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特開2023-12087業務分析システムおよび業務分析用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012087
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】業務分析システムおよび業務分析用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0639 20230101AFI20230118BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALN20230118BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115522
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】土元 翔平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和泉
(72)【発明者】
【氏名】水口 暢章
(72)【発明者】
【氏名】吉見 立也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA10
5L099AA11
(57)【要約】
【課題】分析対象を特定して行う業務分析をより安価に行うことができる業務分析システムおよび業務分析用プログラムを提供する。
【解決手段】複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段41と、同期映像から被業務分析対象の動線を取得する動線取得手段42と、取得した動線とマップの位置座標から被業務分析対象の業務内容を時系列で取得する業務内容取得手段43と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
取得した前記動線と前記マップの位置座標から被業務分析対象の業務内容を時系列で取得する業務内容取得手段と、を備える業務分析システム。
【請求項2】
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報と、前記動線から得られる前記被業務分析対象の前記業務遂行場所における滞在時間から前記業務遂行場所における業務内容を取得する業務内容取得手段と、を備える業務分析システム。
【請求項3】
前記業務内容取得手段は、前記被業務分析対象の所定時間内における複数の業務内容と前記複数の業務内容のそれぞれの業務遂行時間を取得する請求項1または2に記載の業務分析システム。
【請求項4】
前記動線取得手段は、複数の前記被業務分析対象をラベリングして、その動線をそれぞれ取得し、
前記業務内容取得手段は、前記複数の被業務分析対象の所定時間内における複数の業務内容と前記複数の業務内容のそれぞれの業務遂行時間を前記複数の被業務分析対象毎に取得する請求項3に記載の業務分析システム。
【請求項5】
前記動線取得手段は、複数の前記被業務分析対象をラベリングして、その動線をそれぞれ取得し、
前記業務内容取得手段は、取得した前記複数の被業務分析対象の複数の動線のうち、少なくとも一交差点で交差する少なくとも2本の動線と前記少なくとも一交差点の前記マップの位置座標から、前記交差する少なくとも2本の動線に対応する前記複数の被業務分析対象のうちの少なくとも一つの被業務分析対象の前記少なくとも一交差点における業務内容を取得する請求項1に記載の業務分析システム。
【請求項6】
前記動線取得手段は、複数の前記被業務分析対象をラベリングして、その動線をそれぞれ取得し、
前記業務内容取得手段は、取得した前記複数の被業務分析対象の複数の動線のうち、少なくとも一交差点で交差する少なくとも2本の動線が交差する前記少なくとも一交差点の業務遂行場所情報であって、前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報から得られる前記業務遂行場所情報と、前記交差する少なくとも2本の動線に対応する前記複数の被業務分析対象のうちの少なくとも一つの被業務分析対象の前記少なくとも一交差点における滞在時間から、前記交差する少なくとも2本の動線に対応する前記複数の被業務分析対象のうちの前記少なくとも一つの被業務分析対象の前記少なくとも一交差点における業務内容を取得する請求項2に記載の業務分析システム。
【請求項7】
前記業務内容取得手段は、前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報と、前記被業務分析対象の身体的負担度を計測する身体的負担度計測手段から取得される前記被業務分析対象の身体的負担度情報から前記業務遂行場所における業務内容を取得する請求項1または2に記載の業務分析システム。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
取得した前記動線と前記マップの位置座標から被業務分析対象の業務内容を時系列で取得する業務内容取得手段と、
して機能させる業務分析用プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報と、前記動線から得られる前記被業務分析対象の前記業務遂行場所における滞在時間から前記業務遂行場所における業務内容を取得する業務内容取得手段と、
して機能させる業務分析用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務分析システムおよび業務分析用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
業務を分析する方法として、機器を携帯する動線調査(例えば、ビーコンによる動線調査(特許文献1参照))、GPSを用いた調査、STS分析(自己時間分析)、または調査員による追従調査(タイムスタディ調査)等がある。また、工場や物流の現場や店舗等で使用されているカメラを用いた動線解析システムもある(特許文献2,3,4参照))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-144941号公報
【特許文献2】特開2003-256843号公報
【特許文献3】特開2011-170565号公報
【特許文献4】特開2014-232362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器を携帯する調査においては、機器が業務の妨げになる、空間分解能が低い(1-10m)、使用場所が限られるという問題がある。GPSを用いた調査については、調査場所が屋外のみに限られ、空間分解能が低い(5-10m)という問題がある。またSTS分析では、通常は15分毎の業務の記録であり動線は記録されないため、デスクワークの業務分析には適するが実働を伴う業務分析には適さない。タイムスタディ調査は、調査対象者1人あたりに、1人または2人の記録者が業務時間中に常時追従し、業務内容の記録を行う調査方法である。この調査は専門の記録者が行う必要があるため相当のコスト(調査対象者5名で1日(昼間8時間)あたり数十万円)がかかる、通常は1分毎の記録であるため、1分以内で起きる出来事(業務)が記録されない、調査日には複数の記録者が職場内を移動するため他の職員や訪問者の妨げになり得る、実際の動線は記録されない、など多くの問題点が指摘されている。
【0005】
また、工場や物流の現場や店舗等で使用されているカメラを用いた動線解析システムにかかるコストは数千万円であり、規模が大きく、本発明が目指す業務分析とは対象が異なる。また、上記のような業務分析システムを総合的に提供している会社もあるが、主に不特定多数を対象として、人の動きや流れを定量化・分析するシステムであり、調査対象者を特定して行うような業務内容の調査については提供していない。
【0006】
本開示の主な目的は、分析対象を特定して行う業務分析をより安価に行うことができる業務分析システムおよび業務分析用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
取得した前記動線と前記マップの位置座標から被業務分析対象の業務内容を時系列で取得する業務内容取得手段と、を備える業務分析システムが提供される。
【0008】
また、本開示によれば、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報と、前記動線から得られる前記被業務分析対象の前記業務遂行場所における滞在時間から前記業務遂行場所における業務内容を取得する業務内容取得手段と、を備える業務分析システムが提供される。
【0009】
また、本開示によれば、
コンピュータを、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
取得した前記動線と前記マップの位置座標から被業務分析対象の業務内容を時系列で取得する業務内容取得手段と、
して機能させる業務分析用プログラムが提供される。
【0010】
また、本開示によれば、
コンピュータを、
複数の映像カメラからそれぞれ取得した複数の映像が同期され、マップの位置座標と関連付けられた同期映像を得る同期映像取得手段と、
前記同期映像から被業務分析対象をラベリングして、その動線を取得する動線取得手段と、
前記マップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報と、前記動線から得られる前記被業務分析対象の前記業務遂行場所における滞在時間から前記業務遂行場所における業務内容を取得する業務内容取得手段と、
して機能させる業務分析用プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、分析対象を特定して行う業務分析をより安価に行うことができる業務分析システムおよび業務分析用プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムのハードウエア構成を説明するための図である。
図2図2は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムの機能構成を説明するための図である。
図3図3は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムの処理を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムの映像カメラおよびレコーダーの設置を説明するための図である。
図5図5は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、映像をフロアマップ上に配置した状態を説明するための図である。
図6図6は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおける対象者のラベリングを説明するための図である。
図7図7は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、動線をフロアマップ上に描画した状態を説明するための図である。
図8図8は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、フロアマップ上の場所と業務の紐付けを説明するための図である。
図9図9は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおける、業務分析結果を説明するための図である。
図10図10は、タイムスタディによる業務分析結果を説明するための図である。
図11図11は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて使用する、移乗支援機器リショーネを説明するための図である。
図12図12は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて使用する、移乗支援機器リショーネの2点追尾を説明するための図である。
図13図13は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、居室外にいる時間分析を行ったフロアを説明するための図である。
図14図14は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、居室外にいる時間分析対象日の居室外にいる時間分析の結果を説明するための図である。
図15図15は、本開示の好ましい実施の形態の業務分析システムにおいて、居室外にいる時間分析対象日の翌日の居室外にいる時間分析の結果を説明するための図である。
図16図16は、本開示の他の好ましい実施の形態の業務分析システムのハードウエア構成を説明するための図である。
図17図17は、本開示の他の好ましい実施の形態の業務分析システムの処理を説明するためのフローチャートである。
図18図18は、本開示の他の好ましい実施の形態の業務分析システムにおける、業務分析結果を説明するための図である。
図19図19は、本開示のさらに他の好ましい実施の形態の業務分析システムのハードウエア構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1を参照すれば、本開示の業務分析システム1は、業務分析システム本体10、レコーダー17、映像カメラ18および送受信機31を備えている。
【0015】
映像カメラ18は複数台備え付けられており、それぞれの映像カメラ18からの映像はレコーダー17に記録される。映像カメラとして解像度の高い全天球カメラを用いた場合には、設置するカメラ台数を少なくすることが可能である。
【0016】
業務分析システム本体10は、CPU11、RAM12、記憶装置13、入力装置14および表示装置15を備えている。RAM12、記憶装置13、入力装置14および表示装置15は、内部バス16を介して、CPU11とデータ交換可能なように構成されている。
【0017】
記憶装置13は、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブで構成されている。記憶装置13は、インストールされたプログラムを格納すると共に、種々のデータ等を格納する。RAM12は、CPU11よって読み出されたプログラムやデータ等を一時的に格納する。
【0018】
CPU11は、RAM12に一時的に格納されたプログラムを実行して、業務分析システム1の機能を実現する。CPU11は、RAM12に一時的に格納されたプログラムの内容に沿うように、入力装置14および表示装置15を制御する。表示装置15は、プログラムの内容に従い、CPU11による指令を受けて、業務分析に必要な情報の入力用画面を表示し、業務分析実施者による、入力装置14を介した、業務分析に必要な情報の入力を受け付け、また、業務分析結果を画面に表示する。CPU11は、プログラムの内容に従い、レコーダー17から送られてくる映像を記憶装置13内に格納する。CPU11は、プログラムの内容に従い、記憶装置13内に格納されたデータを、送受信機31とネットワーク32を介して外部サーバー33に送信し、外部サーバー33からデータをネットワーク32と送受信機31を介して受信し、記憶装置13内に格納する。
【0019】
図2を参照すれば、業務分析システム1は、同期映像取得手段41と、動線取得手段42と、業務内容取得手段43とを備えている。同期映像取得手段41は、レコーダー17から送られてきて、記憶装置13内に格納された映像の時刻同期を行い、同期した映像をフロアマップ上に配置する。動線取得手段42は、被業務分析対象者をラベリングし、被業務分析対象者を追従し動線(時系列の座標データ)を取得する。業務内容取得手段43は、動線をフロアマップ上に描画し、フロアマップ上の場所と業務の紐付けを行い、業務内容(と滞在時間)を被業務分析対象者毎に取得し、表示装置15に出力する。
【0020】
図2図3を参照すれば、まず、映像カメラ18とレコーダー17を設置し(ステップS10)、レコーダー17による各映像カメラ18からの映像取得を行い(ステップS20)、次に、同期映像取得手段41が、レコーダー17から送られてきた映像の同期映像を取得し、同期映像をフロアマップ上に配置し(ステップS30)、動線取得手段42が、被業務分析対象者の動線を取得し(ステップS40)、業務内容取得手段43が、被業務分析対象者の業務内容を取得し、出力する(ステップS50)。
【0021】
次に、ステップS10~S50をより詳細に説明する。
図3図4を参照すれば、ステップS10においては、介護老人保健施設のフロアに複数台(本実施の形態では7台)の映像カメラ18を設置する。この際には、映像カメラ同士の画像の端が重なるように設置することが好ましい。また、レコーダ17を同じフロアに設置する。このフロアにおいては、介護老人保健施設の利用者の居室(P)が周りに配置されており、居室(P)を結ぶ廊下(C)や、共有キッチン(K)、共有トイレ(T)、記録台(R)等が配置されている(図8参照)。
【0022】
ステップS20においては、業務分析を行う期間を決定し、その期間中、レコーダ17に7台の映像カメラ18でそれぞれ撮影する映像を自動記録させる。その後、レコーダ17に記録された映像は、業務分析システム本体10に送られ、記憶装置13内に格納される。
【0023】
次に、同期映像取得及び配置ステップS30についてさらに説明する。同期映像取得及び配置ステップS30は、映像の時刻同期ステップS301と同期映像をフロアマップ上に配置するステップS302とを備えている。
【0024】
映像の時刻同期ステップS301では、7台の映像カメラ18でそれぞれ撮影したカメラ映像上の時刻の刻印より、ずれの秒数を確認し、そのずれの値を入力装置14により入力した。入力されたずれの値を用いて、7台の映像カメラ18でそれぞれ撮影した映像の時刻同期を行った。
【0025】
次に、ステップS302で、同期した映像をフロアマップ上に配置した(図5参照)。この際、半透明化して、フロア上で見やすく配置した。なお、ここでは、行っていないが、魚眼レンズの補正を入れることで見やすくすることも可能である。
【0026】
フロアマップ上に配置された同期映像データを記憶装置13に格納した。
【0027】
次に、動線取得ステップS40についてさらに説明する。動線取得ステップS40は、被業務分析対象者をラベリングするステップS401と、被業務分析対象者を追従し動線(時系列の座標データ)を取得するステップS402とを備えている。
【0028】
ステップS401では、記憶装置13にインストールされた機械学習ライブラリ(DeepLabCut等)を実行し、DeepLabCut等上で、1時間のフロアマップ動画(フロアマップ上に配置された同期映像データ)にて、被業務分析対象者についてティーチングを行いラベリングした(図6参照)。被業務分析対象者1、2、3の3名のティーチングはそれぞれ1時間の画像で、30秒おきで、120枚のフレームで行った。このようにして得られたラベリングデータを、送受信機31、ネットワーク32を介して外部サーバー33に送信し、格納した。
【0029】
ステップS402では、外部サーバー33のGoogle Colaboratory上でラベリングデータを元に解析をそれぞれ行い、被業務分析対象者1、2、3をそれぞれ追従し、動線(時系列の座標データ)を取得した。この解析には、被業務分析対象者1名につき、1時間分の動線取得に関して、約3~6時間を要した。その後、得られた動線データを、外部サーバー33から、ネットワーク32、送受信機31を介して、業務分析システム本体10の記憶装置13内に格納した。なお、外部サーバー33上ではなく、業務分析システム本体10内で、CPU11の制御の下、GPU(Graphics Processing Unit)上でラベリングデータを元に解析をそれぞれ行い、被業務分析対象者1、2、3をそれぞれ追従し、動線(時系列の座標データ)を取得し、その結果を記憶装置13内に格納してもよい。
【0030】
次に、業務内容取得及び出力ステップS50についてさらに説明する。業務内容取得及び出力ステップS50は、動線をフロアマップ上に描画するステップS501と、フロアマップ上の場所と業務の紐付けを行うステップS502と、業務内容(と滞在時間)を被業務分析対象者毎に取得し、出力するステップS503とを備えている。
【0031】
ステップS501では、得られた動線データをフロアマップ上に描画した(図7参照)。
【0032】
ステップS502では、予め求めておき、記憶装置13内に格納されていたフロアマップの位置座標と、業務遂行場所情報とから、フロアマップの位置座標と業務の紐づけを行った(図8参照)。なお、図8で、居室はP、キッチンはK、記録台はR、トイレはT、廊下はCで表している。
【0033】
ステップS503では、動線(時系列の座標データ)と、業務の紐づけを行ったフロアマップの位置座標とにより、被業務分析対象者1、2、3の各人につき、時系列の業務内容を一次取得した。
【0034】
次に、動線(時系列の座標データ)と、業務の紐づけを行ったフロアマップの位置座標とにより、被業務分析対象者1、2、3の各人につき、各業務遂行場所における滞在時間を取得し、各業務遂行場所における滞在時間から業務内容を二次取得した。各業務遂行場所における滞在時間がわかることにより、より正確に各業務遂行場所における業務内容が取得できるようになる。
【0035】
次に、被業務分析対象者1、2、3の各人につき、業務内容と、滞在時間の関係を、表示装置15に表示した。なお、この関係を示す図は、必要に応じてプリンター(図示せず)等に出力することができる。図9は、一例として、被業務分析対象者1につき、12時~18時の間の勤務分の業務内容と、滞在時間の関係を示した図である。図10は、調査員によるタイムスタディによる、被業務分析対象者1の、12時~18時の間の勤務分の業務調査結果を示す図である。図9図10を比較すると、本実施の形態の業務分析によれば、十分な精度で、業務分析を行うことがわかる。
【0036】
また、ステップS503では、業務内容取得手段43は、取得した被業務分析対象者1、2、3の各人の動線のうち、少なくとも一交差点で交差する少なくとも2本の動線とこの少なくとも一交差点のフロアマップの位置座標から、交差する少なくとも2本の動線に対応する被業務分析対象者1、2、3のうちの少なくとも一つの被業務分析対象者のこの少なくとも一交差点における業務内容を取得し、表示装置15に表示する。
【0037】
さらに、また、ステップS503では、業務内容取得手段43は、フロアマップの位置座標に予め対応付けられていた業務遂行場所情報から得られる上記少なくとも一交差点における業務遂行場所情報と、上記交差する少なくとも2本の動線に対応する被業務分析対象者1、2、3のうちの少なくとも一つの被業務分析対象者の上記少なくとも一交差点における滞在時間から、上記交差する少なくとも2本の動線に対応する被業務分析対象者1、2、3のうちの少なくとも一人の被業務分析対象者の上記少なくとも一交差点における業務内容を取得し、表示装置15に表示する。
【0038】
例えば、被業務分析対象者1、2、3の動線のうち、少なくとも2本の動線が少なくとも一交差点で交差している場合には、少なくとも2本の動線に対応する被業務分析対象者1、2、3の少なくとも2者は、同時に同じ場所(一交差点)に滞在することから、少なくとも2者が例えば介護者の場合は、一交差点で同じ業務(例えば介護業務)に携わっていると考えられ、少なくとも2本の動線に対応する被業務分析対象者1、2、3の少なくとも2者の、この一交差点における業務内容を取得する。
【0039】
また、例えば、被業務分析対象者1が介護者で、被業務分析対象者2が被介護者の場合は、被業務分析対象者1の動線と被業務分析対象者2の動線が交差する交差点で、被業務分析対象者1が被業務分析対象者2の介護を行っていると、被業務分析対象者1の業務内容が、被業務分析対象者1の単独の動線を使用した場合に比べて、より正確に取得される。
【0040】
この場合に、被業務分析対象者1の動線と被業務分析対象者2の動線が交差する交差点で、被業務分析対象者1と被業務分析対象者2が、長い時間一緒にいた場合は、この交差点おける業務遂行場所情報と滞在時間に応じて、食事介助、入浴介助、リハビリ、服薬等の業務内容がより詳細に取得される。
【0041】
また、被業務分析対象者1、2が介護者で、被業務分析対象者3が被介護者の場合は、被業務分析対象者1、2、3の動線が交差する交差点で、被業務分析対象者1、2による
複数介助を行っているという業務内容が、被業務分析対象者1、2の単独の動線をそれぞれ使用した場合に比べて、より詳細に取得される。
【0042】
また、被業務分析対象者1、2が介護者で、被業務分析対象者2が被介護者の場合であって、被業務分析対象者1の動線と被業務分析対象者2の動線が交差する交差点の業務遂行場所情報が、浴室の場合には、浴室に、介護者2名が入室し、そこに利用者1名がいるという状況が発生し、浴室内の滞在時間が20分以上である場合には、介護者2名による被介護者の入浴介助という業務内容がより詳細に取得される。
【0043】
以上の実施の形態では、被業務分析対象として、被業務分析対象者1、2、3と人物の場合を説明したが、被業務分析対象としては、人物に限られず、物についても、本開示の技術は適用できる。例えば、移乗支援機器リショーネについても適用できる。図11に示す移乗支援機器リショーネについて、図12に示すように、2点51、52のティーチングを行い、2点で追従し、移乗支援機器リショーネの動線を取得して、介護施設の居室外の共有スペースと洗面台付近の滞在時間を取得したところ、調査員によるタイムスタディによる結果と同等の結果が得られた。
【0044】
次に、図13に示す介護施設で、被業務分析対象者(ここでは、被介護者)が居室外にいる滞在時間を取得した結果について説明する。図13で、黒い矩形は被介護者の滞在した場所、すなわち動線の軌跡を示している。
【0045】
図14は、被業務分析対象者(被介護者)について、ティーチングを行いラベリングし、その後、被業務分析対象者(被介護者)の動線を求めて、居室外の滞在時間を取得した結果を示す図である。図15は、被業務分析対象者(被介護者)について、図14の結果を得る際にティーチングを行いラベリングしたデータを使用し、翌日、被業務分析対象者(被介護者)の動線を求めて、居室外の滞在時間を取得した結果を示す図である。なお、図14図15において、縦軸の時間の単位は分である。一度ティーチングを行いラベリングした被業務分析対象者については、別日の解析においても、ティーチングを行いラベリングした日と同様に認識できることがわかる。翌日に限らず、数か月を超える業務分析にも適用可能である。
【0046】
図16を参照すれば、本開示の他の好ましい実施の形態の業務分析システム2は、ウエアラブル心拍センサ19を備えている。その他の構成は図1に示した業務分析システム1と同じである。図17を参照すれば、本開示の他の好ましい実施の形態の業務分析システムの処理を説明するためのフローチャートでは、上述の好ましい実施の形態の業務分析システムでは、業務内容取得及び出力ステップS50は、業務内容(と滞在時間)を被業務分析対象者毎に取得し出力するステップS503を備えていたが、この他の好ましい実施の形態では、業務内容と身体的負担度を被業務分析対象者毎に取得し出力するステップS503‘を備えている点が、上述の好ましい実施の形態の業務分析システムと異なるが、他の点は同じである。
【0047】
被業務分析対象者(介護職員)がウエアラブル心拍センサ19を携帯した状態で、映像カメラ18とウエアラブル心拍センサ19を同時計測し、映像カメラ18で求めた動線上に心拍数をプロットした結果を図18に示す。心拍数そのものを時系列で、動線の座標に紐づけて座標上に表示した図である。同じ座標に重なった場合は、後の方の表示が優先になっている。
【0048】
心拍数が高くなっていると棒グラフが黒色になる。黒に近い色になっている棒グラフ(矢印で指し示した)の立ち上がっている部分が、トイレの座標であり、排泄介護に関わるトイレに滞在中は、心拍数の上昇(120-140回/分)が認められるのに対して、キッチンでは比較的落ち着いている(90-120回/分)ことがわかる。なお、中央左側のトイレでは、心拍数は低い状態であり、介助を行わない業務であったと解析される。
【0049】
このように、職務内容と関連付けした身体負担分析が可能であり、動線による業務分析に加えてさらに詳細に業務分析を行うことが可能となる。身体的負担度を併せて取得することはたいへん意味のあることであり、例えば、ロボット介護機器を使用した場合に、どのように負担度が軽減するといったデータを得ることが可能となる。
【0050】
図19を参照すれば、本開示のさらに他の好ましい実施の形態の業務分析システム3は、ICレコーダー20を備えている。その他の構成は図1に示した業務分析システム1と同じである。被業務分析対象者(例えば、介護職員)がICレコーダー20を携帯した状態で、映像カメラ18の計測と同時にICレコーダー20で発話された内容を録音すれば、発話された内容を動線上に表示することが可能となる。文章の羅列を貼り付ける、発話量との目安として単語の数をグラフで表示する等を行うことで、より詳細な業務分析の助けとなる。
【0051】
以上、本開示の好ましい実施の形態を説明したが、本開示の技術によれば、コストの問題で困難であった長期的(記録媒体に依存するが、数ヶ月以上の連続調査が可能)な業務分析が可能になる、秒単位の分解能で業務を記録できる、そしてカメラの設置だけで調査が可能である等の利点が得られる。なお、本開示の技術は、カラー映像でなく、白黒映像を使用しても分析が可能である。従って、さらに暗視機能のあるカメラを使用することで夜間の調査が可能である。
【0052】
また、一旦、被業務分析対象の特徴をラベリングするとそのデータを後に活用することも可能であるため、長期的な解析コストは小さくなる。また、カメラの画角、解像度等に依存するが、被業務分析対象のある場所、例えば腕や脚、におけるある身体的動作について、その場所をラベリンングすることで、その場所、例えば腕や脚、の動きを個別に解析することも司能である。このように、ラベリンングの場所を被業務分析対象の一部に限定することで、被業務分析対象全体ではなく、その場所の動きの解析も可能となる。
【0053】
また、本開示の技術では、1台1万円台のカメラと数万円の記録装置とパーソナルコンピュータのみで、分析が可能である。新規に設置する場合にはケーブル敷設費用として数十万円の費用がかかるが、カメラをマイクスタンド等に取り付けて一時的に設営することも可能であること、あるいは病院や施設等においては、既存のセキュリティカメラを用いて調査を行うことも可能であり、その場合には解析にかかる費用だけという、低コストな業務分析システムといえる。業務分析により、ある場所の利用が密になっていることや、ある業務にかかる時間が非常に多い、ある業務で心拍数や発話の割合が非常に高いなどの情報が半自動的に得られることで、業務改善の方向性が考えられる。
【0054】
導入の例として、介護関連施設がある。日本は高齢化に伴う介護人材不足が喫緊の課題となっており、介護施設における職員の負担軽減と労働効率化を実現するうえで、日本全国に数万件ある介護関連施設においてその業務内容を分析し、その結果に基づいて業務改善する取り組みが不可欠である。加えて近年、職員の負担軽減を目的としたロボット介護機器の開発が行われており、導入も進みつつある。しかしながら、それらを持続的に運用し続けるためには、現場におけるオペレーションの変更が必要であるため、施設内の職務を簡便に分析し可視化することが重要である。以上より、本開示の技術は市場にマッチする。
【0055】
本開示の技術は、上述のとおり、介護施設における介護者の業務分析調査に好適に適用できるが、病院内のスタッフの動線調査、工場等における作業員の動線・業務分析、さらに小規模店舗における顧客調査等、人と場所、人と人、さらには人と物が直接関わる業務に活用できる。
【0056】
また、本開示の技術では、閉じた空間(ひとつの施設、フロア等)における全業務を対象として、例えば、どの人がどの人の介助に関わるか、介助に関わっていない人についても全て、その時間にどのような業務を行っているかを特定できる。以前から用いられているタイムスタディという方法では、このような業務分析は困難である。
【0057】
以上、本開示の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本開示はこれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3…業務分析システム
41…同期映像取得手段
42…動線取得手段
43…業務内容取得手段
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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