(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012098
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230118BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20230118BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C08F290/06
C09D175/14
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115544
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】592019589
【氏名又は名称】ダイセル・オルネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】野沢 駿友
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038FA071
4J038FA281
4J038KA03
4J038KA12
4J038NA03
4J038NA19
4J038PA17
4J038PB05
4J038PC02
4J127AA03
4J127BA031
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB281
4J127CC011
4J127CC131
4J127DA25
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】密着性に優れ、耐候性が向上したエポキシ樹脂系粉体塗料層を塗膜する活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本開示の活性エネルギー線硬化性組成物はウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートモノマーと、紫外線吸収剤と、光安定剤と、光重合開始剤とを含有する。上記活性エネルギー線硬化性組成物中の有機溶媒の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートモノマーと、紫外線吸収剤と、光安定剤と、光重合開始剤とを含有する、
エポキシ樹脂系粉体塗料層への塗装用の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
有機溶媒の含有量が活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して、5質量%以下である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
粘度が50~300mPa・sである、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
ウレタン(メタ)アクリレートが、成膜した際の破断伸度が15%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリレートモノマーが多官能(メタ)アクリレートである請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
紫外線吸収剤がトリアジン系の化合物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
厚さ100μmに成膜した際の、室温20℃、湿度65%RHの環境下、チャック間距離10mm、引張速度10mm/minの条件で測定される伸度が10~70%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層。
【請求項9】
紫外線蛍光灯を26W/m2、ブラックパネル温度70℃、の条件で8時間照射し、次いで50℃で4時間湿潤を繰り返し、1000時間経過後の色差ΔEが20以下である、請求項8に記載の硬化物層。
【請求項10】
金属部材にエポキシ樹脂系粉体塗料、および活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層の順に積層した試料表面を1mm間隔で、前記金属部材まで達する傷を入れた100マスの傷のうち、粘着テープを圧着させた後に、上方に急激にはがした際にはがれたマスの数が5マス以下である、請求項8または9に記載の硬化物層。
【請求項11】
厚さが5μm~30μmである請求項8~10のいずれか1項に記載の硬化物層。
【請求項12】
エポキシ樹脂系粉体塗料層に、請求項8~11のいずれか1項に記載の硬化物層が直接積層した構造を含む屋外建材用金属部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性エネルギー線硬化性組成物とその硬化物層に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材の錆を防止し、耐食性を向上させるために、エポキシ樹脂系粉体塗料を使用して金属部材の外側に保護層(エポキシ樹脂系粉体塗料層)を形成する手法が知られている。しかし、エポキシ樹脂系粉体塗料層は耐候性に劣り、紫外線で劣化し、白亜化(チョーキング)や、黄変が起こることが知られていた。
【0003】
そのため、上記エポキシ樹脂系粉体塗料層を形成した金属部材は、屋内で保管することしかできず、屋外で保管するにはビニールシート等での遮光処理をする必要があった。また、耐候性を向上させるために、液体塗料を、上記エポキシ樹脂系粉体塗料層の更に外側に使用してオーバーコート層を形成する手法などが知られていた(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体塗料を使用する場合、溶剤として有機溶媒を使用する必要があるため、下地となるエポキシ樹脂系粉体塗料層を侵してしまい、活性エネルギー線硬化性組成物との密着性や耐候性に影響を与えることや、乾燥工程でVOCが発生する、あるいは乾燥工程に加熱を必要とするため大きなエネルギーが必要になることがあった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するものであり、エポキシ樹脂系粉体塗料層表面に塗装した際に、上記エポキシ樹脂系粉体塗料層との密着性に優れ、高い耐候性を有する硬化物層、およびそれを形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の発明者らは、上記目標を達成するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂系粉体塗料層のオーバーコート層に、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマー、紫外線吸収剤、光安定剤、および重合開始剤を含有した活性エネルギー線硬化性組成物を使用することにより、上記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層はエポキシ樹脂系粉体塗料層に高い密着性を有することを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本開示はウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートモノマーと、紫外線吸収剤と、光安定剤と、重合開始剤とを含有する、エポキシ樹脂系粉体塗料層塗装用の活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。このような構成を有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層は上記エポキシ樹脂系粉体塗料層との密着性に優れ、高い耐候性を有し、屋外で使用可能となる。
【0009】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、有機溶媒の含有量が活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して、5質量%以下であることが好ましい。このような有機溶媒含有量であることにより、加熱や乾燥工程が短時間で実施でき、あるいはこれらの工程を省略することができ、VOCの発生量を低減し、環境負荷を低減できる。また、下地となるエポキシ樹脂系粉体塗料層を侵しづらいため、耐候性を向上させることができる。
【0010】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、粘度が50~300mPa・sであることが好ましい。このような粘度を有することにより、塗装しやすい活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができる。
【0011】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレートは、成膜した際の破断伸度が15%以上であることが好ましい。このような伸びを示すウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、活性エネルギー線硬化性組成物の粘度を低減させ、活性エネルギー線硬化性組成物をエポキシ樹脂系粉体塗料層に塗装しやすい。また、上記活性エネルギー線硬化性組成物から形成される硬化物層のエポキシ樹脂系粉体塗料層に対する密着性により優れる。
【0012】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリレートモノマーは、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートを含有することにより、短時間で硬化することができる。
【0013】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる紫外線吸収剤は、トリアジン系の化合物を含有することが好ましい。このような化合物を含有することで上記活性エネルギー線硬化性組成物から形成される硬化物層により高い耐候性を付与することができる。
【0014】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、厚さ100μmに成膜した際の、室温20℃、湿度65%RHの環境下で、チャック間距離10mm、引張速度10mm/minの条件で測定した伸度が10~70%であることが好ましい。このような活性エネルギー線硬化性組成物から形成される硬化物層は金属部材への追従性に優れ、折り曲げて使用する金属部材に対する密着性にも優れる。
【0015】
また、本開示は、上記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を提供する。本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化させることにより、エポキシ樹脂系粉体塗料層に直接積層される硬化物層として用いられる。
【0016】
本開示の硬化物層は、紫外線蛍光灯を26W/m2、ブラックパネル温度70℃の条件で8時間照射し、50℃で4時間湿潤を繰り返し、1000時間経過後の色差ΔEが20以下であることが好ましい。このような硬化物層は色の変化が少なく、チョーキングや黄変を抑制することができる。
【0017】
本開示の硬化物層は、金属部材、エポキシ樹脂系粉体塗料層、上記硬化物層の順に製膜して作製した試料表面に1mm間隔で、金属部材に達するまで入れた100マスの傷のうち粘着テープを圧着させた後に、上方に急激にはがした際のはがれたマスの数が5マス以下であることが好ましい。このような硬化物層はエポキシ樹脂系粉体塗料層に強く密着することができる。
【0018】
本開示の硬化物層は、厚さが5μm~30μmであることが好ましい。このような厚さの硬化物層は、より優れた耐候性を発揮して、エポキシ樹脂系粉体塗料層を保護し、チョーキングや黄変を防止することができる。
【0019】
また、本開示は、エポキシ樹脂系粉体塗料層に、上記硬化物層が直接積層した構造を含む屋外建材用金属部材を提供する。本開示の硬化物層は、エポキシ樹脂系粉体塗料層、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層の順に直接積層させて、屋外建材用金属部材に使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層は、エポキシ樹脂系粉体塗料層との密着性に優れ、耐候性を向上させることができる。また、本開示の活性エネルギー線硬化性組成物はこのような硬化物層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を適用した状態の一実施形態を示す、金属部材の表面近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[活性エネルギー線硬化性組成物]
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、エポキシ樹脂系粉体塗料を塗布して形成された層(エポキシ樹脂系粉体塗料層)の外側に塗装(好ましくは直接塗装)されるものである。
【0023】
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線照射により硬化する性質を有する。上記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好ましい。すなわち、上記活性エネルギー線硬化性組成物は紫外線硬化性組成物であることが好ましい。
【0024】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートモノマーと、紫外線吸収剤と、光安定剤と、重合開始剤とを少なくとも含有する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリル(アクリルおよびメタクリルのいずれか一方または両方)を意味するものとし、その他の同様の表現についても同義である。
【0025】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、ヒドロキシ(メタ)アクリレート類化合物とポリイソシアネート化合物とを、公知の方法で反応させることによって作製することができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート類化合物としては、公知のエステル部分にヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好適に使用でき、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ヒドロキシ(メタ)アクリレート類化合物としては、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;またはこれらとε-カプロラクトンとの開環反応物などのポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、後述のものが挙げられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレート類化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの作製にあたり、ポリオール化合物を併用することもできる。ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が使用することができる。ポリオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ポリイソシアネートとしては、2,6-トルエンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、3-メチル-ジフェニルメタンジイソシアネート、もしくは1,5-ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはリジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、アロファネート結合を有することが好ましい。この場合、上記活性エネルギー線硬化性組成物の粘度を適度とすることができ、有機溶媒の含有量が少ない場合であってもより塗装性に優れる。
【0030】
上記活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレートは、成膜した際の破断伸度が15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。上記破断伸度が15%以上であることにより、エポキシ樹脂系粉体塗料層との密着性を向上させることができる。ここで、破断伸度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0031】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの25℃における粘度は特に限定されないが、例えば、1000~300000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは2500~200000mPa・s、さらに好ましくは5000~100000mPa・sである。ウレタン(メタ)アクリレートの25℃における粘度が上記範囲内にあることにより、取り扱い性が向上する傾向がある。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの粘度は、例えば、E型粘度計(製品名「粘度計TV-25型」、東機産業社製)を使用して測定することができる。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレートの平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば、200~50000であることが好ましく、より好ましくは500~30000、さらに好ましくは800~20000である。平均分子量が上記範囲内にあることにより、硬化物が良好な柔軟性を示すと共に樹脂外観が良好である傾向がある。本発明における「平均分子量」はGPCの測定によるポリスチレン換算の値として表すことができる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートの引張強度は特に限定されないが、例えば、1~100MPaであることが好ましく、より好ましくは、3~80MPa、さらに好ましくは5~60MPaである。引張強度が上記範囲内にあることにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層に適度な強度を付与することができる。ここで引張強度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレートをホモポリマー化した際のガラス転移温度は、-20~90℃であることが好ましく、より好ましくは-10~80℃、さらに好ましくは0~70℃である。ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲内にあることにより、耐加水分解性、耐薬品性に優れる傾向がある。
【0035】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して20~60質量%であることが好ましく、より好ましくは25~55質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であることにより、ウレタン(メタ)アクリレートの濃度が高いため、活性エネルギー線硬化性組成物に適度な硬化性を付与することができる。
【0036】
((メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1以上有するモノマー成分である。(メタ)アクリレートモノマーは、ウレタン(メタ)アクリレートとの反応性に優れる観点から、(メタ)アクリロイル基を2以上有する化合物(多官能(メタ)アクリレートモノマー)であることが好ましく、硬化物層の柔軟性により優れる観点から、2官能(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。上記(メタ)アクリレートモノマーは多官能モノマーであることにより、活性エネルギー線照射時に適度に硬化することができる。(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記ウレタン(メタ)アクリレートに該当するものおよびポリマーは上記(メタ)アクリレートモノマーには含まれない。
【0037】
1官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)スクシネート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノー ル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、硬化物層の柔軟性およびエポキシ樹脂系粉体塗料への密着性により優れる観点から、中でも、脂肪族(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、さらに好ましくはジアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0040】
3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して20~70質量%であることが好ましく、より好ましくは30~65質量%であり、さらに好ましくは40~60質量%である。(メタ)アクリレートモノマーの含有量が20質量%以上であることにより、硬化物層の柔軟性をより高くすることができる。(メタ)アクリレートモノマーの含有量が70質量%以下であることにより、ウレタン(メタ)アクリレートの濃度を上昇させることができ、硬化物層の密着性をより向上させることができる。
【0042】
(紫外線吸収剤)
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の紫外線吸収剤は、公知乃至慣用のものを用いることができ、使用するウレタン(メタ)アクリレートや光安定剤の種類などに応じて適宜選択することができる。上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、シアノアクリレート系、ジヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノー3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノー3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、(2,4-ジヒドロキシフェニル)-フェニルメタノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ターシャリーブチル-4-メチルフェノール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノルキシ)エトキシ]フェノール、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-((2-ヒドロキシ-3-(2'エチル)ヘキシル)オキシ)-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ等が挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、[2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルメタノンが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる紫外線吸収剤は、トリアジン系の化合物を含有することが好ましく、ヒドロシキフェニルトリアジン系の化合物を含有することがさらに好ましい。また、トルエン中の最大吸収波長が330nm以下にあるヒドロシキフェニルトリアジン系の化合物を特に好ましく用いることができる。上記紫外線吸収剤はトリアジン系の化合物を含有することで上記活性エネルギー線硬化性組成物から形成される硬化物層により高い耐候性を付与することができる。
【0045】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の紫外線吸収剤の含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して0.5~20質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは2~7質量%、特に好ましくは3~6質量%である。光紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であることで、十分な耐候性を付与することができる。
【0046】
(光安定剤)
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の光安定剤は、公知乃至慣用のものを用いることができ、使用する有機溶媒の種類や、紫外線吸収剤や、ウレタン(メタ)アクリレートの種類などに応じて適宜選択することができる。上記光安定剤としては、特に限定されないが、公知の光安定剤を使用することができ、例えば、2,2,6,6-テトラアルキル-4-ピペリジルエステル(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルエステルなど)、4-アルコキシ-2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン[例えば、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどの4-C1-10アルコキシ-2,2,6,6-ピペリジン;4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどの4-C6-10アリールオキシ-2,2,6,6-ピペリジン;4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなど4-C6-10アリールC1-4アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなど]、ビス(2,2,6,6-テトラアルキル-4-ピペリジルオキシ)アルカン[例えば、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタンなどのビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)C2-6アルカンなど]、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β',β'-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールとの反応生成物等が挙げられる。なお、光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の光安定剤の含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して0.05~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~3.5質量%であり、さらに好ましくは1~3質量%である。光安定剤の含有量が上記範囲内であることで十分な耐候性を付与することができる。
【0048】
(光重合開始剤)
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の光重合開始剤は、公知乃至慣用のものを用いることができ、活性エネルギー線の種類や、ウレタン(メタ)アクリレートの種類などに応じて適宜選択される。上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができ、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等が挙げられる。なお、光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の光安定剤の含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して3~15質量%であることが好ましく、より好ましくは3~10質量%であり、さらに好ましくは5~8質量%である。光重合開始剤の含量が上記範囲であることにより、後述の活性エネルギー線照射で適度に硬化することができる。
【0050】
(表面調整剤)
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、表面調整剤を含んでいてもよい。表面調整剤を配合することにより、組成物を消泡する作用などにより硬化物層表面を平滑にすることができる。表面調整剤は、特に限定されないが、公知の表面調整剤を使用することができ、例えば、ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレートモノマー、ポリシロキサン構造含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、ポリエーテル変性ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル変性ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート系化合物、ポリエーテルエステル変性ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート系化合物、ポリカーボネート変性ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート系化合物、等のポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート系化合物、上記以外の不飽和基含有ポリシロキサン構造含有(メタ)アクリレート、上記化合物にフッ素原子を導入した化合物等が挙げられる。なお、表面調整剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化性組成物中の表面調整剤の含有量は上記活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して0.1~2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~1質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。このような含有量であることにより、レベリング性を改善することができる。
【0052】
上記活性エネルギー線硬化性組成物はそのほかの成分を添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤等が挙げられる。これらの添加物の配合量は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、例えば、0~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0053】
上記活性エネルギー線硬化性組成物は溶剤として、揮発性有機溶剤を使用することができる。なお、揮発性有機溶剤とは、例えば、1.0気圧における沸点が200℃を超えない有機溶剤が挙げられる。
【0054】
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、有機溶媒の含有量が活性エネルギー線硬化性組成物全量に対して、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。有機溶媒の使用量が5質量%以下であることにより、加熱や乾燥工程が短時間で実施でき、あるいはこれらの工程を省略することができ、VOCの発生を抑制し、環境負荷を低減できる。また、下地となるエポキシ樹脂系粉体塗料層を侵しづらいため、耐候性をより向上させることができる。
【0055】
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、粘度が50~300mPa・sであることが好ましく、より好ましくは60~200mPa・sである。上記活性エネルギー線硬化性組成物の粘度が50mPa・s以上であることにより、塗装時に液だれをより起こりにくくすることができる。上記活性エネルギー線硬化性組成物の粘度が300mPa・s以下であることによりムラの発生を抑えつつ塗装することができる。
【0056】
上記活性エネルギー線硬化性組成物は、室温20℃、湿度65%RHの環境下で、チャック間距離10mm、引張速度10mm/minの条件で、厚さ100μmに成膜した際の破断伸度が10~70%であることが好ましく、より好ましくは20~70%であり、さらに好ましくは40~60%である。上記破断伸度が上記範囲であることにより、活性エネルギー線硬化性組成物から形成される硬化物層は金属部材への追従性に優れ、折り曲げて使用する金属部材に対する密着性にも優れる。
【0057】
(エポキシ樹脂系粉体塗料層)
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、エポキシ樹脂系粉体塗料層の外側に塗装されるものである。上記エポキシ樹脂系粉体塗料層は公知乃至慣用のエポキシ樹脂系粉体塗料を用いて作製したものを用いることができる。
【0058】
上記エポキシ樹脂系粉体塗料を形成する塗料は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂等の硬化剤と、硬化促進剤とを含み、粉体塗料の形態をとる。上記エポキシ樹脂系粉体塗料層は、例えば、金属部材等の保護対象物にエポキシ樹脂系粉体塗料を塗装した後、付着したエポキシ樹脂系粉体塗料を焼き付け等により硬化することで形成することができる。塗装の方法としては、例えば、静電塗装ガン、静電流動浸漬槽などを用いて、金属部材等の塗膜形成面に付着させればよい。静電塗装ガンを用いる場合、エポキシ樹脂系粉体塗料を、静電塗装ガンのノズルを通過させることにより帯電させて、金属部材等の塗膜形成面に付着させればよい。エポキシ樹脂系粉体塗料を帯電させることができれば、静電塗装ガンのノズルに電圧を印加してもしなくてもよい。静電流動浸漬槽を用いる場合、エポキシ樹脂系粉体塗料を静電流動浸漬槽内で流動させながら、電圧が印可された針状の放電極により帯電させて、金属部材等の塗膜形成面に付着させればよい。
【0059】
上記のように金属部材等に付着したエポキシ樹脂系粉体塗料層は焼き付け工程により溶解、硬化して、金属部材に塗膜を形成する。焼付けは、通常使用される電気炉、熱風乾燥機などを用いて行えばよい。焼付けの温度は、例えば160℃以上220℃以下にするとよく、焼付け時間は5~30分程度にすればよい。
【0060】
[硬化物層]
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線照射によって硬化させることにより、硬化物(硬化物層)を得ることができる。本開示の硬化物層は硬化塗膜であり、金属部材に積層された、エポキシ樹脂系粉体塗料層に直接積層されていることが好ましい。
【0061】
上記硬化物層は、例えば、エポキシ樹脂系粉体塗料層である対象物に塗布した後、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化することにより得られる。塗布の方法としては、公知乃至慣用の方法を用いることができ、例えばコーティング法、キャスティング法等が挙げられる。紫外線照射を行う際の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。紫外線の照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件等により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。紫外線照射後は、さらに、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。一方、電子線照射の場合は、例えば、50~1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2~5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80~300W/cm程度の照射源が用いられる。
【0062】
上記硬化物層は、紫外線蛍光灯を26W/m2、ブラックパネル温度70℃の条件で8時間照射し、50℃で4時間湿潤を繰り返し、1000時間経過後の色差ΔEが20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。色差が20以下であると、耐候性に優れ、チョーキングや黄変を抑制することができる。
【0063】
上記硬化物層は、試料表面に1mm間隔で、金属部材に達するまで入れた100マスの傷のうち、粘着テープを圧着させた後に上方に急激にはがした際のはがれたマスの数が5マス以下であることが好ましく、さらに好ましくは0マスである。はがれたマスが5マス以下である場合、密着性に優れた活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を提供できる。
【0064】
本開示の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層は、硬化後の厚さが5μm~30μmであることが好ましく、より好ましくは5μm~20μmであり、さらに好ましくは5μm~15μmである。上記硬化物層の厚さが5μm~30μmであることにより、十分な耐候性が付与され、金属部材等の保護対象物や、エポキシ樹脂系粉体塗料層を保護することができる。
【0065】
[積層体]
上記活性エネルギー線硬化性組成物を上記エポキシ樹脂系粉体塗料層上に塗装して硬化させることで、上記エポキシ樹脂系粉体塗料層と、上記エポキシ樹脂系粉体塗料層上に形成された上記硬化物層とを含む積層体を得ることができる。上記積層体において、上記硬化物層は上記エポキシ樹脂系粉体塗料層に直接積層していることが好ましい。上記積層体において、上記エポキシ樹脂系粉体塗料は、金属部材を覆っていることが好ましい。
【0066】
以下、本開示の活性エネルギー線硬化性組成物を適用した状態の一実施形態について説明する。
図1は金属部材表面近傍の断面図である。
図1に示すように、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層3は金属部材1の表面に塗膜されたエポキシ樹脂系粉体塗料層2の更に外側に積層される。
【0067】
(金属部材)
上記金属部材としては、例えば、鋼板、メッキ鋼板(例えば、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛-ニッケル鋼板)、鉄棒などが挙げられる。また、これら金属基材の表面を予め表面処理を施しておいてもよいし、未処理のままでもよい。
【0068】
上記積層体を含むものとして、各種の土木構造物、建築物、およびこれらに用いる金属部材として、例えば、屋外建材用部材などが挙げられる。
【実施例0069】
以下に実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0070】
実施例1
<活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
活性エネルギー線硬化性組成物として、ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名「EBECRYL 8402」、ダイセル・オルネクス社製)40質量部、ジプロピレングリコールジアクリレート(製品名「DPGDA」、ダイセル・オルネクス社製)60質量部、紫外線吸収剤(製品名「Tinuvin 400」、BASF社製)4.5質量部、光安定剤(製品名「Tinuvin 292」、BASF社製)1.5質量部、ポリアクリレート系表面調整剤(製品名「BYK-361N」、ビックケミージャパン社製)0.5質量部を撹拌して混合し、光重合開始剤(製品名「Omnirad 184」、IGM RESINS社製)7.5質量部を添加することによって、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0071】
実施例2
紫外線吸収剤として(製品名「Tinuvin 405」、BASF社製)4.5質量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0072】
実施例3
紫外線吸収剤として(製品名「Tinuvin 479」、BASF社製)4.5質量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0073】
実施例4
紫外線吸収剤として(製品名「Tinuvin 400」、BASF社製)3質量部、光安定剤として(製品名「Tinuvin 292」BASF社製)1質量部、光重合開始剤(製品名「Omnirad 184」、IGM RESINS社製)5質量部、を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0074】
実施例5
ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名「EBECRYL 9270」、ダイセル・オルネクス社製)40質量部、紫外線吸収剤として(製品名「Tinuvin 400」、BASF社製)3質量部、光安定剤として(製品名「Tinuvin 292」、BASF社製)1質量部、光重合開始剤(製品名「Omnirad 184」、IGM RESINS社製)5質量部、を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0075】
実施例6
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(製品名「HDDA」、ダイセル・オルネクス社製)60質量部、紫外線吸収剤として(製品名「Tinuvin 400」、BASF社製)3質量部、光安定剤として(製品名「Tinuvin 292」、BASF社製)1質量部、光重合開始剤(製品名「Omnirad 184」、IGM RESINS社製)5質量部、を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0076】
比較例1
活性エネルギー線硬化性組成物によるコーティングを施さない状態で評価を行った。
【0077】
[評価]
実施例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、以下の評価を行った。結果を表に示す。
【0078】
(1)粘度
上記実施例にて作製した上記活性エネルギー線硬化性組成物を25℃の条件で、精密回転粘度計(製品名「RST-CPS」、ブルックフィールド社製)を使用して、粘度を測定した。
【0079】
(2)密着性
(試験片の作製)
(エポキシ樹脂系粉体塗料被膜(プライマー層の作製)
リン酸亜鉛化成処理ダル鋼板(SPCC-SD)を使用し、エポキシ樹脂系粉体塗料を負帯電静電塗装(コロナ)にて180℃×15分の条件で、焼き付け後の膜厚が70μmとなるように塗装を行った。焼き付け後のエポキシ樹脂系粉体塗料被膜物を24時間以上静置し、エポキシ樹脂系粉体塗料層(プライマー層)を作製した。
【0080】
上記プライマー層に、上記活性エネルギー線硬化性組成物をハンドスプレーガン(製品名「IWATA W-101」、アネスト岩田社製)を使用して硬化後の膜厚が10μmとなるよう、スプレー塗装を実施した。スプレー塗装後、紫外線照射機(製品名「EYE INVERTOR GRANDAGE ECS-4011GX」、アイグラフィックス社製)にて、セッティング時間5分、高圧水銀ランプ、2kW、コンベアスピード400cm/分(照度500mW/cm2、積算光量880mJ/cm2の条件で紫外線照射を実施し、試験片を作製した。
【0081】
上記試験片の試料表面にカッターで上記プライマー層に達する傷を、縦、横それぞれ1mm間隔で入れ、100個のマス目をつくり、粘着テープ(製品名「セロテープ」、ニチバン社製)をマス目に対して圧着させて上方へ急激に引きは剥がした。剥がした後の塗膜の付着状態を目視によって観察し、以下の基準で評価した。
○:100マスのうち剥がれが0マス
△:100マスのうち剥がれが1~5マス
×:100マスのうち剥がれが6マス以上
【0082】
(3)伸度
(試験片の作製)
ガラス板上に、上記活性エネルギー線硬化性組成物を、アプリケーターを使用して硬化後の膜厚が100μmとなるよう塗工した。塗工後、紫外線照射機(製品名「EYE INVERTOR GRANDAGE ECS-4011GX」、アイグラフィックス社製)にて、セッティング時間5分、高圧水銀ランプ2kW、コンベアスピード400cm/分(照度500mW/cm2、積算光量880mJ/cm2)の条件で紫外線照射を実施し、伸度測定用の試験片を作製した。
【0083】
(伸度測定)
作製した上記伸度測定用の試験片に対して、テンシロン万能試験機(製品名「RTG-1210」、エー・アンド・デイ社製)を使用して、20℃、湿度65%、チャック間距離10mm、引張速度10mm/minの条件で伸度を測定した。
【0084】
(4)耐候性
上記密着性評価で作成した試験片に対し、紫外線蛍光灯(製品名「紫外線蛍光灯ウェザーメーターFUV」、スガ試験機社製)を使用して、26W/m
2、ブラックパネル温度70℃、8時間の照射条件で紫外線照射し、その後試験片を槽内温度50℃、4時間の湿潤条件を繰り返し、1000時間経過後の試験片の表面状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:色差ΔEの値が5以下
○:色差ΔEの値が5以上10以下
△:色差ΔEの値が10以上20以下
×:色差ΔEの値が20以上
【表1】
【0085】
表1に示す様に、本開示の活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマー、紫外線吸収剤、光安定剤、および重合開始剤を含有することにより、エポキシ樹脂系粉体塗料層との密着性に優れ、耐候性を向上させることができることが確認された。