(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121132
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】車両用のガス分析システム、および複数のそのガスシステムを有する装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20230823BHJP
B60H 1/24 20060101ALI20230823BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230823BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01N1/22 A
B60H1/24 661A
G01N1/00 A
G01N1/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006585
(22)【出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 201 704.8
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス アペル
(72)【発明者】
【氏名】レネ ザイデマン
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン キング
【テーマコード(参考)】
2G052
3L211
【Fターム(参考)】
2G052AA03
2G052AA34
2G052AB06
2G052AB13
2G052AB23
2G052AC12
2G052AC20
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA05
2G052BA14
2G052BA22
2G052CA02
2G052CA04
2G052CA35
2G052EA03
2G052FC04
2G052GA12
2G052GA23
2G052HA19
2G052JA08
2G052JA11
3L211BA12
3L211BA13
3L211DA04
3L211EA17
3L211FA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両用のガス分析システム、および複数のそのガス分析システムを有する装置に関する。
【解決手段】車両用のガス分析システム(10)は、以下を含む。車両乗員の呼気(1)および/または車両室内の周囲空気(1)中の物質を測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含む測定チャンバ(5)。測定チャンバ(5)を通して空気を搬送するように構成された少なくとも1つのファン(7)。粒子がシステム(10)に侵入することを防ぐように構成された少なくとも1つのフィルタ(2)。測定チャンバ(5)からの空気の逆流を、および/または車両室内からの周囲空気(1)の測定チャンバ(5)への逆流を、ブロックするように構成された少なくとも1つの第1一方向弁(6)。システム(10)をアクティブ化および非アクティブ化し、また所定の二酸化炭素の閾値が測定チャンバ(5)内で達せられたときに測定を開始する、制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のガス分析システム(10)であって、
車両乗員の呼気(1)および/または車両室内の周囲空気(1)中の物質を測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含む測定チャンバ(5)と、
前記システム(10)の出口開口部に配置され、前記測定チャンバ(5)を通して空気を搬送するように構成された少なくとも1つのファン(7)と、
前記システム(10)の入口開口部に配置され、粒子が前記システム(10)に侵入することを防ぐように構成された少なくとも1つのフィルタ(2)と、
前記測定チャンバ(5)と前記ファン(7)との間に配置され、前記測定チャンバ(5)からの空気の逆流を、および/または車両室内からの前記周囲空気(1)の前記測定チャンバ(5)への逆流を、ブロックするように構成された少なくとも1つの第1一方向弁(6)と、
前記測定チャンバ(5)を通して空気の搬送を調節および/または制御するように構成された制御装置であり、前記システム(10)をアクティブ化および非アクティブ化し、また所定の二酸化炭素の閾値が前記測定チャンバ(5)内で達せられたときに測定を開始するように構成された制御装置と、を含む、車両用のガス分析システム(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のガス分析システム(10)であって、前記フィルタ(2)と前記測定チャンバ(5)との間に配置され、空気が前記システム(10)に侵入することを防ぐように設計された第2一方向弁(3)を含み、前記制御装置は、前記測定チャンバ(5)内の空気の量および/または二酸化炭素の割合に応じて、前記第2一方向弁(3)を調節および/または制御するように構成されている、ガス分析システム(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス分析システム(10)であって、前記制御装置は、前記システム(10)を時間間隔でアクティブ化および/または非アクティブ化し、車両室内のセンサからの信号を読み取り、および/または評価し、前記信号中に検出された車両乗員の存在に、前記時間間隔を適合させるように構成されている、ガス分析システム(10)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のガス分析システム(10)であって、前記フィルタ(2)と、または請求項2を参照する前記第2一方向弁(3)と、前記測定チャンバ(5)との間に配置され、所定の物質が前記測定チャンバ(5)に侵入することを防ぐように構成された少なくとも1つの選択フィルタ(4)を含む、ガス分析システム(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のガス分析システム(10)であって、前記選択フィルタ(4)と前記ファン(7)との間に配置され、前記測定チャンバ(5)からの空気の逆流を、および/または前記周囲空気(1)の前記選択フィルタ(4)への逆流を、ブロックするように構成された第3一方向弁(9)を含み、前記制御装置は、測定後または時間間隔の後、前記第3一方向弁(9)を開き、前記第1一方向弁(6)を閉じ、前記ファン(7)を用いて前記選択フィルタ(4)を洗浄するように構成されている、ガス分析システム(10)。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のガス分析システム(10)であって、前記システム(10)は、車両換気システム(8)へのインターフェースを含み、前記車両換気システム(8)は、前記測定チャンバ(5)を通して空気を搬送し、粒子が前記システム(10)に侵入することを防ぎ、前記システム(10)を侵入した粒子から洗浄し、および/または請求項5を参照する前記選択フィルタ(4)を洗浄し、前記制御装置は、システムにしたがって前記車両換気システム(8)を調節および/または制御するように構成されている、ガス分析システム(10)。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載のガス分析システム(10)であって、前記選択フィルタ(4)は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、アンモニア、カンナビノイド、またはグアイアコールが前記測定チャンバ(5)に侵入することを防ぐ、ガス分析システム(10)。
【請求項8】
請求項1~7に何れか一項に記載のガス分析システムであって、前記センサは、前記呼気および/または前記周囲空気中の物質をレーザ分光法に従って測定する、または、物質を測定するために、化学抵抗材料、金属酸化物材料、または水晶発振器を含み、または、前記測定チャンバは、前述の技術のうちのいずれかの複数のセンサ、および/または前述のセンサの組合せを含む、ガス分析システム(10)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のガス分析システム(10)であって、加熱ユニットを含む、ガス分析システム(10)。
【請求項10】
複数の、請求項1~9の何れか一項に記載のガス分析システム(10)および評価ユニットを有する装置であって、前記ガス分析システム(10)は、並列および/または直列に配置され、前記評価ユニットは、各々のガス分析システム(10)の測定値を集中的に評価するように構成されている、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記ガス分析システム(10)は、異なる、請求項7に記載の選択フィルタ(4)を含み、前記評価ユニットは、空気中の複数の物質を評価するように構成されている、装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置であって、前記評価ユニットは、前記ガス分析システム(10)において測定される物質の差分測定用に構成されている、装置。
【請求項13】
請求項1~9の何れか一項に記載のガス分析システム(10)または請求項10~12の何れか一項に記載の装置であって、車両の、ステアリングホイールの領域に、または前記ステアリングホイールに、または前記ステアリングホイール内に配置可能な、ガス分析システム(10)または装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のガス分析システム、および複数のそのガス分析システムを有する装置に関する。
【0002】
以下の定義、説明、および実施形態は、開示される発明の主題全体に対して、各々の意味を保持し、また適用される。
【0003】
SAE J3016のLevel4までのアシストされた自動運転に対する運転者監視の重要性は、ますます高まっている。この場合、特に、アルコールまたは他の薬物の摂取による運転不適を早期に検出することが重要である。これに関連して、呼気の分析によって、運転者および/または車両乗員の生理的モニタリングを、完全に非接触で継続的に行うことが可能である。
【0004】
例えば、DE102020203584A1は、車両乗員の匂いを感知し反応するための、車両室内用の、処理ユニット、システム、およびコンピュータによって実施される方法を開示する。ファイルナンバー(Aktenzeichen)102021201498.4のドイツ特許出願は、トレースガスに基づく運転者監視を開示する。DE102018200003A1は、車両乗員の呼気を分析する方法を開示する。
【0005】
すべての車両にアルコールーインターロックーシステムを義務づけるという既存の法規制と、EUおよび米国の一部で進行中の大麻の合法化とによって、アルコールおよび大麻の乱用による運転者の障害を検出するための新たな解決策が必要とされている。主に1つの物質の検出に特化した、既に市場において確立されているガスベースのアルコール検出器および呼気アルコール制御のイモビライザとは対照的に、このために利用可能な同等の技術であって、複数の物質を検出可能であり、更に小型化された、可能な限り目立たずに車内に設置できる技術はまだ存在しない。
【0006】
この場合の1つの問題は、不所望な分子、および/または周囲の空気および呼気中の他の物質との交差反応が分析装置に到達し、検出対象物質の測定値が真実に反するものとなることである。異なる分子および/または物質のレーザ波スペクトルを重ね合わせると、対象物質の検出が不可能になる場合もある。
【0007】
そのために、フィルタ要素を使用することによって、不所望な分子、および/または他の物質との交差反応を、大幅に低減させることができる。しかしながら、この場合、フィルタ表面の汚染という問題が生じる。これによって、測定結果が使用不可能となり、匂い検出システムの摩耗が早まり、メンテナンスの頻度が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE102020203584A1
【特許文献2】ファイルナンバー(Aktenzeichen)102021201498.4のドイツ特許出願
【特許文献3】DE102018200003A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前述の問題を解決する、車両用のガス分析システムを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の主題が、この課題を解決する。本発明の有利な構成は、定義、従属請求項、図面、および好適な実施形態の記載から明らかである。
【0011】
本発明は、車両用のガス分析システムを提供する。ガス分析システムは、以下を含む。
車両乗員の呼気および/または車両室内の周囲空気中の物質を測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含む測定チャンバ。
システムの出口開口部に配置され、測定チャンバを通して空気を搬送するように構成された少なくとも1つのファン。
システムの入口開口部に配置され、粒子がシステムに侵入することを防ぐように構成された少なくとも1つのフィルタ。
測定チャンバとファンとの間に配置され、測定チャンバからの空気の逆流を、および/または車両室内からの周囲空気の測定チャンバへの逆流を、ブロックするように構成された少なくとも1つの第1一方向弁。
測定チャンバを通して空気の搬送を調節および/または制御するように構成された制御装置であり、システムをアクティブ化および非アクティブ化し、また所定の二酸化炭素の閾値が測定チャンバ内で達せられたときに測定を開始するように構成されている、制御装置。
【0012】
ガス分析システムは、例えば、測定チャンバを通って搬送される空気中に含まれる体臭中の物質を同様に測定することができる。体臭には、人から皮膚を介する、また例えば口臭のように他の体の開口部からの、すべての匂いのある身体の蒸気が含まれる。呼気および/または体臭中の物質は、アルコール、コカイン、アンフェタミン、カンナビノイド、モルヒネ、メサドン、アンモニア、アセトン、またはこれらの物質の組み合わせを示唆する物質であり得る。これらの物質は、体内での正常な生物学的または病理学的プロセスを示すことができるバイオマーカーである。例えば、アンモニア臭は腎臓の病気を示す。アセトン臭は糖尿病を示す。呼気および/または体臭中のこれらの物質を決定する利点は、呼吸気中のアルコール含有量を決定する際に、例えば吹管に頼るために不快である化学的方法、または例えば吸着方法のような表面接触方法、または侵襲的方法を、使用しないことである。呼吸気およびその他の体臭は、継続的に放出される。これらの物質は、例えば、揮発性有機化合物、略称でVOC(volatile organic compounds)とも称される。VOCとしては、例えば、アセトン、エタノール、イソプレン、ノナナール、デカナール、α‐ピネン、酪酸エチルエステル、およびブタナール、エタナール、プロパナール、および酢酸n‐プロピルエステルが挙げられる。VOCは、疾病によってタンパク質の変化、細胞の変化、または代謝の変化が引き起こされると、生体において発生する。例えば、SARS-Cov‐2の感染者では、特徴的なタンパク質の変化、また代謝の変化が観察された。呼吸および/または体臭を介して排出されるVOCは、疾病の特徴となり得るため、バイオマーカーとして機能することができる。
【0013】
測定チャンバは、多角形、楕円形、または円形の断面を含み、内側に反射するように構成された壁を有することができる。測定チャンバの壁の内側が反射するように構成されているため、例えばレーザ分光的にセンサが物質を測定するために用いるレーザビームは、測定チャンバ内部において反射面で数回反射される。これによって、測定チャンバの直径よりも大きい経路長を、測定チャンバ内でカバーすることができる。これによって、車両室内に配置可能でサイズがコンパクトである、車両内のガス分析用の小型化された測定チャンバが実現される。これによって、サイズが小型であるにもかかわらず、高い感度を有し、したがって、車両内の空気中の物質を測定するのに適した測定チャンバが提供される。多角形の形状に配置された反射面によって、反射角を所望の値に設定することが可能である。
【0014】
レーザ分光法の場合、センサは、例えば、フォトダイオードセンサである。一態様によれば、測定チャンバは、測定チャンバ内にレーザビームを放射するレーザを含む。一態様によれば、赤外線範囲からのレーザビームが、測定チャンバ内に放射される。
【0015】
ファンを用いて、システムを通る空気流を調節および/または制御することができる。ファンは、圧力差と吸引空気流を生成する。ファンは、換気装置であり得る。
【0016】
フィルタは、例えば、粗い汚染粒子、またはウイルスもしくはバクテリアがシステムに到達することを防ぐ。フィルタによって濾過される粒子は、例えば、汚れの粒子、有害ガス、微細な塵、ウイルス、バクテリア、または香水などの特殊な匂いであり得る。
【0017】
第1一方向弁は、例えば、測定チャンバの汚染を防ぐ。一方向弁は、電気的、磁気的、または電磁気的に、調節および/または制御することができる。
【0018】
制御装置は、例えば、電気制御ユニットとも称される電子制御ユニット、または呼吸気および/または周囲空気を吸い込み、選択フィルタによって吹き出させ、および/または空気吸引流を生成する対応するロジックを有する特定用途向け集積回路であり得る。一態様によれば、制御装置は、車両の車載ネットワークに組み込まれる。
【0019】
二酸化炭素の閾値は、運転者の呼気濃度が十分であることを示す信号である。
【0020】
一態様によれば、ガス分析システムは、ハウジングに統合されている。ハウジングは、車両に統合可能である。例えば、ガス分析システムまたはハウジングは、車両に統合すべく対応して小型化されている。
【0021】
本発明によるガス分析システムによって、車両乗員、特に車両運転者の状態を、車を運転する際の疾病および障害に関して決定することができる。対応する物質が、各々所定の閾値を超えて決定される場合、特に走行開始時に、一態様によれば、例えばアルコロックまたはアルコールイグニッションロックのようなイモビライザが作動される。このイモビライザは、車両運転者の呼吸気のアルコール含有量の既定の値から、車両の始動を阻止する。
【0022】
更なる態様によれば、本発明は、複数の本発明によるガス分析システムおよび評価ユニットを既に有する装置を提供する。ガス分析システムは、並列および/または直列に配置されている。評価ユニットは、各々のガス分析システムの測定値を集中的に評価するように構成されている。
【0023】
評価ユニットは、特定用途向け集積回路、略称ASIC、ロード可能な論理回路を有する集積回路、略称FPGA、中央コンピュータ、略称CPU、グラフィックスプロセッサなどのハードウエアアクセラレータ、略称GPUなどを含むことができる。評価ユニットは、マイクロコントローラまたは制御装置であり得る。
【0024】
更なる一態様によれば、ガス分析システムは、フィルタと測定チャンバとの間に配置され、空気がシステムに侵入することを防ぐように構成された第2一方向弁を含む。制御装置は、測定チャンバ内の空気の量および/または二酸化炭素の割合に応じて、第2一方向弁を調節および/または制御するように構成されている。第2一方向弁は、例えば、通常は閉鎖される一方向弁である。第2一方向弁は、特に、システムが使用されていない場合、または輸送されている場合に、空気がシステムに侵入することを防ぐことができる。体積流量および/または二酸化炭素の割合に応じて第2一方向弁を調節および/または制御するために、制御装置は、対応するロジックを含む。これによって、第2一方向弁をトリガして、呼気の既定の部分のみをシステムに流入させることができる。
【0025】
更なる態様によれば、制御装置は、システムを時間間隔でアクティブ化および/または非アクティブ化し、車両室内のセンサからの信号を読み取り、および/または評価し、信号中に検出された車両乗員の存在に、時間間隔を適合させるように構成されている。
【0026】
システムがアクティブである間、ファンは、測定チャンバ内で所定の二酸化炭素の閾値が検出されたとされるまで、システムを通して空気を吸引することができる。この二酸化炭素の閾値が検出された場合、物質の分析のために測定チャンバで実測が行われる。一態様によれば、この場合、ファンは、例えば制御装置によって、測定プロセスの時間は非アクティブ化される。分析が完了すると、ファンは、空気を測定チャンバから抜き、車両室内および/または車両換気システムへ排出することができる。
【0027】
車両室内のセンサは、例えば車両乗員の画像を撮影する2D/3D内部カメラ、例えばアクセルペダルセンサなどのペダルセンサ、車両スタートストップセンサ、またはヒューマンマシンインターフェースとも称される、車両のヒューマンマシンユーザインターフェースの一部であり得る。
【0028】
更なる態様によれば、ガス分析システムは、フィルタまたは第2一方向弁と、測定チャンバとの間に配置され、所定の物質が測定チャンバに侵入することを防ぐように構成された少なくとも1つの選択フィルタを含む。選択フィルタは、例えば、不所望な分子および/または空気中の他の物質との交差反応が測定チャンバに到達し、検出対象物質の測定値が真実に反することを可能とする。
【0029】
選択フィルタは、呼気または周囲空気のような複雑なガス混合物中の物質の選択を可能にする。選択フィルタによって、例えば、感知物質との反応性を、または例えば分子サイズおよび/または表面親和性などの標的物質の付加的な特性を、用いることができる。例えば、選択フィルタは、活性炭、シリカゲル、または多孔性ポリマーなどの調整可能な特性を有する吸着剤、ゼオライトおよび有機金属化合物のような微孔性材料、または不均一な触媒を含むことができる。Jan van den Broekらによる論文「フィルタによって可能にされた高度に選択的なガスセンシング(Highly selective gas sensing enabled by filters)」、DOI: 10.1039/D0MH01453B(Review Article)、Mater. Horiz., 2021, 8, 661-684は、選択フィルタに対する概要を開示する。
【0030】
更なる態様によれば、ガス分析システムは、選択フィルタとファンとの間に配置され、測定チャンバからの空気の逆流を、および/または周囲空気の選択フィルタへの逆流を、ブロックするように構成された第3一方向弁を含む。制御装置は、測定後または時間間隔の後、第3一方向弁を開き、第1一方向弁を閉じ、ファンを用いて選択フィルタを洗浄するように構成されている。第3一方向弁は、逆流する空気によって選択フィルタが汚染されることを防ぐ。
【0031】
ファンを用いて空気を吸い込むことによって、また一方向弁の切り替え位置によって、洗浄効果が生ずる。この場合、ガス分析システム全体を通して空気が吸引され、吸引と、それに伴って空気の流れが通過することとによって、フィルタが洗浄される。
【0032】
このように、ガス分析システムは、特殊な配置である様々なフィルタを、フィルタのインテリジェントな自動セルフクリーニングおよび弁の特殊な配置と組み合わせている。
【0033】
更なる態様によれば、システムは、車両換気システムへのインターフェースを含む。車両換気システムは、測定チャンバを通して空気を搬送し、粒子がシステムに侵入することを防ぎ、システムを侵入した粒子から洗浄し、および/または選択フィルタを洗浄する。制御装置は、システムにしたがって車両換気システムを調節および/または制御するように構成されている。車両換気システムは、車両のファンまたは車両空調システムであり得る。車両換気システムは、システムのファンを支承することができ、一態様によればこれを代替することもできる。車両換気システムは、通常、空気を洗浄および/または濾過するための構成要素を含む。したがって、システムも、これらの構成要素を共に使用することができる。
【0034】
更なる態様によれば、選択フィルタは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、アンモニア、カンナビノイド、またはグアイアコールが測定チャンバに侵入することを防ぐ。
【0035】
グアイアコールは、既定の温度で反応し、ガス状になる物質である。発生するガスを、測定チャンバにおいて検出可能であり、例えばケーブル火災に対するような、早期の火災検知として使用することができる
【0036】
更なる態様によれば、センサは、呼気および/または周囲空気中の物質をレーザ分光法に従って測定する、または、物質を測定するために、化学抵抗材料、金属酸化物材料、または水晶発振器を含む。または、測定チャンバは、前述の技術のうちのいずれかの複数のセンサ、および/または前述のセンサの組合せを含む。レーザ分光法は、吸収分光法および発光分光法を含む。
【0037】
更なる態様によれば、ガス分析システムは、加熱ユニットを含む。加熱ユニットは、測定チャンバおよび/またはガス分析システムを加熱する。これによって、測定チャンバ内での凝結が回避される。
【0038】
本発明による装置の更なる実施形態において、ガス分析システムは、様々な、本発明による選択フィルタを含む。評価ユニットは、空気中の複数の物質を評価するように構成されている。これによって、例えば、アルコール、エタノール、大麻、指標物質のグアイアコールの助けによる火、メタノール、イソプロパノール、または二酸化炭素を選択的に測定可能であり、相互相関を回避することができる。
【0039】
更なる態様によれば、評価ユニットは、ガス分析システムにおいて測定される物質の差分測定用に構成されている。これによって、測定精度が高まり、測定値が検証可能になる。
【0040】
更なる態様によれば、本発明によるガス分析システム、または本発明による装置は、車両の、ステアリングホイールの領域に、またはステアリングホイールに、またはステアリングホイール内に、配置可能である。これによって、車両乗員とガス分析システムとの距離が、例えば20cmに低減され、呼気中の物質を測定するのに有利である。配置点は、例えば、コックピット、ステアリングホイールリム、ステアリングホイールスポーク、ステアリングコラム、またはホーンボタンである。例えば、その中にガス分析システムが統合されたハウジングは、ステアリングコラムに配置されている。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【0042】
【発明を実施するための形態】
【0043】
示されているすべての弁は、指定された流れ方向に従った一方向弁である。
【0044】
呼吸気および/または周囲空気1は、システム10に流れ込む。システム10は、例えば自動車、バス、トラック、ピープルムーバなどの車両において、例えばステアリングホイールの領域、ステアリングホイール自体などの様々な場所に、ステアリングホイールの後ろの別個のハウジングとして、統合することができる。また任意選択で、システム10は、例えば2D/3Dカメラなどの他のセンサと組み合わせることができる。
【0045】
フィルタ2は、粗い空気がシステムに到達することを防ぐ。
【0046】
通常は閉鎖される第2一方向弁3は、例えば、システムが使用されていない場合、または輸送されている場合に、空気がシステム10に侵入することを防ぐ。第2一方向弁3は、例えば、流れまたは二酸化炭素を制御して、呼気の既定の部分のみをシステムに流入させるために、外部ロジックの助けでトリガすることができる。選択フィルタ4は、特別に定義された分子/物質が、測定チャンバ5に到達することを防ぐ。
【0047】
呼吸気および/または周囲空気1は、ファン7によってシステム10内に吸引される。この場合、第1一方向弁6は、空気が、例えば車両室内から、または車両換気/空調システム8から、測定チャンバ5に逆流可能となるのを防ぎ、これによって測定チャンバ5の汚染を防ぐ。
【0048】
例えば、空気吸い込みプロセス、測定チャンバ10内の分析などの、システム10のアクティブ化および/または非アクティブ化のための時間間隔は、制御装置を介して個別に調節可能であり、また、例えば2D/3Dカメラ、アクセルペダルセンサ、車両スタートストップセンサ、HMIシステムなどの他のセンサによって補足することができる。システム10がアクティブである間、ファン7は、システム10を通して呼吸気/室内空気1を吸引し、測定チャンバ5内で所定の二酸化炭素の閾値が検出されたとされるまで、それを分析する。この二酸化炭素の閾値は、運転者の呼気濃度が十分であることを示す信号である。この二酸化炭素の閾値が検出された場合、物質の分析のために測定チャンバ5で実測が行われる。任意選択で、ファン7を短時間中断することができる。
【0049】
測定チャンバ5は、異なるセンサで構成することができる。また測定チャンバ5は、例えば、レーザ分光、金属酸化物および電気化学抵抗器、または水晶発振器などの異なる技術に基づくことができる。
【0050】
代替的に、呼吸気および/または周囲空気1を吸い込み、選択フィルタ4で吹き出し、および/または空気吸引流を生成する、ファン7のタスクを、車両換気/空調システム8によって引き継ぐこともできる。この場合、車両換気/空調システム8は、追加的に、周囲空気1および/またはシステムの排気から、汚れの粒子、有害ガス、微細な塵、または匂いを浄化/濾過することもできる。
【0051】
分析が完了すると、空気は、測定チャンバ5から抜かれ、車両室内および/または車両換気/空調システム8に排出される。測定後、またはあらかじめ規定された間隔の後、第3一方向弁9が開かれ、第1一方向弁6が閉じられ、選択フィルタ4は、ファン7または車両換気/空調システム8で粒子/分子を吹き出すことで洗浄される。特に、第3一方向弁9は、逆流する空気によって選択フィルタ4が汚染されることを防ぐ。
【0052】
また、システム10は、多重、並列、または直列構成で作動させることができる。その結果、異なって適合された選択フィルタ4が、空気中の異なる分子を濾過し、異なる測定チャンバ5においてそれらを測定および分析する。これによって、システム10において、呼気および/または周囲空気1中の複数の物質を検出できる。これらの物質は、例えば、アルコール、エタノール、大麻、指標物質のグアイアコールの助けによる火、メタノール、イソプロパノール、または二酸化炭素であり得る。同様に、並列または直列構成によって、測定チャンバ5における分子の差分測定が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 ガス分析システム
1 呼気/周囲空気
2 フィルタ
3 第2一方向弁
4 選択フィルタ
5 測定チャンバ
6 第1一方向弁
7 ファン
8 車両換気システム
9 第3一方向弁
【外国語明細書】