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▶ フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121164
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】医療用チューブおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/08 20060101AFI20230823BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20230823BHJP
   F16L 11/127 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61M16/08 300Z
F16L11/12 M
F16L11/127
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023096417
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2021182516の分割
【原出願日】2012-05-30
(31)【優先権主張番号】61/610,109
(32)【優先日】2012-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/492,970
(32)【優先日】2011-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504298349
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】エルモ、ベンソン、ストークス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ、クリストファー、ノース
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA43
3H111CB14
3H111CB22
3H111CB23
3H111DA02
3H111DA15
3H111DB21
3H111EA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療用チューブおよび医療用チューブを製造する方法を提供する。
【解決手段】チューブは、らせん状に巻回されて細長いチューブを形成する2つ以上の別個の構成要素から作製された複合構造であり得る。たとえば、構成要素のうちの一方をらせん状に巻回された細長い中空体とすることができ、他方の構成要素を、らせん状に巻回された中空体の巻きの間に同様にらせん状に巻回された細長い構造的構成要素とすることができる。しかしながら、チューブを別個の構成要素から作製する必要はない。たとえば、単一材料から形成された(たとえば押出成形された)細長い中空体をらせん状に巻回して細長いチューブを形成することができる。細長い中空体自体は、横断面において、薄い壁部分と、相対的に厚いかまたは剛性である補強部分とを有することができる。チューブを、種々の医療用回路に組み込むことができ、または他の医療用に採用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせん状に巻回されて、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを少なくとも部分的に形成する中空体を備えた、第1細長部材と、
らせん状に巻回されかつ前記第1細長部材の隣接する巻きの間で接合された第2細長部材であって、前記細長いチューブの前記内腔の少なくとも一部を形成する第2細長部材と、
を具備する複合チューブ。
【請求項2】
前記第1細長部材がチューブである、請求項1に記載の複合チューブ。
【請求項3】
前記第1細長部材が、縦断面において、前記内腔に平坦な面がある複数の半球状体を形成している、請求項1または2に記載の複合チューブ。
【請求項4】
隣接する半球状体が、前記第2細長部材の上方の間隙によって分離されている、請求項3に記載の複合チューブ。
【請求項5】
隣接する半球状体が、互いに直接接続されていない、請求項3または4に記載の複合チューブ。
【請求項6】
前記半球状体が穿孔を有している、請求項3~5のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項7】
前記第2細長部材が、前記内腔に隣接して幅が広くなり前記内腔から半径方向の距離において幅が狭くなる縦断面を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項8】
前記第2細長部材が、略三角形である縦断面を有している、請求項7に記載の複合チューブ。
【請求項9】
前記第2細長部材が、略T字型またはY字型である縦断面を有している、請求項7に記載の複合チューブ。
【請求項10】
前記第2細長部材に埋め込まれるかまたは封入された1つまたは複数の導電性フィラメントを具備する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項11】
前記導電性フィラメントが加熱フィラメントである、請求項10に記載の複合チューブ。
【請求項12】
前記導電性フィラメントが検知フィラメントである、請求項10に記載の複合チューブ。
【請求項13】
前記第2細長部材に埋め込まれるかまたは封入された2つの導電性フィラメントを具備する、請求項10~12のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項14】
前記第2細長部材に埋め込まれるかまたは封入された4つの導電性フィラメントを具備する、請求項10~13のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項15】
導電性フィラメントの対が、前記複合チューブの一端において接続ループになっている、請求項10~14のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項16】
前記第2細長部材が、略三角形、略T字型または略Y字型である縦断面を有し、前記1つまたは複数の導電性フィラメントが、前記第2細長部材の前記三角形、前記T字または前記Y字の両側に埋め込まれるかまたは封入されている、請求項10~15のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項17】
前記1つまたは複数のフィラメントが前記内腔壁から間隔を空けて配置されている、請求項10~16のいずれか一項に記載の複合チューブ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む医療用回路構成要素。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む吸気チューブ。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む呼気チューブ。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含むPAP構成要素。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む送気回路構成要素。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む診査構成要素。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合チューブを含む外科手術構成要素。
【請求項25】
複合チューブを製造する方法であって、
中空体を備える第1細長部材と、前記第1細長部材に対する構造的支持を提供するように構成された第2細長部材とを提供するステップと、
マンドレルの周囲に前記第2細長部材を、前記第2細長部材の対向する側縁部分が隣接する巻付け部において間隔を空けて配置されるように、らせん状に巻き付け、それにより第2細長部材らせんを形成するステップと、
前記第2細長部材らせんの周囲に前記第1細長部材を、前記第1細長部材のいくつかの部分が前記第2細長部材らせんの隣接する巻付け部にオーバラップし、前記第1細長部材の一部が前記第2細長部材らせんの前記巻付け部の間の前記空間において前記マンドレルに隣接して配置されるように、らせん状に巻き付け、それにより第1細長部材らせんを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項26】
前記第1細長部材の端部に、大気圧より高い圧力で空気を供給するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2細長部材らせんおよび前記第1細長部材らせんを冷却して、長手方向軸に沿って延在する内腔と前記内腔を包囲する中空空間とを有する複合チューブを形成するステップをさらに含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2細長部材を形成するステップをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2細長部材を形成するステップが、前記第2細長部材を第2押出機で押出成形することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2押出機が、前記第2細長部材に1つまたは複数の導電性フィラメントを封入するように構成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2細長部材を形成するステップが、前記第2細長部材に導電性フィラメントを埋め込むことを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記導電性フィラメントが前記第2細長部材に非反応性である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記導電性フィラメントがアルミニウムまたは銅を含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記複合チューブの一端において導電性フィラメントの対を接続ループにするステップをさらに含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1細長部材を形成するステップを含む、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1細長部材を形成するステップが、前記第1細長部材を第1押出機で押出成形することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1押出機が前記第2押出機とは別個である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
らせん状に巻回されて、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成する細長い中空体であって、縦断面において前記中空体の少なくとも一部を画定する壁を有している、細長い中空体と、
前記細長い中空体の隣接する巻きの間にらせん状に配置されている、前記細長い中空体の長さに沿って延在している補強部分であって、前記細長いチューブの前記内腔の一部を形成する補強部分と、
を具備し、
前記補強部分が、前記細長い中空体の前記壁より相対的に厚いかまたは剛性である、医療用チューブ。
【請求項39】
前記補強部分が、前記細長い中空体と同じ材料片から形成されている、請求項38に記載の医療用チューブ。
【請求項40】
前記細長い中空体が、横断面において、前記細長い中空体の両側に2つの補強部分を備え、前記細長い中空体のらせん状巻回が、前記補強部分の対向する縁が前記細長い中空体の隣接する巻きの上で接触するように、隣接する補強部分を互いに接合する、請求項39に記載の医療用チューブ。
【請求項41】
前記補強部分の対向する側縁が、前記細長い中空体の隣接する巻きにオーバラップしている、請求項40に記載の医療用チューブ。
【請求項42】
前記補強部分が、前記細長い中空体とは別個の材料片から作製されている、請求項38に記載の医療用チューブ。
【請求項43】
前記中空体が、縦断面において、前記内腔に平坦な面がある複数の半球状体を形成している、請求項38~42のいずれか一項に記載の医療用チューブ。
【請求項44】
前記半球状体が穿孔を有している、請求項43に記載の医療用チューブ。
【請求項45】
前記補強部分に埋め込まれるかまたは封入された1つまたは複数の導電性フィラメントを具備する、請求項38~44のいずれか一項に記載の医療用チューブ。
【請求項46】
前記導電性フィラメントが加熱フィラメントである、請求項45に記載の医療用チューブ。
【請求項47】
前記導電性フィラメントが検知フィラメントである、請求項45に記載の医療用チューブ。
【請求項48】
2つの導電性フィラメントを具備し、一方の導電性フィラメントが前記補強部分の各々に埋め込まれるかまたは封入されている、請求項40または41に記載の医療用チューブ。
【請求項49】
前記細長い中空体の一方の側のみに配置された2つの導電性フィラメントを具備する、請求項40または41に記載の医療用チューブ。
【請求項50】
導電性フィラメントの対が、前記細長いチューブの一端において接続ループになっている、請求項35~49のいずれか一項に記載の医療用チューブ。
【請求項51】
前記1つまたは複数のフィラメントが、前記内腔壁から間隔を空けて配置されている、請求項35~50のいずれか一項に記載の医療用チューブ。
【請求項52】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む医療用回路構成要素。
【請求項53】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む吸気チューブ。
【請求項54】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む呼気チューブ。
【請求項55】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含むPAP構成要素。
【請求項56】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む送気回路構成要素。
【請求項57】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む診査構成要素。
【請求項58】
請求項38~51のいずれか一項に記載の医療用チューブを含む外科手術構成要素。
【請求項59】
医療用チューブを製造する方法であって、
マンドレルの周囲に細長い中空体をらせん状に巻回して、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成するステップであって、前記細長い中空体が、横断面において、前記中空体の少なくとも一部を画定する壁と、前記内腔の壁の一部を形成する、前記細長い本体の両側の2つの補強部分とを有し、前記2つの補強部分が、前記中空体の少なくとも一部を画定する壁より相対的に厚いかまたは剛性である、ステップと、
隣接する補強部分を、前記補強部分の対向する縁が前記細長い中空体の隣接する巻きの上で接触するように互いに接合するステップと、
を含む方法。
【請求項60】
隣接する補強部分を互いに接合するステップが、前記補強部分の縁をオーバラップさせる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記細長い中空体の端部に大気圧より高い圧力で空気を供給するステップをさらに含む、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記細長い中空体を冷却して前記隣接する補強部分を互いに接合するステップをさらに含む、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記細長い中空体を押出成形するステップをさらに含む、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記補強部分に導電性フィラメントを埋め込むステップをさらに含む、請求項59~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記細長いチューブの一端において導電性フィラメントの対を接続ループにするステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して医療用に好適なチューブに関し、特に、気道陽圧(PAP)、レスピレータ(人工呼吸器)、麻酔、ベンチレータ(人工換気器)および送気(insufflation)システム等、患者にガスを提供しかつ/または患者からガスを除去するために好適な医療用回路で使用されるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用回路では、さまざまな構成要素が患者にかつ患者から温かいガスおよび/または加湿ガスを搬送する。たとえば、PAPおよび補助呼吸回路等のいくつかの呼吸回路では、患者によって吸入されるガスは、吸気チューブを介して加熱器-加湿器から送達される。別の例では、チューブは、加湿ガス(一般にCO)を送気回路において腹腔内に送達することができる。これは、患者の内臓の「乾燥」を防止するのに役立つことができ、外科手術からの回復に必要な時間を短縮することができる。非加熱管により、周囲冷却に対して熱が著しく損失する。この冷却により、温かい加湿空気を搬送している管の長さに沿って望ましくない凝結または「レインアウト」がもたらされる場合がある。熱損失に対して断熱し、たとえば医療用回路における改善された温度および/または湿度の制御を可能にする管が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書において、医療用チューブおよび医療用チューブを製造する方法はさまざまな実施形態で開示されている。いくつかの実施形態では、チューブを、らせん状に巻回されて細長いチューブを形成する2つ以上の別個の構成要素から作製された複合構造とすることができる。たとえば、構成要素のうちの一方を、らせん状に巻回された細長い中空体とすることができ、他方の構成要素を、らせん状に巻回された中空体の巻きの間に同様にらせん状に巻回された細長い構造的構成要素とすることができる。他の実施形態では、チューブを別個の構成要素が作製する必要はない。たとえば、単一材料から形成された(たとえば押出成形された)細長い中空体をらせん状に巻回して細長いチューブを形成することができる。細長い中空体自体は、横断面において、薄い壁部分と、相対的により厚いかまたは剛性である補強部分とを有することができる。チューブを、種々の医療用回路に組み込むことができ、または他の医療用に採用することができる。
【0004】
少なくとも1つの実施形態では、複合チューブは、らせん状に巻回されて、長手方向軸と、長手方向軸に沿って延在する内腔と、内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを少なくとも部分的に形成する中空体を備える、第1細長部材を備えることができる。第2細長部材をらせん状に巻回し、第1細長部材の隣接する巻きの間に接合することができ、第2細長部材は、細長いチューブの内腔の少なくとも一部を形成する。「第1細長部材」および「第2細長部材」という名称は、必ずしも、構成要素が組み立てられる順序等の順序を含むものではない。本明細書に記載するように、第1細長部材および第2細長部材はまた、単一チューブ状要素の一部でもあり得る。
【0005】
さまざまな実施形態では、上述した構成要素は、以下の特性とともに本開示の別の場所に記載されている特性のうちの1つ、いくつかまたはすべてを有する。
【0006】
第1細長部材はチューブであり得る。第1細長部材は、縦断面において、内腔に平坦面がある複数の半球状体(bubble)を形成することができる。隣接する半球状体を、第2細長部材の上方の間隙によって分離することができ、すなわちそれらは互いに直接連結されない場合がある。半球状体は穿孔を有することができる。第2細長部材は、内腔に隣接して幅が広くなり内腔から半径方向距離において幅が狭くなる縦断面を有することができる。特に、第2細長部材は、略三角形、略T字型または略Y字型である縦断面を有することができる。第2細長部材に、1つまたは複数の導電性フィラメントを埋め込むかまたは封入することができる。1つまたは複数の導電性フィラメントは、加熱フィラメント(またはより詳細には抵抗加熱フィラメント)および/または検知フィラメントであり得る。チューブは、2つまたは4つの導電性フィラメント等、導電性フィラメントの対を備えることができる。導電性フィラメントの対を、複合チューブの一端において接続ループにすることができる。1つまたは複数の導電性フィラメントを、内腔壁から間隔を空けて配置することができる。少なくとも1つの実施形態では、第2細長部材は、略三角形、略T字型または略Y字型である縦断面を有することができ、1つまたは複数の導電性フィラメントを、第2細長部材の三角形、T字またはY字の両側に埋め込むかまたは封入することができる。
【0007】
上記実施形態のうちのいずれかまたはすべてによる上述した構成要素を、他の用途もあるが特に、医療用回路構成要素、吸気チューブ、呼気チューブ、PAP構成要素、送気回路、診査構成要素または外科手術構成要素に組み込むことができる。
【0008】
複合チューブを製造する方法もまた開示されている。結果として得られるチューブは、上述したかまたは本開示のいずれかの場所に記載されている特性のうちの1つ、いくつかまたはすべてを有することができる。少なくとも1つの実施形態では、本方法は、中空体を備える第1細長部材と、第1細長部材に対して構造的支持を提供するように構成された第2細長部材とを提供するステップを含む。第2細長部材は、第2細長部材の対向する側縁部分が隣接する巻付け部(wrap)の上で間隔を空けて配置されるように、マンドレルの周囲にらせん状に巻き付けられ、それにより第2細長部材らせんが形成される。第1細長部材は第2細長部材らせんの周囲にらせん状に巻き付けられ、その際、第1細長部材のいくつかの部分は第2細長部材らせんの隣接する巻付け部にオーバラップし、第1細長部材の一部は、第2細長部材らせんの巻付け部の間の空間においてマンドレルに隣接して配置され、それにより第1細長部材らせんが形成される。
【0009】
さまざまな実施形態では、上述した方法は、以下のうちの1つ、いくつかまたはすべてを含むことができる。本方法は、第1細長部材の端部に大気圧より高い圧力で空気を供給することを含むことができる。本方法は、第2細長部材らせんおよび第1細長部材らせんを冷却し、それにより、長手方向軸に沿って延在する内腔と内腔を包囲する中空空間とを有する複合チューブを形成するステップを含むことができる。本方法は、第1細長部材を形成するステップを含むことができる。本方法は、第1細長部材を第1押出機によって押出成形するステップを含むことができる。本方法は、第2細長部材を形成するステップを含むことができる。本方法は、第2細長部材を第2押出機によって押出成形するステップを含むことができる。第2押出機を、第2細長部材に1つまたは複数の導電性フィラメントを封入するように構成することができる。第2細長部材を形成するステップは、第2細長部材に導電性フィラメントを埋め込むことを含むことができる。導電性フィラメントは、第2細長部材と非反応性であり得る。導電性フィラメントは、アルミニウムあるいは銅の合金または他の導電性材料を含むことができる。本方法は、複合チューブの一端において導電性フィラメントの対を接続ループにするステップをさらに含むことができる。第1押出機は第2押出機とは別個であり得る。
【0010】
医療用チューブもまた開示されている。少なくとも1つの実施形態では、チューブは、らせん状に巻回されて、長手方向軸と、長手方向軸に沿って延在する内腔と、内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成する細長い中空体であって、縦断面において中空体の少なくとも一部を画定する壁を有している、細長い中空体を備える。チューブは、細長い中空体の隣接する巻きの間にらせん状に配置されている、細長い中空体の長さに沿って延在している補強部分であって、細長いチューブの前記内腔の一部を形成する補強部分をさらに備えることができる。補強部分は、細長い中空体の壁より相対的に厚いかまたは剛性であり得る。
【0011】
さまざまな実施形態では、上述したチューブは、以下の特性とともに本開示の別の場所に記載されている特性のうちの1つ、いくつかまたはすべてを有する。補強部分を、細長い中空体と同じ材料片から形成することができる。細長い中空体は、横断面において、細長い中空体の両側に2つの補強部分を備えることができ、細長い中空体のらせん状巻回は、補強部分の対向する縁が細長い中空体の隣接する巻きの上で接触するように、隣接する補強部分を互いに接合している。補強部分の対向する側縁が、細長い中空体の隣接する巻きの上にオーバラップすることができる。補強部分を、細長い中空体とは別個の材料片から作製することができる。中空体は、縦断面において、内腔に平坦な面がある複数の半球状体を形成することができる。半球状体は穿孔を有することができる。本医療用チューブはまた、補強部分に埋め込まれるかまたは封入された1つまたは複数の導電性フィラメントを備えることも可能である。導電性フィラメントは加熱フィラメントおよび/または検知フィラメントであり得る。本医療用チューブは、2つの導電性フィラメントを備えることができ、1つの導電性フィラメントが補強部分の各々に埋め込まれるかまたは封入されている。医療用チューブは、細長い中空体の一方の側のみに配置された2つの導電性フィラメントを備えることができる。導電性フィラメントの対を、細長いチューブの一端において接続ループにすることができる。1つまたは複数のフィラメントを、内腔壁から間隔を空けて配置することができる。
【0012】
上記実施形態のうちのいずれかまたはすべてによる上述したチューブを、他の用途もあるが特に、医療用回路構成要素、吸気チューブ、呼気チューブ、PAP構成要素、送気回路、診査構成要素または外科手術構成要素に組み込むことができる。
【0013】
医療用チューブを製造する方法もまた開示されている。少なくとも1つの実施形態では、本方法は、マンドレルの周囲に細長い中空体をらせん状に巻回して、長手方向軸と、長手方向軸に沿って延在する内腔と、内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成するステップであって、細長い中空体が、横断面において、中空体の少なくとも一部を画定する壁と、内腔の壁の一部を形成する細長い本体の両側の2つの補強部分とを有し、2つの補強部分が、中空体の少なくとも一部を画定する壁より相対的に厚いかまたは剛性である、ステップを含む。本方法は、隣接する補強部分を、補強部分の対向する縁が細長い中空体の隣接する巻きの上で接触するように互いに接合するステップをさらに含むことができる。
【0014】
さまざまな実施形態では、以下の特性とともに本開示の別の場所に記載されている他のあらゆる特性のうちの1つ、いくつかまたはすべてを有することができる。隣接する補強部分を互いに接合することにより、補強部分の縁をオーバラップさせることができる。本方法は、細長い中空体の端部に大気圧より高い圧力で空気を供給するステップをさらに含むことができる。本方法は、細長い中空体を冷却して隣接する補強部分を互いに接合するステップをさらに含むことができる。本方法は、細長い中空体を押出成形するステップをさらに含むことができる。本方法は、補強部分に導電性フィラメントを埋め込むステップをさらに含むことができる。本方法は、細長いチューブの一端において導電性フィラメントの対を接続ループにするステップをさらに含むことができる。
【0015】
本発明を要約する目的で、ここでは、本発明のいくつかの態様、利点および新規の特徴について記載した。こうした利点の必ずしもすべてが、本発明のいずれの特定の実施形態によっても達成され得るとは限らないことが理解されるべきである。したがって、本発明を、本明細書に教示されているような1つの利点または利点群を、必ずしも他の利点を本明細書において教示されまたは示唆され得るように達成することなく、達成するかまたは最大化する方法で、具現化しまたは実行することができる。
【0016】
ここで、図面を参照して、開示するシステムおよび方法のさまざまな特徴を実施する例示的実施形態について説明する。図面および関連する説明は、本開示の範囲を限定するためではなく実施形態を例示するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1つまたは複数の医療用チューブを組み込んだ医療用回路の概略図を示す。
図2A】複合チューブ例の一部の側面図を示す。
図2B図2Aの複合チューブ例に類似する頂部チューブの縦断面を示す。
図2C】複合チューブの第1細長部材を示す別の縦断面を示す。
図2D】チューブの頂部の別の縦断面を示す。
図2E】チューブの頂部の別の縦断面を示す。
図3A】複合チューブの第2細長部材の横断面を示す。
図3B】第2細長部材の別の横断面を示す。
図3C】別の第2細長部材例を示す。
図3D】別の第2細長部材例を示す。
図3E】別の第2細長部材例を示す。
図3F】別の第2細長部材例を示す。
図3G】別の第2細長部材例を示す。
図4A】複合チューブを形成する方法における態様を示す。
図4B】らせん状に巻回された第2細長部材を示す。
図4C】複合チューブを形成する方法における別の態様を示す。
図4D】複合チューブを形成する方法における別の態様を示す。
図4E】複合チューブを形成する方法における別の態様を示す。
図4F】複合チューブを形成する方法における別の態様を示す。
図5A-B】医療用チューブを形成するようにらせん状に巻回されている単一細長中空体を示す別の例を示す。
図5C-F】医療用チューブを形成するようにらせん状に巻回されている他の単一細長中空体の例を示す。
図6】少なくとも1つの実施形態による医療用回路例を示す。
図7】少なくとも1つの実施形態による送気システムを示す。
図8】少なくとも1つの実施形態による同軸チューブの概略図である。
図9A-C】熱効率を向上させるように構成された第1細長部材形状の例を示す。
図9D-F】熱効率を向上させるように構成されたフィラメント配置の例を示す。
図10A-C】第1細長部材積層の例を示す。
図11A-D】さまざまな実施形態によるチューブの曲率半径特性を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を通して、参照番号を再使用して、参照される(または同様の)要素間の対応関係を示す。さらに、各参照番号の最初の数字は、その要素が最初に現れる図を示す。
【0019】
本明細書に記載する装置および方法を実施するいくつかの例示的な実施形態に関する詳細について、以下、図を参照して記載する。本発明は、これらの記載された実施形態に限定されない。
【0020】
1つまたは複数の医療用チューブを備える呼吸回路
本開示をより詳細に理解するために、最初に図1を参照する。図1は、1つまたは複数の医療用チューブを含む、少なくとも1つの実施形態による呼吸回路を示す。チューブは、広範な用語であり、それには、当業者に対してその通常のかつ慣例の意味が与えられるべきであり(すなわち、特別な意味または特化された意味に限定されるべきではなく)、限定なしに非円柱状通路を含む。いくつかの実施形態は、後により詳細に説明するように、概して2つ以上の部分、または、特に、いくつかの実施形態では、2つ以上の構成要素を備えるチューブとして定義することができる複合チューブを組み込むことができる。こうした呼吸回路は、持続気道陽圧(PAP)システム、可変PAPシステムあるいは二段階PAPシステムまたは他の形態の呼吸療法であり得る。
【0021】
以下のように、図1の回路にガスを搬送することができる。乾燥ガスは、ベンチレータ/ブロワ105から、乾燥ガスを加湿する加湿器107まで進む。加湿器107は、吸気チューブ103の入口109(加湿ガスを受け入れる端部)にポート111を介して連結し、それにより、加湿ガスを吸気チューブ103に供給する。吸気チューブは、呼吸ガスを患者に送達するように構成されるチューブであり、後により詳細に説明するように複合チューブから作製され得る。ガスは、吸気チューブ103を通って出口113(加湿ガスを排出する端部)まで、その後、出口113に接続された患者インタフェース115を通って患者101まで流れる。
【0022】
呼気チューブ117もまた、患者インタフェース115に連結している。呼気チューブは、吐出された加湿ガスを患者から遠ざけるように構成されるチューブである。ここで、呼気チューブ117は、患者インタフェース115からの吐出された加湿ガスをベンチレータ/ブロワ105に戻す。
【0023】
この例では、乾燥ガスは、通気孔119からベンチレータ/ブロワ105に入る。ファン121が、空気または他のガスを通気孔119から引き込むことによって、ベンチレータ/ブロワへのガス流を促進することができる。ファン121を、たとえば可変速ファンとすることができ、その場合、電子コントローラ123がファン速度を制御する。特に、電子コントローラ123の機能を、電子マスタコントローラ125によって、マスタコントローラ125からの入力およびダイヤル127を介する圧力またはファン速度の使用者が設定した所定所要値(事前設定値)に応じて制御することができる。
【0024】
加湿器107は、ある容量の水130または他の好適な加湿液を含む加湿チャンバ129を備えている。好ましくは、加湿チャンバ129は、使用後に加湿器107から取外し可能である。取外し可能であることにより、加湿チャンバ129をより容易に滅菌または廃棄することができる。しかしながら、加湿器107の加湿チャンバ129部分を一体構造とすることができる。加湿チャンバ129の本体を、非導電性ガラスまたはプラスチック材料から形成することができる。しかしながら、加湿チャンバ129はまた導電性構成要素を含むことも可能である。たとえば、加湿チャンバ129は、加湿器107のヒータプレート131と接触するかまたはそれに関連する高熱伝導性基部(たとえばアルミニウム基部)を有することができる。
【0025】
加湿器107はまた、電子制御部も備えることができる。この例では、加湿器107は、電子、アナログまたはデジタルのマスタコントローラ125を備えている。好ましくは、マスタコントローラ125は、関連するメモリに格納されたコンピュータソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサベースコントローラである。たとえばユーザインタフェース133を介する使用者が設定した湿度値入力または温度値入力および他の入力に応じて、マスタコントローラ125は、加湿チャンバ129内の水130を加熱するためにヒータプレート131に通電すべき時(または通電すべきレベル)を確定する。
【0026】
あらゆる好適な患者インタフェース115を組み込むことができる。患者インタフェースは、広範な用語であり、それには、当業者に対してその通常のかつ慣例の意味が与えられるべきであり(すなわち、特別の意味または特化された意味に限定されるべきではなく)、限定なしにマスク(気管マスク、フェイスマスクおよび鼻マスク等)、カニューレおよび鼻枕を含む。温度プローブ135は、患者インタフェース115近くで吸気チューブ103にまたは患者インタフェース115に連結することができる。温度プローブ135は、患者インタフェース115の近くまたは患者インタフェース115における温度をモニタリングする。温度プローブに関連する加熱フィラメント(図示せず)を用いて、吸気チューブ103および/または患者インタフェース115の温度を、飽和温度を超えて上昇させるように、患者インタフェース115および/または吸気チューブ103の温度を調整することができ、それにより望ましくない凝結に対する可能性が低減する。
【0027】
図1において、吐出された加湿ガスは、患者インタフェース115から呼気チューブ117を介してベンチレータ/ブロワ105まで戻される。呼気チューブ117を、後により詳細に説明するように複合チューブとすることも可能である。しかしながら、呼気チューブ117を、本技術分野において以前から既知であるように、医療用チューブとすることも可能である。いずれの場合も、吸気チューブ103に関して上述したように、凝結の可能性を低減するように、呼気チューブ117に温度プローブおよび/または加熱フィラメントを組み込むことができる。さらに、呼気チューブ117は、吐出ガスをベンチレータ/ブロワ105に戻す必要はない。別法として、吐出された加湿ガスを、周囲環境に直接、または空気スクラバ/フィルタ(図示せず)等の他の補助機器に送ることができる。いくつかの実施形態では、呼気チューブは完全に省略される。
【0028】
複合チューブ
図2Aは、例としての複合チューブ201の一部の側面図を示す。概して、複合チューブ201は、第1細長部材203および第2細長部材205を備えている。部材は、広範な用語であり、それには、当業者に対してその通常のかつ慣例の意味が与えられるべきであり(すなわち、特別の意味または特化された意味に限定されるべきではなく)、限定なしに一体化された部品、一体化された構成要素および別個の構成要素を含む。したがって、図2Aは2つの別個の構成要素から作製された実施形態を示すが、(後に図5A図5Dに記載するような)他の実施形態では、第1細長部材203および第2細長部材205はまた、単一材料から形成されたチューブ内の領域を表すことも可能であることが理解されよう。したがって、第1細長部材203はチューブの中空部分を表すことができ、第2細長部材205は、中空部分に構造的支持を加える、チューブの構造的支持部分または補強部分を表す。中空部分および構造的支持部分は、本明細書に記載するように、らせん構造を有することができる。複合チューブ201を用いて、上述したように吸気チューブ103および/または呼気チューブ117、後述するように同軸チューブまたは本開示の別の場所で記載されるようなあらゆる他のチューブを形成することができる。
【0029】
この例では、第1細長部材203は、らせん状に巻回されて、長手方向軸LA-LAおよび長手方向軸LA-LAに沿って延在する内腔207を有する細長いチューブを少なくとも部分的に形成する、中空体を含む。少なくとも1つの実施形態では、第1細長部材203はチューブである。好ましくは、第1細長部材203は可撓性がある。さらに、第1細長部材203は、好ましくは透明であるか、または少なくとも半透明あるいは半不透明である。ある程度の光透過性により、介護者または使用者が、内腔207に閉塞あるいは汚染物質がないか検査するか、または湿気の存在を確認することができる。第1細長部材203の本体に対して、医療用プラスチックを含む種々のプラスチックが好適である。好適な材料の例としては、ポリオレフィンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性コポリエステルエラストマー、EPDM-ポリプロピレン混合物および熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0030】
第1細長部材203の中空体構造は、複合チューブ201に対する断熱特性に寄与する。断熱チューブ201は、上で説明したように熱損失を防止するため望ましい。これにより、チューブ201は、最小エネルギー消費でガスの調整された状態を維持しながら、加熱器-加湿器から患者にガスを送達することができる。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、第1細長部材203の中空部分にはガスが充填されている。ガスは、熱伝導率が低く(300Kで2.62×10-2W/m・K)非常にコストが低いため望ましい、空気であり得る。空気より粘度の高いガスもまた、粘度が高いことにより対流熱伝達が低減するため、有利に使用することができる。したがって、アルゴン(300Kで17.72×10-3W/m・K)、クリプトン(300Kで9.43×10-3W/m・K)およびキセノン(300Kで5.65×10-3W/m・K)等のガスが、断熱性能を向上させることができる。これらのガスの各々は、非毒性であり、化学的に不活性であり、耐火性でありかつ市販されている。第1細長部材203の中空部分を、チューブの両端で封止することができ、それにより内部のガスが実質的に沈滞する。別法として、中空部分を、チューブの患者側端からコントローラに圧力フィードバックを伝える圧力サンプルライン等の二次空気圧接続とすることができる。第1細長部材203を、任意選択的に穿孔することができる。たとえば、第1細長部材203の表面を、内腔207とは反対側の外側に面する面で穿孔することができる。別の実施形態では、第1細長部材203の中空部分が液体で充填される。液体の例としては、水または熱容量の高い他の生体適合性液体を挙げることができる。たとえば、ナノ流体を使用することができる。好適な熱容量のナノ流体例は、水とアルミニウム等の物質のナノ粒子とを含む。
【0032】
第2細長部材205もまた、らせん状に巻回され、第1細長部材203の隣接する巻きの間で第1細長部材203に接合される。第2細長部材205は、細長いチューブの内腔207の少なくとも一部を形成する。第2細長部材205は、第1細長部材203用の構造的支持として作用する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、第2細長部材205は、基部において(内腔207に隣接して)幅が広く、頂部において幅が狭くなっている。たとえば、第2細長部材の形状を、略三角形、略T字型または略Y字型とすることができる。しかしながら、対応する第1細長部材203の輪郭に合うあらゆる形状が好適である。
【0034】
好ましくは、第2細長部材205は、チューブの曲げを容易にするように可撓性がある。望ましくは、第2細長部材205は第1細長部材203より可撓性がない。これにより、第2細長部材205の第1細長部材203を構造的に支持する能力が向上する。たとえば、第2細長部材205の弾性率は好ましくは30MPa~50MPa(または約30MPa~50MPa)である。第1細長部材203の弾性率は、第2細長部材205の弾性率より低い。第2細長部材205を、中実または概して中実とすることができる。さらに、第2細長部材205は、フィラメント、特に加熱フィラメントまたはセンサ(図示せず)等、導電性材料を封入するかまたは収容することができる。加熱フィラメントは、湿気を含む空気からの凝縮液が発生する可能性がある低温表面を最小限にすることができる。加熱フィラメントを使用して、複合チューブ201の内腔207内のガスの温度プロファイルを変更することも可能である。第2細長部材205の本体に対して、医療用プラスチックを含む種々のポリマーおよびプラスチックが好適である。好適な材料の例としては、ポリオレフィンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性コポリエステルエラストマー、EPDM-ポリプロピレン混合物および熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。いくつかの実施形態では、第1細長部材203および第2細長部材205を、同じ材料から作製することができる。第2細長部材205を、第1細長部材203とは異なる色の材料から作製することも可能であり、第2細長部材205は透明、半透明または不透明であり得る。たとえば、一実施形態では、第1細長部材203を透明プラスチックから作製することができ、第2細長部材205を不透明な青色(または他の色)のプラスチックから作製することができる。
【0035】
可撓性の中空体および一体型支持体を備えるこのらせん状に巻回された構造は、耐破砕性を提供しながら、チューブ壁を、キンク、閉塞または潰れなしに短半径曲げを可能にするのに十分可撓性なままにすることができる。好ましくは、ISO5367:2000(E)による曲げによる流れ抵抗の増大に対する試験において定義されるように、チューブを、キンク、閉塞または潰れなしに、25mm径金属円柱の周囲で曲げることができる。この構造はまた、平滑な内腔207面(チューブボア)も提供することができ、それは、チューブに付着物がない状態にするのに役立ち、ガスの流れを促進する。中空体は、チューブを軽量なままにすることができる一方で、チューブの断熱特性を向上させることが分かった。
【0036】
上で説明したように、複合チューブ201を、呼吸回路における呼気チューブおよび/または吸気チューブ、または呼吸回路の一部として使用することができる。好ましくは、複合チューブ201は、少なくとも吸気チューブとして使用される。
【0037】
図2Bは、図2Aの例としての複合チューブ201の頂部の縦断面を示す。図2Bは、図2Aと同じ向きを有している。この例は、第1細長部材203の中空体形状をさらに示す。この例で分かるように、第1細長部材203は、縦断面において複数の中空半球状体を形成している。第1細長部材203のいくつかの部分209は、第2細長部材205の隣接する巻付け部にオーバラップする。第1細長部材203の一部分211は内腔(チューブボア)の壁を形成する。
【0038】
第1細長部材203の隣接する巻きの間に、すなわち隣接する半球状体の間に間隙213があることにより、複合チューブ201の全体的な断熱特性が意外なほどに向上することが分かった。したがって、いくつかの実施形態では、隣接する半球状体は間隙213によって分離される。さらに、いくつかの実施形態は、隣接する半球状体の間に間隙213を設けることにより伝熱抵抗(R値)が増大し、したがって複合チューブ201の熱伝導率が低下するということの実現を含む。この間隙構造はまた、より短い半径の曲げを可能にすることにより複合チューブ201の可撓性を向上させることも分かった。図2Bに示すようなT字型の第2細長部材205は、隣接する半球状体の間に間隙213を維持するのに役立つことができる。それにも関らず、いくつかの実施形態では、隣接する半球状体は接触している。たとえば、隣接する半球状体を互いに結合することができる。
【0039】
ガス流を加熱するかまたは検知するために、第2細長部材205内に1つまたは複数の導電性材料を配置することができる。この例では、第2細長部材205内に2つの加熱フィラメント215が、「T」の垂直部分の各側に1つ、封入されている。加熱フィラメント215は、アルミニウム(Al)および/または銅(Cu)の合金または導電性ポリマー等の導電性材料を含む。好ましくは、第2細長部材205を形成する材料は、加熱フィラメント215がそれらの動作温度に達した時に加熱フィラメント215内の金属と非反応性であるように選択される。フィラメント215を、内腔207に露出しないように内腔207から間隔を空けて配置することができる。複合チューブの一端において、フィラメントの対を接続ループにすることができる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、第2細長部材205内に複数のフィラメントが配置されている。フィラメントを、共通のレールを共有するように電気的に合わせて接続することができる。たとえば、加熱フィラメント等の第1フィラメントを、第2細長部材205の第1側部に配置することができる。検知フィラメント等の第2フィラメントを、第2細長部材205の第2側部に配置することができる。接地フィラメント等の第3フィラメントを、第1フィラメントと第2フィラメントとの間に配置することができる。第1フィラメント、第2フィラメントおよび/または第3フィラメントを、第2細長部材205の一端において合わせて接続することができる。
【0041】
図2Cは、図2Bにおける半球状体の縦断面を示す。図示するように、第2細長部材205の隣接する巻付け部にオーバラップする第1細長部材203の部分209は、結合領域217の程度によって特徴付けられる。結合領域が広いほど、第1細長部材と第2細長部材との接触面における剥離に対するチューブの抵抗が増大する。さらにまたは別法として、ビードおよび/または半球状体の形状を、結合領域217を増大させるように適合させることができる。たとえば、図2Dは、左側に比較的小さい結合領域を示す。図9Bもまた、相対的に小さい結合領域を実証する。対照的に、図2Eは、ビードのサイズおよび形状のために、図2Dに示すものよりはるかに広い結合領域を有している。図9Aおよび図9Cもまた、相対的に広い結合領域を示す。これらの図の各々については後により詳細に考察する。図2E図9Aおよび図9Cの構成はいくつかの実施形態では好ましい可能性があるが、図2D図9Bおよび他の変形の構成を含む他の構成を、必要に応じて他の実施形態で利用することができる。
【0042】
図2Dは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図2Dは、図2Bと同じ向きを有している。この例は、第1細長部材203の中空体形状をさらに例示し、第1細長部材203が縦断面においていかに複数の中空半球状体を形成するかを実証する。この例では、半球状体は、間隙213によって互いに完全に分離している。略三角形状の第2細長部材205が、第1細長部材203を支持している。
【0043】
図2Eは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図2Eは、図2Bと同じ向きを有している。図2Eの例では、加熱フィラメント215は、図2Bのフィラメント215より互いから離れて間隔が空けられている。加熱フィラメントの間の空間を増大させることにより、加熱効率を向上させることができることが分かり、いくつかの実施形態はこの実施を含む。加熱効率は、チューブから出力されるかまたは回復可能なエネルギーの量に対するチューブに入力される熱の量の比を指す。一般的に、チューブから放散されるエネルギー(または熱)が多いほど、加熱効率が低くなる。加熱性能を向上させるために、加熱フィラメント215を、チューブのボアに沿って等しく(または略等しく)間隔を空けて配置することができる。別法として、フィラメント215を、第2細長部材205の末端に配置することができ、それにより製造をより単純にすることができる。
【0044】
次に、第2細長部材205に対する構成例を実証する図3A図3Gを参照する。図3Aは、図2Bに示すT字型に類似する形状を有する第2細長部材205の断面を示す。この例示的実施形態では、第2細長部材205は加熱フィラメントを有していない。後述するようなT字型の変形および三角形状を含む、第2細長部材205に対する他の形状も利用することができる。
【0045】
図3Bは、T字型断面を有する別の例としての第2細長部材205を示す。この例では、加熱フィラメント215は、第2細長部材205の「T」の垂直部分の各側の切れ目301に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、切れ目301を、押出成形中に第2細長部材205内に形成することができる。切れ目301を、別法として、押出成形後に第2細長部材205に形成することができる。たとえば、切削器具が、第2細長部材205に切れ目を形成することができる。好ましくは、切れ目は、押出成形の直後、第2細長部材205が比較的軟質である間に、加熱フィラメント215が第2細長部材205内に押し込まれるかまたは引き込まれる(機械的に固定される)際に、加熱フィラメント215によって形成される。別法として、細長部材の基部に、1つまたは複数の加熱フィラメントを、チューブ内腔に露出するように取り付ける(たとえば、接着する、結合するまたは部分的に埋め込む)ことができる。こうした実施形態では、酸素等の可燃性ガスがチューブ内腔に通される時の燃焼の危険を低減するために、フィラメントを断熱して収容することが望ましい可能性がある。
【0046】
図3Cは、さらに別の例としての第2細長部材205を断面で示す。第2細長部材205は、略三角形状を有している。この例では、加熱フィラメント215は三角形の両側に埋め込まれている。
【0047】
図3Dは、さらに別の例としての第2細長部材205を断面で示す。第2細長部材205は、4つの溝303を備えている。溝303は、断面輪郭において圧痕または細長いくぼみ(furrow)である。いくつかの実施形態では、溝303は、フィラメント(図示せず)を埋め込むための切れ目(図示せず)の形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、溝303はフィラメント(図示せず)の位置決めを容易にし、フィラメントは、第2細長部材205内に押し込まれるかまたは引き込まれ、それにより埋め込まれる。この例では、4つの開始溝303が、最大4つのフィラメント、たとえば4つの加熱フィラメント、4つの検知フィラメント、2つの加熱フィラメントおよび2つの検知フィラメント、3つの加熱フィラメントおよび1つの検知フィラメント、または1つの加熱フィラメントおよび3つの検知フィラメントの配置を容易にする。いくつかの実施形態では、加熱フィラメントを、第2細長部材205の外側に配置することができる。検知フィラメントを内側に配置することができる。
【0048】
図3Eは、さらに別の例としての第2細長部材205を断面で示す。第2細長部材205は、T字型輪郭および加熱フィラメントを配置するための複数の溝303を有している。
【0049】
図3Fは、さらに別の例としての第2細長部材205を断面で示す。4つのフィラメント215が、第2細長部材205の「T」の垂直部分の各側に2つ、封入されている。後により詳細に説明するように、第2細長部材205はフィラメントの周囲で押出成形されているため、フィラメントは第2細長部材205に封入されている。加熱フィラメント215を埋め込むために切れ目は形成されていない。この例では、第2細長部材205は複数の溝303も備えている。加熱フィラメント215が第2細長部材205に封入されているため、溝303は、加熱フィラメントを埋め込むための切れ目の形成を容易にするために使用されない。この例では、溝303は、埋め込まれた加熱フィラメントの分離を容易にすることができ、それにより、たとえば加熱フィラメントを終端させる時に個々のコアの剥離が容易になる。
【0050】
図3Gは、さらに別の例としての第2細長部材205を断面で示す。第2細長部材205は、略三角形状を有している。この例では、第2細長部材205の形状は図3Cの形状に類似しているが、第2細長部材205に4つフィラメント215が封入されており、それらはすべて、第2細長部材205の底部1/3の中心にあり、略水平軸に沿って配置されている。
【0051】
上で説明したように、加熱効率を向上させるためにフィラメント間の距離を増大させることが望ましい場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態では、加熱フィラメント215が複合チューブ201内に組み込まれる場合、フィラメント215を、第2細長部材205内の相対的に中心に配置することができる。中心配置により、一部にはその位置が複合チューブ201を繰返し撓曲させた場合にフィラメントが破損する可能性を低減するため、再使用に対して複合チューブの頑強性が促進される。フィラメント215を中心に配置することにより、フィラメント215は断熱層で被覆されガス流路から隔てられため、点火の危険のリスクも低減することができる。
【0052】
上で説明したように、例のうちのいくつかは、第2細長部材205におけるフィラメント215の好適な配置を示す。2つ以上のフィラメント215を備える上述した例では、フィラメント215は概して水平軸に沿って位置合せされる。代替構成も好適である。たとえば、2つのフィラメントを、垂直軸に沿ってまたは対角軸に沿って位置合せすることができる。4つのフィラメントを、垂直軸または対角軸に沿って位置合せすることができる。4つのフィラメントを十字型構成に位置合せすることができ、1つのフィラメントが第2細長部材の頂部に配置され、1つのフィラメントが第2細長部材の底部に(チューブ内腔の近くに)配置され、2つのフィラメントが「T」、「Y」または三角形の底辺の対向する腕に配置される。
【0053】
表1Aおよび表1Bは、本明細書に記載する医療用チューブのいくつかの好ましい寸法を、これらの寸法に対するいくつかの好ましい範囲とともに示す。寸法は、チューブの横断面を指す。これらの表では、内腔直径はチューブの内径を表す。ピッチは、チューブに軸方向に沿って測定された2つの繰返し点の間の距離、すなわち第2細長部材の隣接する「T」の垂直部分の先端の間の距離を表す。半球状体幅は、半球状体の幅(最大外径)を表す。半球状体高さは、チューブ内腔からの半球状体の高さを表す。ビード高さは、チューブ内腔からの第2細長部材の最大高さ(たとえば「T」の垂直部分の高さ)を表す。ビード幅は、第2細長部材の最大幅(たとえば、「T」の水平部分の幅)を表す。半球状体厚さは半球状体壁の厚さを表す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表2Aおよび表2Bは、表1Aおよび表1Bにそれぞれ記載されているチューブに対するチューブ特徴の寸法の間の例としての比を提供する。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
以下の表は、第2細長部材の内側に加熱フィラメントが組み込まれている、本明細書に記載する複合チューブ(「A」と付す)のいくつかの特性例を示す。比較のために、チューブのボアの内側に加熱フィラメントがらせん状に巻回されているFisher&PaykelモデルRT100使い捨て波形チューブ(「B」と付す)の特性も提示する。
【0060】
流れ抵抗(RTF)の測定を、ISO5367:2000(E)のAnnex Aにしたがっておこなった。結果を表3に要約している。以下に示すように、複合チューブのRTFは、モデルRT100チューブのRTFより低い。
【0061】
【表5】
【0062】
チューブ内の凝縮液または「レインアウト」は、20L/分ガス流速および18℃の室温で1日に収集された凝縮液の重量を指す。加湿空気を、チャンバから連続的にチューブを通して流す。チューブ重量を、試験の各日の前および後に記録する。これらの連続試験を、各試験の間でチューブを乾燥して行う。結果を以下の表4に示す。結果により、モデルRT100チューブより複合チューブの方が、レインアウトが著しく低いことが分かる。
【0063】
【表6】
【0064】
電力要件は、凝縮液試験中に消費された電力を指す。この試験では、周囲空気を18℃で保持した。加湿チャンバ(たとえば図1の加湿チャンバ129を参照)には、MR850ヒータベースによって電力を供給した。チューブ内の加熱フィラメントには、独立してDC電源から電力を供給した。種々の流速を設定し、チャンバを、チャンバ出力において37℃に整定するようにした。そして、回路に対するDC電圧を変化させて、回路出力において40℃の温度がもたらされるようにした。出力温度を維持するために必要な電圧を記録し、結果としての電力を計算した。結果を表5に示す。結果により、複合チューブAがチューブBより著しく多くの電力を使用することが分かる。これは、チューブBが、ガスを37℃から40℃まで加熱するためにチューブボア内のらせん状加熱フィラメントを使用するためである。複合チューブは、加熱フィラメントがチューブの壁にある(第2細長部材に埋め込まれている)ため、ガスを迅速に加熱する傾向がない。代りに、複合チューブは、ガス温度を維持し、チューブボアを加湿ガスの露点を超える温度で維持することによりレインアウトを防止する。
【0065】
【表7】
【0066】
チューブ可撓性を、3点曲げ試験を用いることによって試験した。チューブを、3点曲げ試験治具内に配置し、Instron 5560 Test System機器とともに使用して、負荷および伸張を測定した。各チューブサンプルを3回試験し、加えられた負荷に対するチューブの伸張を測定してそれぞれの平均スチフネス定数を取得した。表Aおよび表Bの平均スチフネス定数を表6に再現する。
【0067】
【表8】
【0068】
製造方法
次に、複合チューブを製造する例示的方法を実証する図4A図4Fを参照する。
【0069】
まず図4Aを参照すると、少なくとも1つの実施形態では、複合チューブを製造する方法は、第2細長部材205を提供するステップと、第2細長部材205をマンドレル401の周囲に、第2細長部材205の対向する側縁部403が隣接する巻付け部において間隔を空けて配置されるように、らせん状に巻き付け、それにより、第2細長部材らせん405を形成するステップとを含む。いくつかの実施形態では、第2細長部材205を、マンドレルの周囲に直接巻き付けることができる。他の実施形態では、マンドレルの上に犠牲層を設けることができる。
【0070】
少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第2細長部材205を形成するステップをさらに含む。押出成形が、第2細長部材205を形成する好適な方法である。第2押出機を、第2細長部材205を指定されたビード高さで押出成形するように構成することができる。したがって、少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第2細長部材205を押出成形するステップを含む。
【0071】
図4Bに示すように、第2細長部材205がたとえばクロスヘッド押出金型を有する押出機を使用して形成される際に、加熱フィラメント215を第2細長部材205内に封入することができるため、押出成形は有利であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数の加熱フィラメント215を提供するステップと、加熱フィラメント215を封入して第2細長部材205を形成するステップとを含む。本方法はまた、1つまたは複数の加熱フィラメント215が埋め込まれるかまたは封入されている第2細長部材205を提供するステップも含むことができる。
【0072】
少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第2細長部材205に1つまたは複数のフィラメント215を埋め込むステップを含む。たとえば、図4Cに示すように、フィラメント215を第2細長部材205内の所定深さまで押し込む(引き込むまたは機械的に配置する)ことができる。別法として、第2細長部材205の指定された深さまで切れ目を作製することができ、その切れ目の中にフィラメント215を配置することができる。好ましくは、第2細長部材205が押出し成形され、第2細長部材205が軟質である直後に、押圧または切削が行われる。
【0073】
図4Dおよび図4Eに示すように、少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第1細長部材203を提供するステップと、第2細長部材らせん405の周囲に第1細長部材203を、第1細長部材203のいくつかの部分が第2細長部材らせん405の隣接する巻付け部にオーバラップし、第1細長部材203の一部が、第2細長部材らせん405の巻付け部の間の空間においてマンドレル401に隣接して配置されるように、らせん状に巻回し、それにより第1細長部材らせん407を形成する。図4Dは、第2細長部材らせんを形成する前に、加熱フィラメント215が第2細長部材205内に封入される例示的方法を示す。図4Eは、第2細長部材らせんが形成される際に、加熱フィラメント215が第2細長部材205内に埋め込まれる例示的方法を示す。複合チューブ内にフィラメント215を組み込む別の方法は、第1細長部材203が第2細長部材205とオーバラップする領域において、第1細長部材203と第2細長部材205との間に1つまたは複数のフィラメント215を封入するステップを含む。
【0074】
1つまたは複数の加熱フィラメント215を複合チューブ内に組み込む上述した代替形態には、ガス流路に加熱フィラメントがある代替形態に対して利点がある。加熱フィラメント215をガス流路外にすることにより、フィラメントが、凝結が発生する可能性が最も高いチューブ壁を加熱するため、性能が向上する。この構成により、加熱フィラメントをガス流路外に移動することによって、高酸素環境における燃焼の危険が低減する。この特徴はまた、チューブ内を通過しているガスを加熱する際に加熱ワイヤの有効性を低減するため性能を低下させる。それにも関らず、いくつかの実施形態では、複合チューブ201は、ガス流路内に配置される1つまたは複数の加熱フィラメント215を備えている。たとえば、加熱フィラメントを、たとえばらせん形態で、内腔壁(チューブボア)に据え付けることができる。内腔壁に1つまたは複数の加熱フィラメント215を配置する例示的方法は、組み立てられると内腔壁を形成する第2細長部材205の表面に加熱フィラメントを結合する、埋め込むまたは他の方法で形成するステップを含む。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、内腔壁に1つまたは複数の加熱フィラメント215を配置するステップを含む。
【0075】
加熱フィラメント215が、第2細長部材205に埋め込まれるかあるいは封入されるか、または第2細長部材205に配置されるか、またはチューブ内にあるいは上に他の方法で配置されるかに関らず、少なくとも1つの実施形態では、複合チューブの一端においてフィラメントの対を接続ループにすることにより、回路を形成することができる。
【0076】
図4Fは、図4Eに示すアセンブリの縦断面を示し、マンドレル401の頂部ならびに第1細長部材らせん407および第2細長部材らせん405の頂部に焦点を当てている。この例は、T字型第2細長部材205を有する第2細長部材らせん405を示す。第2細長部材が形成される際、加熱フィラメント215は第2細長部材205に埋め込まれる。図4Fの右側は、上述したように、第1細長部材らせんの半球状体形状輪郭を示す。
【0077】
本方法はまた、第1細長部材203を形成するステップも含むことができる。押出成形は、第1細長部材203を形成するのに好適な方法である。したがって、少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第1細長部材203を押出成形するステップを含む。第1細長部材203を、2つ以上の部分を押出成形しそれらを接合して単一片にすることによって製造することも可能である。別の代替形態として、第1細長部材203を、らせん状チューブ形成プロセスで隣接して形成されるかまたは結合された時に中空形状を生成する断面を押出し成形することによって製造することも可能である。
【0078】
本発明はまた、第1細長部材203の端部に、大気圧より高い圧力でガスを供給するステップを含むことも可能である。ガスは、たとえば空気であり得る。上で説明したように、他のガスを使用することも可能である。第1細長部材203の端部にガスを供給することは、第1細長部材203がマンドレル401の周囲で巻き付けられる際に開放した中空体形状を維持するのに役立つことができる。第1細長部材203がマンドレル401の周囲に巻き付けられる前に、第1細長部材203がマンドレル401の周囲に巻き付けられている間に、または第1細長部材203がマンドレル401の周囲に巻き付けられた後に、ガスを供給することができる。たとえば、押出金型頭部/先端組合せを備える押出機は、第1細長部材203が押出成形される際に、第1細長部材203の中空キャビティ内に空気を供給しまたは送り込むことができる。したがって、少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第1細長部材203を押出成形するステップと、押出成形後に第1細長部材203の端部に対し大気圧より高い圧力でガスを供給するステップとを含む。15cmHO~30cmHO(または約15cmHO~30cmHO)の圧力が好適であることが分かった。
【0079】
少なくとも1つの実施形態では、第1細長部材203および第2細長部材205は、マンドレル401の周囲にらせん状に巻回される。たとえば、第1細長部材203および第2細長部材205を、200℃(または約200℃)以上の高温で押出金型から出して、その後、短距離の後、マンドレルに施すことができる。好ましくは、マンドレルを、ウォータージャケット、冷却装置および/または他の好適な冷却方法を使用して、20℃(または約20℃)以下の温度まで、たとえば0℃(または約0℃)に近づくように冷却する。5回(または約5回)のらせん状巻き付けの後、第1細長部材203および第2細長部材205を、冷却流体(液体または気体)によってさらに冷却する。一実施形態では、冷却流体は、マンドレルを取り囲むジェットを備えたリングから放出される空気である。構成要素を冷却しマンドレルから取り除いた後、長手方向軸に沿って延在する内腔と内腔を包囲する中空空間とを有する複合チューブが形成される。こうした実施形態では、第1細長部材および第2細長部材を接続するために、接着剤または他の取付機構は不要である。他の実施形態は、2つの部材を結合するかまたは他の方法で接続するために、接着剤または他の取付機構を利用することができる。別の実施形態では、第2細長部材205を、加熱フィラメントの押出成形および配置の後、加熱フィラメントの位置を凍結させるように冷却することができる。そして、結合を強化するために、第2細長部材205を、マンドレルに施された時に再加熱することができる。再加熱の例示的方法は、スポット加熱装置、加熱ローラ等を使用することを含む。
【0080】
本方法はまた、複合チューブの一端において接続ループになる加熱フィラメントまたは検知フィラメントの形成された対を含むことも可能である。たとえば、2つの加熱フィラメントまたは検知フィラメントの端部を、第2細長部材205から解放し、その後、たとえば2つのフィラメントを結び付ける、結合する、接着する、融着させる等により、接続ループにすることができる。別の例として、加熱フィラメントの端部を、製造プロセス中に第2細長部材205から解放されたままにし、その後、複合チューブが組み立てられると接続ループにすることができる。
【0081】
単一のらせん状に巻回されたチューブを使用する医療用チューブおよび製造方法
次に図5A図5Fを参照する。それらは、第1細長部材または部分203および第2細長部材または部分205を有する単一チューブ状要素を備えるチューブの横断面を示す。図示するように、第2細長部分205は、第1細長部分203と一体化され、単一チューブ状要素の全長に沿って延在している。図示する実施形態では、単一チューブ状要素は、細長い中空体であり、それは、横断面において、部分的に中空部分501を画定する相対的に薄い壁を有し、相対的に薄い壁に隣接する細長い中空体の両側に、相対的に厚さが厚いかまたは相対的に剛性が高い2つの補強部分205がある。これらの補強部分は、細長い中空体がらせん状に巻回された後に内腔207の内壁の一部を形成し、それにより、これらの補強部分もまた、細長い中空体の隣接する巻きの間にらせん状に配置される。
【0082】
少なくとも1つの実施形態では、本方法は、第1細長部分203および補強部分205を備えた細長い中空体を形成するステップを含む。押出成形が、細長い中空体を形成するのに好適な方法である。チューブ状要素に対する好適な断面形状を図5A図5Fに示す。
【0083】
上で説明したように、細長い中空体を、医療用チューブにすることができ、上述した考察はこの参照により組み込まれる。たとえば、少なくとも1つの実施形態では、医療用チューブを製造する方法は、マンドレルの周囲に細長い中空体をらせん状に巻き付けるかまたは巻回するステップを含む。これを高温で行うことができ、それにより、細長い中空体が、隣接する巻きを合わせて接合するようにらせん状に巻回された後に冷却される。図5Bに示すように、補強部分205の対向する側縁部分は、隣接する巻きに接触することができる。他の実施形態では、図5Dおよび図5Eに示すように、第2細長部材205の対向する側縁部分は隣接する巻きにオーバラップすることができる。加熱フィラメント215を、上で説明したように、かつ図5A図5Fに示すように第2細長部材に組み込むことができる。たとえば、加熱フィラメントを、図5A図5Dに示すような細長い中空体の両側に設けることができる。別法として、図5E図5Fに示すように、細長い中空体の一方の側にのみ加熱フィラメントを設けることができる。これらの実施形態のいずれも、検知フィラメントの存在を組み込むことも可能である。
【0084】
医療用回路
次に、少なくとも1つの実施形態による医療用回路例を示す図6を参照する。回路は、上述したような1つまたは複数のチューブ、すなわち吸気チューブ103および/または呼気チューブ117用の複合チューブを備えている。吸気チューブ103および呼気チューブ117の特性は、図1に関して上述したチューブと同様である。吸気チューブ103は、加湿器115と連通している入口109と、加湿ガスが患者101に提供される際に通る出口113とを有している。呼気チューブ117もまた、患者からの吐出された加湿ガスを受け取る入口109と、出口113とを有している。図1に関して上述したように、呼気チューブ117の出口113は、吐出ガスを大気に、ベンチレータ/ブロワユニット115に、空気スクラバ/フィルタ(図示せず)に、または他のあらゆる好適な場所に排出することができる。
【0085】
上述したように、吸気チューブ103および/または呼気チューブ117内に、チューブ壁温度を、露点温度を超える温度で維持することにより、チューブ内のレインアウトの危険を低減するように、加熱フィラメント601を配置することができる。
【0086】
送気システムの構成要素
低侵襲手術(MIS)またはかぎ穴手術とも呼ばれる腹腔鏡下手術は、腹部の手術が、従来の外科手術処置に必要なより大きい切開に比較して、小さい設計(通常0.5cm~1.5cm)を通して行われる、最新外科手術技法である。腹腔鏡下手術は、腹部または骨盤腔内の手術を含む。送気を伴う腹腔鏡下手術中、送気ガス(通常CO)が、腹腔内に入る前に加湿されることが望ましい場合がある。これは、患者の内臓の「乾燥」を防止するのに役立つことができ、外科手術からの回復に必要な時間を短縮することができる。送気システムは、一般に、内部にある量の水を保持する加湿器チャンバを備えている。加湿器は、一般に、水を加熱して、入ってくるガスを加湿するためにそのガスに送り込まれる水蒸気を生成する、ヒータプレートを備えている。ガスは、水蒸気とともに加湿器から搬送される。
【0087】
次に、少なくとも1つの実施形態による送気システム701を示す図7を参照する。送気システム701は、患者705の腹部または腹腔内に送達されるために大気より高い温度で送気ガス流を生成する送気装置703を備えている。ガスは、ヒータベース709および加湿器チャンバ711を含む加湿器707内に入り、チャンバ711は、使用時にヒータベース709と接触しており、それによりヒータベース709はチャンバ711に熱を提供する。加湿器707では、送気ガスは、チャンバ711を通過して、適切なレベルの湿度まで加湿される。
【0088】
システム701は、加湿器チャンバ711と患者705の腹腔または手術部位との間を接続する送達導管713を備えている。導管713は第1端および第2端を有し、第1端は、加湿器チャンバ711の出口に接続され、チャンバ711から加湿ガスを受け取る。導管713の第2端は、患者705の手術部位または腹腔内に配置され、加湿された送気ガスは、チャンバ711から導管713を通って手術部位内まで進み、手術部位または腹腔に送気しそれらを拡張する。本システムはまた、ヒータベース709に供給される電力を制御することによりガスに供給される湿度の量を調節するコントローラ(図示せず)を備えている。コントローラを使用して、加湿器チャンバ711内の水をモニタリングすることも可能である。患者705の体腔から出る排煙システム715が示されている。
【0089】
排煙システム715を、上述した送気システム701とともに使用することができ、または他の好適な送気システムとともに使用することができる。排煙システム715は、排出または排気リム717、排出アセンブリ719およびフィルタ721を備えている。排出リム717は、フィルタ721と排出アセンブリ719とを接続し、排出アセンブリ719は、使用時に、患者705の手術部位または腹腔内にまたは隣接して配置される。排出リム717は、自立形チューブであり(すなわち、チューブは潰れることなくそれ自体の重量を支持することができ)、2つの端部、すなわち手術部位端および出口端を備えている。
【0090】
少なくとも1つの実施形態は、導管713としての複合チューブの使用により、加湿ガスを最小の熱損失で患者705の手術部位まで送達することができるということの実現を含む。これにより、熱損失を補償するために必要な熱入力が低減するため、送気システムにおける全体的なエネルギー消費を有利に低減することができる。
【0091】
同軸チューブ
同軸呼吸チューブもまた、上述したような複合チューブを備えることができる。同軸呼吸チューブでは、第1ガス空間は吸気リムまたは呼気リムであり、第2ガス空間は、吸気リムまたは呼気リムのうちの他方である。前記吸気リムの入口と前記吸気リムの出口との間に1つのガス通路が設けられ、前記呼気リムの入口と前記呼気リムの出口との間に1つのガス通路が設けられる。一実施形態では、第1ガス空間は前記吸気リムであり、第2ガス空間は前記呼気リムである。別法として、第1ガス空間を呼気リムとすることができ、第2ガス空間を吸気リムとすることができる。
【0092】
次に、少なくとも1つの実施形態による同軸チューブ701を示す図7を参照する。この例では、同軸チューブ701は、患者701とベンチレータ705との間に設けられる。呼気ガスおよび吸気ガスは各々、内側チューブ707または内側チューブ707と外側チューブ711との間の空間709のうちの一方を流れる。外側チューブ711を内側チューブ707と正確に位置合せする必要はないことが理解されよう。むしろ、「同軸」は、チューブが別のチューブの内側に位置することを指す。
【0093】
熱伝達の理由で、内側チューブ707は、その中の空間713で吸気ガスを運ぶことができ、呼気ガスは、内側チューブ707と外側チューブ711との間の空間709で運ばれる。この空気流構成を矢印によって示す。しかしながら、外側チューブ711が吸気ガスを運び、内側チューブ707が呼気ガスを運ぶ、反対の構成も可能である。
【0094】
少なくとも1つの実施形態では、内側チューブ707は、Fisher&PaykelモデルRT100使い捨てチューブ等の波形チューブから形成される。外側チューブ711を、上述したような複合チューブから形成することができる。
【0095】
同軸チューブ701により、ベンチレータ705は、内側チューブ707の漏れに気づかない可能性がある。こうした漏れは患者701を短絡させる可能性があり、それは、患者701に十分な酸素が供給されないことを意味する。こうした短絡を、同軸チューブ701の患者側端にセンサを配置することによって検出することができる。このセンサを、患者側端コネクタ715に配置することができる。ベンチレータ705に近い方の短絡により、患者701が患者701の近くの空気体積を再呼吸し続けることになる。これにより、患者701の近くの吸気流空間713における二酸化炭素の濃度が上昇し、それをCOセンサによって直接検出することができる。こうしたセンサは、目下市販されているような複数のセンサのうちのいずれか1つを含むことができる。別法として、この再呼吸を、患者側端コネクタ715におけるガスの温度をモニタリングすることによって検出することができ、そこでは、所定レベルを超える温度の上昇が、再呼吸が発生していることを示す。
【0096】
上記に加えて、内側チューブ707または外側チューブ711のいずれかの中の凝結の形成を低減するかまたはなくすために、かつ同軸チューブ701を通してガス流の実質的に均一な温度を維持するために、抵抗ヒータフィラメント等のヒータを、内側チューブ707あるいは外側チューブ711のいずれかの中に設けるか、ガス空間709あるいは713内に配置するか、または内側チューブ707あるいは外側チューブ711の壁自体の中に配置することができる。
【0097】
熱特性
加熱フィラメント215を組み込んでいる複合チューブ201の実施形態では、第1細長部材203の壁を通して熱が損失する可能性があり、それにより加熱が不均一になる。上で説明したように、これらの熱損失を補償する1つの方法は、第1細長部材203の壁に外部熱源を付与することであり、それは、温度を調節し熱損失を阻止するのに役立つ。しかしながら、熱特性を最適化する他の方法もまた使用することができる。
【0098】
次に、図9A図9Cを参照し、それらは、熱特性を向上させる半球状体高さ(すなわち、内側内腔に面している面から最大外径を形成している面まで測定された第1細長部材203の断面高さ)に対する構成例を実証する。
【0099】
半球状体の寸法を、複合チューブ201からの熱損失を低減するように選択することができる。概して、半球状体の高さを増大させることにより、チューブ201の有効熱抵抗が増大し、それは、半球状体高さが大きいほど、第1細長部材203がより多くの断熱空気を保持することができるためである。しかしながら、一定の半球状体高さでは、空気密度の変化により、チューブ201内部の対流をもたらし、それにより熱損失が増大することが分かった。また、一定の半球状体高さでは、表面積が、表面を通る熱損失が半球状体の増大した高さの利益に勝るほど大きくなる。いくつかの実施形態はこれらの実施を含む。
【0100】
半球状体の曲率半径および曲率は、所望の半球状体高さを求めるために有用であり得る。物体の曲率は、その物体の曲率半径の逆数として定義される。したがって、物体の曲率半径が大きいほど、物体は湾曲しない。たとえば、平坦な面は曲率半径が∞であり、したがって曲率は0である。
【0101】
図9Aは、複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Aは、半球状体が大きい高さを有する複合チューブ201の実施形態を示す。この例では、半球状体は、曲率半径が比較的小さく、したがって曲率が大きい。また、半球状体は、第2細長部材205の高さよりおよそ3倍から4倍の高さである。
【0102】
図9Bは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Bは、半球状体が頂部で平坦化している複合チューブ201の実施形態を示す。この例では、半球状体は、曲率半径は非常に大きいが曲率が小さい。また、半球状体は、第2細長部材205とおよそ同じ高さである。
【0103】
図9Cは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Cは、半球状体の幅が半球状体の高さより大きい複合チューブ201の実施形態を示す。この例では、半球状体は、曲率半径および曲率が図9A図9Bとの間であり、(図9Aに比較して)半球状体の上方部分の半径中心は半球状体の外側にある。半球状体の左側および右側の変曲点は、(図9Aにおけるような半球状体の下方部分とは対照的に)半球体の(高さ方向に)略中間にある。また、半球状体の高さは、第2細長部材205のおよそ2倍であり、その結果、半球状体の高さが図9A図9Bとの間になる。
【0104】
図9Aの構成により、チューブからの熱損失が最低になった。図9Bの構成により、チューブからの熱損失が最高になった。図9Cの構成は、熱損失が図9Aの構成と図9Bの構成との間であった。しかしながら、図9Aの構成における大きい外側表面積および対流熱伝達により、加熱が非効率になった。したがって、図9A図9Cの3つの半球状体配置のうち、図9Cが、全体的に最良の熱特性を有するものと判断された。同じ熱エネルギーが3つのチューブに入力された場合、図9Cの構成により、チューブの長さに沿った最大熱上昇が可能であった。図9Cの半球状体は、断熱空気体積を増大させるのに十分大きいが、著しい対流熱損失をもたらすほど大きくはない。図9Bの構成は、最も不十分な熱特性を有するものと判断され、すなわち、図9Bの構成により、チューブの長さに沿った温度上昇が最低であった。図9Aの構成は、中間の熱特性を有し、図9Cの構成より温度上昇が低かった。
【0105】
いくつかの実施形態では図9Cの構成が好ましい場合があるが、他の実施形態において図9A図9Bおよび他の変形の構成を含む他の構成を、必要に応じて利用することができる。
【0106】
表7は、図9A図9Bおよび図9Cの各々に示す構成の半球状体の高さ、チューブの外径および曲率半径を示す。
【0107】
【表9】
【0108】
表7Aは、図11A図11Bおよび図11Cに示すようなさらなる構成の半球状体の高さ、外径および曲率半径を示す。
【0109】
【表10】
【0110】
概して、曲率半径が小さいほど、チューブは、半球状体が潰れるかまたは「キンクが発生する」ことなくそれ自体の周囲で曲がることができる、ということが留意されるべきである。たとえば、図11Dは、チューブがその曲率半径を超えて曲がっている状態を示し(特に、5.7mmの曲率半径の周囲で曲げられた図11Aのチューブを示す)、それにより半球状体の壁にキンクがもたらされる。キンクは、チューブの外観を損ねる可能性があり、チューブの熱特性を損なう可能性があるため、一般に望ましくない。
【0111】
したがって、いくつかの用途では、曲げ特性が向上した構成(図9Aまたは図9Bに示すもの等)が、熱特性の効率が低下するにも関らず望ましい可能性がある。いくつかの用途では、外径が25mm~26mm(または約25mm~約25mm)であるチューブが、熱効率、可撓性および曲げ性能の間の優れたバランスを提供することが分かった。いくつかの実施形態では図9Aおよび図9Bの構成が好ましい可能性があるが、図11A図11Dおよび他の変形の構成を含む他の構成を、必要に応じて他の実施形態において利用することができる。
【0112】
次に図9C図9Fを参照し、それらは、熱特性を向上させるために同様の半球状体形状を備えた発熱体215の位置決め例を実証する。発熱体215の位置は、複合チューブ201内の熱特性を変化させることができる。
【0113】
図9Cは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Cは、発熱体215が第2細長部材205の中心に位置する複合チューブ201の実施形態を示す。この例は、互いに近接するが半球状体壁には近接しない発熱体215を示す。
【0114】
図9Dは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Dは、発熱体215が、第2細長部材205において図9Cに比較してさらに離れて間隔が空けられている、複合チューブ201の実施形態を示す。これらの発熱体は、半球状体壁により近接しており、複合チューブ201内のより優れた熱の調節を可能にする。
【0115】
図9Eは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Eは、発熱体215が、第2細長部材205の垂直軸において上下に間隔を空けて配置されている、複合チューブ201の実施形態を示す。この例では、発熱体215は、各半球状体壁に等しく近接している。
【0116】
図9Fは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図9Fは、発熱体215が第2細長部材205の両端において間隔を空けて配置されている、複合チューブ201の実施形態を示す。発熱体215は、特に図9C図9Eに比較して、半球状体壁に近接している。
【0117】
図9C図9Fの4つのフィラメント配置のうち、図9Fが、最良の熱特性を有するものと判断された。それらの構成のすべてには、それらの半球状体形状が類似しているため、チューブから同様の熱損失があった。しかしながら、チューブに対して同じ熱エネルギーが入力された場合、図9Fのフィラメント構成は、チューブの長さに沿って最大温度上昇が可能であった。図9Dの構成は、次に優れた熱特性を有するものと判断され、チューブの長さに沿って次に大きい温度上昇が可能であった。図9Cの構成は次に最適に機能した。図9Eの構成は、同じ量の熱が入力された場合に、最も不十分な性能を有し、チューブの長さに沿った温度上昇が最小であった。
【0118】
いくつかの実施形態では図9Fの構成が好ましい可能性があるが、図9C図9D図9Eおよび他の変形の構成を含む他の構成を、必要に応じて他の実施形態において利用することができる。
【0119】
次に、第1細長部材203の積層の構成例を実証する図10A図10Cを参照する。いくつかの実施形態では、複数の半球状体を積層することにより熱分散を向上させることができることが分かった。これらの実施形態は、内部加熱フィラメント215を使用する場合により有益であり得る。図10Aは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図10Aは、いかなる積層もない複合チューブ201の断面を示す。
【0120】
図10Bは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図10Bは、半球状体が積層された別の例としての複合チューブ201を示す。この例では、2つの半球状体が互いに積層されて第1細長部材203が形成されている。図10Aに比較して、総半球状体高さが維持されるが、半球状体ピッチは図10Aの半分である。また、図10Bの実施形態は、空気体積がわずかに低減する。半球状体の積層により、半球状体の間の間隙213における自然対流および熱伝達が低減し、全体的な熱抵抗が低下する。熱流路は、積層された半球状体において増大し、それにより、熱は複合チューブ201を通してより容易に分散することができる。
【0121】
図10Cは、別の複合チューブの頂部の縦断面を示す。図10Cは、半球状体が積層された複合チューブ201の別の例を示す。この例では、3つの半球状体が互いに積み重ねられて第1細長部材203が形成されている。図10Aに比較して、総半球状体高さが維持されるが、半球状体ピッチは図10Aの1/3である。また、図10Bの実施形態では、空気体積がわずかに低減する。半球状体の積層により、半球状体の間の間隙213における自然対流および熱伝達が低減する。
【0122】
洗浄
少なくとも1つの実施形態では、複合チューブの材料を、さまざまな洗浄方法を処理するように選択することができる。いくつかの実施形態では、高水準消毒(約20洗浄サイクル)を使用して複合チューブ201を洗浄することができる。高水準消毒中、複合チューブ201は、約30分間、約75℃で低温殺菌を受ける。次に、複合チューブ201は、約20分間、2%グルタルアルデヒドに浸される。複合チューブ201は、グルタルアルデヒドから取り出され、約30分間、6%過酸化水素に浸漬される。最後に、複合チューブ201は、過酸化水素から取り出され、約10分間、0.55%オルトフタルアルデヒド(OPA)に浸される。
【0123】
他の実施形態では、滅菌(約20サイクル)を使用して、複合チューブ201を洗浄することができる。まず、複合チューブ201は、約30分間、約121℃でオートクレーブ蒸気内に配置される。次に、オートクレーブ蒸気の温度が、約3分間、約134℃まで上昇する。オートクレーブ処理の後、複合チューブ201は、100%エチレンオキシド(ETO)ガスによって包囲される。最後に、複合チューブ201は、ETOガスから取り出され、約10時間、約2.5%グルタルアルデヒドに浸漬される。
【0124】
複合チューブ201を、繰返しの洗浄プロセスに耐えるような材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、複合チューブ201の一部またはすべてを、限定されないが、スチレン-エチレン-ブテン-スチレンブロック熱可塑性エラストマー、たとえばKraiburg TF6STEから作製することができる。他の実施形態では、複合チューブ201を、限定されないがハイトレル、ウレタンまたはシリコーンから作製することができる。
【0125】
本発明の上述した説明は、その好ましい形態を含む。本発明の範囲から逸脱することなく、それら形態に対して変更を行うことができる。本発明が関連する当業者に対して、本発明の構成の多くの変更ならびに大幅に異なる実施形態および用途が、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく示唆されよう。本明細書の開示および説明は、単に例示的なものであり、いかなる意味においても限定されるように意図されていない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせん状に巻回されて、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを少なくとも部分的に形成する中空体を備えた、第1細長部材と、
らせん状に巻回されかつ前記第1細長部材の隣接する巻きの間で接合された第2細長部材であって、前記細長いチューブの前記内腔の少なくとも一部を形成する第2細長部材と、
を具備する複合チューブ。
【請求項2】
複合チューブを製造する方法であって、
中空体を備える第1細長部材と、前記第1細長部材に対する構造的支持を提供するように構成された第2細長部材とを提供するステップと、
マンドレルの周囲に前記第2細長部材を、前記第2細長部材の対向する側縁部分が隣接する巻付け部において間隔を空けて配置されるように、らせん状に巻き付け、それにより第2細長部材らせんを形成するステップと、
前記第2細長部材らせんの周囲に前記第1細長部材を、前記第1細長部材のいくつかの部分が前記第2細長部材らせんの隣接する巻付け部にオーバラップし、前記第1細長部材の一部が前記第2細長部材らせんの前記巻付け部の間の前記空間において前記マンドレルに隣接して配置されるように、らせん状に巻き付け、それにより第1細長部材らせんを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項3】
らせん状に巻回されて、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成する細長い中空体であって、縦断面において前記中空体の少なくとも一部を画定する壁を有している、細長い中空体と、
前記細長い中空体の隣接する巻きの間にらせん状に配置されている、前記細長い中空体の長さに沿って延在している補強部分であって、前記細長いチューブの前記内腔の一部を形成する補強部分と、
を具備し、
前記補強部分が、前記細長い中空体の前記壁より相対的に厚いかまたは剛性である、医療用チューブ。
【請求項4】
医療用チューブを製造する方法であって、
マンドレルの周囲に細長い中空体をらせん状に巻回して、長手方向軸と、前記長手方向軸に沿って延在する内腔と、前記内腔を包囲する中空壁とを有する細長いチューブを形成するステップであって、前記細長い中空体が、横断面において、前記中空体の少なくとも一部を画定する壁と、前記内腔の壁の一部を形成する、前記細長い本体の両側の2つの補強部分とを有し、前記2つの補強部分が、前記中空体の少なくとも一部を画定する壁より相対的に厚いかまたは剛性である、ステップと、
隣接する補強部分を、前記補強部分の対向する縁が前記細長い中空体の隣接する巻きの上で接触するように互いに接合するステップと、
を含む方法。
【外国語明細書】