(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120936
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】エネルギーシステム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230823BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230823BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/38 180
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024087
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 篤史
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5H770AA05
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770DA26
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770JA17Y
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】直流電路の直流電力を複数の出力回路が交流電力に変換するエネルギーシステムにおいて、直流電路における電力の脈動の大きさを抑制することに適した技術を提供する。
【解決手段】制御装置20は、第1出力回路3から系統電源8に向けて交流電力を出力させかつ第2出力回路4から負荷10に向けて交流電力を出力させる場合に、(a)第1出力回路3から出力される交流電圧の位相と第2出力回路4から出力される交流電圧の位相との間、(b)第1出力回路3から出力される交流電流の位相と第2出力回路4から出力される交流電流の位相との間、又は、(c)第1出力回路3から出力される交流電力の位相と第2出力回路4から出力される交流電力の位相との間、に所定位相差が存在する出力状態を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力が流れる直流電路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第1出力回路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第2出力回路と、
前記第1出力回路から系統電源に向けて交流電力を出力させかつ前記第2出力回路から負荷に向けて交流電力を出力させる場合に、
(a)前記第1出力回路から出力される交流電圧の位相と前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相との間、
(b)前記第1出力回路から出力される交流電流の位相と前記第2出力回路から出力される交流電流の位相との間、又は、
(c)前記第1出力回路から出力される交流電力の位相と前記第2出力回路から出力される交流電力の位相との間、
に所定位相差が存在する出力状態を実現する制御装置と、を備えた、
エネルギーシステム。
【請求項2】
前記所定位相差は、45度以上135度以下である、
請求項1に記載のエネルギーシステム。
【請求項3】
前記エネルギーシステムが単独運転することによって前記第1出力回路からの交流電力の出力が停止された場合、前記制御装置は、
(d)前記停止時に前記第2出力回路から出力されていた交流電圧の位相を初期値として、前記停止後に前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相を制御する、
(e)前記停止時に前記第2出力回路から出力されていた交流電流の位相を初期値として、前記停止後に前記第2出力回路から出力される交流電流の位相を制御する、又は、
(f)前記停止時に前記第2出力回路から出力されていた交流電力の位相を初期値として、前記停止後に前記第2出力回路から出力される交流電力の位相を制御する、
請求項1又は2に記載のエネルギーシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記系統電源が復電した後に、
(g)前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相、
(h)前記第2出力回路から出力される交流電流の位相、又は、
(i)前記第2出力回路から出力される交流電力の位相、
と、前記系統電源の交流電圧の位相と、の差分を前記所定位相差に近づけることを含む処理によって、前記出力状態に復帰させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギーシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、位相ウエイト期間において、前記差分を前記所定位相差へと連続的又は段階的に近づける、
請求項4に記載のエネルギーシステム。
【請求項6】
前記第1出力回路は、前記エネルギーシステムを前記系統電源に並列させるオン状態と、前記エネルギーシステムを前記系統電源から解列させるオフ状態と、を有する第1リレーを含み、
前記制御装置は、第1条件及び第2条件を含む複数の条件が成立しているときに、前記第1リレーを前記オフ状態から前記オン状態に切り替え、
前記第1条件は、前記系統電源が復電してから所定期間以上経過したという条件であり、
前記第2条件は、前記出力状態が実現されているという条件である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のエネルギーシステム。
【請求項7】
前記第1出力回路及び前記第2出力回路は、それぞれ、単相インバータを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギーシステム。
【請求項8】
前記直流電路の直流電力を平滑化するコンデンサをさらに備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載のエネルギーシステム。
【請求項9】
発電装置をさらに備え、
前記発電装置は、発電機と、前記発電機から電力が供給される変換機と、を有し、
前記変換機のスイッチング制御によって、前記変換機から前記直流電路への直流電力供給が行われる第1期間と、前記直流電力供給が停止される第2期間と、が交互に現れ、
前記第1出力回路から出力される交流電力及び前記第2出力回路から出力される交流電力の合計が前記第1期間においてピークとなるように、前記出力状態が実現される、
請求項1から8のいずれか一項に記載のエネルギーシステム。
【請求項10】
直流電力が流れる直流電路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第1出力回路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第2出力回路と、を備えたエネルギーシステムの運転方法であって、
前記第1出力回路から系統電源に向けて交流電力を出力させかつ前記第2出力回路から負荷に向けて交流電力を出力させる場合に、
(a)前記第1出力回路から出力される交流電圧の位相と前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相との間、
(b)前記第1出力回路から出力される交流電流の位相と前記第2出力回路から出力される交流電流の位相との間、又は、
(c)前記第1出力回路から出力される交流電力の位相と前記第2出力回路から出力される交流電力の位相との間、
に所定位相差が存在する出力状態を実現することを含む、
運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギーシステム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、電力制御に関する技術が記載されている。
【0003】
特許文献1のシステムでは、直流電源、コンバータ、コンデンサ及びインバータがこの順に接続されている。コンバータ及びインバータからコンデンサに流入する電流のタイミングをずらすように、インバータの出力が正の場合と負の場合とでコンバータの制御のための搬送波及びインバータの制御のための搬送波の一方の位相がずらされる。特許文献1では、コンデンサに流れる高周波リプル電流を低減できるという効果が謳われている。
【0004】
特許文献2のシステムでは、発電装置、系統連系インバータ及び水素製造装置が、中間接続点を介して互いに接続されている。発電装置から中間接続点へと出力された直流電力は、系統連系インバータ及び水素製造装置に供給されうる。系統連系インバータでは、入力された直流電力が、コンデンサにより平滑化され、単相インバータにより交流電力に変換され、系統電源に向けて出力される。水素製造装置では、入力された直流電力を用いて、水素が生成される。系統連系インバータの制御及び水素製造装置への電力供給は、中間接続点の電圧に応じて制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/157787号
【特許文献2】特開2021-136709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、直流電路の直流電力を複数の出力回路が交流電力に変換するエネルギーシステムにおいて、直流電路における電力の脈動の大きさを抑制することに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるエネルギーシステムは、
直流電力が流れる直流電路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第1出力回路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第2出力回路と、
前記第1出力回路から系統電源に向けて交流電力を出力させかつ前記第2出力回路から負荷に向けて交流電力を出力させる場合に、
(a)前記第1出力回路から出力される交流電圧の位相と前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相との間、
(b)前記第1出力回路から出力される交流電流の位相と前記第2出力回路から出力される交流電流の位相との間、又は、
(c)前記第1出力回路から出力される交流電力の位相と前記第2出力回路から出力される交流電力の位相との間、
に所定位相差が存在する出力状態を実現する制御装置と、を備える。
【0008】
本開示のエネルギーシステムの運転方法は、
直流電力が流れる直流電路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第1出力回路と、
前記直流電路から直流電力が入力される第2出力回路と、を備えたエネルギーシステムの運転方法であって、
前記第1出力回路から系統電源に向けて交流電力を出力させかつ前記第2出力回路から負荷に向けて交流電力を出力させる場合に、
(a)前記第1出力回路から出力される交流電圧の位相と前記第2出力回路から出力される交流電圧の位相との間、
(b)前記第1出力回路から出力される交流電流の位相と前記第2出力回路から出力される交流電流の位相との間、又は、
(c)前記第1出力回路から出力される交流電力の位相と前記第2出力回路から出力される交流電力の位相との間、
に所定位相差が存在する出力状態を実現することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、直流電路の直流電力を複数の出力回路が交流電力に変換するエネルギーシステムにおいて、直流電路における電力の脈動の大きさを抑制することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るエネルギーシステムの構成図
【
図5】実施の形態における第0制御器の制御フローチャートを示す図
【
図6】実施の形態における第1制御器の制御フローチャートを示す図
【
図7】実施の形態における第2制御器の制御フローチャートを示す図
【
図8】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が90度進んでいる様子を示す図
【
図9】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、発電装置から出力される電流の波形を示す図
【
図10】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、発電装置から出力される電流の波形を示す図
【
図11】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサの電流の波形を示す図
【
図12】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサの電流の波形を示す図
【
図14】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサの電流の周波数スペクトルを示す図
【
図15】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサの電流の周波数スペクトルを示す図
【
図16】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサの電圧の周波数スペクトルを示す図
【
図17】第1出力回路から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサの電圧の周波数スペクトルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者が本開示に想到するに至った当時、系統電源に連系して給電することと、自立負荷に給電することと、が可能なエネルギーシステムが知られていた。系統電源が健全である場合には、エネルギーシステムは、系統電源に連系して給電する。一方、系統電源が健全ではない場合には、エネルギーシステムは、系統電源に連系せず、その代わりに自立電源システムとして自立負荷に給電する。系統電源が健全ではない場合とは、例えば、系統電源が停電している場合である。
【0012】
発明者が知る限り、エネルギーシステムから系統電源及び自立負荷に同時に給電するための十分な検討はなされていない。発明者は、上記の同時給電に適したエネルギーシステムを検討した。
【0013】
直流電路の直流電力を複数の出力回路が交流電力に変換するエネルギーシステムによれば、上記の同時給電が可能である。ただし、直流電路における電力が脈動することがある。そこで、本発明者は、この脈動の大きさを抑制することに適した技術を検討し、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
実施の形態では、変換機という用語を用いることがある。変換機は、具体的には電力変換機である。
【0015】
実施の形態では、DC-DCコンバータという用語を用いることがある。DC-DCコンバータに含まれている変換機の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。例えば、DC-DCコンバータは、直流電力を交流電力に変換する変換機と、トランスと、交流電力を直流電力に変換する変換機と、を含んでいてもよい。
【0016】
実施の形態では、AC-DCコンバータという用語を用いることがある。AC-DCコンバータに含まれている変換機の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。例えば、AC-DCコンバータは、交流電力を直流電力に変換する変換機と、ある電圧の直流電力を別の電圧の直流電力に変換する変換機と、を含んでいてもよい。
【0017】
実施の形態では、インバータという用語を用いることがある。インバータは、DC-ACインバータとも称されうる。インバータに含まれている変換機の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。例えば、インバータは、ある電圧の直流電力を別の電圧の直流電力に変換する変換機と、直流電力を交流電力に変換する変換機と、を含んでいてもよい。
【0018】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
(実施の形態)
以下、
図1から
図17を用いて、実施の形態を説明する。
【0021】
[1-1.構成]
エネルギーシステムの構成について説明する。
【0022】
図1は、実施の形態に係るエネルギーシステム1の構成図である。
【0023】
エネルギーシステム1は、系統電源8、負荷9及び負荷10に接続されうる。具体的には、エネルギーシステム1に対し、系統電源8及び負荷9は並列に接続されうる。エネルギーシステム1は、分散型電源システムでありうる。
【0024】
本実施の形態では、系統電源8は、単相交流電源である。系統電源8は、商用電源とも称されうる。以下では、系統電源8の交流電圧の周波数を、商用周波数と称することがある。系統電源8の交流電圧の周波数の2倍の周波数を、商用2倍周波数と称することがある。系統電源8の交流電圧の周波数の4倍の周波数を、商用4倍周波数と称することがある。
【0025】
負荷9は、連系負荷と称されうる。負荷10は、自立負荷と称されうる。
【0026】
エネルギーシステム1は、発電装置2、直流電路6、コンデンサ7、第1出力回路3、第2出力回路4及び上位制御器5を含む。発電装置2、コンデンサ7、第1出力回路3及び第2出力回路4は、直流電路6を介して接続されている。また、エネルギーシステム1は、図示しないPLL(Phase Locked Loop)回路を含む。PLL回路は、上位制御器5と関連付けられている。PLL回路は、上位制御器5に含まれていてもよい。
【0027】
発電装置2は、直流電路6に直流電力を供給する。
図1の例では、発電装置2は、発電機2A、第0変換機2B及び第0制御器2Cを含む。発電機2Aは、発電を行う。これにより、電力が生成される。この電力は、第0変換機2Bを介して直流電路6に供給される。第0制御器2Cは、第0変換機2Bを制御する。第0変換機2Bは、発電変換機とも称されうる。第0制御器2Cは、発電変調制御器とも称されうる。
【0028】
発電装置2は、再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置でありうる。発電機2Aは、再生可能エネルギーを利用して発電する発電機でありうる。再生可能エネルギーは、自然エネルギーとも称されうる。
【0029】
本実施の形態では、発電装置2は、太陽光発電装置である。発電機2Aは、太陽電池である。第0変換機2Bは、DC-DCコンバータである。
【0030】
第1の別例では、発電装置2は、風力発電装置である。発電機2Aは、風車発電機である。第0変換機2Bは、AC-DCコンバータである。
【0031】
第2の別例では、発電装置2は、水力発電装置である。発電機2Aは、水車発電機である。第0変換機2Bは、AC-DCコンバータである。
【0032】
第3の別例では、発電装置2は、燃料電池発電装置である。発電機2Aは、燃料電池である。第0変換機2Bは、DC-DCコンバータである。
【0033】
直流電路6では、直流電力が流れる。直流電路6には、発電装置2から直流電力が入力される。本実施の形態では、直流電路6は、直流配線である。
【0034】
第1出力回路3には、直流電路6から直流電力が入力される。第1出力回路3は、系統電源8及び負荷9に接続されうる。第1出力回路3は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置である。第1出力回路3は、系統電源8に向けて交流電力を出力する。第1出力回路3は、連系出力回路とも称されうる。
【0035】
本実施の形態では、第1出力回路3は、単独運転検出機能、FRT(Fault Ride Through)機能等、系統電源8に連系するエネルギーシステム1としての信頼性を確保するための機能を備えている。
【0036】
図1の例では、第1出力回路3は、第1変換機3A、第1出力フィルタ3B、第1リレー3C及び第1制御器3Dを含む。第1変換機3Aは、インバータである。第1制御器3Dは、第1変換機3Aを制御する。第1変換機3Aは、系統連系インバータとも称されうる。第1出力フィルタ3Bは、連系出力フィルタとも称されうる。第1リレー3Cは、連系リレーとも称されうる。第1制御器3Dは、連系変調制御器とも称されうる。
【0037】
本実施の形態では、第1出力回路3は、単相電力変換装置である。第1出力回路3は、直流電路6から入力された直流電力を、単相交流電力に変換し、系統電源8に向けて出力する。第1変換機3Aは、単相インバータである。この単相インバータが、直流電路6から入力された直流電力を、単相交流電力に変換し、系統電源8に向けて出力する。
【0038】
第2出力回路4には、直流電路6から直流電力が入力される。第2出力回路4は、負荷10に接続されうる。第2出力回路4は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置である。第2出力回路4は、負荷10に向けて交流電力を出力する。第2出力回路4は、自立力変換装置とも称されうる。
【0039】
図1の例では、第2出力回路4は、第2変換機4A、第2出力フィルタ4B、第2リレー4C及び第2制御器4Dを含む。第2変換機4Aは、インバータであり、具体的には電圧制御型インバータである。第2制御器4Dは、第2変換機4Aを制御する。第2変換機4Aは、自立変換機とも称されうる。第2出力フィルタ4Bは、自立出力フィルタとも称されうる。第2リレー4Cは、自立リレーとも称されうる。第2制御器4Dは、自立変調制御器とも称されうる。
【0040】
本実施の形態では、第2出力回路4は、単相電力変換装置である。第2出力回路4は、直流電路6から入力された直流電力を、単相交流電力に変換し、負荷10に向けて出力する。第2変換機4Aは、単相インバータである。この単相インバータが、直流電路6から入力された直流電力を、単相交流電力に変換し、負荷10に向けて出力する。
【0041】
典型的には、第1変換機3Aも第2変換機4Aも、直流電圧を、正弦波交流電圧に変換する。第1変換機3A及び第2変換機4Aの変調方式は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0042】
第1出力回路3も第2出力回路4も、直流電路6の直流電力を交流電力に変換して出力する。ただし、第1出力回路3の交流電力の出力先と、第2出力回路4の交流電力の出力先とは、互いに独立した系統である。本実施の形態では、負荷10が属する系統は、系統電源8及び負荷9が属する系統から独立している。ここで、2つの系統が互いに独立しているとは、2つの系統が電気的に分離されていることを指す。
【0043】
コンデンサ7は、平滑コンデンサである。コンデンサ7は、直流電路6における電圧を平滑化することによって安定させる。本実施の形態では、コンデンサ7は、電解コンデンサである。
【0044】
コンデンサ7と、コンデンサ7とは別のコンデンサとを、直流電路6に対して並列接続させてもよい。当該別のコンデンサは、例えば、直流電路6における高周波成分を補償するものである。当該別のコンデンサとして、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ等が例示される。
【0045】
上位制御器5は、第0制御器2Cと協働して、第0変換機2Bを制御する。具体的には、上位制御器5は、第0制御器2Cへと信号11Aを出力する。第0制御器2Cは、信号11Aに基づいて、第0変換機2Bを制御する。
【0046】
上位制御器5は、第1制御器3Dと協働して、第1変換機3Aを制御する。具体的には、上位制御器5は、第1制御器3Dへと信号11Bを出力する。第1制御器3Dは、信号11Bに基づいて、第1変換機3Aを制御する。
【0047】
上位制御器5は、第2制御器4Dと協働して、第2変換機4Aを制御する。具体的には、上位制御器5は、第2制御器4Dへと信号11Cを出力する。第2制御器4Dは、信号11Cに基づいて、第2変換機4Aを制御する。
【0048】
エネルギーシステム1では、制御装置20が構成されている。制御装置20は、上位制御器5、第0制御器2C、第1制御器3D及び第2制御器4Dを含む。これらの制御器は、互いに離れている。ただし、これらの制御器は、一体に構成されていてもよい。
【0049】
[1-1-1.発電装置2の構成]
図2は、実施の形態における発電装置2の構成図である。
【0050】
第0変換機2Bは、第0入力端子12A、第0入力端子12B、チョッパ回路12C、第0出力端子12J及び第0出力端子12Kを含む。チョッパ回路12Cは、インダクタ12D、半導体スイッチ12E、ダイオード12F、電流センサ12G、電圧センサ12H、電圧センサ12X及びコンデンサ12Iを含む。
【0051】
チョッパ回路12Cは、第0入力端子12A及び第0入力端子12Bを介して、発電機2Aに接続されている。チョッパ回路12Cは、第0出力端子12J及び第0出力端子12Kを介して、直流電路6に接続されている。
【0052】
発電機2Aからチョッパ回路12Cに直流電圧が入力される。半導体スイッチ12Eのスイッチングが制御される。半導体スイッチ12Eがオンであるとき、発電機2Aからインダクタ12D及び半導体スイッチ12Eにこの順で電流が流れ、インダクタ12Dにエネルギーが蓄えられる。ダイオード12Fにより、電流の逆流が防止される。半導体スイッチ12Eがオフであるとき、発電機2Aからインダクタ12D及びダイオード12Fにこの順で電流が流れ、インダクタ12Dに蓄えられていたエネルギーがダイオード12Fを介して出力される。このような動作により、チョッパ回路12Cは、発電機2Aから入力された直流電圧を昇圧し、直流電路6に出力する。
【0053】
電流センサ12Gは、インダクタ12Dを流れる電流を検出する。
【0054】
電圧センサ12Hは、第0変換機2Bから直流電路6に出力される出力電圧を検出する。具体的には、この出力電圧は、第0出力端子12J及び第0出力端子12Kの間の電圧である。図示の例では、この出力電圧は、チョッパ回路12Cの出力電圧でもあり、コンデンサ12Iの両端電圧でもある。
【0055】
第0制御器2Cは、電流センサ12Gの検出電流及び電圧センサ12Hの検出電圧に基づいて、制御信号13Sを出力する。制御信号13Sにより、半導体スイッチ12Eのオンオフ制御がなされる。
【0056】
コンデンサ12Iにより、第0変換機2Bの出力電圧が平滑化される。発電機2Aから第0変換機2Bに入力される入力電圧を平滑化するコンデンサを設けてもよい。具体的には、この入力電圧は、第0入力端子12A及び第0入力端子12Bの間の電圧である。図示の例では、この入力電圧は、チョッパ回路12Cの入力電圧でもある。
【0057】
電圧センサ12Xは、第0変換機2Bの入力電圧を検出する。電圧センサ12Xの検出電圧の利用方法については、
図5を参照しながら後述する。
【0058】
[1-1-2.第1出力回路3の構成]
図3は、実施の形態における第1出力回路3の構成図である。
【0059】
第1出力回路3は、第1入力端子14A、第1入力端子14B、コンデンサ14C、電圧センサ14D、第1変換機3A、第1出力フィルタ3B、第1リレー3C、第1制御器3D、第1出力端子14E、第1出力端子14F、電圧センサ14G、電流センサ14H及び接地端子14Iを含む。第1変換機3Aは、半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4を含む。
【0060】
第1入力端子14A及び第1入力端子14Bと、第1出力端子14E及び第1出力端子14Fとの間で、第1変換機3A、第1出力フィルタ3B及び第1リレー3Cが、この順に接続されている。第1入力端子14A及び第1入力端子14Bは、直流電路6に接続されている。第1出力端子14E及び第1出力端子14Fは、系統電源8及び負荷9に接続されている。
【0061】
直流電路6から第1変換機3Aに直流電圧が入力される。半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4が制御される。これにより、第1変換機3Aにおいて直流電圧が交流電圧に変換される。交流電圧は、第1出力フィルタ3B及び第1リレー3Cを介して系統電源8に出力される。交流電圧は、負荷9にも供給されうる。
【0062】
電圧センサ14Dは、直流電路6から第1出力回路3に入力される入力電圧を検出する。具体的には、この入力電圧は、第1入力端子14A及び第1入力端子14Bの間の電圧である。図示の例では、この入力電圧は、コンデンサ14Cの両端電圧でもあり、第1変換機3Aの入力電圧でもある。
【0063】
電圧センサ14Gは、第1出力回路3から出力される出力電圧を検出する。具体的には、この出力電圧は、第1出力端子14E及び第1出力端子14Fの間の電圧である。図示の例では、この出力電圧は、系統電源8の電圧に等しい。
【0064】
電流センサ14Hは、第1出力回路3から系統電源8に向かって流れる電流を検出する。具体的には、電流センサ14Hは、第1出力フィルタ3B及び第1リレー3Cの間を流れる電流を検出する。
【0065】
第1制御器3Dは、電圧センサ14Dの検出電圧、電圧センサ14Gの検出電圧及び電流センサ14Hの検出電流に基づいて、制御信号15Sを出力する。制御信号15Sにより、半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4のオンオフ制御がなされる。
【0066】
コンデンサ14Cにより、第1変換機3Aの入力電圧が平滑化される。第1出力フィルタ3Bにより、第1変換機3Aで得られた交流電圧の波形が整形される。第1出力回路3は、接地端子14Iを介して接地されている。
【0067】
[1-1-3.第2出力回路4の構成]
図4は、実施の形態における第2出力回路4の構成図である。
【0068】
第2出力回路4は、第2入力端子16A、第2入力端子16B、コンデンサ16C、電圧センサ16D、第2変換機4A、第2出力フィルタ4B、第2リレー4C、第2制御器4D、第2出力端子16E、第2出力端子16F、電圧センサ16G、電流センサ16H及び接地端子16Iを含む。第2変換機4Aは、半導体スイッチ4A1、半導体スイッチ4A2、半導体スイッチ4A3及び半導体スイッチ4A4を含む。
【0069】
第2入力端子16A及び第2入力端子16Bと、第2出力端子16E及び第2出力端子16Fとの間で、第2変換機4A、第2出力フィルタ4B及び第2リレー4Cが、この順に接続されている。第2入力端子16A及び第2入力端子16Bは、直流電路6に接続されている。第2出力端子16E及び第2出力端子16Fは、負荷10に接続されている。
【0070】
直流電路6から第2変換機4Aに直流電圧が入力される。半導体スイッチ4A1、半導体スイッチ4A2、半導体スイッチ4A3及び半導体スイッチ4A4が制御される。これにより、第2変換機4Aにおいて直流電圧が交流電圧に変換される。交流電圧は、第2出力フィルタ4B及び第2リレー4Cを介して負荷10に出力される。
【0071】
電圧センサ16Dは、直流電路6から第2出力回路4に入力される入力電圧を検出する。具体的には、この入力電圧は、第2入力端子16A及び第2入力端子16Bの間の電圧である。図示の例では、この入力電圧は、コンデンサ16Cの両端電圧でもあり、第2変換機4Aの入力電圧でもある。
【0072】
電圧センサ16Gは、第2出力回路4から出力される出力電圧を検出する。具体的には、この出力電圧は、第2出力端子16E及び第2出力端子16Fの間の電圧である。
【0073】
電流センサ16Hは、第2出力回路4から負荷10に向かって流れる電流を検出する。具体的には、電流センサ16Hは、第2出力フィルタ4B及び第2リレー4Cの間を流れる電流を検出する。
【0074】
第2制御器4Dは、電圧センサ16Dの検出電圧、電圧センサ16Gの検出電圧及び電流センサ16Hの検出電流に基づいて、制御信号17Sを出力する。制御信号17Sにより、半導体スイッチ4A1、半導体スイッチ4A2、半導体スイッチ4A3及び半導体スイッチ4A4のオンオフ制御がなされる。
【0075】
コンデンサ16Cにより、第2変換機4Aの入力電圧が平滑化される。第2出力フィルタ4Bにより、第2変換機4Aで得られた交流電圧の波形が整形される。第2出力回路4は、接地端子16Iを介して接地されている。
【0076】
[1-2.動作]
以下、各要素の動作について説明する。以下の説明では、第1閾値電圧V1、第2閾値電圧V2、第3閾値電圧V3及び第4閾値電圧V4という用語を用いることがある。以下の例では、第1閾値電圧V1<第2閾値電圧V2<第3閾値電圧V3<第4閾値電圧V4である。
【0077】
[1-2-1.第0変換機2Bの動作]
本実施の形態では、第0変換機2Bを制御するための制御サイクルが、所定の制御周期で繰り返される。各制御サイクルにおいて、第0制御器2Cは、制御信号13Sを第0変換機2Bに送信する。これにより、発電機2Aから第0変換機2Bに取り出される電力及び/又は第0変換機2Bから直流電路6に出力される直流電力が、制御サイクル毎に逐次更新される。
【0078】
図5は、実施の形態における第0制御器2Cの制御フローチャートを示す図である。
図5のフローチャートにおける「開始」から「終了」までが、1つの制御サイクルを構成する。本実施の形態では、この制御サイクルが繰り返し実行される。以下、
図5を参照しつつ、第0変換機2Bの動作について説明する。
【0079】
ステップS1において、第0制御器2Cは、現在の入力電圧Vpv(t)を取得する。本実施の形態では、第0制御器2Cは、電圧センサ12Xの検出電圧を電圧Vpv(t)として取得する。
【0080】
次に、ステップS2において、第0制御器2Cは、直流電路6の現在の電圧Vdc(t)を取得する。本実施の形態では、第0制御器2Cは、電圧センサ12Hの検出電圧を、電圧Vdc(t)として取得する。
【0081】
次に、ステップS3において、第0制御器2Cは、電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1よりも小さいか否かを判定する。電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1よりも小さい場合、ステップS8に進む。電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1以上である場合、ステップS4に進む。
【0082】
ステップS4において、第0制御器2Cは、電圧Vpv(t)が閾値電圧Vpvthよりも小さいか否かを判定する。電圧Vpv(t)が閾値電圧Vpvthよりも小さい場合、ステップS8に進む。電圧Vpv(t)が閾値電圧Vpvth以上である場合、ステップS5に進む。
【0083】
ステップS5において、第0制御器2Cは、電圧Vdc(t)が第3閾値電圧V3よりも小さいか否かを判定する。電圧Vdc(t)が第3閾値電圧V3よりも小さい場合、ステップS7に進む。電圧Vdc(t)が第3閾値電圧V3以上である場合、ステップS6に進む。
【0084】
ステップS6において、第0制御器2Cは、定電圧(CV:Constant Voltage)制御を実行する。具体的には、第0制御器2Cは、直流電路6の電圧が目標電圧に追従するように、チョッパ回路12Cを制御する。
【0085】
ステップS7において、第0制御器2Cは、最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を実行する。具体的には、第0制御器2Cは、チョッパ回路12Cを用いて発電機2AをMPPT制御する。本実施の形態では、発電機2Aは、固有の出力電圧-出力電力特性を有する。MPPT制御によれば、この出力電圧-出力電力特性において出力電力が最大となる出力電圧が実現されるように、発電機2Aの出力電流が制御される。つまり、MPPT制御によれば、発電機2Aの動作点を、最大電力点Pmaxへと制御できる。最大電力点Pmaxは、発電機2Aの出力電力が最大値になるように発電機2Aの出力電圧を調整したときの、発電機2Aの動作点である。MPPT制御の具体例は、山登り法である。
【0086】
ステップS8において、第0制御器2Cは、発電機2Aから直流電路6への電力の供給を停止させる。具体的には、発電機2Aとチョッパ回路12Cとの間には、リレー回路が接続されている。また、発電機2Aには、スイッチ回路を介してダミーロードが接続されている。リレー回路、スイッチ回路及びダミーロードの図示は省略している。ステップS8において、第0制御器2Cは、リレー回路を投入状態から開放状態に切り替えることによって、発電機2Aから直流電路6への電力の供給を停止させる。また、第0制御器2Cは、スイッチ回路を開放状態から投入状態に切り替えることによって、発電機2Aの発電電力をダミーロードで消費させる。ダミーロードに代えて蓄電機を用いてもよい。
【0087】
[1-2-2.第1出力回路3の動作]
本実施の形態では、第1出力回路3を制御するための制御サイクルが、所定の制御周期で繰り返される。各制御サイクルにおいて、第1制御器3Dは、制御信号15Sを第1変換機3Aに送信する。これにより、第1変換機3Aから出力される交流電力が、制御サイクル毎に逐次更新される。
【0088】
図6は、実施の形態における第1制御器3Dの制御フローチャートを示す図である。
図6のフローチャートにおける「開始」から「終了」までが、1つの制御サイクルを構成する。本実施の形態では、この制御サイクルが繰り返し実行される。以下、
図6を参照しつつ、第1出力回路3の動作について説明する。
【0089】
ステップS11において、第1制御器3Dは、直流電路6の現在の電圧Vdc(t)を取得する。本実施の形態では、第1制御器3Dは、電圧センサ14Dの検出電圧を、電圧Vdc(t)として取得する。
【0090】
次に、ステップS12において、第1制御器3Dは、系統電源8の現在の電圧Vgrid(t)を取得する。本実施の形態では、第1制御器3Dは、電圧センサ14Gの検出電圧を電圧Vgrid(t)として取得する。
【0091】
次に、ステップS13において、第1制御器3Dは、系統位相を取得する。系統位相は、系統電源8の交流電圧の位相である。本実施の形態では、PLL回路を用いて、系統位相が特定される。そして、上位制御器5から第1制御器3Dへと、系統位相の情報を含む信号11Bが送信される。
【0092】
次に、ステップS14において、第1制御器3Dは、電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1よりも小さいか否かを判定する。電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1よりも小さい場合、ステップS19に進む。電圧Vdc(t)が第1閾値電圧V1以上である場合、ステップS15に進む。
【0093】
ステップS15において、第1制御器3Dは、系統異常があるか否かを判定する。系統異常は、系統電源8の異常を指す。系統異常がある場合、ステップS16に進む。系統異常がない場合、ステップS17に進む。
【0094】
ステップS16において、第1制御器3Dは、系統異常が抑制異常であるか否かを判定する。系統異常が抑制異常である場合、ステップS18に進む。系統異常が抑制異常ではない場合、ステップS19に進む。ここで、抑制異常とは、例えば系統電圧が上昇又は低下した異常を示す。系統電圧は、系統電源8の電圧である。
【0095】
本実施の形態では、抑制異常は、第1出力回路3から系統電源8への電力供給を抑制する契機となる異常である。例えば、系統電源8の電圧には、適正範囲が存在する。現在の日本では、適正範囲は、
・100V系の引き込み点では、101V±6Vの範囲すなわち95V以上107V以下の範囲に、
・200V系の引き込み点では、202V±20Vの範囲すなわち182V以上222V以下の範囲に、
それぞれ定められている。系統電源8の電圧が適正範囲を逸脱する異常は、抑制異常に該当しうる。本実施の形態では、第1制御器3Dは、ステップS12で取得した電圧Vgrid(t)に基づいて、系統電源8の電圧が適正範囲内か否かを判定する。
【0096】
本実施の形態では、上記の文脈における抑制異常ではない系統異常は、第1出力回路3から系統電源8への電力供給を停止する契機となる異常である。抑制異常ではない系統異常は、エネルギーシステム1と系統電源8とを解列させる契機となる異常でありうる。例えば、系統電源8の停電は、抑制異常ではない系統異常に該当しうる。
【0097】
ステップS17において、第1制御器3Dは、第1出力回路3に通常運転を行わせる。具体的には、第1制御器3Dは、半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4にスイッチングを実行させることによって、直流電路6の直流電力が第1出力回路3で交流電力に変換され系統電源8に向けて出力されるようにする。
【0098】
ステップS18において、第1制御器3Dは、第1出力回路3に抑制運転を行わせる。ステップS18の抑制運転について説明する。通常運転においても抑制運転においても、直流電路6から第1出力回路3を介した系統電源8への電力の取り出しがなされる。この際、負荷9にも電力が供給されうる。ただし、第1出力回路3が抑制運転において直流電路6から取り出す電力は、第1出力回路3が通常運転において直流電路6から取り出す電力よりも小さい。また、第1出力回路3が抑制運転において系統電源8に供給する電力は、第1出力回路3が通常運転において系統電源8に供給する電力よりも小さい。
【0099】
ステップS19において、第1制御器3Dは、直流電路6から第1出力回路3を介した系統電源8への電力の取り出しを停止させる。この際、負荷9への電力の供給も停止されうる。具体的には、第1制御器3Dは、半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4にスイッチングを停止させることによって、電力が第1出力回路3を通過しないようにする。
【0100】
本実施の形態における第1制御器3Dによる系統位相の利用について説明する。ステップS17及びS18において、第1制御器3Dは、系統位相に追従した位相の交流電圧が第1変換機3Aから出力されるように、半導体スイッチ3A1、半導体スイッチ3A2、半導体スイッチ3A3及び半導体スイッチ3A4にスイッチングを実行させる。また、第1制御器3Dは、系統電圧の擾乱に基づいてエネルギーシステム1の単独運転を検出する。第1制御器3Dは、単独運転を検出したときに、系統電源8が停電していると判定する。
【0101】
[1-2-3.第2出力回路4の動作]
本実施の形態では、第2出力回路4を制御するための制御サイクルが、所定の制御周期で繰り返される。各制御サイクルにおいて、第2制御器4Dは、制御信号17Sを第2変換機4Aに送信する。これにより、第2変換機4Aから出力される交流電力が、制御サイクル毎に逐次更新される。
【0102】
第2出力回路4から出力される交流電圧の位相は、指令位相に基づいて制御される。具体的には、第2制御器4Dは、各制御サイクルにおいて、指令位相を生成し、指令位相を含む制御信号17Sを第2変換機4Aに送信する。これにより、第2変換機4Aから出力される交流電圧の位相が、指令位相に従って制御サイクル毎に逐次変化する。このようにして、第2出力回路4から出力される交流電圧の位相は、指令位相に追従するように制御される。
【0103】
図7は、実施の形態における第2制御器4Dの制御フローチャートを示す図である。
図7のフローチャートにおける「開始」から「終了」までが、1つの制御サイクルを構成する。本実施の形態では、この制御サイクルが繰り返し実行される。以下、
図7を参照しつつ、第2出力回路4から出力される交流電圧の位相の制御を含め、第2出力回路4の動作等について説明する。
【0104】
ステップS21において、第2制御器4Dは、直流電路6の現在の電圧Vdc(t)を取得する。本実施の形態では、第2制御器4Dは、電圧センサ16Dの検出電圧を、電圧Vdc(t)として取得する。
【0105】
次に、ステップS22において、第2制御器4Dは、系統電源8が停電した状態にあるか否かを判定する。系統電源8が停電した状態にある場合、ステップS24に進む。系統電源8が停電した状態にない場合、ステップS23に進む。本実施の形態では、第1出力回路3は、単独運転を検出した場合に検出信号を出力するように構成されている。第2制御器4Dは、その出力信号に基づいて、系統電源8が停電した状態にあるか否かを判定する。
【0106】
ステップS24において、第2制御器4Dは、指令位相を1制御サイクル分進める。具体的には、ステップS24が実行される場合、系統電源8が停電した状態にある。第2制御器4Dは、その停電の開始時(厳密には、開始直前)において第1出力回路3から系統電源8に向けて出力されていた交流電圧の周波数を記録している。第2制御器4Dは、この周波数に制御周期を乗じた角度を、1制御サイクル前の指令位相に加算する。この加算により、指令位相が進められる。このように指令位相が更新されることにより、指令位相は、停電時(厳密には、開始直前)における値を初期値として、該停電後に逐次進められていくことになる。ステップS24の後、ステップS31に進む。
【0107】
本実施の形態では、第2制御器4Dは、系統電源8の復電時に、位相ウエイト期間を開始する。位相ウエイト期間は、第2出力回路4から出力される交流電圧の位相を調整するための期間である。位相ウエイト期間において、第2出力回路4から出力される交流電圧の位相は、連続的又は段階的に変化しうる。位相の調整幅が大きい場合であっても、位相を調整前の値から調整後の値へと瞬時的に大幅変化させるのではなく、連続的又は段階的に変化させることにより、位相の制御を安定させることができる。これにより、負荷10に供給される電圧を安定させることができる。
【0108】
ステップS23において、第2制御器4Dは、位相ウエイト期間中であるか否かを判定する。位相ウエイト期間中である場合、ステップS27に進む。位相ウエイト期間中でない場合、ステップS25に進む。
【0109】
ステップS25において、第2制御器4Dは、指令位相を系統位相に合わせるすなわち一致させる。系統位相は、系統電源8の交流電圧の位相である。具体的には、ステップS24が実行される場合、系統電源8は停電した状態にない。このため、系統位相を特定可能である。本実施の形態では、ステップS13の説明部で説明したように、系統位相は、PLL回路を用いて特定される。本実施の形態では、上位制御器5から第2制御器4Dへと、系統位相の情報を含む信号11Cが送信される。ステップS25の後、ステップS26に進む。
【0110】
ステップS26において、第2制御器4Dは、指令位相を90度ずらす。ステップS25及びステップS26の組み合わせにより、指令位相は、系統位相から90度ずれた位相となる。この例では、ステップS26において、第2制御器4Dは、指令位相を90度進ませる。ステップS25及びステップS26の組み合わせにより、指令位相は、系統位相から90度進んだ位相となる。ステップS26の後、ステップS31に進む。
【0111】
ステップS27において、第2制御器4Dは、指令位相及び系統位相の間の位相差を演算する。具体的には、ステップS27が実行される場合、系統電源8が停電した状態にない。このため、
図6のステップS13において、系統位相を特定可能である。ステップS27の後、ステップS28に進む。
【0112】
ステップS28において、第2制御器4Dは、ステップS27で演算した位相差が所定範囲内にあるか否かを判定する。例えば、所定範囲は、90度±Δα度すなわち90度-Δα度以上90度+Δα度以下の範囲である。Δαは、ステップS27からS29が実行される制御サイクルからステップS25及びS26が実行される制御サイクルへの移行時の負荷10の電圧の位相跳躍の許容範囲、後述のステップS29の「所定値」の大きさ、許容される位相ウエイト期間の長さ等に応じて、適宜設定されうる。位相差が所定範囲内にある場合、ステップS30に進む。位相差が所定範囲内にない場合、ステップS29に進む。
【0113】
ステップS30において、第2制御器4Dは、位相ウエイト期間を終了させる。ステップS30の後、ステップS31に進む。
【0114】
ステップS29において、第2制御器4Dは、指令位相を補正する。具体的には、ステップS29において、第2制御器4Dは、指令位相と系統位相との間の位相差が小さくなるように、指令位相を所定値変化させる。所定値は、第2変換機4Aから出力される交流電圧の位相の制御の安定性が確保されるように、十分に小さい値に設定されうる。ステップS29の後、ステップS31に進む。
【0115】
上述の説明から理解されるように、系統電源8が停電した不健全な状態において、ステップS24が実行される。系統電源8が停電していない健全な定常状態において、ステップS25及びステップS26が実行される。系統電源8が復電して健全な状態に移行して直後の過渡期において、ステップS27、ステップS28及びステップS29が実行される。
【0116】
ステップS31において、第2制御器4Dは、電圧Vdc(t)が第2閾値電圧V2よりも小さいか否かを判定する。電圧Vdc(t)が第2閾値電圧V2よりも小さい場合、ステップS38に進む。電圧Vdc(t)が第2閾値電圧V2以上である場合、ステップS32に進む。
【0117】
ステップS32において、第2制御器4Dは、電圧Vdc(t)が第4閾値電圧V4よりも大きいか否かを判定する。電圧Vdc(t)が第4閾値電圧V4よりも大きい場合、ステップS38に進む。電圧Vdc(t)が第4閾値電圧V4以下である場合、ステップS33に進む。
【0118】
ステップS33において、第2制御器4Dは、第2出力回路4に運転を行わせる。具体的には、第2制御器4Dは、半導体スイッチ4A1、半導体スイッチ4A2、半導体スイッチ4A3及び半導体スイッチ4A4にスイッチングを実行させることによって、直流電路6の直流電力が第2出力回路4で交流電力に変換され負荷10に向けて出力されるようにする。ステップS33の後、ステップS34に進む。
【0119】
ステップS34において、第2制御器4Dは、系統電源8が復電してから所定期間以上経過したか否かを判定する。復電してから所定期間以上経過した場合、ステップS35に進む。復電してから所定期間経過していない場合、フローは終了する。ステップS34の存在により、復電後の一定期間はエネルギーシステム1を系統電源8に連系することを回避でき、このため系統連系規程を遵守できる。所定期間は、例えば、150秒以上300秒以下である。
【0120】
ステップS35において、第2制御器4Dは、指令位相と系統位相との間の位相差を演算する。ステップS35の後、ステップS36に進む。
【0121】
ステップS36において、第2制御器4Dは、ステップS35の演算結果に基づき、指令位相が系統位相から90度進んでいるか否かを判定する。指令位相が系統位相から90度進んでいる場合、ステップS37に進む。指令位相が系統位相から90度進んでいない場合、フローは終了する。
【0122】
ステップS37において、第2制御器4Dは、第1リレー3Cをオン状態にする。これにより、エネルギーシステム1が系統電源8に連系される。具体的には、ステップS37において、第2制御器4Dは、第1制御器3Dに所定の信号を送信する。第1制御器3Dは、所定の信号を受信すると、第1リレー3Cにオン信号を送信する。これにより、第1リレー3Cがオン状態になる。
【0123】
なお、系統電源8が健全な状態が継続しており第1リレー3Cがオン状態に維持されている場合、ステップS34、ステップS35、ステップS36及びステップS37を省略してもよい。
【0124】
ステップS38において、第2制御器4Dは、第2出力回路4から負荷10に向けた電力の出力を停止させる。具体的には、第2制御器4Dは、半導体スイッチ4A1、半導体スイッチ4A2、半導体スイッチ4A3及び半導体スイッチ4A4にスイッチングを停止させることによって、電力が第2制御器4Dを通過しないようにする。
【0125】
図7を参照して説明した例では、第2出力回路4から出力される交流電圧の位相を制御している。ただし、第2出力回路4から出力される交流電流の位相を制御してもよく、第2出力回路4から出力される交流電力の位相を制御してもよい。この場合、
図7を参照して行った説明における「第2変換機4Aから出力される交流電圧」、「第2出力回路4から出力される交流電圧」等の表現における「交流電圧」が「交流電流」又は「交流電力」に置き換えられる等の読み替えがなされうる。この文脈において、交流電力は、具体的には、皮相電力でありうる。
【0126】
図7を参照して説明した例のステップS26では、第2制御器4Dは、指令位相を90度進ませる。ただし、ステップS26において、第2制御器4Dは、指令位相を90度遅らせてもよい。この場合、ステップS25及びステップS26の組み合わせにより、指令位相は、系統位相から90度遅れた位相となる。また、この場合、ステップS36において、指令位相が系統位相から90度遅れているか否かが判定される。
【0127】
[1-2-4.動作波形]
各部の動作波形について、
図8から
図17を参照しながら説明する。
図8から
図17は、シミュレーションにより取得したデータである。
図14から
図17は、FFT(Fast Fourier Transformation)により得た周波数スペクトルである。
図8から
図17の説明において、商用周波数は50Hzであり、商用2倍周波数は100Hzである。
【0128】
図8は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいる様子を示す図である。
図8において、横軸は時間(単位:秒)であり、縦軸は電圧である。具体的に、縦軸は、規格化された電圧である。
【0129】
図9は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、第0変換機2Bから出力される電流の波形を示す図である。
図10は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が揃っているとき(すなわち位相差がゼロであるとき)の、第0変換機2Bから出力される電流の波形を示す図である。
図9及び
図10において、横軸は時間(単位:秒)であり、縦軸は電流(単位:アンペア)である。
【0130】
図9及び
図10において、第1出力回路3及び第2出力回路4がスイッチングしているときに第0変換機2Bから出力されるピーク電流の包絡線が、太線で描かれている。
図9に示すように、位相が90度ずれているときは、包絡線のピークは10アンペア程度である。これに対し、
図10に示すように、位相が揃っているときは、包絡線のピークは12から13アンペア程度である。また、
図9に示すように、位相が90度ずれているときは、包絡線の脈動の周期は、系統電源8の交流電圧の周期の1/4倍である。これに対し、
図10に示すように、位相が揃っているときは、包絡線の脈動の周期は、系統電源8の交流電圧の周期の1/2倍である。
【0131】
図11は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサ7の電流の波形を示す図である。
図12は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサ7の電流の波形を示す図である。
図11及び
図12において、横軸は時間(単位:秒)であり、縦軸は電流(単位:アンペア)である。具体的には、縦軸の正側が充電を示し、負側が放電を示す。
【0132】
図11及び
図12において、第1出力回路3及び第2出力回路4がスイッチングしているときのコンデンサ7におけるピーク電流の正側の包絡線及び負側の包絡線が太線で描かれている。
図11に示すように、位相が90度ずれているときは、正側の包絡線は、7アンペア程度で一定である。
図11に示すように、位相が90度ずれているときは、負側の包絡線の脈動の周期は、系統電源8の交流電圧の周期の1/4倍である。これに対し、
図12に示すように、位相が揃っているときは、正側の包絡線は、3アンペアと12アンペアの間で、系統電源8の交流電圧の周期の1/2倍の周期で脈動している。
図12に示すように、位相が揃っているときは、負側の包絡線は、ピークを12から13アンペア程度として、系統電源8の交流電圧の周期の2倍の周期で脈動している。
【0133】
典型的には、コンデンサ7は、第1出力回路3及び第2出力回路4のスイッチング周波数のような高周波の影響を受け難い。一方、コンデンサ7は、商用2倍周波数又は商用4倍周波数の成分のような低次周波数成分の影響を受けうる。具体的には、コンデンサ7の等価直列抵抗は、コンデンサ7の充放電電流の周波数が低い領域では高い値をとる。このため、コンデンサ7の内部ロスを小さくする観点から、充放電電流の低次周波数成分を小さくすることが有利である。
図11及び
図12から、位相を90度ずらすことが、コンデンサ7の内部ロスを小さくする観点から有利であることが理解されよう。
【0134】
本実施の形態では、コンデンサ7は、電解コンデンサである。フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ等に比べ、電解コンデンサは、容量を確保し易い。ただし、典型的には、電解コンデンサの等価直列抵抗は大きい。このため、コンデンサ7が電解コンデンサである場合、コンデンサ7の内部ロスを小さくする観点から、位相を90度ずらすことのメリットは大きい。
【0135】
また、電解コンデンサでは、発熱によって封止部を介して外部に電解液が蒸散する現象が生じうる。この現象は、静電容量の減少及び損失角の正接の増大を招く。電解液の温度と蒸散速度との関係はアレニウス則で近似され、温度が高いほど蒸散速度は高い。この点、コンデンサ7が電解コンデンサである場合、位相を90度ずらして充放電電流の低次周波数成分を小さくすることにより、同成分に起因するコンデンサ7の自己発熱を抑制でき、蒸散速度を小さくでき、静電容量の減少及び損失角の正接の増大を抑制できるというメリットも得られる。
【0136】
図13は、コンデンサ7の電圧の波形を示す図である。
図13において、グラフ30Aは、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサ7の電圧の波形を示す。グラフ30Bは、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサ7の電圧の波形を示す。
図13において、横軸は時間(単位:秒)であり、縦軸は電圧(単位:ボルト)である。
【0137】
位相が揃った状態を表すグラフ30Bでは、コンデンサ7の電圧が商用2倍周波数の脈動成分を有することを示している。位相が揃っている場合、第1出力回路3の出力側の波形歪み及び第2出力回路4の出力側の波形歪みを抑制するために、コンデンサ7の電圧の脈動成分に対する高いゲインの補償が必要となりうる。
【0138】
図14は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサ7の電流の周波数スペクトルを示す図である。
図15は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサ7の電流の周波数スペクトルを示す図である。
図14及び
図15において、横軸は時間(周波数:ヘルツ)であり、縦軸は電流(単位:アンペア)である。具体的には、縦軸は、充放電電流である。
【0139】
図14に示すように、位相が90度ずれているときは、第1出力回路3及び第2出力回路4のスイッチング周波数の整数倍成分と、該整数倍成分の側帯波成分と、が見られるものの、商用2倍周波数成分すなわち100Hzの周波数成分は小さい。これに対し、
図15に示すように、位相が揃っているときは、第1出力回路3及び第2出力回路4のスイッチング周波数の整数倍成分と、該整数倍成分の側帯波成分と、のみならず、商用2倍周波数成分(100Hz成分)も見られる。
【0140】
図16は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度進んでいるときの、コンデンサ7の電圧の周波数スペクトルを示す図である。
図17は、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が揃っているときの、コンデンサ7の電圧の周波数スペクトルを示す図である。
図16及び
図17において、横軸は時間(周波数:ヘルツ)であり、縦軸は電圧(単位:ボルト)である。
【0141】
図16に示すように、位相が90度ずれているときは、商用2倍周波数成分(100Hz成分)は見られない。これに対し、
図17に示すように、位相が揃っているときは、商用2倍周波数成分(100Hz成分)が見られる。
【0142】
単相インバータから出力される交流電圧及び交流電流の周波数を、fとする。この場合、単相インバータから出力される交流電力は、周波数fの交流電圧と周波数fの交流電流の積に由来する周波数2fの成分を有する。この周波数2fの成分が、単相インバータの入力側の直流電路において脈動成分として現れうる。しかし、
図9、
図11、
図14及び
図16の例では、第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が90度ずれている。このため、第1出力回路3の単相インバータに由来する周波数2fの脈動成分と、第2出力回路4の単相インバータに由来する周波数2fの脈動成分とが、直流電路6で重ね合わされて重畳されることを回避できる。このため、直流電路6における脈動成分のピークを抑制できる。
図8から
図17は、この事実を裏付けている。なお、周波数2fは、商用2倍周波数に対応しうる。
【0143】
コンデンサ7は、直流電路6から取り出されるべき電力に対して直流電路6が有する電力が不足している場合には、放電によって直流電路6に電力を供給し、直流電路6が有する電力が余っている場合には、充電によって直流電路6から電力を吸収する。上記のように直流電路6における脈動成分のピークを抑制できることにより、直流電路6が有する電力に不足が生じたり余剰が生じたりすることを抑制できる。このことは、コンデンサ7が必要とする容量を小さくする観点から有利である。小容量のコンデンサ7を採用可能とすることは、エネルギーシステム1を安価に実現することに貢献しうる。
【0144】
[1-3.本開示から見出される構成及びその効果等]
以上のように、制御装置20は、第1出力回路3から系統電源8に向けて交流電力を出力させ、かつ、第2出力回路4から負荷10に向けて交流電力を出力させるという、同時出力を行うことができる。制御装置20は、この同時出力を行わせる場合に、
(a)第1出力回路3から出力される交流電圧の位相と第2出力回路4から出力される交流電圧の位相との間、
(b)第1出力回路3から出力される交流電流の位相と第2出力回路4から出力される交流電流の位相との間、又は、
(c)第1出力回路3から出力される交流電力の位相と第2出力回路4から出力される交流電力の位相との間、
に、所定位相差が存在する出力状態を実現することができる。この構成は、直流電路6における電力の脈動の大きさを抑制することに適している。具体的には、脈動のピークを抑制することに適している。なお、上記(c)の交流電力は、具体的には、皮相電力でありうる。
【0145】
第1出力回路3及び第2出力回路4は、それぞれ、単相インバータを含みうる。単相インバータを含む構成においては、上記の同時出力を行う場合に上記のように所定位相差を生じさせることにより、直流電路6の電力に、第1出力回路3に由来する商用2倍周波数の脈動成分と、第2出力回路4に由来する商用2倍周波数の脈動成分と、が重ね合わされて重畳されることを回避できる。このため、直流電路6における電力に重畳される商用2倍周波数の脈動成分の大きさを小さくすることができる。
【0146】
エネルギーシステム1は、直流電路6の直流電力を平滑化するコンデンサ7を含みうる。このようなコンデンサ7が存在する場合において、直流電路6における電力に重畳される商用2倍周波数の脈動成分の大きさを小さくしうることは、脈動成分を平滑化するためにコンデンサ7が必要とする容量を減少させうることを意味する。小容量のコンデンサ7を採用可能とすることは、エネルギーシステム1を安価に実現することに貢献しうる。
【0147】
上記の所定位相差は、非ゼロの位相差である。上記の所定位相差は、例えば、45度以上135度以下である。なお、位相Aと位相Bの位相差が45度以上135度以下という表現は、位相Aが位相Bに対して進んでいる場合も位相Aが位相Bに対して遅れている場合も包含することを意図した表現である。所定位相差は、65度以上115度以下であってもよく、85度以上95度以下であってもよい。
【0148】
上記の所定位相差が、
(a1)第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が進んだ進み位相差、
(b1)第1出力回路3から出力される交流電流の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電流の位相が進んだ進み位相差、又は、
(c1)第1出力回路3から出力される交流電力の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電力の位相が進んだ進み位相差、となる進み制御モードを、制御装置20は有していてもよい。
【0149】
上記の所定位相差が、
(a2)第1出力回路3から出力される交流電圧の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電圧の位相が遅れた遅れ位相差、
(b2)第1出力回路3から出力される交流電流の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電流の位相が遅れた遅れ位相差、又は、
(c2)第1出力回路3から出力される交流電力の位相に対して第2出力回路4から出力される交流電力の位相が遅れた遅れ位相差、となる遅れ制御モードを、制御装置20は有していてもよい。
【0150】
制御装置20は、進み制御モード及び遅れ制御モードの両方を有していてもよい。この場合、負荷10の力率等に応じて、進み制御モードと遅れ制御モードとを切り替え可能である。
【0151】
エネルギーシステム1は、エネルギーシステム1が単独運転することによって第1出力回路3からの交流電力の出力が停止されるように構成されうる。この停止が生じた場合、制御装置20は、
(d)停止時に第2出力回路4から出力されていた交流電圧の位相を初期値として、停止後に第2出力回路4から出力される交流電圧の位相を制御する、
(e)停止時に第2出力回路4から出力されていた交流電流の位相を初期値として、停止後に第2出力回路4から出力される交流電流の位相を制御する、又は、
(f)停止時に第2出力回路4から出力されていた交流電力の位相を初期値として、停止後に第2出力回路4から出力される交流電力の位相を制御しうる。この構成によれば、単独運転開始時点を跨ぐ過渡期において第2出力回路4からの交流出力の位相の連続性を確保しつつ、単独運転中に直流電路6から第2出力回路4への電力の取り出しを継続できる。交流出力の位相の連続性を確保することにより、過渡期において負荷10に与えられるストレスを緩和できる。単独運転中に直流電路6から第2出力回路4への電力の取り出しを継続することにより、直流電路6の入力電力が出力電力に対して過度に大きいというアンバランスな状態を回避できる。アンバランスな状態を回避できることは、直流電路6の直流電力を平滑化するコンデンサ7が存在する場合においては、小容量のコンデンサ7を採用可能とする。このことは、エネルギーシステム1を安価に実現することに貢献しうる。
【0152】
なお、上記の文脈において、「単独運転」は、具体的には、系統連系規程に基づいたものである。エネルギーシステム1の単独運転では、系統電源8から負荷9への電力供給がなされていない状態で、エネルギーシステム1から負荷9への電力供給がなされうる。上述の「単独運転」を「停電」に読み替えた技術も成立する。
【0153】
また、上記の文脈において、「停止時」は、厳密には、第1出力回路3からの交流電力の出力が停止される直前を指す。具体的には、この「直前」は、第1出力回路3からの交流電力の出力が停止される前の最新の制御周期を指す。一具体例では、この「直前」は、第1出力回路3からの交流電力の出力が停止される制御周期の1つ前の制御周期を指す。
【0154】
制御装置20は、系統電源8が復電した後に、
(g)第2出力回路4から出力される交流電圧の位相、
(h)第2出力回路4から出力される交流電流の位相、又は、
(i)第2出力回路4から出力される交流電力の位相、
と、系統電源8の交流電圧の位相と、の差分を上記所定位相差に近づけることを含む処理によって、上記出力状態に復帰させる。この構成は、系統電源8の復電後において、直流電路6における電力の脈動の大きさを抑制することに適している。なお、典型的には、系統電源8の交流電力の力率は1から極端に乖離した値をとらないことに留意されたい。
【0155】
制御装置20は、位相ウエイト期間において、上記差分を上記所定位相差へと連続的又は段階的に近づけうる。この構成は、第2出力回路4の制御の安定性を確保する観点から有利である。このことは、直流電路6における電力の脈動の大きさ、脈動の急激な変動等を抑制することに貢献しうる。
【0156】
第1出力回路3は、第1リレー3Cを含みうる。第1リレー3Cは、オン状態及びオフ状態を有する。オン状態では、エネルギーシステム1が系統電源8に並列させられる。オフ状態では、エネルギーシステム1が系統電源8から解列させられる。制御装置20は、第1条件及び第2条件を含む複数の条件が成立しているときに、第1リレー3Cをオフ状態からオン状態に切り替えうる。第1条件は、系統電源8が復電してから所定期間以上経過したという条件でありうる。第2条件は、上記出力状態が実現されているという条件でありうる。この構成は、復電後の一定期間はエネルギーシステムを系統電源に連系することを回避することによって系統連系規程を遵守し、かつ、系統電源8の復電後の過渡期間において直流電路6における電力の脈動の大きさを抑制することに適している。なお、典型的には、系統電源8の交流電力の力率は1から極端に乖離した値をとらないことに留意されたい。
【0157】
上記の複数の条件は、第1条件及び第2条件に加え、少なくとも1つの他の条件も含んでいてもよい。少なくとも1つの他の条件は、例えば、
図7のステップS31の条件及びステップS32の条件である。
【0158】
(上記で説明した技術に適用可能な技術)
実施の形態では、電圧センサ12H、電圧センサ14D及び電圧センサ16Dのそれぞれが、直流電路6の現在の電圧Vdc(t)を取得する。しかし、発電装置2、第1出力回路3及び第2出力回路4は、電圧Vdc(t)を取得する1つのセンサを共有していてもよい。電圧センサ12H、電圧センサ14D及び電圧センサ16Dのうちの1つの検出電圧を、上記の説明に係る検出電圧に置き換えてもよい。
【0159】
MPPT制御のアルゴリズムとして、電流変化幅を固定した山登り法を採用してもよく、電流変化幅が可変である山登り法を採用してもよい。MPPT制御のアルゴリズムとして、電圧変化幅を固定した山登り法を採用してもよく、電圧変化幅が可変である山登り法を採用してもよい。
【0160】
実施の形態では、発電機2Aが有する発電要素の数は、1つである。ただし、発電装置2が有する発電要素の数は、複数であってもよい。一例では、発電機2Aは太陽電池であり、太陽電池は複数の太陽光パネルを有する。複数の太陽光パネルが並列に接続された太陽電池をMPPT制御する場合には、電流変化幅及び/又は電圧変化幅が可変である山登り法を採用することにより、太陽電池の動作点が小さな電力ピーク点に収束することを回避できる。このことは、太陽電池を高い発電効率で動作させる観点から有利である。
【0161】
実施の形態の各種フローチャートは実施するための一例であり、他の処理流れであってもよく、例えば状態変数等の取得タイミング、周期、処理フローの順序変更等も可能である。例えば、
図5のステップS1及びステップS2の順序は反対であってもよく、ステップS3及びステップS4の順序は、反対であってもよい。また、第2リレー4Cの制御が行われるように、
図7の制御フローチャートを改変してもよい。例えば、ステップS37で第1リレー3Cをオン状態にするとともに第2リレー4Cをオン状態にする等の改変によって、第1出力回路3を系統電源8に接続するときに第2出力回路4を負荷10に接続するようにしてもよい。
【0162】
信号11Aを用いた第0変換機2Bの制御態様は、特に限定されない。図示の例に係る第0変換器2Bは、半導体スイッチ12Eのオフ期間において、発電機2Aから直流電路6へと電力を取り出す。一方、第1出力回路3の交流出力と第2出力回路4の交流出力との間に所定位相差が生じるように、半導体スイッチ3A1から3A4及び4A1から4A4がスイッチングする。第1出力回路3及び第2出力回路4によって直流電路6から取り出される合計電力は、上記の所定位相差に応じた波形を示し、周期的に変化する。一具体例では、上記オフ期間の中心時点と、上記合計電力がピークになる時点と、が概ね一致するように、半導体スイッチ12Eのスイッチングが信号11Aによって制御される。詳細には、上位制御装置5からの信号11A、11B及び11Cによって半導体スイッチ12E、3A1から3A4及び4A1から4A4のスイッチングのタイミングが制御され、上記の概ねの一致が実現される。このようにすれば、直流電路6の入力電力と出力電力とがアンバランスな状態を抑制し易い。このことは、コンデンサ7が放電によって直流電路6に供給する電力及び充電によって直流電路6から吸収する電力を低減し、コンデンサ7が必要とする容量を小さくし、エネルギーシステム1を安価に実現することに貢献しうる。
【0163】
上記の説明から理解されるように、第0変換機2Bのスイッチング制御によって、第0変換機2Bから直流電路6への直流電力供給が行われる第1期間と、直流電力供給が停止される第2期間と、が交互に現れうる。そして、第1出力回路3から出力される交流電力及び第2出力回路4から出力される交流電力の合計が第1期間においてピークとなるように、上記出力状態が実現されうる。このようにすれば、直流電路6の入力電力と出力電力とがアンバランスな状態を抑制し易い。具体的には、第1期間の中心時点と上記合計がピークになる時点とが概ね一致するように、上記出力状態が実現されうる。
【0164】
PLL回路によって系統位相を特定することは必須ではない。他の公知の方法により系統位相を特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示に係る技術は、太陽電池、風力発電、水力発電、燃料電池、蓄電池等の分散型電源を用いたエネルギーシステムに適用可能である。本開示に係る技術は、RE100(Renewable Energy 100%)等の環境を保護するための取り組み、電力の地産地消等に適用可能である。
【符号の説明】
【0166】
1 エネルギーシステム
2 発電装置
2A 発電機
2B 第0変換機
2C 第0制御器
3 第1出力回路
3A 第1変換機
3A1 半導体スイッチ
3A2 半導体スイッチ
3A3 半導体スイッチ
3A4 半導体スイッチ
3B 第1出力フィルタ
3C 第1リレー
3D 第1制御器
4 第2出力回路
4A 第2変換機
4A1 半導体スイッチ
4A2 半導体スイッチ
4A3 半導体スイッチ
4A4 半導体スイッチ
4B 第2出力フィルタ
4C 第2リレー
4D 第2制御器
5 上位制御器
6 直流電路
7 コンデンサ
8 系統電源
9 負荷
10 負荷
11A 信号
11B 信号
11C 信号
12A 第0入力端子
12B 第0入力端子
12C チョッパ回路
12D インダクタ
12E 半導体スイッチ
12F ダイオード
12G 電流センサ
12H 電圧センサ
12I コンデンサ
12J 第0出力端子
12K 第0出力端子
12X 電圧センサ
13S 制御信号
14A 第1入力端子
14B 第1入力端子
14C コンデンサ
14D 電圧センサ
14E 第1出力端子
14F 第1出力端子
14G 電圧センサ
14H 電流センサ
14I 接地端子
15S 制御信号
16A 第2入力端子
16B 第2入力端子
16C コンデンサ
16D 電圧センサ
16E 第2出力端子
16F 第2出力端子
16G 電圧センサ
16H 電流センサ
16I 接地端子
17S 制御信号
20 制御装置
30A グラフ
30B グラフ