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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121037
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】空気殺菌・ウイルス不活性化装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024245
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】521190510
【氏名又は名称】株式会社AiDeal Tech
(71)【出願人】
【識別番号】504136993
【氏名又は名称】独立行政法人国立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】木之下 博
(72)【発明者】
【氏名】羽部 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】阪田 総一郎
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180LL11
(57)【要約】
【課題】
装置からの紫外線の漏れを抑制し、空気流量を制御し、光源を光源収納部に収納しその壁面を鏡面とし紫外線を減衰するまで反射させ、空気に十分な紫外線照射量を確保することで、装置から排出される空気を十分に殺菌・ウイルス不活性化し、人の近傍で安心して使用できる、殺菌・ウイルス不活性化装置の提供。
【解決手段】
空気殺菌・ウイルス不活性化装置は、吸気口22と排気口23とが形成されたカバー部材2と、カバー部材2に内包され紫外線を照射する光源5が内蔵された内殻3と、を有している。カバー部材2と内殻3との間に、吸気口22から内殻3までを繋ぐ吸気空間2aと、内殻3から排気口23までを繋ぐ排気空間2bと、が規定される。吸気空間2aと排気空間2bとが隣接するとともに、吸気空間2aと排気空間2bとを区画する側壁71、後壁72、及び前壁47をさら有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射によって空気を殺菌する空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、
吸気口と排気口とが形成された外殻と、
前記外殻の内部に設けられ、紫外線を照射する光源が内蔵された内殻と、を有し、
前記外殻と前記内殻との間に、前記吸気口から前記内殻までを繋ぐ吸気空間と、前記内殻から前記排気口までを繋ぎ前記吸気空間と隣り合う排気空間と、が規定され、
前記吸気空間と前記排気空間とを区画する仕切壁をさら有し、前記仕切壁によって前記吸気空間と前記排気空間とが分断されていることを特徴とする空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【請求項2】
前記内殻には前記紫外線によって空気中のウイルスを殺菌・不活性化する殺菌空間が規定され、
前記殺菌空間は、前記光源の軸方向に直交する断面、並びに前記軸方向及び軸方向に直交する方向を含む断面において、前記排気空間及び前記吸気空間に囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【請求項3】
前記排気空間は、前記内殻から排出された空気が折り返すように案内されて前記排気口から排出され、
前記吸気空間は、前記吸気口から取り込まれた空気が折り返すように前記内殻に案内されることを特徴とする請求項1または2に記載の空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【請求項4】
前記内殻には前記紫外線によって空気中のウイルスを殺菌・不活性化する殺菌空間が規定され、
前記仕切壁は、前記光源の軸方向に延びる第1仕切壁と、前記軸方向に延び前記光源の円周方向において前記第1仕切壁とは異なる位置に設けられた第2仕切壁と、を有し、
前記軸方向に直行する断面において、前記殺菌空間と、前記排気空間と、前記吸気空間と、が規定され、
前記断面において、前記外殻と前記内殻とは互いに離間し、離間した空間であって前記第1仕切壁と、前記第2仕切壁と、前記排気口が形成された前記外殻の一部と、前記内殻と、によって区画された空間が前記排気空間であって、前記第1仕切壁と、前記第2仕切壁と、前記吸気口が形成された前記外殻の一部と、前記内殻と、によって区画された空間が前記吸気空間であることを特徴とする請求項1に記載の空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【請求項5】
前記仕切壁は弾性体であって柔軟性を有し、一端が前記外殻又は前記内殻のいずれか一方に固定され、他端は自由端であって前記外殻又は前記内殻のいずれか他方に接触することを特徴とする請求項1に記載の空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【請求項6】
前記内殻は前記光源を内蔵する平行な筒状の構造であって、前記内殻の内壁は前記紫外線を反射するように鏡面仕上げされていることにより前記光源から出た前記紫外線が減衰するまで複数回反射するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気殺菌・ウイルス不活性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の細菌及びウイルスを殺菌・不活性する空気殺菌・ウイルス不活性化装置に関し、特に紫外線を光源とする空気殺菌・ウイルス不活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に21世紀に入ってからは、世界中の人の往来・交流が盛んになり、今まで未知であった、人に害を及ぼし、流行・パンデミックを引き起こすウイルス等が散見されるようになり、人のいる空間、人の近傍における殺菌・ウイルス不活性化が可能な装置が求められている。
【0003】
このような状況を鑑み、空気中を浮遊する菌・ウイルスを殺菌・不活性化するために空気を吸い込み殺菌・ウイルス不活性化を行う装置が考案されている。特許文献1の紫外線殺菌装置では、筐体内部にファンと、光源と、フィルタと、が収納されている。筐体内部には、光源のからの光を反射する略半円形状に湾曲した矩形曲板条のアルミニウム製の凹平面鏡である反射板が配置される。ファンによって筐体内部に取り込まれた空気は、反射板によって反射された紫外線によって殺菌され、フィルタを通過して外部に排出される。
【0004】
特許文献2の空気殺菌装置は、案内羽根と、紫外線によって殺菌される殺菌空間と、電動ファンと、空気排気口と、から構成される。電動ファンが駆動することにより、吸い込み口部から案内羽根によって吸い込んだ空気を渦流にして筒状の殺菌空間を通過させ、空気排気口より排出する。案内羽根によって殺菌空間を渦流が旋回しながら通過するため、当該空間における移動距離が長くなり、紫外線照射量を増大させて高い殺菌効果を得ることができる。
【0005】
特許文献3の空気殺菌装置は、殺菌装置本体と、本体内部に配置される紫外線殺菌光源と、ファンモータと、から構成される。ファンモータを回転させると、空気は遮光板に当たり乱流となって紫外線殺菌光源の周囲を通過する。このとき、ウイルスが紫外線によって殺菌・不活性化される。紫外線殺菌光源の周囲は反射板で覆われているので、反射板に投射された紫外線は二次反射して空気の殺菌効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3221578号
【特許文献2】特開2011-183126号公報
【特許文献3】特開平11-47257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気殺菌装置で用いられる波長253.7nmの紫外線は、強力な殺菌能力を有しているが人体にも害を及ぼすことが分かっている。従来の空気殺菌装置では、その紫外線の漏れ対策を十分に行うことで人の近傍に載置して使用することが困難だった。
【0008】
他方、装置を空気が通過する短時間で効率的に細菌及びウイルスを殺菌・不活性化するためには、ある程度の紫外線の光量が必要となる。しかし、光量が高くなると漏れた紫外線による人体への影響も大きくなるため、空気中のウイルスを効果的に殺菌・不活性化しつつ紫外線漏れのない空気殺菌装置が求められていた。
【0009】
そこで、本発明は、装置からの紫外線の漏れを抑制し、空気流量を制御し、光源を光源収納部に収納しその壁面を鏡面とし紫外線を減衰するまで反射させ、空気に十分な紫外線照射量を確保することで、装置から排出される空気を十分に殺菌・ウイルス不活性化し、人の近傍で安心して使用できる、殺菌・ウイルス不活性化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために第1の発明は、紫外線の照射によって空気を殺菌する空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、吸気口と排気口とが形成された外殻と、前記外殻の内部に設けられ、紫外線を照射する光源が内蔵された内殻と、を有し、前記外殻と前記内殻との間に、前記吸気口から前記内殻までを繋ぐ吸気空間と、前記内殻から前記排気口までを繋ぎ前記吸気空間と隣り合う排気空間と、が規定され、前記吸気空間と前記排気空間とを区画する仕切壁をさら有し、前記仕切壁によって前記吸気空間と前記排気空間とが分断されていることを特徴とする空気殺菌・ウイルス不活性化装置を提供している。
【0011】
第2の発明では、第1の発明に記載された空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、前記内殻には前記紫外線によって空気中のウイルスを殺菌・不活性化する殺菌空間が規定され、前記殺菌空間は、前記光源の軸方向に直交する断面、並びに前記軸方向及び軸方向に直交する方向を含む断面において、前記排気空間及び前記吸気空間に囲まれていることを特徴としている。
【0012】
第3の発明では、第1の発明又は第2の発明に記載された空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、前記排気空間は、前記内殻から排出された空気が折り返すように案内されて前記排気口から排出され、前記吸気空間は、前記吸気口から取り込まれた空気が折り返すように前記内殻に案内されることを特徴としている。
【0013】
第4の発明では、第1の発明に記載された空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、前記内殻には前記紫外線によって空気中のウイルスを殺菌・不活性化する殺菌空間が規定され、前記仕切壁は、前記光源の軸方向に延びる第1仕切壁と、前記軸方向に延び前記光源の円周方向において前記第1仕切壁とは異なる位置に設けられた第2仕切壁と、を有し、前記軸方向に直行する断面において、前記殺菌空間と、前記排気空間と、前記吸気空間と、が規定され、前記断面において、前記外殻と前記内殻とは互いに離間し、離間した空間であって前記第1仕切壁と、前記第2仕切壁と、前記排気口が形成された前記外殻の一部と、前記内殻と、によって区画された空間が前記排気空間であって、前記第1仕切壁と、前記第2仕切壁と、前記吸気口が形成された前記外殻の一部と、前記内殻と、によって区画された空間が前記吸気空間であることを特徴としている。
【0014】
第5の発明では、第1の発明に記載された空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、前記仕切壁は弾性体であって柔軟性を有し、一端が前記外殻又は前記内殻のいずれか一方に固定され、他端は自由端であって前記外殻又は前記内殻のいずれか他方に接触することを特徴としている。
【0015】
第6の発明では、第1の発明に記載された空気殺菌・ウイルス不活性化装置であって、前記内殻は前記光源を内蔵する筒状の構造であって、前記内殻の内壁は前記紫外線を反射するように鏡面仕上げされていることにより前記光源から出た前記紫外線が減衰するまで複数回反射するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、仕切壁によって吸気空間と排気空間とが分断されているため、光源によってウイルスが殺菌・不活性化される前の空気と殺菌・不活性化された後の空気とが混じり合うことがない。これにより、空気殺菌・ウイルス不活性化装置によってクリーンな排気を実現することができる。また、吸気空間と排気空間とが隣り合っているため、外殻のサイズを大きくすることなく吸気空間と排気空間として一定のスペース確保することができる。吸気空間及び排気空間のスペースが小さいと空気の流速が上がることで騒音が発生するが、空気の流路を大きく確保することで騒音を低減することができる。
【0017】
第2の発明によると、所定の断面において殺菌空間が排気空間及び吸気空間に囲まれているため、内殻と外殻との物理的な距離を確保することができる。これにより、外殻の外に紫外線が漏れることを抑制できる。また、装置内において吸気空間及び排気空間を広く確保することができるため、空気の流速を低く抑えることにより騒音を低減することができる。
【0018】
第3の発明によると、内殻から排出された空気が折り返すように案内されて排気口から排出されるため、光源の紫外線が排気口から漏れ出ることを抑制することができる。また、排気空間を折り返すように構成し排気の通風路を長めに確保することで、紫外線が排気口から漏れ出ることを抑制することができる。さらに、吸気口から取り込まれた空気が折り返すように内殻に案内されるため、光源の紫外線が吸気口から漏れ出ることを抑制することができる。また、吸気空間を折り返すように構成し吸気の通風路を長めに確保することで、紫外線が吸気口から漏れ出ることを抑制することができる。
【0019】
第4の発明によると、第1仕切壁と、第2仕切壁と、排気口が形成された外殻と、内殻と、によって区画された空間が排気空間となるため、排気空間を広く確保することができる。これにより、排気の流速を下げることで、騒音を抑制することができる。また、第1仕切壁と、第2仕切壁と、吸気口が形成された外殻と、内殻と、によって区画された空間が吸気空間となるため、吸気空間を広く確保することができる。これにより、吸気の流速を下げることで、騒音を抑制することができる。
【0020】
第5の発明によると、仕切壁が柔軟性を有しているため、外力等によって外殻に衝撃が加わったとしても仕切壁の破損を抑制することができる。また、仕切壁の一端が外殻又は内殻のいずれか一方に固定され他端が自由端であるため、内殻の形状に応じて任意に仕切壁の形状を変更又は調整することができる。さらに、仕切壁の他端が外殻又は内殻の他方に接触しているため、光源によってウイルスが殺菌・不活性化される前の空気と殺菌・不活性化された後の空気とが混じり合うことがない。これにより、空気殺菌・ウイルス不活性化装置によってクリーンな排気を実現することができる。
【0021】
第6の発明によると、内殻の内壁は光源からの紫外線を反射するように構成されているため、光源から照射される紫外線が内壁で減衰するまで複数回反射することによって殺菌空間の紫外線の効果を増大させることができる。これにより、内壁を空気が通過する僅かな時間で効率的にウイルスの殺菌・不活性化を行うことができる。
【0022】
このような発明によると、装置からの紫外線の漏れを抑制し、空気流量を制御し、光源を光源収納部に収納しその壁面を鏡面とし紫外線を減衰するまで反射させ、空気に十分な紫外線照射量を確保することで、装置から排出される空気を十分に殺菌・ウイルス不活性化し、人の近傍で安心して使用できる、殺菌・ウイルス不活性化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の斜視図。
図2】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の分解斜視図。
図3】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置のカバー部材の底面斜視図。
図4】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置のyz面における断面図。
図5】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空気の流れを説明するためのyz面における断面図。
図6】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空間を説明するためのyz面における断面図。
図7】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の図4のA-Aに沿った(xy面)断面図。
図8】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空気の流れを説明するための図4のA-Aに沿った(xy面)断面図。
図9】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空間を説明するための図4のA-Aに沿った(xy面)断面図。
図10】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の図4のB-Bに沿った(xz面)断面図。
図11】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空気の流れを説明するための図4のB-Bに沿った(xz面)断面図。
図12】本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置の空間を説明するための図4のB-Bに沿った(xz面)断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の空気殺菌・ウイルス不活性化装置1を図1から図12に基づき説明する。図中に示すように前後上下左右方向を定義し、上下をz軸、左右をx軸、前後をy軸とする。
【0025】
空気殺菌・ウイルス不活性化装置1は、図2に示すように、カバー部材2と、内殻3と、内殻3を支持する支持部材4と、紫外線を照射する光源5と、制御部6と、から構成される。空気殺菌・ウイルス不活性化装置1は、その周囲が略半円柱形状のカバー部材2に覆われていて、カバー部材2が内殻3を内蔵している。カバー部材2は、図3に示すように、後面に制御部6と電気的に接続されたスイッチ21が設けられ、吸気口22と、排気口23と、が形成されている。吸気口22は、カバー部材2の左右側面の下部にそれぞれ位置し、内側に図示せぬフィルタが設けられている。排気口23は、カバー部材2の円弧形状の頂部付近に位置し、内側に図示せぬフィルタが設けられている。吸気口22及び排気口23に設けられたフィルタが空気中の塵埃を除去することで、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内部に塵等が蓄積して圧損が増大することを抑制できる。なお、吸気口22の近傍及び排気口23の近傍に、防音及び紫外線吸収のためのロックウールを設けてもよい。また、他の紫外線を吸収可能な物質であればロックウールに限定されず他の素材を用いることもできる。
【0026】
図3に示すように、カバー部材2の内側には、柔軟性を有する弾性体である仕切壁7が設けられている。仕切壁7は、発泡性の樹脂で構成されるが、これに限定されず柔軟性を有する素材であればよい。仕切壁7は、一対の側壁71と、後壁72と、から構成される。側壁71は、吸気口22と排気口23との間であって前後方向に延びるように左右それぞれ設けられ、一端がカバー部材2の内側に固定され他端は自由端となっている。側壁71は、カバー部材2の円弧に沿うように僅かに上方に凸となるように湾曲しているが、これに限定されず任意の形状を採用することができる。側壁71の一端は吸気口22の上部に固定され、他端は排気口23の近傍に位置している。側壁71の前端はカバー部材2の内側の前面と当接しており、側壁71の後端はカバー部材2の内側の後面と離間している。カバー部材2が内殻3及び支持部材4に装着されたとき、図10に示すように側壁71の自由端は内殻3の側面と接触し、カバー部材2内の空間を上下に区画する。なお、側壁71の一端を自由端とし、他端を内殻3に固定してもよい。
【0027】
後壁72は、側壁71の後端とカバー部材2の内側の後面との間に配置され、カバー部材2の内側の円弧に沿って湾曲している。後壁72は側壁71と略同一の厚みを有することによりカバー部材2の径方向内方に突出し、周方向の端部(下端)が側壁71の固定端と略一致している。カバー部材2が内殻3及び支持部材4に装着されたとき、後壁72は内殻3の後端部と接触し、制御部6が配置されている空間と内殻3が配置されている空間とを区画する。左右の側壁71のうちのいずれか一方が本発明の第1仕切壁の一例であり、他方が第2仕切壁の一例である。
【0028】
内殻3は、光源5と平行に伸びる筒形状であって内部に光源5を収納しており、材質はステンレスである。内殻3の内側の内壁3Aは光源5からの紫外線を反射するように研磨で鏡面仕上げされており、高い反射率を有している。内殻3は、紫外線を反射する素材であればステンレスに限定されず、アルミニウム、合金等であってもよく、研磨、塗装、鍍金、熱処理、化学処理等の表面処理が施されていてもよい。内殻3内には、光源5による紫外線によって細菌及びウイルスを殺菌・不活性化する殺菌空間3aが規定される。殺菌空間3aを構成する部材は、内殻3を含めてすべて内側に鏡面仕上げが施されている。本実施の形態では、内壁3Aを#400で表面を仕上げてある表面をさらにバフ研磨することにより鏡面仕上げしている。内殻3の内部には、図示せぬ温度センサが設けられていて、所定の温度を検知すると空気殺菌・ウイルス不活性化装置1の光源5の電源が落ちるように設定されている。
【0029】
内殻3の底面には、蓋部31が着脱可能に設けられていて、蓋部31を取り外し光源5の交換やメンテナンスを行う。内殻3の上部には、光源5の稼働状態を示すアクリル製の稼働ランプ32が設けられている。使用者は、排気口23から稼働ランプ32を目視することで光源5の点灯を認識する。内殻3の後部に後述のファン62が設けられていて、後方から取り込まれた空気は光源5からの紫外線によって殺菌・不活性化されて前方の開口3bより排出される。開口3bを可能な限り広く取ることで、空気の流速を遅くして騒音を抑制している。詳細には、開口3bは、略中央に配置された光源5を上下左右方向から支持する4つの細い支持板によって4つの領域に区画される。
【0030】
支持部材4は、上部がカバー部材2に覆われ、内殻3及び制御部6を支持している。支持部材4は、内殻支持部41と、底蓋42と、前支持部43と、を有している。内殻支持部41は、内殻3の側面を支える第1支持部44と、内殻3の頂部を支える第2支持部45と、内殻3の底面を支える第3支持部46と、を有している。第1支持部44は内殻3の左右それぞれに設けられ、前後方向に延び略L字のアングル形状を成している。第2支持部45は、前後方向に延びる略平板形状であって、前支持部43の頂部と内殻3の頂部とを繋いでいる。第1支持部44と第2支持部45とは光源5の円周方向において離間しており第2支持部45は幅が狭いため、内殻3から排出された空気が通る排気空間を広く確保することができる。これにより、空気の風切り音を抑制し騒音を低減できる。
【0031】
底蓋42には、図示せぬカバーが着脱可能に設けられていて、カバーを取り外すことにより蓋部31にアクセスすることができる。底蓋42の後部には、制御部6が固定されている。前支持部43は略半円形状であって、上下方向の中央部に左右方向全幅に亘って前方に突出した前壁47が設けられている。前壁47は、仕切壁7と同一の素材で構成される。前支持部43と開口3bとが前後方向に十分に離間しているため、内殻3から排出された空気が通る排気空間を広く確保することができる。これにより、空気の風切り音を抑制し騒音を低減できる。カバー部材2及び底蓋42は、本発明の外殻の一例である。つまり、外殻とは空気殺菌・ウイルス不活性化装置1の外側を覆う部材である。
【0032】
光源5は、波長が253.7nmの紫外線を照射する殺菌灯であって、内殻3の略中央部に配置される。光源5は、内殻3の任意の位置に配置することができ、殺菌率への影響もない。光源5からの紫外線は内壁3Aを複数回反射するため、内殻3の内部空間では光源5から照射される紫外線の光量の複数倍の効果を得ることができる。反射による照射量は以下の数1によって算出される。本実施の形態では、光源5の軸方向が前後方向となるように内殻3の内部に配置される。
【0033】
Aは反射量増加率を表し、Bは反射率を表し、nは反射回数である。本実施の形態では、Bを0.7としてAを算出すると、およそ3.3となるため、内殻3の内部において光源5から照射された紫外線の効果は3.3倍となる。
【数1】
【0034】
次に、紫外線の照射量と殺菌率との関係性は、以下の数2で算出される。
Pは殺菌率を表し、Sは生存率を表し、tは照射時間[sec]を表し、Eは装置の紫外線照射強度[W/m]を表し、Dは90%の殺菌率の照射量[J/m]を表す。本実施の形態では、上式に基づいて、設定した殺菌率、紫外線光量に合わせてファン62の流量を設定してある。
【数2】
【0035】
制御部6は、制御基板61と、ファン62と、を有している。スイッチ21を押下することにより、ファン62の回転数を変え風量を調整することができる。制御部6は支持部材4の後部に固定されていて、制御基板61上に複数の素子が配置されている。ファン62は、内殻3の後端面に隣接するように配置される。
【0036】
次に、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内の空間、及びそれらを区画する仕切壁7及び前壁47を説明する。図4から図6までは空気殺菌・ウイルス不活性化装置1のyz面における断面図であって、図5では外部の構造を実線で内部の構造を点線で示し、図6では空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内の空間を示す。図7から図9までは図4のA-Aに沿った断面図であって、図8及び図9では仕切壁7及び前壁47を省略している。図8では外部の構造を実線で内部の構造を点線で示し、図9では空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内の空間を示す。図10から図12までは図4のB-Bに沿った断面図であって、図11では外部の構造を実線で内部の構造を点線で示し、図12では空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内の空間を示す。空気殺菌・ウイルス不活性化装置1の内部は、図6図9、及び図12に示すように、斜線で示す吸気空間2aと、薄墨で示す殺菌空間3aと、格子線で示す排気空間2bと、が規定される。断面図では、各空間の区画を明瞭にするために、模式的に仕切壁7及び前壁47を最前面に表示している。
【0037】
図6及び図12に示すように、吸気空間2aと排気空間2bとは側壁71を挟んで互いに隣り合っている。換言すると、カバー部材2内部の空間は、側壁71によって吸気空間2aと排気空間2bとに分断されている。
【0038】
図6に示すように、吸気空間2aは吸気口22からファン62までの吸気通路であって、側壁71、後壁72、及び前壁47によって排気空間2bと区画されている。詳細には、内殻3の後端部では後壁72によって排気空間2bと分断され、内殻3の側面では側壁71によって排気空間2bと分断され、支持部材4の前方では前壁47によって排気空間2bと分断されている。これにより、吸気空間2aと排気空間2bとの間に仕切壁7が存在しているため、吸気と排気が混じることがなく、クリーンな排気を実現できる。
【0039】
殺菌空間3aは内殻3内であって、吸気空間2a及び排気空間2bと連通している。換言すると、吸気口22から吸引された空気は必ず殺菌空間3aを通過して排気空間2bより排出される。
【0040】
排気空間2bは、内殻3の開口3bから排気口23までの排気通路であって、側壁71、後壁72、及び前壁47によって吸気空間2aと区画されている。詳細には、内殻3の後端部では後壁72によって吸気空間2aと分断され、内殻3の側面では側壁71によって吸気空間2aと分断され、支持部材4の前方では前壁47によって吸気空間2aと分断されている。詳細には、図12に示すように、カバー部材2と内殻3及び底蓋42とは互いに離間していて、側壁71と、内殻3と、カバー部材2のうち排気口23が形成されている部分と、によって囲まれた空間が排気空間2bであって、側壁71と、カバー部材2のうち吸気口22が形成されている部分と、底蓋42と、によって囲まれた空間が吸気空間2aである。
【0041】
各断面図に示すように、内殻3とカバー部材2との間には、吸気空間2a又は排気空間2bが存在しており、両者は離間している。詳細には、図6に示すように、内殻3の上及び前には排気空間2bが存在し、下及び後には吸気空間2aが存在している。また、図12に示すように、内殻3の左右には吸気空間2a及び排気空間2bが存在している。つまり、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1では光源5が配置された内殻3を囲むように空気の流れが設計されている。詳細には、光源5の軸方向である前後方向に直交する断面であるxz面(図12)において殺菌空間3aは吸気空間2a及び排気空間2bに囲まれていて、軸方向及び軸方向に直交する方向を含む断面であるxy面(図6)及びyz面(図9)においても殺菌空間3aは吸気空間2a及び排気空間2bに囲まれている。これにより、光源5を収納する内殻3と、カバー部材2と、の間に物理的な距離ができるため、光源5の紫外線が外部に漏洩することを抑制できる。また、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内の空間において空気の流路を大きく確保することができるため、空気の流速を下げることにより騒音の発生を抑制できる。
【0042】
次に、図5図8図11を参照して空気殺菌・ウイルス不活性化装置1における空気の流れを説明する。外部から吸気口22に取り込まれる空気の流れ、及び排気空間2bから排気口23を経て外部に排出される空気の流れを実線で示し、吸気空間2aにおける空気の流れを点線で示し、殺菌空間3aにおける空気の流れを一点鎖線で示す。
【0043】
スイッチ21を押下するとファン62が所定の回転数で回転すると同時に光源5が点灯して紫外線を内壁3Aに向けて照射する。このとき、紫外線は減衰するまで内殻3の内壁3Aを繰り返し反射する。吸気口22から取り込まれた空気は図示せぬフィルタによって粉塵が除去され、点線の矢印で示すように、内殻3の下部を通って制御部6の近傍で略コ字状に折り返しファン62によって内殻3に案内される。このとき、図5及び図8に示すように、内殻3の下部の空間及び制御部6を収納する空間は十分に広いため、空気の流速が抑えられることにより騒音を抑制できる。
【0044】
ファン62を通過した空気は、一点鎖線の矢印で示すように内殻3内を進み、殺菌空間3aで光源5からの紫外線によってウイルスが殺菌・不活性化される。殺菌された空気は、実線の矢印で示すように、殺菌空間3aから排出されて前支持部43に当たって略コ字状に折り返し、略L字状に屈曲して排気口23から外部に排出される。このとき、排気口23に設けられたフィルタによって粉塵等が除去される。図8及び図11に示すように、内殻3の上部及び前方の空間は十分に広いため、空気の流速が抑えられることにより騒音を抑制できる。
【0045】
このような構成によると、仕切壁7によって吸気空間2aと排気空間2bとが分断されているため、光源5によってウイルスが殺菌・不活性化される前の空気と殺菌・不活性化された後の空気とが混じり合うことがない。これにより、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1によってクリーンな排気を実現することができる。また、吸気空間2aと排気空間2bとが隣り合っているため、カバー部材2のサイズを大きくすることなく吸気空間2aと排気空間2bとして一定のスペース確保することができる。吸気空間2a及び排気空間2bのスペースが小さいと空気の流速が上がることで騒音が発生するが、空気の流路を大きく確保することで騒音を低減することができる。
【0046】
このような構成によると、所定の断面において殺菌空間3aが排気空間2b及び吸気空間2aに囲まれているため、内殻3とカバー部材2及び底蓋42との物理的な距離を確保することができる。これにより、カバー部材2の外に紫外線が漏れることを抑制できる。また、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1内において吸気空間2a及び排気空間2bを広く確保することができるため、空気の流速を低く抑えることにより騒音を低減することができる。
【0047】
このような構成によると、内殻3から排出された空気が折り返すように案内されて排気口23から排出されるため、光源5の紫外線が排気口23から漏れ出ることを抑制することができる。また、排気空間2bを折り返すように構成し排気の通風路を長めに確保することで、紫外線が排気口23から漏れ出ることを抑制することができる。さらに、吸気口22から取り込まれた空気が折り返すように内殻3に案内されるため、光源5の紫外線が吸気口22から漏れ出ることを抑制することができる。また、吸気空間2aを折り返すように構成し吸気の通風路を長めに確保することで、紫外線が吸気口22から漏れ出ることを抑制することができる。
【0048】
このような構成によると、右側の側壁71と、左側の側壁71と、排気口23が形成されたカバー部材2と、内殻3と、によって区画された空間が排気空間2bとなるため、排気空間2bを広く確保することができる。これにより、排気の流速を下げることで、騒音を抑制することができる。また、右側の側壁71と、左側の側壁71と、吸気口22が形成されたカバー部材2及び底蓋42と、内殻3と、によって区画された空間が吸気空間2aとなるため、吸気空間2aを広く確保することができる。これにより、吸気の流速を下げることで、騒音を抑制することができる。
【0049】
このような構成によると、仕切壁7が柔軟性を有しているため、外力等によって仕切壁7に衝撃が加わったとしても仕切壁7の破損を抑制することができる。また、側壁71の一端がカバー部材2又は内殻3のいずれか一方に固定され他端が自由端であるため、内殻3の形状に応じて任意に仕切壁7の形状を変更又は調整することができる。さらに、側壁71の他端がカバー部材2又は内殻3の他方に接触しているため、光源5によってウイルスが殺菌・不活性化される前の空気と殺菌・不活性化された後の空気とが混じり合うことがない。これにより、空気殺菌・ウイルス不活性化装置1によってクリーンな排気を実現することができる。
【0050】
本発明による空気殺菌・ウイルス不活性化装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0051】
上述の実施の形態では、光源5は1本だったが、これに限定されず2本以上の光源を用いてもよい。これにより、紫外線の光量が増え、高い殺菌能力を発揮することができる。
【0052】
上述の実施の形態では、カバー部材2が半円柱形状、内殻3が略円筒形状であったが、これに限定されない。例えば、カバー部材及び光源収納部は任意の形状を選択することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 空気殺菌・ウイルス不活性化装置
2 カバー部材
2a 吸気空間
2b 排気空間
3 内殻
3a 殺菌空間
4 支持部材
5 光源
6 制御部
7 仕切壁
22 吸気口
23 排気口
47 前壁
62 ファン
71 側壁
72 後壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12