むように表示してもよい。さらに、熱画像25に煙A2が映っている場合、熱画像25に、煙A2を認識する矩形状の枠を煙A2を囲むように表示してもよい。
【0031】
図2に示されるように、モニター31には、俯瞰平面の画像である間取り
図27が表示されている。間取り
図27は、ビル10の特定の階を直上から見たときのイメージを示す画像である。また、間取り
図27上には、炎A1を示すアイコン41と、人間A3を示すアイコン42とが表示されている。本実施形態において、炎A1を示すアイコン41は、炎A1の絵となっており、人間A3を示すアイコン42は、直上から見たときの人間A3の絵となっている。さらに、間取り
図27上には、撮像手段群20(可視カメラ21及びサーモカメラ22)を示すアイコン43が表示されている。本実施形態において、撮像手段群20を示すアイコン43は、カメラの絵となっている。
【0032】
また、
図1に示されるように、管理室12内には、検知システム1を構成する警報器32が設けられている。さらに、検知システム1には、スピーカー33が複数の監視領域11ごとに設けられている。
【0033】
次に、検知システム1の電気的構成について説明する。
【0034】
図1に示されるように、検知システム1は、管理室12内にパソコン51を備えており、パソコン51は、システム全体を統括的に制御する制御装置(図示略)を備えている。制御装置は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPUには、モニター31、警報器32及びスピーカー33が電気的に接続されている。なお、モニター31、警報器32及びスピーカー33は、無線によってCPUに接続されていてもよい。
【0035】
また、CPUには、可視カメラ21及びサーモカメラ22が電気的に接続されている。そして、RAMには、可視カメラ21が取得した可視画像24と、サーモカメラ22が取得した熱画像25とが記憶されるようになっている。また、ROMには、検知システム1を制御するためのプログラムが記憶されている。なお、可視カメラ21及びサーモカメラ22は、無線によってCPUに接続されていてもよい。
【0036】
次に、可視画像24と熱画像25とを位置合わせする方法を説明する。
【0037】
まず、可視カメラ21とサーモカメラ22とを接続する方法を
図7に基づいて説明する。なお、前提として、使用するカメラ21,22は、対応する監視領域11の床面との位置関係が分かっている必要がある。また、複数の貫通孔61を有するマーカーボード60(
図6参照)を準備する。
【0038】
まず、それぞれのカメラ21,22を用いて、マーカーボード60を加熱した状態で撮像する。そして、パソコン51のCPUは、撮像して取得した可視画像24と熱画像25とに存在するマーカーボード60の形状情報に基づいて、可視画像24と熱画像25との位置合わせを行う。即ち、CPUは、『画像処理手段』としての機能を有している。
【0039】
具体的に言うと、CPUは、マーカーボード60と可視カメラ21との位置関係と、マーカーボード60とサーモカメラ22との位置関係とを推定する。このようにしてマーカーボード60を撮像した場合、カメラ21,22同士の直接的な位置関係は分からないが、マーカーボード60自身を中心とした座標系(マーカー座標系)は共有されている。このため、それぞれのカメラ21,22から見た点を、マーカーボード60から見た点に変換して比較したり、さらに他方のカメラから見た点に変換することが可能となる。
【0040】
そこで、CPUは、カメラ21,22の俯瞰座標系同士をマーカーボード60を介して接続する演算処理を行うことにより、可視カメラ21で撮像された可視画像24とサーモカメラ22で撮像された熱画像25とを位置合わせする処理を行う。ここで、「俯瞰座標系」とは、カメラ21,22を垂直に俯瞰した座標系をいい、カメラ21,22と同じ方向をy軸、y軸と直交する向きをx軸としたxy座標系として表される。また、「可視画像24と熱画像25とを位置合わせする処理」とは、カメラ21,22同士の位置関係を把握し、サーモカメラの俯瞰座標系の点(x2,y2)を、可視カメラ21の俯瞰座標系の点(x1,y1)に変換する処理をいう。なお、可視カメラ21の俯瞰座標系の点を、サーモカメラ22の俯瞰座標系の点に変換する処理を行ってもよいし、可視カメラ21の俯瞰座標系の点及びサーモカメラ22の俯瞰座標系の点の両方を、他の俯瞰座標系の点に変換する処理を行ってもよい。
【0041】
なお、各カメラ21,22の俯瞰座標系は同じ床面上に属しているため、俯瞰座標系同士の変換は、アフィン変換によって行うことができるが、他の手法を用いてもよい。具体的には、上記したマーカー座標系の性質を利用して、座標変換を行うための従来周知のアフィン変換行列を求める。そして、サーモカメラ22の俯瞰座標系上の点(x2,y2)から可視カメラ21の俯瞰座標系上の点(x1,y1)への変換は、アフィン変換行列を用いて算出される。
【0042】
従って、本実施形態によれば、カメラ21,22の俯瞰座標系同士を、両カメラ21,22のどちらにも映っているマーカーボード60を介して接続する。具体的に言うと、サーモカメラ22の俯瞰座標系上の点を、可視カメラ21の俯瞰座標系上の点に変換し、俯瞰座標系を共通化する。これにより、炎A1、煙A2及び人間A3の位置の推定精度が向上する。しかも、俯瞰座標系が、基準となる1つのカメラに合わせて統一されるため、把握した炎A1、煙A2及び人間A3の位置は、管理者にとって分かりやすいものとなる。
【0043】
次に、火災を検知する方法を説明する。
【0044】
まず、検知システム1は、可視カメラ21とサーモカメラ22とを用いて、ビル10内及びビル10外に設定された複数の監視領域11を常時監視する。例えば、特定の監視領域11において、その監視領域11に設けられた撮像手段群20の可視カメラ21は、監視領域11を撮像して可視画像24を取得する。また、同じ撮像手段群20のサーモカメラ22は、監視領域11を撮像して熱画像25を取得する。なお、可視カメラ21及びサーモカメラ22による監視領域11の撮像は、定期的に行われる。
【0045】
そして、監視領域11の撮像が終了する度に、可視カメラ21は、取得した可視画像24の画像データをパソコン51のCPUに出力し、サーモカメラ22は、取得した熱画像25の画像データをCPUに出力する。なお、CPUは、入力された画像データが示す可視画像24及び熱画像25をRAMに記憶する。また、画像データは常に録画されており、RAMが容量オーバーになる前に、古い画像データは自動的に削除されるようになっている。
【0046】
そして、CPUは、モニター31に駆動信号を出力し、RAMに記憶されている可視画像24及び熱画像25をモニター31に表示させる制御を行う。なお、モニター31は、カメラ21,22の情報(可視画像24及び熱画像25)を常時表示するようになっている。
【0047】
次に、
図8のステップS11において、『可視画像判定手段』であるCPUは、可視画像24に炎A1及び煙A2の少なくとも一方が映っているか否かを判定する。また、CPUは、『学習手段』としての機能も有している。詳述すると、CPUは、可視カメラ21が取得した可視画像24の画像データに基づいて、可視画像24に炎A1が映っていると判定する方法や、可視画像24に煙A2が映っていると判定する方法を予め学習し、学習結果を得る。そして、CPUは、得られた学習結果を第1の学習済データとしてRAMに記憶する。即ち、RAMは、『記憶手段』としての機能を有している。その結果、CPUは、RAMに記憶されている第1の学習済データに基づいて、可視画像24に炎A1及び煙A2の少なくとも一方が映っているか否かを判定することができる。
【0048】
続くステップS12において、『第1の熱画像判定手段』であるCPUは、熱画像25に含まれる温度情報を第1の基準温度に基づいて判定する。具体的に言うと、CPUは、監視領域11を過去に撮像して取得した熱画像25である第1の熱画像と、監視領域11を異なる時刻(本実施形態では現時点)に撮像して取得した熱画像25である第2の熱画像とを比較する。本実施形態では、第2の熱画像を、1秒前、10秒前、30秒前、1分前、10分前に撮像して取得した5つの第1の熱画像とそれぞれ比較する。詳述すると、CPUは、第1の熱画像の各ピクセルにおける温度と第2の熱画像の各ピクセルにおける温度との差分(温度差)を算出する。そして、各ピクセルにおける温度差(温度変化)を示す温度差情報を、熱画像25に含まれる温度情報とする。その後、全てのピクセルにおいて温度差が算出されると、CPUは、温度差が第1の基準温度(本実施形態では100℃)よりも高いピクセルがあるか否かを判定する。
【0049】
そして、可視画像判定手段による判定結果及び第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合、CPUは、ステップS13において、対応する監視領域11で火災が発生したと判断する。続くステップS14において、CPUは、モニター31に駆動信号を出力し、火災が発生した旨(例えば、「エリアAにおいて火災発生」という文字)をモニター31に表示させる制御を行う。これにより、対応する監視領域11での火災の発生が管理者に報知される。それとともに、CPUは、警報器32に駆動信号を出力し、警報器32を作動させる制御を行う。これにより、警報器32のライト(発光手段)の点灯や、警報器32のアラーム(音声出力手段)による温度の報知が行われ、対応する監視領域11での火災の発生が管理者に報知される。即ち、モニター31及び警報器32は、『火災報知手段』としての機能を有している。
【0050】
次に、不審者A4(人間A3)を検知する方法を説明する。
【0051】
まず、
図8のステップS21において、『可視画像判定手段』であるCPUは、可視画像24に人間A3が映っているか否かを判定する。詳述すると、『学習手段』であるCPUは、可視カメラ21が取得した可視画像24の画像データに基づいて、可視画像24に人間A3が映っていると判定する方法を予め学習し、学習結果を得る。そして、CPUは、得られた学習結果を第2の学習済データとしてRAM(記憶手段)に記憶する。その結果、CPUは、RAMに記憶されている第2の学習済データに基づいて、可視画像24に人間A3が映っているか否かを判定することができる。
【0052】
続くステップS22において、『第2の熱画像判定手段』であるCPUは、熱画像25に含まれる温度情報を第2の基準温度に基づいて判定することにより、熱画像25に人間A3が映っているか否かを判定する。詳述すると、『学習手段』であるCPUは、サーモカメラ22が取得した熱画像25の画像データに基づいて、熱画像25に人間A3が映っていると判定する方法を予め学習し、学習結果を得る。そして、CPUは、得られた学習結果を第3の学習済データとしてRAM(記憶手段)に記憶する。その結果、CPUは、RAMに記憶されている第3の学習済データに基づいて、熱画像25に人間A3が映っているか否かを判定することができる。本実施形態において、CPUは、熱画像25の各ピクセルにおける温度に、周囲との温度差(第2の基準温度)を有する領域が存在するか否かを判定する。そして、周囲との温度差を有する領域が存在する場合、CPUは、その領域を人間A3の形であると認識する。
【0053】
そして、可視画像判定手段による判定結果及び第2の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合、CPUは、ステップS23において、可視画像24に映る人間A3が不審者A4(
図5参照)であるか否かを判定する。具体的に言うと、『可視画像判定手段』であるCPUは、監視領域11を一定期間撮像して得た可視画像24に映る人間A3の体の動きを算出し、算出した体の動きに基づいて、可視画像24に映る人間A3を不審者A4であると判定する。詳述すると、CPUは、体の動きに基づいて人間A3を不審者A4であると判定する方法を予め学習し、学習結果を得る。そして、CPUは、得られた学習結果を第4の学習済データとしてRAMに記憶する。その結果、CPUは、RAMに記憶されている第4の学習済データに基づいて、可視画像24に映る人間A3の動きが不審な動きであるか否か、即ち、可視画像24に映る人間A3が不審者A4であるか否かを判定することができる。なお、CPUは、通常人間A3がいない場所に人間A3がいた場合や、人間A3がビル10の外から窓を開ける動作をした場合においても、その人間A3を不審者A4であると判定してもよい。
【0054】
その後、可視画像判定手段によって人間A3の動きが不審な動きであると判定された場合、即ち、人間A3が不審者A4であると判定された場合、CPUは、ステップS24において、対応する監視領域11での不審者A4の存在を報知する。具体的に言うと、CPUは、モニター31に駆動信号を出力し、不審者A4が存在する旨(例えば、「不審者発見」という文字)をモニター31に表示させる制御を行う。これにより、対応する監視領域11での不審者A4の存在が管理者に報知される。それとともに、CPUは、警報器32に駆動信号を出力し、警報器32を作動させる制御を行う。これにより、警報器32のライト(発光手段)の点灯や、警報器32のアラーム(音声出力手段)による報知が行われ、対応する監視領域11での不審者A4の存在が管理者に報知される。即ち、モニター31及び警報器32は、『不審者報知手段』としての機能を有している。なお、可視画像判定手段によって人間A3の動きが不審な動きではないと判定された場合、即ち、人間A3が不審者A4ではないと判定された場合には、CPUは、不審者A4が存在する旨をモニター31に表示させる制御や、警報器32を作動させる制御を行わないようになっている。
【0055】
次に、設備不具合を検知する方法を説明する。
【0056】
まず、検知システム1は、サーモカメラ22を用いて、ビル10内に設置された複数の用役設備(電源設備、ボイラー、冷凍機、空調機など)の表面温度を常時監視する。例えば、特定の用役設備において、その用役設備が存在する監視領域11に設けられたサーモカメラ22は、用役設備を撮像して熱画像25を取得する。なお、サーモカメラ22による用役設備の撮像は、定期的に行われる。
【0057】
そして、用役設備の撮像が終了する度に、サーモカメラ22は、取得した熱画像25の画像データをCPUに出力する。なお、CPUは、入力された画像データが示す熱画像25をRAMに記憶する。
【0058】
次に、
図8のステップS31において、『第3の熱画像判定手段』であるCPUは、熱画像25に含まれる温度情報を第3の基準温度に基づいて判定することにより、用役設備に不具合が生じたか否かを判定する。具体的に言うと、CPUは、用役設備が存在する監視領域11を過去に撮像して取得した熱画像25である第1の熱画像と、用役設備が存在する監視領域11を異なる時刻または期間(本実施形態では現時点)に撮像して取得した熱画像25である第2の熱画像とを比較する。本実施形態では、第2の熱画像を、1秒前、10秒前、30秒前、1分前、10分前に撮像して取得した5つの第1の熱画像とそれぞれ比較する。さらに、本実施形態では、第2の熱画像を、1日前、1週間前、1か月前、1年前の同時刻に撮像して取得した4つの第1の熱画像とそれぞれ比較する。詳述すると、CPUは、第1の熱画像の各ピクセルにおける温度と第2の熱画像の各ピクセルにおける温度との差分(温度差)を算出する。そして、各ピクセルにおける温度差(温度変化)を示す温度差情報を、熱画像25に含まれる温度情報とする。その後、全てのピクセルにおいて温度差が算出されると、CPUは、温度差が第3の基準温度(本実施形態では50℃)よりも高いピクセルがあるか否かを判定する。そして、各ピクセルにおける温度差に第3の基準温度よりも高いものがある場合、CPUは、対応する用役設備に設備不具合が生じていると判定する。
【0059】
そして、第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合、即ち、各ピクセルにおける温度差に第3の基準温度よりも高いものがあると判定された場合、CPUは、ステップS32において、対応する監視領域11での用役設備の設備不具合を報知する。具体的に言うと、CPUは、モニター31に駆動信号を出力し、設備不具合が発生した旨(例えば、「設備温度変化あり」という文字)をモニター31に表示させる制御を行う。これにより、対応する監視領域11において、用役設備での設備不具合の発生が管理者に報知される。それとともに、CPUは、警報器32に駆動信号を出力し、警報器32を作動させる制御を行う。これにより、警報器32のライト(発光手段)の点灯や、警報器32のアラーム(音声出力手段)による報知が行われ、対応する監視領域11において、用役設備での設備不具合の発生が管理者に報知される。即ち、モニター31及び警報器32は、『設備不具合報知手段』としての機能を有している。なお、第3の熱画像判定手段によって、各ピクセルにおける温度差に第3の基準温度よりも高いものがないと判定された場合には、CPUは、設備不具合が発生した旨をモニター31に表示させる制御や、警報器32を作動させる制御を行わないようになっている。
【0060】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0061】
(1)本実施形態の検知システム1では、可視画像判定手段(CPU)が、可視画像24に炎A1、煙A2及び不審者A4の少なくとも1つが映っているか否かを判定する。また、第1の熱画像判定手段(CPU)は、撮像時刻が異なる2つの熱画像25(第1の熱画像及び第2の熱画像)の各ピクセルにおける温度差に、第1の基準温度よりも高いものがあるか否かを判定する。さらに、第2の熱画像判定手段(CPU)は、熱画像25の各ピクセルにおける温度に、周囲との温度差(第2の基準温度)を有する領域が存在するか否かを判定し、第3の熱画像判定手段(CPU)は、2つの熱画像25の各ピクセルにおける温度差に、第3の基準温度よりも高いものがあるか否かを判定する。そして、モニター31及び警報器32は、可視画像判定手段による判定結果及び第1の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、火災の発生を報知する。また、モニター31及び警報器32は、可視画像判定手段による判定結果及び第2の熱画像判定手段による判定結果の少なくとも一方が肯定となる場合に、不審者A4の存在を報知し、第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となる場合に、設備不具合の発生を報知する。
【0062】
従って、本実施形態の検知システム1では、発火源から煙A2が流れてきたり、周辺の空気が高温になったりした状況になくても、監視領域11を撮像した画像24,25に、火災及び不審者A4や、設備不具合が発生している様子が映っていれば、画像24,25に基づいて火災、不審者A4及び設備不具合を確実に検知することができる。しかも、検知システム1は、監視領域11を撮像した画像24,25に基づいて、監視領域11内の火災、不審者A4及び設備不具合を迅速に検知することができる。また、モニター31及び警報器32は、複数存在する監視領域11のうち、可視画像判定手段や第1の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域11において、火災の発生を報知するため、発火源の特定が容易になる。さらに、モニター31及び警報器32は、可視画像判定手段や第2の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域11において、不審者A4の存在を報知するため、不審者A4の位置の特定が容易になる。また、モニター31及び警報器32は、第3の熱画像判定手段による判定結果が肯定となった監視領域11において、設備不具合の発生を報知するため、設備不具合が発生した位置の特性が容易になる。
【0063】
(2)本実施形態の検知システム1は、2種類のカメラ21,22を用いて取得した画像24,25に基づいて、3つの機能(火災を検知する機能、不審者A4を検知する機能、設備不具合を検知する機能)を制御している。よって、それぞれの機能ごとにシステムを準備する場合よりも、検知システム1を低コストで成立させることができる。
【0064】
(3)本実施形態では、熱画像25の各ピクセルにおける温度差に第3の基準温度よりも高いものがあること、即ち、用役設備の表面温度が第3の基準温度を超えて上昇したことを契機として、CPUは、用役設備での設備不具合の発生を報知する。このため、管理者は、用役設備の故障、例えば、ボイラー壁面に生じた亀裂からボイラー内の熱風が外部に漏れること、モータの経年劣化により長期に亘って摩擦熱が発生して発火すること、などを未然に知ることができる。
【0065】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、第1の熱画像(熱画像25)が、監視領域11を1秒前、10秒前、30秒前、1分前、10分前、1日前、1週間前、1か月前、1年前に撮像して取得した画像であり、第2の熱画像(熱画像25)が、監視領域11の現時点での画像であった。しかし、第1の熱画像を取得する時刻または期間は、適宜変更可能である。具体的に言うと、第1の熱画像は、監視領域11を例えば2週間前や6か月前等に撮像して取得した画像であってもよい。
【0067】
・上記実施形態では、熱画像25同士(具体的には、第1の熱画像と第2の熱画像)を比較して得た温度差(温度差情報)が、第1の基準温度(ここでは100℃)を超えているか否かを判断していた。しかし、第1の熱画像と第2の熱画像とを比較するのでなく、熱画像25の各ピクセルにおける温度(即ち、温度差ではなく実際の温度)に、第1の基準温度(例えば100℃)を超えるものがあるか否かを判断してもよい。同様に、上記実施形態では、温度差が第3の基準温度(ここでは50℃)を超えているか否かを判断していたが、熱画像25の各ピクセルにおける実際の温度に第3の基準温度(例えば50℃)を超えるものがあるか否かを判断してもよい。
【0068】
・上記実施形態の可視カメラ21は、動画を撮像するビデオカメラであったが、静止画を撮像するカメラであってもよい。また、上記実施形態の可視カメラ21は、単眼カメラであったが、複眼カメラ等の他のカメラであってもよい。さらに、映像の奥行きを測定できるデプスカメラやステレオカメラを用いてもよい。
【0069】
また、可視カメラ21は、ビル10内に元々設置されている既存のカメラを流用したものであってもよい。このようにすれば、火災を検知するために多数の可視カメラ21を設置しなくても済む。その結果、検知システム1の設置コストを大幅に低減することができる。
【0070】
・上記実施形態のCPUは、可視画像24に不審者A4が映っているか否かを判定するとともに、熱画像25に不審者A4が映っているか否かを判定することにより、不審者A4の有無を確認していた(
図8に示すステップS21,S22参照)。しかし、可視画像24に不審者A4が映っているか否かを判定することのみによって、不審者A4の有無を確認してもよいし、熱画像25に不審者A4が映っているか否かを判定することのみによって、不審者A4の有無を確認してもよい。
【0071】
・上記実施形態のCPUは、用役設備の表面温度が第3の基準温度を超えて上昇したことを契機として、その用役設備での設備不具合の発生を報知する制御を行っていた。しかし、CPUは、用役設備の表面温度が所定の基準温度を超えて下降したことを契機として、その用役設備での設備不具合の発生を報知する制御を行ってもよい。
【0072】
・上記実施形態のCPUは、不審者A4の存在を認識した場合に、検知システム1の外部への報知を行うものであってもよい。なお、不審者A4の存在が報知される検知システム1の外部としては、警備会社、警察署、管理者が所持するスマートフォン等を挙げることができる。また、上記実施形態のCPUは、設備不具合の発生を認識した場合にも、検知システム1の外部への報知を行うものであってもよい。なお、設備不具合の発生が報知される検知システム1の外部としては、設備管理会社、管理者が所持するスマートフォン等を挙げることができる。
【0073】
・上記実施形態では、可視画像24と熱画像25との位置合わせに際して、可視カメラ21及びサーモカメラ22が、マーカーボード60を加熱した状態で撮像していた。しかし、可視カメラ21及びサーモカメラ22は、マーカーボード60を冷却した状態で撮像してもよい。また、サーモカメラ22が、マーカーボード60を加熱または冷却した状態で撮像する一方、可視カメラ21は、マーカーボード60を加熱も冷却もしない状態で撮像するものであってもよい。なお、マーカーボード60は、内部にヒーターやクーラーを有していてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、二次元的なマーカーボード60を用いて、可視画像24と熱画像25との位置合わせを行っていた。しかし、両画像24,25の位置合わせに、監視領域11内に存在する突起等の三次元的なものを用いてもよい。また、ArUcoマーカー、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)、AprilTag等の二次元的なマーカーや、絵、文字、記号等の他の二次元的なものを用いて、両画像24,25の位置合わせを行ってもよい。
【0075】
・上記実施形態の検知システム1は、ビル10において火災、不審者A4及び設備不具合を検知するシステムであったが、工場、病院、住宅、公共施設等の建物全般において、火災、不審者A4及び設備不具合を検知するシステムであってもよい。
【0076】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0077】
(1)請求項2において、前記温度情報は、前記第2の熱画像が示す温度が前記第1の熱画像が示す温度よりも高い場合に算出される前記温度差情報であることを特徴とする火災及び不審者検知システム。
【0078】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記表示手段に俯瞰平面の画像を表示するとともに、その画像上に、炎を示すアイコンと、不審者を示すアイコンと、前記可視画像撮像手段及び前記熱画像撮像手段を有する撮像手段群を示すアイコンとが表示されることを特徴とする火災及び不審者検知システム。
【0079】
(3)請求項7において、前記温度情報は、前記第2の熱画像が示す温度が前記第1の熱画像が示す温度よりも高い場合に算出される前記温度差情報であることを特徴とする火災及び設備不具合検知システム。
【符号の説明】
【0080】
1…火災及び不審者検知システム、火災及び設備不具合検知システムとしての検知システム
11…監視領域
21…可視画像撮像手段としての可視カメラ
22…熱画像撮像手段としてのサーモカメラ
24…可視画像
25…熱画像
31…表示手段、火災報知手段、不審者報知手段及び設備不具合報知手段としてのモニター
32…火災報知手段、不審者報知手段及び設備不具合報知手段としての警報器
60…マーカーボード
61…貫通孔
A1…炎
A2…煙
A3…生命体としての人間
A4…不審者