(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121141
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】学習支援方法、および学習支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230823BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01N30/86 Q
G01N30/86 D
G01N30/86 B
G01N30/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020131
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2022023678
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】知野見 健太
(72)【発明者】
【氏名】杉村 佳織
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慎司
(57)【要約】
【課題】推定モデルを更新するための高品質の教師データを入力することをユーザに促進することができる。
【解決手段】第1クロマトグラムを取得すること(ステップS2)と、第1クロマトグラム画像を表示すること(ステップS6)と、クロマトグラムDBから、第1クロマトグラムと同一または類似である第2クロマトグラムと、該第2クロマトグラムのピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することと(ステップS4)、第2クロマトグラム画像と、第2ピーク情報画像とを表示すること(ステップS8)と、第1クロマトグラムのピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けること(ステップS10)と、第1クロマトグラムと第1ピーク情報とに基づいて推定モデルを学習すること(ステップS14)とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させる学習支援方法であって、
分析装置により作成された第1信号波形を取得することと、
前記第1信号波形を表示装置に表示することと、
複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、前記第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することと、
前記第2信号波形と、前記第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することと、
前記第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることと、
前記第1信号波形と前記第1ピーク情報とに基づいて前記推定モデルを学習することとを備える、学習支援方法。
【請求項2】
前記記憶装置から前記第2信号波形と前記第2ピーク情報とを取得することは、
前記第1信号波形と、前記複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶信号波形のそれぞれとの第1類似度を算出することと、
前記第1類似度が第1閾値以上である記憶信号波形を、前記第2信号波形として取得することとを含み、
前記第1信号波形を前記表示装置に表示することと、
前記第2信号波形と、前記第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することとの後に、
前記第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける、請求項1に記載の学習支援方法。
【請求項3】
前記第1信号波形を前記表示装置に表示することと、
前記第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることとの後に、
前記記憶装置から前記第2信号波形と前記第2ピーク情報とを取得し、
前記記憶装置から前記第2信号波形と前記第2ピーク情報とを取得することは、
前記第1信号波形と、前記複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶信号波形の各々との第1類似度を算出することと、
前記第1ピーク情報と、前記複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶ピーク情報の各々との第2類似度を算出することと、
前記第1類似度が第1閾値以上である信号波形であって、かつ前記第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶信号波形を、前記第2信号波形として取得することとを含む、請求項1に記載の学習支援方法。
【請求項4】
前記第2信号波形は、高類似信号波形と、該高類似信号波形よりも前記第1類似度が低い低類似信号波形とを含み、
前記第2信号波形と前記第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することは、前記高類似信号波形を示す波形画像を前記低類似信号波形を示す波形画像よりも優先して表示することを含む、請求項2または請求項3に記載の学習支援方法。
【請求項5】
前記第2信号波形と、前記第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することは、前記第2信号波形の前記第1類似度を該第2信号波形を示す第2信号波形画像に対応付けて表示することを含む、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項6】
前記第1類似度を算出することは、前記第1信号波形の第1特徴量と、前記記憶信号波形の該第1特徴量と同一種別の第2特徴量とに基づいて、前記第1類似度を算出することを含む、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項7】
前記第1類似度を算出することは、前記第1信号波形により示される分析結果と、前記記憶信号波形により示される分析結果とに基づいて、前記第1類似度を算出することを含む、請求項2~請求項6のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項8】
前記学習支援方法は、前記第1ピーク情報を示す第1ピーク情報画像を前記表示装置に表示することをさらに備える、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項9】
前記第1ピーク情報画像を前記表示装置に表示することは、該第1ピーク情報画像により示される第1ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す第1特徴量画像を表示することを含み、
前記第2信号波形と前記第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することは、該第2ピーク情報画像により示される第2ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す第2特徴量画像を表示することを含む、請求項8に記載の学習支援方法。
【請求項10】
前記学習支援方法は、前記推定モデルを用いて検出された前記第1信号波形のピークを特定するための検出ピーク情報を示す検出ピーク情報画像を表示することをさらに備え、
前記検出ピーク情報画像と、前記第1信号波形とを表示した後に、前記第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項11】
前記学習支援方法は、前記第1信号波形が前記表示装置に表示されている状態で、第1点と第2点とのユーザによる入力を受付けることをさらに備え、
前記第2ピーク情報画像は、線画像であり、
前記第2信号波形と前記線画像とで囲まれている領域が、前記第2信号波形のピークを示す領域であり、
前記第1ピーク情報により特定されるピークの領域は、前記第1点と前記第2点とを結ぶ線と、前記第1信号波形に含まれる線とで囲まれた領域である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の学習支援方法。
【請求項12】
分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させる学習支援プログラムであって、
前記コンピュータに、
分析装置により作成された第1信号波形を取得することと、
前記第1信号波形を表示装置に表示することと、
複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、前記第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することと、
前記第2信号波形と、前記第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを前記表示装置に表示することと、
前記第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることと、
前記第1信号波形と前記第1ピーク情報とに基づいて前記推定モデルを学習することとを実行させるための学習支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、学習支援方法、および学習支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/040487号(特許文献1)には、クロマトグラフシステムが開示されている。このクロマトグラフシステムは、推定モデルを用いたAI(Artificial Intelligence)によりピークを検出し、該ピークに基づいて試料の定性分析または定量分析を実行する。
【0003】
特許文献1には、推定モデルを学習するための教師データをユーザが入力できる技術が開示されている。具体的には、ピークが分離されていない未分離クロマトグラムをユーザが目視して、ピークを指定するための情報を教師データとして該ユーザがクロマトグラフシステムに入力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
推定モデルの作成には大量の教師データのアノテーションが必要になる場合があり、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることが要望されている。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の学習支援方法は、分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させる方法である。学習支援方法は、分析装置により作成された第1信号波形を取得することを備える。学習支援方法は、第1信号波形を表示装置に表示することを備える。学習支援方法は、複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することを備える。学習支援方法は、第2信号波形と、第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することを備える。学習支援方法は、第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることを備える。学習支援方法は、第1信号波形と第1ピーク情報とに基づいて推定モデルを学習することを備える。
【0008】
本開示の学習支援プログラムは、分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。学習支援プログラムは、コンピュータに、分析装置により作成された第1信号波形を取得することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第1信号波形を表示装置に表示することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第2信号波形と、第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、記第1信号波形と第1ピーク情報とに基づいて推定モデルを学習することとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】同一のクロマトグラムに対して異なる教師データが付与されている例を示す図である。
【
図3】本実施の形態に係る学習支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図9】学習支援装置の処理を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態の学習支援装置の処理のフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の学習支援装置の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<第1実施形態>
[分析システム]
本開示は、分析装置により作成された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習を支援する技術に関する。分析装置は、たとえば、ガスクロマトグラフ(GC:Gas Chromatograph)装置、液体クロマトグラフ(LC:Liquid Chromatography)装置、質量分析装置、分光光度計、およびX線分析装置などである。
【0013】
たとえば、信号波形は、クロマトグラム波形またはマススペクトル波形であってよい。また、分析装置が分光光度計である場合には、信号波形は、吸光スペクトル波形となる。分析装置がX線分析装置である場合には、信号波形は、X線スペクトル波形となる。
【0014】
また、推定モデル(後述の推定モデル121)の学習(学習処理)は、構築されていない推定モデルを新たに生成(構築)する処理と、既に構築されている推定モデルを更新する処理とを含む。「推定モデルを更新する」とは、推定モデルのパラメータを更新する処理を含む。また、学習処理によって更新(最適化)された推定モデルを、「学習済モデル」とも称する。また、学習前の推定モデルおよび学習済みの推定モデルをまとめて「推定モデル」とも総称する。
【0015】
本実施形態においては、液体クロマトグラフが採用された分析装置を説明する。
図1は、分析システム100の構成例を示す図である。分析装置10と、データ解析装置25と、入力装置61と、表示装置62と、学習支援装置30とを備える。また、データ解析装置25および学習支援装置30は、たとえば、情報処理装置(たとえば、PC(Personal Computer))により構成される。
図1の例ではデータ解析装置25および学習支援装置30は個別に示されているが、一体化されていてもよい。
【0016】
入力装置61は、たとえばキーボードあるいはマウスなどのポインティングデバイスであり、ユーザからの指令を受け付ける。表示装置62は、たとえば液晶(LCD:Liquid Crystal Display)パネルで構成される。表示装置62は、様々な画像を表示する。ユーザインターフェースとしてタッチパネルが用いられる場合には、入力装置61と表示装置62とが一体的に形成される。入力装置61は、データ解析装置25および学習支援装置30に接続されている。また、表示装置62は、データ解析装置25および学習支援装置30に接続されている。
【0017】
データ解析装置25は、制御部20を有する。制御部20は、分析装置10を制御する。分析装置10は、移動相容器11と、ポンプ12と、インジェクタ13と、カラム14と、検出器15とを含む。移動相容器11には、移動相が収容されている。ポンプ12は、移動相容器11に収容されている移動相を吸引して略一定の流速(又は流量)でカラム14に送給する。
【0018】
インジェクタ13は、制御部20からの指示に応じた所定のタイミングで、予め用意されている試料液を所定量、移動相中に注入する。注入された試料液は移動相の流れに乗ってカラム14に導入される。試料液に含まれる各種の成分はカラム14を通過する間に時間方向に分離されて溶出する。つまり、カラム14は、試料液に含まれる成分を保持時間に応じて分離する。
【0019】
検出器15は、カラム14から溶出する溶出液中の成分を検出する。検出器15は、該成分の量に応じた強度の検出信号をデータ解析装置25に出力する。検出器15は、たとえば、フォトダイオードアレイ(PDA:Photodiode Array)検出器などが採用された光学検出器などが用いられる。
【0020】
データ解析装置25は、上記の制御部20の他に、データ収集部110と、ピーク検出処理部111と、解析部117とを有する。
【0021】
データ収集部110は、検出器15から出力された検出信号を所定時間間隔でサンプリングしてデジタルデータに変換する。データ収集部110は、該デジタルデータを、所定の記憶領域(図示せず)に記憶する。このデジタルデータは、クロマトグラム波形を示すデータ(以下、「クロマトグラムデータ」とも称される。)である。
【0022】
ピーク検出処理部111は、データ収集部110が収集したクロマトグラムデータによるクロマトグラムのピークを、AI(人工知能:Artificial Intelligence)を利用して、推定する(導出する)。
【0023】
本実施の形態においては、ピーク検出処理部111は、モデル記憶部114とピーク決定部116とを有する。また、モデル記憶部114には、たとえば、機械学習によって生成された推定モデル121(ニューラルネットワーク)が記憶される。この推定モデル121は、たとえば、所定の関数で表現される。所定の関数は、たとえば、EMG(Exponetially Modified Gaussian)関数である。
【0024】
また、ピーク決定部116は、データ収集部110が収集したクロマトグラムデータによるクロマトグラムを、推定モデル121に入力する。推定モデル121は、クロマトグラムのピークを出力する。このように、ピーク検出処理部111は、データ収集部110が収集したクロマトグラムデータによるクロマトグラムのピークを推定し、解析部117に出力する。
【0025】
ピークが観測される時間(保持時間)は成分の種類に対応している。該クロマトグラムは、データ解析装置に送信される。データ解析装置は、該クロマトグラムに含まれるピークの保持時間から成分を特定する。この特定は、「定性分析」とも称される。
【0026】
また、クロマトグラムのピークの高さおよびピークの面積は試料の成分の濃度または含有量に対応している。データ解析装置は、該クロマトグラムに含まれるピークの高さまたは面積値から試料の成分の濃度や含有量を特定する。この特定は、「定量分析」とも称される。
【0027】
解析部117は、ピーク決定部116から出力されたピークにおいて、該ピークのピークトップの位置(時間)と該ピークの面積値(または高さ)とを求める。解析部117は、クロマトグラム上の各ピークの位置の情報から成分を特定する。また、解析部117は、予め作成された検量線を利用して、ピーク面積値(又は高さ値)から各成分の含有量を算出する。このように、解析部117は、試料に含まれる各成分の定性分析および定量分析を実行する。解析部117は、定性分析結果および定量分析結果を表示装置62に表示する。
【0028】
[学習支援装置]
次に、学習支援装置30を説明する。上述のように、ピーク検出処理部111によるピーク検出の精度を向上させるために、学習支援装置30は、推定モデル121を最適化する。また、本実施の形態においては、分析システム100の製造段階において、製造者が推定モデル121を最適化するようにしてもよい。また、分析システム100がユーザに出荷されて、該ユーザが推定モデル121を最適化するようにしてもよい。この場合には、ユーザは、推定モデル121を最適化するための学習データを準備し、かつユーザ自身がアノテーション処理を実行する。したがって、ユーザは、該ユーザが所望する推定モデル121を生成できる。
【0029】
一般的に、機械学習された推定モデル121の性能は完璧ではなく、ピーク検出においてある程度のエラーが生じることを前提に運用される。このように、本実施形態においては、ユーザ自身が推定モデル121を学習できることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0030】
一般的に推定モデル121の性能は学習データの質に大きく依存する。特に、様々なクロマトグラムが網羅できていること、および正確な教師ラベルがクロマトグラムに対して付与されていることが好ましい。
【0031】
本実施の形態においては、ユーザが推定モデル121を最適化する手法として、2つの手法がある。第1の手法は、ピーク検出処理部111により検出されたピークの修正作業をユーザが行うという手法である。具体的には、分析システム100は、クロマトグラムのクロマトグラム画像および該クロマトグラムに付与されているピーク情報のピーク情報画像を表示装置62に表示する。このピーク情報画像は、後述の「検出ピーク画像」に対応する。クロマトグラム画像は、クロマトグラムを示す画像である。ピーク情報画像は、ピーク情報を示す画像である。該ピーク情報は、クロマトグラムのピークを特定するための情報である。分析システム100は、該表示されたピーク情報のユーザによる修正を受付ける。
【0032】
第2の手法は、データ収集部110が新たに収集したクロマトグラム(ピークが検出されていないクロマトグラム)に対して、ピークの指定作業をユーザが行うという手法である。具体的には、分析システム100は、クロマトグラム画像を表示装置62に表示し、ピーク情報画像を表示しない。そして、分析システム100は、該表示されたクロマトグラム画像に対してピーク情報の入力を受付ける。また、該入力されるピーク情報が、推定モデル121を最適化するための教師ラベルまたは教師データとなる。
【0033】
このように、第1の手法および第2の手法のいずれにおいても、分析システム100は、ユーザからのピーク情報の入力を教師データとして受付ける。ユーザがピーク情報を入力した結果、入力されたピークおよびクロマトグラムを新たな学習データとして推定モデル121のパラメータが更新される。ピーク検出処理部111は、該更新された推定モデル121を利用できる。しかしながら、過去のアノテーションと一貫性がない(ばらつきが生じた)アノテーションを、ユーザが行った場合には、推定モデル121の精度が低下する場合がある。
【0034】
また、推定モデル121の作成には、大量の教師データのアノテーションが必要になる場合がある。
図2は、同一のクロマトグラムに対して異なる教師データが付与されている(一貫性がないアノテーションが実行されている)例を示す図である。
図2(A)は、クロマトグラムのピークがユーザにより広く指定されていることを示す図である。
図2(B)は、クロマトグラムのピークがユーザにより狭く指定されていることを示す図である。なお、
図2および後述のクロマトグラムが示される図においては、横軸は時間を示し、縦軸は信号強度を示す。また、本実施の形態においては、ユーザに入力されるピーク情報(教師データ)は、ピーク情報92Aおよびピーク情報92Bとなる。
【0035】
たとえば1回目のクロマトグラムに対しては、ユーザがピーク情報92A(
図2(A)参照)を入力し、2回目のクロマトグラムに対しては、ユーザがピーク情報92B(
図2(B)参照)を入力したとする。この場合には、同一のクロマトグラムに対して、異なるピーク情報(教師データ)が入力されることになり、つまり、アノテーションのバラつきが発生している。このようにアノテーションのバラつきが発生すると、推定モデル121の品質が低下する場合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態の学習支援装置30は、アノテーションのバラつきを抑制する(過去のピーク情報と一貫性を持たせる)ように、ユーザにピーク情報を入力させることを促進する。これにより、学習支援装置30は、ユーザによる推定モデル121の学習を支援することができる。
【0037】
[学習支援装置のハードウェア構成]
図3は、本実施の形態に係る学習支援装置30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、学習支援装置30は、主なハードウェア要素として、制御装置51と、記憶装置52と、メディア読取装置17と、ディスプレイインターフェース18と、入力インターフェース26とを備える。
【0038】
制御装置51は、後述するように、推定モデル121の学習を実行する。制御装置51は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。なお、制御装置51は、CPU、FPGA、およびGPUの少なくとも1つで構成されてもよいし、CPUとFPGA、FPGAとGPU、CPUとGPU、あるいはCPU、FPGA、およびGPUの全てから構成されてもよい。また、制御装置51は、演算回路(processing circuitry)で構成されてもよい。
【0039】
記憶装置52は、制御装置51が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。たとえば、記憶装置52は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。さらに、記憶装置52は、不揮発性の記憶領域を含む。たとえば、記憶装置52は、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0040】
なお、本実施の形態においては、揮発性の記憶領域と不揮発性の記憶領域とが同一の記憶装置52に含まれる例を示したが、揮発性の記憶領域と不揮発性の記憶領域とが互いに異なる記憶装置に含まれていてもよい。たとえば、制御装置51が揮発性の記憶領域を含み、記憶装置52が不揮発性の記憶領域を含んでいてもよい。学習支援装置30は、制御装置51と、記憶装置52とを含むマイクロコンピュータを備えていてもよい。
【0041】
記憶装置52は、推定モデル121と、制御プログラム122と、クロマトグラムDB(Data Base)123とを格納する。推定モデル121は、ニューラルネットワークと、該ニューラルネットワークにおける処理で用いられるパラメータとを含む。推定モデル121は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)などで構成される。制御プログラム122は、制御装置51により実行されるプログラムである。
【0042】
推定モデル121は、少なくとも機械学習が可能なプログラムを含み、学習用データ(教師データ)に基づき機械学習を行うことでパラメータが最適化(調整)される。学習支援装置30は、最適化した推定モデル121をデータ解析装置25に送信する。データ解析装置25は、モデル記憶部114に記憶されている推定モデル121を該送信された推定モデル121(最適化された推定モデル)に更新する。このように、ピーク検出処理部111は、更新された推定モデル121を用いて、ピークを推定することにより、推定精度を向上させることができる。
【0043】
メディア読取装置17は、リムーバブルディスクなどの記録媒体130を受け入れ、記録媒体130に格納されているデータを取得する。該データは、たとえば、制御プログラムである。また、制御プログラム122は、記録媒体130(たとえば、リムーバブルディスク)に格納されて、プログラムプロダクトとして流通されてもよい。または、制御プログラム122は、情報提供事業者によって、いわゆるインターネットなどによりダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。制御装置51は、記録媒体130またはインターネットなどにより提供されたプログラムを読み取る。制御装置51は、読み取ったプログラムを所定の記憶領域(記憶装置52の記憶領域)に記憶する。制御装置51は、該記憶された制御プログラム122を実行することにより後述の学習支援処理を実行する。
【0044】
記録媒体130は、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(compact disc read-only memory)、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリなどの固定的にプログラムを担持する媒体としてもよい。また、記録媒体130は、制御プログラム122などをコンピュータが読取可能な非一時的な媒体である。
【0045】
ディスプレイインターフェース18は、表示装置62を接続するためのインターフェースであり、学習支援装置30と表示装置62との間のデータの入出力を実現する。入力インターフェース26は、入力装置61を接続するためのインターフェースであり、学習支援装置30と入力装置61との間のデータの入出力を実現する。
【0046】
[学習支援装置の機能ブロック]
図4は、学習支援装置30の機能ブロック図である。上述のように、学習支援装置30は、制御装置51と記憶装置52とを有する。制御装置51は、さらに、取得部32と、処理部34と、出力部36とを有する。
【0047】
取得部32は、ユーザが入力装置61により入力した情報を取得する。該情報は、たとえば、上述したピーク情報である。また、データ収集部110は、クロマトグラムを収集する度に、該クロマトグラムデータを学習支援装置30に送信する。取得部32は、データ収集部110からのクロマトグラムデータを取得する。取得部32が取得した情報(ピーク情報およびクロマトグラムデータ)は、処理部34に出力される。
【0048】
処理部34は、取得部32から出力された情報の種別に応じた処理を実行する。取得部32によりピーク情報が入力された場合には、該ピーク情報に基づいて推定モデル121のパラメータを更新する。また、取得部32によりクロマトグラムデータが入力された場合には、クロマトグラムDB123を更新する。処理部34は、その他、様々な処理を実行する。
【0049】
出力部36は、様々な信号または情報を出力する。たとえば、出力部36は、表示装置62に対して、表示装置62に表示させる画像の画像データを送信する。表示装置62は、該画像データに基づいた画像を表示する。また、出力部36は、推定モデル121を更新する度に、該更新された推定モデルをモデル記憶部114に出力する。モデル記憶部114は、該更新された推定モデルを記憶する。
【0050】
[クロマトグラムDB]
図5は、クロマトグラムDB123の一例である。上述のように、クロマトグラムDB123は、記憶装置52に記憶されている。クロマトグラムDB123は、クロマトグラムID(identification)に、クロマトグラムデータと、記憶ピーク情報と、該クロマトグラムデータにより示されるクロマトグラムの特徴量と、分析結果とが対応付けられている。また、クロマトグラムデータと記憶ピーク情報とは、「アノテーション済信号」とも称される。
【0051】
また、クロマトグラムDB123には、S個(Sは1以上の整数)のクロマトグラムIDが記憶されている。クロマトグラムDB123には、分析装置10または該分析装置10と同等の装置により過去に作成されたクロマトグラムと、該クロマトグラムの特徴量、該クロマトグラムにより導出された分析結果などが記憶されている。換言すれば、クロマトグラムDB123には、1以上(または複数の)アノテーション済信号が記憶されている。
【0052】
クロマトグラムIDは、クロマトグラムを識別するための情報である。クロマトグラムデータは、クロマトグラムを示すデータであり、データ収集部110が収集したデジタルデータである。クロマトグラムデータは、本開示の「記憶信号波形」に対応する。
【0053】
記憶ピーク情報は、クロマトグラムが含むピークを特定するためのデータである。ピーク情報は、たとえば、後述の
図6などに示される第2ピーク情報画像253により示される。記憶ピーク情報は、ピーク検出処理部111により検出されたピークを示す情報またはユーザにより入力されたピーク情報である。
【0054】
クロマトグラム特徴量は、クロマトグラムデータにより示されるクロマトグラムの特徴量である。
図5の例では、クロマトグラム特徴量は、クロマトグラムのピークの数、2点間勾配、および面積値を含む。2点間勾配は、ピークの開始点および該ピークの終了点を結ぶ線分の勾配をいう。面積値は、クロマトグラムのピークを形成する線分と、2点間勾配による線分とにより囲まれた領域の面積値である。また、クロマトグラム特徴量で示されるピークは、記憶ピーク情報により示されるピークである。
【0055】
また、2点間勾配および面積値はピークの特徴量(以下、「ピーク特徴量」とも称される。)でもある。ピーク特徴量は、ピークの個数分存在する。たとえば、クロマトグラムIDがC1であるクロマトグラムは、ピーク数は、3であることが示されている。また、3個のピークの2点間勾配として、E11、E12、E13が示されている。また、3個のピークの面積値として、M11、M12、M13が示されている。
【0056】
分析結果は、該分析結果に対応するクロマトグラムデータのクロマトグラムのピークとして、現状の推定モデル121を用いてピーク検出処理部111により検出されたピークに基づいて導出された結果である。分析結果は、定性分析結果と、定量分析結果のうち少なくとも一方を含む。定性分析結果は、クロマトグラムにより特定された成分を示す結果である。定量分析結果は、該成分の量を示す結果である。なお、変形例として、分析結果は、定性分析結果を含む一方、定量分析結果を含まないようにしてもよい。
【0057】
図5の例では、C1であるクロマトグラムIDに対応して、クロマトグラムデータD1と、ピーク数G1と、2点間勾配E1と、面積値M1と、定性分析結果P1と、定量分析結果Q1と、記憶ピーク情報R1とが対応付けられている。
【0058】
このように、クロマトグラムDB123は、分析装置により作成された少なくとも1つの記憶信号波形と、該少なくとも1つの記憶信号波形のそれぞれのピークを特定するための少なくとも1つの記憶ピーク情報とが記憶される。
【0059】
[学習支援]
次に、本実施の形態の学習支援装置30によるユーザに対する学習支援の手法を説明する。学習支援装置30は、表示装置62の表示領域62Aに様々な画像を表示することにより、ユーザに対する学習支援を実行する。
図6~
図8は、本実施の形態の該様々な画像の一例を示す図である。本実施の形態においては、
図6の画像が表示され、その後、
図7の画像が表示され、その後、
図8の画像が表示される。
【0060】
入力装置61に対してユーザにより所定の操作が実行されることにより、分析システム100のモードは、学習モードに移行される。学習モードでは、ユーザが後述の第1ピーク情報を入力することにより推定モデル121の更新が実行される。
【0061】
図6~
図8に示すように、表示領域62Aは、編集領域131Aと、該編集領域131Aと隣接する過去結果領域132Aとを含む。換言すれば、編集領域131Aと、過去結果領域132Aとは同一画面に設定される。編集領域131Aには、分析装置10が導出したクロマトグラム(以下「第1クロマトグラム」とも称される。)の画像(以下、「第1クロマトグラム画像211」とも称される。)が表示される。第1クロマトグラムは、本開示の「第1信号波形」に対応する。第1クロマトグラム画像211は、本開示の「第1波形画像」に対応する。学習支援装置30は、データ収集部110が収集したクロマトグラムデータを取得すると、該クロマトグラムデータのクロマトグラムの画像を第1クロマトグラム画像211として表示する。
【0062】
また、学習支援装置30は、第1クロマトグラムを取得すると、該第1クロマトグラムと同一または類似である第2クロマトグラムをクロマトグラムDB(
図5)から特定し、該特定した第2クロマトグラムを取得する。ここで、第1クロマトグラムと同一または類似である第2クロマトグラムの特定の手法例を説明する。
【0063】
学習支援装置30は、クロマトグラムDBに記憶されているS個の記憶クロマトグラムデータのそれぞれと、第1クロマトグラムとの第1類似度を算出する。つまり、学習支援装置30は、S個の第1類似度を算出する。第1類似度は、1つの記憶クロマトグラムデータと、第1クロマトグラムとの類似の度合いを示す。1つの記憶クロマトグラムデータと、第1クロマトグラムとが類似するほど、第1類似度は、大きな値となる。本実施の形態においては、第1類似度は、%で表現される。また、第1クロマトグラムと同一である第2クロマトグラムの第1類似度は、100%となる。
【0064】
第1類似度は、以下の2つの観点により算出される。第1の観点として、学習支援装置30は、第1クロマトグラムの特徴量(以下、「第1特徴量」とも称される。)と、記憶クロマトグラムの該特徴量(第1特徴量)と同一種別の特徴量(以下、「第2特徴量とも称される。)とに基づいて、第1類似度を算出する。
【0065】
本実施の形態においては、第1特徴量は、第1クロマトグラムのピークとして、現状の推定モデル121を用いてピーク検出処理部111により検出されたピークに基づいて導出された特徴量である。本実施の形態においては、
図5の記憶クロマトグラムの第2特徴量と同一種別の特徴量である。具体的には、第1特徴量および第2特徴量は、ピークの数、2点間勾配、および面積値である。なお、第1特徴量および第2特徴量は同一種別であれば、他の種別としてもよい。他の種別は、ピークの幅、ピークの分離度、ピークのリーディング、ピークのテーリングなどのうち少なくとも1つとしてもよい。
【0066】
第2の観点として、学習支援装置30は、第1クロマトグラムにより示される(導出される)分析結果と、記憶クロマトグラムにより示される分析結果とに基づいて、第1類似度を算出する。ここで、記憶クロマトグラムにより示される分析結果は、
図5に示されるように、該記憶クロマトグラムに対応する定性分析結果および定量分析結果を含む。また、第1クロマトグラムにより示される分析結果は、該第1クロマトグラムにより示される定性分析結果および定量分析結果(つまり、記憶クロマトグラムにより示される分析結果と同一種別の分析結果)である。
【0067】
たとえば、学習支援装置30は、第1クロマトグラムにより示される定性分析結果と、該記憶クロマトグラムに対応する定性分析結果と比較して、双方の定性分析結果が異なれば、第1類似度を「0」とする。一方、双方の定性分析結果が同一であれば、学習支援装置30は、双方の定量分析結果の類似度(以下、「第1仮類似度」とも称される。)を算出する。また、学習支援装置30は、上述の第1特徴量と上述の第2特徴量とに基づいて、第2仮類似度を算出する。第2仮類似度は、たとえば、相関係数を用いて算出される。また、第2仮類似度は、第1クロマトグラムの形状と、記憶クロマトグラムの形状との類似度として算出されるようにしてもよい。
【0068】
そして、学習支援装置30は、第1仮類似度と、第2仮類似度とに基づいて、第1類似度を算出する。このように、学習支援装置30は、第1の観点で算出される類似度(第1類似度)と、第2の観点で算出される類似度(第1類似度)とを総合して、S個(クロマトグラムDBで記憶されているクロマトグラムIDの数)の第1類似度を算出する。
【0069】
なお、変形例として、学習支援装置30は、第1の観点または第2の観点のいずれかにより第1類似度を算出するようにしてもよい。
【0070】
学習支援装置30は、算出したS個の第1類似度から、第1閾値以上である第1類似度を特定する。学習支援装置30は、該特定した第1類似度である記憶クロマトグラムを第2クロマトグラムとして決定する。ここで、第1閾値は、予め定められる閾値であり、たとえば、第1閾値は、70%である。つまり、学習支援装置30は、第1特徴量および分析結果の観点で、第1クロマトグラムとの類似度が70%以上であるクロマトグラム(第2クロマトグラム)を決定することができる。さらに、学習支援装置30は、クロマトグラムDB123を参照することにより、該第2クロマトグラムのクロマトグラムIDに対応するピーク情報(第2ピーク情報)を取得する。
【0071】
学習支援装置30は、第1クロマトグラムと、第2クロマトグラムと、第2ピーク情報とを取得すると、
図6に示すように、該第1クロマトグラムの第1クロマトグラム画像211と、該第2クロマトグラムの第2クロマトグラム画像212と、該第2ピーク情報の第2ピーク情報画像253とを表示する。
図6の例では、4つの第2クロマトグラムの各々の第2クロマトグラム画像212A、212B、212C、212Dと、該4つの第2クロマトグラム画像212のそれぞれの第2ピーク情報画像253とが表示されている。以下では、4つの第2クロマトグラム画像212A、212B、212C、212Dは、「第2クロマトグラム画像212」とも称される。
【0072】
上述のように、第2クロマトグラム画像212は、第1クロマトグラムとの類似度が高い(第1閾値以上である)第2クロマトグラムの画像である。したがって、ユーザは、第1クロマトグラムと類似度が高いクロマトグラムの第2ピーク情報画像253を視認することにより、該第2クロマトグラムのピークを認識することができる。
【0073】
図6のように、第1クロマトグラム画像211が表示されている状態においては、学習支援装置30は、該第1クロマトグラム画像211が示す第1クロマトグラムのピークを特定するためのピーク情報の入力をユーザから受付ける。該ピーク情報は、本開示の「第1ピーク情報」に対応する。
【0074】
図7は、ユーザにより第1ピーク情報が入力されたときの画像である。
図7の例では、入力された第1ピーク情報を示す画像が、第1ピーク情報画像220として表示される。学習支援装置30は、入力された第1ピーク情報により特定されるピークが第1クロマトグラムのピークとしてピーク検出処理部111が検出するように、推定モデル121のパラメータを更新する。
【0075】
このように、本実施の形態においては、ユーザは、過去の第2ピーク情報(過去結果領域132Aに表示されている第2ピーク情報)と一貫性を有する第1ピーク情報を入力できる。つまり、たとえば、同一のクロマトグラムであるにも関わらず、異なるピーク情報が入力されること(
図2参照)が抑制される。そして、学習支援装置30は、該第1ピーク情報に基づいて推定モデル121を更新できる。したがって、第1信号波形のピークの特定の精度を向上させるという観点で、推定モデル121の更新の精度を向上させることができる。
【0076】
また、学習支援装置30は、第1クロマトグラムと、S個の記憶クロマトグラムのそれぞれとの第1類似度を算出し、該第1類似度が第1閾値以上である記憶クロマトグラムを、第2クロマトグラムとして取得する。そして、
図6に示すように、学習支援装置30は、第1クロマトグラム画像211と、該取得した第2クロマトグラムの第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253とを表示する。
【0077】
その後、
図7に示すように、学習支援装置30は、第1ピーク情報の入力を受付ける。したがって、ユーザは、第1クロマトグラムと同一または類似でありかつ過去に作成された第2クロマトグラムと、該第2クロマトグラムのピークを示す第2ピーク情報画像253とを視認しながら、第1クロマトグラムの第1ピーク情報を入力できる。したがって、学習支援装置30は、アノテーションのバラつきが抑制された教師データ(第1ピーク情報)を入力することをユーザに促進することができる。その結果、学習支援装置30は、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることができる。
【0078】
また、学習支援装置30は、第1クロマトグラムの第1特徴量と、記憶クロマトグラムの該第1特徴量と同一種別の第2特徴量とに基づいて、第1類似度を算出する。したがって、学習支援装置30は、比較的簡単な演算で第1類似度を算出できる。
【0079】
また、学習支援装置30は、第1クロマトグラムにより示される分析結果と、記憶クロマトグラムにより示される分析結果とに基づいて、第1類似度を算出する。したがって、学習支援装置30は、比較的簡単な演算で第1類似度を算出できる。
【0080】
また、
図6および
図7の例では、学習支援装置30は、第2クロマトグラムの第1類似度を該第2クロマトグラムを示す第2クロマトグラム画像212に対応付けて表示する。
図6および
図7の例では、該第1類似度を示す類似度画像271が表示されている。
図6および
図7の例では、たとえば、第2クロマトグラム画像212Aに対応付けて、類似度画像271として「98%」という画像が表示されている。したがって、ユーザは、第2クロマトグラムの第1類似度を視認することができる。
【0081】
さらに、学習支援装置30は、過去結果領域132Aにおいて、第2クロマトグラム画像212に対応付けて第2特徴量画像275を表示する。ここで、第2特徴量画像275は、第2ピーク情報画像253により示される第2ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す。第2特徴量画像275は、2点間勾配を示す画像272と、面積値を示す画像273とを含む。また、2点間勾配および面積値は、第2クロマトグラムに含まれる1以上のピークそれぞれの特徴量である。
図6および
図7の例では、第2クロマトグラム画像212Aのクロマトグラムには、3つのピークが含まれている。第2クロマトグラム画像212Aに対応付けて、3つのピークそれぞれの2点間勾配であるA1、A2、S3が表示されており、また、該3つのピークそれぞれの面積値であるB1、B2、B3が表示されている。
【0082】
また、本実施の形態では、第2クロマトグラムは、高類似クロマトグラムと、該高類似クロマトグラムよりも第1類似度が低い低類似クロマトグラムとを含む。たとえば、
図7の例では、高類似クロマトグラムの一例として、第1類似度が98%のクロマトグラムの第2クロマトグラム画像212Aが表示されている。また、低類似クロマトグラムの一例として、第1類似度が80%のクロマトグラムの第2クロマトグラム画像212Dが表示されている。さらに、過去結果領域132Aにおいては、高類似クロマトグラムを示す第2クロマトグラム画像212Aは、低類似クロマトグラムを示すクロマトグラム画像212Bよりも優先して表示される。このように、学習支援装置30は、第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253とを第1類似度に応じた優先度で表示する。
図6および
図7の例では、高類似クロマトグラムの方が、低類似クロマトグラムよりも上方に表示される。
【0083】
したがって、ユーザは、第1クロマトグラムとの類似度が高い第2クロマトグラムを、該類似度が低い第2クロマトグラムよりも優先して視認することができる。よって、学習支援装置30は、第1クロマトグラムとの類似度が高い第2クロマトグラムの第2ピーク情報を容易に視認させることができる。
【0084】
また、
図7の例では、第2ピーク情報画像253は線形状である画像(以下、「線画像」とも称される。)である。また、第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253との囲まれた領域が、第2クロマトグラムのピークを示す領域である。
【0085】
また、学習支援装置30は、第1クロマトグラム画像211、第2クロマトグラム画像212、および第2ピーク情報画像253が表示されている状態で、第1点201と第2点202とのユーザによる入力(指定)を受付ける。本実施の形態においては、入力装置61(マウス)のカーソル217が表示されている。ユーザは、所望の位置にカーソル217を合わせ、マウスをクリックすることにより、第1点201を指定できる。また、ユーザは、他の所望の位置にカーソル217を合わせ、マウスをクリックを行うことにより、第2点202を指定できる。第1点201および第2点202が指定されると、学習支援装置30は、該第1点201および該第2点202を結ぶ線画像を第1ピーク情報画像220として表示する。そして、学習支援装置30は、第1点201と第2点202とを結ぶ線と、第1クロマトグラム画像211に含まれる線とで囲まれた領域を、第1ピーク情報画像220の第1ピーク情報により特定されるピークの領域(教師データ)として認識する。このような構成によれば、第1クロマトグラム画像211の第1点201と第2点202とを指定することにより、第1ピーク情報を入力できる。したがって、ユーザは、直感的に第1ピーク情報を入力できることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
図7の第1点201および該第2点202を結ぶ線画像は、「ピークのベースライン」とも称される。
【0086】
図8は、ユーザにより第1ピーク情報が入力された後の画面を示す図である。
図8に示すように、学習支援装置30は、第1ピーク情報が入力されると、第1特徴量を算出し、該第1特徴量の第1特徴量画像231を表示する。ここで、第1特徴量画像231は、第1ピーク情報画像220により示される第1ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す。
図8の例では、第1特徴量画像231は、このピークの2点間勾配と、このピークの面積値とを示す画像である。
図8の例では、2点間勾配の値として「X1」が表示され、面積値として「Y1」が表示されている。
【0087】
上述のように、
図6~
図8に示すように、学習支援装置30は、過去結果領域132Aにおいて、第2特徴量画像275を表示する。このように、学習支援装置30は、第1特徴量画像231と、第2特徴量画像275とが表示される。したがって、ユーザは、第1ピーク情報を入力した後において、該第1ピーク情報により示されるピークを、特徴量(本実施の形態においては、2点間勾配および面積値)の観点で、過去のピークと比較することができる。
【0088】
また、第1特徴量画像231は、ユーザにより入力された第1ピーク情報により特定されるピークの数の分、表示される。たとえば、ユーザにより入力された第1ピーク情報により特定されるピークの数が、「3」である場合には、該3つのピークの各々の第1特徴量画像231が表示される。
【0089】
[フローチャート]
図9は、学習支援装置30の処理を示すフローチャートである。ステップS2において、学習支援装置30は第1クロマトグラムを取得する。次に、ステップS4において、学習支援装置30は、第2クロマトグラムと第2ピーク情報とを取得する。ステップS4は、ステップS42と、該ステップS42の後に実行されるステップS44と、該ステップS44の後に実行されるステップS46と、該ステップS46の後に実行されるステップS48と、該ステップS48の後に実行されるステップS50とを含む。
【0090】
ステップS42においては、学習支援装置30は、第1クロマトグラムの第1特徴量と、記憶クロマトグラムの第2特徴量とを抽出する。上述のように、第1特徴量および第2特徴量は、ピークの数、2点間勾配、および面積値である。
【0091】
ステップS44において、学習支援装置30は、第1クロマトグラムにより示される第1分析結果と、記憶クロマトグラムにより示される第2分析結果とを抽出する。第1分析結果および第2分析結果は、定性分析結果と定量分析結果とである。
【0092】
ステップS46において、学習支援装置30は、第1クロマトグラムと記憶クロマトグラムとの第1類似度を算出する。学習支援装置30は、第1特徴量、第2特徴量、第1分析結果、および第2分析結果に基づいて、第1類似度を算出する。
【0093】
ステップS48において、学習支援装置30は、クロマトグラムDB123を参照して、第1類似度が第1閾値以上である記憶クロマトグラムを第2クロマトグラムとして取得する。
【0094】
ステップS50において、学習支援装置30は、クロマトグラムDB123を参照して、該第2クロマトグラムに対応する記憶ピーク情報を第2ピーク情報として取得する。
【0095】
ステップS4の処理が終了すると、ステップS6において、学習支援装置30は、ステップS2で取得した第1クロマトグラムの第1クロマトグラム画像211を表示する。
【0096】
次に、ステップS8において、学習支援装置30は、第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253とを表示する。ステップS8は、ステップS82と、該ステップS82の後に実行されるステップS84とを含む。
【0097】
ステップS82において、学習支援装置30は、第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253とを第1類似度に応じた優先度で表示する。ステップS84において、類似度画像271と、第2特徴量画像275とを表示する。
【0098】
このように、ステップS2~ステップS8の処理が実行されることにより、
図6に示す画像が表示される。
【0099】
次に、ステップS10において、学習支援装置30は、ユーザにより第1ピーク情報が入力されたか否かを判断する。ステップS10は、ステップS102の処理を含む。ステップS102においては、学習支援装置30は、ユーザにより第1点201および第2点202が入力されたか否かを判断する。学習支援装置30は、第1点201および第2点202が入力されるまで、ステップS102の処理を繰り返す。ステップS102でYESと判断されると、ステップS12に進む。
【0100】
ステップS12においては、学習支援装置30は、ステップS10で入力されたと判断された第1ピーク情報の第1ピーク情報画像を表示する。ステップS12は、ステップS122を含む。ステップS122においては、学習支援装置30は、第1ピーク情報画像220と、第1特徴量画像231とを表示する。なお、ステップS122において、学習支援装置30が、第1ピーク情報画像220を表示することにより、
図7に示す画像が表示される。また、ステップS122において、学習支援装置30が、第1特徴量画像231を表示することにより、
図8に示す画像が表示される。
【0101】
次に、ステップS13において、学習支援装置30は、ユーザにより終了操作が実行されたか否かを判断する。終了操作は、入力装置61に対してユーザにより行われる操作である。終了操作は、たとえば、
図6~
図8に示される画面に表示される終了ボタン(図示せず)へのユーザの操作である。
【0102】
第1クロマトグラム画像211に対しては、ユーザは1以上の第1ピーク情報を入力できる。ユーザは、第1ピーク情報の入力が終了したときには、終了操作を実行する。ステップS13でNOと判断された場合には、処理は、ステップS102に戻る。一方、ステップS13でYESと判断された場合には、処理は、ステップS14に進む。
【0103】
ステップS14において、学習支援装置30は、ステップS2で取得した第1クロマトグラムと、ステップS10で入力されたと判断された第1ピーク情報に基づいて推定モデル121を学習する。また、推定モデル121は、クロマトグラムとピーク情報をセットとして、複数セットで学習されてもよい。
【0104】
図9に示すように、学習支援装置30は、ステップS6とステップS8との後に、第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける。上述のように、ステップS6は、第1クロマトグラム画像211を表示装置62に表示する処理である。また、ステップS8は、第2クロマトグラム画像212と、第2ピーク情報画像253とを表示装置62に表示する処理である。
【0105】
図9のような構成であれば、ユーザは、第1クロマトグラムと類似しかつ過去に作成された第2クロマトグラムと、該第2クロマトグラムのピークを示す第2ピーク情報とを視認しながら、第1クロマトグラムの第1ピーク情報を入力できる。したがって、第1ピーク情報の入力について、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0106】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の学習支援装置30の処理のフローチャートである。
図10においては、学習支援装置30は、ステップS2の処理が終了すると、ステップS6の処理を実行する。次に、学習支援装置30は、ステップS10の処理を実行する。ここで、ユーザは、第1クロマトグラム画像211が表示されているが、第2クロマトグラム画像212および第2ピーク情報画像253が表示されていない状態で、第1ピーク情報を入力することになる。ステップS10の処理が実行されると、ステップS12およびステップS13の処理が実行される。ステップS13でYESと判断される。処理は、ステップS4Aに進む。ステップS4Aと、ステップS4とはステップS48が、ステップS52とステップS54とに代替されている点で異なる。
【0107】
ステップS52においては、学習支援装置30は、ステップS10で入力された第1ピーク情報と、クロマトグラムDB123に記憶されているS個の記憶ピーク情報R(
図5参照)とのそれぞれのS個の類似度(以下、「第2類似度」とも称される。)を算出する。第2類似度は、1つの記憶ピーク情報と、第1ピーク情報との類似の度合いを示す。1つの記憶ピーク情報と、第1ピーク情報とが類似するほど、第2類似度は、大きな値となる。たとえば、学習支援装置30は、S個の記憶ピーク情報のそれぞれと、第1ピーク情報とに関するパラメータ(たとえば、相関係数)を、第2類似度として算出する。
【0108】
次に、ステップS54において、学習支援装置30は、第1類似度が第1閾値以上であるクロマトグラムであって、かつ第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶クロマトグラムを、第2クロマトグラムとして取得する。ここで、第2閾値は、予め定められる閾値である。つまり、ステップS54においては、第1ピーク情報およびクロマトグラムが共に類似している第2クロマトグラムが取得される。次に、ステップS50において、ステップS54で取得された第2クロマトグラムに対応する第2ピーク情報を取得する。
【0109】
図10の例では、学習支援装置30は、ステップS6と、ステップS10との後に、ステップ4Aの処理を実行する。ステップS6は、第1クロマトグラム画像211を表示装置62に表示する処理である。ステップS10は、第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける処理である。ステップ4Aは、クロマトグラムDB123から第2クロマトグラムと第2ピーク情報とを取得する処理である。また、ステップS4Aは、ステップS46とステップS52とステップS54とを含む。
【0110】
ステップS52は、第1類似度を算出する処理であり、ステップS54は、第2類似度を算出する処理である。ステップS56は、第1類似度が第1閾値以上であるクロマトグラムであって、かつ第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶クロマトグラムを、第2クロマトグラムとして取得する処理である。
【0111】
第2実施形態によれば、学習支援装置30は、第1類似度が第1閾値以上であるクロマトグラムであって、かつ第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶クロマトグラムを第2クロマトグラムとして表示することができる。よって、ユーザは、このような第2クロマトグラムを確認することができる。
【0112】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態の学習支援装置30の処理のフローチャートである。
図11は、
図9のステップS6の処理の後に、ステップS150の処理が実行される。ステップS150の処理は、検出ピーク画像を表示する処理である。検出ピーク画像は、現在の推定モデル121を用いて検出された第1クロマトグラム(ステップS2で取得された第1クロマトグラム)のピークを特定するためのピーク情報(以下、「検出ピーク情報」とも称される。)である。つまり、ステップS2で取得された第1クロマトグラムの仮のピーク情報が、検出ピーク画像として表示される。このように、ステップS6およびステップS150の処理が実行されることにより、第1クロマトグラム画像と、検出ピーク画像(第1クロマトグラムの仮のピーク画像)とが表示される。その後、ステップS8およびステップS10の処理が実行される。
【0113】
第3実施形態によれば、ユーザは検出ピーク情報画像を参考にしながら、第1ピーク情報を入力することができる。さらには、ユーザは、検出ピーク情報画像および第2ピーク情報画像を参考にしながら、第1ピーク情報を入力できる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0114】
なお、ステップS102(ステップS10)において、ユーザが第1ピーク情報画像が、検出ピーク画像のままでよいと判断した場合に、ユーザが所定操作(たとえば、図示しないOBボタンを押す操作)を実行することにより、該ステップS102ではYESと判断されて次のステップS122に進む。また、ステップS102(ステップS10)において、ユーザが検出ピーク画像を修正したい場合には、新たに第1ピーク情報を入力する(第1点201および第2点202を指定する)することにより、該ステップS102ではYESと判断されて次のステップS122に進む。
【0115】
[変形例]
(1)
図11の処理において、学習支援装置30は、ステップS2、ステップS6、ステップS150、ステップS4A(
図10参照)、ステップS8、ステップS10、ステップS12の順序で処理を実行するようにしてもよい。ステップS4AのステップS52においては、検出ピーク情報とS個の記憶クロマトグラムとのそれぞれのS個の第2類似度を算出する。したがって、ステップS54においては、学習支援装置30は、第1類似度が第1閾値以上であるクロマトグラムであって、かつ第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶クロマトグラムを、第2クロマトグラムとして取得する。つまり、検出ピーク情報が付加された第1クロマトグラムと、クロマトグラムおよびピーク情報が同一または類似である第2クロマトグラム画像が表示される。学習支援装置30は、このような第2クロマトグラム画像を表示することにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0116】
(2) 上述の実施の形態においては、ユーザが第1点201および第2点202を指定することにより、第1ピーク情報を入力する構成を説明した。しかしながら、第1ピーク情報の入力の手法は他の手法であってもよい。たとえば、表示されている第1クロマトグラム画像211に対して、ユーザが所望するピークを特定するための座標を入力するようにしてもよい。
【0117】
(3)
図7の例では、ユーザが第1点201および第2点202を入力することにより「ピークのベースライン(第1ピーク情報画像220)」を入力する構成が説明された。しかしながら、ベースラインでは、学習支援装置30がピークを特定できない場合がある。
【0118】
図12は、ベースラインでは、学習支援装置30がピークを特定できない場合の第1クロマトグラム画像211の一例を示す図である。
図12の第1クロマトグラム画像211においては、ピークPa、ピークPb、およびピークPcが示されている。
図12の例では、ピークPbおよびピークPcは繋がっており、ピークPbの開始点Pb1は表示されているが、ピークPbの終了点は表示されていない(
図12の個所S参照)。また、特に図示されないが、開始点および終了点の双方が表示されないピークが表示される場合もある。このような開始点および終了点の少なくとも一方が表示されないピークについては、垂直線により特定されるようにしてもよい。
【0119】
垂直線は、第1クロマトグラム画像211の横軸(時間軸)に垂直または略垂直な線である。
図12の例では、第1点201および第2点202がユーザにより指定されることにより、第1ピーク情報画像220としての垂直線が表示されている。このように、第1ピーク情報画像220は、
図7に示されるベースラインおよび
図12に示される垂直線の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【0120】
なお、
図12の例では、過去結果領域132Aの詳細は記載されていないが、たとえば、類似度画像271、第2特徴量画像275、および垂直線などの第2ピーク情報画像253などが表示される。
【0121】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0122】
(第1項) 一態様に係る学習支援方法は、分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させる方法である。学習支援方法は、分析装置により作成された第1信号波形を取得することを備える。学習支援方法は、第1信号波形を表示装置に表示することを備える。学習支援方法は、複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することを備える。学習支援方法は、第2信号波形と、第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することを備える。学習支援方法は、第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることを備える。学習支援方法は、第1信号波形と第1ピーク情報とに基づいて推定モデルを学習することを備える。
【0123】
このような構成によれば、ユーザは、過去の第2ピーク情報と一貫性を有する第1ピーク情報を入力でき、該第1ピーク情報に基づいて推定モデルを更新できる。よって、アノテーションのバラつきが抑制された教師データを入力することをユーザに促進することである。その結果、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることができる。
【0124】
(第2項) 第1項に記載の学習支援方法において、記憶装置から第2信号波形と第2ピーク情報とを取得することは、第1信号波形と、複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶信号波形のそれぞれとの第1類似度を算出することと、第1類似度が第1閾値以上である記憶信号波形を、第2信号波形として取得することとを含む。また、第1信号波形を表示装置に表示することと、第2信号波形と、第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することとの後に、第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける。
【0125】
このような構成によれば、ユーザは、第1信号波形と類似しかつ過去に作成された第2信号波形と、該第2信号波形のピークを示す第2ピーク情報とを視認しながら、第1クロマトグラムの第1ピーク情報を入力できる。したがって、第1ピーク情報の入力について、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0126】
(第3項) 第2項に記載の学習支援方法において、前記第1信号波形を前記表示装置に表示することと、前記第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることとの後に、前記記憶装置から前記第2信号波形と前記第2ピーク情報とを取得する。前記記憶装置から前記第2信号波形と前記第2ピーク情報とを取得することは、前記第1信号波形と、前記複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶信号波形の各々との第1類似度を算出することと、前記第1ピーク情報と、前記複数のアノテーション済信号に含まれる複数の記憶ピーク情報の各々との第2類似度を算出することと、前記第1類似度が第1閾値以上である信号波形であって、かつ前記第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶信号波形を、前記第2信号波形として取得することとを含む。
【0127】
このような構成によれば、第1類似度が第1閾値以上である信号波形であって、かつ第2類似度が第2閾値以上である記憶ピーク情報によりピークが特定される記憶信号波形を第2信号波形として表示することができる。よって、ユーザは、このような第2信号波形を確認することができる。
【0128】
(第4項) 第2項または第3項に記載の学習支援方法において、第2信号波形は、高類似信号波形と、該高類似信号波形よりも第1類似度が低い低類似信号波形とを含む。第2信号波形と第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することは、高類似信号波形を示す波形画像を低類似信号波形を示す波形画像よりも優先して表示することを含む。
【0129】
このような構成によれば、ユーザは、第1信号波形との類似度が高い第2信号波形を、該類似度が低い第2信号波形よりも優先して視認することができる。
【0130】
(第5項) 第2項~第4項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、第2信号波形と、第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することは、第2信号波形の第1類似度を該第2信号波形を示す第2信号波形画像に対応付けて表示することを含む。
【0131】
このような構成によれば、ユーザは、第2信号波形の第1類似度を視認することができる。
【0132】
(第6項) 第2項~第5項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、第1類似度を算出することは、第1信号波形の第1特徴量と、記憶信号波形の該第1特徴量と同一種別の第2特徴量とに基づいて、第1類似度を算出することを含む。
【0133】
このような構成によれば、比較的簡単な演算で第1類似度を算出できる。
(第7項) 第2項~第6項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、第1類似度を算出することは、第1信号波形により示される分析結果と、記憶信号波形により示される分析結果とに基づいて、第1類似度を算出することを含む。
【0134】
このような構成によれば、比較的簡単な演算で第1類似度を算出できる。
(第8項) 第1項~第7項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、学習支援方法は、第1ピーク情報を示す第1ピーク情報画像を表示装置に表示することをさらに備える。
【0135】
このような構成によれば、ユーザが入力した第1ピーク情報を表示装置において認識することができる。
【0136】
(第9項) 第8項に記載の学習支援方法において、第1ピーク情報画像を表示装置に表示することは、該第1ピーク情報画像により示される第1ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す第1特徴量画像を表示することを含む。また、第2信号波形と第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することは、該第2ピーク情報画像により示される第2ピーク情報により特定されるピークの特徴量を示す第2特徴量画像を表示することを含む。
【0137】
このような構成によれば、ユーザが第1ピーク情報を入力した後、該第1ピーク情報のピークにより特定されるピークの特徴量と、第2ピーク情報により特定されるピークの特徴量とを認識できる。したがって、ユーザは、入力した第1ピーク情報が適切であったか否かなどを確認できる。
【0138】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、学習支援方法は、推定モデルを用いて検出された第1信号波形のピークを特定するための検出ピーク情報を示す検出ピーク情報画像を表示することをさらに備える。検出ピーク情報画像と、第1信号波形とを表示した後に、第1ピーク情報のユーザによる入力を受付ける。
【0139】
このような構成によれば、ユーザは検出ピーク情報を参考にしながら、第1ピーク情報を入力することができる。
【0140】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項に記載の学習支援方法において、学習支援方法は、第1信号波形が表示装置に表示されている状態で、第1点と第2点とのユーザによる入力を受付けることをさらに備える。第2ピーク情報画像は、線画像である。第2信号波形と線画像とで囲まれている領域が、第2信号波形のピークを示す領域である。第1ピーク情報により特定されるピークの領域は、第1点と第2点とを結ぶ線と、第1信号波形に含まれる線とで囲まれた領域である。
【0141】
このような構成によれば、第1信号波形の第1点と第2点とを指定することにより、第1ピーク情報を入力できる。したがって、ユーザは、比較的容易に第1ピーク情報を入力できることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0142】
(第12項) 一態様に係る学習支援プログラムは、分析装置により取得された信号波形のピークを検出するために用いられる推定モデルの学習作業を支援する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。学習支援プログラムは、コンピュータに、分析装置により作成された第1信号波形を取得することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第1信号波形を表示装置に表示することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、複数のアノテーション済信号を記憶する記憶装置から、第1信号波形と類似度の高い第2信号波形と、該第2信号波形のピークを特定するための第2ピーク情報とを取得することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第2信号波形と、第2ピーク情報を示す第2ピーク情報画像とを表示装置に表示することを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、第1信号波形のピークを特定するための第1ピーク情報のユーザによる入力を受付けることを実行させる。学習支援プログラムは、コンピュータに、記第1信号波形と第1ピーク情報とに基づいて推定モデルを学習することとを実行させる。
【0143】
このような構成によれば、ユーザは、過去の第2ピーク情報と一貫性を有する第1ピーク情報を入力でき、該第1ピーク情報に基づいて推定モデルを更新できる。よって、アノテーションのバラつきが抑制された教師データを入力することをユーザに促進することである。その結果、アノテーションのバラつきを抑制して推定モデルの品質を向上させることができる。
【0144】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0145】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
10 分析装置、11 移動相容器、12 ポンプ、13 インジェクタ、14 カラム、15 検出器、18 ディスプレイインターフェース、20 制御部、25 データ解析装置、26 入力インターフェース、30 学習支援装置、32 取得部、34 処理部、36 出力部、51 制御装置、52 記憶装置、61 入力装置、62 表示装置、62A 表示領域、100 分析システム、110 データ収集部、111 ピーク検出処理部、114 モデル記憶部、116 ピーク決定部、117 解析部、121 推定モデル、122 制御プログラム、130 記録媒体、131A 編集領域、132A 過去結果領域、201 第1点、202 第2点、211 第1クロマトグラム画像、212 第2クロマトグラム画像、217 カーソル、220 第1ピーク情報画像、231 第1特徴量画像、253 第2ピーク情報画像、271 類似度画像。