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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120762
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】金属パネル
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
E04F13/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023796
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】521436108
【氏名又は名称】村上 勇人
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】村上 勇人
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA00
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA02
2E110CA04
2E110CA07
2E110CB02
2E110DA12
2E110DC02
2E110DC12
2E110EA09
2E110GA33W
2E110GA37X
2E110GB01W
2E110GB02W
2E110GB05W
2E110GB06W
2E110GB16X
2E110GB17X
(57)【要約】
【課題】金属化粧板と芯材との一体化に接着剤が不要となる金属パネルを提供する。
【解決手段】金属パネル1は、金属化粧板10と、金属化粧板10の裏面に取り付けられる板状の芯材20と、を備え、金属化粧板10は、該金属化粧板10の表面を構成し芯材20が裏側に重ねられる本体部11と、該本体部11の下縁部から裏側に突出して芯材20を下側から支持する下側支持部13と、本体部11の両側の側縁部からそれぞれ裏側に突出して横方向内側に開放する溝部15を形成するように折り返されて芯材20を裏側から支持する一対の折り返し部14とを備え、それぞれの溝部15に装着されて芯材20を横方向両側から位置決めする一対の位置決め部材30を更に備え、芯材20の下端部22は、芯材20の厚さ方向において、本体部11側が鋭角、本体部11とは反対側が鈍角となる傾斜底面を形成している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内壁材として用いられる金属パネルであって、
金属化粧板と、
前記金属化粧板の裏面に取り付けられる板状の芯材と、を備え、
前記金属化粧板は、該金属化粧板の表面を構成し前記芯材が裏側に重ねられる本体部と、該本体部の下縁部から裏側に突出して前記芯材を下側から支持する下側支持部と、前記本体部の両側の側縁部からそれぞれ裏側に突出して横方向内側に開放する溝部を形成するように折り返されて前記芯材を裏側から支持する一対の折り返し部とを備え、
それぞれの前記溝部に装着されて前記芯材を横方向両側から位置決めする一対の位置決め部材を更に備え、
前記芯材の下端部は、前記芯材の厚さ方向において、前記本体部側が鋭角、前記本体部とは反対側が鈍角となる傾斜底面を形成していることを特徴とする金属パネル。
【請求項2】
前記折り返し部は、前記位置決め部材に対向配置されて該位置決め部材の長さ方向に延びる位置決め部材支持部と、該位置決め部材支持部の複数箇所から横方向内側に張り出して前記芯材の裏側に対向配置される複数の芯材支持部とを備え、
前記複数の芯材支持部は、裏側から見たときに、前記芯材の中心部を中心として上下左右に離隔した4箇所に設けられ、互いに上下に対向する側の縁部が、前記芯材の中心部に対向する向きで水平方向に対して傾斜している請求項1に記載の金属パネル。
【請求項3】
前記芯材は、前記本体部側に凹になる向きで反っている請求項1又は2に記載の金属パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化粧板および芯材を有する金属パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内壁材として、金属パネルが用いられることがある。金属パネルは、金属化粧板と、金属化粧板を裏側から支持する芯材とで構成される。一般に、金属化粧板としては鋼板が用いられ、芯材としては石膏ボードが用いられる。金属化粧板には様々な塗装および様々な加工を施すことが可能であり、これにより、意匠性の高い内壁を実現できる。なお、特許文献1には、金属パネルの塗装の一例として、シルクスクリーン印刷に関する技術が開示されている。
【0003】
従来、内装用の金属パネルでは、金属化粧板と芯材との貼り合わせに接着剤が用いられている。また、従来、壁下地に対する金属パネルの取り付けにも接着剤が用いられている。例えば、軽量鉄骨の壁下地に張られた石膏ボードに対して、金属パネルの芯材が接着剤を用いて貼り付けられる。なお、壁下地に対する芯材の接着は、金属化粧板への芯材の貼り合わせの後に行われることもあるし、この貼り合わせの前に行われることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6850576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内壁材として用いられる従来の金属パネルでは、金属化粧板と芯材との一体化、及び、壁下地に対する金属パネルの取り付けに接着剤が用いられることにより、次のような様々な課題がある。
【0006】
まず、内壁の広範囲に塗布された接着剤は、室内空気の汚染、及び火災時の有毒ガス発生の要因になるため、室内環境の向上を図る上で不利になる。
【0007】
また、接着剤により一体化された金属化粧板と芯材とを引き剥がすことは困難であるため、金属化粧板のみ又は芯材のみを交換することができない。そのため、金属化粧板又は芯材の一方が劣化又は損傷した場合、金属パネルごと廃棄しなければならない。
【0008】
また、接着剤を用いて壁下地に貼り付けられた金属パネルは、壁下地からきれいに取り外すことができない。そのため、内装施工時において、金属パネルの貼り直しを行うことができず、熟練の技術を要する。また、金属パネルから別の内壁材への交換が行われるとき、取り外された金属パネルを再利用することができない問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、金属化粧板と芯材との一体化に接着剤が不要となることで、室内環境の改善に加えて、金属化粧板と芯材との分別およびリサイクルを容易に実現できる画期的な金属パネルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
建物の内壁材として用いられる金属パネルであって、
金属化粧板と、
前記金属化粧板の裏面に取り付けられる板状の芯材と、を備え、
前記金属化粧板は、該金属化粧板の表面を構成し前記芯材が裏側に重ねられる本体部と、該本体部の下縁部から裏側に突出して前記芯材を下側から支持する下側支持部と、前記本体部の両側の側縁部からそれぞれ裏側に突出して横方向内側に開放する溝部を形成するように折り返されて前記芯材を裏側から支持する一対の折り返し部とを備え、
それぞれの前記溝部に装着されて前記芯材を横方向両側から位置決めする一対の位置決め部材を更に備え、
前記芯材の下端部は、前記芯材の厚さ方向において、前記本体部側が鋭角、前記本体部とは反対側が鈍角となる傾斜底面を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る金属パネルによれば、一対の位置決め部材によって横方向両側から位置決めされた芯材が、金属化粧板の下側支持部及び一対の折り返し部によって下側及び裏側から支持されることで、接着剤を用いることなく金属化粧板に芯材を一体化することができる。そのため、揮発性有機化合物の不使用による室内環境の改善を実現できる。また、接着剤の不使用により、金属化粧板と芯材とを容易に取り外すことができる。そのため、建物のリニューアル工事および解体工事の際、金属化粧板と芯材をそれぞれリサイクルすることができ、産業廃棄物の発生を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る金属パネルを表面側から見た斜視図である。
図2】同金属パネルを裏面側から見た斜視図である。
図3】同金属パネルの分解斜視図である。
図4】同金属パネルの製造工程を示す図である。
図5】同金属パネルの製造工程を示す図である。
図6】同金属パネルの製造工程を示す図である。
図7】同金属パネルを裏面側から見た背面図である。
図8】同金属パネルの内部を上側から見た図7のA-A線断面図である。
図9】同金属パネルの内部を横方向から見た図7のB-B線断面図である。
図10】内壁の壁下地を示す正面図である。
図11】壁下地に下地鋼板が取り付けられた状態を示す正面図である。
図12】壁下地にフロント部材が取り付けられた状態を示す正面図である。
図13】フロント部材に金属パネルを係合させる工程を示す正面図である。
図14】同工程を示す図13のC-C線断面図である。
図15】フロント部材に金属パネルが係合された状態を示す図13のD-D線断面図である。
図16】壁下地に金属パネルの下端部が固定された状態を示す図13のE-E線断面図である。
図17】壁下地にフロント部材と巾木が取り付けられた状態を示す正面図である。
図18】フロント部材と巾木に金属パネルを係合させる工程を示す正面図である。
図19】巾木に金属パネルが係合された状態を示す図18のF-F線断面図である。
図20】変形例における巾木と金属パネルとの係合状態を示す図19と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る金属パネル及びその製造方法、並びに、該金属パネルを内壁材として用いた内壁構造及びその施工方法について説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
各図面において、矢印Xで示される方向は、建物の内壁に取り付けられた姿勢での金属パネルの横方向(幅方向)であり、矢印Yで示される方向は、同姿勢での金属パネルの奥行方向(厚さ方向)であり、矢印Zで示される方向は、同姿勢での金属パネルの上下方向(高さ方向)である。
【0015】
[金属パネルの構成部材]
図1図3を参照しながら、本実施形態に係る金属パネル1の構成部材について説明する。図1及び図2は、組み立てられた状態の金属パネル1を示し、図3は、金属パネル1の構成部材10,20,30を分解して示している。
【0016】
図1図3に示すように、金属パネル1は、金属化粧板10と、金属化粧板10の裏面に取り付けられる板状の芯材20と、芯材20を横方向Xに位置決めする一対の位置決め部材30とを備えている。
【0017】
金属化粧板10は、表面に各種塗装及び/又は各種加工が施された金属板で構成されている。金属化粧板10の素材としては、各種鋼材、アルミニウム合金、真鍮、又はその他の金属が用いられる。金属化粧板10は、均一な厚さを有する。金属化粧板10の厚さは、例えば、0.6mm程度である。
【0018】
金属化粧板10は、概ね長方形状の金属板の周縁部を裏面側に屈曲させるように成型加工されることで、裏面側に開放した浅い箱状に形成されている。金属化粧板10は、その表面を構成する本体部11と、本体部11の上縁部から裏側に突出したフック部12と、本体部11の下縁部から裏側に突出した下側支持部13と、本体部11の両側の側縁部からそれぞれ裏側に突出した一対の折り返し部14とを備えている。
【0019】
本体部11は長方形の平板状部である。本体部11の裏側には芯材20が重ねられる。
【0020】
フック部12は、後述する壁下地50のフロント部材71に掛けるための部分である(図13図15参照)。フック部12は、本体部11よりも横方向Xの寸法が短く、本体部11の横方向Xの両端部には設けられていない。フック部12は、本体部11の上縁部から奥行方向Yの裏側に延びる上面部12aと、上面部12aの先端部から下方に延びる上側舌状部12bとを備えている。横方向Xから見た上面部12aと上側舌状部12bとの間の角度R1(図9参照)は、直角よりも僅かに大きいことが好ましく、例えば92度とされている。上側舌状部12bは、金属パネル1の裏面の上端部に配置されている。上側舌状部12bの上下方向Zの長さは、上面部12aの奥行方向Yの幅よりも短くなっている。なお、上側舌状部12bは、横方向Xにおいて、フック部12の全幅に亘って連続して設けられてもよいが、切り欠きを挟んで断続的に設けられてもよい。
【0021】
下側支持部13は、芯材20を下側から支持する部分である。下側支持部13は、横方向Xにおいて本体部11の全幅に亘って設けられている。下側支持部13は、本体部11の下縁部から奥行方向Yの裏側に延びる支持面部13aと、支持面部13aの先端部から下方に延びる下側舌状部13bとを備えている。下側舌状部13bは、後述のように壁下地50に取り付けられる被取付部である(図16及び図19参照)。横方向Xから見た支持面部13aと下側舌状部13bとの間の角度R2(図9参照)は直角であるが、直角よりも僅かに大きくてもよい。下側舌状部13bは、金属パネル1の裏面の下端部に配置されている。下側舌状部13bの上下方向Zの長さは、支持面部13aの奥行方向Yの幅よりも短くなっている。なお、下側舌状部13bは、横方向Xにおいて、下側支持部13の全幅に亘って連続して設けられてもよいが、切り欠きを挟んで断続的に設けられてもよい。
【0022】
折り返し部14は、芯材20の側縁部および位置決め部材30を裏側から支持する部分である。折り返し部14は、上下方向Zにおいて下側支持部13の直上部から本体部11の上縁部にかけて連続して設けられている。折り返し部14は、本体部11の側縁部から奥行方向Yの裏側に延びる側面部14aと、側面部14aの先端部から横方向Xの内側に延びる位置決め部材支持部14bと、位置決め部材支持部14bから更に横方向Xの内側に張り出す複数の芯材支持部14cとを備えている。
【0023】
側面部14a及び位置決め部材支持部14bは、上下方向Zにおいて折り返し部14の全長に亘って連続して設けられている。これにより、側面部14a、位置決め部材支持部14b、及び本体部11の側縁部との間に、横方向Xの内側に開放する溝部15が上下方向Zに連続して形成されている。この溝部15を構成する本体部11の一部、側面部14a、及び位置決め部材支持部14bのそれぞれは、後述のように溝部15に装着された位置決め部材30に対向し且つ位置決め部材30の長さ方向に延びるように配置される。
【0024】
溝部15の下端は、下側支持部13によって塞がれている。溝部15の上端は、開放されており、位置決め部材30を挿入するための挿入口16を形成している。ここで、上述のフック部12は、挿入口16よりも横方向Xの内側に設けられているため、挿入口16への位置決め部材30の差し込みに支障を来さない。
【0025】
芯材支持部14cは、図7に示すように、裏側から見たときに、芯材20の中心部を中心として上下左右に離隔した4箇所に設けられている。芯材支持部14cは、互いに上下に対向する側の縁部が、芯材20の中心部に対向する向きで水平方向に対して傾斜している。換言すると、裏側から見たときに、左上に配置された芯材支持部14cの下側の縁部は左下から右上へ延び、右上に配置された芯材支持部14cの下側の縁部は右下から左上へ延び、左下に配置された芯材支持部14cの上側の縁部は左上から右下へ延び、右下に配置された芯材支持部14cの上側の縁部は右上から左下へ延びている。水平方向に対する傾斜角は45°とすることが好ましい。上記のように芯材支持部14cの縁部を傾斜させることで、芯材20の中心部に、金属化粧板10の本体部11の側に凹になる向きで反る方向の応力が生じやすくなり、芯材20が金属化粧板10の本体部11の側に凸に反ることにより金属パネル1の表側の平面度が低下するのを防ぐことができる。上下方向Zにおいて、各芯材支持部14cの長さは、隣接する芯材支持部14c間の間隔よりも短い。
【0026】
芯材20は、規定寸法を有する長方形の板状部材である。芯材20としては、例えば石膏ボードが用いられるが、その他の素材を用いてもよい。芯材20として用いられる石膏ボード以外の素材の具体例としては、セラミックハニカム等のハニカムコア、及び、ケイ酸カルシウム板等が挙げられる。図9に示すように、芯材20の下端部22は、芯材20の厚さ方向において、金属化粧板10の本体部11側が鋭角、本体部11とは反対側が鈍角となる傾斜底面を形成している。これにより、芯材20は、図10に示す壁下地50に寄りかかった状態となるため、芯材20が金属化粧板10を裏側から押すことによって生じる金属パネル1の表側の平面度の低下を防ぐことができる。傾斜底面は、平面状である必要はなく、例えば、水平方向に対する傾斜角を、金属化粧板10の本体部11側において小さくし、反対側において大きくしても良い。
【0027】
芯材20の厚さは、金属化粧板10の厚さよりも大きい。上下方向Zにおいて、芯材20の高さは、金属化粧板10の本体部11の高さよりも小さい。芯材20の下端部22は、金属化粧板10の下側支持部13の支持面部13aによって下側から支持される。芯材20の上縁部21は、金属化粧板10のフック部12よりも下方において、フック部12の上面部12aに対向するように配置される。芯材3は、金属化粧板10の本体部11側に凹になる向きで反っていることが好ましい。これにより、芯材20が金属化粧板10の本体部11側に凸になる向きで反り、金属化粧板10を裏側から押すことによって生じる金属パネル1の表側の平面度の低下を防ぐことができる。
【0028】
横方向Xにおいて、芯材20の幅は、金属化粧板10の本体部11の幅よりも小さい。芯材20のそれぞれの側縁部23,24は、金属化粧板10の溝部15に対して横方向Xの内側に隣接して配置される。横方向Xにおいて、金属化粧板10の一方の折り返し部14の芯材支持部14cから他方の折り返し部14の芯材支持部14cまでの間隔は、芯材20の幅よりも小さい。これにより、芯材20の側縁部23,24には、奥行方向Yの裏側から芯材支持部14cが対向配置され得る。つまり、芯材20は、芯材支持部14cによって裏側から支持されるように芯材支持部14cに係合可能となっている。
【0029】
図3に示すように、位置決め部材30は、例えば、棒状の鋼材からなる。本実施形態では、位置決め部材30として、溝形鋼が用いられる。ただし、位置決め部材30の断面形状は限定されるものでなく、例えば、位置決め部材30として角パイプが用いられてもよい。
【0030】
位置決め部材30は、上下方向Zに延びる姿勢で、金属化粧板10の溝部15に装着される。つまり、位置決め部材30は、溝部15の長さ方向に延びるように配置された状態で金属化粧板10に取り付けられる。上下方向Zにおいて、位置決め部材30は、溝部15と略同じ長さを有する。また、位置決め部材30は、横方向X及び奥行方向Yにおいて、溝部15と略同じ寸法を有する。
【0031】
位置決め部材30は、横方向Xに対して直角な面に沿って配置されるベース部31と、ベース部31の奥行方向Yの両端からそれぞれ横方向Xに延びる一対の延長部32,33とを備えている。ベース部31は、芯材20の側縁部23,24に沿って配置される。また、ベース部31は、金属化粧板10の側面部14aに対して横方向Xに間隔を空けて対向配置される。一方の延長部32は、金属化粧板10の本体部11に沿って配置され、他方の延長部33は、金属化粧板10の位置決め部材支持部14bに沿って配置される。一対の延長部32,33の先端部は、金属化粧板10の側面部14aに沿って配置される。
【0032】
[金属パネルの製造方法]
主として図4図6を参照しながら、本実施形態に係る金属パネル1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、準備ステップとして、上述した金属化粧板10、芯材20、及び一対の位置決め部材30(図3参照)を用意する。金属化粧板10については、例えば板金加工によってフック部12、下側支持部13、及び一対の折り返し部14が形成されたものを用意する。芯材20及び位置決め部材30については、それぞれ規定寸法のものを用意する。
【0034】
続いて、作業台100の上に金属化粧板10を裏向きに載置して、図4に示す芯材載置ステップ、図5に示す位置合わせステップ、及び、図6に示す位置決めステップをこの順で行う。
【0035】
図4に示す芯材載置ステップでは、芯材20の凹側を金属化粧板10側に向け、芯材20の一方の側縁部23を、金属化粧板10の一方(図の左側)の折り返し部14に差し込みながら、金属化粧板10の本体部11の裏面に芯材20を重ねるように載置する。このとき、芯材20の側縁部23を金属化粧板10の溝部15の中まで差し込む。また、このとき、芯材20の下端部22を、金属化粧板10の下側支持部13の支持面部13aに対向するように配置する。
【0036】
続いて、図5に示す位置合わせステップでは、芯材20の一方の側縁部23と金属化粧板10の一方(図の左側)の折り返し部14との係合を維持しながら、芯材20を他方(図の右側)の折り返し部14に向かって横方向Xにスライドさせて、芯材20の他方の側縁部24を他方(図の右側)の折り返し部14に係合させる。
【0037】
これにより、金属化粧板10と芯材20とは、両側の折り返し部14に芯材20が係合されるように横方向Xに位置合わせされる。このとき、芯材20のそれぞれの側縁部23,24は、複数の芯材支持部14cに係合され、金属化粧板10の溝部15からは外れた状態となっている。つまり、芯材20の側方に位置する溝部15には、隙間が生じた状態となっている。
【0038】
続いて、図6に示す位置決めステップでは、金属化粧板10の両側の溝部15に生じた隙間にそれぞれ位置決め部材30を差し込む。具体的には、各位置決め部材30を、所定の向きで挿入口16から溝部15に挿入する。2本の位置決め部材30を、支持面部13aに当たるまで溝部15に差し込むことで、位置決め部材30の装着が完了する。このようにして溝部15に装着された一対の位置決め部材30によって、芯材20の横方向Xへの移動が規制される。
【0039】
これにより、金属パネル1が完成する。本実施形態では、以上のようなスイッチバック方式(ケンドン方式)の組み立てが行われることで、接着剤を用いなくても、簡単な作業により金属パネル1を製造することができる。
【0040】
[組み立て状態の金属パネル]
図7図9を参照しながら、組み立て状態の金属パネル1について説明する。
【0041】
図7及び図9に示すように、組み立て状態の金属パネル1において、芯材20及び一対の位置決め部材30は、金属化粧板10の下側支持部13によって下側から支持される。
【0042】
また、図7及び図8に示すように、芯材20は、一対の位置決め部材30によって横方向Xの両側から位置決めされているとともに、金属化粧板10の本体部11と複数の芯材支持部14cとによって奥行方向Yの両側から位置決めされている。これにより、芯材20は、金属化粧板10から脱落しないように金属化粧板10に一体化されている。
【0043】
また、それぞれの位置決め部材30は、金属化粧板10の側面部14aと芯材20の側縁部23,24とによって横方向Xの両側から位置決めされているとともに、金属化粧板10の本体部11と位置決め部材支持部14bとによって奥行方向Yの両側から位置決めされている。これにより、それぞれの位置決め部材30は、金属化粧板10から脱落しないように金属化粧板10に一体化されている。
【0044】
さらに、金属パネル1の両側の側縁部に、鋼材からなる位置決め部材30が取り付けられることで、金属パネル1の剛性が高められている。
【0045】
このように、本実施形態に係る金属パネル1によれば、接着剤を用いることなく、金属化粧板10に対して芯材20及び位置決め部材30を強固に一体化することができる。
【0046】
[内壁の施工方法および内壁構造]
以下、上述の金属パネル1を内壁材として用いる内壁の施工方法および内壁構造について、具体的な施工例を説明する。なお、以下の説明では、上述した金属パネル1を用いる例を説明するが、本発明に係る内壁の施工方法および内壁構造は、上述の金属パネル1以外の金属パネルにも適用可能である。
【0047】
[第1の施工例]
図10図16を参照しながら、第1の施工例について説明する。
【0048】
図10に示すように、まず、壁下地施工ステップとして、金属パネル1が取り付けられる壁下地50が施工される。本実施形態では、軽量鉄骨壁下地51が建物の床面40上に形成される。具体的には、横方向Xに延びる上下のランナー52,53、及び、上下方向Zに延びる複数のスタッド54を組むことで、軽量鉄骨壁下地51が形成される。また、所定高さにおいて、横方向に延びる振れ止め55によってスタッド54間が連結される。
【0049】
続いて、図11及び図12に示すように、壁下地50に金属パネル1を取り付けるための準備ステップが行われる。
【0050】
図11に示す工程では、軽量鉄骨壁下地51の表面の所定高さに、補強用の下地鋼板61,62が固定される。図11に示す例では、上下方向Zの2箇所に下地鋼板61,62が取り付けられる。上側の下地鋼板61は、金属パネル1の上端部に対応する高さに設けられ、下側の下地鋼板62は、金属パネル1の下端部に対応する高さに設けられる。下地鋼板61,62としては、例えば、横方向Xに帯状に延びる鋼板が用いられる。下地鋼板61,62は、例えばビスによって、複数のスタッド54に固定される。
【0051】
続いて、図12に示すように、壁下地50の表面側(軽量鉄骨壁下地51及び下地鋼板61,62の表面側)に石膏ボード70が取り付けられる。壁下地50に取り付けられる石膏ボード70の枚数は、1枚でもよいし、複数枚であってもよい。また、石膏ボード70の取り付けが省略されてもよい。
【0052】
また、壁下地50の表面に、横方向Xに延びるフロント部材71が取り付けられる。具体的に、フロント部材71は、石膏ボード70を介して上側の下地鋼板61に固定される。なお、石膏ボード70が省略される場合、フロント部材71は、下地鋼板61に直接固定される。
【0053】
フロント部材71としては、棒状の鋼材が用いられる。具体的に、図14に示す例では、フロント部材71として溝形鋼が用いられる。ただし、フロント部材71として、その他の形状の鋼材が用いられてもよく、例えば、山形鋼が用いられてもよい。
【0054】
図14に示すフロント部材71は、壁下地50に対向するように奥行方向Yに直角に配置されるベース部72と、ベース部72の上縁部から奥行方向Yの表面側に延びる上側延長部73と、ベース部72の下縁部から奥行方向Yの表面側に延びる下側延長部74とを備えている。
【0055】
ベース部72は、ビス84によって下地鋼板61に固定される。ビス84は、例えば、ベース部72における上下方向Zの中央よりも下側に打ち込まれる。ベース部72と石膏ボード70との間には、スペーサ82が介在される。スペーサ82としては、例えば、ワッシャが用いられる。スペーサ82の厚さは、上側舌状部12bの厚さよりも大きく、例えば、0.8mm程度である。スペーサ82の厚さと上側舌状部12bの厚さとの差は、0.2mm程度であることが好ましい。スペーサ82は、ビス84が通されることにより所定位置に位置決めされる。スペーサ82は、上下方向Zにおいてベース部72の中央よりも下側に配置されるように装着される。このようなスペーサ82を介した固定により、フロント部材71と石膏ボード70との間には、少なくとも上方に開放した上側差し込み口86が形成される。
【0056】
続いて、金属パネル1を壁下地50に取り付ける金属パネル取付ステップが行われる。具体的に、金属パネル取付ステップとしては、上部係合ステップ、位置合わせステップ、下部固定ステップがこの順で行われる。
【0057】
図13及び図14に示すように、上部係合ステップでは、金属パネル1の上端部に設けられたフック部12が、上記の上側差し込み口86に上側から差し込まれる。ここで、上面部12aと上側舌状部12bとの間の角度R1が直角よりも大きくなるようにフック部12が形成されることにより、上側差し込み口86に対して、上側舌状部12bを斜め上方からスムーズに差し込みやすくなる。
【0058】
図15に示すように、フック部12と上側差し込み口86との係合状態において、上側舌状部12bの先端部は、スペーサ82よりも上側に配置され、上側舌状部12bとスペーサ82との干渉が回避される。図15に示す係合状態において、金属パネル1は、横方向Xにスライド移動可能なように壁下地50に支持されている。
【0059】
続く位置合わせステップにおいて、金属パネル1は、その横方向Xの位置が調整されるように横方向Xにスライドされる。これにより、隣接する金属パネル1間の目地の位置が所定位置に合わせられる。
【0060】
金属パネル1の位置合わせが完了すると、下部固定ステップが行われる。図16に示すように、下部固定ステップでは、金属パネル1の下端部に設けられた下側舌状部13bが、ビス88によって壁下地50に固定される。具体的に、下側舌状部13bは、石膏ボード70を介して下側の下地鋼板62に固定される。これにより、金属パネル1は、壁下地50に対して確実に固定される。
【0061】
1枚の金属パネル1について金属パネル取付ステップが完了すると、以降の金属パネル1について、同様の金属パネル取付ステップが順次行われる。
【0062】
以上のような内壁施工によれば、接着剤を用いなくても、簡単な作業により壁下地50に金属パネル1を取り付けることができる。
【0063】
[第2の施工例]
図17図19を参照しながら、第2の施工例について説明する。
【0064】
第2の施工例における壁下地施工ステップでも、上述した第1の施工例と同様、軽量鉄骨壁下地51が形成される(図10参照)。また、準備ステップとして、第1の施工例と同様に、上側の下地鋼板61及び下側の下地鋼板62が軽量鉄骨壁下地51の表面に取り付けられる。
【0065】
図17に示すように、第2の施工例における準備ステップでは、第1の施工例と同様のフロント部材71に加えて、横方向に延びる化粧部材としての巾木90が壁下地50の下端部に取り付けられる。図19に示すように、巾木90は、石膏ボード70との間に、上方に開放した下側差し込み口94が形成されるように、石膏ボード70の表面に取り付けられる。巾木90と石膏ボード70との間には、スペーサ92が介在される。スペーサ92としては、例えば、横方向Xに延びる帯状の板材が用いられる。スペーサ92の厚さは、金属パネル1の下側舌状部13bの厚さよりも大きく、例えば、0.8mm程度である。スペーサ92の厚さと下側舌状部13bの厚さとの差は、0.2mm程度であることが好ましい。スペーサ92は、ビス96によって下側の下地鋼板62に固定される。スペーサ92は、上下方向Zにおいて巾木90よりも小さい幅を有する。スペーサ92の上端は、巾木90の上端よりも下側に配置される。これにより、巾木90の上端部と石膏ボード70との間には、上方に開放した下側差し込み口94が形成される。
【0066】
第2の施工例における金属パネル取付ステップでは、下部係合ステップ及び上部係合ステップが行われ、その後、位置合わせステップが行われる。
【0067】
図18及び図19に示すように、下部係合ステップでは、金属パネル1の下端部に設けられた下側舌状部13bが、石膏ボード70と巾木90との間の下側差し込み口94に上側から差し込まれる。
【0068】
また、下部係合ステップと並行して、上部係合ステップが行われる。上部係合ステップでは、第1の施工例と同様、金属パネル1の上端部に設けられたフック部12が、上側差し込み口86に上側から差し込まれる(図14参照)。
【0069】
下部係合ステップ及び上部係合ステップが完了したとき、金属パネル1は、横方向Xにスライド移動可能なように壁下地50に支持されている。
【0070】
その後、位置合わせステップが第1の施工例と同様に行われ、金属パネル1の横方向Xの位置が調整される。これにより、金属パネル1の取り付けが完了する。
【0071】
第2の施工例によれば、金属パネル1の固定作業が不要になるため、壁下地50に対する金属パネル1の取り付け作業をより簡素化することができる。
【0072】
以上で説明した本実施形態によれば、金属パネル1における金属化粧板10に対する芯材20の一体化、及び、壁下地50に対する金属パネル1の取り付けのいずれにおいても、接着剤を使用しなくてもよい。
【0073】
そのため、接着剤成分を要因とする室内空気の汚染、及び火災時の有毒ガス発生を抑制でき、これにより、室内環境の向上を図る上で有利になる。
【0074】
また、本実施形態に係る金属パネル1では、金属化粧板10から芯材20及び位置決め部材30を容易に取り外すことができる。そのため、金属化粧板10、芯材20、又は位置決め部材30を、必要に応じて交換したり、再利用したりすることができる。
【0075】
さらに、本実施形態によれば、壁下地50に取り付けられた金属パネル1を、壁下地50から簡単に取り外すことができる。そのため、内装施工時において、何度でも金属パネル1を付け直すことができる。よって、作業者の熟練度によらず、高品質の内装施工を実現できる。また、必要に応じて、いつでも金属パネル1を交換したり、再利用したりすることができる。
【0076】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0077】
例えば、上述した第2の施工例では、壁下地50に巾木90が取り付けられた後に、壁下地50に金属パネル1が取り付けられる例を説明したが、壁下地50に金属パネル1が取り付けられた後に、壁下地50に巾木90が取り付けられてもよい。この場合は、上述の上部係合ステップと位置合わせステップとがこの順で行われた後、図20に示すように巾木90の上端部と壁下地50との間に下側舌状部13bを係合させる下部係合ステップが行われる。この場合、下部係合ステップでは、まず、壁下地50の表面に下側舌状部13bが重ねて配置される。続いて、壁下地50及び下側舌状部13bの表面に巾木90が重ねて配置される。これにより、下側舌状部13bの表面には巾木90の上端部が重ねられる。このように下側舌状部13bを介して壁下地50の表面に重ねて配置された巾木90は、下側舌状部13bよりも下側において壁下地50に取り付けられる。これにより、巾木90の上端部と壁下地50との間には、上方に開放した下側差し込み口98が形成され、この下側差し込み口98に下側舌状部13bが差し込まれた状態となる。これにより、壁下地50への金属パネル1の取り付けが完了する。このような施工によっても、上述の第2の施工例と同様の効果が得られる。
【0078】
また、上述した第2の施工例では、化粧部材として巾木90が設けられる例を説明したが、化粧部材として腰壁の見切り材が設けられる場合、該見切り材と壁下地との間に下側差し込み口が形成されてもよい。この場合も、第2の施工例と同様の内装施工が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 金属パネル(内壁材)
10 金属化粧板
11 本体部
12 フック部
12b 上側舌状部
13 下側支持部
13b 下側舌状部(被取付部)
14 折り返し部
14b 位置決め部材支持部
14c 芯材支持部
15 溝部
16 挿入口
20 芯材
21 芯材の上縁部
22 芯材の下端部
23 芯材の一方の側縁部
24 芯材の他方の側縁部
30 位置決め部材
50 壁下地
51 軽量鉄骨壁下地(鉄骨下地)
61,62 下地鋼板
71 フロント部材
82 スペーサ
86 上側差し込み口
90 巾木(化粧部材)
92 スペーサ
94 下側差し込み口
98 下側差し込み口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20