IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-折畳式乳母車 図1
  • 特開-折畳式乳母車 図2
  • 特開-折畳式乳母車 図3
  • 特開-折畳式乳母車 図4
  • 特開-折畳式乳母車 図5
  • 特開-折畳式乳母車 図6
  • 特開-折畳式乳母車 図7
  • 特開-折畳式乳母車 図8
  • 特開-折畳式乳母車 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012099
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】折畳式乳母車
(51)【国際特許分類】
   B62B 7/08 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
B62B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115545
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 貴祥
(72)【発明者】
【氏名】薮内 仁志
(72)【発明者】
【氏名】本多 智行
【テーマコード(参考)】
3D051
【Fターム(参考)】
3D051AA02
3D051AA08
3D051AA23
3D051BA03
3D051BB06
3D051BB13
3D051BB16
3D051BB19
3D051BB32
3D051BB38
3D051CA06
3D051CG04
3D051CG05
3D051DD12
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、開閉動作を容易に行うことが可能な折畳式乳母車を提供すること。
【解決手段】折畳式乳母車は、展開状態と折畳状態で形態が異なる。折畳式乳母車は、第1部材(13)と、第1部材(13)と回動軸(28)を介して連結されており、展開状態から折畳状態への折畳動作、または、折畳状態から展開状態への展開動作に伴って、第1部材(13)に対する屈曲角度が変化する第2部材(23)と、回動軸(28)に装着される第1部材(13)と第2部材(23)との屈曲角度を大きくする方向または小さくする方向に付勢するトーションスプリング(40)とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態と折畳状態で形態が異なる折畳式乳母車において、
第1部材と、
前記第1部材と回動軸を介して連結されており、前記展開状態から前記折畳状態への折畳動作、または、前記折畳状態から前記展開状態への展開動作に伴って、前記第1部材に対する屈曲角度が変化する第2部材と、
前記回動軸に装着され、前記第1部材と前記第2部材との屈曲角度を大きくする方向または小さくする方向に付勢するトーションスプリングとを備えた、折畳式乳母車。
【請求項2】
前記第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、
前記第2部材は、その一方端部が前記後脚に回動可能に連結され、その他方端部が手摺支持部材下方端部に回動可能に連結され、形態の変化に応じて回動する反転ブラケットである、請求項1に記載の折畳式乳母車。
【請求項3】
前記第1部材は、座席を支持する座部支持部材であり、
前記第2部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる前脚である、請求項1または2に記載の折畳式乳母車。
【請求項4】
前記第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、
前記第2部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる前脚である、請求項1~3のいずれかに記載の折畳式乳母車。
【請求項5】
前記第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、
前記第2部材は、前記折畳状態に伴って当該折畳式乳母車を構成する車体フレームに当接して下方に移動する付加部材であり、
前記トーションスプリングは、前記第2部材を上方に向かって付勢する、請求項1~4のいずれかに記載の折畳式乳母車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、展開状態と折畳状態で形態が異なる折畳式乳母車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳母車には、使用時には展開状態に広げられ、不使用時には折畳状態に縮小される折畳式乳母車が知られている。
【0003】
特開平9-48352号公報(特許文献1)には、後脚に沿って直列に配置された引張スプリングと圧縮スプリングにより、乳母車の折畳動作および展開動作の両方をアシストする構成が開示されている。また、特開2001-239942号公報(特許文献2)には、座部の後端と後脚の間設けられるスプリングにより折り畳み弾性が付与され、展開状態から折畳状態にアシストする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-48352号公報
【特許文献2】特開2001-239942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に開示された折畳乳母車は、折畳動作および展開動作の開閉動作がアシストされるものの、部品点数が多く、構造が複雑である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成で、開閉動作を容易に行うことが可能な折畳式乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明の一態様に係る折畳式乳母車は、展開状態と折畳状態で形態が異なる折畳式乳母車において、第1部材と、第1部材と回動軸を介して連結されており、展開状態から折畳状態への折畳動作、または、折畳状態から展開状態への展開動作に伴って、第1部材に対する屈曲角度が変化する第2部材と、回動軸に装着され、第1部材と第2部材との屈曲角度を大きくする方向または小さくする方向に付勢するトーションスプリングとを備えている。
【0008】
好ましくは、第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、第2部材は、その一方端部が後脚に回動可能に連結され、その他方端部が手摺支持部材下方端部に回動可能に連結され、形態の変化に応じて回動する反転ブラケットである。
【0009】
好ましくは、第1部材は、座席を支持する座部支持部材であり、第2部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる前脚である。
【0010】
好ましくは、第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、第2部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる前脚である。
【0011】
好ましくは、第1部材は、下端に車輪を有し上下方向に延びる後脚であり、第2部材は、折畳動作に伴って当該乳母車を構成する車体フレームに当接して下方に移動する付加部材であり、トーションスプリングは、第2部材を上方に向かって付勢する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で、開閉動作を容易に行うことが可能な折畳式乳母車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る折畳式乳母車を示す右側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る折畳式乳母車の模式図であり、(A)は展開状態を示す図であり、(B)は折畳状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る折畳式乳母車の展開状態から折畳状態への推移を示す図である。
図4図1のA部分を拡大して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は展開状態を示す図であり、(C)は折畳状態を示す図である。
図5図1のB部分を拡大して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は展開状態を示す図であり、(C)は折畳状態を示す図である。
図6図1のC部分を拡大して示す図であり、(A)は展開状態を示す図であり、(B)は折畳状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態2に係る折畳式乳母車を示す右側面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る折畳式乳母車を示す正面図である。
図9図7のD部分を拡大して示す図であり、(A)は展開状態を示す図であり、(B)は展開状態から折畳状態への途中状態を示す図であり、(C)は折畳状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
(乳母車の概要について)
図1図3を参照して、本実施の形態に係る折畳式乳母車1の概要について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る折畳式乳母車を示す右側面図である。図2,3は、図1を簡略化して示した図である。図2(A)は、図1に対応する展開状態を示す図であり、図2(B)は、折畳状態を示す図である。図3は、展開状態から折畳状態への推移を示す図である。発明の理解を容易にするため、図面には背対面切替式乳母車の車体フレームを主に示し、幼児用座席、幌布などの図示を省略する。なお、以下の説明において、前後方向は、乳母車の前後方向に対応し、左右方向は、乳母車の前方から見た左右方向に対応している。
【0016】
本実施の形態の折畳式乳母車1は、車体フレーム10として、一対の前脚11、一対の後脚13、アームレスト15、アームレスト支持部材17、座部支持部材18、背もたれ支持部材19、および反転ブラケット23を備える。座部支持部材18および背もたれ支持部材19を除く車体フレーム10は、幅方向(車幅方向)に離隔して左右に設けられ、対をなす。上下方向に延びる各前脚11の下端には、前輪12が設けられる。各前脚11よりも後方で上下方向に延びる各後脚13の下端には、後輪14が設けられる。
【0017】
前脚11の上端および後脚13の上端は、折畳式乳母車1の前後方向に延びるアームレスト15の前端部と第1回動軸24を介して回動可能に連結する。つまり、第1回動軸24は、前脚11、後脚13、およびアームレスト15の3つの部材を回動可能に連結する。
【0018】
アームレスト15の後端部は、上下方向に延びるアームレスト支持部材17の上端部と第2回動軸25を介して回動可能に連結する。具体的には、アームレスト15の後端部とアームレスト支持部材17の上端部とは、第2回動軸25を介して幌30とも連結されている。なお、アームレスト支持部材17は、図1の右側面図では、押し棒20とほぼ重なっている。
【0019】
一対のアームレスト15の内方には、前ガード16が設けられる。前ガード16は、座席部の前方に設けられ、座席部を幅方向に横切る。前ガード16の幅方向両端部は、座部支持部材18の後端部に連結される。
【0020】
アームレスト15よりも下方には、座部支持部材18が配置される。座部支持部材18の前端部は、一対の前脚11の中央部と連結する。座部支持部材18の前端部は、一対の前脚11と第3回動軸26を介して回動可能に連結する。
【0021】
座部支持部材18の後端部と、押し棒20の下端部と、反転ブラケット23の上端部と、アームレスト支持部材17の下端部とは、第4回動軸27を介して回動可能に連結する。座部支持部材18の後端部は、第4回動軸27とは異なる位置で、背もたれ支持部材19の下端部と回動可能に連結する。座部支持部材18は、乳幼児の座部を下方から支持し、背もたれ支持部材19は、乳幼児の背もたれ部を下方から支持する。図示はしていないが、座部支持部材18および背もたれ支持部材19には、ハンモックが掛け渡され、ハンモック上には、クッションが取り付けられている。これにより、座部支持部材18上には、座席部を形成する座面が形成され、座部支持部材18は、座面を下方から支持する。
【0022】
押し棒20は、車体フレーム10に対して前後方向に揺動可能に設けられ、背面押し位置(図1の実線で示す)、および、対面押し位置(図1の一点鎖線で示す)の間で切り換え可能である。押し棒20は、全体として逆U字状であり、上下方向に延びる一対の縦部材20aと、一対の縦部材20aの上方端を連結する横部材20bとを含む。横部材20bの長手方向中央部には、展開動作および折畳動作のロックを解除するための操作部20cが設けられる。展開動作および折畳動作を行う場合には、この操作部20cを操作した状態で、押し棒20を下方または上方に移動させる必要がある。
【0023】
なお、押し棒20は、第4回動軸27に連結されているとしたが、対面背面に切り替え可能でない場合は、アームレスト15の後端部に連結されて、上方に延びていてもよい。
【0024】
反転ブラケット23は、展開動作および折畳動作のために設けられた部材である。上述のように、反転ブラケット23の上端部は、第4回動軸27を介して、アームレスト支持部材17の下端部、押し棒20の下端部、および座部支持部材18の後端部に連結される。反転ブラケット23の下端部は、上下方向に延びる後脚13の中央部と第5回動軸28を介して回動可能に連結する。
【0025】
また、アームレスト支持部材17の下端部は、反転ブラケット23に対してロックされる位置とロック解除される位置との間を切り換え可能に設けられている。アームレスト支持部材17が後脚13に対してロックされる位置は、図1,2(A)に示す走行状態であり、アームレスト支持部材17の下端部と後脚13の上方とが当接する位置である。アームレスト支持部材17が後脚13に対してロック解除される位置は、図2(B)に示す折畳状態であり、アームレスト支持部材17の下端部と後脚13の下方が当接する位置である。具体的には、アームレスト支持部材17の下端部には、反転ブラケット23に対してロック可能なロック部(図示せず)が設けられ、ロック部のロックを解除することで、アームレスト支持部材17と反転ブラケット23のロックが解除される。このような構成により、折畳式乳母車1を折り畳むことが可能となる。なお、反転ブラケット23の上端に後脚13に対してロック可能なロック部が設けられていてもよい。
【0026】
(折畳動作および展開動作について)
図2および図3を参照して、折畳式乳母車1の折畳動作および展開動作について説明する。
【0027】
上述のように、前脚11の上端部、後脚13の上端部、およびアームレスト15の前端部は、「第1回動軸24」を介して連結されている。アームレスト15の後端部とアームレスト支持部材17の上端部は、「第2回動軸25」を介して連結されている。前脚11の中央部と座部支持部材18の前端部は、「第3回動軸26」を介して連結されている。座部支持部材18の後端部、アームレスト支持部材17の下端部、押し棒20の下端部、および反転ブラケット23の上端部は、「第4回動軸27」を介して連結されている。反転ブラケット23の下端部と後脚13の中央部は、「第5回動軸28」を介して連結されている。このように、車体フレーム10は、5点の回動軸で回転可能に連結されている。また、アームレスト支持部材17の下端部(反転ブラケット23の上端部)は、後脚13に対してロックされる位置と、ロック解除される位置との間を切り換え可能に設けられている。
【0028】
図2(A)に示す展開状態から図2(B)に示す折畳状態にする折畳動作は、図3(A)~(D)の推移の通りである。まず、押し棒20に設けられる操作部20c(図1)を操作し、アームレスト支持部材17と反転ブラケット23のロックを解除する。操作部20cを操作した状態のまま、押し棒20を下方に押し込んでいく。これにより、反転ブラケット23が上下に反転し、後脚13の上方に当接していたアームレスト支持部材17の下端部を、後脚13の下方に当接させる。この状態で、アームレスト支持部材17の下端部と反転ブラケット23の下端部とをロックする。
【0029】
図2(B)に示す折畳状態から図2(A)に示す展開状態にする展開動作は、図3(A)~(D)を反対から見た通りである。まず、押し棒20に設けられる操作部20c(図1)を操作し、押し棒20を上方に引き上げる。これにより、反転ブラケット23が上下に反転し、後脚13の下方に当接していたアームレスト支持部材17の下端部を、後脚13の上方に当接させる。この状態で、アームレスト支持部材17の下端部と反転ブラケット23の上端部とをロックする。このように、車体フレーム10は、図2(A)に示す展開状態から図2(B)に示す折畳状態へ、あるいはその逆へ形態が変化する。
【0030】
折畳式乳母車1の折畳動作および展開動作は、押し棒20を下方に押し込んだり、上方に引き上げたり、ある程度の力が必要となるため、操作性の向上が求められている。本実施の形態の折畳式乳母車1は、折畳動作および展開動作の操作性を向上させるために、折畳動作および展開動作をアシストするトーションスプリング40が設けられるものである。
【0031】
(実施の形態1について)
本実施の形態のトーションスプリング40は、上述した第1~5回動軸24~28に取り付けられることが好ましい。以下に、第1,3,5回動軸24,26,28にトーションスプリング40~40Bを取り付ける構成を説明する。本実施の形態のトーションスプリング40~40Bは、第1部材と第2部材との屈曲角度を大きくする方向に付勢する部材である。本実施の形態では、第1部材および第2部材は、たとえば車体フレーム10である。屈曲角度とは、第1部材と第2部材とが回動軸で交わる角度であり、第1部材と第2部材の中心軸を通る角度であってもよい。
【0032】
まず、図1で示すA部分について説明する。A部分における第1部材は後脚13であり、第2部材は反転ブラケット23である。反転ブラケット23は、後脚13と第5回動軸28を介して連結されており、折畳動作および展開動作に伴って、後脚13に対する屈曲角度が変化する。屈曲角度を大きくするとは、折畳状態から展開状態にする展開動作をすることであり、屈曲角度を小さくするとは、展開状態から折畳状態にする折畳動作をすることである。
【0033】
図4は、図1のA部分を拡大して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は展開状態を示す図であり、(C)は折畳状態を示す図である。トーションスプリング40は、螺旋状に巻かれたコイル部41と、コイル部41から連なり一方に突出する一方端部42と、コイル部41から連なり他方に突出する他方端部43とを含む。トーションスプリング40は、回転運動により作用するバネであり、一方端部42または他方端部43の位置が変化した場合に、コイル部41にそのエネルギーを保存するものである。図4(A)によく表れているように、他方端部43は、その先端部45が外方に向かってL字状に屈曲する。一方端部42は、L字状に屈曲せず直線状に延びている。
【0034】
図4(A)に示すように、後脚13と反転ブラケット23との間にトーションスプリング40が設けられる場合には、コイル部41は、反転ブラケット23の下端部内に装着され、第5回動軸28に取り付けられる。一方端部42は、反転ブラケット23に形成される溝部23aに取り付けられる。また、他方端部43は、後脚13に取り付けられる。具体的には、第5回動軸28の下方において、後脚13に貫通孔13aが設けられており、他方端部43の先端部45が差し込まれる。
【0035】
次に、展開動作および折畳動作について説明する。図4(B)に示す展開状態では、反転ブラケット23は、後脚13の上方に沿うように上方に向いている。図4(C)に示す折畳状態に変位させると、反転ブラケット23は反転して、後脚13の下方に沿うように下方を向く。このように折畳式乳母車1を折畳状態に変位させると、トーションスプリング40の一方端部42と他方端部43とが近づき、コイル部41に回転エネルギーが蓄えられる。
【0036】
図4(C)に示す折畳状態から図4(B)に示す展開状態にする際には、その蓄えられたエネルギーが開放され、一方端部42と他方端部43とが離れる方向に作用し、反転ブラケット23が勢いよく反転して後脚13の上方に沿う状態となる。このように、トーションスプリング40が後脚13と反転ブラケット23との屈曲角度を大きくする方向に付勢されているため、折畳状態から展開状態への変位がアシストされ、強い力を必要とせずに展開動作をすることができる。
【0037】
さらに、一般的な乳母車の構成にトーションスプリング40を追加するだけですむため、従来のアシスト構造と比較して部品点数を減らすことができるとともに、折畳式乳母車の全体重量の増加を抑えることができ、コストの抑制も可能である。また、車体フレーム10内にトーションスプリング40を配置させることができるため、フレームの設計に自由度がある。
【0038】
従来の折畳式乳母車では、展開動作において、完全に図3(D)に示す折畳状態から図3(A)に示す展開状態にするまで、押し棒20を上方に引き上げるために力を入れる必要があった。これに対し、本実施の形態では、図3(B)に示す状態、すなわち反転ブラケット23と押し棒20が直線状に並ぶ位置(トーションスプリング40の思案点)にまで持ち上げれば、あとは車体フレーム10の重力で自動的に図3(A)に示す展開状態になる。これにより、ある程度の動作で展開動作を行うことができるため、操作性がよい。また、折畳動作においても、誤って操作部20cを操作してしまった場合でも、思案点を超える位置まで押し棒20を操作しない限りは、折畳状態にならないため、誤操作を防ぐことができる。
【0039】
次に、図1で示すB部分について、図5を参照して説明する。図5は、図1のB部分を拡大して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は展開状態を示す側面図であり、(C)は折畳状態を示す側面図である。図5には、トーションスプリング40Aが座部支持部材18と前脚11を回転可能に支持する第3回動軸26に取り付けられる構成が開示されている。トーションスプリング40Aは、上述したトーションスプリング40と略同一の形状であるが、他方端部43Aだけでなく、一方端部42Aにおいても、その先端部45Aが外方に向かってL字状に屈曲する点で異なる。これらの先端部44A,45Aは、反対方向に向かって屈曲している。
【0040】
図5に示すように、座部支持部材18と前脚11との間にトーションスプリング40Aが設けられる場合には、コイル部41Aは、第3回動軸26に取り付けられる。この場合、座部支持部材18が第1部材であり、前脚11が第2部材である。前脚11は、座部支持部材18と第3回動軸26を介して連結されており、折畳状態から展開状態への展開動作に伴って、前脚11に対する屈曲角度が変化する。
【0041】
トーションスプリング40Aの一方端部42Aは、座部支持部材18に取り付けられる。具体的には、座部支持部材18の側壁に、一方端部42Aの先端部44Aが引っ掛けられて当接する。また、他方端部43Aは、前脚11に取り付けられる。具体的には、第3回動軸26の下方において、前脚11に貫通孔11aが設けられており、他方端部43Aの先端部45Aが差し込まれる。
【0042】
この構成においても、トーションスプリング40Aが、折畳状態から展開状態への変位をアシストするため、強い力を必要とせずに展開動作をすることができる。
【0043】
最後に、図1で示すC部分について、図6を参照して説明する。図6は、図1のC部分を拡大して示す図であり、(A)は展開状態を示す図であり、(B)は折畳状態を示す図である。図6には、トーションスプリング40Bが前脚11と後脚13を回転可能に支持する第1回動軸24に取り付けられる構成が開示されている。トーションスプリング40Bは、上述したトーションスプリング40Aと略同一の形状であるが、一方端部42Bの先端部44Bと他方端部43Bの先端部45Bのいずれもが、同一方向の外方に向かってL字状に屈曲する点で異なる。
【0044】
図6に示すように、前脚11と後脚13との間にトーションスプリング40Bが設けられる場合には、コイル部41Bは、第1回動軸24に取り付けられる。この場合、後脚13が第1部材であり、前脚11が第2部材である。前脚11は、後脚13と第1回動軸24を介して連結されており、折畳状態から展開状態への展開動作に伴って、後脚13に対する屈曲角度が変化する。
【0045】
トーションスプリング40Bの一方端部42Bは、後脚13に取り付けられる。具体的には、第1回動軸24の下方において、後脚13の側壁に、一方端部42Bの先端部44Bが引っ掛けられて当接する。また、他方端部43Bは、前脚11に取り付けられる。具体的には、第1回動軸24の下方において、前脚11の側壁に、他方端部43Bの先端部45Bが引っ掛けられて当接する。
【0046】
この構成も、トーションスプリング40Bが、折畳状態から展開状態への変位をアシストするため、強い力を必要とせずに展開動作をすることができる。
【0047】
なお、トーションスプリングは、折畳動作で回転する回動軸に取り付けられることが好ましく、上述した一例以外では、第2,4回動軸25,27などの回転軸に設けてもよい。また、トーションスプリングは、1つの折畳式乳母車の複数個所に設けられてもよいし、1か所に設けられてもよい。また、トーションスプリング40を設ける場所としては、折畳動作および展開動作で操作する押し棒20に直線的に繋がる箇所または近接する箇所が好ましいく、具体的には、第2,4,5回動軸25,27,28である。これにより、押し棒20に力を直接伝えることができるため、展開動作または折畳動作を効率よくアシストすることができる。
【0048】
(実施の形態2について)
図7図9を参照して、実施の形態2に係る折畳式乳母車1Cの構成について説明する。実施の形態1と本実施の形態の相違点は、図7で示すD部分に付加部材50Cが設けられることである。
【0049】
図7を参照して、後脚13には、反転ブラケット23との連結箇所よりも下方位置に、付加部材50Cが設けられる。付加部材50Cは、折畳動作に伴って折畳式乳母車1Cを構成する車体フレーム10に当接して下方に移動する部材である。本実施の形態では、第1部材は後脚13であり、第2部材は付加部材50Cである。本実施の形態2の第1部材は、車体フレーム10であるが、第2部材は、車体フレーム10とは別に設けられる付加部材50Cである。
【0050】
図8に特に示すように、座部支持部材18の後端部と、アームレスト支持部材17の下端部(アームレスト15と前脚11の上部に重なって視認できず)とは、連結部17aを介して連結されている。連結部17aは、幅方向に延びて厚みを有する部材であればよく、座部支持部材18およびアームレスト支持部材17とは別の部材であってもよいし、座部支持部材18またはアームレスト支持部材17の一部であってもよい。なお、連結部17aは、座部支持部材18およびアームレスト支持部材17とは別の部材である場合でも、車体フレーム10の一部を構成する。付加部材50Cは、この連結部17aに当接する。連結部17aは、折畳動作および展開動作で操作する押し棒20に直線的に繋がる箇所または近接する箇所である。
【0051】
付加部材50Cは、第6回動軸29Cを介して後脚13に回動可能に連結されている。図9(A)に示すように、付加部材50Cは、略長細い矩形形状であり、本体部51Cと、凹部53Cが設けられる一方端部52Cと、回動軸29Cが貫通する他方端部54Cとを含む。図9(B)に示すように、一方端部52Cの凹部53Cには、上述する連結部17aが当接する。後脚13と付加部材50Cの間にトーションスプリング40Cが設けられる場合には、コイル部41Cは、第6回動軸29Cに取り付けられる。一方端部42Cは、付加部材50Cに形成される溝部55Cに取り付けられる。また、他方端部43Cは、後脚13に取り付けられる。具体的には、第6回動軸29Cの下方において、後脚13に貫通孔13aが設けられており、他方端部43Cの先端部45Cが差し込まれる。
【0052】
次に、展開動作および折畳動作について説明する。図9(A)に示す展開状態では、付加部材50Cは、後脚13に対して略垂直である。図9(B)に示す折畳状態に変位させると、付加部材50Cの凹部53Cは、連結部17aにより下方に押されていき、図9(C)に示すように後脚13に沿った状態となる。このように折畳式乳母車1を折畳状態に変位させると、トーションスプリング40Cの一方端部42Cと他方端部43Cとが近づき、コイル部41Cに回転エネルギーが蓄えられる。
【0053】
図9(C)に示す折畳状態から図9(A)に示す展開状態にする際には、その蓄えられたエネルギーが開放され、一方端部42Cと他方端部43Cとが離れる方向に作用し、付加部材50Cが勢いよく上方に向かって付勢され、連結部17aが上方に移動する。このように、トーションスプリング40Cが付加部材50Cと後脚13との屈曲角度を大きくする方向に付勢されているため、折畳状態から展開状態への変位がアシストされ、強い力を必要とせずに展開動作をすることができる。
【0054】
実施の形態2のように、第2の部材は、車体フレーム10ではなく、車体フレーム10に取り付けられる別部材であってもよい。また、実施の形態2においても、折畳動作で操作する押し棒20に直線的に繋がる箇所または近接する箇所、具体的には、後脚13の第6回動軸29Cにトーションスプリング40を設けている。
【0055】
なお、上記実施の形態1,2において、トーションスプリング40,40Cは、第1部材と第2部材との屈曲角度を大きくする方向に付勢するように設けられていたがこれに限定されない。トーションスプリング40,40Cは、第1部材と第2部材との屈曲角度を小さくする方向に付勢する部材であってもよい。これにより、展開状態から折り畳み状態へ折り畳む折り畳み状動作を容易に行うことが可能となる。
【0056】
また、実施の形態2において、付加部材50Cは、後脚13に設けることとしたが、折畳動作に伴って車体フレーム10に当接して下方に移動する部材であれば、取付箇所は限定されない。
【0057】
さらに、上記実施の形態1,2において、トーションスプリング40~40Cの構成を説明したが、出願時において一般的に市販されている形状であってもよい。さらに、トーションスプリング40~40Cの固定箇所は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0058】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,1C 折畳式乳母車、10 車体フレーム、11 前脚、13 後脚、15 アームレスト、17 アームレスト支持部材、18 座部支持部材、23 反転ブラケット、24 第1回動軸、25 第2回動軸、26 第3回動軸、27 第4回動軸、28 第5回動軸、29C 第6回動軸、40,40C トーションスプリング、50C 付加部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9