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特開2023-12107仮想需要家コンピュータ、DRシミュレーションシステム、仮想需要家プログラム、及び、DRサーバの形成方法
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  • 特開-仮想需要家コンピュータ、DRシミュレーションシステム、仮想需要家プログラム、及び、DRサーバの形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012107
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】仮想需要家コンピュータ、DRシミュレーションシステム、仮想需要家プログラム、及び、DRサーバの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230118BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/00 170
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115563
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB03
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA03
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
5G066KA01
5G066KB01
(57)【要約】
【課題】DRシステムの動作及び又は需要家の動作を十分に確認できるようにする。
【解決手段】
DR(デマンドレスポンス)シミュレーションシステム10は、DRシステム20と仮想需要家コンピュータ30とを備える。DRシステム20は、実需要家A~Eのそれぞれの実消費電力量を収集し、収集した実消費電力量と節電量を指令する節電指令値とに基づいて、実需要家A~E全体での節電量が節電指令値に達するように実需要家A~Eの少なくとも1つに節電を要請する。仮想需要家コンピュータ上には、仮想需要家A~Eが構築され、仮想需要家A~Eは、過去に測定された消費電力量を取得し、取得した消費電力量に基づく仮想消費電力量を実消費電力量としてDRシステム20に供給する供給部31Aと、節電の要請に基づいて、供給部31AによりDRシステム20に供給する仮想消費電力量を減じる仮想節電部31Bと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の実需要家のそれぞれの実消費電力量と、節電量を指令する節電指令値とに基づいて、前記複数の実需要家全体での節電量が前記節電指令値に達するように前記複数の実需要家の少なくとも1つに節電を要請するDR(デマンドレスポンス)システムに接続されたコンピュータであって、
前記コンピュータ上には、仮想需要家が構築され、
前記仮想需要家は、
過去に測定された消費電力量に基づく仮想消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する供給部と、
前記DRシステムからの前記節電の要請に基づいて、前記供給部により前記DRシステムに供給する前記仮想消費電力量を減じる仮想節電部と、を備える、
仮想需要家コンピュータ。
【請求項2】
前記過去に測定された消費電力量は、前記仮想需要家の仮想化のもとの実需要家又はこの実需要家と同等の電力消費パターンを有する他の実需要家の過去の消費電力量である、
請求項1に記載の仮想需要家コンピュータ。
【請求項3】
前記過去の消費電力量は、第1期間の消費電力量であり、
前記実消費電力量は、前記第1期間よりも短い第2期間の消費電力量であり、
前記供給部は、前記過去の消費電力量を分割し、分割した前記消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する、
請求項1又は2に記載の仮想需要家コンピュータ。
【請求項4】
前記仮想消費電力量は、1又は複数の電気設備ごとの複数種類の仮想消費電力量を含み、
前記仮想節電部は、前記節電の要請に基づいて、前記複数種類の仮想消費電力量の少なくとも1つを減じる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の仮想需要家コンピュータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想需要家コンピュータと、
前記DRシステムと、
を備えるDRシミュレーションシステム。
【請求項6】
複数の実需要家のそれぞれの実消費電力量と、節電量を指令する節電指令値とに基づいて、前記複数の実需要家全体での節電量が前記節電指令値に達するように前記複数の実需要家の少なくとも1つに節電を要請するDR(デマンドレスポンス)システムに接続されたコンピュータ上に、
過去に測定された消費電力量に基づく仮想消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する供給部と、
前記DRシステムからの前記節電の要請に基づいて、前記供給部により前記DRシステムに供給する前記仮想消費電力量を減じる仮想節電部と、
を備える仮想需要家を構築する、仮想需要家プログラム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の仮想需要家コンピュータに構築された前記仮想需要家に対して前記DRシステムが節電を要請するシミュレーションを実施する第1ステップと、
前記シミュレーションでの前記DRシステムの動作に基づいて、前記DRシステムの前記節電の要請の内容を決定するDRサーバをシステムチューニングする第2ステップと、
を備えるDRサーバの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想需要家コンピュータ、DR(デマンドレスポンス)シミュレーションシステム、仮想需要家プログラム、及び、DRサーバの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を消費する設備の稼働が集中する等の理由で、消費電力量が一時的に上昇して、電力供給が逼迫した状況になると、電力会社などの電気事業者からの電力供給量が不足する事態となる。このような事態を避けるため、特許文献1が開示するように、電力事業者からの消費電力量の削減の要請を受けたアグリゲータが需要家に節電を要請し、節電量を制御するDR(デマンドレスポンス)を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/186081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DRの一態様では、電気事業者が、アグリゲータに、消費電力の節電量(以下、ネガワット)を指令する節電指令値を供給する。ここで、1の需要家当たりで節電出来る節電量は、需要家ごとに異なりかつ決して多いものではない。従って、アグリゲータは、DRにおいて、節電を要請可能な複数の需要家を確保するとともに、節電を要請する複数の需要家の組み合わせ及び又は要請する節電量を節電指令値に応じて決定することで、節電指令値を実現したり、節電指令値の変動に追随したりする。
【0005】
以上のような事情のもと、DRを実行するためのDRシステムの構築では、節電の要請の内容(節電を要請する需要家の組み合わせ、要請する節電量など)を決定するためのアルゴリズムのシステムチューニングが必要となる。このシステムチューニングは、DRシステムの正式な運用開始前つまりDRの正式なサービス開始前に、実際の需要家に対してDRシステムを試験的に動作させることにより行われる。しかし、システムチューニングに必要な数の需要家をタイムリーに集めることが難しい。このため、従来は、十分なシステムチューニングができないまま、DRシステムの運用が開始されてしまうことが多い。また、システムチューニング以外の目的で、DRシステムの運用開始前またはその後の任意のタイミングにて、DRシステムの動作及び又は需要家(需要設備)の動作を確認したい場合もある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、DRシステムの動作及び又は需要家の動作を十分に確認できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る仮想需要家コンピュータは、複数の実需要家のそれぞれの実消費電力量と、節電量を指令する節電指令値とに基づいて、前記複数の実需要家全体での節電量が前記節電指令値に達するように前記複数の実需要家の少なくとも1つに節電を要請するDR(デマンドレスポンス)システムに接続されたコンピュータであって、前記コンピュータ上には、仮想需要家が構築され、前記仮想需要家は、過去に測定された消費電力量に基づく仮想消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する供給部と、前記DRシステムからの前記節電の要請に基づいて、前記供給部により前記DRシステムに供給する前記仮想消費電力量を減じる仮想節電部と、を備える。
【0008】
前記過去に測定された消費電力量は、前記仮想需要家の仮想化のもとの実需要家又はこの実需要家と同等の電力消費パターンを有する他の実需要家の過去の消費電力量である、ようにしてもよい。
【0009】
前記過去の消費電力量は、第1期間の消費電力量であり、前記実消費電力量は、前記第1期間よりも短い第2期間の消費電力量であり、前記供給部は、前記過去の消費電力量を分割し、分割した前記消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する、ようにしてもよい。
【0010】
前記仮想消費電力量は、1又は複数の電気設備ごとの複数種類の仮想消費電力量を含み、前記仮想節電部は、前記節電の要請に基づいて、前記複数種類の仮想消費電力量の少なくとも1つを減じる、ようにしてもよい。
【0011】
本発明に係るDRシミュレーションシステムは、上記仮想需要家コンピュータと、前記DRシステムと、を備える。
【0012】
本発明に係る仮想需要家プログラムは、複数の実需要家のそれぞれの実消費電力量と、節電量を指令する節電指令値とに基づいて、前記複数の実需要家全体での節電量が前記節電指令値に達するように前記複数の実需要家の少なくとも1つに節電を要請するDR(デマンドレスポンス)システムに接続されたコンピュータ上に、予め用意された過去の消費電力量を取得し、取得した消費電力量に基づく仮想消費電力量を前記実消費電力量として前記DRシステムに供給する供給部と、前記DRシステムからの前記節電の要請に基づいて、前記供給部により前記DRシステムに供給する前記仮想消費電力量を減じる仮想節電部と、を備える仮想需要家を構築する。
【0013】
本発明に係るDRサーバの形成方法は、仮想需要家コンピュータに構築された前記仮想需要家に対して前記DRシステムが節電を要請するシミュレーションを実施する第1ステップと、前記シミュレーションでの前記DRシステムの動作に基づいて、前記DRシステムの前記節電の要請の内容を決定するDRサーバをシステムチューニングする第2ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、DRシステムの動作及び又は需要家の動作を十分に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るDRシミュレーションシステムの構成図である。
図2図2は、DRシミュレーションシステムのDRシステムが実行するDRの実施態様を示す図である。
図3図3は、DRシミュレーションシステムにより行われるシミュレーションの実行態様を示す図である。
図4図4は、DRシミュレーションシステムにより行われるシミュレーションの実行態様を示す図である。
図5図5は、DRサーバの形成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るDR(デマンドレスポンス)シミュレーションシステムなどを、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係るDRシミュレーションシステム10は、DRシステム20と仮想需要家コンピュータ30とを備える。DRシミュレーションシステム10は、アグリゲータにより管理及び運用されている。DRシステム20は、電力会社などの電気事業者Yからの節電指令値に基づいて、実需要家A~Eに対してDRを実施する(図2、詳細は後述)。DRシステム20と仮想需要家コンピュータ30とは、実需要家A~Eに対してDRが実施される前、特に、DRシステム20の運用前に実需要家A~Eに対するDRをシミュレーションするように構成されている(図3。詳細は後述)。このシミュレーションでは、仮想需要家コンピュータ30に、実際の需要家である実需要家A~Eをそれぞれ仮想化した仮想需要家A~E(図3)が構築される。このシミュレーションは、当該DRのサービス開始前のDRシステム20をシステムチューニングするために行われる。このシステムチューニングにより、DRシステム20は、DRのサービス開始後に、DRを適切に実施することができる。
【0018】
電気事業者Yは、実際には、電力の需給を管理する管理サーバからなる。電気事業者Yは、インターネット等のネットワークNを介して節電指令値をDRシステム20に供給する。
【0019】
実需要家A~Eそれぞれは、実際には、ビルなどの建物に導入された電気事業者Yからの電力を需要(消費)する需要設備からなる。需要設備は、空調システム、照明システムなどの制御対象と、当該制御対象を直接又は所定のコントローラを介して間接的に制御して、その消費電力(節電等)を管理する管理装置と、を含む。管理装置としては、EMS(Energy Management System)、BAS(Building Automation System)などが挙げられる。
【0020】
実需要家A~Eのそれぞれは、1の電気設備又は複数の電気設備の集合ごとに、その動作を制御するための制御ポイント(制御ポイント1、2・・・)を有している。制御ポイントがオンした場合、その制御ポイントに接続された電気設備が動作する。つまり、電力が消費される。他方、制御ポイントがオフされた場合、その制御ポイントに接続された電気設備が動作しなくなる。つまり、電力の消費が抑制される。なお、制御ポイントがオフされた場合、電気設備が節電モードとなって、電力の消費が軽減されてもよい。制御ポイントのオン/オフは、実需要家A~Eの各管理装置により制御される。
【0021】
仮想需要家コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ31と、プロセッサのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)32と、プロセッサが実行するプログラム、及び、プロセッサが使用するデータなどを記憶している記憶装置33と、を備える。記憶装置33は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置からなる。記憶装置33に記憶されるプログラムには、仮想需要家コンピュータ30に仮想需要家A~Eのそれぞれを構築する仮想需要家プログラムが含まれる。この仮想需要家プログラムは、仮想需要家ごとに用意される。
【0022】
DRシステム20は、DRを実施するための構成として、収集サーバ21、DBサーバ22、及び、DRサーバ23を備える。これらも、仮想需要家コンピュータ30と同様にコンピュータから構成されている。各サーバ21~23は、仮想需要家コンピュータ30と同様に、CPUなどのプロセッサ、RAM、及び、プロセッサが実行するプログラムなどを記憶している記憶装置を備える。
【0023】
各サーバ21~23及び仮想需要家コンピュータ30は、インターネット、または、LAN(Local Area Network)などのネットワーク(不図示)を介して互いに通信可能に接続されている。各サーバ21~23及び仮想需要家コンピュータ30は、1つのコンピュータシステム内に仮想的に構築されたものであってもよい。この場合、仮想需要家コンピュータ30は、各サーバ21~23つまりDRシステム20と仮想的に接続されている。
【0024】
収集サーバ21、DBサーバ22、及び、DRサーバ23を備えるDRシステム20は、実需要家A~Eのそれぞれの実消費電力量を収集し、収集した実消費電力量と電気事業者Yからの節電量を指令する節電指令値とに基づいて、実需要家A~E全体での節電量が節電指令値に達するように実需要家A~Eの少なくとも1つに節電を要請するDRを実施する。
【0025】
ここで、DRシステム20によるDRの実施態様について図2を参照しながら説明する。図2に示すように収集サーバ21は、実需要家A~Eそれぞれから、その実消費電力量をリアルタイムで順次取得することで、実需要家A~Eそれぞれの実消費電力を収集する。実消費電力量は、制御ポイントごと(つまり、その制御ポイントに接続された1又は複数の電気設備ごと)に測定され、実需要家A~Eそれぞれから収集サーバ21に提供される。収集サーバ21は、1分間の実消費電力量を1分ごとにリアルタイムで順次取得する。収集サーバ21は、順次取得する実消費電力量を、その実消費電力量の取得時の日時及び時刻を示す時刻情報とともに順次DBサーバ22に供給する。
【0026】
DBサーバ22は、収集サーバ21から供給される実消費電力量を当該実消費電力とともに送信されてきた時刻情報に対応付けて、実需要家A~Eそれぞれの制御ポイントごとに、自身の記憶装置に順次記録する。これにより、DBサーバ22の記憶装置には、実需要家A~Eそれぞれの制御ポイントごとに、1分ごとの消費電力量の時系列データが記録される。この時系列データを、1分時系列データともいう。なお、DBサーバ22は、あとで説明する30分時系列データも記憶している。
【0027】
DRサーバ23は、DBサーバ22が記憶する実需要家A~Eそれぞれの各1分時系列データを監視する。また、DRサーバ23は、電気事業者Yからの節電指令値を受信する。DRサーバ23は、実需要家A~Eそれぞれの1分時系列データの現在の実消費量と節電指令値とに基づいて、各実需要家A~Eの節電量の合計が電気事業者Yからの節電指令値に達するように、節電を要請する実需要家の組み合わせ及び要請する節電量などの節電の要請の内容を決定し、決定した内容で実需要家A~Eに対して節電を要請するDRを実施する。節電量は、例えば、実消費量とベースラインとの比較により特定される。
【0028】
上記DRの節電要請により節電量が制御される。節電の要請は、実需要家A~Eのそれぞれの複数の制御ポイントの少なくとも1つをオン、オフする指令を含む。DRの内容つまり節電の要請の内容の決定のためのアルゴリズムは、後述のシミュレーションでシステムチューニングされている。これにより、適切なDRが実行される。
【0029】
次に、DRシミュレーションシステム10が実行するシミュレーションについて図3を参照して説明する。上述のように、シミュレーションは、DRのサービス開始前のDRシステム20のシステムチューニングを行うために実行される。このシミュレーションでは、図3に示すように、仮想需要家コンピュータ30がDRシステム20とともに動作する。
【0030】
シミュレーション時、仮想需要家コンピュータ30は、プロセッサ31が記憶装置33に記憶された仮想需要家プログラムを実行することで、仮想需要家A~Eそれぞれとして動作する。このようにして、仮想需要家コンピュータ30に仮想需要家A~Eが構築される。仮想需要家A~Eそれぞれには、実需要家A~Eの制御ポイントをそれぞれ仮想化した仮想制御ポイントが設定されている。
【0031】
DBサーバ22には、実需要家A~Eを含む多数の実需要家の制御ポイントごとの過去に測定された消費電力量の時系列データが格納されている。この過去の消費電力量は、任意の方法で収集される。例えば、実需要家A~Eなどの需要家の管理装置などは、消費電力を管理するための機能として、過去一定期間の30分ごとの消費電力量を制御ポイント(例えば、受電ポイント)ごとに測定して時刻情報とともに時系列データとして記憶する機能を有する。DBサーバ22に格納される時系列データには、この30分ごとの消費電力量の時系列データが使用される。この時系列データを30分時系列データともいう。
【0032】
シミュレーション実行時、仮想需要家コンピュータ30には、シミュレーションしたい季節などに応じた日時及び時刻がシミュレーションの実行を指示する作業者などにより入力される。作業者は、システムチューニングをするDRシステム20の生産者及び管理者を含む。入力される日時及び時刻は、不図示のカレンダ部から入力される現在の日時及び時刻であってもよい。シミュレーション実行時の時間経過については、実時間よりも早くしてもよい(例えば、1分間を1秒間とするなど)。
【0033】
仮想需要家A~Eそれぞれ、つまり仮想需要家プログラムを実行するプロセッサ31は、供給部31A、及び仮想節電部31Bとして動作する。
【0034】
仮想需要家A~Eそれぞれの供給部31Aは、DBサーバ22が記憶する30分時系列データから、上記で入力された日時及び時刻と消費電力量が近似していると思われる近似日時及び時刻の時間帯の各制御ポイントの消費電力量を取得する。なお、実需要家A~Eのいずれかについて、30分時系列データが無い場合には、DBサーバ22に格納されている、その需要家と同等の電力消費パターンを有する需要家の過去の消費電力量の時系列データがその需要家の30分時系列データとして使用されものとする。仮想需要家A~Eそれぞれの供給部は、30分時系列データから30分ごとに消費電力量を順次取得するものとする。
【0035】
近似日時及び時刻は、例えば、365日前つまり1年前の近似日時及び時刻である。なお、入力された日時及び時刻が平日で、近似日時及び時刻が土曜日又は休日の場合、両者の消費電力量は近似せずに異なる可能性があるので、近似日時及び時刻を、365日前ではなく、その直近の平日の日時及び時刻とする。同じ理由で、入力された日時及び時刻が土曜日(又は休日)で、近似日時及び時刻が平日の場合、近似日時及び時刻は、365日前ではなく、その直近の土曜日(又は休日)の日時及び時刻とする。
【0036】
仮想需要家A~Eそれぞれの供給部31Aは、上記で取得した30分ごとの消費電力量に基づく仮想消費電力量を収集サーバ21に供給する。ここで、上述のように、収集サーバ21は、1分ごとつまり1分間の消費電力量を受け付ける。DRサーバ23は、その1分間の消費電力量を監視する。そこで、この仕様に合わせるため、供給部31Aは、30分間の消費電力量を1分間の消費電力量に分割(ここでは、30等分)する。供給部31Aは、分割した消費電力量を仮想消費電力量として仮想需要家1分ごとに順次収集サーバ21に順次供給する。仮想消費電力量は、その30分間の消費電力量が測定された制御ポイントに対応する仮想制御ポイントでの消費電力として、仮想需要家A~Eそれぞれの仮想制御ポイントごとに収集サーバ21に供給される。これにより、収集サーバ21には、仮想需要家A~Eそれぞれの仮想制御ポイントでの仮想消費電力量が、当該収集サーバ21が本来受け付ける実消費電力量として順次供給されることになる。
【0037】
収集サーバ21は、順次供給される1分ごとの仮想消費電力量を、上記実際のDRの制御と同様に、その消費電力量の取得時の時刻情報とともに順次DBサーバ22に供給する。DBサーバ22は、収集サーバ21から供給される仮想消費電力量を当該消費電力とともに送信されてきた時刻情報に対応付けて、仮想需要家A~Eそれぞれの制御ポイントごとに、自身の記憶装置に順次記録する。これにより、DBサーバ22の記憶装置には、仮想需要家A~Eそれぞれの仮想制御ポイントごとに、DRを実際に実施したときと同様の各制御ポイントの1分時系列データが記録される。
【0038】
DRサーバ23は、DBサーバ22が記憶する仮想需要家A~Eそれぞれの制御ポイントごとの各1分時系列データを監視する。DRサーバ23には、作業者などにより、節電指令値が電気事業者Yからの節電指令値として入力される。DRサーバ23は、仮想需要家A~Eそれぞれの1分時系列データの現在の消費量と節電指令値とに基づいて、各仮想需要家A~Eの節電量(ベースラインに対する仮想消費電力量の削減量)の合計が電気事業者Yからの節電指令値(ここでは、作業者などからの節電指令値)に達するように、節電の要請の内容を決定する。DRサーバ23は、決定した内容で仮想需要家A~Eに対して節電を要請するDRを実施する。節電要請の形式は、実需要家A~Eに対する節電要請の形式と同じである。つまり、制御ポイント(ここでは、仮想制御ポイント)のオン又はオフの指令を含む。ここでのDRでは、システムチューニング完了前のアルゴリズムが使用される。
【0039】
仮想需要家A~Eそれぞれの仮想節電部31Bは、DRサーバ23からの節電要請に、制御ポイントのオフの指令が含まれる場合、その指令の対象の制御ポイントに対応する仮想制御ポイントをオフする。仮想節電部31Bは、仮想制御ポイントをオフした場合、図4に示すように、そのオフ以降に収集サーバ21に順次供給する仮想消費電力量について、当該仮想制御ポイントの消費電力量(30分間の消費電力量を分割して収集サーバ21に順次供給する1分間の消費電力量)を減じる。図4では、例えば、仮想需要家Aの仮想制御ポイント1がオフとなっているので、このオフ後、仮想制御ポイント1の仮想消費電力量は、0に減じられる。このようにして、このオフ前の仮想需要家Aの各仮想制御ポイントの消費電力の合計から仮想制御ポイント1の消費電力量が減じられる。これにより、仮想のネガワットが創出されたことになる。なお、仮想制御ポイントがオフとなったとき、対応する制御ポイントに接続された1又は複数の電気設備が節電モードに入る場合、当該仮想制御ポイントの仮想消費電力量をその節電モードで節電される消費電力量として予め設定された消費電力量分だけ減じる。
【0040】
仮想需要家A~Eそれぞれの仮想節電部31Bは、DRサーバ23からの節電要請に、仮想制御ポイントのオンの指令が含まれる場合、その指令の対象の仮想制御ポイントをオンする。仮想需要家A~Eそれぞれは、仮想制御ポイントをオンした場合、そのオンした仮想制御ポイントの仮想消費電力量(30分間の消費電力量を分割して収集サーバ21に順次供給する1分間の消費電力量)の供給を開始する。これにより、その仮想需要家からの従前の仮想消費電力に仮想制御ポイント分の仮想消費電力量が加算される。
【0041】
上記処理により、仮想需要家A~Eに対するDRのシミュレーションがDRシステム20上で実施される。作業者などは、このときの、DRシステム20(特にDRサーバ23)の動作を監視し、当該動作に基づいて、節電の要請の内容を決定するDRサーバ23をシステムチューニングする。これにより、所望のDRサーバ23が生成される。例えば、図5に示すように、作業者などは、仮想需要家A~Eに対するDRのシミュレーションを実行し(ステップS11)、その後、シミュレーション実行時のDRシステム20(特にDRサーバ23)の動作を監視し、監視結果に基づいてDRサーバ23をシステムチューニングする(ステップS12)。シミュレーション及びシステムチューニングは、所望の精度のDRサーバ23が完成するまで、つまり、節電の要請の内容の決定のためのアルゴリズムが所望のアルゴリズムとなるまで繰り返される(ステップS13)。これにより、DRサーバ23が形成される。節電の要請の内容は、節電指令値又は実需要家A~Eの節電量などに応じて選択される需要家の組み合わせなどを含む。システムチューニングでは、選択される需要家の組み合わせの更新、及び又は節電指令値の変化又は実需要家A~Eの実際の節電量などに応じて電力需要ポートフォリオを変更するためのアルゴリズムの更新などが含まれる。このシステムチューニングは、作業者により行われてもよし、機械学習で行われてもよい。例えば、節電指令値に応じた需要家の組み合わせが節電の要請の内容として予め定められる場合(Autoディスパッチ)、作業者は、上記シミュレーションの実行及び当該組み合わせの変更などを多数回繰り返して上記組み合わせとして最適なもの(電力需要ポートフォリオ)を構築する。このシステムチューニングの方法は、例えば、実需要家を集めて行われる従来のリハーサルでのシステムチューニングの方法と同じでよい。
【0042】
以上のように、この実施の形態では、仮想需要家A~Eの供給部31Aが、過去に測定された消費電力量(30分時系列データの消費電力)を取得し、取得した消費電力量に基づく仮想消費電力量を、実需要家A~Eの実消費電力量としてDRシステム20に供給する。さらに、仮想節電部31Bが、DRシステム20からの節電の要請に基づいて供給部31AによりDRシステム20に供給する仮想消費電力量を減じる。これにより、仮想需要家A~Eがあたかも実需要家A~Eのようにふるまうシミュレーションが行われ、DRシステム20(特に、DRサーバ23)の動作を事前に十分確認できる。なお、実際のシミュレーションでは、仮想需要家A~Eよりも多い数の仮想需要家が使用されてもよい。
【0043】
上記シミュレーションにより、多種多様な実需要家の接続試験を仮想需要家により事前に行うことができ、量的試験、及び、節電指令値が変化したときの追随をDRシステム20上で動作検証することができる。さらに、DRサービス開始後、実需要家接続にかかわる複雑な設定及び試験を事前に行うことが出来るため、DRサービス開始時にこれらの設定・試験作業を大幅に省略でき、サービス開始までの作業の短縮とシステムの品質維持を図ることができる。特に、DRに好適なDRサーバ23が得られる。また、実需要家と仮想需要家を組み合わせて試験を行うこともでき、これにより、事前のDRシステム20のリハーサル試験に間に合わない実需要家がいる場合でも、間に合わない需要家を仮想で構築し、全体の試験に組み込むことができる。
【0044】
また、上記実施の形態のように、仮想需要家A~Eは、現実に存在する需要家である実需要家A~Eを仮想化したものであり、供給部31Aが収集サーバ21に供給する仮想消費電力量は、仮想化のもとの実需要家又はこの実需要家と同等の電力消費パターンを有する他の実需要家の過去の消費電力量に基づくものとすることで、仮想消費電力量の精度を高くすることができる。なお、仮想消費電力のもととなる過去の消費電力は、前記の需要家以外の需要家の消費電力でもよい。この場合、過去の消費電力を一定の式に代入して仮想消費電力を求めてもよい。また、仮想消費電力は、過去に測定された消費電力量に基づく消費電力量であればよい。例えば、過去に測定された消費電力量が1分ごとの消費電力量であれば、仮想消費電力量は、過去に測定された消費電力量そのものであってもよい。
【0045】
さらに、仮想消費電力のもととなる過去の消費電力量は、第1期間(ここでは、30分間)の消費電力量であり、仮想消費電力量ないし実消費電力量は、第1期間よりも短い第2期間(ここでは、1分間)の消費電力量である。そして、供給部31Aは、過去の消費電力量を分割し、分割して得られる消費電力量を実消費電力仮想消費電力量として前記DRシステムに供給する。これにより、過去の消費電力量と仮想消費電力ないし実消費電力量との期間が異なる場合であっても、上記シミュレーションを実行できる。
【0046】
また、上記実施の形態では、実需要家の制御ポイントを仮想化した仮想制御ポイントを設けている。これにより、上記シミュレーションで使用される、需要家ごとの過去に測定された消費電力量(制御ポイントそれぞれの30分時系列データの消費電力量)ないし仮想需要家ごとの仮想消費電力量は、制御ポイント及び仮想制御ポイントごとつまり1又は複数の電気設備ごとの複数種類の消費電力量を含む。そして、仮想節電部31Bは、節電の要請(ここでは、節電指令値の制御ポイントのオフの指令)に基づいて、複数種類の消費電力量の少なくとも1つを0又は省エネモードに対応する節電量だけ減じる。そして、供給部21Aは、減算後の仮想消費電力量を新たな仮想消費電力量として、収集サーバ21に供給する。これにより、シミュレーション上の節電量の精度が向上する。
【0047】
上記シミュレーションの用途は、システムチューニングに限定されない。例えば、ある需要家がDRに参加する場合に、当該需要家のDR時の動作を事前に確認するため、上記シミュレーションが行われてもよい。また、DRシステム20と需要家との各動作を全体的に確認するため、シミュレーションが行われてもよい。これらにより、DRシステムの動作及び又は需要家の動作を十分に確認できる。
【0048】
仮想需要家コンピュータのハードウェア構成は任意である。各部31A及び31Bの少なくとも一部は、1以上の論理回路により構成されてもよい。論理回路としては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。1分時系列データ及び30分時系列データは、アグリゲータ以外の者が管理するサーバに格納されて使用されてもよい。仮想需要家プログラムは、記憶装置以外の他の非一時的な記憶媒体に格納されてもよい。
【0049】
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
10…DRシミュレーションシステム、20…DRシステム、21…収集サーバ、22…DBサーバ、23…DRサーバ、30…仮想需要家コンピュータ、31A…供給部、31B…仮想節電部。
図1
図2
図3
図4
図5