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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120832
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】二軸延伸シート及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230823BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20230823BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20230823BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230823BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C08J5/18 CET
B29C55/12
B29C51/10
C08L25/08
C08L51/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023915
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】和泉 英二
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕卓
【テーマコード(参考)】
4F071
4F208
4F210
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA22
4F071AA32X
4F071AA81
4F071AF13Y
4F071AF53
4F071AH04
4F071AH05
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F208AA13
4F208AA21
4F208AA45
4F208AC03
4F208AG07
4F208AH54
4F208MA01
4F208MB01
4F208MG12
4F208MG22
4F210AA13
4F210AA21
4F210AA45
4F210AG01
4F210AH54
4F210AR01
4F210AR12
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW36
4J002BC041
4J002BN142
4J002GG00
(57)【要約】
【課題】優れた成形性を有する二軸延伸シートであって、強度に優れた成形品を形成することができる二軸延伸シートを提供すること。
【解決手段】スチレン及びメタクリル酸をモノマー単位として含む共重合体と、ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレンと、を含有する二軸延伸シートであって、メタクリル酸の含有量が、二軸延伸シート全量基準で2.5~9.0質量%であり、二軸延伸シートの重量平均分子量が23万~40万である、二軸延伸シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン及びメタクリル酸をモノマー単位として含む共重合体と、
ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレンと、
を含有する二軸延伸シートであって、
前記メタクリル酸の含有量が、二軸延伸シート全量基準で2.5~9.0質量%であり、
前記二軸延伸シートの重量平均分子量が23万~40万である、二軸延伸シート。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム成分の含有量が、二軸延伸シート全量基準で0.01~0.30質量%である、請求項1に記載の二軸延伸シート。
【請求項3】
前記二軸延伸シートのMDの最大配向緩和応力及びTDの最大配向緩和応力が、それぞれ0.5~1.2MPaである、請求項1又は2に記載の二軸延伸シート。
【請求項4】
前記共重合体のZ平均分子量が40万~60万である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項5】
前記二軸延伸シートのMDの最大配向緩和応力とTDの最大配向緩和応力との差の絶対値が0.2MPa以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項6】
前記ジエン系ゴム変性ポリスチレンの含有量に対する前記共重合体の含有量の質量比が、97.0/3.0~99.9/0.1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項7】
前記メタクリル酸の含有量が、前記共重合体に含まれるモノマー単位全量基準で3.0~9.0質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項8】
前記二軸延伸シートの厚みが0.1~0.3mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項9】
前記ジエン系ゴム変性ポリスチレンに含まれる前記ジエン系ゴム成分の粒子の平均粒子径が、1.5~9.0μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の二軸延伸シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の二軸延伸シートを成形してなる、成形品。
【請求項11】
電子レンジ加熱用食品包装容器である、請求項10に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸シート及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸シートは、食品包装容器分野で幅広く使用されている材料であり、様々な特性を備えた二軸延伸シートの開発が進められている。例えば、特許文献1には、スチレン-メタクリル酸共重合体(A)とハイインパクトポリスチレン(B)とを質量比(A)/(B)=97.0/3.0~99.9/0.1で含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、前記スチレン-メタクリル酸共重合体(A)のメタクリル酸単量体単位の含有量が3~14質量%であり、前記スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が106~132℃の範囲であり、前記二軸延伸シートの縦方向と横方向の配向緩和応力がいずれも0.5~1.2MPaの範囲である二軸延伸シートが記載され、該二軸延伸シートが透明性、強度、耐熱性、製膜性、二次成形時の賦形性が良好で、トリミング時の耐割れ性に優れていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/122775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のような二軸延伸シートを成形する場合、成形性と得られる成形品の強度とを両立させることは困難である。
【0005】
そこで、本発明では、優れた成形性を有する二軸延伸シートであって、強度に優れた成形品を得ることができる二軸延伸シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、スチレン及びメタクリル酸をモノマー単位として含む共重合体と、ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレンと、を含有する二軸延伸シートにおいて、メタクリル酸の含有量及びシートの重量平均分子量を特定の数値範囲とすることによって、成形性に優れ、かつ優れた強度を有する成形品を形成することができる二軸延伸シートが得られることを見出した。本発明は、いくつかの側面において、下記の[1]~[11]を提供する。
[1]スチレン及びメタクリル酸をモノマー単位として含む共重合体と、
ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレンと、
を含有する二軸延伸シートであって、
メタクリル酸の含有量が、二軸延伸シート全量基準で2.5~9.0質量%であり、
二軸延伸シートの重量平均分子量が23万~40万である、二軸延伸シート。
[2]ジエン系ゴム成分の含有量が、二軸延伸シート全量基準で0.01~0.30質量%である、[1]に記載の二軸延伸シート。
[3]二軸延伸シートのMDの最大配向緩和応力及びTDの最大配向緩和応力が、それぞれ0.5~1.2MPaである、[1]又は[2]に記載の二軸延伸シート。
[4]共重合体のZ平均分子量が40万~60万である、[1]~[3]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[5]二軸延伸シートのMDの最大配向緩和応力とTDの最大配向緩和応力との差の絶対値が0.2MPa以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[6]ジエン系ゴム変性ポリスチレンの含有量に対する共重合体の含有量の質量比が、97.0/3.0~99.9/0.1である、[1]~[5]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[7]メタクリル酸の含有量が、共重合体に含まれるモノマー単位全量基準で3.0~9.0質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[8]二軸延伸シートの厚みが0.1~0.3mmである、[1]~[7]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[9]ジエン系ゴム変性ポリスチレンに含まれるジエン系ゴム成分の粒子の平均粒子径が、1.5~9.0μmである、[1]~[8]のいずれかに記載の二軸延伸シート。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の二軸延伸シートを成形してなる成形品。
[11]電子レンジ加熱用食品包装容器である、[10]に記載の成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた成形性を有する二軸延伸シートであって、強度に優れた成形品を得ることができる二軸延伸シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0009】
本発明の一実施形態に係る二軸延伸シートは、スチレン及びメタクリル酸をモノマー単位として含む共重合体(以下、「(A)成分」ともいう)と、ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレン(以下、「(B)成分」ともいう)と、を含有する。
【0010】
(A)成分のモノマー単位として含まれるメタクリル酸(メタクリル酸単位)の含有量は、二軸延伸シート全量基準で2.5~9.0質量%である。メタクリル酸(メタクリル酸単位)の含有量は、耐熱性に優れる観点から、二軸延伸シート全量基準で、3.0質量%以上、又は3.5質量%以上であってもよい。メタクリル酸(メタクリル酸単位)の含有量は、成形性に更に優れる観点から、二軸延伸シート全量基準で、8.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.0質量%以下であってもよい。
【0011】
メタクリル酸の含有量(二軸延伸シート全量基準)は、室温(25℃)での中和滴定により求められる。具体的には、まず、二軸延伸シート0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解する。得られた溶液について、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、AT-510)を用いて水酸化カリウムの0.1mol/Lエタノール溶液により中和滴定を行う。終点に至るまでに要した水酸化カリウムエタノール溶液の体積V(L)より、下記式に従ってメタクリル酸の質量基準の含有量が算出される。
メタクリル酸の含有量(質量%)=V×0.1×86/0.5×100
【0012】
メタクリル酸(メタクリル酸単位)の含有量は、耐熱性に優れる観点から、共重合体に含まれるモノマー単位全量(以下、単に「モノマー単位全量」ともいう)基準で、3.0質量%以上、又は3.5質量%以上であってよい。メタクリル酸(メタクリル酸単位)の含有量は、成形性に更に優れる観点から、モノマー単位全量基準で、9.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.1質量%以下であってもよい。
【0013】
(A)成分のモノマー単位として含まれるスチレン(スチレン単位)の含有量は、二軸延伸シート全量基準で、成形性に更に優れる観点から、85.0質量%以上、90.0質量%以上、又は93.0質量%以上であってよく、耐熱性に優れる観点から、97.0質量%以下、又は96.5質量%以下であってよい。
【0014】
スチレン(スチレン単位)の含有量は、モノマー単位全量基準で、成形性に更に優れる観点から、85.0質量%以上、90.0質量%以上、又は95.0質量%以上であってよく、耐熱性に優れる観点から、97.0質量%以下、又は96.5質量%以下であってよい。
【0015】
(A)成分は、モノマー単位としてメタクリル酸及びスチレンのみを含んでいてよく、メタクリル酸及びスチレンと共重合可能なその他のモノマー単位を更に含んでいてもよい。その他のモノマー単位としては、例えば、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル等が挙げられる。その他のモノマー単位の含有量は、例えば、モノマー単位全量基準で、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。(A)成分は、カルボキシル基等の酸性基を有するモノマー単位としてメタクリル酸のみを含んでいてよい。
【0016】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、成形品の強度に更に優れる観点から、23万以上、25万以上、26万以上、又は27万以上であってよい。(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、成形性に更に優れる観点から、45万以下、40万以下、38万以下、又は35万以下であってよい。
【0017】
(A)成分のZ平均分子量(Mz)は、成形品の強度に更に優れる観点から、40万以上、42万以上、又は45万以上であってよい。(A)成分のZ平均分子量(Mz)は、成形性に更に優れる観点から、60万以下、55万以下、又は50万以下であってよい。
【0018】
(A)成分のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2.0以上又は2.2以上であってよく、3.0以下又は2.8以下であってよい。Mw/Mnが上記の上限値以下であると、成形品の成形時の熱板接触による表面荒れが発生しにくくなる。一方、Mw/Mnが上記の下限値以上であると、流動性低下による製膜時の厚みムラや成形品成形時の賦形不良が更に発生しにくくなる。また、Z平均分子量(Mz)とMwとの比(Mz/Mw)は、1.5以上又は1.6以上であってよく、2.0以下又は1.9以下であってよい。Mz/Mwが上記の下限値以上であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなどの製膜性の低下、延伸配向の不足が発生しにくくなる。一方、Mz/Mwが上記の上限値以下であると、流動性低下による製膜時の厚みムラやダイラインなどのシート外観低下が発生しにくくなる。
【0019】
本明細書において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、以下の条件でGPC測定を行うことにより求められる。
装置:東ソー(株)製GPC「HLC-8320GPC」
カラム:shodex KF404×3
温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.2ml/分
圧力:10MPa
検出:RI
サンプル調製方法:試料120mgをテトラヒドロフラン15mLに溶解させた後、シリンジフィルター(メルクミリポア社製マイレクス(登録商標) 0.45um)を通しろ過を行う。
注入量:10μl
検量線:標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して各種平均分子量を求める。
【0020】
(A)成分は、メタクリル酸と、スチレンと、必要に応じてその他のモノマーとを重合させることにより得られる。重合方法としては、ポリスチレン等で工業化されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類が使用できる。
【0021】
(A)の重合時には、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)、エチル-3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤の具体例としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0022】
二軸延伸シートにおける(A)成分の含有量は、二軸延伸シート全量基準で、97.0質量%以上、98.0質量%以上、又は98.5質量%以上であってよく、99.9質量%以下、又は99.7質量%以下であってよい。含有量が上記の下限値以上であると、耐熱性及び透明性に優れる。含有量が上記の上限値以下であると、滑性に優れる。
【0023】
ジエン系ゴム成分を含むジエン系ゴム変性ポリスチレンは、ゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂とも呼ばれ、例えば、スチレン系モノマーにゴム状のジエン系重合体を溶解し、重合(好ましくはグラフト重合)して得られる。
【0024】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン及び第三級ブチルスチレンなどのo-、m-、p-の各異性体)、α-アルキルスチレン(例えばα-メチルスチレン、α-エチルスチレンなど)、モノハロゲン化スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレン及びフルオロスチレンなどのo-、m-、及びp-の各異性体)、ジハロゲン化スチレン(例えば、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ジフルオロスチレン及びクロロブロモスチレンなどの各核置換異性体)、トリハロゲン化スチレン(例えば、トリクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリフルオロスチレン、ジクロロブロモスチレン、ジブロモクロロスチレン及びジフルオロクロロスチレンなどの各核置換異性体)、テトラハロゲン化スチレン(例えば、テトラクロロスチレン、テトラブロモスチレン、テトラフルオロスチレン及びジクロロジブロモスチレンなどの各核置換異性体)、ペンタハロゲン化スチレン(例えば、ペンタクロロスチレン、ペンタブロモスチレン、トリクロロジブロモスチレン及びトリフルオロジクロロスチレンなどの各核置換異性体)、α-及びβ-ハロゲン置換スチレン(例えば、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、β-クロロスチレン及びβ-ブロモスチレンなど)などが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0025】
ゴム状のジエン系重合体としては、例えば1種又は2種以上の共役1,3-ジエン(例えばブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ピペリレンなど)、ブタジエン-スチレン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ブタジエン-スチレン-アクリロニトリル共重合体などが使用できる。
【0026】
(B)成分の含有量は、二軸延伸シート全量基準で、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は0.8質量%以上であってよく、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。含有量が上記の下限値以上であると、滑性に優れる。含有量が上記の上限値以下であると、耐熱性及び透明性に優れる。
【0027】
(B)成分に含まれるジエン系ゴム成分(以下、単に「ゴム成分」ともいう)の含有量は、(B)成分全量基準で、5質量%以上、又は8質量%以上であってよく、15質量%以下、又は12質量%以下であってよい。含有量が上記の下限値以上であると、滑性に優れる。含有量が上記の上限値以下であると、透明性に優れる。
【0028】
ゴム成分の含有量は、滑性に優れる観点から、二軸延伸シート全量基準で、0.01質量%以上、0.02質量%以上、又は0.05質量%以上であってよい。ゴム成分の含有量は、耐熱性及び透明性に優れる観点から、二軸延伸シート全量基準で、0.30質量%以下、0.25質量%以下、0.20質量%以下、又は0.15質量%以下であってよい。
【0029】
二軸延伸シート全量基準のゴム成分の含有量は、二軸延伸シート0.25gをクロロホルム50mlに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定することで測定できる(一塩化ヨウ素法)。分析方法は、例えば、日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店(1995年度版)、P.659の「(3)ゴム含量」に記載されており、この方法で測定することができる。
【0030】
(B)成分に含まれるゴム粒子(ジエン系ゴム成分の粒子)の平均粒子径(Ro)は、1.5μm以上、2.0μm以上、又は4.0μm以上であってよく、9.0μm以下、8.0μm以下、又は6.0μm以下であってよい。Roが上記の下限値以上であると、滑性の点で優れる。Roが上記の上限値以下であると、透過光が減少及び散乱光の増加を抑制し、透明性の点で優れる。
【0031】
本明細書において、ゴム粒子の平均粒子径(Ro)は、超薄切片法にて観察面が二軸延伸シートの主面と並行方向となるよう切削し、四酸化オスミウム(OsO)にてゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて、100個の粒子について測定した粒子径の算術平均値を意味する。
【0032】
(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比((A)成分の含有量/(B)成分)は、耐熱性及び透明性に優れる観点から、97.0/3.0以上、98.0/2.0以上、又は98.5/1.5以上であってよく、滑性に優れる観点から、99.9/0.1以下、99.7/0.3以下、又は99.5/0.5以下であってよい。
【0033】
二軸延伸シートに含まれる未反応スチレンモノマーの含有量は1000ppm以下であってよく、未反応メタクリル酸モノマーの含有量は150ppm以下であってよい。これらの未反応のモノマーの含有量を上記の上限値以下とすることにより、シート表面のブリードアウトを防止でき、また、押出機、延伸機のロールと接触した際に表面荒れや汚れが発生することを防止できる。また、シートを成形加工する際に成形加工機の金型等に付着して、成形品の外観を損ねることを防止でき、また、金型汚れを引き起こしてその後の成形品の外観を損なうことも防止できる。なお、未反応スチレンモノマー及び未反応メタクリル酸モノマーの定量は、下記記載のガスクロマトグラフィーを用いて、内部標準法にて測定される。
装置名:GC-12A(島津製作所社製)
カラム:ガラスカラムφ3[mm]×3[m]
定量法:内部標準法(シクロペンタノール)
【0034】
二軸延伸シートのビカット軟化温度は、106℃以上、112℃以上、又は116℃以上であってよく、132℃以下、128℃以下、又は126℃以下であってよい。なお、ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠して、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nの条件で測定される。
【0035】
二軸延伸シートのメルトフローインデックス(MFI)は、製膜時のドローダウン、厚み均一性の観点から、0.5g/10分以上、0.9g/10分以上、又は1.3g/10分以上であってよく、4.5g/10分以下、3.6g/10分以下、又は2.7g/10分以下であってよい。なお、メルトフローインデックス(MFI)は、JIS K7210のH条件(200℃、5kg)に従って測定した。
【0036】
二軸延伸シートは、用途に応じて各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ゲル化防止剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE))、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、鉱油、ガラス繊維、カーボン繊維及びアラミド繊維等の補強繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム等の充填剤が挙げられる。これらの添加剤は、(A)成分及び(B)成分の重合工程、脱揮工程、又は造粒工程にて添加してもよく、二軸延伸シートの製造の際に、(A)成分と(B)成分とを混合する際に添加してもよい。添加剤の合計含有量は、二軸延伸シート全量基準で、例えば、0.1質量%以上であってよく、1.0質量%以下であってよい。
【0037】
二軸延伸シートの厚みは、成形品の強度を更に向上させる観点から、0.1mm以上、0.15mm以上、又は0.2mm以上であってよい。二軸延伸シートの厚みは、透明性に優れる観点から、0.7mm以下、0.5mm以下、又は0.3mm以下であってよい。
【0038】
二軸延伸シートのMD(Machine Direction;シート流れ方向)及びTD(Transverse Direction;シート流れ方向に垂直な方向)の延伸倍率は、それぞれ、1.9倍以上、又は2.0倍以上であってよく、4.0倍以下、又は3.5倍以下であってよい。延伸倍率が上記の下限値以上であると、成形品の強度が更に優れる。また、延伸倍率が上記の上限値以下であると、二軸延伸シートの成形性が更に優れる。MD延伸倍率及びTD延伸倍率は、互いに同じであってよく、異なっていてもよい。
【0039】
二軸延伸シートの、MD延伸倍率をm、TD延伸倍率をnとしたとき、m×nで示される面倍率は、4倍以上であってよく、16倍以下、又は12.5倍以下であってよい。
【0040】
本明細書における延伸倍率とは、二軸延伸シートの試験片が加熱前後で変化する割合であり、具体的には、次式:
延伸倍率=Y/Z(単位[倍])
によって算出される値を意味する。この式において、Yは、加熱前に二軸延伸シートの試験片に対して、MD又はTDに描いた直線の長さ[mm]を示し、Zは、JIS K7206に準拠して測定した二軸延伸シートのビカット軟化点温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の、上記直線の長さ[mm]を示す。MDに直線を描けばMD延伸倍率が算出され、TDに直線を描けばTD延伸倍率が算出される。
【0041】
二軸延伸シートにおいて、MDの最大配向緩和応力(以下、「a」ともいう)及びTDの最大配向緩和応力(以下、「b」ともいう)は、互いに同じであってよく異なっていてもよい。a,bは、それぞれ、0.5MPa以上、0.6MPa以上、0.65MPa以上、又は0.7MPa以上であってよく、1.2MPa以下、1.0MPa以下、又は0.9MPa以下であってよい。a,bがそれぞれ上記の下限値以上であると、成形品の強度に更に優れる。a,bがそれぞれ上記の上限値以下であると、成形性に更に優れる。また、|a-b|(aとbとの差の絶対値)は、MD、TDの収縮力の違いによる成形性不良及び成形品の歪みを更に抑制できる観点から、0.2MPa以下であってよく、0.1MPa以下であってよい。
【0042】
二軸延伸シートの重量平均分子量(Mw)は、23万~40万である。なお、二軸延伸シートの重量平均分子量(Mw)は、二軸延伸シートに含まれる全成分の重量平均分子量(Mw)と言い換えることもできる。二軸延伸シートの重量平均分子量(Mw)は、成形品の強度に更に優れる観点から、24万以上、25万以上、25.5万以上、又は26万以上であってよい。二軸延伸シートの重量平均分子量(Mw)は、成形性に更に優れる観点から、38万以下、又は35万以下であってよい。
【0043】
二軸延伸シートは、次のような方法で製造することができる。まず、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて用いられる任意成分(上述した添加剤)を混合し、公知の条件で押出機によりダイ(特にTダイ)から押し出し、未延伸シートを得る。次いで、未延伸シートを二軸方向に逐次又は同時で延伸することにより、二軸延伸シートを得る。
【0044】
二軸延伸シートの少なくとも一方の表面には、公知の離型剤(剥離剤)、防曇剤、帯電防止剤から選ばれる1種又は2種以上を含む塗工剤が塗布されていてもよい。塗工剤を二軸延伸シートに塗工する方法は、特に限定されることはなく、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアロールコーター等を用いて塗工する方法であってよく、噴霧、浸漬等であってもよい。
【0045】
本実施形態に係る二軸延伸シートを成形することにより、成形品を得ることができる。成形品は、例えば容器であってよく、食品包装容器(フードパック)であってもよい。特に、成形品が電子レンジ加熱用食品包装容器である場合、本実施形態に係る二軸延伸シートの特徴が十分に発揮される。成形品は、例えば、本体部分と、当該本体部分と嵌合可能な蓋材とからなるフードパックであって、嵌合部分の形状が内嵌合であるフードパックであってもよい。
【0046】
二軸延伸シートから成形品を得る方法は、特に制限はなく、従来の二軸延伸シートの二次成形方法において慣用されている方法を用いることができる。例えば、真空成形法や圧空成形法等の熱成形方法によって二次成形を行うことができる。これらの方法は例えば高分子学会編「プラスチック加工技術ハンドブック」日刊工業新聞社(1995)に記載されている。
【実施例0047】
実施例1~16及び比較例1~6では、以下の実験例1~12のとおりに製造したスチレン-メタクリル酸共重合体及びジエン系ゴム変性ポリスチレンを用いた。
【0048】
{実験例1:スチレン-メタクリル酸共重合体(A-1)の製造}
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器を直列に接続した装置を用いて、スチレン-メタクリル酸共重合体の製造を行った。第1反応器及び第2反応器の容量は、共に39リットルであった。スチレン80.7質量%、メタクリル酸2.8質量%、エチルベンゼン14.1質量%、及びオクタノール2.4質量%を混合して原料溶液を作製し、原料溶液を流量12kg/hにて第1反応器に連続的に供給した。重合開始剤(1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂株式会社製))を、添加濃度(原料溶液に対する質量基準の濃度)が200μg/gとなるように第1反応器の入口から原料溶液に添加混合した。ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POE)(花王株式会社製)を、第1反応器の入口から原料溶液に添加混合した。第1反応器に供給された材料の混合物は、第1反応器内で攪拌され、第2反応器に連続的に供給され、第2反応器内で攪拌された。この際、第1反応器、第2反応器における反応温度はそれぞれ125℃、135℃とした。以上の方法により、スチレン及びメタクリル酸の共重合体を生成した。
【0049】
続いて、第2反応器より共重合体を含む溶液を連続的に取り出し、第1脱気槽及び第2脱気槽の2段で構成される予熱器付き真空脱揮槽に直列に導入した。第1脱気槽では樹脂温度が172℃、圧力65kPa、第2脱気槽では樹脂温度218℃、圧力1kPaとなるよう調整し、未反応スチレン、メタクリル酸及びエチルベンゼンを分離した。その後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却及び切断し、ペレット状のスチレン-メタクリル酸共重合体(A-1)を得た。熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、共重合体に含まれるモノマー単位全量基準で、スチレンの含有量が96質量%、メタクリル酸の含有量は4質量%であった。また、GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、それぞれ28万及び45万であった。
【0050】
なお、得られたペレット状のスチレン-メタクリル酸共重合体(A-1)中のPOEの濃度は、共重合体全量を基準として、0.20質量%であった。POEの濃度は、以下の手順により求めた。ペレット状のスチレン-メタクリル酸共重合体(A-1)5gを精秤し、THFに溶解した。溶液にメタノール及び少量の塩酸を加え、ポリマー分を再沈処理し、ろ過により再沈物を除去した。ろ液を濃縮し、10mlの濃縮液とした。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、当該濃縮液中のPOEの定量を行った。定量には濃度既知のPOEのメタノール溶液3点を用いて作成した検量線を用いた。HPLCの条件は以下の通りである。
HPLC機種:日本ウォーターズ株式会社製allianceシステム2695 セパレーションモジュール
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:東ソー株式会社製TSKgel ODS-120T 4.6mm(ID)×15cm(L)
移動相:メタノール/水=80/20(体積比)にリン酸0.2質量%添加
流量:1.0ml/分
カラムオーブン温度:40℃
検出器温度:30℃
求めたPOEの定量値(g)を用いて、下記式に従ってPOEの濃度を求めた。
POEの濃度(質量%)=(POEの定量値)/5×100
【0051】
{実験例2~11:スチレン-メタクリル酸共重合体(A-2)~(A-11)の製造}
実験例1の原料溶液の組成(特にスチレンとメタクリル酸の比率)を変更することにより、モノマー含有量(共重合体に含まれるモノマー単位全量基準でのスチレンの含有量及びメタクリル酸の含有量)を調整し、重合時の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び量等を変更することにより、重量平均分子量及びZ平均分子量を調整して、表1に記載のとおりのモノマー含有量、重量平均分子量及びZ平均分子量を有するスチレン-メタクリル酸共重合体(A-2)~(A-11)を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
{実験例12:ジエン系ゴム変性ポリスチレン(B-1)の製造}
ゴム状重合体として6.7質量%のローシスポリブタジエンゴム(ジエン55AS(旭化成(株)製))と、88.3質量%のスチレンとを、5.0質量%のエチルベンゼンに溶解させた。また、ゴムの酸化防止剤(イルガノックス1076(BASF(株)製))0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径d=0.285[m]の錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R-01)に12.5[kg/hr]で供給した。反応温度は140℃、回転数をN[s-1]としたときのNは0.83[m/s]で、樹脂率は25%であった。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R-02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120℃~140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R-03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130℃~160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。R-02出口での樹脂率は50%、R-03出口での樹脂率は70%であった。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5[torr]の脱揮槽に送られ、未反応モノマー、溶剤を分離・回収した後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽を通してペレット化し製品として回収した。得られたジエン系ゴム変性ポリスチレン全量を基準とするジエン系ゴム成分の含有量は10質量%であった。
【0054】
{実験例13~14:ジエン系ゴム変性ポリスチレン(B-2)~(B-3)の製造}
実験例12の各種原料仕込み量を調整し、表2に記載のジエン系ゴム成分を含有するジエン系ゴム変性ポリスチレン(B-2)~(B-3)を得た。
【0055】
【表2】
【0056】
<実施例1>
実験例1のスチレン-メタクリル酸共重合体(A-1)99.0質量%と実験例10のジエン系ゴム変性ポリスチレン(B-1)1.0質量%とをハンドブレンドし、ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 HyperKTX140MX(神戸製鋼所製))を用い、押出温度230℃、吐出量2600kg/h、回転数110rpm、真空ベントのベント圧力(真空に対する絶対圧力)1.8kPaAにて幅1200mmのTダイを通して未延伸シートを得た。この未延伸シートを冷却ロールにて冷却した後、MD及びTDに逐次延伸した。MDの延伸は、上流側2本、下流側2本のロールを用いてシートをニップし、下流側のロールの回転速度を上流側の2.4倍に設定して行った。TDの延伸は、シートの端部をチャックで掴み、槽内の雰囲気温度を139℃に設定したテンター内で、テンター出口部分でのチャック幅が入口部分でのチャック幅の2.4倍となるよう設定して行った。テンター出口におけるシートの流れ方向の速度は66m/minであり、これを巻き取り張力300Nでロール状に巻き取り、二軸延伸シートを得た。得られたシートの厚みは0.25mmであった。また、シート中のゴム成分の含有量は0.1質量%、ゴム粒子の平均粒子径は5.0μmであった。また得られた二軸延伸シート中の未反応スチレンモノマーの含有量は500ppmであった。
【0057】
<実施例2~18及び比較例1~5>
樹脂組成を表3、表4に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、二軸延伸シート(実施例2~18及び比較例1~5)を得た。
【0058】
得られたシートについて、以下の方法にて物性測定、性能評価を行った。結果を表3~表5に示す。
【0059】
[延伸倍率]
二軸延伸シートの試験片に対して、MD及びTDに100mmの直線Yを引き、JIS K7206に準拠して測定したシートのビカット軟化点温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させ、23℃で1時間静置した後に常温で上記直線の長さZ[mm]を測定し、次式:
延伸倍率=Y/Z、単位[倍]
によってMD延伸倍率、TD延伸倍率、面倍率を算出した。
【0060】
[最大配向緩和応力、配向緩和応力の差]
二軸延伸シートから幅20mm×長さ200mmの試験片を得た。その試験片の両端を固定し、130℃のオイルバスに浸漬した後、荷重が最大となった時の応力値を算出した。その時のMDの応力値を最大配向緩和応力(a)とし、TDの応力値を最大緩和応力(b)とし、配向緩和応力の差として|(a)-(b)|を求めた。
【0061】
[重量平均分子量(Mw)]
GPC測定にて、以下の条件で、二軸延伸シートのMwを求めた。
装置:東ソー(株)製GPC「HLC-8320GPC」
カラム:shodex KF404×3
温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:0.2ml/分
圧力:10MPa
検出:RI
サンプル調製方法:試料(二軸延伸シート)120mgをテトラヒドロフラン15mLに溶解させた後、シリンジフィルター(メルクミリポア社製マイレクス(登録商標) 0.45um)を通しろ過を行った。
注入量:10μl
検量線:標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換してMwを求めた。
【0062】
[成形性]
熱板成形機(HPT-400A((株)脇坂エンジ二アリング製))にて、熱板温度135℃、加熱時間2.0秒の条件で、フードパック(寸法 蓋:縦150mm×横130mm×高さ30mm、本体:縦150mm×横130mm×高さ20mm)を成形した。100枚成形し、成形不良品(寸法と異なる形状又はコーナー部に形状不良を有するもの)の枚数を調べた。なお、枚数が4枚以下であれば成形性良好といえ、枚数は少ないほど好ましい。
【0063】
[成形品の強度]
上記[成形性]試験と同様にしてフードパックを成形した。得られたフードパックの上にアクリル板(寸法:縦150mm×横130mm×高さ2mm)を乗せ、卓上形精密万能試験機(AGS-100NX((株)島津製作所製))を用いて、アクリル板上部中央を圧縮治具(φ50mm固定式圧盤)により速度5mm/minで押し込み、成形品が座屈した時の圧縮荷重を測定した(雰囲気温度23℃)。なお、成形品が座屈した時の圧縮荷重は27N以上であると強度良好といえ、荷重が高いほど好ましい。
【0064】

【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
表3~表5から分かるとおり、所定の二軸延伸シートにおいて、メタクリル酸の含有量が2.5~9.0質量%であり、かつ二軸延伸シートの重量平均分子量が25万~40万である場合は、当該二軸延伸シートは成形性に優れ、かつ、当該二軸延伸シートから強度に優れた成形品が得られる(実施例1~18)。一方で、メタクリル酸の含有量及び重量平均分子量が上記範囲外である場合は、二軸延伸シートの成形性及び二軸延伸シートを成形してなる成形品の強度の両方を両立することはできない(比較例1~5)。
【0068】
さらに、他の性能についても以下のとおり評価を行った。これに際し、比較例6、7として、樹脂組成及びシート作製条件を表6に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸シートを得た。実施例1~18、比較例1~7の各シートについての結果を表7~表9に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
[耐熱性]
上記[成形性]試験と同様にしてフードパックを成形し、得られたフードパックを110℃に設定した熱風乾燥機に60分間入れた後、成形品の変形を目視で観察し、外寸の変化を調べた。なお、外寸変化は5%未満であれば耐熱性に優れているといえ、外寸変化は小さいほど好ましい。
【0071】
[透明性]
JIS K7361-1に準じ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業(株))により、二軸延伸シートのヘーズを測定した。なお、ヘーズが3.0%未満であれば透明性に優れているといえ、ヘーズの値は小さいほど好ましい。
【0072】
[滑性]
上記[成形性]試験と同様に成形したフードパックの平滑な天面から切り出した二軸延伸シートの食品接触面と食品非接触面を重ねた状態にて、JIS P8147紙及び板紙-静及び動摩擦係数の測定方法に準じた方法にて摩擦角(滑り始める角度)を測定した。なお、摩擦角が30°未満であれば滑性に優れているといえ、摩擦角は小さいほど好ましい。
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】