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  • 特開-ノズルおよびノズルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121002
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ノズルおよびノズルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/50 20060101AFI20230823BHJP
   B22D 41/54 20060101ALI20230823BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B22D41/50 520
B22D41/54
B22D11/10 320F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024187
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】馬場 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 恵輔
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FA10
4E014DA00
4E014DB01
(57)【要約】
【課題】従来技術に比べて耐火物の酸化を一層抑制できるノズルを実現する。
【解決手段】筒状体2と、筒状体2を少なくとも部分的に収容するメタルケース3と、筒状体2とメタルケース3との間の耐火モルタル層4と、を備え、筒状体2が、耐火物製の筒状部材21と、筒状部材21のメタルケース3に収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層22と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、前記筒状体を少なくとも部分的に収容するメタルケースと、前記筒状体と前記メタルケースとの間の耐火モルタル層と、を備え、
前記筒状体が、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の前記メタルケースに収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有するノズル。
【請求項2】
前記筒状体が、前記酸化防止剤層の少なくとも一部を被覆する撥水剤層をさらに有する請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記撥水剤層が、黒鉛、カーボンブラック、および炭化ケイ素の少なくとも一つを含む請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有する筒状体を形成する工程と、
前記酸化防止剤層を少なくとも部分的に包囲する耐火モルタル層を形成する工程と、
前記筒状体をメタルケースに収容する工程と、を備え、
前記筒状体を形成する工程において、前記筒状体の前記メタルケースに収容される部分の少なくとも一部を被覆するように前記酸化防止剤層を形成するノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の鋳造に供されるノズル、および当該ノズルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の鋳造においては、取鍋やタンディッシュなどの容器から溶融金属鋳造ノズル(以下、単に「ノズル」という。)を通してモールド等に溶融金属を注入する。この用途で用いられるノズルは、耐スポーリング性を有するカーボン含有耐火物により形成されることが多い。たとえば特開平11-277196号公報(特許文献1)には、耐火物の亀裂を抑止するとともに外気からのシール性を向上することを目的として、耐火物製の筒状部材をメタルケースで被覆し、筒状部材とメタルケースとの間隙に耐火モルタルを充填してあるノズルが開示されている。
【0003】
一方、ノズル内孔は溶融金属の流れに伴って急加熱されるため、ノズル内孔の周方向には圧縮応力が生じ、ノズル外周の周方向には引張応力が生じる。内孔側と外周側とで反対方向の応力が生じることから、外周から内孔に向かう径方向の亀裂が発生することがある。また、溶融金属の流れに伴ってノズル内孔が陰圧になるため、亀裂を通じて空気が吸引される場合がある。この空気は筒状部材の耐火物が酸化する原因になり、ノズルを劣化させるおそれがある。このような課題に鑑み、特開2010-023057号公報(特許文献2)には、筒状部材のメタルケースに被覆されていない部分に亀裂閉塞材が塗布されている溶融金属鋳造ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-277196号公報
【特許文献2】特開2010-023057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の技術によっても、筒状部材の耐火物の酸化を十分に抑制できない場合があった。特に、筒状部材がメタルケースに被覆されている箇所であっても、酸化が見られる場合があった。
【0006】
そこで、従来技術に比べて耐火物の酸化を一層抑制できるノズルの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るノズルは、筒状体と、前記筒状体を少なくとも部分的に収容するメタルケースと、前記筒状体と前記メタルケースとの間の耐火モルタル層と、を備え、前記筒状体が、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の前記メタルケースに収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るノズルの製造方法は、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有する筒状体を形成する工程と、前記酸化防止剤層を少なくとも部分的に包囲する耐火モルタル層を形成する工程と、前記筒状体をメタルケースに収容する工程と、を備え、前記筒状体を形成する工程において、前記筒状体の前記メタルケースに収容される部分の少なくとも一部を被覆するように前記酸化防止剤層を形成することを特徴とする。
【0009】
従来、耐火物製の筒状部材がメタルケースに収容されている部分では、メタルケースによって空気が遮られることによって耐火物の酸化が抑制されると考えられており、筒状部材のメタルケースに収容されている部分には酸化防止剤の被覆を要しないとする考え方が一般的だった。本発明者らは、筒状部材がメタルケースに被覆されている箇所であっても酸化が見られる場合について詳細に観察し、筒状部材とメタルケースとの間に耐火モルタル層が充填されている場合に、耐火モルタル層中の気孔が空気の通り道として作用して空気が筒状部材に到達し、耐火物の酸化に至ると考えた。この着想に基づいて、筒状部材のメタルケースに収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層を設けることに想到し、本発明を完成した。上記の構成によれば、従来のノズルに比べて耐火物の酸化を一層抑制できる。特にメタルケースで被覆されている部分について、酸化による劣化が生じにくい。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係るノズルは、一態様として、前記筒状体が、前記酸化防止剤層の少なくとも一部を被覆する撥水剤層をさらに有することが好ましい。
【0012】
特許文献2などの従来の技術では、酸化防止剤を塗布した箇所であっても耐火物の酸化が見られる場合があった。本発明者らはこの態様の酸化について詳細に観察し、酸化防止剤が塗布された筒状部材の表面に耐火モルタルが接触した際に、耐火モルタルが酸化防止剤を吸収してしまい、筒状部材に対する酸化防止作用が損なわれると考えた。この着想に基づいて、酸化防止剤層の少なくとも一部を被覆する撥水剤層設けることに着想し、本発明を完成した。この構成によれば、耐火モルタル層を形成する際に酸化防止剤の酸化防止作用が損なわれにくいため、より一層の酸化防止作用が得られる。
【0013】
本発明に係るノズルは、一態様として、前記撥水剤層が、黒鉛、カーボンブラック、および炭化ケイ素の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、撥水剤層が他の成分を含む場合に比べて一層高い酸化防止作用を実現できる。
【0015】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るノズルおよびノズルの製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るノズルを、金属の鋳造に供されるノズル1に適用した例について説明する。
【0018】
〔ノズルの構成〕
本実施形態に係るノズル1は、耐火物製の筒状体2と、メタルケース3と、耐火モルタル層4と、を備える(図1)。メタルケース3は筒状体2を少なくとも部分的に収容しており、筒状体2とメタルケース3との間に耐火モルタル層4が充填されている。本実施形態では、筒状体2の全体がメタルケース3に収容されており、筒状体2の側面の全体がメタルケース3で覆われている。これに対応して、筒状体2の全長とメタルケース3の全長とが実質的に等しい。
【0019】
筒状体2は、耐火物製の筒状部材21と、筒状部材21を被覆する酸化防止剤層22と、酸化防止剤層22を被覆する撥水剤層23と、を有する。筒状部材21を形成する耐火物は、当分野で通常使用される耐火物である限度で特に限定されない。筒状部材21を形成する耐火物は、たとえば、カーボン含有耐火物であってよく、アルミナ、マグネシア、スピネル、ジルコニアなどの酸化物原料、炭化ケイ素などの非酸化物原料、黒鉛、コークス、カーボンブラック、コルタールピッチなどのカーボン原料、などが当該耐火物に含まれうる。
【0020】
本実施形態では、筒状部材21の側面の全体が、酸化防止剤を含む酸化防止剤層22によって被覆されている。酸化防止剤層22に含まれる酸化防止剤は、当分野で通常使用される酸化防止剤である限度で特に限定されない。かかる酸化防止剤は、たとえば、Al 20質量%以上30質量%以下、SiO 5質量%以上15質量%以下、NaOおよびKO 合計15質量%以上25質量%以下、P 20質量%以上40質量%以下、の組成を有する酸化防止剤でありうる。酸化防止剤は、ノズル1の使用温度帯において溶融して流動状態になり、筒状体2に生じた亀裂を充填する、という作用機序で酸化防止作用を発現する。そのため酸化防止剤の組成は、ノズル1の使用温度帯を考慮して決定されうる。
【0021】
酸化防止剤層22の厚さが0.1mm以上であると、酸化防止作用が特に発現しやすいため、好ましい。酸化防止剤層22の厚さは、0.5mm以上であることがより好ましい。また、酸化防止剤層22の厚さが5mm以下であると、均一な酸化防止剤層22が得られやすいため、好ましい。酸化防止剤層22の厚さは、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態では、酸化防止剤層22の全体が、撥水剤を含む撥水剤層23によってさらに被覆されている。撥水剤層23に含まれる撥水剤は、当分野で通常使用される撥水剤である限度で特に限定されない。かかる撥水剤は、たとえば、黒鉛、カーボンブラック、炭化ホウ素、炭化ケイ素、アルミナ、およびシリカ、から選択される一種類または複数種類をケイ酸アルカリ溶液などでスラリー化したもの、石油系撥水剤、フッ素樹脂系撥水剤、シリコーン樹脂系撥水剤などでありうる。撥水剤層23は、黒鉛、カーボンブラック、および炭化ケイ素の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0023】
酸化防止剤層22を撥水剤層23で被覆することによって、耐火モルタル層4に含まれる水分と酸化防止剤層22の酸化防止剤との反応を抑制でき、これによって酸化防止作用が損なわれにくくなる。撥水剤層23の厚さが0.1mm以上であると、撥水効果が特に発現しやすく、酸化防止剤層22の酸化防止作用が維持されやすいため好ましい。撥水剤層23の厚さは、0.5mm以上であることが好ましい。また、撥水剤層23の厚さが5mm以下であると、均一な撥水剤層23が得られやすいため、好ましい。撥水剤層23の厚さは、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
メタルケース3は、筒状体2を収容する金属製のケースである。メタルケース3を構成する金属材料は、メタルケースを構成する金属材料として当分野で通常使用される限度で特に限定されず、たとえば鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、などでありうる。また、メタルケース3は、公知の金属加工技術(プレス成型など)によって形成されうる。
【0025】
耐火モルタル層4は、充填性を向上する目的で、筒状体2とメタルケース3との間に耐火モルタルが充填された層である。耐火モルタル層4を構成する耐火モルタルは、当分野で通常使用される耐火モルタルである限度で限定されず、たとえば、アルミナやシリカなどの酸化物を主成分とする耐火モルタルでありうる。特に、従来技術では、気孔率が比較的高い耐火モルタルを用いた場合に、気孔を通じて空気が耐火物に到達し、これによって耐火物が酸化して損傷する不具合が知られていたが、本実施形態では筒状部材21が酸化防止剤層22で被覆されているので、耐火モルタル層4の気孔率にかかわらず、筒状部材21を構成する耐火物の損傷が抑制されている。
【0026】
〔ノズルの製造方法〕
本実施形態に係るノズル1の製造方法は、筒状体2を形成する工程と、筒状体2の酸化防止剤層22を包囲する耐火モルタル層4を形成する工程と、筒状体2をメタルケース3に収容する工程と、を備える。筒状体2を形成する工程は、耐火物製の筒状部材21を形成するステップと、筒状部材21を酸化防止剤で被覆して酸化防止剤層22を形成するステップと、酸化防止剤層22を撥水剤で被覆して撥水剤層23を形成するステップと、を含む。
【0027】
耐火物製の筒状部材21を形成するステップとしては、耐火物製の部材を形成する公知の方法を適用できる。すなわち、上記の原料をバインダーとともに混練するステップ、圧縮成形などの方法で混練された原料を所望の形状に成形して予備成形体を得るステップ、予備成形体を乾燥するステップ、乾燥後の予備成形体を焼成するステップ、などを含む工程により、筒状部材21が形成されうる。
【0028】
酸化防止剤層22を形成するステップは、たとえば、筒状部材21の表面に酸化防止剤を塗布する方法によって形成できる。酸化防止剤を塗布する方法としては、酸化防止剤に水などの助剤を加えてスラリーを形成し、刷毛やスプレーなどの公知の器具を用いて筒状体2の表面に当該スラリーを塗布する方法が例示される。このとき形成されるスラリー中の酸化防止剤の濃度は特に限定されないが、たとえば50質量%以上90質量%以下でありうる。また、酸化防止剤を塗布した後の筒状部材21を加熱処理してもよい。この場合の加熱処理の温度は、たとえば500℃以上でありうる。
【0029】
撥水剤層23を形成するステップは、酸化防止剤層22を形成する工程と同様の方法により実施されうる。すなわち、刷毛やスプレーなどの公知の器具を用いて酸化防止剤層22の表面に撥水剤を含むスラリーを塗布する方法が例示される。このとき形成されるスラリー中の撥水剤の濃度は特に限定されないが、たとえば50質量%以上90質量%以下でありうる。
【0030】
耐火モルタル層4を形成する工程は、たとえば筒状体2の表面(すなわち撥水剤層23)に耐火モルタルを塗布する方法によって実施されうる。また、筒状体2をメタルケース3に収容する工程は、たとえば、あらかじめ所定の形状に形成されているメタルケース3に、筒状体2を挿入する方法で実施されうる。この手順で実施される場合、筒状体2の外側に耐火モルタル層4を形成したのちに、筒状体2と耐火モルタル層4とを一体としてメタルケース3に挿入することになる。
【0031】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るノズルおよびノズルの製造方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0032】
上記の実施形態では、筒状体2の全体がメタルケース3に収容されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るノズルにおいて、筒状体が少なくとも部分的にメタルケースに収容されていればよい。筒状体のどの部分をメタルケースに収容するかは、ノズルの用途に鑑みて決定される。
【0033】
上記の実施形態では、筒状部材21の側面の全体が酸化防止剤層22によって被覆されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るノズルにおいて、筒状部材の側面の全体が酸化防止剤層によって被覆されている必要はなく、筒状部材のメタルケースに収容されている部分の少なくとも一部が酸化防止剤層によって被覆されていればよい。
【0034】
上記の実施形態では、酸化防止剤層22の全体が撥水剤層23によってさらに被覆されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係るノズルにおいて、撥水剤層を設けなくてもよい。また、撥水剤層を設ける場合であっても、酸化防止剤層の全体が撥水剤層によって被覆されている必要はなく、酸化防止剤層の少なくとも一部が撥水剤層によって被覆されていればよい。
【0035】
なお、撥水剤層を設けない態様のノズルを製造する場合、筒状体を形成する工程において、撥水剤層を形成するステップが省略される。
【0036】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0037】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。なお、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0038】
〔試薬〕
(酸化防止剤)
酸化防止剤として、Al 23質量%、SiO 9質量%、NaOおよびKO 合計20質量%、P 30質量%のリン酸ガラス系の釉薬を使用した。
【0039】
(撥水剤)
実施例2~10では、各実施例において示す無機物をケイ酸カリウム水溶液に分散させたスラリーを撥水剤として用いた。各実施例において、スラリー中の無機物の濃度を30質量%とした。実施例11では、撥水剤として石油系撥水剤を用いた。
【0040】
(耐火モルタル)
耐火モルタルとして、Al 3質量%、SiO 86質量%のものを使用した。なお、残部はアルカリ金属、アルカリ土類金属などである。
【0041】
〔ノズルの作成〕
(実施例1)
撥水剤層を形成するステップを省略した他は上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有さないノズルを作成した。酸化防止剤層の厚さを1mmとした。なお、ノズルの形状は、全長305mm、外径155m、内径50mmとした。
【0042】
(実施例2~5)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物として黒鉛を用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとした。撥水剤層の厚さを、実施例2では0.5mm、実施例3では1mm、実施例4では3mm、実施例5では5mmとした。
【0043】
(実施例6)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物としてカーボンブラックを用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0044】
(実施例7)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物として炭化ホウ素を用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0045】
(実施例8)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物として炭化ケイ素を用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0046】
(実施例9)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物としてアルミナを用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0047】
(実施例10)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤中の無機物としてシリカを用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0048】
(実施例11)
上記に説明した実施形態に従い、撥水剤層を有するノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。撥水剤として石油系撥水剤を用いた。酸化防止剤層の厚さを1mmとし、撥水剤層の厚さを1mmとした。
【0049】
(比較例)
酸化防止剤層を形成するステップおよび撥水剤層を形成するステップを省略した他は上記に説明した実施形態に従い、酸化防止剤層および撥水剤層を有さないノズルを作成した。ノズルの形状は、実施例1と同様とした。
【0050】
〔評価方法〕
実施例および比較例の各ノズルを十分に乾燥させた後に、1000℃の酸化雰囲気下で10時間加熱した。加熱後の試料を室温まで放冷した後に、試料を切断して断面を光学顕微鏡で観察した。実施例および比較例の各例の耐酸化性を、断面の観察結果に基づいて以下のA~Dの四水準で評価した。
A:断面に酸化層がほとんど見られない。
B:注意深く観察すると酸化層を発見できる。
C:比較例(水準D)に比べて酸化層が減少している。
D:断面に明らかに酸化層が見られる。(比較例)
【0051】
なお、断面における酸化層は、試料の切断面におけるカーボン消失層の厚さを観察する方法で特定した。
【0052】
〔結果〕
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。全ての実施例において、酸化防止剤層が設けられていない比較例に比べて酸化層の減少が見られた。また、撥水剤層が設けられている実施例2~11において、撥水剤層が設けられていない実施例1に比べて一層の酸化層の減少が見られた。特に、黒鉛、カーボンブラック、炭化ホウ素、または炭化ケイ素を含む撥水剤を使用して、撥水剤層の厚さを1mm以下にした実施例2、3、6、7、および8において、最も顕著な酸化抑制作用が認められた。
【0053】
表1:実施例および比較例
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、たとえば金属の鋳造に供されるノズルに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 ノズル
2 筒状体
21 筒状部材
22 酸化防止剤層
23 撥水剤層
3 メタルケース
4 耐火モルタル層
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
筒状体と、前記筒状体を少なくとも部分的に収容するメタルケースと、前記筒状体と前記メタルケースとの間の耐火モルタル層と、を備え、
前記筒状体が、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の前記メタルケースに収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有し、
前記酸化防止剤層は、ノズルの使用温度帯において溶融する酸化防止剤を含むノズル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有する筒状体を形成する工程と、
前記酸化防止剤層を少なくとも部分的に包囲する耐火モルタル層を形成する工程と、
前記筒状体をメタルケースに収容する工程と、を備え、
前記酸化防止剤層は、ノズルの使用温度帯において溶融する酸化防止剤を含み、
前記筒状体を形成する工程において、前記筒状体の前記メタルケースに収容される部分の少なくとも一部を被覆するように前記酸化防止剤層を形成するノズルの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係るノズルは、筒状体と、前記筒状体を少なくとも部分的に収容するメタルケースと、前記筒状体と前記メタルケースとの間の耐火モルタル層と、を備え、前記筒状体が、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の前記メタルケースに収容されている部分の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有し、前記酸化防止剤層は、ノズルの使用温度帯において溶融する酸化防止剤を含むことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明に係るノズルの製造方法は、耐火物製の筒状部材と、前記筒状部材の少なくとも一部を被覆する酸化防止剤層と、を有する筒状体を形成する工程と、前記酸化防止剤層を少なくとも部分的に包囲する耐火モルタル層を形成する工程と、前記筒状体をメタルケースに収容する工程と、を備え、前記酸化防止剤層は、ノズルの使用温度帯において溶融する酸化防止剤を含み、前記筒状体を形成する工程において、前記筒状体の前記メタルケースに収容される部分の少なくとも一部を被覆するように前記酸化防止剤層を形成することを特徴とする。