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特開2023-120814感情判定方法、処理装置、情報提示装置、および情報生成装置
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  • 特開-感情判定方法、処理装置、情報提示装置、および情報生成装置 図1
  • 特開-感情判定方法、処理装置、情報提示装置、および情報生成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120814
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】感情判定方法、処理装置、情報提示装置、および情報生成装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20230823BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20230823BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61B5/16 120
G01N21/17 610
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023882
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】田沼 和泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 恒行
(72)【発明者】
【氏名】平松 昂也
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB13
2G059CC18
2G059EE01
2G059HH01
2G059KK02
2G059MM01
4C038KL07
4C038PP03
(57)【要約】
【課題】対象者の覚醒感情に係る判定に要する時間を、当該対象者の負担を増すことなく短縮する。
【解決手段】処理装置11は、第一センサ31により非侵襲的に取得された対象者20の心拍に基づいて、対象者20の心拍変動度を示す第一の値を取得する。処理装置11は、第二センサ32により非侵襲的に取得された対象者20の血中吸光物質による吸光度に基づいて、対象者20の前頭前野の活性度を示す第二の値を取得する。処理装置11は、前記第一の値と前記第二の値に基づいて、対象者20が快覚醒感情を抱いているかを示す第一情報と対象者20が不快覚醒感情を抱いているかを示す第二情報の少なくとも一方を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一センサと第二センサと通信可能に接続された処理装置により実行される対象者の感情を判定する方法であって、
前記第一センサにより非侵襲的に取得された前記対象者の心拍に基づいて、前記対象者の心拍変動度を示す第一の値を取得し、
前記第二センサにより非侵襲的に取得された前記対象者の血中吸光物質による吸光度に基づいて、前記対象者の前頭前野の活性度を示す第二の値を取得し、
前記第一の値と前記第二の値に基づいて、前記対象者が快覚醒感情を抱いているかを示す第一情報と前記対象者が不快覚醒感情を抱いているかを示す第二情報の少なくとも一方を取得する、
感情判定方法。
【請求項2】
前記第二センサは、近赤外分光法を用いて前記吸光度を取得する、
請求項1に記載の感情判定方法。
【請求項3】
前記第二センサは、前記対象者が着用可能なウェアラブル装置に搭載されている、
請求項1または2に記載の感情判定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の感情判定方法を実行可能な処理装置であって、
前記第一センサおよび前記第二センサと通信可能なインタフェースと、
前記第一の値と前記第二の値に基づいて前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方を取得するプロセッサと、
を備えている、
処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記対象者の所在を示す所在情報を取得し、前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方と当該所在情報とに基づいて当該所在に係る付加的情報を生成する、
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記第一センサおよび前記第二センサとの相対位置が可変である、
請求項4または5に記載の処理装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の処理装置により取得された前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方を提示するユーザインタフェースを備えている、
情報提示装置。
【請求項8】
前記ユーザインタフェースは、前記対象者が装備可能なウェアラブル装置に搭載されている、
請求項7に記載の情報提示装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の情報提示装置と通信可能である情報生成装置であって、
前記処理装置により取得された前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方が取得場所に関連付けられた第三情報を複数の対象者について記憶するストレージと、
前記対象者の所在を示す所在情報を取得し、当該所在情報と前記第三情報に基づいて当該所在に関する付加的情報を生成するプロセッサと、
前記付加的情報を前記情報提示装置へ送信する通信インタフェースと、
を備えている、
情報生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の感情を処理装置により判定する方法、および当該方法を実行可能な処理装置に関する。本発明は、当該処理装置により取得された情報を提示するユーザインタフェースを備えた情報提示装置、および当該情報提示装置と通信可能である情報生成装置にも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、血液、尿、唾液などの体液を対象者から採取し、当該体液に含まれる物質に基づいて当該対象者が快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれを抱いているかを判定する方法が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-131318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、対象者の覚醒感情に係る判定に要する時間を、当該対象者の負担を増すことなく短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、第一センサと第二センサと通信可能に接続された処理装置により実行される対象者の感情を判定する方法であって、
前記第一センサにより非侵襲的に取得された前記対象者の心拍に基づいて、前記対象者の心拍変動度を示す第一の値を取得し、
前記第二センサにより非侵襲的に取得された前記対象者の血中吸光物質による吸光度に基づいて、前記対象者の前頭前野の活性度を示す第二の値を取得し、
前記第一の値と前記第二の値に基づいて、前記対象者が快覚醒感情を抱いているかを示す第一情報と前記対象者が不快覚醒感情を抱いているかを示す第二情報の少なくとも一方を取得する。
【0006】
上記のような構成によれば、対象者が覚醒感情を抱いているかについての判定を、当該対象者の心拍変動度と前頭前野の活性度を組み合わせるという新規な手法を通じて処理装置に行なわせることができる。心拍変動度と前頭前野の活性度は非侵襲的に取得可能であり、かつ当該対象者から体液を採取して分析に供する必要もないので、当該対象者の負担を増すことなく判定に要する時間を短縮できる。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、上記の感情判定方法を実行可能な処理装置であって、
前記第一センサおよび前記第二センサと通信可能なインタフェースと、
前記第一の値と前記第二の値に基づいて前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方を取得するプロセッサと、
を備えている。
【0008】
上記の目的を達成するための一態様は、情報提示装置であって、
上記の処理装置により取得された前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方を提示するユーザインタフェースを備えている。
【0009】
上記の目的を達成するための一態様は、上記の情報提示装置と通信可能である情報生成装置であって、
前記処理装置により取得された前記第一情報と前記第二情報の少なくとも一方が取得場所に関連付けられた第三情報を複数の対象者について記憶するストレージと、
前記対象者の所在を示す所在情報を取得し、当該所在情報と前記第三情報に基づいて当該所在に関する付加的情報を生成するプロセッサと、
前記付加的情報を前記情報提示装置へ送信する通信インタフェースと、
を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る情報提示装置の機能構成を例示している。
図2図1の処理装置により実行される処理の流れを例示している。
図3図1の情報提示装置として使用されうるヘルメットを例示している。
図4】一実施形態に係る情報生成装置の機能構成を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面においては、各要素を認識可能な大きさとするために縮尺が適宜変更されている。
【0012】
図1は、一実施形態に係る情報提示装置10の機能構成を例示している。情報提示装置10は、処理装置11とユーザインタフェース12を備えている。処理装置11は、対象者20の感情を判定する処理を実行するように構成されている。ユーザインタフェース12は、処理装置11による判定結果に対応する情報を提示するように構成されている。
【0013】
処理装置11は、第一センサ31と通信可能に接続されうる。接続の態様は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。第一センサ31は、対象者20の心拍を取得可能な構成を備えている。第一センサ31は、心電図法、光電脈波法、血圧計法、および心音図法の少なくとも一つを用いて当該心拍を非侵襲的に取得可能な周知の構成を備えている。
【0014】
心電図法が用いられる場合、第一センサ31は、対象者20の身体に装着される複数の電極を備えうる。例えば、複数の電極は、対象者20の左鎖骨付近、右鎖骨付近、および左肋骨弓下端の皮膚に装着される。
【0015】
光電脈波法が用いられる場合、第一センサ31は、対象者20が着用可能なウェアラブル装置に搭載されうる。ウェアラブル装置は、例えば対象者20の手首、指先、耳朶などに装着可能な構成をとりうる。
【0016】
第一センサ31は、取得された心拍に対応する第一信号S1を出力するように構成されている。第一信号S1は、対象者20の心拍または脈拍に対応する波形を有する。第一信号S1は、デジタル信号であってもよいし、アナログ信号であってもよい。
【0017】
処理装置11は、第二センサ32と通信可能に接続されうる。接続の態様は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。第二センサ32は、対象者20の脳血流中の吸光物質による吸光度を非侵襲的に取得可能な構成を備えている。吸光物質の例としては、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、一酸化炭素ヘモグロビン、メトヘモグロビン、色素などが挙げられる。
【0018】
第二センサ32は、近赤外分光法とパルスオキシメトリ法の少なくとも一方を用いて当該吸光度を取得可能な周知の構成を備えている。具体的には、第二センサ32は、発光素子と受光素子を備えている。発光素子は、特定の血中吸光物質による吸収を受ける波長の光を、対象者20の前頭前野組織へ向けて出射するように構成されている。受光素子は、当該組織により反射された光の強度に対応する第二信号S2を出力するように構成されている。当該組織における血中吸光物質の濃度が高いほど吸光度が大きくなる。第二信号S2は、デジタル信号であってもよいし、アナログ信号であってもよい。
【0019】
パルスオキシメトリ法が比較的高い簡便性を有する手法である。他方、近赤外分光法は、より広範な組織全体の酸素化状態が反映された吸光度を取得可能であり、前頭前野の活性度をより正確に推定できる。
【0020】
処理装置11は、入力インタフェース111、プロセッサ112、および出力インタフェース113を備えている。
【0021】
入力インタフェース111は、第一信号S1と第二信号S2を受け付け可能に構成されている。第一信号S1と第二信号S2の各々がアナログ信号である場合、入力インタフェース111は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0022】
入力インタフェース111は、後述するプロセッサ112により実行される処理に必要な前処理を、第一信号S1と第二信号S2の少なくとも一方に対して施す回路を備えている。前処理の例としては、周波数フィルタリング、周波数解析、各種の統計処理などが挙げられる。前処理の一部は、プロセッサ112により行なわれてもよい。
【0023】
プロセッサ112は、第一信号S1に基づいて、対象者20の心拍変動度に対応する第一の値を取得するように構成されている。
【0024】
第一の値の一例としては、第一信号S1から得られるRRI(R-R Interval)時系列データを周波数解析することで算出される高周波成分(HF:High Frequency)の大きさに対する低周波成分(LF:Low Frequency)の大きさの比(LF/HF)が挙げられる。
【0025】
第一の値の別例としては、SDNN/RMSSDが挙げられる。SDNN(Standard Deviation of N-N Intervals)は、RRIの標準偏差である。RMSSD(Root Mean Square of Successive Differences)は、時間的に隣り合うRRIの差分の二乗平均平方根である。
【0026】
第一の値の別例としては、pNNxが挙げられる。pNNxは、時間的に隣り合うRRIの差分を所定時間内に含まれるn個のペアについて算出し、当該差分が所定値xを超えるペア数mの全ペア数nに対する比(m/n)である。xの例としては、30ミリ秒、40ミリ秒、50ミリ秒などが挙げられる。
【0027】
第一の値の別例としては、ローレンツプロットから算出されるL指標またはT指標が挙げられる。ローレンツプロットは、所定時間内のRRIについて、n番目のRRIの値であるRRInを横軸に、n+1番目のRRIの値であるRRIn+1を縦軸に選んでプロットすることにより得られるグラフである。当該グラフに対して直線RRIn+1=RRInを引いたとき、全てのプロットを当該直線に対して正射影した集合の標準偏差がL指標であり、全てのプロットを当該直線に直交する直線に対して正射影した集合の標準偏差がT指標である。
【0028】
プロセッサ112は、第二信号S2に基づいて、対象者20の前頭前野の活性度に対応する第二の値を取得するように構成されている。第二の値の例としては、取得された吸光度に基づいて算出される、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の変化量が挙げられる。
【0029】
プロセッサ112は、第一の値と第二の値に基づいて、対象者20の感情を判定するように構成されている。図2は、プロセッサ112により実行される感情判定処理の流れを例示している。本例においては、快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれを抱いているか、あるいは両感情のいずれも抱いていないかが判定される。
【0030】
まず、プロセッサ112は、第一信号S1に基づいて、対象者20の心拍変動度に対応する第一の値を取得する(STEP1)。
【0031】
続いて、プロセッサ112は、第二信号S2に基づいて、対象者20の前頭前野の活性度に対応する第二の値を取得する(STEP2)。
【0032】
次に、プロセッサ112は、第一の値が所定の第一閾値以上であるかを判断する(STEP3)。対象者20が快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれかを抱いている場合、一般に心拍変動度は高まる。第一閾値は、そのような状態と両感情のいずれも抱いていない状態とを弁別できる値として定められる。
【0033】
なお、STEP3に係る判断処理は、STEP2に係る第二の値の取得に先立って行なわれてもよい。
【0034】
したがって、第一の値が第一閾値未満であると判断されると(STEP3においてNO)、プロセッサ112は、対象者20が快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれも抱いていないと判定する(STEP4)。
【0035】
第一の値が第一閾値以上であると判断されると(STEP3においてYES)、プロセッサ112は、第二の値が所定の第二閾値以上であるかを判断する(STEP5)。対象者20が快覚醒感情を抱いている場合、不快覚醒感情を抱いている場合よりも前頭前野の活性度が高まることが一般的である。第二閾値は、快覚醒感情を抱いている場合と不快覚醒感情を抱いている場合とを弁別できる値として定められる。
【0036】
したがって、第二の値が第二閾値以上であると判断されると(STEP5においてYES)、プロセッサ112は、対象者20が快覚醒感情を抱いていると判定する(STEP6)。他方、第二の値が第二閾値未満であると判断されると(STEP5においてNO)、プロセッサ112は、対象者20が不快覚醒感情を抱いていると判定する(STEP7)。すなわち、プロセッサ112による判定結果は、対象者20が快覚醒感情を抱いているかについての情報と、対象者20が不快覚醒感情を抱いているかの情報とを含んでいる。
【0037】
対象者20が快覚醒感情を抱いているかについての情報が第一情報と位置付けられた場合、対象者20が快覚醒感情を抱いていることだけでなく、対象者20が不快覚醒感情を抱いていること(快覚醒感情を抱いていないこと)、および対象者20が快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれも抱いていないことの各々もまた、第一情報の一例となりうる。
【0038】
対象者20が不快覚醒感情を抱いているかについての情報が第二情報と位置付けられた場合、対象者20が不快覚醒感情を抱いていることだけでなく、対象者20が快覚醒感情を抱いていること(不快覚醒感情を抱いていないこと)、および対象者20が快覚醒感情と不快覚醒感情のいずれも抱いていないことの各々もまた、第二情報の一例となりうる。
【0039】
なお、第一の値が所定の閾値範囲外である場合、プロセッサ112は、対象者20の心拍変動度が正常に取得されていないと判断し、STEP3に係る判断処理を実行しないように構成されうる。心拍変動度が正常に取得されているかの判断については、第一センサ31とは異なるセンサを通じて取得された心拍に係るデータが援用されてもよい。
【0040】
同様に、第二の値が所定の閾値範囲外である場合、プロセッサ112は、対象者20の前頭前野の活性度が正常に取得されていないと判断し、STEP5に係る判断処理を実行しないように構成されうる。活性度が正常に取得されているかの判断については、第二センサ32とは異なるセンサを通じて取得された前頭前野の血流に係るデータが援用されてもよい。
【0041】
プロセッサ112は、判定結果に対応する判定データJDを、出力インタフェース113からユーザインタフェース12へ出力するように構成されている。判定データJDは、ユーザインタフェース12が当該判定結果をユーザに提示できるように構成される。判定結果のユーザへの提示は、視覚的手法、聴覚的手法、触覚的手法、および嗅覚的手法の少なくとも一つを通じて行なわれうる。判定データJDは、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。判定データJDがアナログデータの形態である場合、出力インタフェース113は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0042】
上記のような構成によれば、対象者20が覚醒感情を抱いているかについての判定を、対象者20の心拍変動度と前頭前野の活性度を組み合わせるという新規な手法を通じて処理装置11に行なわせることができる。心拍変動度と前頭前野の活性度は非侵襲的に取得可能であり、かつ対象者20から体液を採取して分析に供する必要もないので、対象者20の負担を増すことなく判定に要する時間を短縮できる。
【0043】
図3は、対象者20の頭部に着用されうるヘルメット40を例示している。ヘルメット40は、第二センサ32を内蔵している。第二センサ32は、対象者20がヘルメット40を着用した際に額と対向する位置に配置されている。ヘルメット40は、ウェアラブル装置の一例である。
【0044】
このような構成によれば、第二センサ32の位置決めが容易であるので、前頭前野の活性度を取得精度を高めることができる。加えて、ヘルメット40は、後述する様々な機能を単一のウェアラブル装置に統合しやすいという利点を有する。
【0045】
一例として、特定の事象が対象者20に与える体験価値を把握するために、覚醒感情を抱いているかの上記判定が用いられうる。特定の事象の例としては、製品やサービスの利用体験、刺激の印加などが挙げられる。刺激は、視覚的なもの、聴覚的なもの、触覚的なもの、嗅覚的なもの、味覚的なものの少なくとも一つを含みうる。ヘルメット40がディスプレイ41やスピーカ42などのユーザインタフェースを備えている場合、視覚的刺激や聴覚的刺激は、当該ユーザインタフェースを通じて提供されうる。
【0046】
ディスプレイ41やスピーカ42は、前述したユーザインタフェース12としても利用されうる。すなわち、処理装置11による対象者20の覚醒感情に係る判定結果は、対象者20自身に提供されてもよい。この場合、判定結果を触覚的に提示するための振動子や、判定結果を嗅覚的に提示するためのアロマディフューザーがヘルメット40に内蔵されてもよい。
【0047】
上記の例においては、ヘルメット40が情報提示装置10の一例として機能しうる。したがって、処理装置11がヘルメット40に内蔵されてもよい。この場合、対象者20が覚醒感情を抱いているかを判定する可搬型の装置を実現できる。
【0048】
他方、処理装置11は、ヘルメット40とは遠隔して配置されうる。この場合、ヘルメット40は、処理装置11と無線通信を行なうための通信インタフェース43を備えうる。第一センサ31から出力された第一信号S1と第二センサ32から出力された第二信号S2は、通信インタフェース43を通じて送信される。他方、処理装置11の入力インタフェース111は、通信インタフェース50を通じて第一信号S1と第二信号S2を受信するように構成される。通信インタフェース43と通信インタフェース50は、適宜の無線通信規格に準じたデータの送受信が可能な構成を備えている。無線通信規格の例としては、LTE(Long Term Evolution)、4G、5G、Wi-Fi(登録商標)などが挙げられる。すなわち、処理装置11は、第一センサ31および第二センサ32との相対距離が可変でありうる。
【0049】
なお、ヘルメット40がユーザインタフェース12を備える場合、処理装置11の出力インタフェース113は、通信インタフェース50を通じて判定データJDをヘルメット40へ送信しうる。判定データJDは、通信インタフェース43により受信され、ユーザインタフェース12による情報提示のための処理に供される。
【0050】
対象者20が自転車や自動二輪車を運転する際の保護装備として着用されるヘルメット40が情報提示装置10として使用される場合、処理装置11による覚醒感情に係る判定結果に加えてあるいは代えて、判定結果に基づく付加的情報が提供されうる。処理装置11は、ヘルメット40に内蔵されてもよいし、ヘルメット40から遠隔して配置されてもよい。
【0051】
この場合、通信インタフェース43は、位置情報と道路交通情報を取得可能に構成されうる。例えば、通信インタフェース43は、GPS(Grobal Positioning System)受信機およびVICS(Vehicle Information and Communication System;登録商標)受信機を備えるように構成されうる。
【0052】
処理装置11は、通信インタフェース43と通信インタフェース50を通じて位置情報と道路交通情報を受け付けることにより、対象者20の現在位置、所定時間経過後における対象者20の予測位置、および現在位置と予測位置の少なくとも一方における道路交通情報を、所在関連情報LIとして取得する。所在関連情報LIの取得に際しては、周知のナビゲーション技術が使用されうる。
【0053】
処理装置11は、対象者20の覚醒感情に係る判定結果と上記の所在関連情報LIに基づいて付加的情報AIを生成するように構成されうる。
【0054】
例えば、対象者20が快覚醒感情を抱いていると判定されている場合、以降に対象者20が目にすることが想定される風景、建造物、史跡などを期待させる情報が付加的情報AIとして生成されうる。
【0055】
他方、対象者20が不快覚醒感情を抱いていると判定されている場合、渋滞情報、休憩を促す情報などが付加的情報AIとして生成されうる。
【0056】
処理装置11は、付加的情報AIを、通信インタフェース50を通じてヘルメット40へ送信する。ヘルメット40に内蔵されたユーザインタフェース12は、通信インタフェース43により受信された付加的情報AIに基づいて対象者20への情報提示を行なう。
【0057】
このような構成によれば、対象者20について判定された覚醒感情に応じて適切な付加的情報AIを対象者20に提供できる。
【0058】
これまで説明した機能を有する処理装置11のプロセッサ112は、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムがプリインストールされた記憶素子を備えたマイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの専用集積回路によって実現されうる。
【0059】
あるいは、プロセッサ112は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。
【0060】
プロセッサ112は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによって実現されてもよい。
【0061】
図4に例示されるように、情報提示装置10として使用されうるヘルメット40は、情報生成装置60と通信可能とされうる。情報生成装置60は、複数のヘルメット40と通信可能でありうる。複数のヘルメット40の各々に関連付けられた処理装置11は、ヘルメット40に内蔵されてもよいし、ヘルメット40から遠隔して配置されてもよい。図4においては、図3を参照して説明した通信インタフェース50の図示は省略されている。
【0062】
情報生成装置60は、通信インタフェース61を備えている。通信インタフェース61は、各ヘルメット40の通信インタフェース43と適宜の無線通信規格に準じたデータの送受信が可能な構成を備えている。無線通信規格の例としては、LTE(Long Term Evolution)、4G、5G、Wi-Fi(登録商標)などが挙げられる。
【0063】
通信インタフェース61は、処理装置11により取得された対象者20の覚醒感情に係る判定結果を示す判定データJDを、当該判定結果が取得された場所を示す場所情報PIとともに通信インタフェース43から受信するように構成されている。通信インタフェース61は、前述した所在関連情報LIもまた通信インタフェース43から受信するように構成されている。
【0064】
情報生成装置60は、ストレージ62を備えている。ストレージ62は、判定データJDと場所情報PIを関連付けて参照情報として記憶するように構成されている。すなわち、複数の対象者20の各々について、覚醒感情についての判定結果が、当該結果が取得された場所とともに記憶される。参照情報は、第三情報の一例である。ストレージ62は、半導体メモリ、ハードディスク装置、磁気テープ装置などにより実現されうる。
【0065】
情報生成装置60は、プロセッサ63を備えている。プロセッサ63は、各ヘルメット40の通信インタフェース43から受け付けた所在関連情報LIに含まれる対象者20の現在位置または予測位置に基づいて、ストレージ62に記憶されている参照情報を参照するように構成されている。具体的には、現在位置または予測位置に対応する場所情報PIが特定され、当該場所情報PIに関連付けられた判定データJDが特定される。プロセッサ63は、特定された判定データJDが示している覚醒感情に基づいて、付加的情報AIを生成する。
【0066】
一例として、ある対象者20に着用されたヘルメット40から送信された現在位置に係る情報に基づいて特定された場所情報PIに関連付けられた判定データJDが不快覚醒感情を示している場合、プロセッサ63は、対象者20に注意を促す情報を、付加的情報AIとして生成しうる。
【0067】
別例として、ある対象者20に着用されたヘルメット40から送信された予測位置に係る情報に基づいて特定された場所情報PIに関連付けられた判定データJDが快覚醒感情を示している場合、プロセッサ63は、以降に対象者20が目にすることが想定される風景、建造物、史跡などを期待させる情報を付加的情報AIとして生成しうる。
【0068】
プロセッサ63は、付加的情報AIを、通信インタフェース61を通じてヘルメット40へ送信する。ヘルメット40に内蔵されたユーザインタフェース12は、通信インタフェース43により受信された付加的情報AIに基づいて、対象者20への情報提示を行なう。
【0069】
場所情報PIに関連付けられた判定データJDがストレージ62に複数記憶されている場合、統計的処理を経た判定結果について付加的情報AIが生成される。統計的処理の例としては、最多数の判定結果、最新の判定結果などが挙げられる。
【0070】
このような構成によれば、複数の対象者20から収集および蓄積された覚醒感情と場所の関係に係る情報を、以降に当該場所に位置する対象者20に提供される付加的情報AIに反映させることができる。
【0071】
これまで説明した機能を有する情報生成装置60のプロセッサ63は、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムがプリインストールされた記憶素子を備えたマイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの専用集積回路によって実現されうる。
【0072】
あるいは、プロセッサ63の各々は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。ストレージ62の一部が当該汎用メモリとして使用されてもよい。
【0073】
プロセッサ63は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによって実現されてもよい。
【0074】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0075】
対象者20の頭部に着用されるウェアラブル装置は、ヘルメット40に限られない。ウェアラブル装置は、統合される機能要素に応じて、帽子、サンバイザ、眼鏡、ゴーグル、ヘッドフォンなどの適宜の態様をとりうる。
【0076】
ウェアラブル装置は、必ずしも自転車や自動二輪車などの移動体を運転する者に着用されることを要しない。ウェアラブル装置は、各種のアウトドアアクティビティに携わる者や、施設の内外で行なわれる各種の作業に携わる者に着用されてもよい。判定された覚醒感情に応じて提供される付加的情報AIの内容は、アウトドアアクティビティや作業の種別に応じて適宜に定められうる。
【符号の説明】
【0077】
10:情報提示装置、11:処理装置、111:入力インタフェース、112:プロセッサ、12:ユーザインタフェース、20:対象者、31:第一センサ、32:第二センサ、40:ヘルメット、60:情報生成装置、61:通信インタフェース、62:ストレージ、63:プロセッサ、AI:付加的情報、LI:所在関連情報
図1
図2
図3
図4