(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001210
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】H3-リガンドの新たな治療用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20221222BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221222BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221222BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20221222BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K31/4545
C07D401/12 CSP
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/16
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/20
A61P25/32
A61P25/00
A61P43/00 113
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172621
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2020501592の分割
【原出願日】2018-03-21
(31)【優先権主張番号】17305309.1
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519342161
【氏名又は名称】ビオプロジェ・ファルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ-マリー・ルコント
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-シャルル・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ラベーウ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・カペ
(57)【要約】
【課題】1つには、できるだけ効能が高く、できるだけ低い有効用量を有する薬剤候補を提供すること。
【解決手段】本発明は、極めて強力なH3-リガンド:(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドの低用量投与を含む新たな治療用途に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病;注意力;覚醒及び記憶障害;精神病理における認知障害;特に高齢者における認知、気分及び警戒障害;抑うつ又は無力症状態;パーキンソン病;閉塞性睡眠時無呼吸;レビー小体型認知症;血管性認知症;めまい;乗り物酔い;肥満;糖尿病及びメタボリック症候群;睡眠障害;ストレス;向精神性障害;てんかん;うつ病;脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー;視床下部下垂体分泌、脳循環及び/又は免疫系の障害;日中の過度の眠気、例えばパーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸又は認知症に関連する日中の過度の眠気及び疲労;物質、とりわけアルコール依存障害;物質乱用離脱症候群の予防;注意力欠如障害;脳卒中後疲労、気分、認知及び警戒障害;自閉症における認知障害;慢性痛及び慢性疲労;小児若しくは成人における又は脳血管障害後のADHD(注意欠陥多動性障害)の注意力及び警戒障害から選択されるヒト患者の障害を治療及び/若しくは予防するため、並びに/又は健康なヒトにおける夜間勤務若しくは時間シフトへの順応を容易にするための使用のための、式(A):
【化1】
の(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド若しくはその薬学的に許容できる塩及び/又は前記化合物(A)若しくはその塩の溶媒和物であって、前記使用が、化合物(A)若しくはその薬学的に許容できる塩、及び/又は前記塩若しくは前記化合物(A)の溶媒和物の、(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり10~90μgの間に含まれる塩基の用量でのヒトへの投与を含む、化合物(A)。
【請求項2】
睡眠障害が、不眠症、入眠及び睡眠維持の障害、睡眠断片化、睡眠時随伴症、REM睡眠障害、睡眠呼吸障害、概日リズム障害、脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー、日中の過度の眠気(「睡眠発作」を含む)、例えばパーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸又は認知症に関連する日中の過度の眠気を含む、請求項1に記載の化合物(A)。
【請求項3】
化合物(A)が、その薬学的に許容できる塩、例えば塩酸塩、シュウ酸塩、二塩酸塩、臭化水素酸塩、二臭化水素酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、硫酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、シクラミン酸塩、トルエンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、チオシアン酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ジクロロ酢酸塩、グリセロリン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、エタンスルホン酸塩、カンファー-10-スルホン酸塩、グルタミン酸塩、アルギン酸塩、パモ酸塩、2-オキソ-グルタル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、マロン酸塩、ゲンチジン酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、ラクトビオン酸塩、4-アミノサリチル酸塩、グリコール酸塩、セスキグリコール酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピログルタミン酸塩、マンデル酸塩、リンゴ酸塩、馬尿酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、グルタル酸塩、ケイ皮酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、ショウノウ酸塩、酢酸塩、カプロン酸塩、ニコチン酸塩、イソ酪酸塩、プロピオン酸塩、carate、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ウンデセン-10-酸塩、カプリル酸塩、オロチン酸塩、炭酸塩、5-スルホサリチル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;及び/又は溶媒和物、例えば水和物、エタノレート、ヘミエタノレートの形態である、請求項1又は2に記載の化合物(A)。
【請求項4】
化合物(A)が塩酸塩の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項5】
化合物(A)が二塩酸塩の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項6】
化合物(A)が二塩酸塩の四水和物の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項7】
ヒト患者への投与のための1日用量が(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり20~50μgの間に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項8】
ヒトへの投与のための1日用量が(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり30~45μgの間に含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項9】
化合物(A)が1日一回又は2日毎に一回投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項10】
化合物(A)が1日一回投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項11】
化合物(A)が経口経路を介して投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物(A)又はその薬学的塩。
【請求項12】
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドシュウ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩及びその三水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩及びその2.5水和物(2.5)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩及びそのヘミエタノレート一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩及びその二水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩及びその一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(セスキ)グリコール酸塩及びその一水和物
からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物(A)。
【請求項13】
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩及びその三水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩及びその2.5水和物(2.5)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩及びそのヘミエタノレート一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩及びその二水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2ナフトエ酸塩及びその一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(セスキ)グリコール酸塩及びその一水和物
からなる群から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて強力なヒスタミンH3-受容体リガンドの低用量投与を含む新たな治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2006/117609は、式:
【0003】
【0004】
の非イミダゾールヒスタミンH3リガンド並びにCNS障害、例えばアルツハイマー病;注意力;覚醒及び記憶障害;精神病理における認知欠損;高齢者における障害;抑うつ又は無力症状態;パーキンソン病;閉塞性睡眠時無呼吸;レビー小体型認知症;血管性認知症;めまい;乗り物酔い;アルコール及びその他の物質乱用;慢性痛;肥満;糖尿病及びメタボリック症候群;睡眠障害;ストレス;向精神性障害;けいれん;うつ病;ナルコレプシー(発作性睡眠);視床下部下垂体分泌の障害,脳循環及び/又は免疫系を治療及び/又は予防するため;及び/又は健康なヒトにおける夜間勤務又は時間シフトへの順応を容易にするためのその使用を開示している。
【0005】
WO2006/117609は、前記リガンドが、通常0.1mg~1000mgの間に含まれる単位用量を1日一回、好ましくは1~500mgを1日一回~四回、更により好ましくは10mg~300mgを1日二回投与される単位用量のヒトへの投与に広く適していることを開示している。
同様に、ナルコレプシーを治療するために認可されているもう1つ別の非イミダゾールH3アンタゴニストであるピトリサント(pitolisant)が4.5mg及び18mgの単位剤形(コーティング錠)で上市されている。最適な認可された治療用量は1日に36mgまでであることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20th ed.; Gennaro, A. R., Ed.; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia、PA、2000
【非特許文献2】Ashworth, S.,ら、Evaluation of 11C-GSK189254 as a novel radioligand for the H3 receptor in humans using PET. J Nucl Med、2010. 51(7):1021~9頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に言って、できるだけ強力な薬剤候補を同定することが望まれている。より高い効能は、概して、標的に対する高い選択性、より低いオフターゲットに結合する危険性、従ってより高い臨床的安全性を伴う。
それ故、できるだけ効能が高く、できるだけ低い有効用量を有する薬剤候補を同定することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
WO2006/117609に開示されているH3リガンドで、H3-リガンドの開示されている用量にも拘らず、本発明者は、この度、式:
【0010】
【0011】
の(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(本明細書では「化合物(A)」という)が意外なことに極めて優れたプロフィールを示し、それ故実質的に低い有効用量を可能にすることを見出した。
【0012】
それ故、第1の目的に従って、本発明は、式(A):
【0013】
【0014】
の(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド若しくはその薬学的に許容できる塩及び/又は前記化合物(A)の溶媒和物若しくはその塩の、ヒト患者において、アルツハイマー病;注意力;覚醒及び記憶障害;精神病理における認知障害;特に高齢者における認知、気分及び警戒障害;抑うつ又は無力症状態;パーキンソン病;閉塞性睡眠時無呼吸;レビー小体型認知症;血管性認知症;めまい;乗り物酔い;肥満;糖尿病及びメタボリック症候群;睡眠障害;ストレス;向精神性障害;てんかん;うつ病;脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー;物質乱用、とりわけアルコール依存障害、物質乱用離脱症候群の予防;自閉症における認知障害;慢性痛及び慢性疲労;脳卒中後疲労,気分、警戒及び認知障害;小児若しくは成人における又は脳血管障害後のADHD(注意欠陥多動性障害)の注意力及び警戒障害;視床下部下垂体分泌、脳循環及び/又は免疫系の障害;日中の過度の眠気、例えばパーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸又は認知症に関連する日中の過度の眠気及び疲労から選択される障害を治療及び/又は予防するため;及び/又は健康なヒトにおける夜間勤務又は時間シフトへの順応を容易にするための使用に関し、前記使用は、(A)の、(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり10~90μgの間に含まれる用量でのヒトへの投与を含む。
【0015】
また、本明細書には、(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり10~90μgの間に含まれる用量で化合物(A)を薬学的に許容できる担体又は賦形剤と共にそれを必要とする患者に投与することを含む上記障害の予防及び/又は治療方法も開示されている。
【0016】
一実施形態によると、使用は、睡眠障害、例えば不眠症、入眠及び睡眠維持の障害、睡眠断片化、睡眠時随伴症、REM睡眠障害、睡眠呼吸障害、概日リズム障害、脱力発作を伴う又は伴わないナルコレプシー、日中の過度の眠気(「睡眠発作」を含む)、例えばパーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸又は認知症に関連する疲労又は日中の過度の眠気を治療及び/又は予防するためである。別の使用は、物質乱用障害、とりわけアルコール依存症の治療及び/又は予防のためである。別の使用は、脳卒中に関連する気分、認知及び警戒障害の治療及び/又は予防のためである。別の使用は、ADHDにおける又は脳血管障害後の認知及び注意力障害を治療及び/又は予防するためである。
【0017】
一実施形態によると、化合物(A)は式(A)に示されているようにその塩基の形態である。或いは、化合物(A)は、薬学的に許容できる塩、例えば塩酸塩、シュウ酸塩、二塩酸塩、臭化水素酸塩、二臭化水素酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、硫酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、シクラミン酸塩、トルエンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、チオシアン酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ジクロロ酢酸塩、グリセロリン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、エタンスルホン酸塩、カンファー-10-スルホン酸塩、グルタミン酸塩、アルギン酸塩、パモ酸塩、2-オキソ-グルタル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、マロン酸塩、ゲンチジン酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、クエン酸塩、グルクロン酸塩、ラクトビオン酸塩、4-アミノサリチル酸塩、グリコール酸塩、セスキグリコール酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピログルタミン酸塩、マンデル酸塩、リンゴ酸塩、馬尿酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、グルタル酸塩、ケイ皮酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、ショウノウ酸塩、酢酸塩、カプロン酸塩、ニコチン酸塩、イソ酪酸塩、プロピオン酸塩、carate、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ウンデセン-10-酸塩、カプリル酸塩、オロチン酸塩、炭酸塩、5-スルホサリチル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;及び/又は溶媒和物、例えば水和物、エタノレート、ヘミエタノレートの形態であってもよい。
従って、「化合物(A)」という表現は、本明細書で使用されるとき、他に特定されない限りその薬学的に許容できる塩及び/又は前記式(A)の化合物若しくはその塩の溶媒和物も意味する。二塩酸塩は特に言及されている。
【0018】
「塩基の形態の化合物(A)という表現は、は上に示されている化合物(A)に対応する。
【0019】
一実施形態によると、化合物(A)は次の薬学的に許容できる塩の形態であり得る:
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドシュウ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩及びその三水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩及びその2.5水和物(sestertihydrate)(2.5)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩及びそのヘミエタノレート一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩及びその二水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩及びその一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(セスキ)グリコール酸塩及びその一水和物。
【0020】
一実施形態によると、化合物(A)の二塩酸塩の四水和物形態である。
【0021】
化合物(A)の四水和物は少なくとも30%~70%の範囲の相対湿度で安定であり、これは既に記載された二塩酸塩の吸湿性と比較して改良された特性である。また化合物(A)の四水和物は20℃~40℃の範囲の温度でも安定である。
【0022】
化合物(A)の四水和物は次の特徴の1つ又は複数を示す:
一実施形態によると、化合物(A)の四水和物形態は毛細管法で測定したとき191℃付近に融解ピークを示す。
別の実施形態によると、示差走査熱量測定による分析は、4つの水分子の喪失に対応して53℃及び83℃付近で始まる2つの吸熱事象を示す;最後の事象は191℃付近で始まって観察される。
別の実施形態によると、化合物(A)の四水和物の水含量は質量で14~16%の間に含まれ、通常約15.3±0.7%である。
【0023】
一実施形態によると、化合物(A)の四水和物形態は以下に記載する粉末X線回折線の1つ又は複数を示す:
【0024】
【0025】
より具体的には、以下のピークを示す:
【0026】
【0027】
化合物(A)の二塩酸塩の四水和物形態は非常に安定であることが示されている。
【0028】
化合物(A)の二塩酸塩の四水和物は、濃縮による溶媒からの可溶化、非溶媒の添加、及び/又は温度の低下等の通常の方法によって製造することができる。
【0029】
一実施形態によると、化合物(A)の二塩酸塩の四水和物は:
- (A)の二塩酸塩を水に溶解させる工程;
- 固体が分離するまで濃縮する工程;及び
- 固体を質量で15.3±0.7%の最終水含量まで乾燥する工程
を含む方法によって製造できる。
【0030】
或いは、(A)の二塩酸塩の四水和物は次のようにして製造することができる:
- 水性の塩酸を塩基(A)に加える;
- アセトンを加える;
- 固体が分離するまでシード処理する;
- ろ過する;及び
- 固体を質量で15.3±0.7%の最終水含量まで乾燥する。
【0031】
一実施形態によると、ヒトへの投与のための化合物(A)の1日用量は(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり20~50μgの間に含まれ、好ましくは1日当たり30~45μgの塩基である。
【0032】
別の実施形態によると、本発明の方法は、3日毎に一回、一日おきに一回(qod)、1日一回(qd)のの間に含まれる頻度での前記用量の化合物(A)の投与を含み得る。好ましくは、投与は1日一回起こり得る。
【0033】
本発明の用量は1日以内に与えられる各投与用量の累積用量であると理解されたい。
【0034】
本明細書に記載されている疾患及び状態の治療を必要とするこれらの対象の同定は十分当業者の能力及び知識の範囲内である。当技術分野に精通している臨床医は、臨床検査、健康診断、遺伝子検査及び病歴/家族歴を使用することによって、かかる治療を必要とするこれらの対象を容易に同定することができる。
【0035】
本発明の式(A)の化合物の実際の用量レベルは、特定の組成物及び投与の方法に対して所望の治療反応を得るのに有効な活性成分の量を得るように変えることができる。従って、選択される用量レベルは所望の治療効果、投与の経路、所望の治療の時間及びその他の要因、例えば患者の状態に依存する。
治療上有効な量は、慣用技術を使用することにより、類似の状況で得られた結果を観察することによって、当業者としての担当診断医により容易に決定することができる。治療上有効な量を決定する際には、限定されることはないが:対象の種;その大きさ、年齢、及び全般的健康状態;関与する具体的な疾患;関与の程度又は疾患の重症度;個々の対象の反応;投与される特定の化合物;投与機序;投与される製剤の生物学的利用性;選択される投与計画;併用薬の使用;及びその他関連する状況を含む多くの要因が担当診断医により考慮される。
所望の生物学的効果を達成するのに必要とされる化合物(A)の量は投与される薬剤の投薬量、疾患の種類、患者の病状及び投与の経路を始めとして多くの要因に応じて変化する。
一般的に言って、投与される薬剤の好ましい投薬量は疾患又は障害の種類及び進行の程度、特定の患者の全体的健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的効率、並びに化合物賦形剤の配合、及びその投与の経路等の可変要素に依存するようである。化合物(A)の1日用量は一般に(塩基に関して)患者一人に付き1日当たり90μg未満である。
【0036】
更なる実施形態によると、本発明の方法はまた、レボドパ、ロピノロール(ropinorole)、リスリド、ブロモクリプチン、プラミキセポール(pramixepole)等の抗パーキンソン薬から選択される、又はモダフィニルを含む別の種類の抗ナルコレプシー薬若しくは抗ナルコレプシー薬とされる薬剤から選択される1種又は複数の更なる活性成分の投与も含む。
【0037】
化合物(A)は1種又は複数の薬学的に許容できる賦形剤と混和することにより医薬組成物に配合することができる。
組成物は単位剤形として都合よく投与することができ、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy、20th ed.; Gennaro, A. R., Ed.; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia、PA、2000に記載されているように製薬分野で周知の方法のいずれかで製造できる。
化合物(A)は経口;非経口、例えば皮下、筋肉内、静脈内;舌下、局所;局部;気管内;鼻腔内経皮又は直腸等の様々な投与経路により投与することができ、活性成分は薬学的に許容できる賦形剤又はビヒクルと共に医薬組成物中に組み合わせられる。
【0038】
それ故、別の目的によれば、本発明はまた、上記障害を治療及び/又は予防する際に使用される化合物(A)及び薬学的に許容できる賦形剤又はビヒクルを含む医薬組成物にも関し、ここで化合物(A)は(塩基の形態の化合物(A)に関して)1日当たり10~70μgの間に含まれる用量で投与される。
局所適用の場合、本発明の組成物は、クリーム、ゲル、軟膏又はローションとして使用してもよい。
特に、非経口投与に適した配合は無菌であり、懸濁剤及び増粘剤及び酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬及び、配合物を対象の受容者の血液と等張にし、適切に調整されたpHを有する溶質を含有し得るエマルション、懸濁液、水性及び非水性の注射液を包含する。
【0039】
本発明によると、適当な配合物としての化合物又は組成物の経口投与が有利に使用される。患者に経口で投与するのに適した配合物は、各々が所定量の式(A)の化合物を含有する軟又は硬ゼラチン等のカプセル、錠剤等の個別の単位を含む。配合物はまた、粉末;顆粒;水性液体若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液、或いは水中油乳濁液若しくは油中水乳濁液も包含する。
【0040】
「薬学的に」又は「薬学的に許容できる」とは、必要に応じて動物、又はヒトに投与したときに不利、アレルギー又はその他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を意味する。
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容できる賦形剤、ビヒクル又は担体」には、特に希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルが含まれる。薬学的に活性な物質に対するかかる成分の使用は当技術分野で周知である。
【0041】
本発明に関連して、「治療する」又は「治療」という用語は、本明細書で使用されるとき、かかる用語が使われる障害若しくは状態、又はかかる障害若しくは状態の1つ又は複数の症状の進行を逆転、軽減、抑制するか又は予防することを意味する。
【0042】
「治療上有効な量」は、所望の治療効果を生じるのに有効な本発明による化合物/医薬の量を意味する。
【0043】
本発明において、用語「患者」、又は「それを必要とする患者」は、上記障害に侵されているか又は侵されているようであるヒト又は非ヒト哺乳動物を意図している。好ましくは、患者はヒトである。
【0044】
化合物(A)は単位剤形として投与することができ、ここで「単位用量」という用語は、活性な化合物自身を、又は薬学的に許容できる組成物として含む物理的及び化学的に安定な単位用量のままである、患者に投与することができ、且つ容易に取り扱い包装することができる単一用量を意味する。
適当な単一の剤形は経口形態;舌下、頬側、気管内、眼球内、鼻腔内形態、吸入によって、局所、経皮、皮下、筋肉内又は静脈内、及び直腸形態並びにインプラントを含む。
【0045】
本発明による10~90μgの間の1日用量は上市されている単位剤形、投与される1日用量及び開業医により指示される投与の頻度に従って単位剤形の半分、単一の単位剤形又は2つ以上の単位剤形を投与することによって達成できる。
【0046】
化合物(A)の幾つかの塩は新規である。別の目的によれば、本発明はまた、次の化合物自体にも関する:
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩及びその三水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩及びその2.5水和物(2.5)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩及びそのヘミエタノレート一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩及びその二水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩及びその一水和物;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩;
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(セスキ)グリコール酸塩及びその一水和物。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の実施例は本発明の説明のための非限定実施形態として挙げられる。
【実施例0048】
(実施例1)
ヒトにおけるPK結果
60又は90μgのいずれかの用量で1日一回経口で与えた化合物(A)のCmaxは、1日目及び10日目投与後約2.5~3.5hで達し、単一用量後、並びに60及び90μg繰り返し投与後、それぞれ平均で121及び171pg/mL、並びに172及び344pg/mLであった。
毎日30μgもの低用量の化合物(A)の不眠症に対する活性は夜就寝したとき眠りにつくまでの遅延により証明され、一方1日一回90μgによる10日間の繰り返し処理は幾らか不眠症に至った。
平均のt1/2は多数回投与後10日目に決定して約33hであった。全身クリアランス(Clss/F)は60及び90μgの化合物(A)を繰り返し投与した後それぞれ65%及び74%減少した。60μgの用量投与後化合物(A)の血清レベルは、42%高いCmax及び73%高いAUC0~24hに反映されているように繰り返し投与した後(10日目)は単一用量後(1日目)より高かった。繰り返し投与後の%累積は90μg用量でより顕著であり、Cmaxが101%高く、AUC0~24hが113%高かった。
平均のCmax及びAUC0~24h用量規格化された比に基づいて、ヒトボランティアにおける化合物(A)血清曝露は1日目~10日目の60~90μgのo.d.で用量比例よりも大きく増大する傾向があった。
定常状態は60μg用量で処理の7~8日後に達成されるようである。
【0049】
(実施例2)
化合物(A)の活性な用量の決定
ヒスタミンH3-受容体アンタゴニスト/逆アゴニスト薬剤の治療活性は、その脳内の標的、即ちH3受容体の占有の程度の評価により予測することができる。
この薬剤による占有度は、ヒトにおいて11-Cのような短い半減期の放射性同位体で標識された選択的放射性プローブの結合のそれらの置換によって確実に測定することができる。このようにしてPET画像法では受容体占有の非侵襲的測定が可能である。撮像方法では、受容体に結合する陽電子放出放射性トレーサーの注入と、その後のPETスキャナーを用いるこの結合の測定が必要とされる。H3受容体に対して選択的な放射性リガンドが開発されており、その内で[11C]GSK189254は高い親和性を有するヒスタミンH3受容体アンタゴニストであり、良好な脳透過性及び1.6+0.4時間の終末相半減期を有する。このトレーサーは最近新規なヒスタミンH3アンタゴニストの用量反応占有度を特徴付けるのに使用されており、[11C]-GSK189254のヒトにおいてPETを用いてH3受容体を測定する能力の検証を提供する(Ashworth, S.,ら、Evaluation of 11C-GSK189254 as a novel radioligand for the H3 receptor in humans using PET. J Nucl Med、2010. 51(7):1021~9頁)。
この方法は、新たなH3受容体逆アゴニスト/アンタゴニストの治療用量を2つの工程で予測することを可能にする:1/公知の薬剤Aの治療効果を保証する用量に伴う受容体占有の程度を決定し、2/治療用量のAと同一の受容体占有を保証する新たな薬剤Bの用量を評価する。
この方策は、認可され上市されているH3R逆アゴニストであるピトリサントをその40mgの経口最大治療用量で受ける健康なボランティアにおけるH3R占有度を幾つかの投薬量で与えられた化合物(A)による占有度と比較することによって適用した。
6人の健康なボランティアにおける40mgのピトリサント後のH3R占有度は82.33±8.71%であることが判明した。
以下に示されているように、非常に近いH3R占有度が化合物(A)の60μgの用量で見出され、化合物(A)の30μgの用量で、特に定常状態に達したとき1日一回で10日間繰り返し処理した後に非常に高い占有の程度がまだ存在していた。
【0050】
【0051】
ピトリサントの用量反応試験は様々な病状(ナルコレプシー、パーキンソン病又は閉塞性睡眠時無呼吸に関連する日中の過度の眠気)において20~40mgの経口用量で治療活性を示すので、上記結果は化合物(A)の治療用量が30~60μgの付近にあるという結論に至る。従って後者の化合物は上市されている薬剤ピトリサントより1,000倍強力であると思われる。
【0052】
融点はBuchiキャピラリー融点装置で決定する。
プロトンNMRスペクトルはVarian社400 MHz NMR機器で記録する。化学シフトδはppmで表す。シグナルパターンを表すのに以下の略語を使用する:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項、ms=massif。記録されたスペクトルは推定構造と一致している。
【0053】
赤外線スペクトル(範囲4000~450cm-1)は減衰全反射システムを備えたTHERMO Electron Corporation社Nicolet 380 FT-IRで記録する。波長はcm-1である。
【0054】
(実施例3)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩(210g)及び水(200g)を蒸発容器に仕込む。蒸発システム内の浴の温度を約40℃に設定し、全ての沈殿が溶けるまで混合物を掻き混ぜる。生成物が固体形態として分離するまで水を蒸発させる。
生成物を含有する蒸発容器を真空トレイドライヤーに移し、生成物を30℃で乾燥する。生成物を蒸発容器から実際の乾燥容器に移し、生成物の水含量が質量で15.3±0.5%になるまで30℃で乾燥を続ける。
【0055】
(実施例4)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩四水和物
アセトン(10kg)及び(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド(2.5kg)を仕込む。温度を30~40℃に設定する。(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドが溶けるまで混合物を撹拌し、加圧フィルターを通してろ過し、濃縮する。水(2kg)中塩酸(32%、1.84kg、2.1当量)の溶液を加える。温度を22~30℃に設定し、アセトン(6~7L)を加える。シード処理後22~30℃でアセトンを総量20kgまで加える。懸濁液を18~24℃で1~2時間掻き混ぜ、ろ過する。ケーキをアセトン(3.5kg)と水(240g)の混合物で濯ぐ。生成物を真空トレイドライヤー中窒素流下(Tmax=30℃)で水含量が質量で15.0~16.5%になるまで乾燥する。
【0056】
(実施例5)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二塩酸塩を酢酸エチル、水、濃水酸化ナトリウム及び炭酸カリウムで処理して塩基を遊離させる。相をセライトのパッドを通してろ過し、デカントする。有機相を飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基を得る。粗製塩基をジイソプロピルエーテルで還流し、室温で結晶化させる。得られた固体をろ過し、40℃真空下で2日間乾燥して、純粋な(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基を91℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.17 (d,2H), 7.69 (d,2H), 7.68 (d,2H), 7.00 (d,2H), 4.02 (t,2H), 2.72 (m,2H), 2.35 (t, 2H), 1.90-1.70 (ms,3H), 1.65-1.35 (ms,5H), 0.85-0.75 (ms,4H).
IR (主たるバンド): 2929, 2766, 1606, 1473, 1465, 1241, 1177, 1061, 1029, 822, 569, 515.
【0057】
(実施例6)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドシュウ酸塩
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基をアセトンに溶かし、アセトン中1当量のシュウ酸の溶液で処理する。得られた白色の懸濁液を15時間室温で撹拌し、ろ過し、アセトンで濯ぎ、40℃真空下で2日間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドシュウ酸塩を102℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.12 (d,2H), 7.65 (d,2H), 7.58 (d,2H), 6.95 (d,2H), 4.06 (m,2H), 3.41 (m,1H), 3.34 (m,1H), 3.16 (m, 2H), 2.70 (t,1H), 2.43 (t,1H), 2.150 (m, 2H), 1.85-1.50 (ms,4H), 0.98 (m,1H), 0.79 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2963, 2501, 1704, 1602, 1470, 1449, 1409, 1391, 1287, 1256, 1225, 1169, 1052, 826, 815, 766, 695, 574, 449.
【0058】
(実施例7)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩三水和物
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基をエタノールに溶かし、エタノール中1当量のL-酒石酸の溶液で処理する。得られた白色の懸濁液を超音波処理した後、15時間室温で撹拌し、ろ過し、エタノールで濯ぎ、45℃真空下で15時間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩三水和物を86℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.19 (d,2H), 7.73 (d,2H), 7.66 (d,2H), 7.02 (d,2H), 4.40 (s,2H), 4.12 (m,2H), 3.46 (m,1H), 3.39 (m,1H), 3.21 (m, 2H), 2.75 (t,1H), 2.45 (t,1H), 2.15 (m, 2H), 1.89-1.61 (ms,4H), 1.05 (m,1H), 0.84 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2982, 2882, 2500, 1650, 1600, 1470, 1260, 1213, 1114, 1070, 1046, 883, 674, 576, 477.
【0059】
(実施例8)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基及び1当量のパモ酸をエタノール中で還流する。得られた黄色の懸濁液を15時間室温で撹拌し、ろ過する。固体(過剰の酸を含有する)をエタノール中で還流し、熱いうちにろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した後最小の熱エタノールに溶かす。メチルtert-ブチルエーテルを加えて塩の沈殿を誘発する。室温で2日間撹拌し、ろ過し、メチルtert-ブチルエーテルで濯ぎ、ろ過した後固体を45℃真空下で15時間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩を179℃で融解する黄色の固体として得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.24 (s,2H), 8.17 (d,2H), 8.14 (d,2H), 7.71-7.65 (ms,6H), 7.18 (m,2H), 7.06-7.01 (ms,4H), 4.69 (s,2H), 4.09 (t,2H), 2.77 (t,1H), 2.14 (m, 2H), 1.85-1.61 (ms,4H), 1.07 (m,1H), 0.88 (s,3H). 見えないシグナルが重水素化溶媒のピークに隠れている.
IR (主たるバンド): 2984, 2500, 1644, 1567, 1510, 1445, 1392, 1354, 1214, 1196, 810, 751, 596, 482, 401.
【0060】
(実施例9)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基を熱アセトンに溶かし、熱アセトン中の1当量のフマル酸の溶液で処理する。得られた白色のガムを還流した後15時間室温で撹拌して白色の固体を得る。ろ過し、アセトンで濯ぎ、45℃真空下で15時間乾燥した後(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩を135℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.18 (d,2H), 8.14 (d,2H), 7.70 (d,2H), 7.68 (d,2H), 7.01 (d,2H), 6.53 (s,2H), 4.04 (t,2H), 2.90 (m,2H), 2.56 (m, 2H), 2.06-1.85 (ms,3H), 1.75 (m,1H), 1.70-1.50 (ms,3H), 1.49 (m,1H), 0.88 (m,1H), 0.82 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3161, 2500, 1713, 1656, 1574, 1470, 1403, 1339, 1257, 1235, 1144, 1110 1038, 983, 918, 840, 790, 756, 627, 573, 454.
【0061】
(実施例10)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩2.5水和物(2.5)
水中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の懸濁液を水中1当量のパラ-トルエンスルホン酸の溶液で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に2日間ガスを放出させて、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩2.5水和物を201℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.10 (d,2H), 7.62 (d,2H), 7.55 (d,2H), 7.49 (d,2H), 7.17 (d,2H), 6.92 (d,2H), 4.40 (s,2H), 4.03 (t,2H), 3.37 (m,1H), 3.30 (m,1H), 3.14 (m,2H), 2.71 (m,1H), 2.44 (m,1H), 2.20 (s,3H), 2.06 (m, 2H), 1.85-1.50 (ms,4H), 1.00 (m,1H), 0.79 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2541, 2353, 1651, 1601, 1469, 1402, 1284, 1224, 1205, 1163, 1119, 1030, 1007, 943, 850, 820, 680, 628, 559, 521, 487.
【0062】
(実施例11)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩一水和物ヘミエタノレート
エタノール中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液をエタノール中1当量の1,5-ナフタレンジスルホン酸の溶液で処理する。得られた懸濁液を室温で15時間撹拌し、ろ過し、エタノールで濯ぎ、40℃真空下で2日間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩一水和物ヘミエタノレートを276℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.65 (d,2H), 8.11 (d,2H), 8.00 (d,2H), 7.60 (d,2H), 7.53 (m,2H), 7.49 (m,2H), 6.86 (d,2H), 3.98 (t,2H), 3.37 (m,1H), 3.29 (m,1H), 3.09 (m,2H), 2.64 (t,1H), 2.36 (t,1H), 2.05 (m, 2H), 1.80-1.50 (ms,4H), 0.95 (m,1H), 0.77 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3026, 1601, 1487, 1416, 1261, 1213, 1114, 1030, 983, 806, 764, 665, 609, 580, 526, 502.
【0063】
(実施例12)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩
水中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の懸濁液を水中1当量の85%リン酸で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に2日間ガスを放出させて、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩を116℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.11 (d,2H), 7.64 (d,2H), 7.57 (d,2H), 6.95 (d,2H), 4.05 (m,2H), 3.42 (m,1H), 3.34 (m,1H), 3.15 (m, 2H), 2.70 (t,1H), 2.43 (t,1H), 2.10 (m, 2H), 1.85-1.50 (ms,4H), 0.99 (m,1H), 0.79 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2975, 2883, 2398, 2351, 1603, 1470, 1259, 1216, 1046, 932, 871, 812, 524, 502, 485, 450.
【0064】
(実施例13)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩(bromhydrate)
テトラヒドロフラン中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液を水中1当量の48%臭化水素酸で処理する。得られた懸濁液を室温で15時間撹拌し、減圧下で濃縮し、エタノールで二回共沸させて粘着性の固体を得る。熱アセトニトリル中に希釈し、減圧下で濃縮し、40℃真空下で2日間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩を76℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.15 (d,2H), 7.68 (d,2H), 7.62 (d,2H), 6.98 (d,2H), 4.09 (t,2H), 3.44 (m,1H), 3.36 (m,1H), 3.18 (m, 2H), 2.72 (m,1H), 2.45 (m,1H), 2.13 (m, 2H), 1.85-1.55 (ms,4H), 1.05 (m,1H), 0.82 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3390, 2930, 2633, 2541, 2360, 1604, 1469, 1227, 1173, 1054, 1029, 945, 821, 568, 518, 487.
【0065】
(実施例14)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩
水中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の懸濁液を水中1当量の1,2エタンジスルホン酸の溶液で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に2日間ガスを放出させて、吸湿性の固体を得る。テトラヒドロフラン中で研和し、ろ過し、40℃真空下で2日間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩を155℃で融解するベージュ色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.16 (d,2H), 7.69 (d,2H), 7.61 (d,2H), 6.98 (d,2H), 4.08 (t,2H), 3.44 (m,1H), 3.36 (m,1H), 3.18 (m, 2H), 2.72 (m,1H), 2.45 (t,1H), 2.12 (m, 2H), 1.85-1.55 (ms,4H), 1.02 (m,1H), 0.81 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3390, 2944, 2726, 2355, 1600, 1472, 1218, 1166, 1131, 1022, 997, 823, 760, 544, 524, 500.
【0066】
(実施例15)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩
水中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の懸濁液を1当量の水性5N硫酸で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に2時間ガスを放出させて、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩を71℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.14 (d,2H), 7.67 (d,2H), 7.61 (d,2H), 6.97 (d,2H), 4.08 (t,2H), 3.42 (m,1H), 3.35 (m,1H), 3.18 (m, 2H), 2.73 (m,1H), 2.45 (m,1H), 2.12 (m, 2H), 1.85-1.55 (ms,4H), 1.03 (m,1H), 0.82 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3377, 2931, 2357, 1604, 1470, 1285, 1229, 1174, 1027, 945, 821, 602, 568, 518, 487.
【0067】
(実施例16)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩
エタノール中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液を水中2当量の水性48%臭化水素酸で処理する。得られた溶液を酢酸エチルで沈殿させ、室温で15時間撹拌する。ろ過し、酢酸エチルで濯ぎ、40℃真空下で15時間乾燥した後、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド二臭化水素酸塩を215℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.24 (d,2H), 7.76 (d,2H), 7.67 (d,2H), 7.03 (d,2H), 4.13 (t,2H), 3.49 (m,1H), 3.41 (m,1H), 3.25 (m, 2H), 2.78 (m,1H), 2.50 (t,1H), 2.18 (m, 2H), 1.90-1.60 (ms,4H), 1.08 (m,1H), 0.87 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2930, 2632, 2352, 1601, 1471, 1410, 1292, 1261, 1210, 1182, 1050, 945, 823, 704, 678, 625, 569, 502, 485.
【0068】
(実施例17)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩二水和物
水中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の懸濁液を水中1当量のオロチン酸の懸濁液で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に24時間ガスを放出させて、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩二水和物を125℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.14 (d,2H), 7.66 (d,2H), 7.59 (d,2H), 6.95 (d,2H), 5.98 (s,1H), 4.07 (t,2H), 3.43 (m,1H), 3.36 (m,1H), 3.18 (m, 2H), 2.72 (m,1H), 2.45 (m,1H), 2.11 (m, 2H), 1.85-1.55 (ms,4H), 1.04 (m,1H), 0.82 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2957, 2789, 1667, 1633, 1605, 1472, 1409, 1355, 1285, 1226, 1176, 819, 765, 572, 539, 418.
【0069】
(実施例18)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩
エタノール中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液をエタノール中1当量の5-スルホサリチル酸二水和物の溶液で処理する。得られた懸濁液を室温で20時間撹拌し、ろ過し、エタノールで濯ぎ、45℃真空下で24時間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩を213℃で融解する白色の固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.13 (d,2H), 8.06 (s,1H), 7.67 (d,1H), 7.63 (d,2H), 7.53 (d,2H), 6.90 (d,2H), 6.86 (d,2H), 4.04 (m,2H), 3.42 (m,1H), 3.34 (m,1H), 3.16 (m, 2H), 2.70 (m,1H), 2.43 (m,1H), 2.09 (m, 2H), 1.85-1.55 (ms,4H), 1.02 (m,1H), 0.81 (s,3H).
IR (主たるバンド): 2963, 2671, 2556, 2358, 1667, 1602, 1471, 1366, 1290, 1240, 1164, 1149, 1117, 1021, 878, 771, 667, 584, 503.
【0070】
(実施例19)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩一水和物
エタノール中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液をエタノール及び水中1当量の1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の溶液で処理する。得られた均質な相を凍結乾燥し、室温で開放空気中に24時間ガスを放出させて、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩一水和物を140℃で融解するベージュ色の固体として得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.18 (d,2H), 8.15 (m,1H), 7.75-7.65 (ms,6H), 7.43 (m,1H), 7.35 (m,1H), 7.01 (d,2H), 6.97 (d,2H), 4.08 (t,2H), 3.10 (m,2H), 2.60 (m,1H), 2.10 (m, 2H), 1.85-1.60 (ms,4H), 1.02 (m,1H), 0.87 (s,3H). 見えないシグナルが重水素化溶媒のピークに隠れている.
IR (主たるバンド): 3500, 2356, 1609, 1580, 1471, 1402, 1367, 1313, 1239, 1175, 1035, 984, 806, 774, 578, 491, 447, 426.
【0071】
(実施例20)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩
エタノール中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液をエタノール中1当量の3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の溶液で処理する。得られた均質な相を減圧下で濃縮して油状の残渣を得る。次いでアセトンを加え、溶液を減圧下で濃縮して黄色の固体を得る。最小のアセトン及び一滴の水を加え、得られた懸濁液を超音波処理し、室温で20時間撹拌する。ろ過し、アセトンで濯ぎ、真空下45℃で24時間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩を199℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.26 (s,1H), 8.18 (d,2H), 7.72 (d,1H), 7.70-7.65 (ms,4H), 7.56 (d,2H), 7.31 (t,1H), 7.13 (t,1H), 7.01 (d,2H), 6.94 (s,1H), 4.08 (t,2H), 3.11 (m,2H), 2.64 (m,1H), 2.11 (m, 2H), 1.85-1.60 (ms,4H), 1.02 (m,1H), 0.87 (s,3H). 見えないシグナルが重水素化溶媒のピークに隠れている.
IR (主たるバンド): 2931, 2355, 1645, 1603, 1519, 1464, 1446, 1351, 1238, 1173, 841, 818, 739, 594, 577, 478.
【0072】
(実施例21)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドセスキグリコール酸塩一水和物
テトラヒドロフラン中(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド塩基の溶液をテトラヒドロフラン中1当量のグリコール酸の溶液で処理する。得られた懸濁液を室温で24時間撹拌する。ろ過し、テトラヒドロフランで濯ぎ、真空下45℃で24時間乾燥して、(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドセスキグリコール酸塩一水和物を82℃で融解するオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (D2O): 8.19 (d,2H), 7.71 (d,2H), 7.65 (d,2H), 7.01 (d,2H), 4.12 (t,2H), 3.48 (m,1H), 3.41 (m,1H), 3.22 (m, 2H), 2.76 (m,1H), 2.49 (t,1H), 2.17 (m, 2H), 1.90-1.60 (ms,4H), 1.06 (m,1H), 0.86 (s,3H).
IR (主たるバンド): 3258, 3102, 2930, 2356, 1603, 1470, 1411, 1287, 1232, 1177, 1059, 947, 819, 696, 568, 509, 456.
【0073】
(実施例22)
マウスでの比較薬物動態データ
化合物を1mgの塩基/kgに近い用量でオスのスイスマウスに投与した。サンプル抽出は24時間後血漿及び脳で行った。結果を1mgの塩基/kgに正規化してTable 1(表4)に示す。
【0074】
【0075】
ある程度、例示した化合物は類似の吸収率を示す。実施例のAUCの二塩酸塩四水和物のAUCに対する比をTable 2(表5)に示す。比は全て0.6~1.2の間隔内で合っており、これは試験に伴う実験誤差に対する類似性に適合している。
【0076】
【0077】
顕著な結果はパモ酸塩のものである(実施例8)。パモ酸(エンボン酸)塩は徐放性薬剤を作成するのに広く使用されている(例えばzypadhera/zyprexa relprevv参照、2~4週毎にのみ与えられるオランザピンのパモ酸塩)。
実施例8は、二塩酸塩四水和物(実施例4)と比較して同様なAUC及び同様なCmaxに達する時間を示す。
それ故、特許請求の範囲に記載の化合物Aは、その塩及び/又はそれらからの溶媒和物に関係なく低用量が可能である。
【0078】
(実施例23)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドL-酒石酸塩のXRPD
【0079】
【0080】
(実施例24)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパモ酸塩のXRPD
【0081】
【0082】
【0083】
(実施例25)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドフマル酸塩のXRPD
【0084】
【0085】
【0086】
(実施例26)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドパラ-トルエンスルホン酸塩のXRPD
【0087】
【0088】
【0089】
(実施例27)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,5-ナフタレンジスルホン酸塩のXRPD
【0090】
【0091】
【0092】
(実施例28)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドリン酸塩のXRPD
【0093】
【0094】
(実施例29)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩 相AのXRPD
【0095】
【0096】
(実施例30)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド臭化水素酸塩 相BのXRPD
【0097】
【0098】
【0099】
(実施例31)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1,2-エタンジスルホン酸塩のXRPD
【0100】
【0101】
【0102】
(実施例32)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩 相AのXRPD
【0103】
【0104】
(実施例33)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド硫酸塩 相BのXRPD
【0105】
【0106】
(実施例34)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドオロチン酸塩のXRPD
【0107】
【0108】
(実施例35)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド5-スルホサリチル酸塩のXRPD
【0109】
【0110】
(実施例36)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩のXRPD
【0111】
【0112】
【0113】
(実施例37)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩 相AのXRPD
【0114】
【0115】
(実施例38)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシド3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩 相BのXRPD
【0116】
【0117】
(実施例39)
(3S)-4-{4-[3-(3-メチルピペリジン-1-イル)プロポキシ]フェニル}ピリジン1-オキシドグリコール酸塩のXRPD
【0118】