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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121073
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ用アウターロータ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20230823BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
F04C2/10 341F
F04C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024314
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】小宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】池浦 一弘
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB04
3H041CC15
3H041DD05
3H041DD33
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC14
3H044DD05
3H044DD23
(57)【要約】
【課題】寸法精度を向上させた内接歯車ポンプ用アウターロータを提供すること。
【解決手段】内接歯車ポンプ用アウターロータ(20)は、樹脂素材によって略筒状に構成され、内周面(21)には、中心に向かって膨出する膨出部(23)を有する。膨出部(23)の一方の側面である第1側面部(25)は、一般面部(26)と、この一般面部(26)に対して凹状に形成されている第1凹部(27)と、を有する。膨出部(23)の内部は、膨出部(23)の他方の側面である第2側面部(31)から第1凹部(27)に向かって空隙状に形成されている空隙部(32)とされている。第1凹部(27)は、この第1凹部(27)の外縁に沿って溝状に形成された溝部(27a)を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂素材によって略筒状に構成され、
内周面には、インナーロータの外歯が噛み合うことが可能な複数の谷部と、これらの谷部の間であって中心に向かって膨出する膨出部と、が形成され、
前記膨出部の一方の側面である第1側面部は、一般面部と、この一般面部に対して凹状に形成されている第1凹部と、を有し、
前記膨出部の内部は、前記膨出部の他方の側面である第2側面部から前記第1凹部に向かって空隙状に形成されている空隙部とされ、
前記第1凹部の外縁に沿って溝状に溝部が形成されていることを特徴とする内接歯車ポンプ用アウターロータ。
【請求項2】
前記空隙部の底部である空隙部底面部は、前記第1凹部に向かって凹む第2凹部を含む、請求項1に記載の内接歯車ポンプ用アウターロータ。
【請求項3】
前記第1側面部から見た状態を基準として、前記空隙部の底部である空隙部底面部は、この空隙部底面部の縁の少なくとも一部が、前記溝部に重なる位置に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の内接歯車ポンプ用アウターロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内接歯車ポンプに用いられインナーロータの外周に設けられるアウターロータに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで走行する多くの車両には、エンジン冷却用オイルを循環させるオイルポンプが搭載されている。オイルポンプの1つとして、インナーロータとこのインナーロータの外周に設けられているアウターロータとを回転させることによりオイルを循環させる内接歯車ポンプが知られている。内接歯車ポンプ用アウターロータに関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1には、内接歯車ポンプ用アウターロータの素材として樹脂を用いることにより、摺動性を向上させることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-247766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが研究を行なったところ、内接歯車ポンプ用アウターロータを樹脂成形した場合に、一定の割合で寸法誤差の大きなものが含まれることが分かった。寸法誤差の大きな内接歯車ポンプ用アウターロータは、製品としての所定の性能や品質を確保できない虞がある。
【0006】
本発明は、寸法精度を向上させた内接歯車ポンプ用アウターロータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、樹脂素材によって略筒状に構成され、
内周面には、インナーロータの外歯が噛み合うことが可能な複数の谷部と、これらの谷部の間であって中心に向かって膨出する膨出部と、が形成され、
前記膨出部の一方の側面である第1側面部は、一般面部と、この一般面部に対して凹状に形成されている第1凹部と、を有し、
前記膨出部の内部は、前記膨出部の他方の側面である第2側面部から前記第1凹部に向かって空隙状に形成されている空隙部とされ、
前記第1凹部の外縁に沿って溝状に溝部が形成されていることを特徴とする内接歯車ポンプ用アウターロータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、寸法精度を向上させた内接歯車ポンプ用アウターロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1による内接歯車ポンプ用アウターロータの平面図である。
図2図1の2部拡大図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4図1に示された内接歯車ポンプ用アウターロータの底面図である。
図5図5Aは、比較例による内接歯車ポンプ用アウターロータの寸法精度について説明する図、図5Bは、実施例による内接歯車ポンプ用アウターロータの寸法精度について説明する図である。
図6】実施例2による内接歯車ポンプ用アウターロータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0011】
<実施例1>
図1を参照する。内接歯車ポンプ用アウターロータ20(以下、「アウターロータ20」と略記する。)は、インナーロータ10の外周に設けられる略筒状の樹脂製の部品である。アウターロータ20の素材には、炭素繊維やガラス繊維が含まれる繊維強化プラスチックを用いることができる。
【0012】
筒状に形成されたアウターロータ20の内周面21には、インナーロータ10の外歯11が噛み合うことが可能な5つの谷部22と、これらの谷部22の間であって中心Cに向かって膨出する膨出部23と、が形成されている。換言すれば、アウターロータ20の内周面21は、それぞれ交互に形成された谷部22と膨出部23とによって構成されている。
【0013】
なお、外歯11の数を4つ、谷部22の数は5つとして説明を行ったが、外歯の数よりも谷部の数が1つ多ければ、外歯11及び谷部22の数は任意の数を選択することができる。
【0014】
中心Cは、アウターロータ20の軸心であり、インナーロータ10の中心は、アウターロータ20の中心Cに対してオフセットされている。例えば、エンジンの動力によってインナーロータ10が回転すると、アウターロータ20は、外歯11に押されるようにして回転する。
【0015】
図2を参照する。膨出部23の一方の側面(軸線方向を基準としてアウタロータ20の一方の端部に形成されている面)である第1側面部25は、アウターロータ20の一端面を構成している一般面部26と、この一般面部26に対して軸線方向に凹状に形成されている第1凹部27と、を含む。第1凹部27は、膨出部23の一端に対応する部位に形成されている。
【0016】
図3を併せて参照する。第1凹部27は、この第1凹部27の外縁に沿って溝状に形成された溝部27aを含む。溝部27aは、第1凹部27の外周の全周を囲い、第1凹部27よりも深い位置まで形成されている。第1凹部27の略中央には、ゲート跡27bが形成されている。ゲート跡27bは、樹脂素材を成形型に流し込んだ際に樹脂の射出口によって形成される。図1を参照する。ゲート跡27bは、複数形成されている第1凹部27のそれぞれに形成されている。
【0017】
図3及び図4を参照する。膨出部23の他方の側面(軸線方向を基準としてアウタロータ20の他方の端部に形成されている面)を第2側面部31という。膨出部23の内部は、第2側面部から第1凹部27に向かって空隙状に形成されている空隙部32とされている。空隙部32は、第2側面部31から見た場合に略楕円形状を呈する有底状の凹部である。
【0018】
図1及び図3を参照する。第1側面部25から透視した状態を基準として、空隙部32の底部である空隙部底面部32aは、溝部27aの内側に入る位置に形成されている(図3に示した、空隙部底面部32aの角から上方に延びる二点鎖線も参照。)。また、ゲート跡27bは、第1側面部25から透視した状態を基準として、空隙部32に重なる部位に形成されている。
【0019】
以上に説明したアウターロータ20の効果について説明する。
【0020】
図5A及び図5Bを参照する。図5Aには比較例によるアウターロータ120が示され、図5Bには実施例によるアウターロータ20が示されている。比較例によるアウターロータ120と、実施例によるアウターロータ20とは、溝部27aの有無において異なる。即ち、比較例によるアウターロータ120は、第1凹部127の外縁に溝部を有さず、実施例によるアウターロータ20は、第1凹部27の外縁に溝部27aを有している。
【0021】
本発明者らが比較例によるアウターロータ120及び実施例によるアウターロータ20をそれぞれ複数個樹脂成形し、寸法を計測したところ、実施例によるアウターロータ20の方が製品ごとにおける寸法差が小さいことが分かった。これにより、第1凹部27の外縁に沿って溝部27aを形成することにより、寸法精度を向上させることができることを知見した。以下、その理由を説明する。
【0022】
図5Aを参照する。アウターロータ120は、第1凹部127のみが形成されており、第1凹部127の外縁には溝部27a(図5B参照)が形成されていない。このようなアウターロータ120において、最も肉厚の厚い部位の厚みは、D1であった。
【0023】
図5Bを参照する。アウターロータ20の第1凹部27の外縁には、溝部27aが形成されている。このようなアウターロータ20において、最も肉厚の厚い部位の厚みは、D2であった。
【0024】
図5Aを併せて参照する。溝部27aが形成されていないアウターロータ120のD1と、第1凹部27の外縁に沿って溝部27aが形成されているアウターロータ20のD2とを比較すると、D1>D2であった。つまり、溝部27aが形成されているアウターロータ20の方が、最も肉厚の厚い部位の肉厚がより薄かった。
【0025】
アウターロータ20は、溝部27aを有することにより、全体の肉厚を均一にすることが可能となった。また、溝部27aが形成されていることにより、表面積を大きくすることができた。これらにより、樹脂成形時に全体をより均一に冷却することができ、いわゆるヒケの発生を抑制することができるようになったものと考えられる。ヒケの発生を抑制することにより、寸法精度が向上した。つまり、寸法精度を向上させたアウターロータ20を提供することができる。
【0026】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
【0027】
図6には、実施例2によるアウターロータ20Aの断面構成が示されている。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0028】
空隙部32Aの底部である空隙部底面部32Aaは、第1凹部27に向かって凹む第2凹部32Abを含む。また、空隙部底面部32Aaは、この空隙部底面部32Aaの縁の少なくとも一部が、溝部27aに重なる位置に形成されている(空隙部底面部32Aaの角から上方に延びる二点鎖線を参照。)。
【0029】
このようなアウターロータ20Aにおいても、本発明所定の効果を奏する。また、実施例2によるアウターロータ20Aは、さらに以下の効果も奏する。
【0030】
空隙部底面部32Aaは、第1凹部27に向かって凹む第2凹部32Abを含む。より全体の肉厚を均一にすることができると共に、表面積を大きくすることができる。よりアウターロータ20Aの全体を均一に冷却することができ、よりヒケの発生を抑制することができ、寸法精度を向上させることができる。
【0031】
また、第1側面部25から見た状態を基準として、空隙部底面部32Aaは、この空隙部底面部32Aaの縁の少なくとも一部が、溝部27aに重なる位置に形成されている。より空隙部底面部32Aaの縁から溝部27aまでの長さを短くすることができる。より全体の肉厚を均一にすることができ、アウターロータ20Aの全体を均一に冷却することができる。よりヒケの発生を抑制することができ、寸法精度を向上させることができる。
【0032】
尚、本発明による内接歯車ポンプ用アウターロータは、車両のオイルポンプに用いる例によって説明を行ったが、車両以外に用いられるオイルポンプや、オイルポンプ以外の内接歯車ポンプにも適用可能である。
【0033】
また、一例として、素材に繊維強化プラスチックを用いた例によって説明を行なったが、繊維を含まない樹脂を用いることも可能である。また、繊維強化プラスチックを用いる場合には、ガラス繊維のみならず、カーボン繊維等の異なる繊維を用いることも可能である。
【0034】
また、各実施例は適宜組み合わせることも可能である。例えば、第2凹部を有しない空隙部底面部の縁が、溝部に重なっていても良い。また、第2凹部を有する空隙部底面部が、溝部の内側に入る位置に形成されていても良い。
【0035】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の内接歯車ポンプ用アウターロータは、車両のオイルポンプに用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0037】
10…インナーロータ
11…外歯
20、20A…内接歯車ポンプ用アウターロータ
21…内周面
22…谷部
23…膨出部
25…第1側面部
26…一般面部
27…第1凹部、27a…溝部
31…第2側面部
32、32A…空隙部、32a、32Aa…空隙部底面部、32Ab…第2凹部
C…中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6