(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121069
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】無線アクセスポイント、無線通信システム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/12 20230101AFI20230823BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20230823BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20230823BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20230823BHJP
【FI】
H04W72/12
H04W72/04 131
H04W72/04 133
H04W52/02 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024304
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀和
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067AA43
5K067CC02
5K067CC04
5K067DD34
5K067EE22
5K067GG02
5K067JJ21
(57)【要約】
【課題】パケットの衝突を予防して、データ送信の遅延が生じにくい無線アクセスポイントを提供する。
【解決手段】無線アクセスポイントは、通信部と、制御部と、を備える。通信部は、接続中の複数の無線通信端末に対してデータを送受信する。制御部は、無線通信端末がデータを送信可能である送信期間を無線通信端末毎に定め、無線通信端末が定められた送信期間において起動中となるようにTWT(Target Wake Time)の設定を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続中の複数の無線通信端末に対してデータを送受信する通信部と、
前記無線通信端末がデータを送信可能である送信期間を当該無線通信端末毎に定め、前記無線通信端末が定められた前記送信期間において起動中となるようにTWT(Target Wake Time)の設定を行う制御部と、
を備えることを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項2】
請求項1に記載の無線アクセスポイントであって、
前記制御部は、前記通信部に接続中の前記無線通信端末が増減した場合、前記TWTの設定を更新することを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線アクセスポイントであって、
前記通信部は、1つのチャネルを複数のサブキャリアに分割することで、複数の前記無線通信端末との間で同時にデータの送受信が可能であり、
前記制御部は、前記送信期間毎に前記サブキャリアを前記無線通信端末それぞれに割り当て、
前記制御部は、前記送信期間において、前記サブキャリアが割り当てられた前記無線通信端末が起動中となるように前記TWTの設定を行うことを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項4】
請求項3に記載の無線アクセスポイントであって、
前記制御部は、前記通信部に接続中の前記無線通信端末が増減した場合、前記送信期間毎の前記無線通信端末への前記サブキャリアの割当てを更新することを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の無線アクセスポイントであって、
前記制御部は、接続中の全ての前記無線通信端末の前記送信期間の長さが均一となるように、前記サブキャリアの割当て及び前記TWTの設定を行うことを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の無線アクセスポイントであって、
前記制御部は、前記無線通信端末の前記送信期間を定めるための補助情報に基づいて、接続中の前記無線通信端末に応じて前記送信期間の長さが異なるように、前記サブキャリアの割当て及び前記TWTの設定を行うことを特徴とする無線アクセスポイント。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の無線アクセスポイントと、
前記無線通信端末と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
無線アクセスポイントと複数の無線通信端末との間の無線通信の設定を行う無線通信設定方法において、
前記無線通信端末がデータを送信可能である送信期間を当該無線通信端末毎に定め、
前記無線通信端末が定められた前記送信期間において起動中となるようにTWT(Target Wake Time)の設定を行うことを特徴とする無線通信設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数の無線通信端末が接続される無線アクセスポイントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のSTA(ステーション)とAP(アクセスポイント)とで通信を行うシステムを開示する。特許文献1のシステムでは、TWT(Target Wake Time)が用いられる。TWTとは、STAの起動中の期間を短くすることにより、消費電力を低減する機能である。具体的には、STAは、AP又は他のSTAに対してTWT要求を送信する。TWT要求には、STAが起動して無線通信を開始する時間が含まれている。APは、TWT要求に基づいてSTAをグループ化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、無線アクセスポイントに複数の無線通信端末が接続されて通信する環境では、例えば無線通信端末が同時にパケットを送信した場合、パケットの衝突が発生する可能性がある。パケットの衝突が発生した場合、パケットの再送が必要になるため、データ送信の遅延が発生する可能性がある。なお、特許文献1には、TWTを用いて消費電力を低減することは記載されているが、それ以外の目的にTWTを活用することは記載されていない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、パケットの衝突を予防して、データ送信の遅延が生じにくい無線アクセスポイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線アクセスポイントが提供される。即ち、無線アクセスポイントは、通信部と、制御部と、を備える。前記通信部は、接続中の複数の無線通信端末に対してデータを送受信する。前記制御部は、前記無線通信端末がデータを送信可能である送信期間を当該無線通信端末毎に定め、前記無線通信端末が定められた前記送信期間において起動中となるようにTWT(Target Wake Time)の設定を行う。
【0008】
これにより、複数の無線通信端末の起動タイミングが調整されるため、複数の無線通信端末が送信するパケット同士が衝突しにくくなる。その結果、データ送信の遅延が発生しにくい。特に、本構成では、一般的なTWTとは異なり、無線アクセスポイントが、無線通信端末毎の送信期間を決定する。そのため、無線アクセスポイントは、他の無線通信端末の送信期間を考慮した、適切な送信期間を決定できる。
【0009】
前記の無線アクセスポイントにおいては、前記制御部は、前記通信部に接続中の前記無線通信端末が増減した場合、前記TWTの設定を更新することが好ましい。
【0010】
これにより、無線通信端末の接続数等に応じて、無線通信端末の送信期間を調整できる。
【0011】
前記の無線アクセスポイントにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記通信部は、1つのチャネルを複数のサブキャリアに分割することで、複数の前記無線通信端末との間で同時にデータの送受信が可能である。前記制御部は、前記送信期間毎に前記サブキャリアを前記無線通信端末それぞれに割り当てる。前記制御部は、前記送信期間において、前記サブキャリアが割り当てられた前記無線通信端末が起動中となるように前記TWTの設定を行う。
【0012】
1つのチャネルを複数のサブキャリアに分割するだけでは全ての無線通信端末の送信期間を適切に確保できない場合であっても、TWTを併用することにより、無線通信端末の送信期間を適切に確保できる。
【0013】
前記の無線アクセスポイントにおいては、前記制御部は、前記通信部に接続中の前記無線通信端末が増減した場合、前記送信期間毎の前記無線通信端末への前記サブキャリアの割当てを更新することが好ましい。
【0014】
これにより、無線通信端末の接続数等に応じて、無線通信端末の送信期間を調整できる。
【0015】
前記の無線アクセスポイントにおいては、前記制御部は、接続中の全ての前記無線通信端末の前記送信期間の長さが均一となるように、前記サブキャリアの割当て及び前記TWTの設定を行うことが好ましい。
【0016】
これにより、無線通信端末の送信期間を均一にできる。そのため、例えば、全ての無線通信端末の通信において遅延が発生しにくい。
【0017】
前記の無線アクセスポイントにおいては、前記制御部は、前記無線通信端末の前記送信期間を定めるための補助情報に基づいて、接続中の前記無線通信端末に応じて前記送信期間の長さが異なるように、前記サブキャリアの割当て及び前記TWTの設定を行うことが好ましい。
【0018】
これにより、例えば、遅延が好ましくない無線通信端末や通信量が多い無線通信端末の送信期間を長くすることにより、ユーザの要望に合わせた通信状況を実現できる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、前記の無線アクセスポイントと、無線通信端末と、を備える無線通信システムが提供される。
【0020】
本発明の第3の観点によれば、以下の無線通信設定方法が提供される。この無線通信設定方法では、無線アクセスポイントと複数の無線通信端末との間の無線通信の設定を行う。前記無線通信端末がデータを送信可能である送信期間を当該無線通信端末毎に定める。前記無線通信端末が定められた前記送信期間において起動中となるようにTWT(Target Wake Time)の設定を行う。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線アクセスポイントを含む無線通信システム。
【
図2】無線アクセスポイントに無線通信端末が接続されたときの処理を示すシーケンス図。
【
図3】各無線通信端末の送信期間の長さを均一にする場合のサブキャリアの割当て及びTWTの設定を示すタイムチャート。
【
図4】送信期間の長さを無線通信端末に応じて異ならせる場合のサブキャリアの割当て及びTWTの設定を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、無線アクセスポイント1を含む無線通信システム100について説明する。
【0023】
図1に示すように、無線通信システム100は、無線アクセスポイント1と、通信装置2と、無線通信端末3と、から構成されている。なお、無線通信システム100を構成する無線アクセスポイント1、通信装置2、及び無線通信端末3は、それぞれ1台であっても複数台であってもよい。
【0024】
無線アクセスポイント1は、有線LANにより通信装置2と接続されており、通信装置2と有線通信が可能である。通信装置2はパーソナルコンピュータ、NAS、又はサーバ等である。無線アクセスポイント1は、無線LANルータ又は無線LANブリッジであり、自機を中心として無線LANネットワークを構築する。
【0025】
無線アクセスポイント1は、所定の無線通信規格に準拠して、無線通信端末3と無線通信が可能である。無線通信規格としては、例えば、IEEE802.11が考えられるが、これに限定されない。無線通信端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータ等である。あるいは、無線通信端末3は、産業機械4を無線LANネットワークに接続するための無線機器であってもよい。
【0026】
無線通信端末3は、アンテナ又は無線通信モジュールを備えており、例えば無線アクセスポイント1と無線通信を行うことができる。無線アクセスポイント1は、複数の無線通信端末3同士若しくは通信装置2と無線通信端末3との間の通信を中継する。また無線アクセスポイント1は、無線通信端末3を別のネットワーク(例えばインターネット等のWAN)等に接続する処理を行うことができてもよい。
【0027】
無線アクセスポイント1は、通信部11と、制御部12と、を備える。
【0028】
通信部11は、有線通信及び無線通信を行う。通信部11は、具体的には、有線通信を行うためのインタフェースと、無線通信を行うためのアンテナ及び無線通信モジュールと、を有する。
【0029】
制御部12は、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD等のROMと、RAMと、を備える。制御部12は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、無線アクセスポイント1に関する様々な制御を行う。
【0030】
本実施形態の無線アクセスポイント1及び無線通信端末3は、IEEE802.11通信規格(例えば、IEEE802.11axなど)で採用されているTWT(Target Wake Time)機能と、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)通信技術と、に対応している。以下、OFDMAとTWTについて簡単に説明する。
【0031】
TWT(Target Wake Time)は、無線通信端末3の起動中の期間を短くすることにより、消費電力を低減する機能である。以下の説明では、無線通信端末3が無線通信を実行中であるか又は即座に無線通信を実行可能な状態を「起動中」と称し、無線通信端末3が最低限の機能のみを有効にしてスリープしており無線通信を即座に実行できない状態を「待機中」と称する。一般的にTWTでは、無線通信端末3が起動中の期間を事前に指定して無線アクセスポイント1に送信する。無線通信端末3は、事前に指定した期間以外は、待機中を維持する。これにより、無線通信端末3の起動中の期間が短くなるため、消費電力を低減できる。
【0032】
OFDMAは、1チャネル(例えば20MHz)の帯域幅を更に複数のサブキャリアに分割し、それぞれのサブキャリアを無線通信端末3に割り当てて通信を行う機能である。例えば、無線アクセスポイント1は、1チャネルを234のサブキャリアに分割し、更に234のサブキャリアを所定数のグループに区分する。無線アクセスポイント1は、例えば26のサブキャリアを1グループとして9つのグループを作成する。ただし、グループの分け方は様々であり、要求される仕様等に応じて適宜変更可能である。例えば、1つのグループに含まれるサブキャリアの数が、他のグループに含まれるサブキャリアの数とは異なっていてもよい。具体的には、26のサブキャリアを1グループとして3グループを作成し、52のサブキャリアを1グループとして3グループを作成してもよい。以下の説明では、複数のサブキャリアを含んで構成されたグループを単に「サブキャリアグループ」と称する。
【0033】
無線アクセスポイント1は、サブキャリアグループを無線通信端末3それぞれに対して割り当てる。無線通信端末3は、割り当てられたサブキャリアグループを用いて無線通信を行う。これにより、複数の無線通信端末3が同時に無線通信を行うことができる。
【0034】
ただし、無線アクセスポイント1に接続されている無線通信端末3の数が、サブキャリアグループの数を超える場合、全ての無線通信端末3に異なるサブキャリアグループを割り当てることができない。例えば、サブキャリアグループの数が5である状況で、無線アクセスポイント1に6台の無線通信端末3が接続した場合、1台の無線通信端末3にサブキャリアグループを割り当てることができない。その結果、ある特定の無線通信端末3のデータ送信の機会が著しく低減する等の不具合が生じることがある。なお、2以上の無線通信端末3に同じサブキャリアグループを割り当てた場合、無線通信端末3が送信するパケット同士が衝突して、遅延が発生する可能性がある。
【0035】
上述したように、TWTの本来の目的は、無線通信端末3の起動中の期間を短くすることによる消費電力の低減である。本実施形態では、TWTを用いることにより無線通信端末3の起動期間を簡単に設定できることを応用して、無線通信端末3のデータ送信の機会を確保しつつ、パケットの衝突を予防する。以下、
図2及び
図3を参照して、具体的な処理の流れを説明する。
【0036】
図2には、初めに無線アクセスポイント1が起動し、次に2つの無線通信端末3が順次起動した際の処理の流れが記載されている。以下では、初めに起動した無線通信端末3を第1無線通信端末3aと定義し、次に起動した無線通信端末3を第2無線通信端末3bと定義する。
【0037】
図2に示すように、初めに無線アクセスポイント1が起動する(シーケンス番号S1)。その後、第1無線通信端末3aが起動する(シーケンス番号S2)。第1無線通信端末3aは、無線アクセスポイント1に対する接続処理を行う(シーケンス番号S3)。
【0038】
無線アクセスポイント1は、第1無線通信端末3aが接続したことを受けて、サブキャリアの割当てを行う(シーケンス番号S4)。サブキャリアの割当てとは、上述したサブキャリアグループを第1無線通信端末3aに割り当てることである。現時点では、無線アクセスポイント1に接続されているのは第1無線通信端末3aのみであるため、全てのサブキャリアグループを第1無線通信端末3aに割り当ててもよい。
【0039】
また、無線アクセスポイント1に複数の無線通信端末3が接続中である場合、無線アクセスポイント1は、以下のようにしてサブキャリアを割り当てる。
図3には、無線アクセスポイント1に接続中の無線通信端末3が6台あり、サブキャリアグループが5つ(A~E)の場合の割当て例が示されている。この例では、無線通信端末3の数がサブキャリアグループの数よりも多いため、全ての無線通信端末3にサブキャリアグループを常に割り当てることはできない。そのため、無線アクセスポイント1は、時刻に応じてサブキャリアグループの割当て状況を次のように変化させる。
【0040】
時刻T0から時刻T1の送信期間では、1番目から5番目の無線通信端末3にサブキャリアグループが割り当てられ、6番目の無線通信端末3にはサブキャリアグループが割り当てられない。時刻T1から時刻T2の送信期間では、1番目から4番目及び6番目の無線通信端末3にサブキャリアグループが割り当てられ、5番目の無線通信端末3にはサブキャリアグループが割り当てられない。このように、本実施形態では、送信期間に応じて、サブキャリアグループが割り当てられない無線通信端末3が順次変化する。つまり、
図3に示す例では、それぞれの無線通信端末3は、時刻T0からT6のうち5/6の期間においてサブキャリアグループが割り当てられ、1/6の期間においてサブキャリアグループが割り当てられない。言い換えれば、全ての無線通信端末3に対してサブキャリアグループが割り当てられる期間の長さは均一である。
【0041】
図2に戻って、無線アクセスポイント1は、サブキャリアグループの割当て後に、第1無線通信端末3aの送信期間の決定及びTWTの設定を行う(シーケンス番号S5)。本実施形態では、サブキャリアグループが割り当てられた期間と、無線通信端末3がデータを送信可能な期間(送信期間)と、が対応するように送信期間が決定される。現時点では、第1無線通信端末3aは、データを常に送信可能な状態である。従って、無線アクセスポイント1は、全ての送信期間において第1無線通信端末3aが起動中となるようにTWTの設定を行う。
【0042】
また、無線アクセスポイント1に複数の無線通信端末3が接続中である場合、無線アクセスポイント1は、以下のようにしてTWTの設定を行う。上述した
図3の例では、それぞれの無線通信端末3には、時刻T0からT6のうち5/6の期間においてサブキャリアグループが割り当てられる。無線アクセスポイント1は、サブキャリアグループが割り当てられた期間と一致するように、それぞれの無線通信端末3の送信期間を決定する。そして、無線アクセスポイント1は、サブキャリアグループが割り当てられた期間が起動中となるように、かつ、サブキャリアグループが割り当てられていない期間が待機中となるように、それぞれの無線通信端末3についてTWTの設定を行う。具体的には
図3の例では、無線アクセスポイント1は、1番目の無線通信端末3に時刻T0からT5までの期間においてサブキャリアグループAからEの何れかを割り当てる。これに呼応して、当該期間は1番目の無線通信端末3が起動中となる。また、無線アクセスポイント1は、時刻T5からT6までの期間において1番目の無線通信端末3にサブキャリアグループを割り当てていない。これに呼応して、当該期間は1番目の無線通信端末3が待機中となる。このように、無線アクセスポイント1は、TWTの設定によって、無線通信端末3がサブキャリアグループの割り当ての有無に応じて起動中および待機中となるように制御できる。また、
図3の例では、全ての無線通信端末3について、サブキャリアグループが割り当てられる期間の長さは均一である。従って、送信可能な期間の長さにおいても、全ての無線通信端末3について均一である。
【0043】
例えば、
図3の時刻T0から時刻T1の送信期間では、6番目の無線通信端末3にサブキャリアグループが割り当てられていない。従って、時刻T0から時刻T1の送信期間では、6番目の無線通信端末3が待機中となるようにTWTを設定する。他の送信期間においても同様である。このように、OFDMAとTWTを併用することにより、無線通信端末3のデータ送信の機会を確保しつつ、パケットの衝突を予防することができる。
【0044】
再び、
図2に戻って、無線アクセスポイント1は、TWTの設定後に、サブキャリア及びTWTの設定を第1無線通信端末3aに通知する(シーケンス番号S6)。第1無線通信端末3aは、この通知を受けて、サブキャリア及びTWTの設定を行う(シーケンス番号S7)。上述したように第1無線通信端末3aはOFDMA及びTWTに対応しているため、規格に沿った内容が無線アクセスポイント1から通知されるだけで、第1無線通信端末3a側での設定が完了する。従って、本実施形態の無線通信システム100を実現するために無線通信端末3を特別にカスタマイズする必要はない。
【0045】
その後、第2無線通信端末3bが起動したとする(シーケンス番号S8)。第2無線通信端末3bは、無線アクセスポイント1に対する接続処理を行う(シーケンス番号S9)。
【0046】
無線アクセスポイント1は、第2無線通信端末3bが接続したことを受けて、サブキャリアの割当ての更新を行う(シーケンス番号S10)。無線アクセスポイント1は、例えば、第1無線通信端末3aと第2無線通信端末3bに均一にサブキャリアグループを割り当てる。例えば、6つのサブキャリアグループが存在する場合、サブキャリアグループを3つずつ第1無線通信端末3aと第2無線通信端末3bに割り当てる。なお、詳細は後述するが、サブキャリアグループの数が異なるように、第1無線通信端末3aと第2無線通信端末3bにサブキャリアグループを割り当ててもよい。
【0047】
次に、無線アクセスポイント1は、サブキャリアグループの割当て後に、第2無線通信端末3bの送信期間の決定及びTWTの設定の更新を行う(シーケンス番号S11)。第2無線通信端末3bの送信期間を決定する方法は、シーケンス番号S5と同じである。例えば、全ての期間において第2無線通信端末3bにサブキャリアグループが割り当てられた場合、全ての期間が送信期間であり、全ての期間において第2無線通信端末3bが起動中となるようにTWTの設定が行われる。なお、特定の期間のみにおいて、第2無線通信端末3bにサブキャリアグループが割り当てられた場合、当該特定の期間において第2無線通信端末3bが起動中となるようにTWTの設定が行われる。
【0048】
その後、無線アクセスポイント1は、更新後のサブキャリア及びTWT設定を第1無線通信端末3a及び第2無線通信端末3bに通知する(シーケンス番号S12)。第1無線通信端末3a及び第2無線通信端末3bは、この通知を受けて、更新後のサブキャリア及びTWTの設定を行う(シーケンス番号S13,S14)。
【0049】
無線アクセスポイント1に接続される無線通信端末3の増減に応じて、上述した処理を繰り返すことにより、現在の接続状況に応じてサブキャリアの割当て、送信期間の決定、及びTWTの設定を適切に行うことができる。
【0050】
図3に示す例では、全ての無線通信端末3において送信期間の長さが均一である。これは一例であり、無線通信端末3に応じて、送信期間の長さが異なっていてもよい。例えば、無線アクセスポイント1に接続される無線通信端末3が予め決まっている状況において、特定の無線通信端末3の通信の優先度が高い場合がある。この場合、無線アクセスポイント1は、この特定の無線通信端末3が常にデータ送信ができるように設定することもできる。以下、
図4を参照して具体的に説明する。
【0051】
無線アクセスポイント1の制御部12には、接続候補の無線通信端末3について、無線通信端末3の送信期間を定めるための補助情報が予め記憶されている。ただし、制御部12は、この補助情報を外部(例えば通信装置2)から取得してもよい。
図4に示す例では、無線アクセスポイント1に接続中の無線通信端末3が6台あり、サブキャリアグループが5つ(A~E)の場合の第2の割当て例が示されている。無線通信端末3毎の通信の優先度が補助情報に該当する。
図4に示すように、1番目の無線通信端末3の通信の優先度が高く、4番目の無線通信端末3の通信の優先度が低く、その他の無線通信端末3の通信の優先度は中程度である。
【0052】
無線アクセスポイント1は、補助情報に基づいて、サブキャリアの割当て及びTWTの設定を行う。
図4では、
図3に示す例との相違箇所に太枠が付されている。具体的には、時刻T5から時刻T6の期間において、4番目の無線通信端末3の代わりに、1番目の無線通信端末3にサブキャリアが割り当てられる。これにより、4番目の無線通信端末3の送信期間の長さを減らしつつ、1番目の無線通信端末3の送信期間の長さを増加させることができる。
【0053】
このサブキャリアの割当てに応じてTWTの設定が行われる。具体的には、1番目の無線通信端末3に対しては、全ての期間が送信期間となるようにTWTの設定が行われる。また、4番目の無線通信端末3に対しては、1つの周期において2回待機中となるようにTWTの設定が行われる。
【0054】
図4に示す例では、通信の優先度が高い無線通信端末3の送信期間を長くしつつ、通信の優先度が低い無線通信端末3の送信期間を短くすることができる。つまり、無線通信端末3の特徴に応じて適切な送信期間を設定できる。なお、補助情報は通信の優先度に限られず、例えば通信するデータ量であってもよい。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の無線アクセスポイント1は、通信部11と、制御部12と、を備え、以下の無線通信設定方法を行う。通信部11は、接続中の複数の無線通信端末3に対してデータを送受信する。制御部12は、無線通信端末3がデータを送信可能である送信期間を無線通信端末3毎に定め、無線通信端末3が定められた送信期間において起動中となるようにTWTの設定を行う。
【0056】
これにより、複数の無線通信端末3の起動タイミングが調整されるため、複数の無線通信端末3が送信するパケット同士が衝突しにくくなる。その結果、データ送信の遅延が発生しにくい。特に、本構成では、一般的なTWTとは異なり、無線アクセスポイント1が、無線通信端末3毎の送信期間を決定する。そのため、無線アクセスポイント1は、他の無線通信端末3の送信期間を考慮した、適切な送信期間を決定できる。
【0057】
本実施形態の無線アクセスポイント1において、制御部12は、通信部11に接続中の無線通信端末3が増減した場合、TWTの設定を更新する。
【0058】
これにより、無線通信端末3の接続数等に応じて、無線通信端末3の送信期間を調整できる。
【0059】
本実施形態の無線アクセスポイント1において、通信部11は、1つのチャネルを複数のサブキャリアに分割することで、複数の無線通信端末3との間で同時にデータの送受信が可能である。制御部12は、送信期間毎にサブキャリアを無線通信端末3それぞれに割り当てる。制御部12は、送信期間において、サブキャリアが割り当てられた無線通信端末3が起動中となるようにTWTの設定を行う。
【0060】
1つのチャネルを複数のサブキャリアに分割するだけでは全ての無線通信端末3の送信期間を適切に確保できない場合であっても、TWTを併用することにより、無線通信端末3の送信期間を適切に確保できる。
【0061】
本実施形態の無線アクセスポイント1において、制御部12は、通信部11に接続中の無線通信端末3が増減した場合、送信期間毎の無線通信端末3へのサブキャリアの割当てを更新する。
【0062】
これにより、無線通信端末3の接続数等に応じて、無線通信端末3の送信期間を調整できる。
【0063】
本実施形態の無線アクセスポイント1において、制御部12は、接続中の全ての無線通信端末3の送信期間の長さが均一となるように、サブキャリアの割当て及びTWTの設定を行う。
【0064】
これにより、無線通信端末3の送信期間を均一にできる。そのため、例えば、全ての無線通信端末の通信において遅延が発生しにくい。
【0065】
本実施形態の無線アクセスポイント1において、制御部12は、無線通信端末3の送信期間を定めるための補助情報に基づいて、接続中の無線通信端末3に応じて送信期間の長さが異なるように、サブキャリアの割当て及びTWTの設定を行う。
【0066】
これにより、例えば、遅延が好ましくない無線通信端末や通信量が多い無線通信端末の送信期間を長くすることにより、ユーザの要望に合わせた通信状況を実現できる。
【0067】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0068】
無線アクセスポイント1及び無線通信端末3は、OFDMAによる通信を行わなくてもよい。この場合、無線アクセスポイント1は、それぞれの送信期間に対して、1つの無線通信端末3を対応付ける。そして、無線アクセスポイント1は、それぞれの送信期間において、対応する無線通信端末3のみが起動中となるようにTWTの設定を行う。これにより、上記実施形態と同種の効果を発揮させることができる。
【0069】
無線通信端末3毎の送信期間の長さを均一にするか否かを設定に応じて使い分けてもよい。例えば、
図4に示す補助情報が登録されている場合は、補助情報に基づいて無線通信端末3毎の個別の送信期間を決定し、補助情報が登録されていない場合は、無線通信端末3毎の送信期間の長さを均一にしてもよい。
【0070】
また、例えば、
図4に示す無線通信端末へのサブキャリアの割当てにおいて、無線アクセスポイント1(具体的には無線通信モジュール)がサブキャリアグループを特定の無線通信端末3それぞれに固定して割り当てることができる場合(例えば、1番目の無線通信端末3に対しては、サブキャリアグループAに固定など)には、特定の無線通信端末3それぞれは特定のサブキャリアグループを占有して通信可能となる。この場合には、
図2に示した無線アクセスポイント1が必要以上にTWTの設定の更新を行うことを抑制でき、これにより無線通信端末3に向けたTWTの設定の通知処理を必要以上に行うことも抑制できる。
【0071】
上記実施形態で示した
図2のシーケンス図は一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、サブキャリアの通知とTWTの設定の通知を個別に送信してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 無線アクセスポイント
2 通信装置
3 無線通信端末
4 産業機械
11 通信部
12 制御部
100 無線通信システム