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  • 特開-成形体および吸音材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121005
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】成形体および吸音材
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230823BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20230823BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20230823BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20230823BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C08J5/04
C08L101/00
C08L23/00
C08J9/36 CES
C08J5/00
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024192
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 利奈
(72)【発明者】
【氏名】伏見 速雄
(72)【発明者】
【氏名】南 毅拡
(72)【発明者】
【氏名】中山 靖章
【テーマコード(参考)】
4F071
4F072
4F074
4J002
5D061
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA15
4F071AA20
4F071AA82
4F071AA84
4F071AD01
4F071AF17Y
4F071AF20Y
4F071AF50Y
4F071BA09
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC03
4F071BC12
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB03
4F072AB04
4F072AB33
4F072AD04
4F072AD56
4F072AH06
4F072AH23
4F072AK02
4F072AK06
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL17
4F074AA02
4F074AA24
4F074AA98
4F074CA51
4F074CB91
4F074CC03Z
4F074CC04Z
4F074CC62Z
4F074CD20
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA23
4F074DA57
4J002AA01W
4J002AB01X
4J002BB00W
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4J002BB03W
4J002BB11W
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4J002FD01X
4J002GF00
5D061AA06
5D061AA22
5D061BB21
5D061BB24
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】吸音性能を保持しつつ、適度な剛性を有する成形体、および該成形体を用いてなる吸音材を提供すること。
【解決手段】パルプ繊維および合成樹脂を含有する成形体であって、前記成形体の密度が0.1g/cm以上0.8g/cm以下であり、前記成形体の曲げ弾性勾配が0.5N/cm以上である、成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維および合成樹脂を含有する成形体であって、
前記成形体の密度が0.1g/cm以上0.8g/cm以下であり、
前記成形体の曲げ弾性勾配が0.5N/cm以上である、
成形体。
【請求項2】
前記成形体の厚みが、2mm以上20mm以下である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記成形体の坪量が500g/m以上4000g/m以下である、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
前記成形体の周波数2kHzにおける垂直入射吸音率が5%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記合成樹脂が、ポリオレフィンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
前記合成樹脂が、合成繊維を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項7】
前記成形体中のパルプ繊維に対する合成樹脂の質量比(合成樹脂/パルプ繊維)が、10/90以上95/5以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の成形体を用いてなる、吸音材。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の成形体の製造する方法であって、以下の工程1および工程2をこの順で含む、製造方法。
工程1:パルプ繊維および合成樹脂を含有する多孔質体を準備する工程
工程2:前記多孔質体を熱プレスする工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、これを用いてなる吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気冷蔵庫、エアコン、電気掃除機等の家電製品などにおいて、モータ、コンプレッサ等が発生する騒音、振動を吸収するために、例えば多孔質からなる吸音材(多孔質吸音材)を用いることが知られている。
また、建築用内装材、自動車などにも吸音材が使用され、自動車においては、車室内空間の静かさを保つために、車体を構成するパネル上や、フロアパネルとカーペットとの間に吸音材を貼り合わせることが行われている。
特許文献1には、低周波音から高周波音まで広範囲の周波数帯域の音に対して、薄くても高い吸音効果を有する吸音材の提供を目的として、密度が0.04~0.20g/cmであり、アスカーFP硬度が15~95である多孔質体と、前記多孔質体の少なくとも一方の面に設けられた、坪量が10~100g/mであり、MD方向における引張伸びが100~800%であるフィルムと、前記多孔質体と前記フィルムとの間に設けられた接着剤層と、を備え、前記フィルムおよび接着剤層を貫通するスリットが設けられている、吸音材が開示されている。
また、特許文献2には、深絞りもしくは浅絞り成形における成形性が良好で、防音性に優れると共に、安全性に優れた易成形性吸音材を提供すること、さらに、難燃剤を含有させることなく、難燃性にすぐれ、低収縮性を有する易成形性吸音材を提供することを目的として、有機繊維不織布の少なくとも片面に表皮材が積層されてなる吸音材において、前記表皮材が、深絞りもしくは浅絞り成形温度以下のガラス転移温度を有する樹脂バインダーを含有し、嵩密度が0.1~0.8g/cmであることを特徴とする易成形性吸音材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6769423号
【特許文献2】特開2005-335279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に開示されているように、一般的に不織布は嵩高で空隙率の高い多孔質構造を有するため、吸音性能を有し、該吸音性能に基づき、吸音材として利用されている。
自動車内装分野や、建築分野で用いられる吸音材には、吸音性能のみならず、適度な剛性が求められるが、特許文献1および2に開示されている吸音材においては、この点について十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、吸音性能を保持しつつ、適度な剛性を有する成形体およびその製造方法、並びに前記成形体を用いてなる吸音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、パルプ繊維および合成樹脂を含有する成形体において、密度を特定の範囲とし、かつ、曲げ弾性勾配を特定の値以上とすることにより、吸音性能を保持しつつ、適度な剛性が発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<9>に関する。
<1> パルプ繊維および合成樹脂を含有する成形体であって、前記成形体の密度が0.1g/cm以上0.8g/cm以下であり、前記成形体の曲げ弾性勾配が0.5N/cm以上である、成形体。
<2> 前記成形体の厚みが、2mm以上20mm以下である、<1>に記載の成形体。
<3> 前記成形体の坪量が500g/m以上4000g/m以下である、<1>または<2>に記載の成形体。
<4> 前記成形体の周波数2kHzにおける垂直入射吸音率が5%以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の成形体。
<5> 前記合成樹脂が、ポリオレフィンである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成形体。
<6> 前記合成樹脂が、合成繊維を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の成形体。
<7> 前記成形体中のパルプ繊維に対する合成樹脂の質量比(合成樹脂/パルプ繊維)が、10/90以上95/5以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成形体。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の成形体を用いてなる、吸音材。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載の成形体の製造する方法であって、以下の工程1および工程2をこの順で含む、製造方法。
工程1:パルプ繊維および合成樹脂を含有する多孔質体を準備する工程
工程2:前記多孔質体を熱プレスする工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸音性能を保持しつつ、適度な剛性を有する成形体およびその製造方法、並びに前記成形体を用いてなる吸音材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の成形体を製造する際の製造方法において使用するウェブ形成装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[成形体]
本実施形態の成形体は、パルプ繊維および合成樹脂を含有する成形体であって、前記成形体の密度が0.1g/cm以上0.8g/cm以下であり、前記成形体の曲げ弾性勾配が0.5N/cm以上である。
本実施形態の成形体は、吸音性能を保持しつつ、適度な剛性を有する。
上記の効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
成形体の密度を0.1g/cm以上0.8g/cm以下とすることにより、吸音性能が維持されると考えられる。また、成形体の曲げ弾性勾配を0.5N/cm以上とすることで、適度な剛性が付与されると考えられる。
以下、本発明について詳述する。
【0011】
〔パルプ繊維〕
本実施形態の成形体に適用可能なパルプ繊維としては、その製法および種類等に特に限定はない。例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMPおよびCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等の非木材パルプであってもよい。また、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることができる。
【0012】
上記パルプ繊維の中でも、クラフトパルプ繊維、特に、繊維長の長い針葉樹クラフトパルプ繊維(NBKP)は、成形体の剛性により優れるため、好適に用いられる。
【0013】
パルプ繊維の平均繊維長は、成形体の剛性を向上させる観点、成形体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、そして、好ましくは50mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。
パルプ繊維の平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0014】
パルプ繊維の平均繊維幅は、成形体の剛性を向上させる観点、成形体の製造容易性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、よりさらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、よりさらに好ましくは50μm以下である。
パルプ繊維の平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定される。
【0015】
本実施形態の成形体を、多孔質体(好ましくは不織布、より好ましくは乾式不織布)の熱プレス成形にて製造する場合、該多孔質体はエアレイド法により作製した乾式不織布であることが好ましく、この場合は、パルプ繊維は、例えば解繊ドライパルプの形態であることができる。
【0016】
パルプ繊維は、成形体の剛性を向上させる観点から未叩解のパルプ繊維であることが好ましい。
また、パルプ繊維の微細繊維比率は、上述の観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下であり、下限は特に限定されない。
パルプ繊維の微細繊維比率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
成形体中のパルプ繊維の含有量は、吸音性の観点、並びに生産性および製造容易性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、バイオマス化度の観点から、よりさらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。また、適度な剛性を有する成形体を得る観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0018】
〔合成樹脂〕
本実施形態の成形体は、合成樹脂を含有する。
合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンおよびその変性物、ナイロン(登録商標)等が挙げられる。
これらの中でも、合成樹脂としては、成形性の観点から、ポリオレフィンおよびその変性物であることが好ましく、ポリオレフィンであることがより好ましい。合成樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体が例示され、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。
また、変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法としては、酸変性、塩素化等が例示され、これらの中でも、パルプ繊維との親和性を向上させる観点から、酸変性であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィンの酸変性に使用する酸変性成分は、不飽和カルボン酸成分であることが好ましい。不飽和カルボン酸成分としては、不飽和カルボン酸およびその酸無水物に由来する成分である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸成分は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。マレイン酸および無水マレイン酸の少なくとも1つにより変性されたポリオレフィンを、マレイン酸変性ポリオレフィンともいう。
酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィンであることが好ましく、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレンであることがより好ましい。なお、酸変性ポリオレフィンは、少なくとも一部が酸変性されていればよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリエチレンおよび少なくとも一部がマレイン酸変性されたポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
ポリオレフィン繊維は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本実施形態の成形体は、多孔質体(好ましくは不織布、より好ましくは乾式不織布)の熱プレス成形にて製造する場合、該多孔質体はエアレイド法により作製した乾式不織布であることが好ましく、合成樹脂が合成繊維の形態で得られた多孔質体であることが好ましい。
従って、成形体は、合成樹脂として、合成繊維を含むことが好ましい。
なお、熱プレス成形により、多孔質体に含有される合成繊維の一部または全部が溶融し、成形体においては、繊維形状を保持していない部分が存在する可能性や、繊維形状が観察されない可能性がある。
【0021】
多孔質体を得るために使用される合成繊維(合成樹脂からなる繊維)は、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有していることも好ましい。なお、詳しくは後述するが、多孔質体が不織布であり、特にエアレイド不織布である場合、合成樹脂からなる繊維は、エアレイド不織布の製造時の熱処理において溶融しないものが好ましい。
合成繊維を構成する合成樹脂の融点は、成形容易性の観点、パルプ繊維の劣化を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは180℃以下であり、そして、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。
【0022】
前記合成繊維は、2つ以上の合成樹脂からなる複合繊維であってもよく、分割繊維、海島繊維、芯鞘繊維、貼り合わせ繊維などが例示され、これらの中でも、剛性を高める観点から、芯鞘繊維が好ましい。芯鞘繊維である場合、同心断面構造や、偏心断面構造の繊維が使用されるが、同心断面構造の繊維が好ましい。同心断面構造の繊維を使用することで、より均一な多孔質体および成形体が得られるので好ましい。
【0023】
合成繊維の繊維長は、均一な多孔質体(好ましくは不織布、より好ましくは乾式不織布)および成形体を得る観点、多孔質体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上であり、そして、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
合成繊維の繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
合成繊維の繊維径は、均一な多孔質体および成形体を得る観点、多孔質体および成形体の製造容易性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
合成繊維の繊維径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
合成繊維の繊度は、均一な多孔質体および成形体を得る観点、多孔質体および成形体の製造容易性の観点から、好ましくは0.01dtex以上、より好ましくは0.1dtex以上、さらに好ましくは1dtex以上であり、そして、好ましくは100dtex以下、より好ましくは50dtex以下、さらに好ましくは10dtex以下である。
【0026】
本実施形態の成形体は、合成樹脂として、以下のその他の合成樹脂を含有していてもよい。
その他の合成樹脂を含有する場合、その他の合成樹脂の含有量は、成形体の全質量に対して好ましくは0.1質量%以上45質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。その他の合成樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、成形体を製造する際の、ハンドリング性等を向上させることができる。
その他の合成樹脂としては、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が使用できる。
【0027】
成形体中の合成樹脂の含有量は、吸音性を高める観点、並びに生産性および製造容易性の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下であり、バイオマス化度の観点から、よりさらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。また、適度な剛性を有する成形体を得る観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
なお、合成樹脂を2種以上使用する場合には、上記の含有量は合成樹脂の合計含有量を意味する。
【0028】
成形体中のパルプ繊維に対する合成樹脂の質量比(合成樹脂/パルプ繊維)は、適度な剛性を有する成形体を得る観点、成形体の生産性および製造容易性、並びに吸音性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、さらに好ましくは25/75以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下であり、バイオマス化度の観点から、よりさらに好ましくは50/50以下、特に好ましくは45/55以下である。
【0029】
また、成形体中のパルプ繊維および合成樹脂の合計量は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
【0030】
〔その他の成分〕
成形体は、上述したパルプ繊維および合成樹脂に加え、その他成分を含有していてもよい。その他の成分としては、天然樹脂が挙げられる。
天然樹脂としては、各種デンプン、カゼインが例示される。
【0031】
成形体は、さらに、その他の成分として、填料や製紙薬品を含有していてもよい。
填料としては、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイトおよびスメクタイト等の鉱物顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂および塩化ビニリデン系樹脂等の有機顔料が挙げられる。
製紙薬品としては、紙力増強剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。さらに湿潤紙力増強剤も併用可能であり、例えばポリアミド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド-ポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。
その他の成分を含有する場合、パルプ繊維および合成樹脂を除くその他の成分の含有量は、成形体の全質量に対して好ましくは0.1質量%以上45質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0032】
本実施形態の成形体は、上述したように、多孔質体(好ましくは不織布、より好ましくは乾式不織布)を熱プレス成形することにより製造することが好ましい。すなわち、本実施形態の成形体は、以下の工程1および工程2をこの順で含む製造方法により製造することが好ましい。
工程1:パルプ繊維および合成樹脂を含有する多孔質体を準備する工程
工程2:前記多孔質体を熱プレスする工程
以下、成形体の製造に好適な多孔質体について記載する。
【0033】
〔多孔質体の特性〕
多孔質体の第1の方向の引張強度をTとし、第1の方向と直交する方向である第2の方向の引張強度をYとしたとき、T/Yは、好ましくは0.5以上1.5以下である。T/Yを上記の範囲とすることにより、剛性および強度に優れるので好ましい。
T/Yは、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.70以上、よりさらに好ましくは0.80以上、特に好ましくは0.85以上であり、そして、より好ましくは1.45以下、さらに好ましくは1.40以下、よりさらに好ましくは1.35以下である。
多孔質体の第1の方向は、多孔質体の平面方向における任意の1方向である。但し、多孔質体に含まれる繊維等が平面方向のいずれかの方向に配向している場合は、その配向方向を第1の方向とする。また、多孔質体の製造工程における流れ方向が分かる場合は、その流れ方向を第1の方向とする。多孔質体の製造工程における流れ方向が分かる場合は、製造工程における流れ方向を、第1の方向(MD方向)といい、得られた多孔質体における流れ方向をT目ということもある。
多孔質体の第2の方向は、多孔質体の平面方向における1方向であって、第1の方向に直交する方向である。多孔質体の製造工程における流れ方向が分かる場合は、製造工程における流れ方向に直交する方向を、第2の方向(CD方向)といい、得られた多孔質体における第2の方向をY目いうこともある。
【0034】
多孔質体の第1の方向と第2の方向の引張強度の測定は、JIS P 8113:2006に準じて測定する。各方向の引張強度は、引張試験機として、株式会社エー・アンド・デイ製のテンシロンを用いて15±0.1mm×180±1mmの短冊片を20±5mm/分の速度で測定した値である。
【0035】
本実施形態において、多孔質体は、少なくともパルプ繊維および合成繊維を混合した後、乾式抄紙した乾式不織布であることが好ましく、シート状であることが好ましい。乾式抄紙を行った後の綿状の多孔質体(以下、綿状多孔質体ともいう)をプレス処理した不織布であることが好ましい。
多孔質体の密度は、好ましくは0.04g/cm以上、より好ましくは0.05g/cm以上、さらに好ましくは0.06g/cm以上であり、そして、好ましくは0.1g/cm未満、より好ましくは0.08g/cm以下である。
多孔質体の密度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0036】
〔多孔質体の製造方法〕
本実施形態において、多孔質体(好ましくは不織布)の製造方法としては特に限定されず、所望のT/Y、密度を得る観点から、例えば、乾式の製造方法であるエアレイド法、湿式の製造方法である水流交絡法などが例示される。これらの中でも、所望のT/Yを得るために、繊維の配向を抑制する観点から、乾式の製造方法が好ましく、具体的にはエアレイド法により製造することが好ましい。
多孔質体の製造工程は、パルプ繊維と、合成繊維とを空気中で混合し、堆積させる工程を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の多孔質体は、乾式不織布であることが好ましい。
【0037】
乾式抄紙法を用いて多孔質体を製造する際には、エアレイド法を採用することが好ましい。エアレイド法は、空気中で解繊した合成繊維およびパルプ繊維を気流中で均一に混合した原料繊維などを含む気流を、下側にサクションボックスを備えたメッシュ状無端ベルト上に吐出してエアレイドウェブを形成する方法である。すなわち、エアレイド法は、パルプ繊維と、合成繊維とを空気中で混合し、堆積させる工程を含む方法である。エアレイド法においては、必要に応じて上記の操作を複数回繰り返してもよい。
【0038】
上記方法で形成されたウェブは、以下に示すような繊維結合工程によってシート化される。繊維結合工程としては、例えば、ニードルパンチ法のようにウェブ面に垂直方向に針を通すことにより合成繊維やパルプ繊維を互いに交絡させてシートを形成する方法がある。このような結合工程は、カーディング法によるウェブ形成方法と組み合わせて好ましく用いられる。また、繊維結合工程では、加熱により乾式法ウェブに配合された熱融着性接着剤を融着させて原料繊維を結合する工程(サーマルボンド法)、得られた乾式法ウェブに接着剤を付与して原料繊維を結合する工程(ケミカルボンド法)、あるいはサーマルボンド法とケミカルボンド法を組み合わせた方法(マルチボンド法)を採用することができる。
【0039】
サーマルボンド法においては、熱融着性接着剤の融点よりも20℃以上高い温度で加熱をすることが好ましい。加熱処理としては、熱風処理、および熱風処理後の低圧による熱圧処理が挙げられる。
【0040】
サーマルボンド法やマルチボンド法が採用される場合には、粒子状あるいは繊維状の熱融着性接着剤が使用されることが好ましい。熱融着性接着剤は、上述した合成繊維またはバインダー成分であってもよい。
粒子状の熱融着性接着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの熱融着性の樹脂粒子が用いられる。
繊維状の熱融着性接着剤としては、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などのポリエステル、低融点ポリアミド、アクリル樹脂、酢酸ビニル(PVAc)の樹脂類が用いられる。
また、熱融着性合成繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維の表面のみが溶融する芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維も好ましく用いることができる。芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有する。具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維、PVAc/PET複合樹脂)が挙げられる。
【0041】
また、繊維の結合にケミカルボンド法が用いられる場合、繊維同士を固着させるためにバインダー成分が添加されることが好ましい。バインダー成分としては、必要に応じて適宜選択可能であり、例えば、デンプン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリルスチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリルブタジエン共重合体、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体、尿素-メラミン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。また、上述したバインダー成分を使用することも好ましい。なお、上記のバインダーとしては、繊維、粉体、顆粒状、溶液あるいはエマルジョンなど、種々の形態のものを用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0042】
乾式抄紙法を用いて多孔質体を製造する場合、加熱処理の後に平滑度の向上、密度のコントロールを目的として、必要に応じてカレンダー処理を施してもよい。カレンダー処理は金属ロールや樹脂ロールで加圧することでシートの密度を任意にコントロールすることができる。また、カレンダー処理を行うロールを任意の温度に設定し、シートを加熱、加圧することで高平滑、高密度のシートを得ることができる。
【0043】
上述したような乾式抄紙法で製造された多孔質体は、多孔質体を構成する各繊維が、長手方向、幅方向および厚み方向にランダムに3次元配向されている。このため、本実施形態においては、多孔質体の第1の方向の引張強度と、第2の方向の引張強度が同程度の値となる。すなわち、本実施形態では、平面方向における等方性に優れた多孔質体が得られる。
【0044】
なお、多孔質体の製造工程においては、成形性を阻害しない任意のシートを多孔質体に積層して積層シートを製造してもよい。例えば、多孔質体の表面や、多孔質体を積層する際にシート間に任意のシートを積層することができる。積層する任意のシートとしては、ティッシュや不織布などのシートを用いることができる。これら任意のシートは、表面性の向上や層間強度の向上、その他機能の付与を目的として積層される。
【0045】
多孔質体はロールプレスによる加熱加圧成形することで得ることができる。ロールプレス処理は金属ロールや樹脂ロールで加圧することでシートの密度を任意にコントロールすることができる。また、ロールプレス処理を行うロールを任意の温度およびクリアランスに設定し、シートを加熱、加圧することで任意の密度の多孔質体を得ることができる。
【0046】
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述した多孔質体を熱プレス成形して得ることが好ましい。多孔質体は、目的とする成形体の密度に合わせて、任意の圧力および温度で熱プレスすることができる。また、多孔質体は、1枚を単独で使用してもよく、成形体が所望の厚さとなるように、積層してもよく、積層枚数を調整することで、成形体の厚さを調整することができる。成形体において、パルプ繊維はパルプ繊維のまま保持され、成形体は、パルプ繊維含有成形体である。
なお、成形工程において、加熱温度、加熱時間を制御することで、多孔質体が含有する合成樹脂の一部または全部が溶融していてもよい。
【0047】
<熱プレス成形体>
成形体は、多孔質体を熱プレス成形する工程により得られる熱プレス成形体であることが好ましい。熱プレス成形を行うことで、多孔質体が含有する合成樹脂の一部が溶融していてもよく、所望の密度となるように熱プレス成形を行うことが好ましい。熱プレス成形では、多孔質体におけるパルプ繊維と合成繊維とが均一で配向が抑制された混合状態が維持され、パルプ繊維が極めて均一に分散した成形体が得られる。
【0048】
熱プレス成形する工程は、多孔質体を加熱加圧成形する工程である。多孔質体を100℃以上となるように加熱し、かつ、2MPa以上となるように加圧することが好ましい。
熱プレス成形する工程における加熱温度は、100℃以上であることが好ましいが、多孔質体に含有される合成樹脂の種類により適宜調節することが好ましい。具体的には、多孔質体に含まれる合成樹脂の融点の±20℃の範囲内で加熱を行うことが好ましい。このような温度範囲内で加熱を行うことにより、多孔質体に含有されるパルプ繊維の熱分解(ヘミセルロースの分解)を抑制することができ、より曲げ弾性勾配および強度に優れた成形体を得ることができる。
熱プレス成形する工程における圧力条件は、曲げ弾性勾配および強度に優れる成形体を得る観点、エネルギー負荷を低減する観点から、好ましくは2MPa以上、より好ましくは3MPa以上であり、好ましくは25MPa以下、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。
また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は、好ましくは3℃/分以上30℃/分以下であり、所望の加熱加圧条件での保持時間としては好ましく1分以上30分以下、その後、成形体を取り出す温度までは圧力を維持しながら、3℃/分以上20℃/分以下の冷却速度とすることが好ましい。
なお、上記の加熱加圧条件を得る前に、予備プレス工程を有していてもよく、所望の加熱条件にて、より低い圧力にて予備プレスを行った後に、圧力を上げて、熱プレス工程を行うことも好ましい。
【0049】
熱プレス成形の方法としては、各種存在する熱プレス成形の方法の中でも、大型の航空機などの成形体部材を作製する際によく使用されるオートクレーブ法や、工程が比較的簡便である金型プレス法が好ましく挙げられる。ボイドの少ない高品質な成形体を得るという観点からはオートクレーブ法が好ましい。
【0050】
熱プレス成形する工程では、パルプ繊維および合成繊維の伸び不足による破れ等の欠損を防ぐことを目的として、熱プレス成形を複数回行なってもよい。これにより、より曲げ弾性勾配および強度に優れる成形体を得ることができる。
【0051】
〔成形体の特性〕
本実施形態の成形体の密度は、0.1g/cm以上0.8g/cm以下である。成形体の密度を上記の範囲内とすることにより、吸音性能を保持しつつ、適度な剛性が得られるので好ましい。
成形体の密度は、好ましくは0.10g/cm以上、より好ましくは0.13g/cm以上、さらに好ましくは0.15g/cm以上であり、そして、好ましくは0.60g/cm以下、より好ましくは0.50g/cm以下、さらに好ましくは0.40g/cm以下である。
成形体の密度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0052】
成形体の厚みは、特に限定されないが、吸音性能および剛性の観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2mm以上であり、そして、好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
成形体の厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
【0053】
成形体の坪量は、特に限定されないが、吸音性能および剛性の観点から、好ましくは100g/m以上、より好ましくは300g/m以上、さらに好ましくは500g/m以上であり、そして、好ましくは6000g/m以下、より好ましくは4000g/m以下、さらに好ましくは3000g/m以下、よりさらに好ましくは1500g/m以下である。
坪量が上記範囲内であると、軽量でありながら、吸音性に優れ、適度な剛性を有する成形体となるので、好ましい。
成形体の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0054】
本実施形態雄成形体は、適度な剛性を有することが好ましい観点から、曲げ弾性勾配が0.5N/cm以上である。
曲げ弾性勾配は、好ましくは1.0N/cm以上、より好ましくは5.0N/cm以上、さらに好ましくは20N/cm以上、よりさらに好ましくは50N/cm以上、特に好ましくは100N/cm以上、最も好ましくは300N/cm以上であり、そして、吸音性能を保持する観点から、好ましくは5000N/cm以下、より好ましくは3000N/cm以下、さらに好ましくは1000N/cm以下である。
曲げ弾性勾配が上記の範囲内であると、該成形体を固定や組み立て作業する際に、しなりが抑制され、取扱い性や作業性が向上する。
曲げ弾性勾配は、実施例に記載の方法により測定される。
【0055】
本実施形態の成形体は、適度な曲げ弾性率を有することが好ましく、成形体が適度な曲げ弾性率を有することで、吸音性能を保持しつつ、曲げに対する剛性に優れた成形体となるので好ましい。
成形体の曲げ弾性率は、好ましくは0.001GPa以上、より好ましくは0.003GPa以上、さらに好ましくは0.01GPa以上、よりさらに好ましくは0.1GPa以上である。上限は特に限定されないが、吸音性能を維持する観点から、好ましくは1.5GPa以下、より好ましくは1.0GPa以下である。
成形体の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠して測定される。
【0056】
本実施形態の成形体は、吸音性を有することが好ましく、周波数2kHzにおける垂直入射吸音率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、よりさらに好ましくは30%以上であり、そして、上限は特に限定されないが、成形体に適度な剛性を付与する観点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である。
【0057】
(用途)
本実施形態の成形体は、吸音材に好適に使用される。すなわち、本実施形態の吸音材は、本実施形態の成形体を用いてなる。
吸音材は、従来吸音材が使用されてきた種々の用途に使用可能であるが、本実施形態の成形体は、適度な剛性を有することから、これらの中でも、自動車内装材、建築用内装材に好適である。
【実施例0058】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0059】
(実施例1)
<不織布の作製>
NBKPを、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊ドライパルプを得た。解繊機での処理風速は45m/分であり、装置内に設けたバッフルにより乱流とした。得られた解繊ドライパルプ(パルプ繊維)の平均繊維長は2.38mmであり、平均繊維幅は34.3μmであり、微細繊維比率は11.4%であった。
【0060】
次いで、得られた解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、70/15/15の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た。
【0061】
次いで、図1に示すウェブ形成装置1を用い、繊維混合物からエアレイドウェブを形成した。具体的には、コンベア10に装着されて走行する透気性無端ベルト20の上に、第1のキャリアシート供給手段40によって、第1のキャリアシート41を繰り出した。実施例1では、第1のキャリアシート41として、ティッシュ(坪量14g/m)を使用した。なお、「坪量」はJIS P8124:2011に記載の「紙及び板紙-坪量の測定方法」に従って測定した。
【0062】
サクションボックス60によって透気性無端ベルト20を吸引しながら、第1のキャリアシート41の上に、繊維混合物供給手段30から空気流と共に繊維混合物を落下堆積させ、綿状の不織布を得た。その際、エアレイドウェブ部分の坪量が600g/mとなるように、繊維混合物を供給した。
【0063】
次いで、第2のキャリアシート供給手段50によって、第1のキャリアシート41上の綿状の繊維集合体の上に、第2のキャリアシート51を積層して、エアレイドウェブ含有積層シートを得た。実施例1では、第2のキャリアシート51として、ティッシュ(坪量14g/m)を使用した。つまり、実施例1においては、第1のキャリアシート41と第2のキャリアシート51に、同一のシートを用いた。
【0064】
得られたエアレイドウェブ含有積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、温度140℃で熱風処理した。その後、ロールプレス処理によって密度が0.06g/cmとなるように密度を調整し、第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートを剥離して、坪量600g/mの不織布を得た。前記不織布のT/Yは1.18、密度は0.062g/cm、厚みは10mmであった。
【0065】
<成形体の作製>
前記不織布を20cm×20cmに裁断し、これにより2枚の裁断片を得た。得られた裁断片を重ね、2層の積層構造物を作製した。次に、20cm×20cm、深さ2.5mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1130g/m、密度は0.45g/cmであった。なお、熱プレス成形により、不織布が縦横方向に若干の伸び縮みをすることがあり、成形体の坪量は、不織布の坪量から変化する場合がある。
【0066】
(実施例2)
実施例1の<成形体の作製>において、4枚の裁断片を得て、得られた裁断片を重ね、4層の積層構造物を作製した。次に、20cm×20cm、深さ5.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は2200g/m、密度は0.44g/cmであった。
【0067】
(実施例3)
実施例1の<成形体の作製>において、6枚の裁断片を得て、得られた裁断片を重ね、6層の積層構造物を作製した。次に、20cm×20cm、深さ8mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は3600g/m、密度は0.44g/cmであった。
【0068】
(実施例4)
実施例1の<成形体の作製>において、1枚の裁断片を得て、単層にて成形体を作製した。なお、20cm×20cm、深さ2.5mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記不織布を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は660g/m、密度は0.26g/cmであった。
【0069】
(実施例5)
実施例1の<成形体の作製>において、20cm×20cm、深さ5.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1200g/m、密度は0.25g/cmであった。
【0070】
(実施例6)
実施例1の<成形体の作製>において、3枚の裁断片を得て、3層の積層構造物にて成形体を作製した。なお、20cm×20cm、深さ8.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、不織布を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は2000g/m、密度は0.25g/cmであった。
【0071】
(実施例7)
実施例1の<不織布の作製>において、解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、60/20/20の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た以外は、同様にして不織布を得た。
その後、<成形体の作製>において、6枚の裁断片を得て、得られた裁断片を重ね、6層の積層構造物を作製した。次に、20cm×20cm、深さ8.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は3400g/m、密度は0.42g/cmであった。
【0072】
(実施例8)
実施例7の<不織布の作製>において、解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、50/25/25の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た以外は、同様にして不織布を得た。
その後、実施例7と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は3600g/m、密度は0.44g/cmであった。
【0073】
(実施例9)
実施例8の<不織布の作製>において、解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、30/35/35の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た以外は、同様にして不織布を得た。
その後、実施例8と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は4100g/m、密度は0.51g/cmであった。
【0074】
(実施例10)
実施例9と同様にして不織布を得た。
その後、実施例1と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1320g/m、密度は0.53g/cmであった。
【0075】
(実施例11)
実施例9と同様にして不織布を得た。
その後、実施例5と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体坪量は1630g/m、の密度は、0.33g/cmであった。
【0076】
(実施例12)
実施例9と同様にして不織布を得た。
その後、<成形体の作製>において、2枚の裁断片を得て、2層の積層構造物にて成形体を作製した。なお、20cm×20cm、深さ8.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、不織布を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、5MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1900g/m、密度は0.24g/cmであった。
【0077】
(実施例13)
実施例9と同様にして不織布を得た。
その後、実施例4と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は550g/m、密度は、0.21g/cmであった。
【0078】
(実施例14)
実施例8と同様にして不織布を得た。
その後、実施例11と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1250g/m、密度は、0.25g/cmであった。
【0079】
(実施例15)
実施例8と同様にして不織布を得た。
その後、実施例12と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1360g/m、密度は、0.17g/cmであった。
【0080】
(実施例16)
実施例8の<不織布の作製>において、解繊ドライパルプと、ポリプロピレン繊維(融点160℃、繊度6.6dtex、繊維長5mm、繊維径30μm)と、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、20/40/40の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た以外は、同様にして不織布を得た。
その後、実施例14と同様にして、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は1600g/m、密度は、0.32g/cmであった。
【0081】
(比較例1)
実施例1と同様にして不織布を得た。
その後、<成形体の作製>において、5枚の裁断片を得て、得られた裁断片を重ね、6層の積層構造物を作製した。次に、20cm×20cm、深さ3.0mmの開口部を有するステンレス製の金型内に、前記積層構造物を配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度180℃、圧力1.5MPaで5分間予備プレスし、さらに10MPaに加圧して15分間プレス処理した。その後、10MPaを維持したまま冷却して、パルプ繊維含有成形体を得た。前記パルプ繊維含有成形体の坪量は3600g/m、密度は1.2g/cmであった。
【0082】
(比較例2)
実施例1の<不織布の作製>において、得られたエアレイドウェブ含有積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、温度140℃で熱風処理した後、ロールプレス処理によって密度が0.06g/cmとなるように密度を調整し、第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートを剥離して、坪量600g/mの不織布を得た。前記不織布のT/Yは1.18、密度は0.06g/cm、厚みは10.0mmであった。
【0083】
(比較例3)
<多孔質体の製造>
原料繊維としてパルプ繊維を用いた中層と、中層の両面に表面層とを備えた多孔質体を以下のように製造した。
サクションボックスを有するメッシュコンベア上に表面層Aとしてスパンボンド不織布(坪量40g/m)を繰り出し、該表面層A上に、5g/mのポリエチレン粉末(粉体接着剤)をスプレー装置で散布した、次いで、NBKPと、ポリエチレン/ポリプロピレン複合芯鞘繊維(芯部融点160℃、鞘部融点110℃、繊度1.7dtex、繊維長5mm、繊維径15μm)とを、70/30の割合(質量比)で空気流により均一に混合、解繊し、乾式のエアレイドウェブ形成装置を用いて、表面層A上にエアレイドウェブ(中層、坪量910g/m)を形成させた。
次いで、該エアレイドウェブ上に、先に使用したものと同じ粉体接着剤を層状散布装置にて5g/m散布し、さらにその上に、表面層BとしてレーヨンPETスパンレース(坪量40g/m)を積層するように繰り出し、熱風乾燥機に導いて、熱融着性繊維の鞘が溶融するように、鞘の融点以上に加熱した。これにより、エアレイドウェブの両面に表面層を接着して、積層体Sを形成した。その後、該積層体Sをさらにプレスロールに通し、多孔質体を得た。
【0084】
<多孔質体へのフィルム層の接着>
ポリエチレンフィルム(坪量20g/m、MD方向における引張伸び:250%、通気度:440秒/100cc、厚さ:20μm、密度:1g/cm)の片面に、ホットメルト型接着剤が坪量5g/mとなるように塗布し、接着剤層を形成した。接着剤層と多孔質体とが接するように、フィルムと多孔質体とを貼り合わせ、ホットメルト法によりフィルムと多孔質体とを接着した。次いで、フィルム面に対して、接着剤層まで貫通するように、一つ当たり長さ100mm、幅0.5mmのスリットを、フィルム表面の面積に対するスリット面積の合計の割合、すなわちフィルム表面の面積当たりの開口面積割合(以下、「スリット割合」ともいう)が0.8%となるように、かつ、すべてのスリットの向きが揃うように形成し、成形体を得た。
【0085】
[測定・評価方法]
(合成繊維の繊維長・繊維径の測定方法)
無作為に選択した合成繊維20本を光学顕微鏡で観察し、繊維長および繊維径を測定した。
【0086】
(パルプ繊維の平均繊維長・平均繊維径・微細繊維比率の測定方法)
ISO16065-2に準じ、繊維画像解析装置(バルメット株式会社製、Valmet FS5)によってパルプ繊維の平均繊維長および平均繊維径を測定した。また、測定された長さ加重平均繊維長分布における0.1mm以下の微細繊維の割合を微細繊維比率とした。
【0087】
(合成繊維の融点の測定方法)
合成繊維を5mg切り出し、示差走査熱量計(DSC)にて合成繊維の融点を測定する。融点はパーキン・エルマー社製のDiamond DSCを用いて窒素雰囲気下で30℃から280℃まで20℃/分で昇温して測定する。
なお、合成繊維のカタログ値等がある場合には、カタログ値を採用してもよい。
【0088】
(不織布の坪量、並びに成形体の厚み、坪量および密度の測定方法)
不織布の坪量は、JIS P8124:2011に記載の「紙及び板紙-坪量の測定方法」に従って測定した。
成形体の密度は50mm角の成形体を23℃、50%RH条件下で24時間調湿した後、厚みおよび質量を測定することにより算出した。成形体の厚みは、デジタルシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製、DG-127)で測定した。
【0089】
(T/Yの測定方法)
得られた不織布の製造工程における流れ方向(コンベア10の走行方向)を第1の方向、第1の方向に直交する方向を第2の方向とし、JIS P 8113:2006に準じて引張強さ(単位はN/m)を測定した。各方向の引張強度は、この引張強さを試験片の厚みで除し、引張強度(単位はMPa)を算出した。引張試験機として、株式会社エー・アンド・デイ製のテンシロンを用いて15mm×180mmの短冊片を20mm/分の速度で測定した。
第1の方向の引張強度をTとし、第1の方向と直交する方向である第2の方向の引張強度をYとして、T/Yを算出した。
【0090】
<評価>
得られた成形品について、下記の方法により曲げ弾性率、曲げ弾性勾配、および吸音率を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(成形品の曲げ弾性率および曲げ弾性勾配の測定方法)
得られた成形品を長さ80mm×幅10mmの短冊状試験片に切削し、JIS K 7171:2016に準じて、3点曲げ試験を実施した。得られる曲げ弾性率および曲げ弾性勾配は、数値が大きいほどそれぞれ、曲げに対する剛性に優れると評価した。
【0092】
(成形体の垂直入射吸音率の測定方法)
得られた成形体を直径29mmの円形状試験片に切削し、JIS A 1405-2:2007に準じて、高音域(500~6300Hz)における垂直入射吸音率を測定した。表1には、2000Hzにおける垂直入射吸音率を示した。得られる垂直入射吸音率は、数値が大きいほど吸音性能に優れると評価した。
【0093】
【表1-1】
【0094】
【表1-2】
【0095】
実施例1~16に示すように、本発明の成形体は、吸音性能を維持しつつ、適度な剛性を有するものであった。
一方、成形体の密度が0.8g/cmを超える比較例1の成形体では、十分の吸音性能を得られなかった。また、成形体の密度が0.1g/cm未満であり、曲げ弾性勾配が0.5N/cm未満である比較例2の成形体では、十分な剛性が得られなかった。さらに、成形体の密度が0.1g/m未満である比較例3の成形体では、十分な剛性が得られなかった。
【符号の説明】
【0096】
1 ウェブ形成装置
10 コンベア
20 透気性無端ベルト
30 繊維混合物供給手段
40 第1のキャリアシート供給手段
41 第1のキャリアシート
50 第2のキャリアシート供給手段
51 第2のキャリアシート
A エアレイドウェブ
図1