(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120899
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230823BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/10
A61K8/34
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024032
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村(北條) 沙苗
(72)【発明者】
【氏名】本猪木 太朗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC532
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083BB05
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、洗浄時やタオルドライ後の使用感に優れる洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る洗浄剤組成物は、アニオン性界面活性剤と、ポリオールと、1.5質量%水溶液が150mPa・s以下の粘度を示す低粘性ガラクトキシログルカンとを含み、前記洗浄剤組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.4~1.5質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物であって、
アニオン性界面活性剤と、ポリオールと、1.5質量%水溶液が150mPa・s以下の粘度を示す低粘性ガラクトキシログルカンとを含み、
前記洗浄剤組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.4~1.5質量%である、洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液が1~100mPa・sの粘度を示す、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液が5~50mPa・sの粘度を示す、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.5~1.0質量%である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオールとして、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、及びグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関し、より具体的には、フォーマー容器に充填して用いられる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、泡を形成可能な洗浄剤組成物が使用されている。かかる洗浄剤組成物では、泡の質の向上や使用感の向上などを目的に、各種成分の配合についての検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アニオン性界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤と、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体などのカチオン性ポリマーとを含む洗浄剤組成物が記載されている。特許文献1の洗浄剤組成物は、この配合によって、きめ細かく弾力のある泡を形成可能であるとともに、洗浄時やタオルドライ後の使用感に優れるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、アニオン性界面活性剤と、多価アルコールと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性高分子とを含む洗浄剤組成物が記載されている。また、非特許文献1には、アニオン性界面活性剤と、グリセリンと、ガラクトキシログルカン(タマリンドガム)とを含む洗浄剤組成物が記載されている。これらの洗浄剤組成物は、ノニオン性高分子であるヒドロキシプロピルメチルセルロースやガラクトキシログルカンが界面活性剤と相溶し易いため、弾力性の良好な泡や、泡持ちの良い濃厚な泡を形成できるとされている。
【0005】
そして、泡を形成可能な洗浄剤組成物は、該洗浄剤組成物を泡の状態で吐出可能なフォーマー容器に充填して用いられることが好ましい(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-172476号公報
【特許文献2】特開2016-199475号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】岩田 怜、“ノニオン性ポリマー(タマリンドガム)のスキンケア・ヘアケア用品への応用”,COSMETIC STAGE,Vol.15,No.1,2020,p.39-44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、従来技術の洗浄剤組成物は、泡の質、フォーマー容器からの吐出性、洗浄時やタオルドライ後の使用感のいずれかが十分ではないことが判明した。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、洗浄時やタオルドライ後の使用感に優れる洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討したところ、ガラクトキシログルカンのなかでも、水溶液の粘度が所定値以下を示す低粘性ガラクトキシログルカンを配合し、さらに、ポリオールを併用することによって、洗浄剤組成物が上記性能に優れるものになるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る洗浄剤組成物は、アニオン性界面活性剤と、ポリオールと、1.5質量%水溶液が150mPa・s以下の粘度を示す低粘性ガラクトキシログルカンとを含み、
前記洗浄剤組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.4~1.5質量%である。
【0012】
斯かる構成によれば、ポリオールと、低粘性ガラクトキシログルカンとを含み、且つ、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が上記範囲であることによって、良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、洗浄時やタオルドライ後の使用感に優れるものとなる。
【0013】
また、本発明に係る洗浄剤組成物は、好ましくは、前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液が1~100mPa・sの粘度を示し、より好ましくは、該粘度が5~50mPa・sを示す。
【0014】
斯かる構成によれば、低粘性ガラクトキシログルカンが上記のような粘度を示すことによって、より良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、使用感により優れるものとなる。
【0015】
また、本発明に係る洗浄剤組成物は、好ましくは、前記洗浄剤組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.5~1.0質量%である。
【0016】
斯かる構成によれば、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が上記範囲であることによって、さらに良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、使用感にさらに優れるものとなる。
【0017】
また、本発明に係る洗浄剤組成物は、好ましくは、前記ポリオールとして、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、及びグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0018】
斯かる構成によれば、上記のようなポリオールを含むことによって、きめ細かく弾力のある泡が形成可能であるとともに、タオルドライ後の使用感に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、良好な泡を形成可能であり、且つ、フォーマー容器からの吐出性、洗浄時やタオルドライ後の使用感に優れる洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一実施形態に係る洗浄剤組成物について、フォーマー容器に充填される態様を例示しながら説明する。
【0021】
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、アニオン性界面活性剤と、ポリオールと、低粘性ガラクトキシログルカンと、主成分としての水とを含む。本実施形態の洗浄剤組成物は、5~25℃において液体である。
【0022】
前記フォーマー容器としては、ノンガス型フォーマー容器が好ましく、例えば、スクイズフォーマー容器やポンプフォーマー容器が挙げられる。これらのフォーマー容器は、通常、液体の洗浄剤組成物を収容する容器本体と、泡状の洗浄剤組成物を吐出する吐出ノズルを有する吐出部と、前記容器本体の洗浄剤組成物を前記吐出部へ誘導する誘導ノズルを有する誘導部とを備えている。前記吐出ノズルと前記誘導ノズルとは、流体的に接続している。また、前記フォーマー容器は、前記吐出部と前記誘導部との間に設けられて洗浄剤組成物に空気を混合する混合部と、前記混合部の下流側に設けられて空気を含む洗浄剤組成物を通過させて泡状にするメッシュ部とを備えている。前記メッシュ部は、例えば、プラスチック製の多孔質膜で構成されている。前記ノンガス型フォーマー容器は、使用者の手指等による力の作用(例えば前記容器本体の押圧)によって、前記混合部に空気と洗浄剤組成物とを誘導しつつ前記吐出部から泡状の洗浄剤組成物を吐出可能に構成されている。
【0023】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アミノ酸系界面活性剤、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、エーテルカルボン酸系界面活性剤などが挙げられる。
【0024】
前記脂肪酸塩としては、炭素数6以上18以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の塩が好ましく、炭素数8以上18以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の塩がより好ましい。また、前記脂肪酸塩は、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。より具体的には、前記脂肪酸塩としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のアルカリ金属塩又はトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0025】
前記アミノ酸系界面活性剤は、脂肪酸由来のカルボン酸とアミノ酸由来のアミノ基とが縮合し、アミノ酸由来のカルボン酸が塩を形成したものである。
前記アミノ酸系界面活性剤を形成する脂肪酸としては、炭素数8以上18以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が好ましい。
前記アミノ酸系界面活性剤を形成するアミノ酸としては、アラニン、メチルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸が好ましい。
アミノ酸由来のカルボン酸と塩を形成する塩基としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、トリエタノールアミンが好ましい。
【0026】
前記硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸エステル塩、ミリスチル硫酸エステル塩等のアルキル硫酸エステル塩(AS)、ラウレス硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(AES)が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩(AS)やポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(AES)におけるアルキル基の炭素数は、8以上18以下が好ましい。
【0027】
前記スルホン酸塩としては、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩(AOS)が挙げられる。
【0028】
前記エーテルカルボン酸系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
上記のアニオン性界面活性剤のうち、前記脂肪酸塩や前記アミノ酸系界面活性剤のように、カルボン酸塩を形成しているアニオン性界面活性剤が好ましい。これによって、洗浄剤組成物が、低温時(5℃)のフォーマー容器からの吐出性に優れるものとなる。
【0030】
洗浄剤組成物は、炭素数8以上18以下のアニオン性界面活性剤のうち、炭素数の異なるものを2種以上含むことが好ましく、3種以上含むことがさらに好ましい。また、洗浄剤組成物は、炭素数12以上18以下のアニオン性界面活性剤のうち、炭素数の異なるものを2種以上含むことが好ましく、3種以上含むことがさらに好ましい。
より具体的には、洗浄剤組成物は、炭素数12以上18以下の飽和脂肪酸塩を2種以上含むことが好ましく、例えば、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩のうちの2種以上を含むことが好ましく、3種以上を含むことがより好ましい。
あるいは、洗浄剤組成物は、炭素数8以上18以下の飽和脂肪酸にアミノ酸が結合したアミノ酸系界面活性剤を2種以上含むことが好ましく、例えば、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩にアミノ酸が結合したアミノ酸系界面活性剤のうちの2種以上を含むことが好ましく、3種以上を含むことがより好ましい。
これによって、洗浄剤組成物が、きめ細かく弾力があり、安定性にも優れる泡を形成可能であり、フォーマー容器からの吐出性に優れ、且つ、洗浄時及びタオルドライ後の使用感に優れるものとなる。
【0031】
前記アニオン性界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。前記アニオン性界面活性剤の含有量は、通常、10質量%以下である。
【0032】
前記ポリオールとしては、例えば、糖類又は水酸基を2個以上有するアルコール類が挙げられる。
【0033】
前記糖類としては、炭素数3以上12以下の糖類が好ましく、例えば、トリオース(三炭糖。例えば、グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等)、テトロース(四炭糖。例えば、エリトロース、トレオース、エリトルロース等)、ペントース(五炭糖。例えば、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アビオース、リブロース、キシルロース等)、ヘキソース(六炭糖。例えば、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース(果糖)、ソブボース等)、ヘプトース(七炭糖。セドヘプツロース、コリオース等)等のアルドース型、ケトース型の単糖類、ショ糖、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類、デキストリン等の水溶性高分子の分解物(ただし、前記低粘性ガラクトキシログルカンを除く)、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール類が挙げられる。また、前記糖類は、これらから選択された1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0034】
前記糖類としては、ソルビトール等の鎖状のものが、グルコース等の環状のものよりも好ましい。洗浄剤組成物が鎖状の糖類を含むことによって、きめ細かい泡の形成(特に5℃のような低温条件)が可能となる。
【0035】
前記アルコール類には、アルコール及びアルコール誘導体が含まれる。前記アルコール類としては、炭素数3~10のアルコール類が好ましく、例えば、2価アルコール(例えば、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール等)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等)、多価アルコールの誘導体等が挙げられる。また、前記アルコール類は、これらから選択された1種類であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0036】
前記2価アルコールのうち、プロピレングリコールやブチレングリコール等の炭素数4以下のものが、ペンタンジオールやイソペンチルジオール等の炭素数5以上のものよりも好ましい。洗浄剤組成物が、炭素数4以下の2価アルコールを含むことによって、弾力のある泡を形成可能であり、且つ、タオルドライ後の使用感に優れるものとなる。
【0037】
また、前記多価アルコール誘導体のうち、ジグリセリンやジプロピレングリコール等の炭素数6以下のものが、ポリエチレングリコール等のより重合度の高いものよりも好ましい。洗浄剤組成物が、炭素数6以下の多価アルコール誘導体を含むことによって、タオルドライ後の使用感に優れるものとなる。
【0038】
前記多価アルコール誘導体としては、2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合するアルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)等が挙げられる。
具体的には、前記2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体としては、PPG-40ブチル〔すなわち、POP(40)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブMB-370」等)、PPG-30ブテス-30〔すなわち、POE(30)・POP(30)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブ50MB-72」等)、PPG-16グリセリルエーテル(市販品として「ユニオールTG-1000」等)、PPG-24グリセリル-24(市販品として「ユニルーブ50TG-32」等)、PPG-25-ポリエチレングリコール-25トリメチロールプロパン(市販品として「ユニルーブ43TT-2500」等)、PPG-14ジグリセリル(「ユニルーブDGP-950」等)、PEG-5-PPG-65ペンタエリスリチル(「ユニルーブ5TP-300KB」等)(以上、いずれも日油(株)製)等が挙げられる。ここで、PPGはポリプロピレングリコール、POPはポリオキシプロピレン、POEはポリオキシエチレン、PEGは、ポリエチレングリコールを表す。
【0039】
多価アルコールの一種である糖アルコール類は、前記糖類としても機能するが、一方でアルコール類としても機能する。前記糖アルコール類は、ソルビトール、マンニトール等の5~6価アルコールが好適例として挙げられる。糖アルコールの誘導体としては、糖アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合に用いるアルキレンオキシドとしてはEO、PO、BO等が挙げられる。
具体的には、POPソルビット(市販品として「ユニオールHS-1600D」(日油(株)製)等)、POE(10)メチルグルコシド(市販品として「グルカムE-10」(日本ルーブリゾール(株)製)等)、POP(20)メチルグルコシド(市販品として「グルカムP-20」(日本ルーブリゾール(株)製)等)等が挙げられる。
【0040】
前記ポリオールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール、ポリエチレングリコール、グルコースが好ましく、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトールがより好ましい。
【0041】
前記ポリオールの含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。これによって、洗浄剤組成物が、弾力のある泡を形成可能になり、且つ、タオルドライ後の使用感に優れるものとなる。また、前記ポリオールの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。これによって、洗浄剤組成物が、5℃などの低温条件であっても、きめの細かい泡を形成可能であり且つフォーマー容器からの吐出性に優れるものとなる。
【0042】
ガラクトキシログルカンは、双子葉、単子葉植物などの高等植物の細胞壁(一次壁)に存在する天然多糖である。ガラクトキシログルカンは、グルコース、キシロース、及びガラクトースを構成糖とする。ガラクトキシログルカンの主鎖は、β-1,4結合でつながったグルコースにより構成され、側鎖は、主鎖のグルコースに結合したキシロース、キシロースに結合したガラクトースにより構成される。ガラクトキシログルカンは、タマリンド、ヒメネア属植物の種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギ、リンゴなどから取得される。これらのなかでも、入手が容易なタマリンド種子由来のものが好ましい。また、市販品のガラクトキシログルカンとしては、DSP五協フード&ケミカル社製のグリロイド(登録商標)が挙げられる。
【0043】
本発明では、ガラクトキシログルカンのなかでも、低粘性ガラクトキシログルカンを用いることが重要である。低粘性ガラクトキシログルカンとは、低粘性ガラクトキシログルカンの1.5質量%水溶液(低粘性ガラクトキシログルカンの質量:水の質量=1.5:98.5)の粘度が、150mPa・s以下を示すものを意味する。なお、粘度は、B型粘度計を用い、測定温度25℃、回転数30rpmの条件で測定される。
【0044】
低粘性ガラクトキシログルカンの前記粘度は、90mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましい。これによって、洗浄剤組成物が、フォーマー容器からの吐出性に優れ(特に5℃)、且つ、洗浄時の使用感に優れるものとなる。さらに、低粘性ガラクトキシログルカンの前記粘度は、25mPa・s以上35mPa・s以下であることが特に好ましい。これによって、洗浄剤組成物が、さらに、弾力のあるきめ細かい泡を形成可能になり、吐出性、使用感に優れるものとなる。
【0045】
前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して、0.4~1.5質量%であることが好ましく、0.4~1.2質量%であることがより好ましく、0.4~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
低粘性ガラクトキシログルカンは、グリロイド(登録商標)などのガラクトキシログルカンを分解することによって調製される。また、この分解の程度を調整することによって、前記粘度を適宜変更することができる。
【0047】
例えば、低粘性ガラクトキシログルカンは、ガラクトキシログルカンの化学的分解、物理的分解、又は酵素的分解によって調製される。
【0048】
化学的分解としては、酸加水分解又はアルカリ加水分解が挙げられる。酸加水分解に用いる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、又は硝酸などの無機酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、又はプロピオン酸などの有機酸が挙げられる。これらのなかでも、硫酸やクエン酸が好ましい。アルカリ加水分解に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化カルシウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0049】
物理的分解としては、熱処理、高圧ホモジナイズ処理、超音波処理、又は機械的せん断処理が挙げられる。
【0050】
酵素的分解に用いる酵素は、β-1,4-グルカナーゼ、すなわち、いわゆるセルラーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素が挙げられる。
【0051】
低粘性ガラクトキシログルカンは、酸加水分解により調製されたものであることが好ましい。より具体的には、低粘性ガラクトキシログルカンは、以下のようにして調製することができる。
まず、アルコール水溶液にガラクトキシログルカンを分散した後、酸を加えて加熱する。その後、アルカリを加えて中和し、沈殿物を回収した後、該沈殿物をアルコール水溶液で洗浄して乾燥すると低粘性ガラクトキシログルカンが得られる。
低粘性ガラクトキシログルカンの調製時に用いるガラクトキシログルカンの量は、アルコール水溶液の全量に対してガラクトキシログルカンが0.1~20質量%である。アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが好ましい。アルコール水溶液の濃度は、30~80質量%が好ましい。酸の添加量は、アルコール水溶液に対して0.1~20重量%であり、好ましくは1~10重量%である。溶液のpHの値としては4未満が好ましい。反応温度は、20℃から150℃であり、好ましくは40℃から121℃である。反応時間は、所望の反応時間を、例えばB型粘度計〔東機産業(株)製〕で測定してモニターすることにより調節することができ、通常は数秒から48時間であり、1時間から24時間が好ましい。アルカリの添加量は、溶液の液性が中性(pHの目安:6~8)になる量である。
【0052】
水は、脱イオン水や蒸留水が好ましい。水の含有量は、洗浄剤組成物に総質量に対して、通常50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0053】
洗浄剤組成物の粘度は、5℃及び25℃の両方の温度条件において、B型粘度計の30rpmの条件下で20mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましい。これによって、洗浄剤組成物をフォーマー容器に充填する操作が容易になる。このことは、フォーマー容器を繰り返し使用する場合、すなわち、再充填型のフォーマー容器の場合に好ましい。
また、本実施形態の洗浄剤組成物は、粘度が上記のような値であることによって、洗浄時の使用感に優れる。
【0054】
洗浄剤組成物のpH(25℃)は、通常、4~11である。
【0055】
本実施形態の洗浄剤組成物は、洗顔料、シャンプー、手洗い用石けん、ボディーソープ、メイク落とし、歯磨き等の各種洗浄剤に使用することができる。
【0056】
本実施形態の洗浄剤組成物は、上記のノンガス型フォーマー容器に充填されて使用される場合であっても、良好な泡を形成可能であり且つ吐出性に優れるものである。
【0057】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係る洗浄剤組成物は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る洗浄剤組成物は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係る洗浄剤組成物は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、本発明の洗浄剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を含んでいてもよい。両性界面活性剤としては、ラウリルベタインやラウラミドプロピルベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型のものが好ましい。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0060】
[低粘性ガラクトキシログルカンの調製]
非特許文献1に記載のガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド)を酸処理することによって、表1の粘度を示す低粘性ガラクトキシログルカンを調製した。具体的には、耐圧容器に272gの50%アルコール水溶液を入れ、撹拌しながら28gのガラクトキシログルカンを投入して分散し、さらに硫酸を添加して溶液のpHを約2に調整した。そして、この溶液を撹拌しながら110℃まで加熱した。加熱終了後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを約7に調整し、ろ過して沈殿物を得た。次いで、この沈殿物に300gの50%アルコール水溶液を加えて撹拌し、ろ過して沈殿物を得た。再度、沈殿物に300gの50%アルコール水溶液を加えて撹拌し、ろ過をして沈殿物を得た後、約75℃で乾燥して低粘性ガラクトキシログルカンを得た。なお、110℃での加熱時間は60分から240分の間で適宜変更し、低粘性ガラクトキシログルカン1~7を得た。
【0061】
[比較用の多糖類]
キサンタンガム:DSP五協フード&ケミカル社製 エコーガムT
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アシュランド社製 Benecel E4M
第四級アンモニウム塩型セルロース:ダウ・ケミカル社製 UCARE Polymer JR-400
【0062】
[評価に用いた他の原料]
(アニオン性界面活性剤)
ラウリン酸/ミリスチン酸/パルミチン酸/グリセリン/KOH/水(固形分35%):花王社製 プライオリーB100
ココイルアラニンNa(30%):味の素ヘルシーサプライ社製 アミライトACS-12
ココイルグルタミン酸Na(25%):旭化成ファインケム社製 アミノサーファクトACDS-L
ココイルグルタミン酸TEA(30%):旭化成ファインケム社製 アミノサーファクトACMT-L
ラウロイルアスパラギン酸Na(25%):旭化成ファインケム社製 アミノフォーマーFLDS-L
ラウロイルメチルアラニンNa(30%):日油社製 ソフティルトAS-L
ラウレス硫酸Na(25%):花王社製 エマール20C
(両性界面活性剤)
ラウリルベタイン(30%):新日本理化社製 リカビオンA100
ラウラミドプロピルベタイン(30%):川研ファインケミカル社製 ソフタゾリンLPB-R
(ノニオン性界面活性剤)
ヤシ油アルキルグルコシド(52%):BASF社製 Plantacare 818 UP
(防腐剤)
フェノキシエタノール/プロパンジオール/炭酸プロピレン/カプリルヒドロキサム酸/o-シメン-5-オール:アシュランド社製 Optiphen GP
【0063】
[粘度測定]
各低粘性ガラクトキシログルカン及びガラクトキシログルカン(グリロイド6C)の粘度を測定した。具体的には、合計200gになるよう各試料3gを水197gに撹拌しながら溶解し、1.5質量%水溶液を調製した。B型粘度計(東機産業社製)を用い、25℃、30rpmの条件で、各水溶液の粘度を測定した。結果は、表1に示したとおりである。
【0064】
【0065】
[洗浄剤組成物の評価]
表2~表5に示す処方にしたがって洗浄剤組成物を調製し、泡の形成性、フォーマー容器からの吐出性、使用感について評価した。また、B型粘度計を用い、25℃又は5℃、30rpmの条件で、各洗浄剤組成物の粘度を測定した。さらに、pH計を用い、各洗浄剤組成物の25℃でのpHを測定した。結果は、表2~表5に示したとおりである。
【0066】
[泡のきめ細かさの評価]
ポンプフォーマー容器(武内容器株式会社製、M1 50mL用)に、各洗浄剤組成物50mLを充填し、25℃又は5℃になるまで保存した。プラスチックシャーレにポンプフォーマー容器から泡を3回吐出し、下記評価基準に従い、泡の外観を観察した。
(評価基準)
◎:きめ細やかで均一な泡が形成される
〇:きめ細やかな泡だが、一部に大きな泡が混じる
×:不均一な泡で、全体に大きな泡が混じる
【0067】
[泡の弾力の評価]
ポンプフォーマー容器に各洗浄剤組成物50mLを充填し、25℃になるまで保存した。ポンプフォーマー容器から手のひらに吐出を3回行い、もう一方の手で泡を押し、下記評価基準に従い、泡の弾力を評価した。
(評価基準)
◎:泡にクッション性がある
〇:泡にクッション性がややある
×:泡のクッション性が弱い
【0068】
[泡の粘度測定]
ポンプフォーマー容器に各洗浄剤組成物を50mL充填し、25℃になるまで保存した。ポンプフォーマー容器から吐出した泡を100mLビーカーに入れ、B型粘度計(東機産業製)で30rpmの泡粘度(mPa・s)を測定した。
【0069】
[泡の安定性の評価]
底面の直径3cm、高さ6cmのキャップ付きビンにポンプフォーマー容器から吐出した泡を満量充填した。30分間静置した後、泡層と離水層との合計高さ(A)と離水層の高さ(B)を計測した。
30分後の泡層の高さ(C)と泡の残存率を下記計算式で求めた。
30分後の泡層の高さ(C)=合計高さ(A)-離水層の高さ(B)
30分後の泡の残存率(%)=30分後の泡層の高さ(C)÷0分の泡層の高さ(6cm)×100
【0070】
[吐出性の評価]
ポンプフォーマー容器に各洗浄剤組成物50mLを充填し、25℃又は5℃になるまで保存した。温度調整した各洗浄剤組成物について、ポンプフォーマー容器からの吐出を5回行い、下記評価基準に従って、吐出性を評価した。
(評価基準)
◎:吐出しやすい
○:吐出するときにわずかに圧力を感じる
×:吐出するときに圧力を感じ、吐出しにくい
【0071】
[洗浄時及びタオルドライ後の使用感の評価]
ポンプフォーマー容器に各洗浄剤組成物を50mL充填し、25℃になるまで保存した。ポンプフォーマー容器から手のひらに吐出を3回行い、手全体に広げた後、流水で洗浄しペーパータオルで手を拭き、下記評価基準に従い、洗浄時の使用感及びタオルドライ後の使用感を評価した。
(洗浄時の使用感の評価基準)
◎:ヌルツキがなくさっぱりする
〇:わずかにヌルツキを感じるが、さっぱりする
×:ヌルツキが強い
(タオルドライ後の使用感の評価基準)
◎:しっとりする
〇:ややしっとりする
×:しっとり感がなく、つっぱる
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
評価結果は、表2~5に示したとおりである。表2の実施例1~4、表3の実施例5~13から、低粘性ガラクトキシログルカンを0.4質量%~1.5質量%配合することにより、優れた泡質、吐出性、使用感が得られ、一方、比較例1~11から、ガラクトキシログルカン、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、第四級アンモニウム塩型セルロースを配合した場合、低粘性ガラクトキシログルカンを0.3質量%以下、乃至は2.0質量%配合した場合、あるいは多糖類を配合しない場合には、泡質や吐出性、使用感が好ましくないことがわかる。表4の実施例2、14~22から、様々なポリオールで優れた泡質、吐出性、使用感の得られることがわかる。表5の実施例2、23~32から、様々なアニオン性界面活性剤で優れた泡質、吐出性、使用感の得られることが分かる。さらに、実施例29~32では、アニオン性界面活性剤に両性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を併用しても好ましい効果が得られた。また、実施例28と比較例12との比較により、良質な泡の形成、フォーマー容器からの良好な吐出性、及び良好な使用感を得るためには、低粘性ガラクトキシログルカンとグリセリン(ポリオール)との併用が有効であることを理解することができる。そして、実施例31、32からは、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールなどのグリセリン以外のポリオールでも実施例28のグリセリン配合の場合と同様の効果が得られた。