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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120881
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】洗浄機及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/46 20060101AFI20230823BHJP
   A47L 15/22 20060101ALI20230823BHJP
   A47L 15/42 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A47L15/46 Z
A47L15/22
A47L15/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023998
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】細木 忠治
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082BD05
3B082DC02
3B082DC04
3B082DC05
(57)【要約】
【課題】満水位にあることを検知するフロートスイッチを設けることなく、濯ぎタンクにおいてどのような種類の不具合が発生しているかを検知することができる洗浄機及び制御装置を提供する。
【解決手段】食器洗浄機100は、濯ぎタンク6と、供給弁80と、濯ぎ水検知部62と、濯ぎ水ヒータ64Aと、濯ぎ水温度センサ64Bと、を有する濯ぎ水供給装置90を制御するコントローラ10を備える。コントローラ10は、濯ぎタンクへの水の供給を停止するように供給弁を制御すると共に、濯ぎタンクに貯留された水を加熱するように濯ぎ水ヒータを制御した状態において、濯ぎタンクに貯留された水の温度変化量と予め記憶された基準温度変化量との乖離状態を導出し、導出した乖離状態と、乖離状態のレベルごとに濯ぎ水供給装置における不具合の種類が関連付けられた不具合情報と、に基づいて、不具合の種類を特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄する洗浄機であって、
前記被洗浄物の濯ぎに用いられる水を貯留する濯ぎタンクと、前記濯ぎタンクへの水の供給の有無を切り替える供給弁と、前記濯ぎタンクに貯留された水が規定水位にあることを検知する水位検知部と、前記濯ぎタンクに貯留された水を加熱する加熱部と、前記濯ぎタンクに貯留された水の温度を検知する温度検知部と、を有する濯ぎ水供給装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記水位検知部の検知結果に基づいて前記濯ぎタンクへの水の供給を停止するように前記供給弁を制御すると共に、前記濯ぎタンクに貯留された水を加熱するように前記加熱部を制御した状態において、
前記温度検知部による検知結果に基づいて導出される前記濯ぎタンクに貯留された水の単位時間当たりの温度変化量と予め記憶された基準温度変化量とがどのように乖離しているかを示す乖離状態を導出し、
導出した前記乖離状態と、前記乖離状態のレベルごとに前記濯ぎ水供給装置における不具合の種類が関連付けられた不具合情報と、に基づいて、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類を特定する、洗浄機。
【請求項2】
前記供給弁は、流路の開閉を行う弁部と前記弁部を駆動する駆動部とを有し、
前記不具合情報における前記不具合の種類は、前記弁部における異物の噛み込みを起因とする第一止水不良、前記駆動部の故障を起因とする第二止水不良、及び前記加熱部の故障を起因とする加熱不良の三つの中の少なくとも二つであり、
前記制御部は、前記乖離状態に基づいて、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類が、前記第一止水不良、前記第二止水不良及び前記加熱不良の少なくとも二つを区別して特定する、請求項1記載の洗浄機。
【請求項3】
前記乖離状態のレベルには、前記温度変化量が前記基準温度変化量から第一所定度合乖離した状態の第一乖離状態と、前記温度変化量が前記基準温度変化量から第一所定度合より大きな第二所定度合乖離した第二乖離状態と、前記温度変化量が前記基準温度変化量から第二所定度合より大きな第三所定度合乖離した第三乖離状態と、があり、
前記制御部は、前記乖離状態が前記第一乖離状態にあるときに、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類が前記第一止水不良であると特定し、前記乖離状態が前記第二乖離状態にあるときに、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類が前記加熱不良であると特定し、前記乖離状態が前記第三乖離状態にあるときに、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類が前記第二止水不良であると特定する、請求項2記載の洗浄機。
【請求項4】
洗浄機における被洗浄物の濯ぎに用いられる水を貯留する濯ぎタンクと、前記濯ぎタンクへの水の供給の有無を切り替える供給弁と、前記濯ぎタンクに貯留された水が規定水位にあることを検知する水位検知部と、前記濯ぎタンクに貯留された水を加熱する加熱部と、前記濯ぎタンクに貯留された水の温度を検知する温度検知部と、を有する濯ぎ水供給装置を制御する制御装置であって、
前記水位検知部の検知結果に基づいて前記濯ぎタンクへの水の供給を停止するように前記供給弁を制御すると共に、前記濯ぎタンクに貯留された水を加熱するように前記加熱部を制御した状態において、
前記温度検知部による検知結果に基づいて導出される前記濯ぎタンクに貯留された水の単位時間当たりの温度変化量と予め記憶された基準温度変化量とがどのように乖離しているかを示す乖離状態を導出し、
導出した前記乖離状態と、前記乖離状態のレベルごとに前記濯ぎ水供給装置における不具合の種類が関連付けられた不具合情報と、に基づいて、前記濯ぎ水供給装置において発生していると予測される前記不具合の種類を特定する、制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器等の被洗浄物の洗浄を行う洗浄機及び濯ぎ水供給装置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食器の濯ぎに用いられる水を貯留する濯ぎタンクと、濯ぎタンクに水を供給するウォータバルブと、濯ぎタンクに貯留された水が定水位にあることを検知する第一フロートスイッチと、濯ぎタンクにおいて満水位を超えた水を排出するオーバーフローパイプと、を備える食器洗浄機が開示されている。このような食器洗浄機では、第一フロートスイッチが故障した場合にはオーバーフローパイプから水が排出され続け、この止水不良に気付かない場合には、膨大な水道代がかかることになる。このような問題に対して、例えば、特許文献1では、上記従来の構成に加え、定水位よりも高い満水位にあることを検知する第二フロートスイッチを備え、仮に第一フロートスイッチが故障したとしても早期に止水不良を検知できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-261558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第二フロートスイッチは、止水不良が発生しない限り、常に蒸気にさらされる過酷環境に設置されるので、故障が発生するリスクが高くなっている。また、止水不良といっても、供給弁の弁部がゴミ等の異物を噛み込んで少量の水が漏れ出るケースもあれば、弁部を駆動するソレノイドが故障したことによってまとまった量の水が続けて流れ出るケースもあり、どのような止水不良が発生しているかを知りたいという要望もある。また、濯ぎタンクに設けられている加熱部の異常の有無も合わせて知りたいという要望もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、満水位にあることを検知するフロートスイッチを設けることなく、濯ぎタンクにおいてどのような種類の不具合が発生しているかを検知することができる洗浄機及び制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄機は、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄する洗浄機であって、被洗浄物の濯ぎに用いられる水を貯留する濯ぎタンクと、濯ぎタンクへの水の供給の有無を切り替える供給弁と、濯ぎタンクに貯留された水が規定水位にあることを検知する水位検知部と、濯ぎタンクに貯留された水を加熱する加熱部と、濯ぎタンクに貯留された水の温度を検知する温度検知部と、を有する濯ぎ水供給装置を制御する制御部を備え、制御部は、水位検知部の検知結果に基づいて濯ぎタンクへの水の供給を停止するように供給弁を制御すると共に、濯ぎタンクに貯留された水を加熱するように加熱部を制御した状態において、温度検知部による検知結果に基づいて導出される濯ぎタンクに貯留された水の単位時間当たりの温度変化量と予め記憶された基準温度変化量とがどのように乖離しているかを示す乖離状態を導出し、導出した乖離状態と、乖離状態のレベルごとに濯ぎ水供給装置における不具合の種類が関連付けられた不具合情報と、に基づいて、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類を特定する。
【0007】
本発明の制御装置では、洗浄機における被洗浄物の濯ぎに用いられる水を貯留する濯ぎタンクと、濯ぎタンクへの水の供給の有無を切り替える供給弁と、濯ぎタンクに貯留された水が規定水位にあることを検知する水位検知部と、濯ぎタンクに貯留された水を加熱する加熱部と、濯ぎタンクに貯留された水の温度を検知する温度検知部と、を有する濯ぎ水供給装置を制御する制御装置であって、水位検知部の検知結果に基づいて濯ぎタンクへの水の供給を停止するように供給弁を制御すると共に、濯ぎタンクに貯留された水を加熱するように加熱部を制御した状態において、温度検知部による検知結果に基づいて導出される濯ぎタンクに貯留された水の単位時間当たりの温度変化量と予め記憶された基準温度変化量とがどのように乖離しているかを示す乖離状態を導出し、導出した乖離状態と、乖離状態のレベルごとに濯ぎ水供給装置における不具合の種類が関連付けられた不具合情報と、に基づいて、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類を特定する。
【0008】
この構成の洗浄機及び制御装置では、フロートスイッチによる満水位の検知結果ではなく、温度検知部による検知結果から導出される上記温度変化量に基づいて、濯ぎタンクにおいてどのような種類の不具合が発生しているかを特定している。これにより、満水位にあることを検知するフロートスイッチを設けることなく、濯ぎタンクにおいてどのような種類の不具合が発生しているかを検知することができる。更にこの構成の洗浄機では、上記温度変化量と予め記憶された基準温度変化量との乖離状態を導出し、その乖離状態がどのようなレベルであるかに応じて、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類を特定している。これにより、濯ぎ水供給装置においてどのような種類の不具合が発生しているかを検知することができる。
【0009】
本発明の洗浄機では、供給弁は、流路の開閉を行う弁部と弁部を駆動する駆動部とを有し、不具合情報における不具合の種類は、弁部における異物の噛み込みを起因とする第一止水不良、駆動部の故障を起因とする第二止水不良、及び加熱部の故障を起因とする加熱不良の三つの中の少なくとも二つであり、制御部は、乖離状態に基づいて、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類が、第一止水不良、第二止水不良及び加熱不良の少なくとも二つを区別して特定してもよい。この構成では、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類として、第一止水不良、第二止水不良及び加熱不良の少なくとも二つを区別して特定することができる。
【0010】
本発明の洗浄機では、乖離状態のレベルには、上記温度変化量が基準温度変化量から第一所定度合乖離した状態の第一乖離状態と、上記温度変化量が基準温度変化量から第一所定度合より大きな第二所定度合乖離した第二乖離状態と、上記温度変化量が基準温度変化量から第二所定度合より大きな第三所定度合乖離した第三乖離状態と、があり、制御部は、乖離状態が第一乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類が第一止水不良であると特定し、乖離状態が第二乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類が加熱不良であると特定し、乖離状態が第三乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類が第二止水不良であると特定してもよい。この構成では、濯ぎ水供給装置において発生していると予測される不具合の種類として、第一止水不良と第二止水不良と加熱不良とを区別して特定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、満水位にあることを検知するフロートスイッチを設けることなく、濯ぎタンクにおいてどのような種類の不具合が発生しているかを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る食器洗浄機の斜視図である。
図2図2は、図1の食器洗浄機の概略構成を示す図である。
図3図3は、図1の食器洗浄機の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、保温制御及び給水制御時において、濯ぎ水温度センサによって検知される温度の変化を示す図である。
図5図5は、変形例2に係る濯ぎタンクの一部を示す平面図である。
図6図6は、保温制御及び給水制御時において、変形例2に係る濯ぎ水温度センサによって検知される温度の変化を示す図である。
図7図7は、変形例3に係る濯ぎタンクの一部を示す平面図である。
図8図8は、保温制御及び給水制御時において、変形例3に係る濯ぎ水温度センサによって検知される温度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して一実施形態に係る食器洗浄機(洗浄機)100について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、説明の便宜のため、図1において、前後方向、左右方向及び上下方向をそれぞれ設定した。
【0014】
図1に示されるように、一実施形態に係る食器洗浄機100は、洗浄室1Bの前面にドア部15が設けられたアンダーカウンタ式の洗浄機である。図1及び図2に示されるように、食器洗浄機100は、本体部1と、ドア部15と、洗浄タンク20と、上側ノズル3と、下側ノズル4と、洗浄ポンプ5と、濯ぎタンク6と、濯ぎポンプ7と、洗剤供給ポンプ8と、リンス剤供給ポンプ9と、コントローラ(制御部)10と、を備えている。
【0015】
本体部1は、図示しないフレームと、ステンレス鋼製の外装パネル11と、内装パネル2と、を含んで形成されている。外装パネル11は、左右方向における側面を形成する一対の側部パネル11A,11Aと、上部パネル11Bと、上側前部パネル11Cと、下側前部パネル11Dと、後部パネル11Eと、を有している。少なくとも、下側前部パネル11Dは、フレームに対して容易に着脱可能に設けられている。本体部1の下部の四隅には、脚部12が取り付けられている。上側前部パネル11Cには、食器洗浄機100の各種動作を操作でき、食器洗浄機100の状態を表示する操作表示部13が設けられている。
【0016】
操作表示部13は、運転モードや各種設定の入力操作を行う部分である。本実施形態の操作表示部13は、液晶画面とこれを覆う強化ガラス(静電スイッチ)とによって構成されている。作業者は、液晶画面を覆う強化ガラスに触れることによって各種操作が可能となっている。なお、操作表示部13は、各種ボタンやタッチパネルによって構成されてもよいし、本体部1とは別体のリモコン、操作端末等によって構成されてもよい。
【0017】
本体部1の下部領域には、洗浄タンク20と、洗浄ポンプ5と、濯ぎタンク6と、濯ぎポンプ7と、洗剤供給ポンプ8と、リンス剤供給ポンプ9と、を収容する機械室1Aが形成されている。本体部1の上部領域には、食器(被洗浄物)D等がセットされたラックを収容する洗浄室1Bが形成されている。洗浄室1Bは、洗浄タンク20の上方の空間であって、内装パネル2によって構成されている。内装パネル2は、主に、一対の側部パネル2A、2Aと、上部パネル2Bと、後部パネル(図示せず)と、を有している。一対の側部パネル2A,2Aの内面には、ラックを支持するラックレール23が形成されている。本体部1には、食器D等がセットされたラックを洗浄室1Bに出し入れする開口部1Cが形成されている。
【0018】
ドア部15は、開口部1Cの外側に配置されている。ドア部15は、開口部1Cを開閉可能に設けられており、ドア部15が開けられると、開口部1Cの内側の洗浄室1Bが本体部1の外部に開放される。ドア部15は、ドア部15の下端において左右方向に延在する軸を回転軸として回動可能に設けられている。作業者は、ドア部15の上端に設けられた取っ手15Aを手前に倒すことで、洗浄室1Bを開放することができる。
【0019】
洗浄タンク20は、洗浄室1Bの下方に設けられている。洗浄タンク20は、洗浄室1Bに収容された食器D等の洗浄に用いられる洗浄水を貯留する貯留部22を有する。貯留部22は、側部20cと底部20aとから形成されている。洗浄タンク20には、洗浄水検知部24と、洗浄水ヒータ25Aと、洗浄水温度センサ25Bと、が設けられている。
【0020】
洗浄水検知部24は、貯留部22に貯留された洗浄水の水位を検知する。洗浄水検知部24は、例えば、貯留部22内の水位が定水位H1を超えている場合にONとなり、定水位H1以下の場合にOFFとなるスイッチである。洗浄水検知部24による検知結果は、コントローラ10によって取得される。後段にて詳述する洗浄ポンプ5は、駆動中に空気を吸い込むと、いわゆるエア噛みを起こして上側ノズル3及び下側ノズル4から洗浄水を噴射できなくなる。一実施形態では、洗浄水検知部24が運転中にOFFになったときに洗浄ポンプ5の稼働を停止することで、洗浄ポンプ5による空気の吸い込みを防止する。
【0021】
洗浄水ヒータ25Aは、殺菌能力及び洗浄能力を向上させるために貯留部22に貯留された洗浄水を加熱する。洗浄水温度センサ25Bは、貯留部22に貯留された洗浄水の温度を検知する。洗浄水温度センサ25Bによる検知結果は、コントローラ10によって取得される。洗浄水ヒータ25AにおけるON・OFFは、コントローラ10によって制御される。例えば、洗浄水ヒータ25Aは、洗浄水温度センサ25Bが検知する水温に基づいて洗浄水を所定温度に維持するように、コントローラ10によって制御される。
【0022】
貯留部22の底部20aには、円形状の貫通孔20bが形成されている。貫通孔20bは、厚み方向に貫通する複数の長孔が形成された円形の板状部材であって、異物の侵入を防止するポンプガード26によって覆われている。貫通孔20bは、接続部50を介して洗浄ポンプ5に接続されている。接続部50には、貫通孔20bに接続される第一接続孔50aと、本体部1の外部に水を排出する排水管28に接続される排水孔50bと、洗浄ポンプ5に接続される第二接続孔50cと、が形成されている。なお、接続部50は、洗浄ポンプ5を構成するケーシングの一部として洗浄ポンプ5と一体的に構成されてもよいし、洗浄タンク20の貯留部22と洗浄ポンプ5と接続する部材として洗浄ポンプ5とは別に設けられてもよい。
【0023】
洗浄タンク20には、上下方向に延びるオーバーフローパイプ27が設けられている。オーバーフローパイプ27は、貯留部22において所定水位を超えた水をその上端から流入させて洗浄タンク20の外部に排水し、貯留部22に貯留される洗浄水の水位を規定する。オーバーフローパイプ27の下端は貫通孔20bを覆うバーリング加工されたポンプガード26を通って接続部50に形成された排水孔50bに着脱可能に差し込まれている。オーバーフローパイプ27は、その下端が排水孔50bから抜き取られることで、貯留部22に貯留された洗浄水を、貫通孔20b及び排水孔50bを介して排出することができる。
【0024】
上側ノズル3は、洗浄室1Bの上方に設けられている。上側ノズル3は、洗浄室1Bの上方に設けられた上部支持部21Aに回転自在に設けられている。上側ノズル3は、上側ノズル3における回転軸の回転中心である基端部から半径方向に沿って先端部まで延在するノズル本体部30を有している。ノズル本体部30には、洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を噴射する洗浄噴射孔31と、回転中心から洗浄噴射孔31まで延在すると共に洗浄水が流通する洗浄流路32と、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を噴射する濯ぎ噴射孔33と、回転中心から濯ぎ噴射孔33まで延在すると共に濯ぎ水が流通する濯ぎ流路34と、が一体的に形成されている。上側ノズル3は、洗浄流路32に発生する洗浄水の流れ又は濯ぎ流路34に発生する濯ぎ水の流れが回転力に変換されることによって回転する。上側ノズル3には、洗浄流路32に洗浄水を供給する上側洗浄配管58及び濯ぎ流路34に濯ぎ水を供給する上側濯ぎ配管78が接続されている。
【0025】
下側ノズル4は、洗浄室1Bの下方に設けられている。下側ノズル4は、洗浄室1Bの下方に設けられた下部支持部21Bに回転自在に設けられている。下側ノズル4は、下側ノズル4における回転軸の回転中心である基端部から半径方向に沿って先端部まで延在するノズル本体部40を有している。ノズル本体部40には、洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を噴射する洗浄噴射孔41と、回転中心から洗浄噴射孔41まで延在すると共に洗浄水が流通する洗浄流路42と、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を噴射する濯ぎ噴射孔43と、回転中心から濯ぎ噴射孔43まで延在すると共に濯ぎ水が流通する濯ぎ流路44と、が一体的に形成されている。下側ノズル4は、洗浄流路42に発生する洗浄水の流れ又は濯ぎ流路44に発生する濯ぎ水の流れが回転力に変換されることによって回転する。下側ノズル4には、洗浄流路42に洗浄水を供給する下側洗浄配管59及び濯ぎ流路44に濯ぎ水を供給する下側濯ぎ配管79が接続されている。
【0026】
食器ラックに並べられた食器Dは、洗浄工程において上側ノズル3及び下側ノズル4によって洗浄水が噴射され、濯ぎ工程において上側ノズル3及び下側ノズル4によって濯ぎ水が噴射される。
【0027】
洗浄ポンプ5は、機械室1Aに配置されている。洗浄ポンプ5は、食器D等を収容する洗浄室1Bに洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を送り出す。洗浄ポンプ5は、接続部50を介して貯留部22の洗浄水を取り込み、上側ノズル3及び下側ノズル4に洗浄水を送り出す。洗浄ポンプ5の第一吐出口には、上側洗浄配管58が接続されている。上側洗浄配管58は、上側ノズル3に接続されている。洗浄ポンプ5の第二吐出口には、下側洗浄配管59が接続されている。下側洗浄配管59は、下側ノズル4に接続されている。
【0028】
濯ぎタンク6は、機械室1Aに配置されている。濯ぎタンク6は、食器D等の濯ぎに用いられる濯ぎ水を貯留する。濯ぎタンク6には、外部の水源から給水管(流路)60を介して水が供給される。給水管60には、ストレーナ60Aが設けられている。給水管60におけるストレーナ60Aの下流側には、供給弁80が設けられている。供給弁80は、給水管60の開閉を行う弁部81と弁部81を駆動する駆動部82とを有し、濯ぎタンク6への水の供給の有無を切り替える。駆動部82の例には、ソレノイドが含まれる。駆動部82は、コントローラ10によって制御される。
【0029】
濯ぎタンク6には、濯ぎ水検知部(水位検知部)62と、オーバーフロー部(排出部)63と、濯ぎ水ヒータ(加熱部)64Aと、濯ぎ水温度センサ(温度検知部)64Bと、が設けられている。
【0030】
濯ぎ水検知部62は、濯ぎタンク6に貯留された水が、定水位(規定水位)H2にあることを検知するフロートスイッチである。濯ぎ水検知部62の検知結果は、コントローラ10によって取得される。供給弁80は、コントローラ10によって制御されている。例えば、コントローラ10は、濯ぎ水検知部62における定水位H2の検知と連動して弁部81を開閉し、濯ぎタンク6に貯留される濯ぎ水の水位を一定に維持するように、駆動部82を制御する。
【0031】
オーバーフロー部63は、濯ぎタンク6において定水位H2よりも高い水位である満水位H3を超えた水を排出する。濯ぎタンク6は、密閉型のタンクであり、例えば、供給弁80が閉弁異常となったときに満水位H3を超える。
【0032】
濯ぎ水ヒータ64Aは、殺菌能力及び濯ぎ能力を向上させるために濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を加熱する。濯ぎ水温度センサ64Bは、濯ぎ水の温度を検知する。濯ぎ水温度センサ64Bの例は、温度の小さな変化に比例して抵抗値が大きく変化する焼結半導体から形成されるサーミスタである。濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果は、コントローラ10によって取得される。濯ぎ水ヒータ64AにおけるON・OFFは、コントローラ10によって制御される。例えば、濯ぎ水ヒータ64Aは、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する水温に基づいて濯ぎ水を所定温度に維持するように、コントローラ10によって制御される。
【0033】
上述した濯ぎタンク6、供給弁80、濯ぎ水検知部(水位検知部)62、オーバーフロー部63、濯ぎ水ヒータ64A及び濯ぎ水温度センサ64Bは、洗浄室1Bに濯ぎ水を供給する濯ぎ水供給装置90を構成している。
【0034】
濯ぎポンプ7は、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を取込管77Aを介して取り込み、食器D等を収容する洗浄室1Bに送り出す。より詳細には、濯ぎポンプ7は、上側ノズル3及び下側ノズル4を介して、洗浄室1Bに濯ぎ水を送り出す。濯ぎポンプ7の吐出口には、濯ぎ配管77を介して上側濯ぎ配管78と下側濯ぎ配管79とが接続されている。上側濯ぎ配管78は、上側ノズル3に接続されている。下側濯ぎ配管79は、下側ノズル4に接続されている。
【0035】
洗剤供給ポンプ8は、機械室1Aに配置されている。洗剤供給ポンプ8は、洗剤タンク8A内に貯留された洗剤を配管8Bを介して洗浄室1Bに供給する。洗浄室1B内に吐出された洗剤は、貯留部22内に流れ込み、洗浄水と混じり合う。リンス剤供給ポンプ9は、機械室1Aに配置されている。リンス剤供給ポンプ9は、リンス剤タンク9Aに貯留されたリンス剤を配管9Bを介して濯ぎ配管77に供給する。濯ぎ配管77に供給されたリンス剤は、濯ぎ水と混じり合い、上側ノズル3及び下側ノズル4を介して洗浄室1Bに供給される。
【0036】
コントローラ10は、本体部1における上部パネル11Bと洗浄室1Bを構成する上部パネル2Bとの間に配置されている。コントローラ10は、例えば、濯ぎ水ヒータ64Aや供給弁80の駆動部82等、食器洗浄機100における動作全般を制御する。コントローラ10は、集積回路に実装されたコンピュータシステムあるいはプロセッサである。コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェース等から構成される。ROMには、各種プログラム又はデータが格納されている。
【0037】
上述した構成の食器洗浄機100では、濯ぎタンク6に貯留された水を洗浄室1Bに供給して、洗浄タンク20に洗浄水を貯留する初期給湯を完了した後、洗浄タンク20に貯留された水を上側ノズル3及び下側ノズル4から噴射させることによって被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、濯ぎタンク6に貯留された水を上側ノズル3及び下側ノズル4から噴射させることによって被洗浄物を濯ぐ濯ぎ工程とを一サイクルとする洗浄運転を繰り返す。
【0038】
コントローラ10は、濯ぎ水検知部62の検知結果に基づいて濯ぎタンク6内の水が一定範囲に維持されるように供給弁80を制御する給水制御を実行する。より詳細には、コントローラ10は、濯ぎ水検知部62による濯ぎ水の検知がなくなると、駆動部82を制御して弁部81を開けることにより濯ぎタンク6に水を供給し、濯ぎ水検知部62によって濯ぎ水が検知されると駆動部82を制御して弁部81を閉じることにより濯ぎタンク6への水の供給を停止する。
【0039】
コントローラ10は、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する水温に基づいて濯ぎ水を一定範囲(例えば、80℃~85℃)に維持するように濯ぎ水ヒータ64Aを制御する保温制御を実行する。より詳細には、コントローラ10は、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度が所定温度(例えば、85℃)に到達すると濯ぎ水ヒータ64Aの作動を停止し、また、その後に濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度が所定温度(例えば、80℃)に低下すると再び濯ぎ水ヒータ64Aを作動させる。コントローラ10は、このような保温制御によって、濯ぎタンク6に貯留された水の温度を一定範囲(例えば、80℃~85℃)に維持する。なお、コントローラ10によって実行される保温制御と給水制御とは、上記洗浄運転とは独立して制御される。
【0040】
上記の保温制御と給水制御とが実行されているときの濯ぎタンク6に貯留された水の温度変化について、図4を用いて詳細に説明する。なお、図4は、保温制御及び給水制御時の濯ぎタンク6において濯ぎ水温度センサ64Bによって検知される温度の変化を示す図であり、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示している。
【0041】
コントローラ10は洗浄運転待機中又は洗浄工程中、上記保温制御によって水温を一定範囲内に維持する。このとき、コントローラ10は、濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に、濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御することで、濯ぎタンク6に水が供給されず、かつ濯ぎタンク6内の水が加熱されるので、図4においてS1で指し示されるように、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、所定の温度勾配(単位時間当たりの温度変化量)G1で上昇する(このような濯ぎタンク6の状態を便宜的に第一状態S1と称する。)。また、コントローラ10は、濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に、濯ぎ水ヒータ64Aが作動しないように制御することで、濯ぎタンク6に水が供給されず、かつ濯ぎタンク6内の水が加熱されないので、図4においてS2で指し示されるように、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、所定の温度勾配G2で下降する(このような制御状態を便宜的に第二状態S2と称する。)。上記保温制御では、このような第一状態S1と第二状態S2との繰り返しによって濯ぎタンク6に貯留された水が、所定の温度範囲(例えば、T1:80℃~T2:85℃)に維持される。
【0042】
その後の濯ぎ工程において洗浄室1Bに濯ぎ水が供給され、濯ぎタンク6の水位が低下したことを濯ぎ水検知部62が検知すると、上記給水制御によりコントローラ10は、濯ぎタンク6に水を供給するように供給弁80を制御する。図4では濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御しているタイミングで水を供給するように供給弁80が制御された場合をS3で指し示しており、このとき、濯ぎタンク6内の水の加熱は継続されるものの、大量に水が供給されるので、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、第二状態S2の温度勾配G2よりも急な温度勾配G3で下降する(このような濯ぎタンク6の状態を便宜的に第三状態S3と称する。)。なお、コントローラ10は、濯ぎ水ヒータ64Aが作動していないときに水を供給するように供給弁80を制御した場合であっても、水の温度は急勾配で下降するため早々にT1に到達して濯ぎ水ヒータ64AがONとなり、その後は上述したS3と同様の温度変化となる。その後、濯ぎ水検知部62が定水位H2を検知することで濯ぎタンク6に水が供給される状態が断たれると、再び第一状態S1となり、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、所定の温度勾配G1で上昇する。このように温度勾配G1は、濯ぎ水ヒータ64Aの出力(能力)によってのみ決まり、濯ぎタンク6に供給される水の温度に左右されるものではない。
【0043】
ところが、保温制御によって水温が一定範囲内に維持されているタイミングで、供給弁80から意図せず少量の水漏れが発生した場合、すなわち、コントローラ10が濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に、濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御しているにもかかわらず、供給弁80からの水漏れにより少量の水が濯ぎタンク6に供給されている場合は、少量の水が供給されることによる温度低下よりも濯ぎ水ヒータ64Aによる温度上昇が上回るので、図4においてS4で指し示されるように、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、所定の温度勾配(単位時間当たりの温度変化量)G1よりも緩やかな温度勾配G4(G1>G4)で上昇するようになる(このような濯ぎタンク6の状態を便宜的に第四状態S4と称する。)。
【0044】
本実施形態のコントローラ10は、濯ぎタンク6への水の供給を停止するように供給弁80を制御すると共に、濯ぎタンク6に貯留された水を加熱するように濯ぎ水ヒータ64Aを制御した状態において、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて導出される濯ぎタンク6に貯留された水の温度勾配(単位時間当たりの温度変化量)と予め記憶された基準温度勾配(基準温度変化量)とがどのように乖離しているかを示す乖離状態を導出する。コントローラ10は、導出した乖離状態と、乖離状態のレベルごとに濯ぎ水供給装置における不良(不具合)の種類が関連付けられた不良(不具合)情報と、に基づいて、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不良の種類を特定する。
【0045】
上記の基準温度勾配及び不良情報は、例えばコントローラ10に設けられているROM、RAM、その他の記憶部に記憶されている。上記不良情報には、不良の種類として、弁部81における異物の噛み込みを起因とする第一止水不良、駆動部82の故障を起因とする第二止水不良及び濯ぎ水ヒータ64Aの故障を起因とする加熱不良の三つの不良が記憶されており、それぞれ乖離状態のレベルが関連付けて記憶されている。
【0046】
ここで、濯ぎ水ヒータ64Aは、単相100V機と、三相200V機とに大きく分類される。三相200V機は、三相を構成する電線がデルタ結線で結線されるのが主流である。下記表1は、結線種別ごとに、三相を構成する電線の一部が断線したとき(1本の電線が断線したとき、2本の電線が断線したとき、3本の電線が断線したとき)の、正常時のヒータに対する出力比率をまとめたものである。なお、三相200V機には稀であるがスター結線やV結線があるので合わせて記載する。下記の表から単相100V機では、1か0となる。すなわち、断線が発生すると濯ぎ水ヒータ64Aは機能しない。一方、三相200V機では、「2/3」、「1/3」、「1/2」、「0」の出力比率パターンに分けられる。すなわち、三相を構成する電線のうち1本又は2本が断線したとしても濯ぎ水ヒータ64Aとして機能し、断線した電線の数に応じて出力が低下する。これにより、濯ぎ水ヒータ64Aに故障を起因とする加熱不良が発生した場合、上記の温度勾配が正常時の0%以上67%未満の範囲(後段にて説明する第二所定割合)になることがわかる。なお、断線以外のショート(濯ぎ水ヒータ64AがONし続ける)や漏電は、導電遮断機にて停止するため、濯ぎ水ヒータ64Aの故障を起因とする加熱不良は、断線だけを考慮すればよい。
【表1】
【0047】
一方、供給弁80の弁部81にゴミ等の異物が付着して噛み込みが発生したときの第一止水不良は少量の漏れとなるため、濯ぎタンク6への水の供給量も少量となる。詳細には、濯ぎタンク6へ供給される水は、水道水から供給されるものであり、基本的に大きなサイズの異物が含まれる可能性は小さい。仮に、弁部81によってサイズが大きな異物が噛み込まれたとしても、サイズが大きな異物は水流によって流れやすくなっているので、大量の水が濯ぎタンク6に流入する可能性は小さい。このため、第一止水不良が発生した場合、上記の温度勾配に相対的に大きな影響が出ることはない。したがって、第一止水不良が発生した場合、上述した温度勾配が正常時の67%よりも小さくなることはなく、67%以上100%未満(後段にて説明する第一所定割合)になると考えられる。すなわち、濯ぎ水供給装置90に第一止水不良が発生した場合における正常時の温度勾配からの乖離状態のレベル(乖離度合)が、濯ぎ水供給装置90に加熱不良が発生した場合における正常時の温度勾配からの乖離状態のレベルよりも大きくなることはない。なお、正常時の100%の温度勾配とは、正常時と同じ温度勾配であることを示し、基準温度勾配と同義である。
【0048】
また、供給弁80の駆動部82が故障して弁部81が閉じないときの第二止水不良は、第一止水不良とは異なり大量の漏れとなるため、濯ぎタンク6への水の供給量も大量となる。このため、濯ぎ水ヒータ64Aの能力が供給量に追いつかず、濯ぎタンク6に貯留された水の温度は、濯ぎタンク6における維持温度(80℃~85℃)から給水温度(常温:20℃前後)に向けて第三状態S3のように低下し、上記の温度勾配は、マイナスとなる。このときの温度勾配は、濯ぎ水ヒータ64Aが完全に故障したとき(上記表1において「0」で示される断線のとき)に生じることがある温度低下時(自然低下時)の温度勾配よりも急勾配となる。すなわち、濯ぎ水供給装置90に加熱不良が発生した場合における正常時の温度勾配からの乖離状態のレベルが、濯ぎ水供給装置90に第二止水不良が発生した場合における正常時の温度勾配からの乖離状態のレベルよりも大きくなることはない。
【0049】
このような事情を考慮して、本実施形態では、乖離状態のレベルとして、温度勾配が基準温度勾配から第一所定度合乖離した状態の第一乖離状態と、温度勾配が基準温度勾配から第一所定度合より大きな第二所定度合乖離した第二乖離状態と、温度勾配が基準温度勾配から第二所定度合より大きな第三所定度合乖離した第三乖離状態と、が設定されている。そして、コントローラ10は、第一乖離状態のときに第一止水不良であると判定し、第二乖離状態のときに加熱不良であると判定し、第三乖離状態のときに第二止水不良であると特定するように設定されている。
【0050】
コントローラ10は、濯ぎタンク6への水の供給を停止するように供給弁80を制御すると共に、濯ぎタンク6に貯留された水を加熱するように濯ぎ水ヒータ64Aを制御した状態のときの温度変化に基づいて温度勾配を取得する。コントローラ10は、このように取得した温度勾配と基準温度勾配とを比較する。なお、「濯ぎタンク6への水の供給を停止するように供給弁80を制御すると共に、濯ぎタンク6に貯留された水を加熱するように濯ぎ水ヒータ64Aを制御した状態のとき」とは、コントローラ10によって供給弁80及び濯ぎ水ヒータ64Aが制御されたものの、供給弁80及び/又は濯ぎ水ヒータ64Aの不具合によって、意図した動作をしない場合(故障等で正常に動作しない場合)も含まれる。言い換えれば、供給弁80及び濯ぎ水ヒータ64Aが正常に作動するか否かにかかわらず、コントローラ10が供給弁80及び濯ぎ水ヒータ64Aを上記のように制御したときの温度変化に基づいて温度勾配を取得する。
【0051】
食器洗浄機100の洗浄運転においては、濯ぎ工程によって濯ぎタンク6内の水位が下がったことが濯ぎ水検知部62によって検知されると、供給弁80が開かれ、濯ぎタンク6への水の供給が開始される。次に、濯ぎ水温度センサ64Bによって温度低下が検知されると、濯ぎ水ヒータ64Aが作動し、濯ぎタンク6に貯留された水が加熱される。そして、水位が定水位H2に到達したことが検知されると、供給弁80が閉じられる。そして、濯ぎ水温度センサ64Bによって所定温度に温度が到達したことが検知されると、濯ぎ水ヒータ64Aが作動を停止させる。コントローラ10は、例えば、このように濯ぎタンク6への給水が停止されてから所定時間の温度上昇量を検知することで温度勾配(単位時間当たりの温度変化量)を導出する。
【0052】
また、洗浄運転が実施されていない待機中に濯ぎタンク6内の水の温度が自然に低下したときや、上述した第一止水不良又は加熱不良によって濯ぎタンク6内の水の温度が低下したときには、濯ぎ水検知部62はONのままで、濯ぎタンク6へ水が供給されていない状態となる。このため、濯ぎ水温度センサ64Bによって温度低下が検知されると、濯ぎ水ヒータ64Aが作動する。そして、濯ぎ水温度センサ64Bによって所定温度に温度が到達したことが検知されると、濯ぎ水ヒータ64Aが作動を停止させる。コントローラ10は、例えば、濯ぎ水ヒータ64Aが作動した時点から所定時間の温度上昇量を検知することで温度勾配を導出する。
【0053】
なお、上記所定時間の例は、5分又は10分等であるが、この時間は20分~30分と長くした方が温度勾配の検知精度は向上する。しかしながら、所定時間が経過する前に規定温度に到達して濯ぎ水ヒータ64Aが作動を停止したり、濯ぎタンク6への水の供給が開始されることもある。このため、コントローラ10は、次回の温度勾配取得タイミング(濯ぎ水ヒータ64Aの作動開始後、又は濯ぎタンク6への水の供給の停止後)の濯ぎ水温度センサ64Bの検知結果を合計して、温度勾配を導出するようにしてもよいし、濯ぎ水ヒータ64Aが作動を停止した時点や、濯ぎタンク6への水の供給が開始された時点までの検知結果に基づいて、温度勾配を導出するようにしてもよい。また、コントローラ10は、複数回(例えば3回)の温度勾配の平均値を算出して、基準温度勾配と比較することによって三つの不良を判定してもよい。この場合には、基準温度勾配と比較される温度勾配が安定的に導出される。このように、上記温度勾配を取得するための測定タイミングは、適宜選択される。
【0054】
上記の第一所定度合は、基準温度勾配の第一所定割合(例えば67%以上100%未満)とすることができ、上記の第二所定度合は、基準温度勾配の第二所定割合(例えば0%以上67%未満)とすることができる。上記の第三所定度合は、マイナスの温度勾配であって、基準温度勾配からの乖離度合が第二所定度合よりも大きいときとすることができる。なお、ここでは、第一所定度合及び第二所定度合の具体例として基準温度勾配に対する温度勾配の割合(第一所定割合及び第二所定割合)を例に挙げると共に、その割合の境界値の例として、「0」,「67」,「100」を例に挙げて説明したが、境界値はこれに限定されない。例えば、境界値は、「67」よりも大きな「70」といった数値が設定されてもよい。また、境界値として「100」という数値は、正常な状態との区別が難しいため、例えば「90」といった数値が設定されてもよい。同様に、境界値として「0」という数値は、マイナスの温度勾配との区別が難しいため、例えば「10」、「-10」といった数値が設定されてもよい。
【0055】
コントローラ10は、濯ぎタンク6において発生していると考えられる不具合の判定結果を操作表示部13を介して報知する。コントローラ10は、例えば、加熱不良であれば操作表示部13に「E1」を表示させ、第一止水不良であれば「E2」を表示させ、第二止水不良であれば「E3」を表示させる。コントローラ10が通信機能を有していたり、コントローラ10による判定結果を読み取る機器が設けられていたりする場合には、コントローラ10による判定結果を、例えばコントロールセンターに送信してもよい。この場合には、メンテナンス作業者は、例えば不良の種類に応じた部品を持参して現場に行くことができたり、遠隔地から現場に対してリモートで対応方法を案内したりすることができる。
【0056】
次に、上記実施形態の食器洗浄機100の作用効果について説明する。本実施形態の食器洗浄機100では、フロートスイッチによる満水位H3の検知結果ではなく、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果から導出される温度勾配に基づいて、濯ぎタンク6においてどのような不良が発生しているかを検知している。これにより、満水位H3にあることを検知するフロートスイッチを設けることなく、濯ぎタンク6においてどのような不良が発生しているかを検知することができる。更に本実施形態の食器洗浄機100では、温度勾配と予め記憶された基準温度勾配との乖離状態を導出し、その乖離状態がどのようなレベルであるかに応じて、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不良の種類を特定している。これにより、濯ぎ水供給装置90においてどのような不良が発生しているかを検知することができる。
【0057】
本実施形態の食器洗浄機100では、フロートスイッチによる検知結果ではなく、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて止水不良を検知することでコストを低減することができ、故障のリスクを低減させることができる。更に、本実施形態では、食器洗浄機100において発生している異常の種類を直接的又は間接的に報知するので、修理対応の迅速化を図ることができる。
【0058】
本実施形態の食器洗浄機100では、コントローラ10は、乖離状態が第一乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不具合の種類が第一止水不良であると特定し、乖離状態が第一乖離状態よりも大きい第二乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不具合の種類が加熱不良であると特定し、乖離状態が第二乖離状態よりも大きい第三乖離状態にあるときに、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不具合の種類が第二止水不良であると特定している。これにより、コントローラ10は、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不具合の種類として、第一止水不良と第二止水不良と加熱不良とを区別して特定することができ、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される具体的な不具合の種類に関する情報を使用者に提供することができる。
【0059】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0060】
(変形例1)
上記実施形態では、コントローラ10は、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて導出される濯ぎタンク6に貯留された水の温度勾配と予め記憶された基準温度勾配(基準温度変化量)とがどのように乖離しているかを示す乖離状態に基づいて、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不良の種類を特定する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0061】
上述したように、コントローラ10は、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度が所定温度(例えば、80℃)に低下したときに、濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御して、濯ぎタンク6内の水を昇温させることを繰り返し行う(保温制御)。コントローラ10は、このように繰り返し行われる、濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御するタイミングの都度、温度勾配を取得する。また、コントローラ10は、保温制御の実行途中に給水制御を実行することがあるが、この場合も濯ぎタンク6への給水後は、濯ぎタンク6に水を供給しないように供給弁80を制御すると共に濯ぎ水ヒータ64Aが作動するように制御する。コントローラ10は、この場合も温度勾配を取得する。
【0062】
コントローラ10は、時間経過に伴って次々と取得する温度勾配を監視している。そして、コントローラ10は、今回の温度上昇時に導出された温度勾配が、前回の温度上昇時に導出された温度勾配よりも小さければ、供給弁80に止水不良が発生していると判定する。例えば、保温制御によって水温が一定範囲内に維持されているタイミングで、供給弁80から意図せず少量の水漏れが発生した場合、上述の第四状態S4となるので、今回の温度上昇時に導出された温度勾配が、前回の温度上昇時に導出された温度勾配よりも小さくなる(G1>G4)。このため、コントローラ10は、供給弁80に止水不良が発生していると判定する。コントローラ10は、供給弁80に止水不良が発生している可能性があることを、操作表示部13を介して報知してもよい。
【0063】
上述したような濯ぎ水温度センサ64Bを用いて供給弁80に止水不良を判定する方法では、オーバーフロー水位を検知するフロートスイッチを設ける必要がないことからコストの低減を図ることができる。更に、フロートスイッチに比べて構成がシンプルなサーミスタを用いる構成では、故障のリスクも小さくなるために食器洗浄機100の信頼性を高めることができる。また、コントローラ10における制御も、温度上昇時の温度勾配について前回上昇時と今回上昇時とを比較するだけの簡単なものなので容易に構成することができる。更に、濯ぎタンク6の容量や濯ぎ水ヒータ64Aの出力(性能)が異なる場合であっても、製品毎に個別に設定値を定めたりする必要がないので、汎用化を図ることができる。
【0064】
上記の説明では、コントローラ10は、温度上昇時の温度勾配について前回上昇時と今回上昇時とを比較する例を挙げて説明したが、例えば直近5回等、直近複数回の温度上昇時の平均温度勾配と今回の温度勾配との比較に基づいて、供給弁80に止水不良が発生しているか否かを判定してもよい。
【0065】
なお、温度勾配が緩やかになる原因には、上述したように供給弁80に止水不良が発生しているだけでなく、濯ぎ水ヒータ64Aに故障していることも考えられる。このため、上記の温度勾配の比較による異常が操作表示部13を介して報知された場合、食器洗浄機100の使用者又はメンテナンスを実施する作業者は、供給弁80に止水不良があるか又は濯ぎ水ヒータ64Aに動作不良があるかに原因を絞ってメンテナンスを実行することができる。
【0066】
(変形例2)
上述した保温制御を実行する食器洗浄機100において、仮に定水位H2を検知する濯ぎ水検知部62が故障した場合、定水位H2よりも水位が低下したとしても供給弁80を介して水が供給されることなく、また、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果が所定温度(例えば80℃)よりも低ければ、濯ぎ水ヒータ64Aの作動が継続する。そして、この状態で濯ぎ水ヒータ64Aの作動が継続すると、濯ぎ水ヒータ64Aが水中から露出し空焚き状態となることから、濯ぎ水ヒータ64A自身が故障したり、濯ぎ水ヒータ64Aの周辺部分が損傷したり、濯ぎ水ヒータ64Aから発煙又は発火したりするおそれがある。
【0067】
そこで、変形例2では、コントローラ10は、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて濯ぎ水検知部62に異常があるか否かを監視する異常判定制御を実行する。異常判定制御を実行する変形例2の食器洗浄機100では、図5に示されるように、濯ぎ水温度センサ64Bは、濯ぎ水ヒータ64Aに接触するように配置された支持部材65に取り付けられており、濯ぎ水ヒータ64Aが作動したときの温度変化の追従性に優れる構成となっている。
【0068】
支持部材65は、隣り合う濯ぎ水ヒータ64Aに掛け渡されるように配置されている。支持部材65は、伝熱性に優れる金属等によって形成されており、板状の第一部材65A及び第二部材65Bを有している。第一部材65A及び第二部材65Bは上下方向に濯ぎ水ヒータ64Aを挟むように配置されており、第一部材65A及び第二部材65Bはネジ65Cによって一体化され、濯ぎ水ヒータ64Aを挟持する。支持部材65には、濯ぎ水ヒータ64Aが延在する方向に沿うように溝部65Dが形成されている。濯ぎ水温度センサ64Bは、当該溝部65Dに嵌まるように配置されている。
【0069】
図6に示す図は、上記変形例2における濯ぎ水温度センサ64Bによって検知される温度の変化を示す図であり、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示している。図6における実線は、上述した給水制御によって濯ぎタンク6に正常に水が供給された後、濯ぎ水ヒータ64Aを作動させることによって濯ぎ水の温度を上昇させ、その後、上記保温制御によって濯ぎ水の温度が一定範囲(例えば、80℃~85℃)に維持されたときの、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度変化を示している。濯ぎ水ヒータ64Aは、給水制御によって正常に水が供給されたとき、水中から露出することはない。このような状態を便宜的に正常状態S10と称する。一方、給水制御によって正常に水が供給されなかったとき、上述したように濯ぎ水ヒータ64Aが水中から露出する。このような状態を便宜的に異常状態S11と称する。図6における一点鎖線は、異常状態S11のときの濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度変化を示している。
【0070】
濯ぎ水温度センサ64Bによって検知される温度の上昇状況は、濯ぎ水ヒータ64Aが水中で作動している正常状態S10のときと、空気中で作動している異常状態S11のとき(空焚き)とでは、図6に示されるように明らかに異なる。すなわち、濯ぎ水ヒータ64Aが水中で作動している正常状態S10のときと、空気中で作動している異常状態S11のとき(空焚き)とでは、温度勾配(単位時間当たりの温度変化量)が明らかに異なる。具体的には、空気中で作動している異常状態S11のとき(空焚き)の温度勾配は、濯ぎ水ヒータ64Aが水中で作動している正常状態S10の温度勾配よりも急になる。そこで、コントローラ10は、濯ぎ水ヒータ64Aが作動しているときの濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて、予め記憶された基準温度勾配Gよりも急な温度勾配が導出されたときには、濯ぎ水ヒータ64Aの作動を停止するように構成されている。また、このような構成に加えて又は代えて、コントローラ10は、予め記憶された基準温度勾配よりも急な温度勾配が導出されたときには、操作表示部13等を介して異常警報を発報するように構成してもよい。
【0071】
変形例2に係る食器洗浄機100によれば、仮に定水位H2を検知する濯ぎ水検知部62が故障した場合であっても、濯ぎ水ヒータ64Aが空焚き状態となって故障することや、濯ぎ水ヒータ64Aの周辺部分が損傷したり、濯ぎ水ヒータ64Aが発煙又は発火したりすることを未然に防止することができる。なお、この構成及び制御は、洗浄タンク20にも適用可能である。
【0072】
(変形例3)
変形例3に係る濯ぎタンク6の構成は、基本的に変形例2に係る濯ぎタンク6の構成と同じであるが、図7に示されるように、供給弁80を介して濯ぎタンク6に水が供給される位置が、濯ぎ水温度センサ64Bの直上である点で、変形例2に係る濯ぎタンク6の構成と異なっている。具体的には、供給弁80の下流側に配置される導入管84の先端部の給水口84aが濯ぎ水温度センサ64Bの直上に位置している。言い換えれば、供給弁80の弁部81が開かれたときに導入管84の先端部の給水口84aから濯ぎタンク6の内部に供給される水が、濯ぎ水温度センサ64Bの温度検知部分64Baに直接落下するように構成されている。
【0073】
図8は、上記変形例3における濯ぎ水温度センサ64Bによって検知される温度の変化を示す図であり、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示している。図8における実線は、上述した保温制御が実行されているときに、上述した給水制御によって濯ぎタンク6に水が供給され(P1)、その後、濯ぎ水ヒータ64Aを作動させることによって濯ぎ水の温度を上昇させた後、再び上記保温制御によって濯ぎ水の温度が一定範囲(例えば、T1:80℃~T2:85℃)に維持されたときの、濯ぎ水温度センサ64Bが検知する温度変化を示している。
【0074】
上記の給水制御が正常に実行され、濯ぎタンク6に水が供給される(図8に示されるP1)と、濯ぎ水温度センサ64Bの周囲の水の温度は、導入管84の先端部の給水口84aから濯ぎタンク6の内部に供給される水が加わることによって温度低下するので(図8に示されるP2)、濯ぎ水温度センサ64Bによって検知される水の温度は水を供給するより前より低くなる。一方、上記の給水制御が正常に実行されない場合、すなわち定水位H2を検知する濯ぎ水検知部62が故障して濯ぎタンク6への水が供給されない場合や、供給弁80の故障によって濯ぎタンク6へ水が供給されない場合、図8の一点鎖線で示されるように、上述したような温度低下は濯ぎ水温度センサ64Bによって検知されない。
【0075】
そこで、変形例3では、コントローラ10は、濯ぎ工程終了後に上述した温度低下が検知されるか否かに基づいて濯ぎタンク6に異常があるかないかを監視する異常判定制御を実行する。具体的には、コントローラ10は、濯ぎ工程終了後に、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて急激な温度低下が導出されないときには、濯ぎ水ヒータ64Aの作動を停止するように構成されている。また、濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果に基づいて急激な温度低下が導出されないときに濯ぎ水ヒータ64Aの作動を停止する構成に加えて又は代えて、操作表示部13等を介して異常警報を発報するように構成してもよい。
【0076】
変形例3に係る食器洗浄機100によれば、仮に定水位H2を検知する濯ぎ水検知部62が故障した場合であっても、濯ぎ水ヒータ64Aが空焚き状態となって故障することや、濯ぎ水ヒータ64Aの周辺部分が損傷したり、発煙又は発火したりすることを未然に防止することができる。なお、この構成及び制御は、洗浄タンク20にも適用可能である。
【0077】
上記実施形態及び変形例では、濯ぎ水供給装置90として構成される、濯ぎタンク6、供給弁80、濯ぎ水検知部62、オーバーフロー部63、濯ぎ水ヒータ64A及び濯ぎ水温度センサ64Bが食器洗浄機100に搭載されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、濯ぎ水供給装置90は、食器洗浄機100とは別体のガスブースタとして構成されていてもよい。この場合であっても、食器洗浄機100に備わるコントローラ10と、供給弁80、濯ぎ水検知部62、濯ぎ水ヒータ64A及び濯ぎ水温度センサ64Bとを互いに電気的に接続することによって、コントローラ10は、食器洗浄機100に備えられた濯ぎ水供給装置90と同様に、ガスブースタとして構成される濯ぎ水供給装置90を制御することができる。
【0078】
上記実施形態及び変形例では、濯ぎ水供給装置90を制御するコントローラ10は、食器洗浄機100に搭載される例を挙げて説明したが、例えば、別体として構成されるガスブースタや、食器洗浄機100に被洗浄物を搬入する搬入装置等、食器洗浄機100とは別体の装置に搭載されたり、食器洗浄機100とは別の場所に配備される単体の制御装置として構成されてもよい。
【0079】
上記実施形態及び変形例では、コントローラ10は、乖離状態に基づいて、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不良の種類が、第一止水不良、第二止水不良及び加熱不良の三つを区別して特定する例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、コントローラ10は、濯ぎ水供給装置90において発生していると予測される不良の種類が、第一止水不良と第二止水不良とを区別して特定したり、第一止水不良と加熱不良とを区別して特定したり、第二止水不良と加熱不良とを区別して特定したりしてもよい。また、コントローラ10は、上述した三つの不良以外の不良を区別して特定してもよい。
【0080】
上記実施形態及び変形例は、本体部1の前面側にドア部15が設けられたタイプの食器洗浄機100に適用するだけでなく、例えば、ドア部が上下に開閉するタイプの食器洗浄機等にも適用することができる。
【0081】
本願発明は、上記実施形態及びその他の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…本体部、6…濯ぎタンク、7…濯ぎポンプ、10…コントローラ、13…操作表示部、60…給水管、62…濯ぎ水検知部(水位検知部)、63…オーバーフロー部(排出部)、64A…濯ぎ水ヒータ(加熱部)、64B…濯ぎ水温度センサ(温度検知部)、80…供給弁、81…弁部、82…駆動部、100…食器洗浄機(洗浄機)、D…食器、H2…定水位(規定水位)、H3…満水位。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8