(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121092
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23B 5/24 20060101AFI20230823BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B23B5/24
B23B29/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024338
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和弘
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045BA15
3C045CA16
3C045DA18
3C046PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の加工具を用いて加工を行う場合、加工具によって加工抵抗がばらつくのを抑制することができる、加工装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る加工装置は、第1加工部と、第2加工部とを備え、前記第1加工部は、第1加工具601に連結される第1スライダ61と、複数の第1板バネ671と、少なくとも1つの第1磁石621と、少なくとも1つの第1コイルとを備え、前記第1コイルと前記第1磁石621との相互作用により、前記第1スライダ61に連結された前記第1加工具601をワークの外周面に移動させるように構成され、前記第2加工部は、第2加工具701に連結される第2スライダ71と、複数の第2板バネ771と、少なくとも1つの第2磁石と、少なくとも1つの第2コイルとを備え、前記第2コイルと前記第2磁石との相互作用により、前記第2加工具701を移動させるように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワークを、当該ワークの軸線方向である第1方向周りに回転自在に支持するワーク支持ユニットと、
前記第1方向に移動可能に構成され、前記ワークを加工する加工ユニットと、
を備え、
前記加工ユニットは、
第1加工具を有する第1加工部と、
前記第1方向に沿って前記第1加工部と異なる位置に配置され、第2加工具を有する第2加工部と、
を備え、
前記第1加工部は、
前記第1加工具に連結される第1スライダと、
前記第1スライダを支持する複数の第1板バネと、
前記第1スライダに固定された少なくとも1つの第1磁石と、
前記第1磁石と近接する少なくとも1つの第1コイルと、
を備え、
前記第1コイルと前記第1磁石との相互作用により、前記第1スライダに連結された前記第1加工具を前記ワークの外周面に近接離間する第2方向に移動させるように構成され、
前記第2加工部は、
前記第2加工具に連結される第2スライダと、
前記第2スライダを支持する複数の第2板バネと、
前記第2スライダに固定された少なくとも1つの第2磁石と、
前記第2磁石と近接する少なくとも1つの第2コイルと、
を備え、
前記第2コイルと前記第2磁石との相互作用により、前記第2スライダに連結された前記第2加工具を前記第2方向に移動させるように構成されている、加工装置。
【請求項2】
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向を規定し、
前記第1加工部が、前記第2加工部の下方に配置され、
前記第1加工部においては、
前記第1加工具を挟んで、前記第3方向の一方側に前記第1磁石及び前記第1コイルが配置され、前記第3方向の他方側に少なくとも1つの前記第1板バネが配置されており、
前記第2加工部においては、
前記第2加工具を挟んで、前記第3方向の前記他方側に前記第2磁石及び前記第2コイルが配置され、前記第3方向の前記一方側に少なくとも1つの前記第2板バネが配置されている、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向を規定し、
前記第1加工部においては、
前記第1加工具を挟んで、前記第3方向の一方側に少なくとも1つの前記第1バネが配置され、前記第3方向の他方側に少なくとも1つの前記第1板バネが配置されており、
前記第2加工部においては、
前記第2加工具を挟んで、前記第3方向の前記一方側に少なくとも1つの前記第2バネが配置され、前記第3方向の前記他方側に少なくとも1つの前記第2板バネが配置されている、請求項1また2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記第1加工具は、前記第2加工具よりも硬質の材料を加工するように構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の加工装置。
【請求項5】
前記加工ユニットにおいて、前記第2加工具は、前記第1加工具よりも前記ワーク側に配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークを非円形に加工する種々の加工装置が提案されている。特許文献1には、水平方向に並ぶ複数の刃物が支持された加工ユニットが開示されており、いずれかの刃物をワークに近接させた上で、加工ユニット全体を進退させることにより加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記加工ユニットは、水平方向に並ぶ複数の刃物を有しているため、中央に配置された刃物と端部に配置された刃物では、加工時の切削抵抗が相違するという問題がある。したがって、使用する刃物によって加工精度が相違するおそれがある。この点は、ワークの非円形の加工を行う場合に限定されず、複数の刃物(加工具)を1つの駆動機構で駆動する装置全般に起りうる問題である。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、複数の加工具を用いて加工を行う場合、加工具によって加工抵抗がばらつくのを抑制することができる、加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加工装置は、円筒状のワークを、当該ワークの軸線方向である第1方向周りに回転自在に支持するワーク支持ユニットと、前記第1方向に移動可能に構成され、前記ワークを加工する加工ユニットと、を備え、前記加工ユニットは、第1加工具を有する第1加工部と、前記第1加工部とは異なる位置に配置され、第2加工具を有する第2加工部と、を備え、前記第1加工部は、前記第1加工具に連結される第1スライダと、前記第1スライダを支持する複数の第1板バネと、前記第1スライダに固定された少なくとも1つの第1磁石と、前記第1磁石と近接する少なくとも1つの第1コイルと、を備え、前記第1コイルと前記第1磁石との相互作用により、前記第1スライダに連結された前記第1加工具を前記ワークの外周面に近接離間する第2方向に移動させるように構成され、前記第2加工部は、前記第2加工具に連結される第2スライダと、前記第2スライダを支持する複数の第2板バネと、前記第2スライダに固定された少なくとも1つの第2磁石と、前記第2磁石と近接する少なくとも1つの第2コイルと、を備え、前記第2コイルと前記第2磁石との相互作用により、前記第2スライダに連結された前記第2加工具を前記第2方向に移動させるように構成されている。
【0007】
上記加工装置において、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向を規定し、前記第1加工部が、前記第2加工部の下方に配置され、前記第1加工部においては、前記第1加工具を挟んで、前記第3方向の一方側に前記第1磁石及び前記第1コイルが配置され、前記第3方向の他方側に少なくとも1つの前記第1板バネが配置されており、前記第2加工部においては、前記第2加工具を挟んで、前記第3方向の前記他方側に前記第2磁石及び前記第2コイルが配置され、前記第3方向の前記一方側に少なくとも1つの前記第2板バネを配置するように構成することができる。
【0008】
上記加工装置において、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向を規定し、前記第1加工部においては、前記第1加工具を挟んで、前記第3方向の一方側に少なくとも1つの前記第1バネが配置され、前記第3方向の他方側に少なくとも1つの前記第1板バネが配置されており、前記第2加工部においては、前記第2加工具を挟んで、前記第3方向の前記一方側に少なくとも1つの前記第2バネが配置され、前記第3方向の前記他方側に少なくとも1つの前記第2板バネが配置するように構成することができる。
【0009】
上記加工装置において、前記第1加工具は、前記第2加工具よりも硬質の材料を加工するように構成することができる。
【0010】
上記加工装置では、前記加工ユニットにおいて、前記第2加工具は、前記第1加工具よりも前記ワーク側に配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る加工装置によれば、複数の加工具を用いて加工を行う場合、加工具によって加工抵抗がばらつくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ワークであるピストンの正面図及び一部断面図である
【
図2】ワークの加工前と加工後の外径を示す平面図である
【
図3】本発明に係る加工装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図4】前面のカバーが取り外された加工ユニットの斜視図である。
【
図7】第1加工部を省略した加工ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る加工装置をエンジンのピストンの外径(外周面)を加工するための加工装置に適用した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1はこの加工装置の正面図である。以下では、
図1に示す方向にしたがって説明を行うこととする。但し、この方向は、本発明の一態様におけるものであり、他の配置も可能であるため、これらの方向に限定されない。
【0014】
<1.ワークの概要>
図1はワークWの一例としてのピストンの正面図及び一部断面図である。このピストンWは円筒状に形成されており、内部には下方に開放する内部空間が形成されている。ピストンWの外周面には3つの溝W1~W3が所定間隔を開けて形成されており、最も上方にある溝W1には、環状部材Rが嵌め込まれている。環状部材Rはニレジスト等の硬質の材料で形成され、それ以外の部分は環状部材Rよりも軟質のアルミ合金等で形成されている。
【0015】
図2はワークの加工前と加工後の外形を示す平面図である(但し、説明の便宜のための誇張している)。このピストンWに対し、
図2のように加工を行う。すなわち、断面円形状のピストンWの外周面に対する切削量を制御し、非円形の外周面を形成する。このとき、本実施形態に係る加工装置では、環状部材Rの外周面を後述する第2加工具で切削し、それ以外の外周面を第1加工具で加工する。
【0016】
<2.加工装置の概要>
図3は加工装置の斜視図である。
図3に示すように、本実施形態に係る加工装置は、直方体状の基台1と、この基台1の側面に設けられたワーク支持ユニット2と、基台1の同側面に設けられた駆動ユニット3と、この駆動ユニット3によって移動可能な加工ユニット4と、を備えている。
【0017】
<3.ワーク支持ユニット>
図3に示すように、ワーク支持ユニット2は、基台1の側面に固定された支持部21と、この支持部21において上下方向に延びる軸周りに回転可能な主軸22と、を備えている。主軸22は、上下方向に延びる円柱状の本体部221と、この本体部221の上端に固定されたワークWの取付部222と、を有している。本体部221は、支持部21の内部に収容されたモータ(図示省略)によって軸周りに回転可能である。取付部222は、下方にいくにしたがって外径が大きくなるような断面台形状に形成されており、その上端部に取り付けられた公知のチャック(図示省略)がワークWの内部空間の内壁面に下方から固定されるようになっている。
【0018】
駆動ユニット3は、加工ユニット4を上下方向に移動させる第1駆動部31と、加工ユニット4を前後に移動させる第2駆動部32と、を備えている。第1駆動部31は、基台1の側面に取り付けられ、上下方向に延びる一対のレール311と、これらレール311の間に配置され上下方向に延びるボールネジ312と、一対のレール311に沿って移動可能な第1移動部材313と、を備えている。ボールネジ312にはナット(図示省略)が螺合しており、このナットが第1移動部材313に固定されている。また、ボールネジ312はモータ314によって軸周りに回転するように構成されている。これにより、モータ314が駆動すると、ボールネジ312が回転し、これに伴ってナットと第1移動部材313が上下動するようになっている。
【0019】
次に、第2駆動部32について説明する。第2駆動部32は、第1移動部材313の右側の面に取り付けられ、前後方向に延びる一対のレール321と、これらレール321の間に配置され前後方向に延びるボールネジ322と、一対のレール321に沿って移動可能な第2移動部材323と、を備えている。ボールネジ322にはナット(図示省略)が螺合しており、このナットが第2移動部材323に固定されている。また、ボールネジ322はモータ324によって軸周りに回転するように構成されている。これにより、モータ324が駆動すると、ボールネジ322が回転し、これに伴ってナットと第2移動部材323が前後方向に移動するようになっている。そして、第2移動部材323に、上述した加工ユニット4が固定されており、第2移動部材323の移動に伴って、主軸22に取り付けられたワークWに近接離間するようになっている。
【0020】
<4.加工ユニット>
次に、加工ユニット4について、
図4~
図7を参照しつつ説明する。
図4は前面のカバーが取り外された加工ユニットの斜視図、
図5は加工ユニットの分解斜視図、
図6は
図4のA-A線断面図である。また、加工ユニットの構造を分かりやすくするため、
図7を追加した。
図7は第1加工部を省略した加工ユニットの分解斜視図である。
【0021】
図4に示すように、この加工ユニット4は、筐体5と、この筐体5に収容される第1加工部6及び第2加工部7と、を備えている。
図2に示すように、筐体5は、前壁部51、第1側壁部52、第2側壁部53、上壁部54、底壁部55、及び後壁部56を有する直方体状に形成され、これらによって囲まれた内部空間に第1加工部6及び第2加工部7が収容されている。両加工部6,7は上下方向に並び、第2加工部7が上側に配置されている。また、
図1に示すように、筐体5は、前壁部51を覆うカバー部材57を有している。
【0022】
<4-1.第1加工部>
次に、第1加工部6について説明する。
図5に示すように、第1加工部6は、ワークWの外周面を切削する第1加工具601を有しており、この第1加工具601が微細な距離を前後方向(第1方向)に移動する。つまり、ワークWに対して近接離間し、ワークWを加工するようになっている。
【0023】
第1加工具601を前後方向に移動させるため、第1加工部6は、第1加工具601の後部に連結されたスライダ61を備えている。このスライダ61は、左右方向に延びる板状の第1部位611と、この第1部位611の右端部に連結され上下方向に延びる板状の第2部位612と、を備えている。第2部位612は筐体5の左右方向の中央付近に配置されており、これによって第1部位611は筐体5の左側に配置されている。そして、
図4に示すように、第1加工具601は、第1部位611と第2部位612との連結部分から前方に延びるように固定されている。
【0024】
スライダ61の第1部位611の上面及び下面には、それぞれ複数の第1磁石621及び複数の第2磁石622が固定され、第1磁石621の上方及び第2磁石622の下方には、わずかな隙間を開けて第1コイルケース631及び第2コイルケース632がそれぞれ配置されている。
【0025】
各コイルケース631,632には、複数のコイル(図示省略)が収容されており、制御装置(図示省略)は、非円形の目標形状に合うように所定の回転角度に対する通電量を変化させて出力することでその通電量に応じた磁力を発生させることができる。複数のコイルは前後方向に間隔をあけて並べて配置されており、その軸方向が磁石621,622の着磁方向(前後方向)と直交するように配置されている。本実施形態では各コイルの軸方向が上下方向を向くように配置されている。そして、通電時にコイルにより発生する磁力と磁石621,622の磁力との相互作用により、磁石621,622がその着磁方向(前後方向)に移動し、それに伴ってスライダ61が前後方向に移動するように構成されている。
【0026】
なお、コイルの巻線方向は、スライダ61が前後方向に移動するように適宜変更可能であり、本実施形態では、隣接するコイル同士の巻線方向が互いに逆方向になるように配置されている。
【0027】
第1コイルケース631の上面には第1冷却ジャケット641が固定されており、第1冷却ジャケット641の上面と筐体5の上壁部54との間には棒状の第1調整部材65が取り付けられている。一方、第2コイルケース632の下面には第2冷却ジャケット642が固定されており、この第2冷却ジャケット642は筐体5の底壁部55に固定されている。各冷却ジャケット641,642には、加工ユニット4外から供給した冷媒が通過するように構成されており、これによって各コイルケース631,632を冷却するようになっている。より詳細には、筐体5の後部から後壁部56を通過して第1冷却ジャケット641に延びる供給管643が第1冷却ジャケット641に冷媒を供給するようになっている。また、第1及び第2冷却ジャケット641,642の間には連結管644が設けられ、第1冷却ジャケット641から排出された冷媒が第2冷却ジャケット642に供給されるようになっている。また、第2冷却ジャケット642から排出された冷媒は、排出管645を介して筐体5の外部に排出され、図外の貯蔵タンクに戻り再び冷却されて供給管643より循環するようになっている。
【0028】
第1調整部材65は、例えばターンバックルの如く、工具によってその長さを調整可能となっており、これによって、第1コイルケース631と第1磁石621との間の距離を調整して磁力の作用が適度になるようにしている。また、スライダ61の第1部位611の左端部には前後方向に延びるポジションセンサ66の被検知部661が固定されており、この被検知部661に沿って前後方向に延びるポジションセンサ66の検知部662が筐体5に固定されている。この構成により、スライダ61の前後方向の位置を検出して前記制御装置にフィードバック信号を出力可能となっている。
【0029】
スライダ61の第2部位612と筐体5の第1側壁部52とは、第1板バネ671及び第2板バネ672を介して連結されている。第1板バネ671は第2部位612の前端部に固定され、第2板バネ672は第2部位612の後端部に固定されている。いずれの板バネ671,672も、上下方向及び左右方向に延びている。この構成により、スライダ61は、第1板バネ671及び第2板バネ672を介して第1側壁部52に支持されている。
【0030】
図2に示すように、第1加工具601は、円筒状の基部602と、この基部602の前端部に着脱自在に固定されたバイト603とを有しており、基部602の後端がスライダ61の前端部に固定されている。基部602は、スライダ61から前方に延び、筐体5の前壁部51に形成された貫通孔(図示省略)を介して前方に突出している。そして、貫通孔511から突出した基部602の左側には第3板バネ673が固定されている。第3板バネ673の右端部は基部602に固定され、左端部は前壁部51の左端部に固定されている。このように、第3板バネ673は,第1板バネ671及び第2板バネ672とは、第1加工具601を挟んで左右方向の互いに反対側に取り付けられている。また、バイト603は、
図1に示したワークWの外周面の軟質な部分を切削可能なものが選定されている。以上の構成により、第1加工具601は、第1~第3板バネ671~673によって支持され前後方向に移動する動作が規制されている。
【0031】
<4-2.第2加工部>
次に、第2加工部7について説明する。第2加工部7は、第1加工部6の上方に配置されており、第1加工部6と概ね同様の構成を有している。但し、
図2及び
図3に示すように、第1加工部6とは左右対称になるように構成されている。つまり、第1加工部6は主として筐体5の左側に配置されているが、第2加工部7は主として筐体5の右側に配置されている。以下、説明する。
【0032】
第2加工部7は、ワークWの外周面を切削する第2加工具701を有しており、この第2加工具701が前後方向に移動する。つまり、ワークWに対して近接離間し、ワークWを加工するようになっている。
【0033】
第2加工具701を前後方向に移動させるため、第2加工部7は、第2加工具701の後部に連結されたスライダ71を備えている。このスライダ71は、左右方向に延びる板状の第1部位711と、この第1部位711の左端部に連結され上下方向に延びる板状の第2部位712と、を備えている。第2部位712は筐体5の左右方向の中央付近に配置されており、これによって第1部位711は筐体5の左側に配置されている。そして、
図4に示すように、第2加工具701は、第1部位711と第2部位712との連結部分から前方に延びるように固定されている。
【0034】
スライダ71の第1部位711の上面及び下面には、それぞれ複数の第1磁石721及び複数の第2磁石722が固定され、第1磁石721の上方及び第2磁石722の下方には、わずかな隙間を開けて第1コイルケース731及び第2コイルケース732がそれぞれ配置されている。第1コイルケース731の上面には第1冷却ジャケット741が固定されており、この第1冷却ジャケット741は筐体5の上壁部54に固定されている。一方、第2コイルケース732の下面には、第2冷却ジャケット742が固定されている。また、第2冷却ジャケット742と筐体5の底壁部55との間には棒状の第2調整部材75が取り付けられている。図外の貯蔵タンクから供給管743を経由して冷媒を各冷却ジャケット741,742に供給するための構成は、第1加工部6と同じであるため、説明を省略する。
【0035】
第2調整部材75は、例えばターンバックルの如く工具によってその長さを調整可能となっており、これによって、第2コイルケース732と第2磁石722との間の距離を調整して磁力の作用が適度になるようにしている。第2調整部材75は、第1加工部6の第1板バネ671と第2板バネ672との間を通過して上下方向に延びている。
【0036】
スライダ71の第1部位711の右端部には前後方向に延びるポジションセンサ76の被検知部761が固定されており、この被検知部761に沿って前後方向に延びるポジションセンサ76の検知部762が筐体に固定されている。この構成により、スライダ71の前後方向の位置を検出して前記制御装置にフィードバック信号を出力可能となっている。
【0037】
スライダ71の第2部位712と筐体5の第2側壁部53とは、第1板バネ771及び第2板バネ772を介して連結されている。第1板バネ771は第2部位712の前端部に固定され、第2板バネ772は第2部位712の後端部に固定されている。いずれの板バネ771,772も、上下方向及び左右方向に延びている。この構成により、スライダ71は、第1板バネ771及び第2板バネ772を介して第2側壁部53に支持されている。また、上述した第1加工部6の第1調整部材65は、これら第1板バネ771及び第2板バネ772の間を通過して上下方向に延びている。
【0038】
図2に示すように、第2加工具701は、円筒状の基部702と、この基部702の前端部に着脱自在に固定されたバイト703とを有しており、基部の後端がスライダ71の前端部に固定されている。基部702は、スライダ71から前方に延び、筐体5の前壁部51に形成された貫通孔512(
図8参照)を介して前方に突出している。この貫通孔512は、第1加工具601の上方に形成されている。また、基部702は、第1加工具601の基部602よりも前後方向の長さが長く、さらに前方に突出している。そして、貫通孔512から突出した基部702の右側には第3板バネ773が固定されている。第3板バネ773の左端部は基部702に固定され、右端部は前壁部51の右端部に固定されている。このように、第3板バネ773は、第1板バネ771及び第2板バネ772とは、第2加工具701を挟んで左右方向の互いに反対側に取り付けられている。バイト703は、
図1に示したワークWの外周面の硬質な部分を切削可能なものが選定されている。
【0039】
以上の構成により、第1加工具601と第2加工具701は、ワークWの回転軸線に沿って上下方向に並んで配置され、且つ、第2加工具701が第1加工具601よりもさらに前方に突出するように構成されている。
【0040】
なお、第1側壁部52及び第2側壁部53には、それぞれ筐体5の内部に通じた第1窓52a、53aおよび第2窓52b、53bが形成されている。第1窓52a、53aは、第1調整部材65及び第2調整部材75をそれぞれ目視できるように略同じ高さに形成されており、そこからスパナ等の工具を差し入れることにより前述したように各調整部材65、75の長さを調整することができる。
第2窓52b、53bはポジションセンサ66、76をそれぞれ目視できるように略同じ高さにあり、そこから工具を差し入れてポジションセンサ66、76の被検知部661、761と検知部662、762の取付位置を前後に微調整することができる。
【0041】
<4-3.異物侵入防止のための構造>
各加工部6,7は、上記のような精密なリニアアクチュエータにより構成されているため、加工に伴う切削屑など異物の侵入を防止する必要がある。そのため、筐体5において、前壁部51の前方にはカバー部材57が取り付けられており、これによって、各加工部6,7の第3板バネ673,773が覆われている。より詳細に説明すると、カバー部材57には、各加工具601,701の基部602,702が挿通される貫通孔571,572が形成されており、これら貫通孔571,572を介して前方に突出している。
【0042】
図8に示すように、前壁部51の第2加工具701用の貫通孔512の内周には、環状のシール部材58が設けられており、このシール部材58の内周面が基部602の外周面に接している。したがって、基部702は、シール部材58に接しつつ、前後方向に移動可能となっている。また、シール部材58の内周面には、環状の第1溝581が形成され、この第1溝581に対して空気を供給する供給路514が、前壁部51及び上壁部54に形成されている。したがって、供給路514を介して第1溝581に空気が供給されることで、基部702の周囲には正圧の空気の層が形成され、これによって、基部702とシール部材58の間から異物が筐体5の内部空間に侵入するのを抑制している。また、シール部材58の内周面において、第1溝581の前方及び後方には断面半円状の環状の第2溝582及び第3溝583がそれぞれ形成されており、第1溝581に供給された空気が、さらにこれらの溝582,583にも供給されるようになっている。これによって、異物の侵入をさらに抑制するようになっている。
【0043】
以上は、第2加工具701における異物侵入を防止するための構造であるが、同様の構造が第1加工具601に対しても設けられている。図示を省略するが、第1加工具601に対して、供給される空気は、底壁部55及び前壁部51に形成された供給路を通過するようになっている。
【0044】
<5.加工装置の動作>
次に上記のように構成された加工装置の動作について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。以下では、まず、第2加工具701によりワークWの環状部材W4の表面を加工し、その後、第1加工具601によりワークWの環状部材W4以外の表面を加工する例について説明する。
【0045】
最初に、駆動ユニット3を駆動し、加工ユニット4をワークWに対し所定の位置まで近接させる。より詳細には、
図9に示すように、第2加工具701のバイト703の先端を、環状部材W4の上端縁と対向する位置に位置決めする。次に、ワークWを回転させるとともに、第2加工部7のコイルに通電し、スライダ71を前進させる。このとき、ポジションセンサ76でスライダ71の位置を検知しつつ、ワークWの回転角度に対応する通電量を制御することで、バイト703の前後方向の位置を制御する。こうして、ワークWの回転角度に応じてバイト703を所定量を前後進させることにより環状部材W4のうち、バイト703に接触した外周面が非円形に加工される。環状部材W4の厚み分だけ下方に移動させながらこれと同じ前後進制御のサイクルを繰り返すことで、環状部材W4の外周面すべてが非円形に加工される。そして、環状部材W4の加工が完了すると、第1加工具601のバイト603の先端を、
図10に示すように、ワークWの上端縁と対向する位置に位置決めする。
【0046】
続いて、第1加工部6のコイルに通電し、スライダ61を前進させる。このとき、ポジションセンサ66でスライダ61の位置を検知しつつ、ワークWの回転角度に対応する通電量を、上述した第2加工部7と同じように制御することで、バイト603の前後方向の位置を制御する。こうして、バイト603を前後進させながら、下方に移動させることで、ピストンの上端縁から環状部材W4の上端縁までの外周面を、加工後の環状部材W4と同形状に非円形に加工する。
【0047】
これに続いて、バイト603をワークWから離間し、バイト603の先端を、環状部材W4の下端縁と対向する位置に位置決めする。続いて、バイト603を前後進させながら、ワークWの下端縁と対向する位置まで移動させることで、ピストンの環状部材W4よりも下方の表面を、加工後の環状部材W4と同形状に非円形に加工する。こうして、ワークの加工が終了する。
【0048】
なお、ワークWの外周面の外径は、上下方向において一定になるように加工する例を説明したが、一般的には正面視において、例えば、樽形になるように外径が変化するように加工する。
【0049】
<6.特徴>
以上のように構成された加工装置は、次のような効果を奏する。
(1)加工対象に応じて2種類の加工具601,701を準備し、それぞれを異なる駆動機構6,7により駆動するように構成している。そのため、従来例のように、1つの駆動機構で複数の加工具を支持した場合に生じるモーメント荷重やアンバランスが解消され、加工精度を向上することができる。また、加工の途中で工具の交換が不要であるため、一連の動作(1サイクル)によってピストンの外周面を非円形にする加工が可能となる。
【0050】
(2)上下方向に配置した第1加工部6及び第2加工部7を左右対称となるように配置し、両者6,7の中央付近に加工具601,701を配置しているため、加工ユニット4の小型化が可能となる。
【0051】
(3)各加工具601,701は、左右にそれぞれ配置された第1~第3板バネ671~673,771~773によって支持されているため、ワークWの回転方向に対する剛性を高くすることができる。その結果、加工抵抗による加工具601,701の振動を抑制できるため、加工精度を向上することができる。
【0052】
(4)第1加工具601の先端を第2加工具701の先端よりも後方に配置しているため、第2加工具701による環状部材W4の加工時に、第1加工具601が主軸22に干渉するのを防止することができる。
【0053】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0054】
(1)上記実施形態では、第1加工具601のバイト603を第2加工具701のバイト703よりも後方に配置しているが、各加工具601,701のバイト603,703の位置は主軸22やワークWによって適宜変更することができる。例えば、両バイト603,703を前後方向の同じ位置に配置したり、あるいは第2加工具701のバイト703を第1加工具601のバイト603よりも後方に配置することができる。
【0055】
(2)上記実施形態では、各加工具601,701を3つの板バネ671~673,771~773で支持するようにしているが、板バネの数及び位置については特には限定されない。したがって、各加工具601,701の左右方向の一方側にのみ板バネを配置することもできる。但し、加工条件にもよるが、加工時の剛性を高めるには、加工具601,701を挟んで複数の板バネを配置することが好ましい。
【0056】
(3)上記実施形態では、第2加工具701のバイト703を硬質材料の加工用にし、第1加工具601のバイト603を軟質材料の加工用にしているが、特には限定されない。すなわち、各加工具601,701に設けられるバイト603,703は、加工対象に応じて適宜変更することができる。また、加工対象や加工条件に合わせ、バイト以外の工具を適宜取り付けることもできる。
【0057】
(4)上記実施形態では、第1加工部6と第2加工部7とを上下方向に並べ、且つ左右方向に対象となるように構成しているが、特には限定されず、第1加工具601と第2加工具701が異なる位置に配置されるのであれば、各加工部6,7の構造及び配置は適宜変更することができる。
【0058】
(5)上記実施形態では、加工対象であるワークをピストンにしているが、これ以外の加工対象についても対応可能である。すなわち、回転するワークに対し、近接離間させながら、ワークの表面を切削するような種々の加工に適用することができる。したがって、ワークを非円形に加工する以外の加工も行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
2 :ワーク支持ユニット
4 :加工ユニット
6 :第1加工部
601 :第1加工具
61 :スライダ(第1スライダ)
621 :第1磁石(第1磁石)
622 :第2磁石(第1磁石)
671 :第1板バネ(第1板バネ)
672 :第2板バネ(第1板バネ)
673 :第3板バネ(第1板バネ)
7 :第2加工部
701 :第2加工具
71 :スライダ(第2スライダ)
721 :第1磁石(第2磁石)
722 :第2磁石(第2磁石)
771 :第1板バネ(第2板バネ)
772 :第2板バネ(第2板バネ)
773 :第3板バネ(第2板バネ)
W :ワーク