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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120929
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024078
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千尋
(72)【発明者】
【氏名】西原 財光
(72)【発明者】
【氏名】栗田 康一郎
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE04
4C601EE09
4C601EE11
4C601EE22
4C601HH13
4C601JB28
4C601JB53
4C601JB57
4C601JC04
4C601JC37
4C601KK18
4C601KK24
4C601KK25
(57)【要約】
【課題】リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示すること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、収集部と、生成部と、適用部と、表示制御部とを備える。収集部は、単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データを収集する。生成部は、第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する。適用部は、第1の時系列データ及び第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、第1の時系列データに基づく第1の速度スケール及び第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する。表示制御部は、速度スケールが適用された複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく第1の時系列データであって、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データを収集する収集部と、
前記第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する生成部と、
前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の時系列データに基づく第1の速度スケール、及び、前記第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する適用部と、
前記速度スケールが適用された前記複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記第1の時系列データに対してデータを補間する補間処理、及び、前記第1の時系列データに基づく時系列データからデータを間引く間引き処理のうち少なくとも1つの処理を行うことにより前記第2の時系列データを生成する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第1の時系列データは、被検体の前記複数の血流を含む部位に対して送信された超音波の反射波に基づく時系列データであり、
前記収集部は、前記単一の超音波条件として前記部位に対応するPRFで送信された超音波の反射波に基づく前記第1の時系列データを収集する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記単一の超音波条件として、前記部位に含まれる前記複数の血流の速度のうち、最も高い速度に対応する前記PRFを設定する設定部
を更に備える、請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部を更に備え、
前記適用部は、前記フィルタ処理後の前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される前記複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の速度スケール及び前記第2の速度スケールのうち、前記割合が前記閾値以下となる速度スケールを適用し、
前記フィルタ処理部は、前記フィルタ処理を行う際のアンサンブル数を前記部位に対応するアンサンブル数に設定する、
請求項3又は4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、互いに異なる速度スケールが適用された前記複数の血流に関する複数の血流情報を前記表示部に表示させる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記表示部に表示された複数の血流情報のうち、指定された血流情報が表示されるように、前記表示部の表示を更新する、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
コンピュータが、
単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく第1の時系列データであって、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する処理と、
前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の時系列データに基づく第1の速度スケール、及び、前記第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する処理と、
前記速度スケールが適用された前記複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる処理とを実行する表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置において、血流の速度を観察するための技術として、カラーフローマッピングがある。ここで、ユーザが複数の血流を観察する場合に、カラーフローマッピングが用いられる場合について説明する。複数の血流の中には、比較的速度が速い血流や、比較的速度が遅い血流が含まれる場合がある。すなわち、複数の血流の中に、様々な速度の血流が含まれる場合がある。このような場合に、複数の血流のうち、いずれか1つの血流が観察可能なように超音波条件(例えば、パルス繰り返し周波数(PRF(Pulse Repetition Frequency))等)が設定された場合、設定された超音波条件が他の血流にとって不適切な条件となることがある。このため、ユーザが複数の血流を同時に精度よく観察することは困難である。そこで、複数の血流に対して適切な超音波条件が設定されることが望まれるが、複数の血流に対して適切な超音波条件を設定することは、ユーザにとって煩雑であり、時間がかかってしまう。
【0003】
そこで、複数の異なる超音波条件(超音波送受条件)で取得された複数のエコー信号を用いて、所定の指標を用いてドプラ速度のSN比低下領域を判定する技術がある。判定結果は、ドプラ速度推定に用いられる超音波条件を変更するために用いられる。しかしながら、この技術では、複数の異なる超音波条件で複数の超音波を送信するため、超音波の送信回数が比較的多くなる。このため、リアルタイム性が低下する場合がある。
【0004】
このため、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-186923号公報
【特許文献2】特開平2-63447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波診断装置は、収集部と、生成部と、適用部と、表示制御部とを備える。収集部は、単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データを収集する。生成部は、第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する。適用部は、第1の時系列データ及び第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、第1の時系列データに基づく第1の速度スケール及び第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する。表示制御部は、速度スケールが適用された複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るドプラ処理回路の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態における速度の推定方法の一例について説明するための図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態における速度の推定方法の一例について説明するための図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態における速度の推定方法の一例について説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るステップS108でデータ補間機能が実行する処理の具体例について説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るステップS110で画像生成回路が実行する処理の具体例について説明するための図である。
図8図8は、他のカラーマップの一例を説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るディスプレイの表示例である。
図10図10は、第1の実施形態に係るディスプレイの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態及び変形例に係る超音波診断装置及び表示制御方法を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
【0011】
超音波プローブ101は、例えば、複数の素子(圧電振動子、圧電素子)を有する。これら複数の素子は、装置本体100が有する送受信回路110の送信回路111から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。具体的には、複数の素子は、送信回路111により電圧(送信駆動電圧)が印可されることにより送信駆動電圧に応じた波形の超音波を発生する。駆動信号が示す送信駆動電圧の波形が、複数の素子に印可される電圧の波形である。すなわち、超音波プローブ101は、印可された送信駆動電圧の大きさに応じた超音波を送信する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信し、受信された反射波を電気信号である受信信号(反射波信号)に変換し、受信信号を装置本体100に出力する。また、超音波プローブ101は、例えば、素子に設けられる整合層と、素子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波として超音波プローブ101が有する複数の素子にて受信される。受信される反射波の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の移動体の表面で反射された場合の反射波は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101は、受信信号を後述する送受信回路110の受信回路112に出力する。
【0013】
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、複数の素子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブの種類としては、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等が挙げられる。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の素子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の素子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の素子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
【0014】
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。
【0015】
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データに基づく超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。ディスプレイ103は、表示部の一例である。
【0016】
装置本体100は、超音波プローブ101から送信された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する。なお、超音波画像データは、画像データの一例である。装置本体100は、超音波プローブ101から送信された被検体Pの2次元領域に対応する受信信号に基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101から送信された被検体Pの3次元領域に対応する受信信号に基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。図1に示すように、装置本体100は、送受信回路110と、バッファメモリ120と、Bモード処理回路130と、ドプラ処理回路140と、画像生成回路150と、画像メモリ160と、記憶回路170と、処理回路180と、制御回路190とを有する。
【0017】
送受信回路110は、制御回路190による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させるとともに、超音波プローブ101に超音波の反射波を受信させる。すなわち、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して走査を実行する。なお、走査は、スキャン、超音波スキャン又は超音波走査とも称される。送受信回路110は、送受信部の一例である。送受信回路110は、送信回路111と受信回路112とを有する。送信回路111は送信部の一例であり、受信回路112は受信部の一例である。
【0018】
送信回路111は、制御回路190による制御を受けて、超音波プローブ101に駆動信号を供給することにより、超音波プローブ101に超音波を送信させる。送信回路111は、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有する。送信回路111は、被検体P内の2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路111は、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
【0019】
レートパルサ発生回路は、制御回路190による制御を受けて、所定のパルス繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な素子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を供給する。すなわち、送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号が示す波形の電圧(送信駆動電圧)を印可する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、素子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
【0020】
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の素子まで伝達された後に、素子において電気信号から機械的振動に変換される。すなわち、素子に電圧が印可されることによって、素子は機械的に振動する。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部(被検体Pの内部)に送信される。ここで、素子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
【0021】
なお、送信回路111は、制御回路190による制御を受けて、所定の走査シーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間に送信駆動電圧の値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0022】
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の素子まで到達した後、素子において、機械的振動から電気的信号(受信信号)に変換され、受信信号が受信回路112に入力される。受信回路112は、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101から送信された受信信号に対して各種処理を行なって反射波データ(受信データ)を生成する。そして、受信回路112は、生成した反射波データをバッファメモリ120に格納する。
【0023】
プリアンプは、受信信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された受信信号をA/D変換することでゲイン補正された受信信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、デジタル信号に変換された受信信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてバッファメモリ120に格納する。
【0024】
受信回路112は、超音波プローブ101から送信された2次元の受信信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路112は、超音波プローブ101から送信された3次元の受信信号から3次元の反射波データを生成する。
【0025】
本実施形態では、超音波診断装置1は、リアルタイムで各種の処理を行う。例えば、超音波プローブ101は、1フレーム分の反射波信号を次々に受信回路112に送信する。受信回路112は、超音波プローブ101から送信された1フレーム分の反射波信号を受信するたびに、1フレーム分の反射波信号から1フレーム分の反射波データを生成する。受信回路112は、1フレーム分の反射波データを生成するたびに、1フレーム分の反射波データをバッファメモリ120に格納する。
【0026】
バッファメモリ120は、送受信回路110により生成された反射波データを一時的に記憶するメモリである。例えば、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶することが可能なように構成されている。そして、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶している状態で、新たに1フレーム分の反射波データが受信回路112により生成された場合、受信回路112による制御を受けて、生成された時間が最も古い1フレーム分の反射波データを破棄し、新たに生成された1フレーム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。
【0027】
Bモード処理回路130は、バッファメモリ120から反射波データを読み出し、読み出された反射波データに対して各種の信号処理を施し、各種の信号処理が施された反射波データをBモードデータとして画像生成回路150に出力する。Bモード処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。Bモード処理回路130は、Bモード処理部の一例である。
【0028】
例えば、Bモード処理回路130は、バッファメモリ120に、新たに1フレーム分の反射波データが格納される度に、新たにバッファメモリ120に格納された1フレーム分の反射波データを読み出す。そして、Bモード処理回路130は、読み出された1フレーム分の反射波データに対して各種の信号処理を施すことにより、新たに1フレーム分のBモードデータを生成する。そして、Bモード処理回路130は、1フレーム分のBモードデータを生成する度に、新たに生成された1フレーム分のBモードデータを画像生成回路150に出力する。以下、Bモード処理回路130実行する各種の信号処理の一例を説明する。
【0029】
例えば、Bモード処理回路130は、バッファメモリ120から読み出した反射波データに対して、直交検波し、対数増幅及び包絡線検波処理等を施して、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。そして、Bモード処理回路130は、生成したBモードデータを画像生成回路150に出力する。
【0030】
ドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から反射波データを読み出し、読み出された反射波データに対して各種の信号処理を施し、各種の信号処理が施された反射波データをドプラデータとして画像生成回路150に出力する。ドプラ処理回路140は、例えば、プロセッサにより実現される。ドプラ処理回路140は、ドプラ処理部の一例である。
【0031】
例えば、ドプラ処理回路140は、バッファメモリ120に、新たに1フレーム分の反射波データが格納される度に、新たにバッファメモリ120に格納された1フレーム分の反射波データを読み出す。そして、ドプラ処理回路140は、読み出された1フレーム分の反射波データに対して各種の信号処理を施すことにより、新たに1フレーム分のドプラデータを生成する。そして、ドプラ処理回路140は、1フレーム分のドプラデータを生成する度に、新たに生成された1フレーム分のドプラデータを画像生成回路150に出力する。以下、ドプラ処理回路140が実行する各種の信号処理の一例を説明する。
【0032】
例えば、ドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から読み出した反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を反射波データから抽出し、抽出した運動情報を示すドプラデータを生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値及び平均パワー値等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。ドプラ処理回路140は、生成したドプラデータを画像生成回路150に出力する。
【0033】
上記のドプラ処理回路140の機能を用いて、超音波診断装置1は、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行可能である。カラーフローマッピング法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行なわれる。そして、カラーフローマッピング法では、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、同一位置のデータ列から、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号(血流信号)を抽出する。そして、カラーフローマッピング法では、この血流信号から血流の速度(平均速度)、血流の分散(平均分散値)、血流のパワー(平均パワー値)等の血流情報を推定する。ドプラ処理回路140は、カラーフローマッピング法により推定された血流情報を示すカラードプラデータを画像生成回路150に出力する。なお、カラードプラデータは、ドプラデータの一例である。
【0034】
ここで、ドプラ処理回路140の構成の一例について説明する。図2は、第1の実施形態に係るドプラ処理回路140の構成の一例を示す図である。図2に示すように、ドプラ処理回路140は、ウォールフィルタ機能140aと、自己相関値算出機能140bと、血流情報推定機能140cと、ブランキング処理機能140dと、パーシスタンス機能140eとを有する。ドプラ処理回路140の構成要素であるウォールフィルタ機能140a、自己相関値算出機能140b、血流情報推定機能140c、ブランキング処理機能140d及びパーシスタンス機能140eの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路170)に記録されている。ドプラ処理回路140は、各プログラムを記憶装置から読み出し、読み出された各プログラムを実行することで各プログラムに対応する各処理機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態のドプラ処理回路140は、図2のドプラ処理回路140内に示された各処理機能を有することとなる。
【0035】
ウォールフィルタ機能140aは、バッファメモリ120から、複数の反射波データを取得し、取得された複数の反射波データをウォールフィルタ(MTIフィルタ)にかけることにより、複数の反射波データから、クラッタ信号成分が抑制され血流信号成分が支配的な血流信号(血流ドプラ信号)を抽出する。ここで、ウォールフィルタ機能140aによる処理の対象となる複数の反射波データは、時間方向にアンサンブル数(アンサンブルサイズ、パケットサイズ)分並んだ反射波データ群(時系列データ、反射波データ列)であり、被検体Pに対する複数回の超音波の送受信により得られる。なお、ウォールフィルタ機能140aにより抽出される血流信号は、上述したように、血流信号成分が支配的であるものの、クラッタ信号成分が含まれてしまう場合がある。
【0036】
自己相関値算出機能140bは、ウォールフィルタ機能140aにより抽出された血流信号から、公知の技術を用いて、血流情報を推定される際に用いられる自己相関値(自己相関係数)を算出する。例えば、自己相関値算出機能140bは、特開2015-142608号公報に記載されている方法を用いて、自己相関値C0、C1を算出する。
【0037】
血流情報推定機能140cは、自己相関値算出機能140bにより算出された自己相関値を用いて、公知の技術を用いて血流情報を推定する。例えば、血流情報推定機能140cは、特開2015-142608号公報に記載されている方法を用いて、血流情報を推定する。血流情報は、血流の速度(平均速度)、パワー(平均パワー値)及び分散(平均分散値)等を含む。
【0038】
ブランキング処理機能140dは、血流情報推定機能140cにより推定された血流情報に対して、クラッタ信号成分を除去するためのブランキング処理を実行する。例えば、ブランキング処理により、クラッタ信号成分の速度の値が0に設定される。また、ブランキング処理機能140dは、ブランキング処理が施された血流情報に対して、空間方向のフィルタ処理である平滑化フィルタ処理を施す。
【0039】
パーシスタンス機能140eは、ブランキング処理機能140dによりブランキング処理及び平滑化フィルタ処理が施された血流情報に対して、時間方向に平滑化するフィルタ処理を施す。そして、フィルタ処理が施された血流情報を示すカラードプラデータを画像生成回路150に出力する。また、パーシスタンス機能140eは、フィルタ処理が施された血流情報を示すカラードプラデータをPRF算出機能180aにも出力する。
【0040】
図1の説明に戻り、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方の反射波データを処理可能である。
【0041】
画像生成回路150は、Bモード処理回路130から出力されたBモードデータ又はドプラ処理回路140から出力されたドプラデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路150は、プロセッサにより実現される。
【0042】
例えば、画像生成回路150は、Bモード処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140が生成した2次元のドプラデータ又はドプラカラーデータから運動情報又は血流情報が映像化された2次元ドプラ画像データ又は2次元カラー画像データを生成する。なお、運動情報が映像化された2次元ドプラ画像データ及び血流情報が映像化された2次元カラー画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0043】
ここで、画像生成回路150は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(走査コンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路150は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140から出力されたデータに対して、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路150は、走査コンバート以外に種々の画像処理として、例えば、走査コンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なってもよい。また、画像生成回路150は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成してもよい。
【0044】
更に、画像生成回路150は、Bモード処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、画像生成回路150は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行なう。
【0045】
画像生成回路150が行なうレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を用いてボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路150が行なうレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。画像生成回路150は、画像生成部の一例である。
【0046】
Bモードデータ及びドプラデータは、走査コンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路150が生成するデータは、走査コンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0047】
画像メモリ160は、画像生成回路150により生成された各種の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ160は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140により生成されたデータも記憶する。画像メモリ160が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路150を経由して表示用の超音波画像データとなる。例えば、画像メモリ160は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0048】
記憶回路170は、走査(超音波の送受信)、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路170は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶するデータの保管等にも使用される。例えば、記憶回路170は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0049】
処理回路180は、各種の処理を実行する。処理回路180は、図1に示すように、PRF算出機能180aと、データ補間機能180bと、スケール調整機能180cと、表示モード選択機能180dとを有する。処理回路180の構成要素であるPRF算出機能180a、データ補間機能180b、スケール調整機能180c及び表示モード選択機能180dの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路170)に記録されている。処理回路180は、各プログラムを記憶装置から読み出し、読み出された各プログラムを実行することで各プログラムに対応する各処理機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路180は、図1の処理回路180内に示された各処理機能を有することとなる。PRF算出機能180a、データ補間機能180b、スケール調整機能180c及び表示モード選択機能180dが実行する処理については後述する。
【0050】
制御回路190は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、制御回路190は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路170から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信回路111、受信回路112、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140、画像生成回路150及び処理回路180の処理を制御する。また、制御回路190は、画像メモリ160に記憶された表示用の超音波画像データに基づく超音波画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。例えば、制御回路190は、Bモード画像データに基づくBモード画像又はカラー画像データに基づくカラー画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。また、制御回路190は、Bモード画像にカラー画像を重畳させて表示するようにディスプレイ103を制御する。制御回路190は、表示制御部又は制御部の一例である。制御回路190は、例えば、プロセッサにより実現される。超音波画像は、画像の一例である。
【0051】
また、制御回路190は、送受信回路110を介して超音波プローブ101を制御することで、超音波走査の制御を行なう。
【0052】
なお、説明において用いられる「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路170に保存されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することで機能を実現する。なお、記憶回路170にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の回路(例えば、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140、画像生成回路150、処理回路180及び制御回路190)を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。すなわち、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140、画像生成回路150、処理回路180及び制御回路190は、プロセッサにより実現される1つの処理回路に統合されてもよい。
【0053】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。超音波診断装置1は、上述した構成のもと、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することができるように、以下に説明する処理を実行する。
【0054】
図3は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示すように、PRF算出機能180aは、1心拍分の血流情報を取得する(ステップS101)。例えば、PRF算出機能180aは、ドプラ処理回路140のパーシスタンス機能140eから出力された1心拍分の血流情報を示す1心拍分のカラードプラデータを取得する。かかる血流情報は、超音波診断装置1により観察対象である被検体Pに対するスキャン時に設定されたROI(Region Of Interest:関心領域)内の血流情報である。ROI内には、ユーザが観察したい複数の血流が含まれる。また、ROIの全領域のうち、パワー値が所定値以下の領域には、速度の値として「0」が設定されている。これは、血流の速度のみを表示させるためである。
【0055】
ここで、ステップS101で取得されたカラードプラデータには、モザイクパターンが含まれている。モザイクパターンとは、例えば、ある領域内で、超音波プローブ101に向かう方向に進む血流を示す赤系色の画素(画像)と、超音波プローブ101から離れる方向に進む血流を示す青系色の画素(画像)とが混在しているパターンである。
【0056】
そして、PRF算出機能180aは、取得されたカラードプラデータに含まれる複数の血流の領域のうち、最も速度が速い血流の領域のモザイクパターンの比率を算出する(ステップS102)。
【0057】
ステップS102でPRF算出機能180aが実行する処理の具体例について説明する。例えば、PRF算出機能180aは、公知の領域抽出(セグメンテーション)の技術を用いて、カラードプラデータから、ROI内の複数の血流の領域を抽出する。そして、PRF算出機能180aは、複数の血流の領域の中から、最も速度が速い血流の領域を特定する。そして、PRF算出機能180aは、特定された最も速度が速い血流の領域を構成する複数の画素の中から、赤系色の画素及び青系色の画素を特定する。そして、PRF算出機能180aは、赤系色の画素の数に対する青系色の画素の数の割合、または、青系色の画素の数に対する赤系色の画素の数の割合を、最も速度が速い血流のモザイクパターンの比率として算出する。すなわち、PRF算出機能180aは、超音波プローブ101に向かう方向に進む血流に対する超音波プローブ101から離れる方向に進む血流の割合、又は、超音波プローブ101から離れる方向に進む血流に対する超音波プローブ101に向かう方向に進む血流の割合を、モザイクパターンの比率として算出する。超音波プローブ101に向かう方向を第1の進行方向とすると、超音波プローブ101から離れる方向は第2の進行方向となる。また、超音波プローブ101から離れる方向を第1の進行方向とすると、超音波プローブ101に向かう方向は第2の進行方向となる。
【0058】
そして、PRF算出機能180aは、折り返しが発生しないか、または、折り返しが抑えられた状態における最高流速を推定可能(検出可能)なPRFを算出する(ステップS103)。ここで、折り返しが発生しないということは、モザイクパターンが発生しないということである。また、折り返しが抑えられるということは、モザイクパターンが発生する領域の大きさが抑えられるということである。
【0059】
ステップS103でPRF算出機能180aが実行する処理の具体例について説明する。例えば、記憶回路170には、上述した最高流速を推定可能なPRFを算出するためのPRF算出用テーブルが記憶されている。PRF算出用テーブルには、部位と、モザイクパターンの比率と、その部位及びそのモザイクパターンに対応する上述した最高流速を推定可能なPRFとが対応付けられて、被検体ごとに登録されている。すなわち、PRF算出用テーブルには、被検体毎に、部位とモザイクパターンの比率とPRFとの組が登録された複数のレコードが登録されている。
【0060】
そして、PRF算出機能180aは、ROI内に含まれる部位を特定する。例えば、PRF算出機能180aは、ステップS101で取得されたカラードプラデータを生成する際にスキャンされた部位を、ROI内に含まれる部位として特定する。
【0061】
そして、PRF算出機能180aは、PRF算出用テーブルを参照し、特定された部位、及び、ステップS102で算出されたモザイクパターンの比率が登録されたレコードを、観察対象である被検体Pに対応する複数のレコードの中から特定する。そして、PRF算出機能180aは、特定されたレコードに登録されているPRFを、上述した最高流速を推定可能なPRFとして取得する。このようにして、PRF算出機能180aは、最高流速を推定可能なPRFを算出する。
【0062】
なお、PRF算出機能180aは、PRFを変更し、ステップS101において変更後のPRFに基づく1心拍分の血流情報を取得し、ステップS102及びステップS103の処理を実行することを、ステップS102で算出されるモザイクパターンの比率が0となるか又は0より大きい所定値以下となるまで繰り返し行ってもよい。そして、PRF算出機能180aは、ステップS102で算出されるモザイクパターンの比率が0となるか又は0より大きい所定値以下となる場合のPRFを、上述した最高流速を推定可能なPRFとして算出してもよい。
【0063】
そして、制御回路190は、ステップS105以降の処理(ステップS105~S110の処理)であるスケール調整処理を実行するためのボタンがユーザにより押下されたか否かを判定する(ステップS104)。かかるボタンは、入力装置102に含まれている。ボタンが押されていない場合(ステップS104:No)には、制御回路190は、再び、ステップS104で上述した判定を行う。一方、ボタンが押された場合(ステップS104:Yes)、制御回路190は、ステップS105に進む。なお、制御回路190は、ステップS104の判定処理を行わずに、ステップS103からステップS105へ進んでもよい。
【0064】
ステップS105では、制御回路190は、ステップS103で算出されたPRFを超音波プローブ101に設定する。このように、制御回路190は、単一の超音波条件として、観察対象である被検体Pの部位に含まれる複数の血流の速度のうち、最も速い速度(最も高い速度)に対応するPRFを設定する。制御回路190は、設定部の一例でもある。すなわち、制御回路190は、ステップS103で算出されたPRFで超音波を送信することを開始するように、送信回路111を介して、超音波プローブ101を制御する。具体的には、制御回路190は、送信回路111に、ステップS103で算出されたPRFで超音波の送信を開始させるための指示を送信する。かかる指示を受信した送信回路111は、ステップS103で算出されたPRFで超音波を送信することを開始するように超音波プローブ101を制御する。
【0065】
そして、データ補間機能180bは、設定されているアンサンブル数(アンサンブルサイズ、パケットサイズ)が、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数(標準的に使用されるアンサンブル数)よりも小さいか否かを判定する(ステップS106)。例えば、心臓に対して標準的に使用されるアンサンブル数は8であり、腹部に対して標準的に使用されるアンサンブル数は16である。
【0066】
例えば、フレームレートを高くするために、アンサンブル数が、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数よりも低く設定される場合がある。このような場合、ステップS107以降の処理で得られる血流情報の精度が低くなってしまう場合がある。そこで、設定されているアンサンブル数が、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数よりも小さい場合(ステップS106:Yes)、データ補間機能180bは、設定されるアンサンブル数が、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数となるように、アンサンブル数を大きくする(ステップS107)。具体的には、データ補間機能180bは、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数をウォールフィルタ機能140aに設定させる。これにより、ウォールフィルタ機能140aは、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数を設定する。一方、設定されているアンサンブル数が、ROI内に含まれる部位に対して通常使用されるアンサンブル数以上である場合(ステップS106:No)、データ補間機能180bは、ステップS108に進む。なお、データ補間機能180bは、ステップS106及びステップS107の処理を行わずに、ステップS105からステップS108に進んでもよい。
【0067】
そして、データ補間機能180bは、データ間隔が異なる複数の時系列データを取得する(ステップS108)。ステップS108でデータ補間機能180bが実行する処理の具体例について説明するが、かかる説明の前に、本実施形態における速度の推定方法の一例について説明する。図4図5A及び図5Bは、本実施形態における速度の推定方法の一例について説明するための図である。
【0068】
図4において、横軸が実軸であり、縦軸が虚軸である。例えば、アンサンブル数が3である場合、図4に示すように、3つのベクトル11~13のそれぞれと、実軸との成す角度θ1、θ2及びθ3の平均値が速度成分として推定される。すなわち、カラーフローマッピングにおいて、3つのベクトル11~13の和であるベクトル14と実軸との成す角度θvが速度として推定される。
【0069】
ここで、図5Aにおいて、左側に示すように対象物15の位置が角度θ1だけ移動する場合を基準とすると、右側に示すように、同じ時間観測しても対象物15がほとんど動いていないと血流の速度として比較的遅い速度が推定される。
【0070】
また、図5Bにおいて、左側に示すように対象物15の位置が角度θ1だけ移動する場合を基準とすると、右側に示すように、同じ時間観測しても対象物15が大きく動いていれば、血流の速度として比較的速い速度が推定される。
【0071】
次に、ステップS108でデータ補間機能180bが実行する処理の具体例について説明する。図6は、第1の実施形態に係るステップS108でデータ補間機能180bが実行する処理の具体例について説明するための図である。図6に示すように、データ補間機能180bは、ステップS103で算出されたPRFで送信された超音波の反射波に基づいて得られる複数の反射波データ20により構成される反射波データ群21をバッファメモリ120から取得する。なお、反射波データ群21に含まれる反射波データ20を、他の反射波データ群に含まれる反射波データと区別するために、「反射波データ21a」と表記する。
【0072】
反射波データ群21は、時系列順に並ぶ複数の反射波データ21aにより構成される時系列データである。時間軸方向に隣接する2つの反射波データ21aの時間間隔を「T」とする。反射波データ群21は、基準となる時系列データである。反射波データ群21は、単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく第1の時系列データであって、第1の時間間隔「T」で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データの一例である。また、反射波データ群21は、観察対象である被検体Pの複数の血流を含む部位に対して送信された超音波の反射波に基づく時系列データである。超音波プローブ101及び送受信回路110が、このような反射波データ群21を収集する。超音波プローブ101及び送受信回路110は、収集部の一例である。
【0073】
そして、データ補間機能180bは、基準となる反射波データ群21に対して反射波データ20を挿入して、反射波データ群22を生成する。例えば、データ補間機能180bは、パルスウェーブドプラ(Pulse Wave Doppler)信号を用いて、時間軸方向において隣接する2つの反射波データ21aの間における反射波データ20を推定する。具体的には、例えば、記憶回路170には、被検体PのステップS103において特定された部位をスキャンすることにより過去に収集されたパルスウェーブドプラ信号が示す波形の変化と、このパルスウェーブドプラ信号に基づいて得られたカラードプラデータ(カラー信号)との関係を示す関係情報が記憶回路170に記憶されている。この場合、データ補間機能180bは、記憶回路170に記憶された関係情報を参照し、関係情報が示す関係から、時間軸方向において隣接する2つの反射波データ21aの間における反射波データ20を推定する。なお、データ補間機能180bは、他の方法により、時間軸方向において隣接する2つの反射波データ21aの間における反射波データ20を推定してもよい。例えば、データ補間機能180bは、時間軸方向において隣接する2つの反射波データ21aの平均を反射波データ20として推定してもよい。また、データ補間機能180bは、2つの反射波データ21aのそれぞれに対応する血流の加速度に応じて、2つの反射波データ21aを重み付け加算する場合に用いられる2つの重みを決定し、決定された2つの重みを用いて2つの反射波データ21aを重み付け加算することにより、2つの反射波データ21aの間における反射波データ20を推定してもよい。なお、2つの反射波データ21aのそれぞれに対応する血流の加速度は、2つの反射波データ21aのそれぞれから得られるカラードプラデータにより示される血流の速度から計算される。例えば、データ補間機能180bは、2つの反射波データ21aに対応する2つの血流の加速度が同じ値である場合、2つの重みを同じにする。また、データ補間機能180bは、2つの血流の加速度が異なる値である場合、小さい方の加速度に対応する重みを、大きい方の加速度に対応する重みよりも大きくする。
【0074】
そして、データ補間機能180bは、推定された反射波データ20を時間軸方向において隣接する2つの反射波データ21aの間に挿入することにより、反射波データ群22を生成する。反射波データ群22は、時系列データである。なお、反射波データ群22に含まれる反射波データ20を、他の反射波データ群に含まれる反射波データと区別するために、「反射波データ22a」と表記する。時間軸方向に隣接する2つの反射波データ22aの時間間隔は「T/2」である。
【0075】
また、データ補間機能180bは、反射波データ群22から反射波データ22aを間引きして、反射波データ群23を生成する。反射波データ群23は、時系列データである。なお、反射波データ群23に含まれる反射波データ20を、他の反射波データ群に含まれる反射波データと区別するために、「反射波データ23a」と表記する。時間軸方向に隣接する2つの反射波データ23aの時間間隔は「(3T)/2」である。
【0076】
同様に、データ補間機能180bは、反射波データ群22から反射波データ22aを間引きして、反射波データ群24,25も生成する。反射波データ群24,25は、時系列データである。なお、反射波データ群24に含まれる反射波データ20を、他の反射波データ群に含まれる反射波データと区別するために、「反射波データ24a」と表記する。時間軸方向に隣接する2つの反射波データ24aの時間間隔は「2T」である。また、反射波データ群25に含まれる反射波データ20を、他の反射波データ群に含まれる反射波データと区別するために、「反射波データ25a」と表記する。時間軸方向に隣接する2つの反射波データ25aの時間間隔は「3T」である。
【0077】
このようにして、ステップS108において、データ補間機能180bは、データ間隔が異なる複数の時系列データ21~25を取得する。また、データ補間機能180bは、時系列データ21に基づいて、時系列データ22~25を生成する。具体的には、データ補間機能180bは、時系列データ21に対してデータを補間する補間処理、及び、時系列データ22からデータを間引く間引き処理のうち少なくとも1つの処理を行うことにより時系列データ22~25を生成する。時系列データ22~25のそれぞれは、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データの一例である。データ補間機能180bは、生成部の一例である。なお、データ補間機能180bは、時系列データ21からデータを間引く間引き処理を行うことによりステップS109以降のステップにおける処理で用いられる時系列データを生成してもよい。すなわち、データ補間機能180bは、時系列データ21に基づく時系列データからデータを間引く間引き処理を行うことによりステップS109以降のステップにおける処理で用いられる時系列データを生成してもよい。このようにして生成される時系列データも、第2の時系列データの一例である。
【0078】
時間軸方向において隣接する2つの反射波データの時間間隔が長くなるほど、より遅い血流速度を精度よく推定することができる。また、時間軸方向において隣接する2つの反射波データの時間間隔が短くなるほど、より速い血流速度を精度よく推定することができる。
【0079】
また、図6に示すように、ドプラ処理回路140が反射波データ群21を用いて速度の推定を行う場合の速度スケール(速度レンジ)31の上限値を「基準速度」とする。この場合、ドプラ処理回路140が反射波データ群22を用いて速度の推定を行う場合の速度スケール32の上限値は、「基準速度」の2倍となる。なお、速度スケールは、例えば、折り返しが発生しない状態において推定可能な速度の範囲である。
【0080】
また、ドプラ処理回路140が反射波データ群23を用いて速度の推定を行う場合の速度スケール33の上限値は、「基準速度」の(2/3)倍となる。また、ドプラ処理回路140が反射波データ群24を用いて速度の推定を行う場合の速度スケール34の上限値は、「基準速度」の(1/2)倍となる。また、ドプラ処理回路140が反射波データ群25を用いて速度の推定を行う場合の速度スケール35の上限値は、「基準速度」の(1/3)倍となる。
【0081】
そして、スケール調整機能180cは、複数の時系列データ21~25を用いて、各血流の領域のモザイクパターンの比率を算出する(ステップS109)。ステップS109でスケール調整機能180cが実行する処理の具体例について説明する。
【0082】
例えば、スケール調整機能180cは、時系列データ21をウォールフィルタ機能140aに送信する。すると、ウォールフィルタ機能140aは、時系列データ21から血流信号を抽出する。すなわち、ウォールフィルタ機能140aは、時系列データ21に対してフィルタ処理を行う。ウォールフィルタ機能140aは、フィルタ処理部の一例である。そして、自己相関値算出機能140bは、血流信号から自己相関値を算出する。そして、血流情報推定機能140cは、自己相関値を用いて血流情報を推定する。そして、スケール調整機能180cは、推定された血流情報を示すカラードプラデータを取得する。このようにして、スケール調整機能180cは、時系列データ21に基づく血流情報を示すカラードプラデータを取得する。
【0083】
スケール調整機能180cは、時系列データ22~25のそれぞれに対しても同様の処理を行う。すなわち、スケール調整機能180cは、時系列データ22に基づく血流情報を示すカラードプラデータ、時系列データ23に基づく血流情報を示すカラードプラデータ、時系列データ24に基づく血流情報を示すカラードプラデータ、及び、時系列データ25に基づく血流情報を示すカラードプラデータを取得する。
【0084】
そして、スケール調整機能180cは、ステップS102においてPRF算出機能180aが複数の血流の領域を抽出する方法と同様の方法で、時系列データ21に基づく血流情報を示すカラードプラデータから複数の血流の領域を抽出する。そして、スケール調整機能180cは、ステップS102においてPRF算出機能180aが特定された領域におけるモザイクパターンの比率を算出する方法と同様の方法で、複数の血流の領域のそれぞれにおけるモザイクパターンの比率を算出する。
【0085】
スケール調整機能180cは、時系列データ22~25のそれぞれに基づく血流情報を示すカラードプラデータに対しても同様の処理を行う。すなわち、スケール調整機能180cは、時系列データ22に基づく血流情報を示すカラードプラデータから複数の血流の領域を抽出し、抽出された複数の血流の領域のそれぞれにおけるモザイクパターンの比率を算出する。また、スケール調整機能180cは、時系列データ23に基づく血流情報を示すカラードプラデータから複数の血流の領域を抽出し、抽出された複数の血流の領域のそれぞれにおけるモザイクパターンの比率を算出する。また、スケール調整機能180cは、時系列データ24に基づく血流情報を示すカラードプラデータから複数の血流の領域を抽出し、抽出された複数の血流の領域のそれぞれにおけるモザイクパターンの比率を算出する。また、スケール調整機能180cは、時系列データ25に基づく血流情報を示すカラードプラデータから複数の血流の領域を抽出し、抽出された複数の血流の領域のそれぞれにおけるモザイクパターンの比率を算出する。
【0086】
以下、時系列データ21~25のそれぞれに基づく血流情報を示すカラードプラデータから3つの血流の領域A~Cが抽出される場合について説明する。すなわち、時系列データ21に基づく血流情報を示すカラードプラデータから抽出される領域Aと、時系列データ22に基づく血流情報を示すカラードプラデータから抽出される領域Aと、時系列データ23に基づく血流情報を示すカラードプラデータから抽出される領域Aと、時系列データ24に基づく血流情報を示すカラードプラデータから抽出される領域Aと、時系列データ25に基づく血流情報を示すカラードプラデータから抽出される領域Aとは、同一の領域となる。領域B及び領域Cについても同様である。
【0087】
そして、スケール調整機能180cは、領域毎に、モザイクパターンの比率が閾値X以下となる速度スケールのうち、速度の上限値が最も低い速度スケールを適用し、画像生成回路150は、各領域に対応するカラーマップを適用し、制御回路190は、適用された結果をディスプレイ103に表示させる(ステップS110)。ステップS110でスケール調整機能180c、画像生成回路150及び制御回路190が実行する処理の具体例について説明する。
【0088】
例えば、領域Aについて、複数の速度スケール31~35のうち、速度スケール31~33がモザイクパターンの比率が閾値X以下となる場合について説明する。この場合、スケール調整機能180cは、領域Aについて、モザイクパターンの比率が閾値X以下となる速度スケール31~33のうち、速度の上限値が最も低い速度スケール33を適用する。すなわち、スケール調整機能180cは、領域Aに対して速度スケール33に対応する時系列データ23を適用する。これにより、閾値Xが「0」である場合、領域Aにおいて折り返しが発生せず、かつ、より細かい粒度で速度を推定することができる。また、閾値Xが「0」より大きい場合、発生する折り返しが閾値Xに対応する分に抑えられ、かつ、より細かい粒度で速度を推定することができる。
【0089】
また、例えば、領域Bについて、複数の速度スケール31~35のうち、速度スケール32のみがモザイクパターンの比率が閾値X以下となる場合について説明する。この場合、スケール調整機能180cは、領域Bについて、モザイクパターンの比率が閾値X以下となる速度スケール32を適用する。すなわち、スケール調整機能180cは、領域Bに対して速度スケール32に対応する時系列データ22を適用する。これにより、閾値Xが「0」である場合、領域Bにおいて折り返しが発生せず、かつ、より高い速度を推定することができる。また、閾値Xが「0」より大きい場合、発生する折り返しが閾値Xに対応する分に抑えられ、かつ、より高い速度を推定することができる。
【0090】
このような、血流の領域毎に折り返しが発生しない速度スケール(時系列データ)を適用する技術は、カラーフローマッピング以外の血流の速度を観察するための技術にも適用することができる。
【0091】
そして、スケール調整機能180cは、折り返しが発生しない速度スケールが血流の領域毎に適用されたカラードプラデータをブランキング処理機能140dに出力する。
【0092】
スケール調整機能180cは、時系列データ21~25の全てに描出される複数の血流のそれぞれに対して、複数の時系列データ21~25に基づく複数の速度スケールのうち、モザイクパターンの比率が閾値以下となる速度スケールを適用する。なお、時系列データ21に基づく速度スケールは、第1の速度スケールの一例である。また、時系列データ22~25のそれぞれに基づく速度スケールは、第2の速度スケールの一例である。スケール調整機能180cは、適用部の一例である。
【0093】
ブランキング処理機能140dは、カラードプラデータに対して、クラッタ信号成分を除去するためのブランキング処理を実行する。また、ブランキング処理機能140dは、ブランキング処理が施されたカラードプラデータに対して、空間方向のフィルタ処理である平滑化フィルタ処理を施す。
【0094】
パーシスタンス機能140eは、ブランキング処理機能140dによりブランキング処理及び平滑化フィルタ処理が施されたカラードプラデータに対して、時間方向に平滑化するフィルタ処理を施す。そして、フィルタ処理が施されたカラードプラデータを画像生成回路150に出力する。
【0095】
図7は、第1の実施形態に係るステップS110で画像生成回路150が実行する処理の具体例について説明するための図である。図7の左側には、カラーマップ40が示されている。ただし、図7に示す例では、カラーマップ40は、赤系色に対応するカラーマップであり、青系色に対応するカラーマップの図示が省略されている。実際は、青系色に対応するカラーマップは、横軸を軸として赤系色に対応するカラーマップ40と線対称となるように存在する。本実施形態では、制御回路190が、図7に示すカラーマップ40をディスプレイ103に表示させる。
【0096】
例えば、カラーマップ40は、血流の速度と、速度スケール31~35の各速度スケールに対応する色と、表示されるカラー画像データの画素値(階調)との対応関係を示すマップである。
【0097】
例えば、カラーマップ40において規定されている血流の速度の範囲は、「0」から基準速度の2倍の速度までの範囲である。また、カラーマップ40では、速度スケール31~35に互いに異なる色が割り当てられている。例えば、速度スケール31に黄色が割り当てられ、速度スケール32に青色が割り当てられ、速度スケール33に緑色が割り当てられ、速度スケール34に橙色が割り当てられ、速度スケール35に紫色が割り当てられている。
【0098】
例えば、画像生成回路150は、カラーマップ40に基づいて、血流の速度に対応する色及び画素値をカラー画像データの画素毎に取得する。そして、画像生成回路150は、取得した色及び画素値をカラー画像データの画素に割り当てることによりカラー画像データを生成する。そして、制御回路190は、カラー画像データに基づくカラー画像と、Bモード画像とを重畳させた重畳画像をディスプレイ103に表示させる。すなわち、制御回路190は、速度スケールが適用された複数の血流に関する血流情報をディスプレイ103に表示させる。
【0099】
なお、画像生成回路150は、カラーマップ40ではなく、図7の右側に示す速度スケール31~35に基づいて、カラー画像データを生成してもよい。この場合、制御回路190が、図7の右側に示す速度スケール31~35をディスプレイ103に表示させる。ただし、図7の右側に示す速度スケール31~35は、赤系色に対応する速度スケールであり、青系色に対応する速度スケールの図示が省略されている。実際は、青系色に対応する速度スケールは、横軸を軸として赤系色に対応する速度スケール31~35と線対称となるように存在する。
【0100】
例えば、図7の右側に示す速度スケール31~35には、カラーマップ40における速度スケール31~35と同様に、互いに異なる色が割り当てられている。なお、図7の右側に示す速度スケール31~35のそれぞれの上限値は、上述した値と同一の値である。
【0101】
そして、図7の右側に示す速度スケール31~35には、血流の速度と画素値との対応関係がより細かい粒度で規定されている。画像生成回路150は、このような速度スケール31~35に基づいて、カラー画像データを生成してもよい。すなわち、画像生成回路150は、このような速度スケール31~35を1つのカラーマップとしてみなし、このような1つのカラーマップに基づいて、カラー画像データを生成してもよい。例えば、画像生成回路150は、血流の領域毎に、複数の速度スケール31~35の中からスケール調整機能180cにより適用された速度スケールを用いてカラー画像データを生成する。より具体的には、画像生成回路150は、カラー画像データの画素毎に、適用された速度スケールに基づいて、血流の速度に対応する画素値を取得する。そして、画像生成回路150は、取得した画素値及び適用された速度スケールに対応する色をカラー画像データの画素に割り当てることによりカラー画像データを生成する。
【0102】
第1の実施形態では、複数の超音波条件に基づく超音波送信により得られた複数の時系列データではなく、1つの超音波条件に基づく超音波の送信により得られた1つの時系列データ25から、複数の速度スケール31~35が得られる。そして、第1の実施形態では、血流の領域毎に、複数の速度スケール31~35の中から適切な速度スケールが適用される。これにより、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することができる。
【0103】
なお、画像生成回路150は、他のカラーマップを用いてもよい。図8は、他のカラーマップの一例を説明するための図である。例えば、図8に示すように、画像生成回路150は、速度が閾値αよりも低い血流に対しては、低速用のカラーマップに基づいて、血流の速度に対応する色をカラー画像データの画素毎に取得する。また、画像生成回路150は、速度が閾値αよりも高い閾値βよりも高い血流に対しては、高速用のカラーマップに基づいて、血流の速度に対応する色をカラー画像データの画素毎に取得する。そして、画像生成回路150は、取得した色をカラー画像データの画素に割り当てることによりカラー画像データを生成する。そして、制御回路190は、カラー画像データに基づくカラー画像と、Bモード画像とを重畳させた重畳画像をディスプレイ103に表示させる。
【0104】
この場合、画像生成回路150は、速度が閾値αよりも低い血流を含むカラー画像データと、速度が閾値βよりも高い血流を含むカラー画像データとを別々に生成してもよい。この場合、制御回路190は、2つのカラー画像データに基づく2つのカラー画像を別々にディスプレイ103に表示させる。
【0105】
なお、超音波診断装置1は、速度が閾値αよりも低い血流の領域に対して、反射波データ群22から反射波データ22aを極端に間引くことで得られた時系列データを適用してもよい。そして、超音波診断装置1は、クラッタ信号を検出し、検出されたクラッタ信号を用いてクラッタ評価を行ってもよい。
【0106】
次に、表示モード選択機能180dが実行する処理の一例について説明する。図9及び図10は、第1の実施形態に係るディスプレイ103の表示例である。表示モード選択機能180dは、血流の領域に適用される速度スケールが異なる複数の重畳画像を表示させるための指示を入力装置102を介してユーザにより受け付ける。そして、表示モード選択機能180dは、受け付けた指示に基づいて、血流の領域に適用される速度スケールが異なる複数の重畳画像を表示させるモードを設定する。
【0107】
図9は、表示モード選択機能180dが、血流の領域に適用される速度スケールが異なる2つの重畳画像を表示させるための指示を、入力装置102を介してユーザから受け付けた場合の表示例を示す。この場合、表示モード選択機能180dは、血流の領域に適用される速度スケールが異なる2つの重畳画像を表示させるモードを設定する。
【0108】
制御回路190は、設定されたモードにしたがって、図9に示すように、2つの重畳画像50及び重畳画像55を横に並べてディスプレイ103に表示させる。重畳画像50は、Bモード画像51にカラー画像52が重畳された画像である。カラー画像52は、処理回路180による図3に示す処理は関与せずに、ドプラ処理回路140及び画像生成回路150による処理によって生成されたカラー画像データに基づくカラー画像である。
【0109】
カラー画像52に含まれる血流52aには折り返し52bが発生しており、血流52c及び血流52dは、暗く表示されており不明瞭な表示となっている。
【0110】
重畳画像55は、Bモード画像56にカラー画像57が重畳された画像である。カラー画像57は、処理回路180による図3に示す処理によって生成されたカラー画像データに基づくカラー画像である。
【0111】
カラー画像57に含まれる血流57aには折り返し57bが発生している。これは、図3に示すステップS110においてモザイクパターンの比率と比較される閾値Xが0より大きい値であるからである。
【0112】
また、血流57c及び血流57dは、明るく表示されており明瞭な表示となっている。ここで、カラー画像52を生成する際に用いられるカラーマップは、速度スケール31に対応するカラーマップである。一方、カラー画像57を生成する際に用いられるカラーマップは、速度スケール31の2倍の速度スケール32に対応するカラーマップである。このように、カラー画像52とカラー画像57では、カラーマップが異なる。すなわち、カラー画像52では、血流52c及び血流52dの速度が低いにも関わらず、上限値が「基準速度」という比較的高流速の血流を推定可能な速度スケール31及び速度スケール31に対応するカラーマップが用いられているため、血流52c及び血流52dは、暗く不明瞭に表示されてしまう。一方、カラー画像57では、血流57c及び血流57dにおいて折り返しが発生しない程度の適切な速度スケール32及び速度スケール32に対応するカラーマップが用いられているため、血流52c及び血流52dは、明るく明瞭に表示される。
【0113】
図10は、表示モード選択機能180dが、血流の領域に適用される速度スケールが異なる3つの重畳画像と、3つの重畳画像のうち折り返しが発生していない1つの重畳画像の赤系色と青系色とを入れ替えた1つの重畳画像を表示させるための指示を、入力装置102を介してユーザから受け付けた場合の表示例を示す。この場合、表示モード選択機能180dは、4つの重畳画像を表示させるモードを設定する。
【0114】
制御回路190は、設定されたモードにしたがって、図10に示すように、4つの重畳画像50、重畳画像55、重畳画像60及び重畳画像65が、縦×横が2×2になるように並べてディスプレイ103に表示させる。このように、制御回路190は、互いに異なる速度スケールが適用された複数の血流に関する複数の血流情報をディスプレイ103に表示させる。重畳画像60は、Bモード画像61にカラー画像62が重畳された画像である。カラー画像62は、処理回路180による図3に示す処理によって生成されたカラー画像データに基づくカラー画像である。
【0115】
カラー画像62に含まれる血流62a、血流62b及び血流62cには折り返しが発生していない。これは、閾値Xが0であるからである。
【0116】
重畳画像65は、Bモード画像66にカラー画像67が重畳された画像である。カラー画像67は、カラー画像62の赤系色と青系色とが入れ替えられた画像である。すなわち、血流67aと血流62aとは同一の血流であるが、血流62aが青系色であるのに対して血流67aが赤系色となっている。また、血流67bと血流62bとは同一の血流であるが、血流62bが赤系色であるのに対して血流67bが青系色となっている。また、血流67cと血流62cとは同一の血流であるが、血流62cが赤系色であるのに対して血流67cが青系色となっている。
【0117】
ここで、ユーザは、4つの重畳画像50,55,60,65の中からディスプレイ103に表示される画像を絞りこむことができる。例えば、入力装置102がタッチパネルである場合について説明する。この場合、ユーザの手70が、表示される重畳画像上のタッチパネルをタッチすることにより、タッチされたタッチパネルの部分に対応する重畳画像が表示される画像として絞り込まれる。図10の例は、重畳画像50及び重畳画像60が表示される画像として絞り込まれた場合を示す。この場合、制御回路190は、図10の右上側に示すように、重畳画像50及び重畳画像60を横に並べてディスプレイ103に表示させてもよいし、図10の右下側に示すように、重畳画像50及び重畳画像60を縦に並べてディスプレイ103に表示させてもよい。このように、制御回路190は、ディスプレイ103に表示された複数の血流情報のうち、指定された血流情報が表示されるように、ディスプレイ103の表示を更新する。
【0118】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することができる。
【0119】
なお、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0120】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、リアルタイム性の低下を抑制しつつ、簡易な方法で血流毎に折り返しが抑えられた血流情報を提示することができる。
【0121】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0122】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく第1の時系列データであって、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データを収集する収集部と、
前記第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する生成部と、
前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の時系列データに基づく第1の速度スケール、及び、前記第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する適用部と、
前記速度スケールが適用された前記複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、超音波診断装置。
(付記2)
前記生成部は、前記第1の時系列データに対してデータを補間する補間処理、及び、前記時系列データからデータを間引く間引き処理のうち少なくとも1つの処理を行うことにより前記第2の時系列データを生成してもよい。
(付記3)
前記第1の時系列データは、被検体の前記複数の血流を含む部位に対して送信された超音波の反射波に基づく時系列データであってもよいし、
前記収集部は、前記単一の超音波条件として前記部位に対応するPRFで送信された超音波の反射波に基づく前記第1の時系列データを収集してもよい。
(付記4)
前記超音波診断装置は、前記単一の超音波条件として、前記部位に含まれる前記複数の血流の速度のうち、最も高い速度に対応する前記PRFを設定する設定部を更に備えてもよい。
(付記5)
前記超音波診断装置は、前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部を更に備えてもよいし、
前記適用部は、前記フィルタ処理後の前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される前記複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の速度スケール及び前記第2の速度スケールのうち、前記割合が前記閾値以下となる速度スケールを適用してもよいし、
前記フィルタ処理部は、前記フィルタ処理を行う際のアンサンブル数を前記部位に対応するアンサンブル数に設定してもよい。
(付記6)
前記表示制御部は、互いに異なる速度スケールが適用された前記複数の血流に関する複数の血流情報を前記表示部に表示させてもよい。
(付記7)
前記表示制御部は、前記表示部に表示された複数の血流情報のうち、指定された血流情報が表示されるように、前記表示部の表示を更新してもよい。
(付記8)
コンピュータが、
単一の超音波条件で送信された超音波の反射波に基づく第1の時系列データであって、第1の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第1の時系列データに基づいて、第2の時間間隔で時間軸方向に並ぶデータにより構成される第2の時系列データを生成する処理と、
前記第1の時系列データ及び前記第2の時系列データの両方に描出される複数の血流のそれぞれに対して、前記第1の時系列データに基づく第1の速度スケール、及び、前記第2の時系列データに基づく第2の速度スケールのうち、第1の進行方向に進む血流に対する第2の進行方向に進む血流の割合が閾値以下となる速度スケールを適用する処理と、
前記速度スケールが適用された前記複数の血流に関する血流情報を表示部に表示させる処理とを実行する表示制御方法。
【符号の説明】
【0123】
1 超音波診断装置
180a PRF算出機能
180b データ補間機能
180c スケール調整機能
180d 表示モード選択機能
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10