(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012096
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】交絡装置、及び糸巻取機
(51)【国際特許分類】
D02J 1/00 20060101AFI20230118BHJP
D01D 7/00 20060101ALI20230118BHJP
D02G 1/02 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
D02J1/00 J
D01D7/00 Z
D02G1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115541
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000223274
【氏名又は名称】湯浅糸道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】水谷 光範
(72)【発明者】
【氏名】神野 亮
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA33
4L036PA42
4L036PA49
4L036UA21
4L045BA03
4L045DA09
4L045DA12
4L045DB14
4L045DC01
4L045DC21
(57)【要約】
【課題】複数の糸に交絡を付与する交絡装置において、複数のノズル間での流体の流速ばらつきを低減する。
【解決手段】交絡装置13は、配列方向に並べて配置された、複数の糸Yに圧縮空気をそれぞれ噴き付けるための複数のノズル66と、複数のノズル66に圧縮空気を供給するように構成された供給流路70と、を備える。供給流路70は、少なくとも配列方向に延びた流入路42と、圧縮空気の流動方向において流入路42と複数のノズル66との間に配置され、配列方向及び高さ方向に延びたチャンバー71と、流動方向において流入路42とチャンバー71との間に配置され、配列方向から高さ方向に向かって屈曲した屈曲流路43と、を有する。少なくとも屈曲流路43には、高さ方向に延び、且つ、流入路42が延在する延在方向から見たときに開口41f(屈曲流路の入口)と少なくとも部分的に重なるように配置された1以上の整流フィン72が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体によって複数の糸に交絡を付与する交絡装置であって、
所定の第1方向に並べて配置された、前記複数の糸に前記流体をそれぞれ噴き付けるための複数のノズルと、
前記複数のノズルに前記流体を供給するように構成された供給流路と、を備え、
前記供給流路は、
少なくとも前記第1方向に延びた、前記流体が流入する流入路と、
前記流体の流動方向において前記流入路と前記複数のノズルとの間に配置され、前記第1方向に延び、且つ、前記第1方向と交差する第2方向にも延びたチャンバーと、
前記流動方向において前記流入路と前記チャンバーとの間に配置され、前記第1方向から前記第2方向に向かって屈曲した屈曲流路と、を有し、
少なくとも前記屈曲流路には、
前記第2方向に延びるように配置され、且つ、前記流入路が延在する延在方向から見たときに前記屈曲流路の入口と少なくとも部分的に重なるように配置された1以上の整流フィンが設けられていることを特徴とする交絡装置。
【請求項2】
前記1以上の整流フィンとして、複数の整流フィンが前記第1方向に並べて配置され、
前記複数の整流フィンは、前記第1方向において前記流入路から遠いものほど、前記延在方向から見たときに、前記入口と重なる部分の面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の交絡装置。
【請求項3】
前記1以上の整流フィンとして、複数の整流フィンが前記第1方向に並べて配置され、
前記複数の整流フィンの、前記第2方向において前記複数のノズルに近い側の端は、前記第1方向に沿って並べて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の交絡装置。
【請求項4】
前記チャンバーは、
前記1以上の整流フィンが配置された領域である整流領域よりも前記第2方向において前記複数のノズルに近い側に配置された下流領域を有し、
前記下流領域は、前記第2方向において前記整流領域よりも長いことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の交絡装置。
【請求項5】
前記下流領域の前記第2方向における長さは、前記整流領域の長さの2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の交絡装置。
【請求項6】
前記チャンバーは、
前記1以上の整流フィンが配置された領域である整流領域の前記流動方向における下流側に配置された第1下流領域と、
前記第1下流領域の前記流動方向における下流側に配置され、前記第1方向及び前記第2方向の両方と直交する第3方向における長さが前記第1下流領域の前記第3方向における長さよりも短い第2下流領域と、を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の交絡装置。
【請求項7】
前記第2下流領域は、前記第2方向において前記第1下流領域よりも長いことを特徴とする請求項6に記載の交絡装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の交絡装置と、
前記交絡装置によって交絡を付与された複数の糸を巻き取って、複数のパッケージを同時に形成する巻取部と、を備えることを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交絡装置、及び、交絡装置を備える糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の糸に交絡を付与する交絡装置と、交絡装置によって交絡を付与された複数の糸を巻き取って複数のパッケージを同時に形成する糸巻取機と、が開示されている。交絡装置は、複数の糸にそれぞれ流体を噴きつけるための複数のノズルと、複数のノズルに流体を供給する供給流路を備える。供給流路は、少なくとも、複数のノズルが配列された方向に延びている。流体が供給流路に供給されると、供給流路を介して複数のノズルに流体が流れ込み、各ノズルから流体が噴出されて各糸に交絡が付与される。特許文献1には記載されていないが、例えば供給流路の入口部分が供給流路と略平行に延びるように配置されることにより、供給流路の奥側まで効率的に流体を到達させることが図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の糸間での糸品質のばらつきを低減するためには、複数の糸への交絡の付与効率をなるべく均一にすることが求められる。そのための対策の一つとして、ノズル間での流体の流速ばらつきを低減することが望まれる。特に近年、交絡装置において一度に交絡を付与可能な糸の数が増えており、ノズル間での流速ばらつきの低減はいっそう重要な課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、複数の糸に交絡を付与する交絡装置において、複数のノズル間での流体の流速ばらつきを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の交絡装置は、流体によって複数の糸に交絡を付与する交絡装置であって、所定の第1方向に並べて配置された、前記複数の糸に前記流体をそれぞれ噴き付けるための複数のノズルと、前記複数のノズルに前記流体を供給するように構成された供給流路と、を備え、前記供給流路は、少なくとも前記第1方向に延びた、前記流体が流入する流入路と、前記流体の流動方向において前記流入路と前記複数のノズルとの間に配置され、前記第1方向に延び、且つ、前記第1方向と交差する第2方向にも延びたチャンバーと、前記流動方向において前記流入路と前記チャンバーとの間に配置され、前記第1方向から前記第2方向に向かって屈曲した屈曲流路と、を有し、少なくとも前記屈曲流路には、前記第2方向に延びるように配置され、且つ、前記流入路が延在する延在方向から見たときに前記屈曲流路の入口と少なくとも部分的に重なるように配置された1以上の整流フィンが設けられていることを特徴とする。
【0007】
供給流路に屈曲流路が設けられた構成においては、例えば高圧の流体が供給流路に供給されたとき、第1方向において、屈曲流路のうち入口から遠い側の端の位置まで流体が大量に到達しやすくなる。このため、第1方向において、屈曲流路のうち入口から遠い側の端部における流速が大きくなり、入口から近い位置における流速との差が大きくなってしまうおそれがある。
【0008】
本発明では、供給流路に流入した流体は、流入路において少なくとも第1方向に流れた後、屈曲流路において、流れる方向を第1方向の成分を有する方向から少なくとも第2方向の成分を有する方向に変えられる。その際に、第1方向に流れる流体の一部を1以上の整流フィンによって受け止めることができる。これにより、屈曲流路において、流体が流入路から遠い側の空間に大量に流れ込むことを抑制しつつ、流体を整流することができる。このため、整流フィンが設けられていない場合と比べて、チャンバー内を流れる流体の流速を、第1方向において均一化することができる。したがって、複数のノズル間での流速ばらつきを低減することができる。
【0009】
第2の発明の交絡装置は、前記第1の発明において、前記1以上の整流フィンとして、複数の整流フィンが前記第1方向に並べて配置され、前記複数の整流フィンは、前記第1方向において前記入口から遠いものほど、前記延在方向から見たときに、前記入口と重なる部分の面積が大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明では、第1方向において、屈曲流路のうち入口から遠い側の端部に流体が大量に到達することを効果的に抑制できる。また、本発明では、流体を各整流フィンによって少しずつ受け止めることができる。このため、屈曲流路内で、第1方向において流体を概ね均等に振り分けることができる。したがって、屈曲流路を通ってチャンバーに供給された流体の第1方向における流速ばらつきを効果的に低減できる。
【0011】
第3の発明の交絡装置は、前記第1又は第2の発明において、前記1以上の整流フィンとして、複数の整流フィンが前記第1方向に並べて配置され、前記複数の整流フィンの、前記第2方向において前記複数のノズルに近い側の端は、前記第1方向に沿って並べて配置されていることを特徴とする。
【0012】
第1方向において互いに隣接する2つの整流フィンの間(又は、屈曲流路を形成する壁と整流フィンとの間)に形成された空間の流動方向における下流側の端を、仮に出口と呼ぶ。本発明では、複数の出口から複数のノズルまでの第2方向における距離を、第1方向における位置に応じて変化させず、略一定にすることができる。このため、例えば第1方向における位置によって当該距離が異なる場合と比べて、整流フィンによって第1方向において低減された流速ばらつきがチャンバー内において再び増大するリスクを低減できる。
【0013】
第4の発明の交絡装置は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記チャンバーは、前記1以上の整流フィンが配置された領域である整流領域よりも前記第2方向において前記複数のノズルに近い側に配置された下流領域を有し、前記下流領域は、前記第2方向において前記整流領域よりも長いことを特徴とする。
【0014】
本発明では、整流フィンによって整流された後の流体が、複数のノズルに到達するまでの間に、第2方向において長い距離移動する。このため、整流フィンによって整流された後の流体は、互いに隣接する分子同士がぶつかり合い、第2方向に沿って概ね真っ直ぐ進むように促されつつ移動する。したがって、複数のノズル間での流速ばらつきをさらに効果的に低減できる。
【0015】
第5の発明の交絡装置は、前記第4の発明において、前記下流領域の前記第2方向における長さは、前記整流領域の長さの2倍以上であることを特徴とする。
【0016】
下流領域の第2方向における長さが整流領域の長さの2倍以上であるときに、流速ばらつきが特に顕著に低減することを本願発明者は見出した。
【0017】
第6の発明の交絡装置は、前記第1~第5のいずれかの発明において、前記チャンバーは、前記1以上の整流フィンが配置された領域である整流領域の前記流動方向における下流側に配置された第1下流領域と、前記第1下流領域の前記流動方向における下流側に配置され、前記第1方向及び前記第2方向の両方と直交する第3方向における長さが前記第1下流領域の前記第3方向における長さよりも短い第2下流領域と、を有することを特徴とする。
【0018】
一般的に、流体の流量が同じであれば、流路の断面積が大きいところでは流速が比較的遅く、断面積が小さいところでは流速が比較的速い。つまり、断面積の小さいノズルにおいては流速が速くなる。ここで、ノズルの流動方向におけるすぐ上流側で流路の断面積が急激に小さくなると、流速が急激に速くなり、ノズルの近傍において流体の流れが乱れやすくなるおそれがある。本発明では、第2下流領域における流路の断面積が第1下流領域における流路の断面積よりも小さい。すなわち、チャンバーにおいて、流動方向における下流側へ向かうにつれて、流路の断面積を徐々に(少なくとも段階的に)小さくすることができる。これにより、流体の流速を少なくとも段階的に速めることができる。このため、ノズルの近傍において流速が急激に速くなることを抑制できる。したがって、ノズルの近傍において流体の流れが乱れることを抑制できる。
【0019】
第7の発明の交絡装置は、前記第6の発明において、前記第2下流領域は、前記第2方向において前記第1下流領域よりも長いことを特徴とする。
【0020】
断面積の大きい第1下流領域から断面積の比較的小さい第2下流領域に流体が移動する際に、比較的狭い流路に多くの圧縮空気が入り込むことにより、気流が多少乱れるおそれがある。そこで、下流領域を高さ方向において長くすることにより、圧縮空気を流動方向における下流側へ流しつつ気流の乱れを効果的に緩和できる。したがって、流速ばらつきをさらに低減できる。
【0021】
第8の発明の糸巻取機は、前記第1~第7のいずれかの発明の交絡装置と、前記交絡装置によって交絡を付与された複数の糸を巻き取って、複数のパッケージを同時に形成する巻取部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明では、交絡を付与される効率が複数の糸の間でばらつくことを低減できる。したがって、同時に形成される複数のパッケージ間の品質ばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る交絡装置を備える紡糸引取機の側面図である。
【
図4】交絡装置の糸走行方向に直交する断面図である。
【
図5】(a)は、
図4のV(a)矢視図であり、(b)は、
図4のV(b)-V (b)線断面図である。
【
図7】
図4の拡大図であり、複数の交絡片及びその近傍部分の断面図である。
【
図8】流体の平均流速及びノズル間の流速ばらつきの解析結果を示す表である。
【
図9】(a)、(b)は、
図8に示す解析結果の一部を示す表である。
【
図10】(a)、(b)は、
図8に示す解析結果の一部を示す表である。
【
図11】
図8に示す解析結果の一部を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について説明する。説明の便宜上、
図1に示す方向を上下方向及び前後方向とする。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。前後方向は、上下方向と直交する、複数のボビンB(後述)が並べて配置される方向である。上下方向及び前後方向の両方と直交する方向(紙面垂直方向)を左右方向とする。糸Y(後述)が走行する方向を糸走行方向とする。
【0025】
(紡糸引取機)
本実施形態に係る紡糸引取機1(本発明の糸巻取機)の概略について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る交絡装置13(後述)を備える紡糸引取機1の側面図である。紡糸引取機1は、紡糸装置2から紡出される複数(例えば、本実施形態では32本)の糸Yを引き取って複数のボビンBにそれぞれ巻き取り、複数のパッケージPを同時に形成するように構成されている。各糸Yは、複数のフィラメント(不図示)を有するマルチフィラメント糸である。各フィラメントは、例えばポリエステルからなる合成繊維である。
【0026】
紡糸引取機1は、例えば、引取部3と、2つの巻取部4(巻取部4A、4B。
図1においては、1つの巻取部4Aのみ図示されている)とを備える。引取部3は、紡糸装置2から紡出される複数の(本実施形態では32本の)糸Yを引き取るように構成されている。引取部3は、例えば、延伸装置10と、第1ゴデットローラ11と、第2ゴデットローラ12と、交絡装置13とを有する。延伸装置10は、紡糸装置2の下方に配置されている。延伸装置10は、不図示の複数の延伸ローラを有し、糸Yを延伸するように構成されている。第1ゴデットローラ11は、回転軸方向が左右方向と略平行なローラである。第1ゴデットローラ11は、延伸装置10に対して糸走行方向下流側に配置されている。第1ゴデットローラ11は、不図示のモータによって回転駆動される。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、左右方向に並べて第1ゴデットローラ11に巻きかけられた状態で第2ゴデットローラ12へ送られる。第2ゴデットローラ12は、回転軸方向が左右方向と略平行なローラである。第2ゴデットローラ12は、第1ゴデットローラ11の上方且つ後方に配置されている。第2ゴデットローラ12は、不図示のモータによって回転駆動される。複数の糸Yの各々は、第1ゴデットローラ11から第2ゴデットローラ12に送られ、さらに、2つの巻取部4のいずれかへ送られる。複数の糸Yのうち半分は巻取部4Aへ送られ、残り半分は巻取部4Bへ送られる。第1ゴデットローラ11から第2ゴデットローラ12へ走行する糸Yが通る糸道は、斜め上後方へ延びている。当該糸道は、上下方向及び前後方向の両方の成分を有し、左右方向と略直交している。交絡装置13は、例えば、糸走行方向において延伸装置10と第1ゴデットローラ11との間に配置されている。或いは、交絡装置13は、糸走行方向において第1ゴデットローラ11と第2ゴデットローラ12との間に配置されていても良い。或いは、2つの交絡装置13が、糸走行方向において延伸装置10と第1ゴデットローラ11との間、及び、糸走行方向において第1ゴデットローラ11と第2ゴデットローラ12との間に1つずつ配置されていても良い。交絡装置13は、複数の糸Yの各々に交絡を付与するように構成されている(詳細は後述)。
【0027】
2つの巻取部4(巻取部4A、4B)の各々は、複数の糸Yを複数のボビンBに巻き取って、複数のパッケージPを同時に形成するように構成されている。例えば本実施形態では、巻取部4A、4Bの各々が、16本の糸Yを巻き取るように構成されている。巻取部4A、4Bは、引取部3の下側に配置されている。巻取部4A、4Bは、左右方向に並べて配置されている。
図1においては、巻取部4Aのみが図示されている。巻取部4Bは、
図1において、巻取部4Aの紙面奥側に配置されている(より詳細には、例えば特開2020-20069号公報を参照されたい)。巻取部4Bは、巻取部4Aと同一の構造を有していても良い。或いは、巻取部4Bは、上下方向及び前後方向の両方に平行な平面を対称面として、巻取部4Aと面対称に構成されていても良い。各巻取部4は、複数の支点ガイド21と、複数のトラバースガイド22と、ターレット23と、2本のボビンホルダ24と、コンタクトローラ25とを備える。
【0028】
複数の支点ガイド21は、糸Yが各トラバースガイド22によって綾振りされる際の支点となるガイドである。複数の支点ガイド21は、複数の糸Yに対応してそれぞれ設けられている。複数の支点ガイド21は、前後方向に配列されている。複数のトラバースガイド22は、複数の支点ガイド21と同様、複数の糸Yに対応してそれぞれ設けられている。複数のトラバースガイド22は、前後方向に並べて配置されている。トラバースガイド22は、例えば不図示のトラバースモータによって駆動されることにより、糸Yを前後方向に綾振りするように構成されている。ターレット23は、回転軸方向が前後方向と略平行な円板状の部材である。ターレット23は、不図示のターレットモータによって回転駆動される。2本のボビンホルダ24の各々は、回転軸方向が前後方向と略平行であり、ターレット23の上端部及び下端部に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ24には、複数の糸Yにそれぞれ対応する複数のボビンBが前後方向に並べて装着されている。複数のボビンBは、ボビンホルダ24に回転可能に支持されている。2つのボビンホルダ24の各々は、不図示の巻取モータによって個別に回転駆動される。コンタクトローラ25は、回転軸方向が前後方向と略平行なローラであり、上側のボビンホルダ24のすぐ上方に配置されている。コンタクトローラ25は、上側のボビンホルダ24に支持された複数のパッケージPの表面に接触することで、巻取中のパッケージPの表面に接圧を付与して、パッケージPの形状を整える。
【0029】
以上の構成を有する2つの巻取部4の各々において、上側のボビンホルダ24が回転駆動されると、トラバースガイド22によって綾振りされた糸YがボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。また、パッケージPが満巻きになった場合、ターレット23が回転させられることにより、2本のボビンホルダ24の上下の位置が入れ換わる。これにより、下側に位置していたボビンホルダ24が上側に移動し、このボビンホルダ24に装着されたボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができる。また、満巻になったパッケージPが装着されたボビンホルダ24は下側に移動する。満巻になったパッケージPは、例えば不図示のパッケージ回収装置によって回収される。
【0030】
(交絡装置)
次に、交絡装置13の構成について
図2~
図7を参照しつつ説明する。
図2は、交絡装置13全体の斜視図である。
図3は、交絡装置13を糸走行方向から見た図である。ここで、交絡装置13における糸走行方向(本発明の第3方向)は、後述する複数の交絡片63の各々が延びている方向と略平行な方向である。
図4は、交絡装置13の糸走行方向に直交する断面図である。
図5(a)は、
図4のV(a)矢視図である。
図5(b)は、
図4のV(b)-V(b)線断面図である。
図6は、後述する交絡付与ユニット33の斜視図である。
図7は、複数の交絡片63及びその近傍部分の、糸走行方向に直交する断面図である。また、後述するように、複数の交絡片63が並べて配置された方向を配列方向(本発明の第1方向)とする。また、後述するように、糸走行方向及び配列方向の両方と直交する方向を高さ方向(本発明の第2方向)とする。説明の便宜上、糸走行方向、配列方向及び高さ方向の各々について、「一方側」及び「他方側」は、
図2に示すように定義される。
【0031】
交絡装置13は、例えば圧縮空気(本発明の流体)によって、複数(例えば、本実施形態では32本)の糸Yの各々に交絡を付与するように構成されている。交絡を付与するとは、大まかには、各糸Yを構成する複数のフィラメント(不図示)が互いに離れ過ぎてしまうことを抑制するために、複数のフィラメントを互いに絡み合わせることをいう。
【0032】
図2~
図5(b)に示すように、交絡装置13は、例えば、流体供給部材31と、接続部材32と、交絡付与ユニット33とを有する。流体供給部材31、接続部材32及び交絡付与ユニット33は、糸走行方向と直交する所定の高さ方向において、この順に並べて配置されている。以下、高さ方向において、流体供給部材31側を一方側と呼ぶ。高さ方向において、交絡付与ユニット33側を他方側と呼ぶ。大まかには、供給源100(
図3参照)から流体供給部材31に流れ込んだ圧縮空気が、接続部材32を介して交絡付与ユニット33に供給される。これにより、交絡付与ユニット33に設けられた複数のノズル66(
図4等参照)からそれぞれ噴出された圧縮空気が、複数の糸Yの各々に噴き付けられる。その結果、各糸Yに交絡が付与される。別の言い方をすれば、交絡装置13は、複数の糸Yに圧縮空気をそれぞれ噴き付けるための複数のノズル66と、複数のノズル66に圧縮空気を供給するように構成された供給流路70とを備える(
図4参照)。本実施形態では、供給流路70は、流体供給部材31と、接続部材32と、交絡付与ユニット33の一部と、によって構成されている。供給流路70の詳細については後述する。
【0033】
流体供給部材31は、供給源100から供給された圧縮空気を、圧縮空気の流動方向(以下、単に流動方向)において下流側(交絡付与ユニット33側)へ送るように構成されている。流体供給部材31の高さ方向における他方側の端部は、例えば複数のねじ(不図示)により、接続部材32の高さ方向における一方側の端部に固定されている。
【0034】
図2~
図4に示すように、流体供給部材31は、本体41と、流入路42とを有する。本体41は、略直方体状の部分である。本体41は、高さ方向と略垂直な底面41a(
図3~
図5(b)参照)と、内側面41b、41c(
図3、
図4参照)と、内側面41d、41e(
図5(a)、(b)参照)とを有する。底面41aは、高さ方向と略垂直に設けられ、本体41の高さ方向における一方側の端部に配置された面である。内側面41bは、高さ方向に延び、本体41の配列方向における一方側端部に配置された面である。内側面41cは、高さ方向に延び、本体41の配列方向における他方側端部に配置された面である。内側面41bと内側面41cは、配列方向において向かい合っている。内側面41bが形成された壁の高さ方向における一方側の端部には、例えば略円状の開口41f(
図3~
図5(b)参照)が形成されている。本体41の配列方向における一方側端部は、開口41fを介して流入路42と接続されている。開口41fは、後述する屈曲流路43の入口である。内側面41dは、高さ方向に延び、本体41の糸走行方向における一方側端部に配置された面である。内側面41eは、高さ方向に延び、本体41の糸走行方向における他方側端部に配置された面である。内側面41dと内側面41eは、糸走行方向において向かい合っている。
【0035】
図4に示すように、本体41は、高さ方向において開口41fの他方側の端の位置よりも一方側に配置された屈曲流路43と、高さ方向において開口41fの他方側の端の位置よりも他方側に配置されたチャンバー形成流路44とを有する。屈曲流路43は、配列方向から高さ方向へ屈曲した部分である。屈曲流路43は、流動方向において流入路42とチャンバー形成流路44との間に配置されている。屈曲流路43は、配列方向において流入路42の他方側に配置され、且つ、高さ方向においてチャンバー形成流路44の一方側に配置されている。より詳細には、糸走行方向から見たときに、開口41fの高さ方向における他方側の端を通り、且つ、配列方向に延びた仮想的な直線を直線101とする(
図4参照)。屈曲流路43は、高さ方向において直線101よりも一方側に配置された部分である。チャンバー形成流路44は、高さ方向において屈曲流路43の他方側(つまり、直線101よりも他方側)に配置され、高さ方向に延びた部分である。チャンバー形成流路44は、後述するチャンバー71の一部を構成する。チャンバー形成流路44の高さ方向における他方側の端は、後述する接続流路45の高さ方向における一方側の端と接続されている。
【0036】
流入路42は、流動方向において本体41の上流側に配置された部分である。流入路42は、例えば、配列方向に沿って延びるように配置されている。つまり、本実施形態では、配列方向が、流入路42の延在する延在方向である。流入路42は、配列方向において本体41の一方側に配置されている。流入路42は、開口41fを介して屈曲流路43と接続されている。流入路42には、例えば供給源100(
図3参照)から延びたホース(不図示)の先端部が取り付けられる。
【0037】
接続部材32は、例えば略直方体状の部材である。接続部材32は、流体供給部材31と交絡付与ユニット33とを接続するように構成されている。接続部材32は、流動方向において流体供給部材31の下流側且つ交絡付与ユニット33の上流側に配置されている。接続部材32の高さ方向における一方側の端部は、流体供給部材31の本体41の高さ方向における他方側の端部に固定されている。接続部材32の高さ方向における他方側の端部は、例えば複数のねじ(不図示)により、交絡付与ユニット33の高さ方向における一方側の端部に固定されている。接続部材32は、高さ方向に貫通した接続流路45を有する。接続流路45は、後述するチャンバー71の一部を構成する。本実施形態では、接続流路45の高さ方向に直交する断面積は、例えば、チャンバー形成流路44の高さ方向に直交する断面積と略等しい。
【0038】
交絡付与ユニット33は、供給源100から供給された圧縮空気を複数の糸Yに噴き付けることにより、複数の糸Yに交絡を付与するように構成されている。
図6に示すように、交絡付与ユニット33は、ベース部材51と、交絡部52と、2つのガイド支持部材53、54と、2つの規制ガイド部材55、56とを有する。
【0039】
ベース部材51は、概ね直方体状の部材である。ベース部材51の高さ方向における一方側の端部は、接続部材32の高さ方向における他方側の端部に固定されている。ベース部材51には、主管流路61及び複数の分岐流路62が形成されている。主管流路61及び複数の分岐流路62は、圧縮空気を高さ方向における他方側へ流すように構成されている。主管流路61は、ベース部材51の高さ方向における一方側の端から他方側部分にかけて形成された流路である。主管流路61は、配列方向において、後述する複数のノズル66のうち最も一方側のノズル66が配置された位置から、最も他方のノズル66が配置された位置に亘って延びている。主管流路61は、後述するチャンバー71の一部を形成する。主管流路61のさらなる詳細については後述する。複数の分岐流路62は、主管流路61から枝分かれした流路である。複数の分岐流路62は、ベース部材51の高さ方向における他方側端部に配置され、且つ、配列方向に並べて配置されている。複数の分岐流路62の各々は、例えば、後述する複数のノズル66のうち2つのノズル66と接続されている。
【0040】
図6及び
図7に示すように、交絡部52は、配列方向に並べて配置された複数(本実施形態では16個)の交絡片63を有する。複数の交絡片63の各々は、糸走行方向に延びている。複数の交絡片63は、ベース部材51の高さ方向における他方側の端面に固定されている。複数の交絡片63の各々には、例えば、
図7に示すように、2つの糸走行空間64(糸走行空間64a、64b)と、2つの糸挿入スリット65(糸挿入スリット65a、65b)と、2つのノズル66(ノズル66a、66b)とが形成されている。2つの糸走行空間64は、交絡片63を糸走行方向に貫通している。各糸走行空間64内を1本の糸Yが走行する。2つの糸走行空間64は、配列方向における一方側に配置された糸走行空間64aと、配列方向における他方側に配置された糸走行空間64bとを含む。糸挿入スリット65aは、例えば、糸走行空間64aの配列方向における一方側に配置されている。糸挿入スリット65aは、糸走行空間64aに沿って糸走行方向に延びている。糸挿入スリット65bは、例えば、糸走行空間64bの配列方向における他方側に配置されている。糸挿入スリット65bは、糸走行空間64bに沿って糸走行方向に延びている。ノズル66は、分岐流路62の高さ方向における他方側、且つ、対応する糸走行空間64の高さ方向における一方側に配置されている。言い換えれば、ノズル66は、分岐流路62の流動方向下流側、且つ、対応する糸走行空間64の流動方向上流側に配置されている。本実施形態では、ノズル66は、少なくとも高さ方向に延びている。ノズル66は、例えば、糸走行方向に延びる成分を有していても良い(つまり、高さ方向に対して斜めに傾いていても良い)。また、各交絡片63は、必ずしも2つの糸Yに交絡を付与するように構成されていなくても良い。例えば、交絡部52は、各々が対応する糸Yに交絡を付与するように構成された、32個の交絡片(不図示)を有していても良い。
【0041】
ガイド支持部材53は、規制ガイド部材55を支持する部材である。
図6に示すように、ガイド支持部材53は、概ねU字状の板部材である。ガイド支持部材53は、ベース部材51の糸走行方向における一方側の側面に固定されている。ガイド支持部材54は、規制ガイド部材56を支持する部材である。ガイド支持部材54は、ガイド支持部材53と同様、概ねU字状の板部材である。ガイド支持部材54は、ベース部材51の糸走行方向における他方側の側面に固定されている。なお、ベース部材51及びガイド支持部材53、54の代わりに、1つのベース部材(不図示)が設けられていても良い。当該ベース部材(不図示)において、ベース部材51の機能を有するベース部(不図示)と、ガイド支持部材53、54として機能するガイド支持部(不図示)とが一体的に形成されていても良い。
【0042】
規制ガイド部材55、56は、複数の糸Yの配列方向における移動を規制する部材である。
図6に示すように、規制ガイド部材55は、ガイド支持部材53に固定されている。また、規制ガイド部材56は、ガイド支持部材54に固定されている。規制ガイド部材55、56の各々は、配列方向に並べて形成された複数のガイド溝57を有する。複数のガイド溝57の各々に糸Yが挿入される。
【0043】
以上の構成を有する交絡装置13に供給された圧縮空気は、流動方向における上流側から順に、流入路42、屈曲流路43、チャンバー形成流路44、接続流路45、主管流路61及び分岐流路62を通って複数のノズル66へ流れ込む。そして、複数のノズル66の各々から、対応する糸走行空間64内に圧縮空気が噴射される。これにより、糸走行空間64内を走行している糸Yに交絡が付与される。
【0044】
ここで、複数の糸Y間での糸品質のばらつきを低減するためには、複数の糸Yへの交絡の付与効率をなるべく均一にすることが求められる。そのための対策の一つとして、ノズル66間での圧縮空気の流速ばらつきを低減することが望まれる。そこで、圧縮空気の流速ばらつきを低減するため、交絡装置13は以下の構成を有する。
【0045】
(交絡装置の詳細構成)
交絡装置13の詳細構成について、
図4~
図5(b)を参照しつつ説明する。まず、上述した供給流路70についてあらためて説明する。供給流路70は、流動方向における上流側から順に、上述した流入路42と、上述した屈曲流路43と、チャンバー71と、を有する。チャンバー71は、例えば、流体供給部材31に形成されたチャンバー形成流路44と、接続部材32に形成された接続流路45と、交絡付与ユニット33のベース部材51に形成された主管流路61と、によって構成されている。チャンバー71は、高さ方向において、チャンバー形成流路44の一方側の端の位置から主管流路61の他方側の端の位置に亘って延びている。また、本実施形態では、チャンバー71は、配列方向において、最も一方側のノズル66が配置された位置から、最も他方側のノズル66が配置された位置に亘って延びている。
【0046】
少なくとも屈曲流路43には、1以上の整流フィン72が配置されている。本実施形態では、複数の整流フィン72が設けられている。複数の整流フィン72の各々は、例えば高さ方向に沿って延びている。複数の整流フィン72は、例えば、配列方向に略等間隔に並べて配置されている。複数の整流フィン72は、配列方向(流入路42の延在方向)から見たときに、開口41fと部分的に重なっている(
図5(a)、(b)参照)。配列方向から見たときに、複数の整流フィン72と開口41fとが重なる部分(以下、重なり部分)の高さ方向における長さは、整流フィン72間で異なっていると好ましい。より具体的には、配列方向において開口41fから遠い整流フィン72ほど、重なり部分が高さ方向において長い。言い換えると、複数の整流フィン72は、配列方向において流入路42から遠いものほど、配列方向から見たときに、重なり部分の面積が大きい(
図5(a)、(b)参照)。さらに言い換えると、複数の整流フィン72は、配列方向において前記流入路42から遠いものほど、高さ方向において底面41aに近い位置まで延びている。配列方向において開口41fに最も近い整流フィン72(整流フィン72L)と開口41fとの重なり部分の高さ方向における長さが、最も短い。配列方向において開口41fから最も遠い整流フィン72(整流フィン72R)と開口41fとの重なり部分の高さ方向における長さが、最も長い。
【0047】
高さ方向において、複数の整流フィン72の他方側(複数のノズル66に近い側)の端の位置は、略同じであると好ましい(
図4参照)。すなわち、複数の整流フィン72の高さ方向における他方側の端が、配列方向に沿って並べて配置されていると良い。言い換えると、配列方向において互いに隣接する2つの整流フィン72の間(又は、内側面41bと整流フィン72Lとの間若しくは内側面41cと整流フィン72Rとの間)に形成された流路の、高さ方向における他方側の端部を出口73(
図4参照)とする。このとき、複数の出口73の高さ方向における位置が略同じであると良い。
【0048】
供給流路70のうち、整流フィン72が配置された領域を、以下、整流領域RA(
図4、
図5(a)、(b)参照)と呼ぶ。具体的には、整流領域RAは、配列方向から見たときに整流フィン72が配置されている領域である(
図5(a)、(b)参照)。さらに詳細には、糸走行方向から見たとき、整流フィン72Rの高さ方向における一方側の端を通り、且つ、配列方向と平行な仮想直線を直線102(
図4参照)とする。また、糸走行方向から見たとき、複数の整流フィン72の高さ方向における他方側の端を通り、且つ、配列方向と平行な仮想直線を直線103(
図4参照)とする。この場合に、糸走行方向から見たとき、直線102、103と、内側面41cと、内側面41b及びその高さ方向一方側へ延びる仮想的な延長面と、によって囲まれた領域が整流領域RAである。
【0049】
整流領域RAは、屈曲流路43及びチャンバー71の両方へ突き出すように配置されていると好ましい。つまり、高さ方向において、複数の整流フィン72の他方側の端は、屈曲流路43よりも高さ方向における他方側に(すなわち、チャンバー71内に)ある程度突出していると良い。このとき、整流領域RAは、屈曲流路43側(上述した直線101よりも高さ方向における一方側)の第1整流領域RA1と、チャンバー71側(直線101よりも高さ方向における他方側)の第2整流領域RA2とを有する。
【0050】
一般的に、高圧の圧縮空気が供給されると、屈曲流路43のうち、流入路42の延在方向(本実施形態では配列方向)において流入路42から遠い側の端部に圧縮空気が大量に到達しやすい。逆に言えば、圧縮空気は、屈曲流路43のうち、延在方向において流入路42から近い側の空間を単に通過してしまいやすい。このため、延在方向において流入路42から近い側の空間には圧縮空気が比較的供給されにくくなりうる。したがって、配列方向において、複数のノズル66間で圧縮空気の流速にばらつきが生じやすくなるおそれがある。この点、本実施形態では、上述したように、少なくとも屈曲流路43に複数の整流フィン72が設けられている。これにより、延在方向において、屈曲流路43のうち流入路42から遠い側の端部に圧縮空気が大量に到達することを抑制できる。また、本実施形態では、複数の整流フィン72は、延在方向において流入路42から遠いものほど、延在方向から見たときに、開口41fと重なる部分の面積が大きい(
図5(a)、(b)参照)。これにより、圧縮空気を各整流フィン72によって少しずつ受け止めることができる。このため、屈曲流路43内で、配列方向において圧縮空気を概ね均等に振り分けることができる。このように概ね均等に振り分けられた圧縮空気が、チャンバー71へ送られる。また、本実施形態では、複数の出口73と複数のノズル66との高さ方向における距離が、配列方向における位置に応じて変化せず、略一定になっている。このため、例えば配列方向における位置によって当該距離が異なる場合と比べて、整流フィン72によって配列方向において低減された流速ばらつきが流動方向における下流側において再び増大するリスクを回避できる。
【0051】
(チャンバー)
次に、チャンバー71の構造について説明する。チャンバー71は、複数の整流フィン72によって整流された後の圧縮空気を、高さ方向における他方側へスムーズに流すための空間である。チャンバー71は、例えば、上述したように、チャンバー形成流路44と、接続流路45と、主管流路61とによって構成されている。チャンバー71は、上述した第2整流領域RA2(整流フィン72の高さ方向における他方側部分が配置された領域)と、第2整流領域RA2の高さ方向における他方側に配置された下流領域DAとを有する。チャンバー71全体の高さ方向における長さは、例えばLである。第2整流領域RA2の高さ方向における長さは、例えばLr2である。下流領域DAの高さ方向における長さは、例えばLdである。
【0052】
さらに、下流領域DAは、例えば、第1下流領域DA1と、第2下流領域DA2とを有する(
図4及び
図5(a)参照)。第1下流領域DA1は、第2整流領域RA2の高さ方向における他方側に配置された、概ね直方体状の領域である。第1下流領域DA1は、例えば、チャンバー形成流路44のうち整流フィン72が配置されていない領域(直線103よりも高さ方向における他方側の領域)と、接続流路45と、第1主管流路61aとによって構成されている。第1下流領域DA1には部材は配置されていない。第2下流領域DA2は、第1下流領域DA1の高さ方向における他方側に配置された、概ね直方体状の領域である。第2下流領域DA2は、例えば第2主管流路61bによって構成されている。第2下流領域DA2には部材は配置されていない。
図5(a)に示すように、第2下流領域DA2の糸走行方向における長さは、第1下流領域DA1の糸走行方向における長さよりも短い。言い換えると、第2下流領域DA2は、糸走行方向において第1下流領域DA1よりも幅が狭くなっている。本実施形態では、上述した主管流路61において、第1下流領域DA1の高さ方向における一部と、第2下流領域DA2とが設けられている。つまり、主管流路61は、第1下流領域DA1の一部を構成する第1主管流路61aと、第2下流領域DA2を構成する第2主管流路61bとを有する(
図4及び
図5(a)参照)。これにより、主管流路61(チャンバー71)において、流動方向における下流側へ向かうにつれて流路の断面積が段階的に小さくなる。一般的に、流体の流量が同じであれば、流路の断面積が大きいところでは流速が比較的遅く、断面積が小さいところでは流速が比較的速い。したがって、流体の流速を段階的に速めることができる。このため、ノズル66の近傍において流速が急激に速くなることを抑制できる。したがって、ノズル66の近傍において流体の流れが乱れることを抑制できる。
【0053】
ここで、本願発明者は、チャンバー71に関する各種領域の、高さ方向における長さが整流効果に影響しうるかどうかに着目した。例えば、
図4に示すように、チャンバー71全体の高さ方向における長さをLとする。下流領域DAの高さ方向における長さをLdとする。第1下流領域DA1の高さ方向における長さをLd1とする。第2下流領域DA2の高さ方向における長さをLd2とする。第2整流領域RA2の高さ方向における長さをLr2とする。これらの条件(L、Ld、Ld1、Ld2及びLr2)のうち少なくとも1つの条件を変更したときに、圧縮空気の流速及び複数のノズル66間での流速ばらつきがどのように変化するか検討した。本願発明者は、以下に説明する流体解析により、これらの条件が流速及び流速ばらつきに影響を及ぼすことを見出した。
【0054】
(解析条件)
本願発明者が行った流体解析について、
図8~
図11の表を参照しつつ説明する。まず、
図8に示す実施例1~9及び比較例1、2の共通の条件は、以下のとおりである。すなわち、流体の種類を仮に空気(圧縮空気)とした。圧縮空気の圧力を仮に0.35MPaとした。流入路42の内径(開口41fの直径)を仮に25mmとした。開口41fの直径と、屈曲流路43の高さ方向における長さとが、仮に等しいものとした。屈曲流路43及びチャンバー71の配列方向における長さ(内側面41bから内側面41cまでの配列方向における距離)を仮に130mmとした。第1下流領域DA1の糸走行方向における長さを仮に28mmとした。第2下流領域DA2の糸走行方向における長さを仮に10mmとした。整流フィン72の数を仮に11枚とした。整流フィン72は、配列方向に等間隔で並べて配置されているものとした。整流フィン72Lの、直線101から高さ方向における一方側への突き出し長さを仮に3mmとした。整流フィン72Rの、直線101から高さ方向における一方側への突き出し長さを仮に24mmとした。つまり、整流領域RAの高さ方向における長さをLr(
図4参照)としたとき、Lrの値はLr2+24mmである。上記突き出し長さは、配列方向における他方側に配置された整流フィン72ほど一次関数的に大きくなっているものとした。ノズル66は高さ方向と平行に延びているものとした。ノズル66の数を仮に32個とした。なお、以上の共通条件は、あくまで、圧縮空気の流速及びノズル66間での流速ばらつきの、チャンバー71の高さ方向における長さに対する依存性を解析するための一例として、便宜的に設定された条件である。すなわち、上述した共通条件を多少変更した場合においても、定性的には概ね同様の解析結果が得られると見込まれることに留意されたい。
【0055】
次に、解析条件の詳細及び解析結果について、
図8~
図11を参照しつつ説明する。
図8~
図11は、解析条件の詳細と解析結果を示すテーブルである。
図8には、全ての実施例(実施例1~9)及び比較例(比較例1、2)の解析条件及び解析結果を示している。
図9(a)~
図11には、条件振りの種類毎に分類した実施例及び比較例を示している。
図9(a)~
図11においては、条件を変更したパラメータを太枠で囲んでいる。
【0056】
図8~
図11には、具体的な条件として、整流フィン72の有無、L、Ld、Ld1、Ld2、Lr2及びLrが記載されている。LdとLr2との和は、Lである。Ld1とLd2との和は、Ldである。なお、比較例1、2においては、整流フィン72が設けられていないため、L、Ld、Ld1、Ld2、Lr2及びLrのうちL及びLd2のみ定義可能である。このため、比較例1、2については、Ld、Ld1、Lr2及びLrの値が記載されていない(
図8及び
図9(a)参照)。また、解析結果として、32個のノズル66の各先端の位置における平均流速、及び32個のノズル66間の流速ばらつきが記載されている。平均流速は、上述した32箇所における圧縮空気の流速の平均値(単位はm/s)である。流速ばらつきは、上述した32箇所における流速の標準偏差を平均流速で割ることによって得られた変動係数(単位は%)である。平均流速が大きいほど、糸Yに交絡がより付与されやすくなることが見込まれる。流速ばらつきが小さいほど、複数の糸Y間で交絡の付与されやすさがより均一になることが見込まれる。
【0057】
(フィンの有無依存性)
まず、
図9(a)に示すように、供給流路70内に整流フィン72が設けられている場合(実施例1、6)といない場合(比較例1、2)との間で、平均流速及び流速ばらつきを比較した。ここでは、L及びLd2が等しい例同士で平均流速及び流速ばらつきを比較した。すなわち、実施例1と比較例1との間で平均流速及び流速ばらつきを比較し、実施例6と比較例2との間で平均流速及び流速ばらつきを比較した。いずれの場合も、整流フィン72が配置されていない場合と比べて、整流フィン72が配置されている場合において平均流速が大きく、且つ、流速ばらつきが小さい。具体的には、比較例1における平均流速及び流速ばらつきがそれぞれ369.1m/s、0.43%であり、実施例1における平均流速及び流速ばらつきが371.7m/s、0.26%である。比較例2における平均流速及び流速ばらつきがそれぞれ379.8m/s、0.62%であり、実施例6における平均流速及び流速ばらつきが382.5m/s、0.10%である。したがって、解析結果として、整流フィン72によって良好な整流効果が得られた。
【0058】
(Ld1依存性、Ld2依存性)
本願発明者は、さらに、チャンバー71の高さ方向における長さを変更したときに、より良い効果が得られるかどうか確認した。本願発明者は、
図9(b)に示すように、第1下流領域DA1の高さ方向における長さ(Ld1)を10~1087mmの範囲で変更した(実施例1~4)。Ld1の変更に伴い、Ldも変更した。Ld1が長くなるにつれて、少なくともLd1が587mm(実施例3)になるまでは、平均流速が大きくなり、且つ流速ばらつきが小さくなることが確認された。一方、Ld1が587mmのもの(実施例3)と、Ld1が1087mmのもの(実施例4)との間では大きな差が見られなかった。したがって、装置の大型化を避ける観点からは、例えばLd1が概ね600mm以下であると良い。なお、実施例1~4において、Ld2は必ずしも統一されていないため(実施例1においてLd2は9mmであり、実施例2~4においてLd2は14mmである)、本願発明者は、後述するように、Ld2の違いによる流速ばらつき等への影響の有無も評価した。
【0059】
本願発明者は、
図10(a)に示すように、第2下流領域DA2の高さ方向における長さ(Ld2)を9~91mmの範囲で変更した(実施例1、5~7)。Ld2の変更に伴い、Ldも変更した。実施例1、5~7において、Ld1は10mmに統一されている。Ld2が長くなるにつれて、平均流速が大きくなり、且つ/又は流速ばらつきが小さくなるという解析結果が得られた。例えば、実施例1(Ld2は9mm)と実施例5(Ld2は27mm)とを見比べると、流速ばらつきはいずれも0.26%と同程度であった。一方、平均流速は、実施例1では371.7m/sであるのに対し、実施例5では378.7m/sと大きくなった。さらに、Ld2が46mm以上(実施例6、7)になると、流速ばらつきが顕著に低減した(0.10%以下)。
【0060】
なお、流速ばらつき等のLd1依存性の解析に用いられた上述の実施例2~4において、Ld2は14mmである。14mmは、実施例1(Ld2は9mm)と実施例5(Ld2は27mm)との間の数値である。実施例1と実施例5との間で流速ばらつきに差は見られなかったので、実施例1と実施例2~4との間でも、Ld2の差は流速ばらつきの差に影響しないと考えられる。つまり、実施例1~4においては、単純にLd1の差によって流速ばらつきの差が生じたと考えて良い。
【0061】
なお、整流フィン72が設けられていない場合(比較例1、2)、Ld2を長くしても流速ばらつきが低減されず、却って流速ばらつきが増大する解析結果が得られた(
図9(a)参照)。つまり、Ld2(Ld)を長くすることによる流速ばらつきの低減効果は、あくまで整流フィン72が設けられていることが前提になることが分かった。
【0062】
以上のように、整流フィン72を設け、且つ、Ld1及び/又はLd2を長くして下流領域DAを高さ方向に大きくすることによって、平均流速が大きくなり且つ流速ばらつきが低減されるという解析結果が得られた。この結果について、本願発明者は以下のように考察した。整流フィン72によって流速ばらつきがある程度小さくなった圧縮空気の分子は、チャンバー71の下流領域DAを高さ方向に概ね一様に流れつつ、配列方向において互いにぶつかり合いながら進む。その結果、圧縮空気の分子の配列方向における速度成分のばらつきが次第に小さくなり、高さ方向に沿って概ね真っ直ぐ進むように促される。これにより、高さ方向における速度成分は、配列方向においてさらに均一になる。その効果は、下流領域DA(すなわち、何も配置されていない領域)が高さ方向において長いほどより顕著になる。本願発明者は、以上のような理由で、下流領域DAを長くすることで平均流速の増加及び/又は流速ばらつきの低減の効果が得られると推測した。なお、上述したように、比較例においては、チャンバー71を長くした場合(比較例2)に流速ばらつきが低減されているわけではなく、むしろ流速ばらつきが増大する結果となった。この結果を考慮すると、上記効果は、あくまで整流フィン72によって圧縮空気がある程度整流されていることが前提になると本願発明者は考えた。
【0063】
また、本願発明者は、
図10(b)に示すように、Lを等しくし、且つ、Ld1及びLd2の条件振りをした場合の解析結果を得た(実施例2、7)。Ld1よりもLd2を長くすることにより、流速ばらつきが大きく低減される結果となった。この理由について、本願発明者は以下のように考察した。すなわち、断面積の大きい第1下流領域DA1から断面積の比較的小さい第2下流領域DA2に流体が移動する際に、比較的狭い流路に多くの圧縮空気が入り込むことにより、気流が多少乱れるおそれがある。そこで、第2下流領域DA2を高さ方向において長くすることにより、圧縮空気を流動方向における下流側へ流しつつ気流の乱れを効果的に緩和できるため、流速ばらつきを低減できると本願発明者は考えた。
【0064】
また、本願発明者は、
図11に示すように、Lを一定にしつつLr2の条件振りをした場合の解析結果を得た(実施例2、8、9)。結果としては、Lr2を長くしても、流速ばらつきの低減効果は得られなかった。なお、実施例8、9においては、整流領域RAの高さ方向における長さ(Lr)を長くした分、下流領域DAの高さ方向における長さ(Ld)を短くした。したがって、実施例8、9においては、Ldを短くした影響も大きいと考えられる。
【0065】
以上の観点から、チャンバー71のうち、何も配置されていない下流領域DAの高さ方向における長さ(Ld)が長いと良い。例えば、下流領域DAの長さ(Ld)が、整流フィン72の配置された整流領域RAの長さ(Lr)よりも長いと、平均流速のさらなる増加及び/又は流速ばらつきのさらなる低減の効果が得られる。また、実施例2~4、6、7を考慮すると、LdがLrの約2倍以上のときに、流速ばらつきがさらに顕著に低減する(流速ばらつきが0.2%よりも小さくなる)ことが見出された。
【0066】
以上のように、供給流路70に流入した圧縮空気は、流入路42において少なくとも配列方向に流れた後、屈曲流路43において、流れる方向を配列方向から少なくとも高さ方向の成分を有する方向に変えられる。その際に、流入路42の延在方向に流れる圧縮空気の一部を整流フィン72によって受け止めることができる。これにより、屈曲流路43において、圧縮空気が流入路42から遠い側の空間に大量に流れ込むことを抑制しつつ、圧縮空気を整流することができる。このため、整流フィン72が設けられていない場合と比べて、チャンバー71内を流れる圧縮空気の流速を、配列方向において均一化することができる。したがって、複数のノズル66間での流速ばらつきを低減することができる。
【0067】
また、複数の整流フィン72は、配列方向において流入路42から遠いものほど、延在方向から見たときに、開口41fと重なる部分の面積が大きい。これにより、延在方向において、屈曲流路43のうち開口41fから遠い側の端部に圧縮空気が大量に到達することを効果的に抑制できる。また、本実施形態では、圧縮空気を各整流フィン72によって少しずつ受け止めることができる。このため、屈曲流路43内で、延在方向(配列方向)において圧縮空気を概ね均等に振り分けることができる。したがって、屈曲流路43を通ってチャンバー71に供給された圧縮空気の配列方向における流速ばらつきを効果的に低減できる。
【0068】
また、複数の整流フィン72の、高さ方向において複数のノズル66に近い側の端は、配列方向に沿って並べて配置されている。これにより、複数の出口73から複数のノズル66までの高さ方向における距離を、配列方向における位置に応じて変化させず、略一定にすることができる。このため、例えば配列方向における位置によって当該距離が異なる場合と比べて、整流フィン72によって配列方向において低減された流速ばらつきがチャンバー71内において再び増大するリスクを低減できる。
【0069】
また、下流領域DAは、高さ方向において整流領域RAよりも長いと良い。これにより、整流フィン72によって整流された後の圧縮空気が、複数のノズル66に到達するまでの間に、高さ方向において長い距離移動する。このため、整流フィン72によって整流された後の圧縮空気は、互いに隣接する分子同士がぶつかり合い、高さ方向に沿って概ね真っ直ぐ進むように促されつつ移動する。したがって、複数のノズル66間での流速ばらつきをさらに効果的に低減できる。
【0070】
また、下流領域DAの高さ方向における長さが整流領域RAの高さ方向における長さの2倍以上のときに、流速ばらつきが特に顕著に低減することを本願発明者は見出した。
【0071】
また、チャンバー71は、第1下流領域DA1と、糸走行方向における長さが第1下流領域DA1の糸走行方向における長さよりも短い第2下流領域DA2と、を有する。つまり、第2下流領域DA2における流路の断面積が第1下流領域DA1における流路の断面積よりも小さい。すなわち、チャンバー71において、流動方向における下流側へ向かうにつれて流路の断面積を段階的に小さくすることができる。これにより、圧縮空気の流速を段階的に速めることができる。このため、ノズル66の近傍において流速が急激に速くなることを抑制できる。したがって、ノズル66の近傍において圧縮空気の流れが乱れることを抑制できる。
【0072】
また、第2下流領域DA2が高さ方向において第1下流領域DA1よりも長いとさらに良い。すなわち、断面積の大きい第1下流領域DA1から断面積の比較的小さい第2下流領域DA2に流体が移動する際に、比較的狭い流路に多くの圧縮空気が入り込むことにより、気流が多少乱れるおそれがある。そこで、第2下流領域DA2を高さ方向において長くすることにより、圧縮空気を流動方向における下流側へ流しつつ気流の乱れを効果的に緩和できるため、流速ばらつきを低減できる。
【0073】
また、本実施形態では、交絡装置13によって交絡を付与される効率が複数の糸Yの間でばらつくことを低減できる。したがって、紡糸引取機1によって同時に形成される複数のパッケージP間の品質ばらつきを低減できる。
【0074】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0075】
(1)前記実施形態において、チャンバー71の第1下流領域DA1の糸走行方向における長さが一定であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、チャンバー形成流路44の糸走行方向における長さと、接続流路45の糸走行方向における長さとが互いに異なっていても良い。例えば、糸走行方向において、接続流路45がチャンバー形成流路44よりも短くても(つまり、狭くても)良い。この場合、チャンバー形成流路44が本発明の第1下流領域に相当し、接続流路45が本発明の第2下流領域に相当すると言える。
【0076】
(2)前記までの実施形態において、チャンバー71の下流領域DAが第1下流領域DA1と第2下流領域DA2とを有するものとした。しかしながら、これには限られない。下流領域DAは、第1下流領域DA1及び第2下流領域DA2のうち一方のみを有していても良い。
【0077】
(3)前記までの実施形態において、下流領域DAが高さ方向において整流領域RAよりも長いと良いものとした。しかしながら、下流領域DAが高さ方向において整流領域RA以下の長さを有する場合でも、整流フィン72を設けることによる整流効果が得られる。
【0078】
(4)前記までの実施形態において、複数の整流フィン72の高さ方向における他方側の端は、配列方向に沿って並べて配置されているものとした。しかしながら、これには限られない。複数の整流フィン72の高さ方向における他方側の端の位置は、高さ方向において互いに異なっていても良い。
【0079】
(5)前記までの実施形態において、複数の整流フィン72は、配列方向において流入路42から遠いものほど、配列方向から見たときに、流入路42と重なる部分の面積が大きいものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、複数の整流フィン72の高さ方向における一方側への突き出し長は、複数の整流フィン72間で略等しくても良い。
【0080】
(6)前記までの実施形態において、屈曲流路43には複数の整流フィン72が設けられているものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、屈曲流路43の配列方向における長さによっては、整流フィン72が1つのみ設けられていても良い。
【0081】
(7)前記までの実施形態において、供給流路70は、流体供給部材31と、接続部材32と、交絡付与ユニット33のベース部材51とによって構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、流体供給部材31と接続部材32とが、例えば溶接によって一つの部材として一体的に形成されていても良い。或いは、交絡装置13は、接続部材32を有していなくても良い。この場合、流体供給部材31の本体41と交絡付与ユニット33のベース部材51とがねじ止めされていても良い。
【0082】
(8)チャンバー71を形成する側面(例えば、内側面41b~41e)は、必ずしも高さ方向と略平行に延びていなくても良い。これらの側面は、例えば、高さ方向に対して傾きを有していても良い。これにより、例えば、下流領域DAの高さ方向に直交する断面積が、高さ方向における他方側に向かうほど小さくなっていても良い。逆に、当該断面積が、高さ方向における他方側に向かうほど大きくなっていても良い。
【0083】
(9)前記までの実施形態において、配列方向と高さ方向とが略直交しているものとした。しかしながら、これには限られない。配列方向と高さ方向は、必ずしも略直交していなくても良い。また、流入路42の延在する延在方向が配列方向と略平行であるものとしたが、これには限られない。延在方向は、配列方向に対して傾いていても良い。
【0084】
(10)交絡装置13は、紡糸引取機1以外の、走行する糸Yを取り扱う繊維機械に適用されても良い。
【符号の説明】
【0085】
1 紡糸引取機(糸巻取機)
13 交絡装置
41f 開口(入口)
42 流入路
43 屈曲流路
66 ノズル
70 供給流路
71 チャンバー
72 整流フィン
DA 下流領域
DA1 第1下流領域
DA2 第2下流領域
P パッケージ
RA 整流領域
Y 糸