(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120912
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】加熱蒸散用組成物、加熱蒸散剤および消臭効果の増強方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/02 20060101AFI20230823BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20230823BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230823BHJP
A61L 9/013 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61L9/02
C11B9/00 N
C11B9/00 E
A61L9/01 H
A61L9/01 Q
A61L9/01 K
A61L9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024055
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】八▲塚▼ 貴弘
【テーマコード(参考)】
4C180
4H059
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
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4C180AA19
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4H059BA14
4H059BA22
4H059BA23
4H059BC10
4H059DA09
4H059EA32
(57)【要約】
【課題】悪臭への優れた消臭効果を効率よく得ることができる、加熱蒸散剤に用いるための加熱蒸散用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)香料成分を含有する加熱蒸散用組成物であって、前記(B)香料成分は、大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物を含有する加熱蒸散用組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)香料成分を含有する加熱蒸散用組成物であって、前記(B)香料成分は、大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物を含有することを特徴とする加熱蒸散用組成物。
【請求項2】
前記(B)香料成分が、3-メチルシクロペンタデカノン、(E)-3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、(E)-3-メチルシクロテトラデカ-5-エン-1-オン、3-メチルシクロテトラデカノン、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、1-オキサシクロヘプタデカ-7-エン-2-オン、15-ペンタデカノリド、オキサシクロヘキサデセン-2-オン、1-tert-ブチル-3,5-ジメチル-2,4,6-トリニトロベンゼン、3,5-ジニトロ-4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]イソクロメン、7-アセチル-1,1,3,4,4,6-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン、4-アセチル-6-tert-ブチル-1,1-ジメチルインダン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、2-[(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ]-2-メチルプロピルプロピオナート、シクロペンタデカン、シクロペンタデカノール、シクロヘキサノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、ペンタデカン-2-オンおよびペンタデカン-8-オンからなる群から選ばれる少なくとも1つの香料化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の加熱蒸散用組成物。
【請求項3】
前記(A)イソプロピルメチルフェノールを、50~80質量%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の加熱蒸散用組成物。
【請求項4】
車用加熱蒸散剤に用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱蒸散用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱蒸散用組成物を備えることを特徴とする加熱蒸散剤。
【請求項6】
(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選らばれる少なくとも1種の香料化合物を含有する加熱蒸散用組成物を加熱蒸散させることを特徴とする部屋又は乗物の内部の消臭効果を増強させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱蒸散用組成物、加熱蒸散剤および消臭効果の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車内や室内等に残ったタバコ臭や汗臭等の不快なにおいを取り除くために様々な消臭剤が使用されている。車、トイレ、台所等の小空間には悪臭が残りやすく、消臭剤の需要が高まっている。
【0003】
悪臭を消臭するための製剤としては、消臭成分を含有したハンドポンプ剤や置き型の消臭剤等が知られているが、ハンドポンプ剤は対象空間や対象面に均一に分散、塗布させるのが手間であり、また置き型の消臭剤では満足のいく消臭効果が得られ難い。
そこで、加熱蒸散剤を用いて消臭することがなされている。加熱蒸散剤は加熱手段を用いて有効成分を揮散させるものであり、有効成分を含んだ薬剤と加熱装置とを含み、加熱装置により薬剤を加熱し、有効成分を空間内へ揮散させる。
【0004】
例えば、特許文献1には、常温では固体であり、加熱されることにより融解して全体として液体となり、且つ加熱により液体となった製剤の構成成分の中から有効成分としての薬剤が蒸散する加熱蒸散用製剤が提案されており、乗り物内や金属製品、観葉植物等が存在する室内での使用に適することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年は、クリーンな環境を求めて空気清浄への意識が高まっており、加熱蒸散剤におけるさらなる改良が望まれていた。
そこで、本発明は、悪臭への優れた消臭効果を効率よく得ることができる、加熱蒸散剤に用いるための加熱蒸散用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、消臭の有効成分としてイソプロピルメチルフェノールを用い、特定の香料化合物とともに用いることで、加熱蒸散させたときに優れた消臭効果を発揮できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は以下の(1)~(6)によって達成される。
(1)(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)香料成分を含有する加熱蒸散用組成物であって、前記(B)香料成分は、大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物を含有することを特徴とする加熱蒸散用組成物。
(2)前記(B)香料成分が、3-メチルシクロペンタデカノン、(E)-3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、(E)-3-メチルシクロテトラデカ-5-エン-1-オン、3-メチルシクロテトラデカノン、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、1-オキサシクロヘプタデカ-7-エン-2-オン、15-ペンタデカノリド、オキサシクロヘキサデセン-2-オン、1-tert-ブチル-3,5-ジメチル-2,4,6-トリニトロベンゼン、3,5-ジニトロ-4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]イソクロメン、7-アセチル-1,1,3,4,4,6-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン、4-アセチル-6-tert-ブチル-1,1-ジメチルインダン、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン、2-[(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ]-2-メチルプロピルプロピオナート、シクロペンタデカン、シクロペンタデカノール、シクロヘキサノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、ペンタデカン-2-オンおよびペンタデカン-8-オンからなる群から選ばれる少なくとも1つの香料化合物を含有することを特徴とする、前記(1)に記載の加熱蒸散用組成物。
(3)前記(A)イソプロピルメチルフェノールを、50~80質量%含有することを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の加熱蒸散用組成物。
(4)車用加熱蒸散剤に用いることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の加熱蒸散用組成物。
(5)前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の加熱蒸散用組成物を備えることを特徴とする加熱蒸散剤。
(6)(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物を含有する加熱蒸散用組成物を加熱蒸散させることを特徴とする部屋又は乗物の内部の消臭効果を増強させる方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱蒸散用組成物は、悪臭に対して優れた消臭効果を有し、悪臭に対する不快感を軽減できる。また、イソプロピルメチルフェノールは蒸散により空間を構成する構造部材表面や前記空間内に配置された物品等に付着しても煤を伴うことが少ないため、使用場所への汚染を軽減できる。よって、本発明の加熱蒸散用組成物を用いた加熱蒸散剤は車内や室内において安全に効率よく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】加熱蒸散剤の一使用形態を示す断面図である。
【
図2】試験例1の評価試験における悪臭強度の評価結果を示すグラフである。
【
図3】試験例1の評価試験における快不快度の評価結果を示すグラフである。
【
図4】試験例2の評価試験における汚染度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の加熱蒸散用組成物、加熱蒸散剤および消臭効果の増強方法について更に詳しく説明する。
【0012】
<加熱蒸散用組成物>
本発明の加熱蒸散用組成物は、(A)イソプロピルメチルフェノールおよび(B)香料成分を含有する。
【0013】
(イソプロピルメチルフェノール)
イソプロピルメチルフェノール(以下、「IPMP」ともいう。)は殺菌成分として知られる成分である。本発明者の検討により、IPMPには悪臭を消臭する作用があることが見出され、本発明の加熱蒸散用組成物はIPMPを有効成分として含有する。
【0014】
IPMPは、加熱蒸散用組成物中、50~80質量%含有するのが好ましい。IPMPを50質量%以上含むことで、加熱蒸散されたときに悪臭の消臭効果を十分に発揮できる。また、IPMPの含有量が80質量%を超えると、消臭効果は期待できるもののIPMPのにおいが強く発せられてしまい使用感が損なわれる虞があるので、80質量%以下で使用するのが好ましい。IPMPの含有量は、50量%以上であるのが好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、また、80質量%以下であるのが好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(香料成分)
本発明では、加熱蒸散用組成物中に香料成分として、大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記IPMP以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物(以下、「特定香料化合物」ともいう。)を含有する。これらはムスク調の香料化合物を含み、IPMPとともに加熱蒸散させると、悪臭に対する消臭効果が相乗的に向上する。
【0016】
大環状ムスクとしては、例えば、3-メチルシクロペンタデカノン(3-methylcyclopentadecanone、ムスコン)、(E)-3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン((E)-3-methyl-5-cyclopentadecen-1-one、ムセノン)、シクロペンタデカノン(cyclopentadecanone)、5-シクロヘキサデセン-1-オン(5-cyclohexadecen-1-one)、8-シクロヘキサデセン-1-オン(8-cyclohexadecen-1-one)、(E)-3-メチルシクロテトラデカ-5-エン-1-オン((E)-3-methylcyclotetradec-5-en-1-one、コスモン)、3-メチルシクロテトラデカノン(3-methylcyclotetradecanone)等の大環状ケトン;1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン(1,4-dioxacycloheptadecane-5,17-dione、エチレンブラシレート)、1-オキサシクロヘプタデカ-7-エン-2-オン(oxacycloheptadec-7-en-2-one、アンブレットリド)、15-ペンタデカノリド(15-pentadecanolide、エキザルトリド)、オキサシクロヘキサデセン-2-オン(oxacyclohexadec-12-en-2-one、ハバノリド)等の大環状ラクトン等が挙げられる。
【0017】
ニトロムスクとしては、例えば、1-tert-ブチル-3,5-ジメチル-2,4,6-トリニトロベンゼン(1-tert-butyl-3,5-dimethyl-2,4,6-trinitrobenzene、ムスクキシロール)、3,5-ジニトロ-4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン(4'-tert-butyl-2',6'-dimethyl-3',5'-dinitroacetophenone、ムスクケトン)等が挙げられる。
【0018】
多環式ムスクとしては、例えば、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ[g]イソクロメン(4,6,6,7,8,8-hexamethyl-1,3,4,6,7,8-hexahydrocyclopenta[g]isochromene、ガラクソリド)、7-アセチル-1,1,3,4,4,6-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン(1-(5,6,7,8-tetrahydro-3,5,5,6,8,8-hexamethyl-2-naphthyl)ethan-1-one、トナリド)、4-アセチル-6-tert-ブチル-1,1-ジメチルインダン(6-tert-butyl-1,1-dimethylindan-4-yl methyl ketone、セレストリド)、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン(1,2,3,5,6,7-hexahydro-1,1,2,3,3-pentamethyl-4H-inden-4-one、カシュメラン)等が挙げられる。
【0019】
鎖状ムスクとしては、例えば、2-[(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ]-2-メチルプロピルプロピオナート(2-[1-(3,3-dimethylcyclohexyl)ethoxy]-2-methylpropyl propionate、ヘルベトリド)等が挙げられる。
【0020】
シクロアルカンとしては、例えば、シクロペンタデカン(cyclopentadecane)等が挙げられる。
【0021】
IPMP以外の環状アルコールとしては、例えば、シクロペンタデカノール(cyclopentadecan-1-ol)等が挙げられる。
【0022】
環状ケトンとしては、例えば、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、シクロデカノン(cyclodecanone)、シクロウンデカノン(cycloundecanone)等が挙げられる。
【0023】
鎖状ケトンとしては、例えば、ペンタデカン-2-オン(pentadecan-2-one)、ペンタデカン-8-オン(pentadecan-8-one)等が挙げられる。
【0024】
上記特定香料化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)香料成分は、特定香料化合物の中でも、大環状ムスク、多環式ムスク、シクロアルカン、IPMP以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物を含有するのがより好ましい。
【0025】
上記特定香料化合物は、加熱蒸散用組成物中、0.1~10質量%含有するのが好ましい。特定香料化合物を0.1質量%以上含むことで、IPMPとの相乗効果により優れた消臭効果を発揮できる。また、特定香料化合物の含有量が10質量%を超えると、香料の香りが強くなり過ぎてしまい使用感が損なわれる虞があるので、10質量%以下で使用するのが好ましい。特定香料化合物の含有量は、0.1質量%以上であるのが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また、10質量%以下であるのが好ましく、7質量%以下がより好ましい。
【0026】
本発明の加熱蒸散用組成物には、上記した特定香料化合物以外にも、香料成分として公知の香料化合物を含有することができる。
その他の香料化合物としては、例えば、ヒドロキシメチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド(リラール)、ヒドロキシシトロネラール、シクラメンアルデヒド、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、リリアール、リナロール、酢酸リナリル、γ-メチルイオノン、α-イオノン、β-イオノン、ネロール、フェノキシエチルイソブチレート等のフローラル調香料化合物;n-オクタナール、サリチル酸シス-3-ヘキセニル等のグリーン系香料化合物;バニリン等のグルマン系香料化合物;L-メントール等のメントール系香料化合物等が挙げられる。
【0027】
加熱蒸散用組成物中の香料成分全体の含有量としては、0.1~10質量%であるのが好ましい。香料成分全体の含有量が前記範囲であると、IPMPとの相乗効果により優れた消臭効果を発揮できる。香料成分全体の含有量は、0.1質量%以上であるのが好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また、10質量%以下であるのが好ましく、7質量%以下がより好ましい。
【0028】
なお、香料成分全体における上記特定香料化合物は、5質量%以上含まれるのが好ましく、10質量%以上がより好ましく、香料成分全体における特定香料化合物の割合が100質量%、すなわち香料成分の全てが特定香料化合物により構成されていてもよい。
【0029】
本発明の加熱蒸散用組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の任意成分を含有することができる。その他の任意成分としては、例えば、蒸散補助剤、崩壊剤、防錆剤、安定化剤、賦形剤、色素等が挙げられる。
【0030】
蒸散補助剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、三酸化アンチモン、デカブロモジフェニレンオキサイド、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ベンゾトリアゾール、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、尿素等の発泡剤が挙げられる。これらを併用することで、有効成分の揮散効率を調整することができる。
【0031】
なお、本発明の加熱蒸散用組成物には蒸散補助剤を含有してもよいが、含有しなくても加熱蒸散によりIPMPと香料成分は揮散される。本発明の加熱蒸散用組成物を10m3以下の小空間で使用する場合は、蒸散補助剤を使用しなくても空間の隅々までIPMPと香料成分を揮散させることができる。特に、アゾジカルボンアミドは公知の優れた蒸散補助剤であるが、アゾジカルボンアミドを加熱蒸散させると煤が生成され、使用周辺部が煤で汚染されやすくなるので、アゾジカルボンアミドを用いない場合は、使用周辺部周囲の汚染を低減できる。
【0032】
崩壊剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ステアリン酸エステル、乳酸エチル、サリチル酸クロロフェニル等の有機酸エステル;乳酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸、コハク酸等の有機酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。崩壊剤を含有すると、加熱による加熱蒸散用組成物の崩壊が促進され、有効成分の揮散効率を高めることができる。
【0033】
防錆剤としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0034】
安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール等が挙げられる。
【0035】
賦形剤としては、例えば、パーライト、タルク、珪藻土、クレイ、ベントナイト、粘土鉱物などの鉱物、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マルチトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール等が挙げられる。
【0036】
さらに、必要によりその他の有効成分として、本発明の効果を妨げない範囲で、上記したIPMP以外の消臭剤、殺虫剤、害虫忌避剤、殺菌・除菌剤等を含有することができる。
【0037】
消臭剤としては、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロリネート、カテキン、ポリフェノール、タンニン等が挙げられる。
【0038】
殺虫剤としては、例えば、天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系殺虫剤;プロポクスル、カルバリル等のカーバメイト系殺虫剤;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系殺虫剤;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫剤;フィプロニル等のフェニルピラゾール系殺虫剤;イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系殺虫剤;アミドフルメト等のスルホンアミド系殺虫剤;クロルフェナピル等のピロール系化合物;メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物;プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物;エクダイソン等の脱皮ホルモン様化合物;フィトンチッド、薄荷油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の精油類;IBTA、IBTE、第四級アンモニウム塩、サリチル酸ベンジル等が挙げられる。
【0039】
害虫忌避剤としては、例えば、ディート、ジブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート等が挙げられる。
【0040】
殺菌・除菌剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、PCMX、IPBC、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0041】
本発明の加熱蒸散用組成物は、その形態は特に限定されず、例えば、顆粒状、塊状、粒状、粉状、錠剤等の固形状等任意の形態とすることができる。中でも、顆粒状で使用するのが好ましい。
固形状の加熱蒸散用組成物とする場合は、各成分を公知の造粒機や成形機を用いて所望の形状に成形すればよい。
【0042】
本発明の加熱蒸散用組成物を製造するには、成分(A)であるIPMPと、成分(B)である香料成分が所定量となるように混合し、結合剤や溶剤等を用いて造粒、乾燥させて、顆粒剤、粉末剤、微細粒剤等とすればよい。これらを造粒する際には、例えば、顆粒剤であれば粒径が約0.5~5mm、長さが約1~30mmの円柱状とするのがよい。顆粒剤の粒径は、下限は1mm以上であるのがより好ましく、上限は3mm以下であるのがより好ましい。
【0043】
造粒の際に用いる結合剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、スターチ等のデンプン系、アラビアゴム等の天然系高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの結合剤は、加熱蒸散用組成物に対して0.5~5.0質量%となるように配合すればよい。
【0044】
溶剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等のグリコールエーテル類、流動パラフィン、n-パラフィン等のパラフィン類、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、その他3-メチル-4-メトキシブタノール、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。また、上記香料成分とともに混合し、香料組成物として使用することもできる。
【0045】
なお、本発明の加熱蒸散用組成物にIPMPと香料成分を配合する場合は、造粒時にIPMPと香料成分を混合、練り込む以外にも、造粒後に噴霧、浸漬させて保持させることもできる。
【0046】
<加熱蒸散剤>
本発明の加熱蒸散用組成物は、例えば、
図1に示すような、自己発熱装置1に収容され、加熱蒸散剤10の形態で使用される。
自己発熱装置1は、有底円筒状の容器2を備えており、その底部から側部にかけて加水発熱物質8が収容されている。容器2は、底部に複数の通水孔21を有し、通水孔21は通水性を有する部材、例えば不織布シート3によって塞がれている。また、容器2の内部は、仕切部材4により2つの空間に区画されている。仕切部材4は、円筒状で底部が略中空半球状を呈しており、その側壁が容器2の周壁と同心状に配置されている。
加水発熱物質8は、容器2の周壁、仕切部材4および不織布シート3とで形成される空間に充填され、仕切部材4の内部には加熱蒸散用組成物7が収容される。また、容器2の上部開放面には、仕切部材4の上部開放面に相当する領域に複数の開口部が形成された蓋部材5が被冠されており、さらに蓋部材5の開口部は通気孔を有する熱溶融樹脂フィルム6によって塞がれている。
【0047】
本発明の加熱蒸散用組成物の加熱温度としては、仕切部材4の底部で測定した時に約200℃~470℃の範囲とするのが好ましく、より好ましくは250℃~350℃である。
【0048】
自己発熱装置1で用いる加水発熱物質8としては、加水発熱反応用液Wとの反応により自己発熱する物質であり、例えば、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、鉄粉と酸化剤との混合物、硫化ソーダと炭化鉄との混合物、これらの混合物等が挙げられ、中でも、加水発熱反応用液Wと反応させたときの反応の速さ、入手の容易さの点から酸化カルシウム、炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。加水発熱反応用液Wとしては、水あるいは水に各種添加剤を加えられた液が挙げられる。
【0049】
本発明において、加水発熱物質8と加水発熱反応用液Wは、良好に発熱させるために質量比1:0.01~1:3で使用するのがよい。さらに、加水発熱物質8に対する加水発熱反応用液Wのモル比が0.25~3倍となるようにすることでより良好に発熱させることができる。
【0050】
このような発熱システムにおいては、加熱蒸散用組成物7に対して加水発熱物質8を1~30質量倍で用いるのがよく、具体的には加熱蒸散用組成物7を1~100gに対して、加水発熱物質8は30~300gを目安として用いるのがよい。さらに加水発熱物質8に対して加水発熱反応用液Wは0.05~2質量倍となるように加えればよい。
【0051】
従って、使用に際して、自己発熱装置1を加水発熱反応用液Wが入った水容器9に入れることにより、加水発熱反応用液Wが通水孔21を通じて容器2に流入し、さらに不織布シート3を浸透して加水発熱物質8と接触し、そのとき発生した反応熱により加熱蒸散用組成物7が加熱されて、成分(A)であるIPMPと成分(B)である香料成分が揮散して、熱溶融樹脂フィルム6の通気孔を通じて外部(車内や室内等)に放出される。また、熱溶融樹脂フィルム6は加熱蒸散用組成物7からの放熱並びに揮散した各成分との接触により熱溶融するため、蒸散の比較的早い時期から、IPMPと香料成分は蓋部材5の開口部を通じて効率良く外部に放出される。
【0052】
上記加水発熱システム以外の加熱手段としては、例えば、ニクロム線等の電熱線、平板状やリング状、さらに半導体を利用した加熱ヒーター等を用いた電気加熱システム;鉄粉と塩素酸アンモニウム等の酸化剤とを混合する、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを混合する、鉄と硫酸カリウム、硫酸鉄、金属塩化物、硫化鉄等の混合物を水や酸素と接触させる、鉄よりイオン化傾向が大きい金属と鉄よりイオン化傾向が小さい金属のハロゲン化物との混合物を水と接触させる、金属と重硫酸塩との混合物を水と接触させる、アルミニウムとアルカリ金属硝酸塩との混合物に水を加える、等の酸化反応により発熱するシステム;硫酸ソーダと炭化鉄との混合物を酸素と接触させる金属硫化物の酸化反応を利用して発熱するシステム等を用いて、加熱する方法が挙げられる。
【0053】
<加熱蒸散剤の使用場所>
本発明の加熱蒸散用組成物を備えた加熱蒸散剤は、10m3以下の小空間で使用するのに適しており、具体的に、車、バス、電車等の乗物や、トイレ、台所、浴室等の家庭内の閉鎖空間を形成する部屋で使用するのに適している。
また、本発明の加熱蒸散用組成物は、種々の悪臭に対して優れた消臭効果を発揮でき、例えば、タバコ臭、汗臭、カビ臭の消臭に効果がある。よって、車用の加熱蒸散剤として使用するのに好適である。
【0054】
<消臭効果を増強させる方法>
本発明はまた、部屋又は乗物の内部の消臭効果を増強させる方法も提供する。本発明の加熱蒸散用組成物を加熱蒸散させることで、(A)イソプロピルメチルフェノールと(B)大環状ムスク、ニトロムスク、多環式ムスク、鎖状ムスク、シクロアルカン、前記イソプロピルメチルフェノール以外の環状アルコール、環状ケトンおよび鎖状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香料化合物との相乗効果により、悪臭の消臭効果を高めることができる。
【実施例0055】
以下の実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0056】
<試験例1>
(実施例1)
[加熱蒸散用組成物の作製]
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)65質量部、タルク33質量部およびヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量部を混合し、造粒、乾燥し、粒径2mm、長さ1~30mmの大きさの円柱状の顆粒を得た。
得られた顆粒0.87g(IPMP量:約0.57g)と香料化合物である3-メチルシクロペンタデカノン(ムスコン)0.05gを混合することにより、顆粒に香料化合物を含浸させて加熱蒸散用組成物を作製した。加熱蒸散用組成物中、IPMPは62質量%、香料化合物は5.4質量%含有されている。
【0057】
[加熱蒸散剤の作製]
上記で作製した加熱蒸散用組成物を用いて
図1に示すような加熱蒸散剤10を作製した。
自己発熱装置1は、直径53mm、高さ63mm、深さ40mmの有底円筒状の容器2を備え、加水発熱物質8として75gの低温生石灰(酸化カルシウム65質量%と炭酸カルシウム35質量%の混合物)を収容した。容器2は、底部に複数の通水孔21を有し、通水孔21は通水性を有する不織布シート3によって塞いだ。また、容器2の内部は、仕切部材4により2つの空間に区画した。仕切部材4は、円筒状で底部が略中空半球状を呈しており、その側壁を容器2の周壁と同心状に配置した。
加水発熱物質8は、容器2の周壁、仕切部材4及び不織布シート3とで形成される空間に充填し、仕切部材4の内部に、上記作製した加熱蒸散用組成物7を収容した。また、容器2の上部開放面には、仕切部材4の上部開放面に相当する領域に0.8cm
2の開口部を7個形成した蓋部材5を被せ、更に蓋部材5の開口部は通気孔を有する熱溶融樹脂フィルム6によって塞ぎ、実施例1の加熱蒸散剤を作製した。
【0058】
また、実施例1の加熱蒸散剤の比較対象として、顆粒のみ(0.87g)を仕切部材4の内部に収容した加熱蒸散剤(参考例1-1)と、香料化合物のみ(0.05g)を仕切部材4の内部に収容した加熱蒸散剤(参考例1-2)を作製した。
【0059】
[試験方法]
1.自動車の天面部材に使用されるポリエステル布帛を5cm×5cmのサイズに細断し、そこに酢酸を100μL滴下し乾燥させた後、タバコの煙を5~7秒当てて試験片を得た。
2.次に、試験片をシャーレ(直径9cm、高さ1cm)の中に張り付けた。
3.1m3のチャンバー内の天井面に試験片を貼り付けたシャーレを設置し、チャンバーの床の略中央位置に加熱蒸散剤を置き、22mLの水を入れた水容器に浸けることによりくん煙を開始し、チャンバー内を密閉状態として3時間くん煙させた。
4.3時間後、試験片のにおいをパネラーにより評価した。
5.また、コントロールとして、加熱蒸散剤によるくん煙を行わず、チャンバー内に3時間放置した試験片についても同様に評価した。
【0060】
[評価方法]
専門パネラー10名が、試験片の悪臭強度と快不快度について、以下の評価基準により点数評価し、それぞれの平均値を求め、各例のそれぞれの「評価値」とした。
(1)悪臭強度の評価基準(6段階評価)
5点:強烈なにおい
4点:強いにおい
3点:楽に感知できるにおい
2点:何であるかわかるにおい
1点:やっと感知できるにおい
0点:無臭
(2)快不快度の評価基準(9段階評価)
4点:極端に快
3点:非常に快
2点:快
1点:やや快
0点:快でも不快でもない
-1点:やや不快
-2点:不快
-3点:非常に不快
-4点:極端に不快
【0061】
【0062】
(実施例2~11、比較例1~2)
実施例2~11、比較例1~2は、香料化合物を表1に記載の化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。なお、実施例11では、香料化合物として、15-ペンタデカノリドと7-アセチル-1,1,3,4,4,6-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレンを含む香料混合物を0.05g用いた。
結果を
図2および
図3に示す。
【0063】
【0064】
図2および
図3より、IPMPを含有した顆粒のみを収容した加熱蒸散剤(参考例1-1~11-1)と、本発明の特定香料化合物のみを収容した加熱蒸散剤(参考例1-2~11-2)をそれぞれ加熱蒸散させるとコントロールに対してそれぞれ消臭効果が得られたが、IPMPと特定香料化合物とを組み合わせることで、実施例1~11の加熱蒸散剤を加熱蒸散させたときには、高い消臭効果が得られ、さらに不快度が低減されることがわかった。
これに対し、フローラル調の香料化合物を用いたときは、比較例2の加熱蒸散剤はIPMPとフローラル調の香料化合物を組み合わせてもそれぞれ単独で蒸散させたときとほぼ同じ効果しか得られず、グリーン系香料化合物については、比較例1の加熱蒸散剤はIPMPとグリーン系香料化合物を組み合わせてもそれぞれ単独で蒸散させたときほどの効果が得られなかった。
よって、本発明の効果は、IPMPと特定香料化合物とを組み合わせたときの特有の効果であることがわかった。
【0065】
<試験例2>
(参考例12)
試験例1で用いた自己発熱装置を用い、仕切部材の内部にIPMPを1g収容して加熱蒸散剤を作製した。
【0066】
(参考例13)
参考例12と同様にして、試験例1で用いた自己発熱装置を用い、仕切部材の内部にアゾジカルボンアミドを1g収容して加熱蒸散剤を作製した。
【0067】
[試験方法]
1.縦30cm×横30cmの黒色紙の上に加熱蒸散剤を置き、22mLの水を入れた水容器に浸けることによりくん煙を開始し、直後に、直径20cm、高さ40cmの上方開口の有底円筒状チャンバーをその開口部が下向きになるようにして加熱蒸散剤を覆い、チャンバー内を密閉状態として30分間くん煙させた。
2.30分後、黒色紙の汚染具合について評価した。
【0068】
[評価方法]
黒色紙の状態を目視で確認し、以下の評価基準により点数評価した。
(1)汚染度合いの評価基準(5段階評価)
5点:表面状態に差がない
4点:表面状態にほとんど差が確認されない
3点:若干の付着があるが差がわかりにくい
2点:容易に付着が判別でき、差が明らかである
1点:使用感を損なう程の付着あり
【0069】
結果を
図4に示す。
図4に示したように、アゾジカルボンアミドを使用した参考例13では、黒色紙上に分解物由来の煤汚れが白くなって付着していた(評価点1点)。一方、IPMPを使用した参考例12では、黒色紙上にIPMPがわずかに付着していた(評価点2点)。
このことから、アゾジカルボンアミドを使用すると、加熱蒸散させたときにアゾジカルボンアミドの分解物が床面やシートなどの内装部材に付着することで汚染されることがわかった。また、IPMPにおいても、床面やシートなどの内装部材への付着が見られたが、アゾジカルボンアミドに比べて汚染度合いが少なく、また付着物は除菌成分であるため、付着部分の除菌効果が期待できる。