(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121089
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】緊急避難シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230823BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20230823BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230823BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20230823BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
E04H9/14 B
F24F7/06 B
E04H9/02 301
E04H1/12 A
G08B21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024335
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】521385541
【氏名又は名称】田中 実
(72)【発明者】
【氏名】田中 実
【テーマコード(参考)】
2E139
3L058
5C086
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA15
2E139AB16
2E139AB18
2E139AB25
2E139AC19
3L058BE08
5C086AA01
5C086AA02
5C086BA01
5C086CA30
5C086DA40
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】屋内で火災などの災害が発生したときに、屋内の滞在者を一酸化炭素などの有害ガスから守り安全に避難させる。
【解決手段】屋内に設置可能な緊急避難シェルターであって、前記屋内の滞在者を収容可能な室内空間を有する本体部と、前記本体部の室内と前記本体部の外部との間に開閉可能に取り付けられ、前記室内を密閉状態で閉塞する扉部と、前記本体部の室内と屋外とを連通し前記室内へ前記屋外の新鮮な空気を供給する吸気通路と、前記室内の空気を室外へと排出する排気通路と、を有する吸排気部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置可能な緊急避難シェルターであって、
前記屋内の滞在者を収容可能な室内空間を有する本体部と、
前記本体部の室内と前記本体部の外部との間に開閉可能に取り付けられ、前記室内を密閉状態で閉塞する扉部と、
前記本体部の室内と屋外とを連通し前記室内へ前記屋外の新鮮な空気を供給する吸気通路と、前記室内の空気を室外へと排出する排気通路と、を有する吸排気部と、
を備えることを特徴とする緊急避難シェルター。
【請求項2】
複数階層からなる建物の2階以上の屋内に設置可能な避難シェルターであって、
前記屋内の滞在者を収容可能な室内空間を有する本体部と、
前記本体部の室内と前記本体部の外部との間に開閉可能に取り付けられ、前記室内を密閉状態で閉塞する扉部と、
前記本体部の室内と前記建物の地上階における屋外とを連通し前記室内へ前記屋外の新鮮な空気を供給する吸気通路と、前記室内の空気を室外へと排出する排気通路と、を有する吸引する吸排気部と、
を備えることを特徴とする緊急避難シェルター。
【請求項3】
前記室内の一酸化炭素などの有害ガスを検知するガス検知部をさらに備え、
前記ガス検知部による検知に基づいて、前記吸排気部の動作を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急避難シェルター。
【請求項4】
前記屋内の滞在者に対して警報をおこなう警報部をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス検知部による検知に基づいて、前記警報部の動作を制御することを特徴とする請求項3に記載の緊急避難シェルター。
【請求項5】
前記本体部に設置され、外部との通信をおこなう通信部をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス検知部による検知に基づいて、前記通信部が外部の防災関連機関との通信をおこなうように、前記通信部の動作を制御する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の緊急避難シェルター。
【請求項6】
前記扉部の開閉状態を検知する扉検知部と、前記扉部が正常位置で閉じられていないことを通知する通知部とをさらに備え、
前記制御部は、前記扉検知部による検知に基づいて前記通知部の動作を制御する
ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の緊急避難シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内における火災などの災害発生時に緊急避難可能なシェルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は地震などの天災が起こることを想定して、新たに建設される建物では防災上の観点から防火対策や避難経路の確保などさまざまな防災機能が備えられている。その一方で、建築から数十年以上経過しているビルなどの建物においては、十分な防火対策や避難経路の確保などがなされていないケースが多く存在する。このような既存の建物に対して新たな防災機能を持たせることは技術的に難しく、コストも掛かるため導入が進まない現状がある。
【0003】
このような既存の建物に対して防災機能をもたせるものとして、例えば、特許文献1に記載される技術が知られている。このような構成によれば、既存の建物の設置可能な耐火木造防災シェルターであり、耐火機能を持った構造によってシェルター内に避難した避難者を火災から守ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
ところで、地震などによって屋内で火災が発生した場合に、火災によって発生する煙(一酸化炭素などの有害ガス)が原因となり命を落とす事故も多くみられる。このような有害ガスが発生した場合には、速やかに避難経路に沿って屋外に避難する必要があるが、状況によっては避難経路の使用が困難となる場合もある。
【0006】
特許文献1には、シェルター内に吸排気口を設け換気を行う構成が記載されているが、例えば、複層階からなる建物においてシェルターが設けられたフロアよりも下層階で火災が発生した場合には吸排気口付近が火災による煙で覆われるなどして必ずしも十分な換気が行えるとは限らないという課題があった。
【0007】
本発明は、屋内で火災などの災害が発生したときに、屋内の滞在者を一酸化炭素などの有害ガスから守り安全に避難させることができる緊急避難シェルターを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様に係る緊急避難シェルターは、前記屋内の滞在者を収容可能な室内空間を有する本体部と、前記本体部の室内と前記本体部の外部との間に開閉可能に取り付けられ、前記室内を密閉状態で閉じる扉部と、前記本体部の室内と屋外とを連通し前記室内へ前記屋外の新鮮な空気を供給する吸気通路と、前記室内の空気を室外へと排出する排気通路と、を有する吸排気部とを有する。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る緊急避難シェルターは、複数階層からなる建物の2階以上の屋内に設置可能な避難シェルターであって、前記屋内の滞在者を収容可能な室内空間を有する本体部と、前記本体部の室内と前記本体部の外部との間に開閉可能に取り付けられ、前記室内を密閉状態で閉じる扉部と、前記本体部の室内と前記建物の地上階における屋外とを連通し前記室内へ前記屋外の新鮮な空気を供給する吸気通路と、前記室内の空気を室外へと排出する排気通路と、を有する吸引する吸排気部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、屋内の滞在者は密閉状態に閉塞したシェルター内に避難できるとともに、シェルター内の空気を室外へと排出し屋外から新鮮な空気を吸入することができるので、シェルター内の滞在者を一酸化炭素などの有害ガスから守り安全に避難させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る緊急避難シェルターを適用した構成を示す概略図である。
【
図2】本実施の形態に係る緊急避難シェルターの外観構成を示す正面図である。
【
図3】
図2の緊急避難シェルターの扉部を開いた状態を示す正面図である。
【
図4】本実施の形態に係る緊急避難シェルターの外観構成を示す側面図である。
【
図5】本実施の形態に係る緊急避難シェルターを構成する吸排気部の構成を示す概略図である。
【
図6】本実施の形態に係る緊急避難シェルターの制御システムを表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る緊急避難シェルターについて詳細に説明する。
【0013】
(緊急避難シェルターの構成)
図1は、本実施の形態に係る緊急避難シェルターを適用した構成を示す概略図である。本実施の形態に係る緊急避難シェルター1は、複層階からなる建物Bの2階以上のフロアに設置されている。緊急避難シェルター1には、後述する吸排気部30が取り付けられており、この吸排気部30が建物Bの外側(屋外)に飛び出し、建物Bの壁面に沿って地上階の位置まで延設されている。
【0014】
緊急避難シェルター1は、その設置フロアにおいては、シェルターとしての機能を有するとともに、例えばテレワークブースとして、仕事などの作業やインターネット通信を介したテレビ会議を行うための執務機能を有している。
【0015】
緊急避難シェルター1は、本体部10と、扉部20と、吸排気部30と、ガス検知部40と、警報部50と、通信部60と、扉検知部70と、通知部80と、制御部90とを有する。
【0016】
図1に示すように、本体部10は、緊急避難シェルター1の骨格をなし、縦長の直方体形状を有する。本体部10の上面部11と側面部12、底面部13と側面部12とをつなぐ角部14は曲面形状に形成されている。本体部10の前面部15には、上面部11,側面部12および底面部13から形成される外郭形状に沿った開口15aが形成されている。この開口15aには扉部20が取り付けられる。本体部10の後面部16は本体部10の室内10aと外側空間を隔てる壁として形成されている。本体部10の上記構成は一例であり、様々な形状のものを適用することができる。
【0017】
本体部10の室内10aは、屋内の滞在者が緊急避難するためのスペースであり、その広さは想定される避難人数(収容可能な人数)に応じて適宜決定される。
【0018】
また本体部10の室内10aは、平常時においては、テレワークブースなどの執務作業などを行うスペースとして使用される。このため、室内10aには、テレワークブースなどの執務作業に活用される家具部材100が設置されている。本実施の形態における構成では1人分の執務スペースを想定しており、家具部材100は、1つの椅子110と1つの机120により構成される。
【0019】
図2に示すように、椅子110は、本体部10の底面部13の内側に取り付けられている。椅子110は、座部111と底面部13から立設する支柱112とを有する。座部111は、支柱112の軸線を中心に回転するように支柱112に取り付けられている。また、支柱112は高さ調節機能を有しており、座る人の大きさに応じて座部111の高さ方向の位置が調節される。
【0020】
机120は、本体部10の側面部12の内側から室内10aに飛び出すように取り付けられている。机120は、人が椅子110に座った状態で適切に作業を行える高さになるように取り付け位置が決められている。
【0021】
上記家具部材100の構成は一例であり、上記構成に限られるものではない。例えば、家具部材100を構成する椅子110や机120は、上記構成に陽に本体部10に取り付けられた状態で設置されるものに限られず、一般に使用される椅子や机を室内10aに持ち込んで設置される構成であってもよい。さらに、室内10aの広さに応じて、テーブルやソファ、防災用具を収納できる棚などの家具部材が設置される構成であってもよい。また、椅子110や机120などの家具部材100が本体部10に取り付けられる構成の場合でも、緊急避難シェルターとして使用する場合には、少しでも多くの人数を収容できることが好ましいため、家具部材100を適宜取り外すことができる構成であってもよい。
【0022】
図1および
図2に示すように、扉部20は、本体部10の前面部15aに形成された開口15aに取り付けられている。扉部20は、開口15aの形状(上面部11、側面部12および底面部13の内面で形成される輪郭形状)に合わせた形状を有する。扉部20は、一方の側面部12に片開きで開閉するように取り付けられている。
【0023】
扉部20は、枠部21とガラス部22と操作部23とを有する。枠部21は、扉部20の骨格として外周を形成する。ガラス部22は、枠部21の内側に扉部20のほぼ全面にわたって取り付けられており、外側から内部の様子が確認できるように視認性の高い強化ガラスなどで構成されている。操作部23は、枠部21の側方位置から内側に突出して形成されている。操作部23は、利用者が扉部20を開閉するためのものであり、利用者が取手部23を操作することにより扉部20を開閉する。操作部23により扉部20の開閉は、機械式、電子式などさまざまな機構のものを採用することができる。
【0024】
扉部20の上記構成は一例であり、これに限られない。上記構成ではガラス部22が枠部21を除く扉部20のほぼ全面にわたって取り付けられている構成を示したが、扉部20の一部のみを視認できるように構成されていてもよい。また、ガラス部22は扉部20のほぼ全面にわたって取り付けられる場合でも、例えば、下半分が視認性の低い曇りガラス、上半分が視認性の高いガラスからなるように構成されていてもよい。また、ガラス部22は、光の透過量を適宜調節できる機能をするように構成されていてもよい。また、ガラス部22は扉部20の必須の構成ではなく、視認性を必要としない扉部20を採用する場合には備えられていなくてもよい。
【0025】
扉部20は、閉じられた状態では、後述する吸排気部30を除いて、室内10aを外部から遮断した密閉状態で閉塞する。このような機能を実現するために、扉部20は、閉じられた状態において本体部10(上面部11、側面部12および底面部13の内面)と接触する部分に、室内10aへのガスの流入を抑えるためのシールド機能を備えている。シールド機能は、パッキンなど通常に適用されるさまざまな手法を適用することができる。
【0026】
図1乃至
図5に概略図として示すように、吸排気部30は、本体部10の上面部11に取り付けられ、本体部10の室内10aと屋外(建物の外側)とを連通し、室内10aの空気を屋外へと排出するとともに室内10aへ屋外の新鮮な空気を吸引する。
【0027】
図4に示すように、吸排気部30は、吸気通路31と排気通路32とカバー33とを有する。吸気通路31は、本体部10の室内10aと建物Bの地上階における屋外とを連通し室内10aへ前記屋外の新鮮な空気を供給するものであり、一端が本体部10の上面部11に形成される排出口31aに接続され、他端が建物の地上階における屋外Bに配置される。吸気通路31には、屋外の空気を室内10aに搬送するための吸気ファン34が設けられており(
図6参照)、吸気ファン34の動作によって屋外からの新鮮な空気が吸気通路31を通って室内10aに供給される。なお、この吸排気部30の構成は一例であり、吸気通路と排気通路を有し、各通路において空気を搬送できるものであればいかなる構成も適用することができる。
【0028】
排気通路32は、室内10aの空気を室外へと排出するものであり、一端が本体部10の上面部11に形成される吸引口32aに接続され、他端が建物Bの地上階における屋外に配置される。排気通路32には、室内10aの空気を屋外に搬送するための排気ファン35が設けられており(
図6参照)、排気ファン35の動作によって室内10aの空気が排気通路32を通って屋外へと排出される。本実施の形態では、排気通路32の他端が建物Bの地上階における屋外に配置される構成を示したがこれに限定されず、建物Bの屋内における本体部10の室外に配置される構成にも適用することができる。この構成の場合には、室内10aの空気は建物Bの屋内における本体部10の室外に排出される。
【0029】
カバー33は、吸気通路31および排気通路32の外側に各通路の全長にわたって設けられ、吸気通路31および排気通路32を保護する。
【0030】
吸排気部30を構成する吸気通路31の他端(吸引口)が建物の地上階における屋外に配置されているので、緊急避難シェルター1が設置されるフロアよりも下層階で火災が発生し設置するフロアまで煙が上がってくる状況であっても、煙の影響のない新鮮な空気を室内10aに確実に供給することができる。吸排気部30の他端(吸引口)は建物に近接する位置に配置されてもよいが、煙などの火災の影響をより小さくするために建物から一定距離離れた位置に配置されていてもよい。
【0031】
また吸排気部30を構成する排気通路32の他端(排出口)については、必ずしも建物の地上階における屋外に配置されている必要はないが、煙が排気通路32を通って逆流してくるおそれもあるため建物の地上階における屋外に配置されていることが好ましい。
【0032】
吸排気部30の動作は、後述する制御部90によって制御される。具体的には、
図6において緊急避難シェルターの制御システム構成図として示すように、吸排気部30を構成する吸気ファン34および排気ファン35が制御部90と有線若しくは無線で接続され、制御部90によってその動作が制御される。なお
図6の構成図における吸排気部40や警報部50などの配置や構成は、説明の便宜上他の図面における構成から変更している。
【0033】
図2および
図4に示すように、ガス検知部40は、本体部10の側面部12の上方に取り付けられ、緊急避難シェルター1が設置されるフロアの屋内の一酸化炭素などの有害ガスを検知する。ガス検知部40としては、一般に使用されているガスセンサーを適用することができる。
図6に示すように、ガス検知部40は、制御部90と有線若しくは無線で接続され、ガス検知部40による有害ガスの検知情報が制御部90に送信される。
【0034】
なおガス検知部40は、本体部10の側面部12に取り付けられる構成に限られない。ガス検知部40は、本体部10から離れた位置、例えば、緊急避難シェルター1が設置されるフロアの屋内の複数個所に設置されている構成であってもよい。
【0035】
図2乃至
図4に示すように、警報部50は、本体部10の上面部11に取り付けられ、ガス検知部40による検知に基づいて警報をおこなう。本実施の形態において、警報部50は回転灯から構成され、ライトを点灯若しくは点滅させることによって視覚的に警報を通知するとともに、スピーカーなどの発信手段を用いて警報音や音声によって、例えば「火災を検知しました。避難してください。」など、聴覚的に警報を通知する。
図6に示すように、警報部50は、制御部90と有線若しくは無線で接続され、制御部90によってその動作が制御される。
【0036】
図6に示すように、通信部60は、本体部10の室内10aに設置され、外部との通信を行う機能を有する。本実施の形態において、通信部60は、通信ネットワークWを介して、外部の防災管理センターCと接続されている。また通信部60は、制御部90と有線若しくは無線で接続され、制御部90によってその動作が制御される。例えば、緊急避難シェルター1がテレワークブースとして使用されている平常時において、通信部60は一般のインターネットサービスやオンラインミーティングの利用のために使用されるが、火災発生などの緊急時には、制御部90による動作制御によって防災管理センターCなどの外部の防災関連機関との通信に使用される。通信部60は、室内10aに設置される構成に限らず、室外すなわち本体部10の外面や本体部10が離れた位置に設置されている構成を提供することもできる。
【0037】
図6に示すように、扉検知部70は、扉部20と有線若しくは無線で接続され、扉部20の開閉状態を検知する。緊急時には、扉部20が閉じられ、室内10aを密閉状態にして一酸化炭素などの有害ガスが室内10aに侵入しないようにする必要がある。そこで、扉検知部70は、扉部20の開閉状態を検知し、扉部20が適切に閉じられていないには、利用者(避難者)に対してその旨を通知して扉部20を閉じるように促す役割を担う。また、扉検知部70は、制御部90と有線若しくは無線で接続され、扉検知部70による検知情報が制御部90に送信される。
【0038】
図6に示すように、通知部80は、制御部90と有線若しくは無線で接続され、制御部90による動作制御によって、扉部20が正常位置で閉じられていないことを通知する。通知部80による通知は、音声や表示などによって行われる。
【0039】
図6に示すように、制御部90は、緊急避難シェルター1の構成部、すなわち吸排気制御部40、ガス検知部40、警報部50、通信部60、扉検知部70および通知部80と有線若しくは無線で接続されており、各構成部からの情報受信や、受信した情報に基づく各構成部の動作制御をおこなう。以下に、制御部90による処理の一例を説明する。
【0040】
緊急避難シェルター1が設置されるフロアの屋内において、ガス検知部40によって火災発生により一酸化炭素などの有害ガスが検知された場合には、制御部90は警報部50の動作を制御する。具体的に、制御部90は、ガス検知部50から有害ガスの検知情報を受信すると、警報部50に対して警報の実行を指令する。
【0041】
またこの場合において、制御部90は吸排気部30の動作も制御する。具体的に、制御部90は、ガス検知部50から有害ガスの検知情報を受信すると、吸排気部30(吸気ファン34および排気ファン35)に対して、空気の搬送(吸気通路31においては屋外から室内10aへの新鮮な空気の供給、排気通路32においては室内10aから屋外への空気の排出)を行う動作の実行を指令する。
【0042】
またこの場合において、制御部90は通信部60の動作も制御する。具体的に、制御部90は、ガス検知部50から有害ガスの検知情報を受信すると、通信部60に対して、防災管理センターCなどの外部の防災関連機関との通信の実行を指令する。例えば、通信部60によって、建物を管理する防災管理センターCへの通信が実行されると、防災管理センターCの担当者は、建物の何階フロアで火災などが発生したのかを確認することができ、通信部60を介して避難者と連絡を取り合うことができる。また、防災管理センターCの担当者は、確認した状況を踏まえて適宜消防や警察などの関連機関に対して連絡を取ることができる。
【0043】
またこの場合において、制御部90は、扉検知部70からの検知に基づいて通知部80の動作を制御する。具体的に、制御部90は、扉検知部70から扉部20が正常位置(室内10aを密閉する位置)で閉じられていない状態(非閉塞状態)を示す情報を受信した場合には、通知部80に対して通知発信動作の指令を実行する。なお、平常時には、扉部20が非閉塞状態でも緊急性が低いため、制御部90は通知部80に対する通知動作指令を実行しない、或いは、5分後など一定時間経過後に通知動作指令を実行する。
【0044】
制御部90は、上記処理に限られず、緊急避難シェルター1の動作に関するあらゆる処理や指令を実行することができる。例えば、緊急避難シェルター1を構成する吸排気部30と、制御部40と、ガス検知部40と、警報部50と、通信部60と、扉検知部70などの構成部が正常に動作するか否かを確認するために、定期的に動作確認の処理を実行することもできる。
【0045】
本実施の形態に係る構成によれば、避難場所である緊急避難シェルター1の室内10aを外部から遮断した密閉状態にすることができるので、屋内で火災などの災害が発生したときに、屋内の滞在者(避難者)を一酸化炭素などの有害ガスから守り安全に避難させることができる。
【0046】
また、緊急避難シェルター1には、本体部10の室内10aと屋外とを連通し、室内10aの空気を屋外へと排出するとともに室内10aへ屋外の新鮮な空気を吸引する吸排気部30が設けられているので、火災の発生場所や状況に関わらず、室内10aに新鮮な空気を供給できるので避難者の安全を確保することができる。
【0047】
また、緊急避難シェルター1には、外部との通信をおこなう通信部60が設けられ、火災発生などの緊急時には制御部90による動作制御によって、通信部が防災管理センターCなどの外部の防災関連機関との通信をおこなうので、防災管理センターCの担当者は、通信部60を介した避難者からの情報に基づいて階状況などを正確に把握し、避難者の安全を確保するための適切な対応をとることができる。
【0048】
本発明に係る緊急避難シェルターは、上記実施の形態に示した構成に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においていかなる構成も採用することができる。
【0049】
上記実施の形態においては、緊急避難シェルターとして一人用の執務スペースが確保できる広さのものを例にして説明したが、10名程度が収容できる室内を有するものなど、想定される収容人数に応じてさまざまな広さや形状の構成のものを適用することができる。
【0050】
また、緊急避難シェルターは、上記実施の形態において説明した構成以外のものを備えていてもよい。例えば、緊急避難シェルターには、室内の酸素濃度を計測する計測手段や、避難者が使用できる酸素ボンベなどが設置されていてもよい。
【0051】
また例えば、本体部の室内には外部から室内の状況を確認できる監視用のカメラが設置されていてもよい。このカメラは、例えば、平常時のテレワークブースとして使用される場合においては室内での不正行為などをチェックする機能として使用され、火災発生などの緊急時には制御部による動作制御によって防災管理センターなどの外部の防災関連機関と接続され、外部から室内の状況を確認できる機能として使用される構成とすることができる。
【0052】
また例えば、緊急避難シェルターの室内には室内の温度や湿度を調節できるエアーコンディショナーが設置されていてもよい。この装置は、例えば、室内の温度や湿度の調節ができるとともに、火災発生などの緊急時には外部からの新鮮な空気を供給できる構成とすることができる。
【0053】
また例えば、緊急避難シェルターには充電可能な外部バッテリー装置が設置されていてもよい。このバッテリー装置は、火災などの災害によって緊急避難シェルター自体が外部との通電が絶たれた状態となり吸排気部等が動作しない状態になっても、緊急避難シェルターに対して給電することで緊急避難シェルターの各構成を正常に作動させることができる。
【0054】
また例えば、緊急避難シェルターの室内には、スピーカーとマイクからなる外部との音声の送受信ができる送受信装置が設置されていてもよい。この装置は、例えば、平常時のテレワークブースとして使用される場合においては、ブース利用者に対して「ご利用時間はあと10分です」と通知する機能として使用され、火災発生などの緊急時には「火災発生」などの緊急通知を行うとともに防災管理センターなどの外部の防災関連機関と連絡をとることができる通話機能として使用される構成とすることができる。
【0055】
また、上記実施の形態では、ガス検知部を設け、制御部はガス検知部からの検知に基づいて緊急避難シェルターの各構成部の動作を制御する構成を説明したがこれに限られない。例えば、ガス検知部は屋内に別途設置される構成であってもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、警報部を設け、制御部はガス検知部からのガス検知に基づいて警報部の動作を制御する構成を説明したがこれに限られない。例えば、警報部は屋内に別途設置される構成であってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、扉検知部と通知部を設け、制御部は扉検知部からの検知に基づいて通知部の動作を制御する構成を説明したが、扉検知および通知部は必須の構成ではなく、これらを備えない構成であってもよい。
【0058】
また上記実施の形態では、通信部を設け、制御部は通信部の動作を制御する構成を説明したが通知部は必須の構成ではなく、例えば、緊急避難シェルターはWi-Fiなどの通信環境だけを備え、避難者が保有するスマートフォンなどの通信端末を使って外部と通信をする構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
屋内の滞在者は密閉状態に閉塞したシェルター内に避難できるとともに、シェルター内の空気を排出し屋外から新鮮な空気を吸入することができるので、シェルター内の滞在者を一酸化炭素などの有害ガスから守り安全に避難させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 緊急避難シェルター
10 本体部
20 扉部
30 吸排気部
40 ガス検知部
50 警報部
60 通信部
70 扉検知部
80 通知部
90 制御部