(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121114
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ルーバーおよび空間構造体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/172 20060101AFI20230823BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230823BHJP
E06B 7/082 20060101ALI20230823BHJP
E06B 5/20 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/16 100
E06B7/082
E06B5/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142698
(22)【出願日】2022-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022024320
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593064076
【氏名又は名称】株式会社ニュースト
(72)【発明者】
【氏名】野黒 俊彦
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
5D061
【Fターム(参考)】
2E036KA03
2E036KB01
2E036LA01
2E036NA08
2E036NB01
2E239BB02
5D061EE24
5D061EE31
(57)【要約】
【課題】ルーバーなどの空間構造体において構造的に遮音性を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】ルーバー(10)は、空洞部(16)と、通気路(14)と通じる一方および空洞部(16)と通じる他方を有する連通部(17)と、をそれぞれ有する共鳴器(15a、15b、15c)を備えている。複数の羽根体(11)のそれぞれにおいて、共鳴器(15a)の連通部(17)の一方端が第1面(12)から開口し、共鳴器(15b、15c)の連通部(17)の一方端が第2面(13)から開口している。そして、隣り合う羽根体(11)の一方の共鳴器(15b、15c)の連通部(17)が他方の共鳴器(15a)の連通部(17)の一方端に向けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されるルーバーであって、
前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口し、
隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられている
ことを特徴とするルーバー。
【請求項2】
前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する凹部と、前記通気路に開口していない室と、を備え、
前記室が前記凹部の底面に隣接するように前記第1面側に設けられている
請求項1記載のルーバー。
【請求項3】
前記羽根体が前記通気路に開口していない室を備え、
前記室が前記連通部に隣接するように前記第1面側又は前記第2面側に設けられている
請求項1記載のルーバー。
【請求項4】
前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する第1凹部と、前記第2面から凹み、前記第1凹部と前記第3共鳴器の一方端との間の第2凹部とを備える
請求項1記載のルーバー。
【請求項5】
前記羽根体が、前記第1面から凹み、前記通気路外側に前記第1共鳴器の連通部と隣接する凹部を備える
請求項1記載のルーバー。
【請求項6】
前記第3共鳴器の連通部が前記第2面に対して傾斜方向において前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載のルーバー。
【請求項7】
区画空間を有する空間構造体であって、
空洞部と、前記区画空間と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第2および第3共鳴器の連通部が前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられている
ことを特徴とする空間構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画空間を構成するルーバーなどの空間構造体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-25233号(以下、「特許文献1」という。)には、壁面等に形成される通気口の縁部に庇状に傾斜させた羽根体を取り付け、通気口を通じて伝搬される騒音を低減する消音ルーバーが記載されている。この消音ルーバーの羽根体は、グラスウールなどの繊維質材または多孔質材を収容してなる消音室と、消音室内側方に取り付けられる曲面形状の第1反射板および平面形状の第2反射板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-25233号(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術を用いることで、ルーバーなどの空間構造体ではグラスウールなどの吸音材によって遮音性を確保することができる。より遮音性を向上させるために、空間構造体自体が吸音材として機能させることが考えられる。
【0005】
本発明の一目的は、ルーバーなどの空間構造体において構造的に遮音性を調整することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一解決手段に係るルーバーは、第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されている。
ここで、前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備えていることが好ましい。また、前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口していることが好ましい。また、隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられていることが好ましい。
また、前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する凹部と、前記通気路に開口していない室と、を備えることが好ましい。また、前記室が前記凹部の底面に隣接するように前記第1面側に設けられていることが好ましい。
また、前記羽根体が前記通気路に開口していない室を備えることが好ましい。また、前記室が前記連通部に隣接するように前記第1面側又は前記第2面側に設けられていることが好ましい。
また、前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する第1凹部と、前記第2面から凹み、前記第1凹部と前記第3共鳴器の一方端との間の第2凹部とを備えることが好ましい。
また、前記羽根体が、前記第1面から凹み、前記通気路外側に前記第1共鳴器の連通部と隣接する凹部を備えることが好ましい。
また、前記第3共鳴器の連通部が前記第2面に対して傾斜方向において前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられていることが好ましい。
本発明の一解決手段に係る空間構造体は、区画空間を構成するものである。前記空間構造体は、空洞部と、前記区画空間と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備えていることが好ましい。ここで、前記第2共鳴器の連通部または前記第3共鳴器の連通部の少なくとも前記第2共鳴器の連通部が前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられていることが好ましい。前記第1共鳴器の連通部が前記第3共鳴器の連通部の一方端に向けられていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一解決手段によれば、ルーバーなどの空間構造体において遮音性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空間構造体の使用状態図である。
【
図2】
図1に示す空間構造体の模式的断面図である。
【
図3】
図1に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図5】
図4に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図7】
図6に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図9】
図8に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図11】
図10に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図13】
図12に示す空間構造体を含む挿入損失特性図である。
【
図14】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図15】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図17】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【
図19】本発明の他の実施形態に係る空間構造体の模式的断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の本発明に係る実施形態では、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る実施形態では、空間構造体の一例としてルーバー10について
図1、
図2および
図3を参照して説明する。
図1は外装壁として用いられるルーバー10の使用状態図(斜視図)である。また、
図2はルーバー10の要部(羽根体11が3枚)の模式的断面図である。
図2ではxyz空間座標系に配置されたものとしてルーバー10を示し、水平方向をx軸方向およびy軸方向に対応させ、鉛直方向(上下方向)をz軸方向に対応させている。ここで、
図2中で示す二点鎖線は構造を明解とするための仮想線として用いている。また、
図3はルーバー10の挿入損失特性図である。
【0011】
ルーバー10は、空調室外機などの設備機器100の周囲に設けられる外装として用いられる。このルーバー10は、設備機器100の稼働による熱の滞留を抑制するため、通気性を確保することができ、また、設備機器100の稼働による音の周囲への伝搬を抑制するため、遮音性も確保することができる。本実施形態では、音源のある空間を隔てるルーバー10に対して、設備機器100側を音源側(
図2では右側)とし、その反対側を受音側(
図2では左側)として説明する。
【0012】
ルーバー10は、羽根体11を複数備えている。羽根体11は、第1面12およびこれとは反対の第2面13を有している。羽根体11は、例えば、長手(
図2のy軸方向に延在するもの)および短手を有する短冊板状に構成されている。また、羽根体11は、音源側に取付部20を備えている。例えば、取付部20がブラケットなどを介して鉛直方向に延在するストリンガーに取り付けられる。ルーバー10では、複数の羽根体11が、その面12、13が水平方向から下向きへ所定の角度θで傾斜して鉛直方向に等間隔で延在するように取り付けられる。
【0013】
このようにルーバー10として、隣り合う羽根体11、すなわち下側羽根体11の第1面12と上側羽根体11の第2面13との間により通気路14(羽根体11で区画された空間)を複数構成することで、通気性を確保することができる。また、ルーバー10では、下側羽根体11の第1面12と上側羽根体の第2面13とを平行にして隣り合う羽根体11の間の距離Dが同じとなるように複数の羽根体11を設けている。
図2に示すように、この距離Dは、通気路14の幅寸法に相当する。
【0014】
ここで、通気性としては、通気路14の幅寸法(距離D)を、通気路14の幅寸法と羽根体11の厚み寸法との和で除算した開口率で表現することができる。開口率が高いほど、通気性が高くなる。しかしながら、ルーバー10では、通気路14において音源側から受音側へ音が伝搬していこうとする。このため、ルーバー10では、開口率を例えば50%とすることが好ましい。なお、通気路14が伝搬路となって音源側から受音側へ伝搬するルーバー10の場合、音がルーバー10(外装壁)を透過するともいう。
【0015】
また、ルーバー10は、第1、第2および第3の共鳴器15a、15b、15cを備えている。これら共鳴器15a、15b、15cは、複数の羽根体11のそれぞれに形成されている。これら共鳴器15a、15b、15c(代表して共鳴器15と記す場合がある。)は、いわゆるヘルムホルツ共鳴器であり、特定の周波数帯で吸音する(音のエネルギーを損失させる)機能を有している。共鳴器15a、15b、15cは、それぞれ容器としての空洞部16a、16b、16c(代表して空洞部16と記す場合がある。)と、容器開口部(首部)としての連通部17a、17b、17c(代表として連通部17と記す場合がある。)とを備えている。このように、ルーバー10は、共鳴器15を備えることで、通気性を確保しつつ、遮音性を向上させることができる。
【0016】
羽根体11は、例えば、アルミニウムやその合金(以下、これらを「アルミニウム合金」という。)で形成された複数の押出材から構成することができる。アルミニウム合金は、音響透過損失が大きい。また、アルミニウム合金の押出材は、高い寸法精度で形成されるため、共鳴器15の遮音性も高性能のものとなる。このように、ルーバー10は、アルミニウム合金から構成される羽根体11に共鳴器15を設けることで、遮音性をより向上させることができる。
【0017】
このように、ルーバー10では、複数の羽根体11のそれぞれにおいて、共鳴器15を設けている。具体的には、共鳴器15aの連通部17aの開口端18a(一方端)が第1面12から開口している。また、共鳴器15bの連通部17bの開口端18b(一方端)および共鳴器15cの連通部17cの開口端18c(一方端)が第2面13から開口している。ここで、ルーバー10では、開口端18a、18b、18c(以下、まとめて開口端18と記す場合がある。)の開口形状を、羽根体11の長手方向(y軸方向)に延在するスリット状としている。
【0018】
このようなスリット状の開口端18の場合には、共鳴器15の共鳴周波数f
0[Hz]は次式により求めることができる。
【数1】
ここに、cは音速[m/s]である。また、tは連通部17(首部)の延在する長さ[m]である。また、S(=a×b)は開口端18の面積[m
2]である。また、k(=a/b)は連通部17の長さ/連通部17の幅である。また、Vは空洞部16(空気層)の体積[m
3]である。また、aは連通部17(開口端18)の長さ(羽根体11の長手方向の長さ)[m]である。また、bは連通部17(開口端18)の幅[m]である。
【0019】
このように、共振周波数f0は、連通部17や空洞部16の大きさによって異なってくる。例えば、連通部17の長さtを長くすることで共鳴周波数f0は低くなる。このため、ルーバー10では、それぞれの共鳴器15の共振周波数f0を異ならせることができる。共振周波数f0の異なる共鳴器15を複数組み合わせることで、所定の周波数域の音を吸音させることができ、ルーバー10の遮音性を向上させることができる。
【0020】
また、ルーバー10では、隣り合う羽根体11のうち上側(一方)の羽根体11の共鳴器15bの連通部17bが下側(他方)の共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けられている。すなわち、連通部17bの延在方向に開口端18aが存在している。また、連通部17bの延在方向は、羽根体11の第2面13に対して垂直方向である。このように、通気路14において、隣り合う羽根体11の間の距離Dによる領域の他、共鳴器15aの空洞部16aと共鳴器15bの空洞部16bとの間の距離(距離Dよりも長い)による領域が形成されている。このような共鳴器15の配置によっても遮音性の向上を図ることができる。
【0021】
また、ルーバー10では、隣り合う羽根体11のうち上側(一方)の羽根体11の共鳴器15cの連通部17cが下側(他方)の共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けられている。すなわち、連通部17cの延在方向に開口端18aが存在している。また、連通部17cの延在方向は、羽根体11の第2面13に対して傾斜方向(垂直方向ではない)である。このように、通気路14において、隣り合う羽根体11の間の距離Dによる領域の他、共鳴器15aの空洞部16aと共鳴器15cの空洞部16cとの間の距離(距離Dよりも長い)による領域が形成されている。このような共鳴器15の配置によっても遮音性の向上を図ることができる。
【0022】
また、共鳴器15aの空洞部16aと共鳴器15bの空洞部16bとの間の距離(内壁間)と、共鳴器15aの空洞部16aと共鳴器15cの空洞部16cとの距離(内壁間)を異ならせることができる。このような共鳴器15の配置によっても遮音性の向上を図ることができる。
【0023】
また、ルーバー10では、隣り合う羽根体11のうち下側(他方)の共鳴器15aの連通部17aが上側(一方)の共鳴器15bの連通部17bの開口端18bに向けられている。他方、ルーバー10では、隣り合う羽根体11のうち下側(他方)の共鳴器15aの連通部17aが上側(一方)の共鳴器15cの連通部17cの開口端18cに向けられていない。また、連通部17aの延在方向に開口端18bが存在している。また、連通部17aの延在方向は、羽根体11の第1面12に対して垂直方向である。このため、連通部17bの延在方向に開口端18aが存在している(開口端18aと開口端18bとが互いに向かい合っている)。これにより、共鳴器15aの空洞部16aの底(内壁)と共鳴器15bの空洞部16bの底(内壁)との間の距離(距離Dよりも長い)による領域が形成されている。このような共鳴器15の配置によっても遮音性の向上を図ることができる。
【0024】
また、ルーバー10は、羽根体11の第2面13から凹む凹部21(反響部)を備えている。凹部21は、羽根体11において音源側(取付部20側)に形成されている。凹部21は、断面視劣弧(楕円曲線の弧)となるような曲面を有している。凹部21は、水平方向において面全体が通気路14外に向かって露出する(音源側からみると露出している)ように設けられている。ルーバー10では、第2面13(特に凹部21の底面)が反射面として機能し、音源側から伝搬してくる音を特に音源側に向かって反射させることができる。これにより、ルーバー10の遮音性をより向上させることができる。
【0025】
また、ルーバー10は、羽根体11に第1、第2および第3の室22、23、24を備えている。室22、23、24は、通気路14に開口していない空洞部である。室22により共鳴器15aと共鳴器15cとが隔てられている。また、室22が凹部21の底面に隣接するように第1面12側に設けられている。また、室23により共鳴器15bと共鳴器15cとが隔てられている。また、室24は、共鳴器15aの音源側(取付部20側)に設けられている。これにより、それぞれの共鳴器15を独立しているものとみなし、互いの共鳴器15の影響、すなわち二次的な共振現象の発生を抑制し、遮音性が低下するのを防止することができる。
【0026】
また、ルーバー10では、共鳴器15aの連通部17aの一部が第1室22との区画壁25aで構成されている。すなわち、スリット状の開口端18aの一方が、区画壁25aで構成されている。また、ルーバー10では、共鳴器15bの連通部17bの一部が第2室23との区画壁25bで構成されている。すなわち、スリット状の開口端18bの一方が、区画壁25bで構成されている。また、ルーバー10では、共鳴器15cの連通部17cの一部が室23との区画壁25cで構成されている。すなわち、スリット状の開口端18cの一方が、区画壁25cで構成されている。空洞である室22、23、24(区画壁)によれば連通部17を構成し易くなり、また、連通部17の一方から他方まで延在する長さ調整も容易に行うことができる。
【0027】
これによれば、連通部17を共鳴器15の空洞部16側に入り込ませることなく、空洞部16を確保することができる。これにより、共鳴器15の空洞部16と連通部17とを独立しているものとみなし、互いの影響、すなわち二次的な共振現象の発生を抑制し、遮音性が低下するのを防止することができる。また、凹部21(反響部)の一部が室22で構成されている(凹部22の反射面が室22の壁面で構成されている)ことで、共鳴器15との干渉を抑制し、遮音性が低下するのを防止することができる。
【0028】
このようなルーバー10を、音源がある空間に配置した場合の挿入損失について
図3を参照して説明する。
図3では、境界要素法(BEM:boundary element method)を用いて解析した結果をグラフで示している。
図3のグラフでは、横軸が1/3オクターブバント中心周波数[Hz]、縦軸が音圧レベル[dB]である。なお、音圧レベルが高いほどルーバー10による遮音性が高いこととなる。
【0029】
図3のグラフでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、500Hzから800Hz付近の帯域では音圧レベルが高くなっている。例えば、ピークとなる600Hz付近では20dB以上の挿入損失が得られている。すなわち、ルーバー10は、前述した構造的な特徴によって、帯域によってはより遮音性が優れたものとなっている。
【0030】
このように、ルーバー10では、共鳴器15の寸法(これによる共振周波数)などを調整することで、所定の帯域に合わせて遮音性を調整することができる。例えば、A特性(A weighted sound pressure level)に合わせて、共鳴器15の共振周波数と凹部21(反射板)の形状や位置を設計して効率よく遮音性を向上させることができる。
【0031】
また、ルーバー10の羽根体11の角度θ(水平方向からの傾き)を調整することによっても挿入損失特性を変化させることもできる。しかしながら、角度θを大きくしすぎると、通気性が低下していまう。このため、通気性を確保できる角度θの範囲で調整することが好ましい。
図3では、羽根体11の角度θを53°としたルーバー10A(
図2に示すルーバー10)と、55°としたルーバー10Bの挿入損失特性を示している。角度θを調整することでも挿入損失特性を変化させて、遮音性をより向上させることができる。
【0032】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、凹部21(反射面)を備えたルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として凹部21を備えていないルーバー10Cについて
図4および
図5を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図4はルーバー10Cの要部(羽根体11Cが3枚)の模式的断面図である。また、
図5はルーバー10Cの挿入損失特性図であり、考察のためルーバー10Aの挿入損失も示している。
【0033】
図4に示すように、ルーバー10Cは、第1面12および第2面13を有する羽根体11Cを複数備えている。ルーバー10Cでは、隣り合う羽根体11Cの第1面12と第2面13との間により通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11Cには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15b、15cが設けられている。隣り合う羽根体11Cの上側の羽根体11Cの共鳴器15bの連通部17bおよび共鳴器15cの連通部17cが下側の羽根体11Cの共鳴器15aの連通部17aの開口端18a(一方端)に向けられている。ここで、ルーバー10Cでは、ルーバー10Aの凹部21と異なり、共鳴器15の開口箇所を除いて第2面13が凹まずに平坦となっている。
【0034】
図5に示すように、ルーバー10Cでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、500Hzから800Hz付近の帯域では20dB以上と音圧レベルが高くなっている。すなわち、ルーバー10Cは、遮音性を有しており、帯域によっては遮音性が優れたものとなっている。
【0035】
ルーバー10Cは、ルーバー10A(
図2)と挿入損失を比較すると、400Hzから1kHz付近の帯域では音圧レベルが高いが、1kHz以降では低くなっている。このことから、ルーバー10Aのように共鳴器15の他に反射面となる凹部21を備えることで、広帯域での遮音性の向上を図ることができる。
【0036】
(第3実施形態)
前記第1実施形態では、複数の共鳴器15a、15b、15cと、凹部21(反射面)とを備えたルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として共鳴器15cおよび凹部21を備えていないルーバー10Dについて
図6および
図7を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図6はルーバー10Dの要部(羽根体11Dが3枚)の模式的断面図である。また、
図7はルーバー10Dの挿入損失特性図であり、考察のためルーバー10Cの挿入損失も示している。
【0037】
図6に示すように、ルーバー10Dは、第1面12および第2面13を有する羽根体11Dを複数備えている。ルーバー10Dでは、隣り合う羽根体11Dの第1面12と第2面13との間により通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11Dには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15bが設けられている。ルーバー10Dは羽根体11Dに通気路14に開口していない室26、27を備えている。室26、27によって共鳴器15a、15bが隔てられている。室26は連通部17aに隣接するように第1面12側に設けられている。また、室27は連通部17bに隣接するように第2面13側に設けられている。また、隣り合う羽根体11Dの上側の羽根体11Dの共鳴器15bの連通部17bと、下側の羽根体11Dの共鳴器15aの連通部17aとが向かい合っている。ここで、ルーバー10Dでは、ルーバー10Cと同様、共鳴器15の開口箇所を除いて第2面13が凹まずに平坦となっている。
【0038】
図7に示すように、ルーバー10Dでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、600Hz付近では20dB以上と音圧レベルが高くなっている。すなわち、ルーバー10Dは、遮音性を有しており、帯域によっては遮音性が優れたものとなっている。
【0039】
ルーバー10Dは、ルーバー10C(
図4)と挿入損失を比較すると、ルーバー10Cのような音圧レベルが高い400Hzから1kHz付近までのブロード状ではなく、600Hz付近でのピーク状の特性を有している。このことから、ルーバー10C(
図4)のように対向した共鳴器15a、15bの他に羽根体11Cに共鳴器15cを設け、その連通部17cを共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けることで、遮音性の向上を図ることができる。
【0040】
(第4実施形態)
前記第1実施形態では、複数の共鳴器15a、15b、15cと、凹部21(反射面)とを備えたルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として共鳴器15cを備えていないルーバー10Eについて
図8および
図9を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図8はルーバー10Eの要部(羽根体11Eが3枚)の模式的断面図である。また、
図9はルーバー10Eの挿入損失特性図であり、考察のためルーバー10Dの挿入損失も示している。
【0041】
図8に示すように、ルーバー10Eは、第1面12および第2面13を有する羽根体11Eを複数備えている。ルーバー10Eでは、隣り合う羽根体11Eの第1面12と第2面13との間により通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11Eには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15bが設けられている。ルーバー11Eは羽根体11Eに室30を備えている。室22、30によって共鳴器15a、15bが隔てられている。また、隣り合う羽根体11Eの上側の羽根体11Eの共鳴器15bの連通部17bと、下側の羽根体11Eの共鳴器15aの連通部17aとが向かい合っている。ここで、ルーバー10Eでは、ルーバー10Aと同様、羽根体11Eの第2面13から凹む凹部21が設けられている。
【0042】
図9に示すように、ルーバー10Eでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、500Hzから2kHz付近まで10dB以上と音圧レベルが高くなっている。すなわち、ルーバー10Eは、遮音性を有しており、帯域によっては遮音性が優れたものとなっている。
【0043】
ルーバー10Eは、ルーバー10D(
図6)と挿入損失を比較すると、500Hzから800Hz付近までの間で一旦低下するが、800Hzから4kHz付近の帯域が高くなっている。このことから、ルーバー10Eのように凹部21(反射面)を備えることで、高音域での遮音性の向上を図ることができる。
【0044】
(第5実施形態)
前記第1実施形態では、上下で隣り合う羽根体11にて面12、13の垂直方向に延在する連通部17a、17bを有する共鳴器15a、15bを向かい合わせたルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として垂直方向に延在する連通部17bではなく、面13の傾斜方向に延在させた連通部17dを有する共鳴器15dを備えるルーバー10Fについて
図10および
図11を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図10はルーバー10Fの要部(羽根体11Fが3枚)の模式的断面図である。また、
図11はルーバー10Fの挿入損失特性図であり、考察のためルーバー10Aの挿入損失も示している。
【0045】
図10に示すように、ルーバー10Fは、第1面12および第2面13を有する羽根体11Fを複数備えている。ルーバー10Fでは、隣り合う羽根体11Fの第1面12と第2面13との間により通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11Fには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15c、15dが設けられている。
【0046】
具体的には、共鳴器15aの連通部17aの開口端18aが第1面12から開口し、共鳴器15dの連通部17dの開口端18dおよび第3共鳴器15cの連通部17cの開口端18cが第2面13から開口している。ここで、連通部17dの延在方向は、羽根体11Fの第2面13に対して傾斜方向(垂直方向でない)であり、上側の羽根体11Fの共鳴器15dの連通部17dが下側の羽根体11Fの共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けられている。
【0047】
図11に示すように、ルーバー10Fでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、400Hz付近と800Hz付近では20dB以上と音圧レベルが高くなっている。すなわち、ルーバー10Fは、遮音性を有しており、帯域によっては遮音性が優れたものとなっている。
【0048】
ルーバー10Fは、ルーバー10A(
図2)と挿入損失を比較すると、ルーバー10Aのような音圧レベルが高い500Hzから800Hz付近までのブロード状ではなく、400Hz付近および800Hz付近でのピーク状の特性を有している。このことから、ルーバー10Aのように対向した共鳴器15a、15bを設けることで、遮音性の向上を図ることができる。
【0049】
(第6実施形態)
前記実施形態1では、隣り合う上側羽根体11の共鳴器15b、15cの連通部17b、17cの両者が下側羽根体11の共鳴器15aの連通部15aの開口端18aに向けられたルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として共鳴器15cの連通部17cが共鳴器15aの開口端18aに向けられていないルーバー10Gについて
図12および
図13を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図12はルーバー10Gの要部(羽根体11Gが3枚)の模式的断面図である。また、
図13はルーバー10Gの挿入損失特性図であり、考察のためルーバー10Aの挿入損失も示している。
【0050】
図12に示すように、ルーバー10Gは、第1面12および第2面13を有する羽根体11Gを複数備えている。ルーバー10Gでは、隣り合う羽根体11Gの第1面12と第2面13との間により通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11Gには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15b、15eが設けられている。
【0051】
具体的には、共鳴器15aの連通部17aの開口端18aが第1面12から開口し、共鳴器15bの連通部17bの開口端18bおよび共鳴器15eの連通部17eの開口端18eが第2面13から開口している。ここで、連通部17eの延在方向は、羽根体11Gの第2面13に対して垂直方向であり、上側羽根体11Gの共鳴器15eの連通部17eが下側羽根体11Gの共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けられていない。また、連通部17aの延在方向は、羽根体11Gの第1面12に対して垂直方向であり、下側羽根体11Gの共鳴器15aの連通部17aが上側羽根体11Gの共鳴器15eの連通部17eの開口端18eに向けられていない。
【0052】
図13に示すように、ルーバー10Gでは、1/3オクターブバント中心周波数が300Hzから5kHz付近までの範囲で音圧レベルに変化がみられ、特に、600Hz付近では30dB以上と音圧レベルが高くなっている。すなわち、ルーバー10Gは、遮音性を有しており、帯域によっては遮音性が優れたものとなっている。
【0053】
ルーバー10Gは、ルーバー10A(
図2)と挿入損失を比較すると、500Hzから800Hz付近の帯域で音圧レベルが高いものの、1kHz付近から4kHz付近の帯域で音圧レベルが低くなっている。このことから、ルーバー10Gの共鳴器15eのように共鳴器15aの開口端18aへ連通部17eが向かっていなくとも少なくとも共鳴器15bの連通部17bが共鳴器15aの開口端18aに向かっていれば、遮音性の向上を図ることができる。
【0054】
(第7実施形態)
前記第1実施形態では、ルーバー10(10A、10B)として空間構造体を説明した。本発明に係る実施形態では、空間構造体の他の例として排気システム10Hについて
図14を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。この排気システム10Hは、排気路14a(区画空間)を有している。
図14は排気システム10Hの模式的断面図(排気路14aの延在方向に対して直交させたもの)である。
【0055】
図14に示すように、排気システム10Hは、複数の共鳴器15f、15g、15hを備えている。これら共鳴器15f、15g、15h(代表して共鳴器15と記す場合がある。)は、いわゆるヘルムホルツ共鳴器であり、特定の周波数帯で吸音する(音のエネルギーを損失させる)機能を有している。これにより、排気システム10Hは、排気性を確保しつつ、遮音性を向上させることができる。
【0056】
共鳴器15f、15g、15hは、それぞれ容器としての空洞部16f、16g、16h(代表して空洞部16と記す場合がある。)と、容器開口部(首部)としての連通部17f、17g、17h(代表として連通部17と記す場合がある。)とを備えている。連通部17f、17g、17hは、それぞれ排気路14aに通じる一方端(開口端18f、18g、18h)および空洞部16f、16g、16hに通じる他方端を有している。
【0057】
排気システム10Hでは、共鳴器15gの連通部17gおよび共鳴器15hの連通部17hが共鳴器15fの連通部17fの開口端18f(一方端)に向けられている。また、共鳴器15fの連通部17fが共鳴器15gの連通部17gの開口端18g(一方端)に向けられている。なお、共鳴器15fの連通部17fが共鳴器15hの連通部17hの開口端18h(一方端)に向けられていない。
【0058】
排気路14aにおいて、その径による領域の他、共鳴器15fの空洞部16fと共鳴器15gの空洞部16gとの間の距離による領域が形成されている。同様に、共鳴器15fの空洞部16fと共鳴器15hの空洞部16hとの間の距離による領域が形成されている。このように共鳴器15の配置によっても排気システム10Hの遮音性の向上を図ることができる。
【0059】
(第8実施形態)
前記第1実施形態では共鳴器15に隣接する室22、23、24を備えるルーバー10として空間構造体を説明した。本実施形態では、連通部17a、17b、17cの一部を構成する室23a、23bを備えるルーバー10aについて
図15を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図15はルーバー10aの要部(羽根体11aが3枚)の模式的断面図である。
【0060】
図15に示すように、ルーバー10aは、第1面12および第2面13を有する羽根体11aを複数備えている。ルーバー10aでは、上下に隣り合う羽根体11aの第1面12と第2面13との間に通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11aには、空洞部16a、16b、16cと連通部17a、17b、17cとをそれぞれ有する共鳴器15a、15b、15cが設けられている。
【0061】
具体的には、共鳴器15aの連通部17aの開口端18aが第1面12から開口し、共鳴器15bの連通部17bの開口端18bおよび共鳴器15cの連通部17cの開口端18cが第2面13から開口している。ここで、連通部17cの延在方向は、羽根体11aの第2面13に対して傾斜方向(垂直方向でない)であり、上側の羽根体11aの共鳴器15bの連通部17bは下側の羽根体11aの共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向けられている。なお、本実施形態であるルーバー10aの共鳴器15の連通部17の幅(前述の共鳴周波数f0の式中の幅bを参照)は第1実施形態であるルーバー10Aの連通部17より狭くなっている。また、ルーバー10aの連通部(首部)の長さ(同式中の長さtを参照)はルーバー10Aより長く設けられている。
【0062】
共鳴器15aと15cとの間には、空洞部16aと16cとを隔てる区画壁25aが設けられている。空洞部16aと16cとの間に室(空洞部)を設けずに、空洞部16aと16cとを隔てる区画壁25aを設けることで、空洞部16aと16cの体積を調整したり、連通部17aの幅bや長さtを調整したりすることができる。これにより所定の帯域に合わせて遮音性を向上させることができる。なお、ルーバー10aの断面視において、連通部17aの内壁の一方側は区画壁25aで構成され、連通部17aの内壁の他方側は通気路14に開口していない室24a(空洞部)で構成されている(仕切られている)。
【0063】
共鳴器15bと15cとの間には、空洞部16bと16cとを隔てる区画壁25dが設けられている。また、その区画壁25dの一部として、室23aが設けられている。室23aは、共鳴器16bの連通部17bの内壁の一部および共鳴器16cの連通部17cの内壁の一部を構成している。この室23aは、通気路14に開口していない空洞部である。空洞部16bと16cとの間を完全に区画する室(空洞部)を設けるのではなく、連通部17b、17cの一部として室23aを設けることで、空洞部15bと15cの体積を容易に調整したり、連通部17bと17cの幅bや長さtを調整したりすることができる。このため、所定の帯域に合わせて遮音性を向上させることができる。
【0064】
また、ルーバー10aは、羽根体11aの第2面13から凹む凹部21aを備えている。凹部21aは、羽根体11aにおいて通気路14の外に向かって露出する底面を有している。音源側(取付部20側)に形成されている。音の高音域は、反射しやすいという性質があるので、凹部21aの底面に沿った長さを長くする(奥行きを増やす)ことで通気路14を伝搬する音の高音域を主に反射することができる。ルーバー10aでは断面視において、凹部21aの底面は平坦面を組み合わせた形状をしている。また、ルーバー10aは、羽根体11aの第2面13から凹み、凹部21aと共鳴器15cの連通部17cの開口端18cとの間に凹部51を備えている。この凹部51は、凹部21aより奥行きが浅く形成されている。凹部51と凹部21aとは区画壁51aによって仕切られている。
【0065】
前述したように共鳴器15bと15cの開口端18bと18cを共鳴器15aの開口端18aへ向けたことにより共鳴器15の遮音性を上げる事ができる。また、室23a、24aにより共鳴器15の二次的な共振現象の発生を抑制することで遮音性が低下することを防いでいる。さらに、室23a、24aを有することで共鳴器15の空洞部16の体積や連通部17の幅や長さを調整することで所定の帯域を遮音することができる。また、断面視における凹部21a、凹部51の底面の長さ(奥行き)を調整することができる。本実施形態におけるルーバー10aの凹部21aでは低音域を吸音するよう前記第1実施形態のルーバー10Aの凹部21より長く設けている。したがって、ルーバー10aは、遮音性に関し、高音域から低音域までの広い帯域を調整することができる。
【0066】
(第9実施形態)
前記第8実施形態では、ルーバー10aの断面視において、連通部17aの対向する内壁の一方側を空洞部16cで構成(区画)し、その他方側を室24a(通気路14に開口していない空洞部)で構成(区画)した場合について説明した。本実施形態では、その室24aを空洞部16a側に開口させて空洞部16aの体積を拡張させたルーバー10bについて
図16を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図16はルーバー10bの要部(羽根体11bが3枚)の模式的断面図である。
【0067】
図16に示すように、ルーバー10bは、第1面12および第2面13を有する羽根体11bを複数備えている。ルーバー10bでは、隣り合う羽根体11bの第1面12と第2面13との間に通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11bには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15b、15cが設けられている。本実施形態では、ルーバー10bの断面視において、連通部17aの対向する内壁の一方側を空洞部16cと区画し、連通部17aの他方側の内壁25eを空洞部16a内に入り込ませた構成としている。このような構成とすることで、共鳴器15aの空洞部16aの体積を調整することができ、所定の帯域を遮音することができる。
【0068】
(第10実施形態)
前記第8実施形態では、ルーバー10aの共鳴器15内にグラスウールなどの吸音材を設けていない場合について説明した。本実施形態では、吸音材26を備えるルーバー10cについて
図17を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図17はルーバー10cの要部(羽根体11cが3枚)の模式的断面図である。
【0069】
図17に示すように、ルーバー10cは、第1面12および第2面13を有する羽根体11cを複数備えている。ルーバー10cでは、上下に隣り合う羽根体11cの第1面12と第2面13との間に通気路14(区画空間)が複数構成されている。羽根体11cには共鳴器15a、15b、15cが設けられている。また、ルーバー10cは、共鳴器15a、15b、15cの空洞部16a、16b、16c内に設けられた吸音材26(例えばグラスウール)を備えている。このように吸音材26を用いることで、ルーバー10cの遮音性を向上させることができる。
【0070】
(第11実施形態)
本実施形態では、羽根体11dを複数備え、その第1面12に凹部52が形成されたルーバー10dについて
図18を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図18はルーバー10dの要部(羽根体11dが3枚)の模式的断面図である。
【0071】
図18に示すように、共鳴器15aの連通部17aおよび共鳴器15bの連通部17bが一方から他方、他方から一方に向かって延在している。また、共鳴器15cの連通部17cが共鳴器15aの連通部17aの開口端18aに向かって延在している。ここで、ルーバー10dは、羽根体11dの第1面12から凹み、第1共鳴器15aの連通部17aの開口端18aよりも通気路14の外側へ連なる凹部52を備えている。
【0072】
この凹部52は、共鳴器15aの連通部17aよりも通気路14外側で、その連通部17aと隣接して設けられている。この凹部52により、連通部17aの通気路14外側の開口部18aが面取りされたようになり、共鳴器15cの連通部17cに対する開口部18aを広く開口させることができる。また、凹部52により、通気路14外側の開口部18aと凹部52の底面とが直角となるよう調整することもできる。このようなルーバー10dによる共鳴器15a、15b、15cの配置によっても、遮音性の向上を図ることができる。
【0073】
(第12実施形態)
前記第8実施形態では、例えば共鳴器15aの連通部17a(首部)を空洞部16から突出させ、共振周波数f
0の長さtを調整する場合について説明した。本実施形態では、連通部17aを空洞部16aに入り込ませてその長さtを調整したルーバー10eについて
図19を参照して、主に前記実施形態と相違する点を説明する。
図19はルーバー10eの要部(羽根体11eが3枚)の模式的断面図である。
【0074】
図19に示すように、ルーバー10eは、面12、13を有する羽根体11eを複数備えている。ルーバー10eでは、上下に隣り合う羽根体11eの面12と面13との間に通気路14が複数構成されている。羽根体11eには、空洞部16と連通部17とをそれぞれ有する共鳴器15a、15b、15cが設けられている。
【0075】
本実施形態では、共鳴器15aの連通部17aの一部53がその空洞部16aに入り込む(進出する)ように設けられている。また、共鳴器15bの連通部17bの一部54がその空洞部16bに入り込むように設けられている。すなわち、連通部17の長さtを長くすることで共鳴周波数f0を低音域側へ調整することができる。このようなルーバー10eによる連通部17a、17bの調整によっても、遮音性の向上を図ることができる。
【0076】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0077】
前記実施形態では、空調室外機などの設備機器の周囲に設けられる外装壁としてのルーバーに本発明に係る空間構造体を適用した場合について説明した。これに限らず、自動車の走行音、建築土木現場の作業音などの騒音が伝搬していくのを防止するために、その周囲に設けられる壁や、区画空間が延在するトンネルにも本発明に係る空間構造体を適用することができる。また、このように音源の周囲に空間構造体を設ける一方、騒音が伝搬してくるのを防止するために、例えば建物においては窓、換気口、排気口、ベランダ、バルコニーなどにも本発明に係る空間構造体を適用することができる。また、区画空間に伝搬する音の調整にも本発明に係る空間構造体を適用することができる。その際、空洞部から区画空間へ通じる連通部(首部)の開口形状は、スリット状に限らず、例えば円状とすることができる。
【0078】
前記実施形態では、アルミニウム合金から形成した押出材で空間構造体を構成する場合について説明した。これに限らず、樹脂やこれに剛性を確保するための繊維(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維など)を含有したものから形成されたプラスチック材で空間構造体を構成することもできる。繊維を含有するプラスチック材によれば、遮音性のほかに、軽量性、耐久性、撥水性、意匠性または電気絶縁性(電波障害抑制)の少なくともいずれかに優れた空間構造体を提供することができる。
【0079】
前記実施形態では、空間構造体に吸音材(例えば、グラスウールやロックウールなどの繊維質材や多孔質材)を用いていない場合も示している。吸音材を用いることで遮音性をより向上させることができる一方、吸音材を用いないことで部品点数を減らすことができ、また廃棄する際の環境負荷も低減することができる。
【0080】
前記実施形態では、凹部が断面視楕円曲線の曲面を有する場合について説明した。これに限らず、断面視で楕円はもちろん、円、放物線や双曲線などの曲面や平面、ならびひこれらの組み合わせとすることもできる。このような曲面部が反射面として機能し、音源側から伝搬してくる音を音源側に向かって反射させることができる。これにより、空間構造体の遮音性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0081】
10:ルーバー(空間構造体)、11:羽根体、12:第1面、13:第2面、14:通気路(区画空間)、15:共鳴器、16:空洞部、17:連通部、18:開口端、20:取付部、21:凹部。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されるルーバーであって、
前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口し、
隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられ、
前記第3共鳴器の連通部が前記第2面に対して傾斜方向において前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられている
ことを特徴とするルーバー。
【請求項2】
第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されるルーバーであって、
前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口し、
隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられ、
前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する凹部と、前記通気路に開口していない室と、を備え、
前記室が前記凹部の底面に隣接するように前記第1面側に設けられている
ルーバー。
【請求項3】
第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されるルーバーであって、
前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口し、
隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられ、
前記羽根体が、前記第2面から凹み、前記通気路外に向かって露出する第1凹部と、前記第2面から凹み、前記第1凹部と前記第3共鳴器の一方端との間の第2凹部とを備える
ルーバー。
【請求項4】
第1面およびこれとは反対の第2面を有する羽根体を複数備え、隣り合う前記羽根体の前記第1面と前記第2面との間により通気路が複数構成されるルーバーであって、
前記羽根体が、空洞部と、前記通気路と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第1共鳴器の連通部の一方端が前記第1面から開口し、前記第2および第3共鳴器の連通部の一方端が前記第2面から開口し、
隣り合う一方の前記羽根体の前記第2および第3共鳴器の連通部が、他方の前記羽根体の前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられ、
前記羽根体が、前記第1面から凹み、前記通気路外側に前記第1共鳴器の連通部と隣接する凹部を備える
ルーバー。
【請求項5】
前記羽根体が前記通気路に開口していない室を備え、
前記室が前記連通部に隣接するように前記第1面側又は前記第2面側に設けられている
請求項1~4のいずれか一項に記載のルーバー。
【請求項6】
区画空間を有する空間構造体であって、
空洞部と、前記区画空間と通じる一方および前記空洞部と通じる他方を有する連通部と、をそれぞれ有する第1、第2および第3共鳴器を備え、
前記第2および第3共鳴器の連通部が前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられ、
前記第2共鳴器の連通部の延在方向に対して前記第3共鳴器の連通部が傾斜し、前記第1共鳴器の連通部の一方端に向けられている
ことを特徴とする空間構造体。