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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121168
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/16 20060101AFI20230824BHJP
   F24C 15/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F24C15/16 G
F24C15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024341
(22)【出願日】2022-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝彦
(57)【要約】
【課題】リンク部材を構成するアームに触れにくくして、載置部をより大きく引き出せる加熱調理装置を提供すること。
【解決手段】内部に焼成室15を有する本体2に枢支されてこの正面開口部14を開閉可能な扉3と、扉3の開閉と載置部4の開口部14からの出没を連動させるリンク機構5を有する加熱調理装置としてのオーブントースター1であり、リンク機構5が、前端が扉3に揺動可能に支持されて後側に第一ラック52が形成されるアーム51と、第一ラック52と噛合する第一ピニオンギア53と、第一ピニオンギア53のピッチ円の線速度よりも速い線速度でピッチ円が回動する第二ピニオンギア56と、第二ピニオンギア56と噛合する第二ラック57と、アーム51後側を後方且つ第一ピニオンギア53側に付勢する付勢部材としての引っ張りコイルばね58とを有し、第二ラック57が載置部4に結合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面に開口部が形成されると共に内部に焼成室を有する本体と、この本体に枢支されると共に前記開口部を開閉可能な扉と、この扉の開閉に伴って前記開口部から出没する載置部と、前記扉の動きと前記載置部の動きを連動させるリンク機構とを有する加熱調理装置において、
前記リンク機構が、前端が前記扉に揺動可能に支持されると共に後側に第一ラックが形成されるアームと、前記第一ラックと噛合する第一ピニオンギアと、この第一ピニオンギアの回動に伴ってこの第一ピニオンギアのピッチ円の線速度よりも速い線速度でピッチ円が回動する第二ピニオンギアと、この第二ピニオンギアと噛合する第二ラックと、前記アームの後側を後方に且つ前記第一ピニオンギア側に付勢する付勢部材とを有し、前記第二ラックが前記載置部に結合されることを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
前記アームに、前記扉が所定角度枢動した際に前記第一ラックが前記第一ピニオンギアと噛合するよう、第一ラックの非形成部が設けられることを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前後方向に延びる案内部材が前記焼成室の左右両壁にそれぞれ設けられ、前記各案内部材に対し前方から着脱可能な案内受部が前記載置部の左右にそれぞれ設けられると共に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第一ラックが前記第一ピニオンギアから離れる方向に前記アームが揺動可能となるように、前記アームが前記扉に支持されることを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記第二ピニオンギアが前記第二ラックの下方に設けられることを特徴とする請求項1記載の加熱調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を開くことで焼き網等の食品の載置部が本体開口部から突出するオーブントースター等の加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理装置としては、正面に開口部が形成されると共に内部に調理室(本発明の焼成室に相当する)を有する本体部(本発明の本体に相当する)と、この本体部の前記開口部を開閉する開閉扉(本発明の扉に相当する)と、この開閉扉の開閉に連動して調理網(本発明の載置部に相当する)を前後に移動させるリンク機構としてのリンク部材(本発明のアームに相当する)とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このような加熱調理装置は、前記リンク部材の前端を前記開閉扉の上端近傍に接続することで、この開閉扉を開く動作に連動して、前記調理網を前方に大きく引き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-116225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような加熱調理装置は、前記調理網の引出量を大きくしようとすると、前記リンク部材の前端を前記開閉扉の上端近傍に接続する必要がある。そして、前記開閉扉の解放時、前記リンク部材の前端は前記調理網よりも前方に位置するので、たとえ前記リンク部材が前記調理網よりも下方に位置したとしても、前記リンク部材の前端部に手が触れる虞があった。また、前記調理網の引出量は、前記リンク部材の引出量とこのリンク部材に形成されたリンク長溝の長さの差と略同じであるが、加熱により熱くなった前記本体部に触れずに前記調理網の奥部に被調理物を置くには十分ではなく、より大きく前記調理網を引き出す構造が求められていた。更に、前記調理網を大きく引き出す構造では、この調理網を乗せる器具受台が本体部内空間の前部に位置することになるので、前記調理網を取り外して本体部内空間を清掃しようとすると、前記器具受台が邪魔になり掃除がしにくいという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、リンク部材を構成するアームに触れにくくして、載置部をより大きく引き出せると共に、焼成室内を容易に清掃することができる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の加熱調理装置は、正面に開口部が形成されると共に内部に焼成室を有する本体と、この本体に枢支されると共に前記開口部を開閉可能な扉と、この扉の開閉に伴って前記開口部から出没する載置部と、前記扉の動きと前記載置部の動きを連動させるリンク機構とを有する加熱調理装置において、前記リンク機構が、前端が前記扉に揺動可能に支持されると共に後側に第一ラックが形成されるアームと、前記第一ラックと噛合する第一ピニオンギアと、この第一ピニオンギアの回動に伴ってこの第一ピニオンギアのピッチ円の線速度よりも速い線速度でピッチ円が回動する第二ピニオンギアと、この第二ピニオンギアと噛合する第二ラックと、前記アームの後側を後方に且つ前記第一ピニオンギア側に付勢する付勢部材とを有し、前記第二ラックが前記載置部に結合されるものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の加熱調理装置は、請求項1において、前記アームに、前記扉が所定角度枢動した際に前記第一ラックが前記第一ピニオンギアと噛合するよう、第一ラックの非形成部が設けられるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の加熱調理装置は、請求項1において、前後方向に延びる案内部材が前記焼成室の左右両壁にそれぞれ設けられ、前記各案内部材に対し前方から着脱可能な案内受部が前記載置部の左右にそれぞれ設けられると共に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第一ラックが前記第一ピニオンギアから離れる方向に前記アームが揺動可能となるように、前記アームが前記扉に支持されるものである。
【0009】
更に、また、本発明の請求項4に記載の加熱調理装置は、請求項1において、前記第二ピニオンギアが前記第二ラックの下方に設けられるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の加熱調理装置は、以上のように構成することにより、前記扉における前記アームの前端の支持位置を前記扉の枢軸寄りに設けたとしても、前記第一ピニオンギアと第二ピニオンギアの外周部線速度の比を適切にすることで、前記載置部の引出量を、被調理物を安定して載置できる最大限の引出量にすることができる。このため、前記扉の解放時に、前記アームに触れる危険性を減ずることができる。
【0011】
なお、前記アームに、前記扉を所定角度枢動させた際に前記第一ラックが前記第一ピニオンギアと噛合するよう、第一ラックの非形成部を設けることにより、前記扉を開き始めてから所定角度枢動するまでの間、前記載置部が前方に引き出されないので、扉の開放初期にこの扉と載置部が衝突しないようにすることができる。
【0012】
また、前後方向に延びる案内部材が前記焼成室の左右両壁にそれぞれ設けられ、前記各案内部材に対し前方から着脱可能な案内受部が前記載置部の左右にそれぞれ設けられると共に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第一ラックが前記第一ピニオンギアから離れる方向に前記アームが揺動可能となるように、前記アームが前記扉に支持されることで、前記載置部を最大突出状態から更に前方に引くと、前記第一ピニオンギアが前記第二ピニオンギア及び第二ラックと連動して回動するが、前記第一ラックと第一ピニオンギアの噛合が一時的に解除されて空回りするので、前記載置部を前記本体から取り外すことができる。このため、前記焼成室内を容易に清掃することができる。
【0013】
更に、前記第二ピニオンギアが前記第二ラックの下方に設けられることにより、前記載置部に被調理物を置く際に前記第二ピニオンギアが邪魔にならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す加熱調理装置の斜視図である。
図2】同、一部を取り外した状態で他の方向から見た斜視図である。
図3】同、リンク機構を分解した状態の斜視図である。
図4】同、閉扉状態を外側から見た説明図である。
図5】同、扉を角度A開いた状態を外側から見た説明図である。
図6】同、扉を角度B開いた状態を外側から見た説明図である。
図7】同、扉を完全に開いた状態を外側から見た説明図である。
図8】同、閉扉状態を焼成室側から見た説明図である。
図9】同、扉を角度A開いた状態を焼成室側から見た説明図である。
図10】同、扉を角度B開いた状態を焼成室側から見た説明図である。
図11】同、扉を完全に開いた状態を焼成室側から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図11に基づいて説明する。1は本発明の加熱調理装置としてのオーブントースターである。このオーブントースター1は、本体2と、扉3と、載置部4と、リンク機構5とを有して構成される。
【0016】
前記本体2は、内壁部11と外壁部12と前壁部13とを有して構成される。前記内壁部11は正面側に開口部14を有する箱状に形成されると共に、右側壁11Rと左側壁11Lとを有する。そして、この内壁部11内に焼成室15が形成される。また、前記右側壁11R及び左側壁11Lの内面側には、それぞれ案内部材16R,16Lが、同じ高さに且つ前後方向に水平に取り付けられる。これらの案内部材16R,16Lは、それぞれ長さ方向に溝部17R,17Lが形成されると共に、これらの溝部17R,17Lが互いに対向する。また、前記溝部17Rと溝部17Lは、水平で且つ平行に設けられる。従って、前記各溝部17R,17Lの底部同士の間隔は、前記右側壁11Rと左側壁11Lとの間隔よりも僅かに狭い。なお、前記溝部17R,17Lの前端部には、前方ほど前記溝部17R,17Lの間隔が広くなった誘い込み部18R,18Lが形成される。この誘い込み部18R,18Lを除き、前記溝部17R,17Lの幅は一定である。また、前記溝部17R,17Lの後端部には、前記溝部17R,17Lの後端を規定する端壁19が形成される。更に、前記右側壁11Rの前側で且つ前記案内部材16Rの下方には、図示しない軸受孔が形成される。なお、前記外壁部12は、前記内壁部11を外側から覆うものであり、この内壁部11と同様に正面側が開放する。また、前記前壁部13は、前記内壁部11の正面開口部14と前記外壁部12の開放した正面側を繋ぐように設けられる。また、前記前壁部の右側には、前記リンク機構5の後述するアーム51が通される上下方向に細長い貫通溝20が形成される。更に、前記本体2の正面側下方の左右には、それぞれ本体側軸受部21R,21Lが設けられる。
【0017】
前記扉3は、扉本体31と、この扉本体31の上部に設けられたハンドル32と、前記扉本体31の下部に設けられた扉側軸受部33R,33Lと、前記扉本体31の右側で且つ焼成室15側に設けられたアーム軸受部34とを有して構成される。そして、前記扉側軸受部33R,33Lは、前記本体側軸受部21R,21Lに対応して設けられ、枢軸35R,35Lによって枢動可能に接続される。これによって、前記扉3は前記本体2に対し枢支される。
【0018】
前記載置部4は、載置部本体41と、この載置部本体41の上方に着脱可能に載置される焼き網42とを有して構成される。前記載置部本体41は、金属線材によって略方形状に形成されると共に、この載置部本体41の奥側に、左右にそれぞれ突出する案内受部43R,43Lが設けられる。これらの案内受部43R,43Lの上下方向寸法は、前記案内部材16R,16Lに形成された溝部17R,17Lの上下方向幅よりもやや小さい。また、前記案内部材43Rの右端と前記案内部材43Lの左端との間隔は、前記各溝部17R,17Lの底部同士の間隔よりもやや小さく、且つ、前記溝部17R,17Lから下方に外れない程度の寸法に形成される。即ち、前記案内部材43Rの右端と前記案内部材43Lの左端との間隔は、右側壁11Rと左側壁11Lの間隔、換言すれば前記開口部14の幅よりも小さい。更に、前記載置部本体41の右側端部の下部には、前記リンク機構5の後述する第二ラック57が前後方向に延びるように結合される。
【0019】
前記リンク機構5は、第一ラック52が形成されたアーム51と、第一ピニオンギア53と、大径ギア54と、小径ギア55と、第二ピニオンギア56と、第二ラック57と、付勢部材としての引っ張りコイルばね58と、ストッパー59とを有して構成される。前記アーム51と、第一ピニオンギア53と、大径ギア54と、小径ギア55と、引っ張りコイルばね58と、ストッパー59は、前記右側壁11Rの外面側に設けられる。一方、前記第二ピニオンギア56は、前記右側壁11Rの内面側に設けられる。更に、前記第二ラック57は、前述したように、前記焼成室15内に設けられる前記載置部4を構成する載置部本体41に結合される。
【0020】
前記アーム51は、その前端部に軸受孔60が形成されると共に、その後端部に引掛孔61が形成される。そして、前記アーム51の軸受孔60と前記扉3のアーム軸受部34とを揺動軸62を用いて接続することで、前記アーム51は前記扉3に対し揺動可能に支持される。一方、前記アーム51の引掛孔61には、前記引っ張りコイルばね58の一端側のフック58Aが引っ掛けられる。そして、前記引っ張りコイルばね58の他端側のフック58Bは、前記本体2の後部上方寄りに引っ掛けられる。これによって、前記アーム51の後端部は、後方斜め上に付勢される。また、前記アーム51の上辺部の後側には、前記第一ラック52が形成される。なお、前記アーム51の上辺部において、前端部から前記第一ラック52までの間は、前記第一ラック52の非形成部63である。更に、前記アーム51の下辺部の中央部近傍には、切欠部64が形成される。この切欠部64は、その一端側縁64Aが前記アーム51の長さ方向に対し斜めに切り欠かれ、他端側縁64Bが前記アーム51の長さ方向に対し略垂直に切り欠かれる。そして、前記他端側縁64Bが前記ストッパー59と当接することで、前記扉3の開放角度が角度Cに制限される。
【0021】
前記第一ピニオンギア53及び大径ギア54は、同軸に且つ一体に回動するように、前記右側壁11Rの外面側に設けられた軸部65に取り付けられる。なお、前記第一ピニオンギア53と大径ギア54は、一体に形成しても良い。そして、前記第一ピニオンギア53は、前記アーム51の上方に位置する。従って、このアーム51の後端側が前記引っ張りコイルばね58によって上方に付勢されることで、前記アーム51が前記第一ピニオンギア53に押し付けられる。また、前記第一ピニオンギア53の軸方向両側には、この第一ピニオンギア53よりも大径な一対の案内円盤66,66が設けられる。そして、これらの案内円盤66,66間に前記アーム51を位置させることで、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53が位置ズレしないようにすることができる。なお、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53は、前記扉3を開く動作により噛合する。
【0022】
前記小径ギア55は、前記大径ギア54と常時噛合すると共に、この大径ギア54よりも小径に形成される。即ち、前記大径ギア54と小径ギア55とで増速機構が構成される。また、前記小径ギア55の軸方向両側には、この小径ギア55よりも大径な一対の案内円盤67,67が設けられる。そして、これらの案内円盤67,67間に前記大径ギア54を位置させることで、前記大径ギア54と小径ギア55が位置ズレしないようにすることができる。また、前記小径ギア55は、前述した図示しない軸受孔に固定された回動軸68の外側端部に固定される。
【0023】
前記第二ピニオンギア56は、前記回動軸68の内側端部に固定される。これによって、前記第二ピニオンギア56は、前記小径ギア55と同軸に且つ一体に回動するように構成される。また、前記第二ピニオンギア56は、前記第二ラック57と常時噛合する。更に、前記第二ピニオンギア56の軸方向両側には、この第二ピニオンギア56よりも大径な一対の案内円盤69,69が設けられる。そして、これらの案内円盤69,69間に前記第二ラック57を位置させることで、前記第二ラック57と第二ピニオンギア56が位置ズレしないようにすることができる。
【0024】
前記第一ピニオンギア53が、そのピッチ円における周長方向に回動した距離Lと、前記第二ピニオンギア56が、そのピッチ円における周長方向に回動した距離Mの比、即ち変速比Gは、前記第一ピニオンギア53のピッチ円の半径をR1、前記大径ギア54のピッチ円の半径をR2、前記小径ギア55のピッチ円の半径をR3、前記第二ピニオンギア56のピッチ円の半径をR4とすると、以下の式で表される。なお、計算を単純化するために、各ギア間のバックラッシュは考慮しないものとする。
G=(R2/R1)×(R4/R3)
なお、本実施形態では、各ギアのピッチが等しいので、歯数の比で表すことができる。即ち、変速比Gは、前記第一ピニオンギア53の歯数をT1、前記大径ギア54の歯数をT2、前記小径ギア55の歯数をT3、前記第二ピニオンギア56の歯数をT4とすると、以下の式で表される。
G=(T2/T1)×(T4/T3)
そして、本実施形態では、図4乃至図11に示されるように、T1=T3=T4=26である。また、前記アーム51に隠れる部分があるが、T2=90である。従って、本実施形態では、変速比G≒3.46となる。これは、前記第二ピニオンギア56が前記第一ピニオンギア53の約3.46倍の線速度で回動することを意味する。また、前記第一ピニオンギア53が、そのピッチ円における周長方向に距離L回動すると、前記第二ピニオンギア56が、そのピッチ円の周長方向に距離約3.46L回動することを意味する。
【0025】
なお、本実施形態において、説明の簡略化のため、前記オーブントースター1に設けられるヒータ、操作部等についての説明は省略する。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。図4及び図8の初期状態では、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53は噛合しておらず、この第一ピニオンギア53の歯は前記第一ラック52の非形成部63に当接している。この状態から使用者は、前記ハンドル32を把持し、前方に引く。これによって、前記扉3が前記枢軸35R,35Lを中心に枢動する。そして、前記扉3の枢動に伴って、前記リンク機構5のアーム51も前方に引かれる。この際、前記アーム51は、前記揺動軸62を中心に揺動する。また、前述したように、前記アーム51の後端側は前記引っ張りコイルばね58によって後上方に付勢されているので、前記アーム51は前記第一ピニオンギア53の歯に押し付けられ続ける。更に、前記案内円盤66,66によって、前記アーム51が前記第一ピニオンギア53の歯から外れるのを防止することができる。そして、前記第一ピニオンギア53の歯は、前記扉3が角度A枢動して図5及び図9の状態になるまで、前記第一ラック52と噛合せずに、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって前記非形成部63に当接し続ける。即ち、前記第一ピニオンギア53、大径ギア54、小径ギア55及び第二ピニオンギア56は、前記扉3が角度A枢動するまで回動しない。従って、前記第二ラック57が結合された前記載置部4の載置部本体41は、前記扉3が角度A枢動するまで前方に移動しない。そして、前記扉3が角度A枢動することで、図5に示すように、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53は噛合する。
【0027】
図5及び図9の状態から更に前記扉3を前方に引いて、この扉3を前記枢軸35R,35Lを中心に枢動させると、前記第一ラック52と噛合した前記第一ピニオンギア53は、前記第一ラック52の前方への移動に伴って回動する。そして、この第一ピニオンギア53の回動に伴って、前記大径ギア54がこの第一ピニオンギア53と同じ角速度で回動する。なお、前記大径ギア54のピッチ円における周長方向に回動する距離は、前記第一ピニオンギア53におけるそれよりも長い。また、前記大径ギア54と噛合する前記小径ギア55は、そのピッチ円における周長方向に、前記大径ギア54と同じ距離回動する。更に、前記第二ピニオンギア56は、前記小径ギア55とピッチ円の半径及び歯数が同じであるから、そのピッチ円における周長方向に、前記大径ギア54及び小径ギア55と同じ距離回動する。そして、前述したように、変速比Gが約3.46であるため、前記第二ピニオンギア56のピッチ円における周長方向に回動する距離は、前記第一ピニオンギア53のそれの約3.46倍となる。更に、前記第二ピニオンギア56と噛合する前記第二ラック57が結合された前記載置部本体41は、前記第二ピニオンギア56の周長方向に回動する距離と同じ距離だけ、前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lに沿って前方に移動する。即ち、前記載置部本体41は、その案内受部43R,43Lが前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lに沿って摺動する。
【0028】
更に、前記扉3が角度Cまで枢動すると、前記アーム51に形成された切欠部64の他端側縁64Bが前記ストッパー59に当接し、これ以上前方への前記扉3の枢動が制限される。この際、前記切欠部64の一端側縁64Aが前記アーム51の長さ方向に対し斜めに切り欠かれているので、前記ストッパー59をスムーズに前記切欠部64に迎え入れることができる。そして、この状態で、前記第一ラック52は、図5から図7にかけて距離Lmax(但し、噛合位置が変動するため、正確な値ではない)の範囲で前記第一ピニオンギア53と噛合し、前記載置部4が距離Mmax(≒3.46Lmax)前方に移動することになる。
【0029】
このような変速比Gにすると、前記扉3を枢動させる際に前記載置部4の前端が前記扉3の焼成室15側の面に衝突する可能性があるが、前述したように、前記扉3が角度A枢動するまで前記載置部4が前方に移動しないので、前記載置部4と前記扉3との衝突を阻止することができる。そして、前記載置部4が動かない前記扉3の枢動角度Aと、前記第一ピニオンギア53と第二ピニオンギア56との変速比Gを最適化することで、前記載置部4と前記扉3との衝突を阻止しながら、前記載置部4の前方への突出量を最大化することができる。なお、前記扉3が全開の状態で、前記アーム軸受部34、即ち前記アーム51の前端は、前記載置部4の前端よりも後方である。また、前記扉3が全開の状態で、前記アーム51の前記貫通溝20から突出した部分は、前記載置部4よりも下方である。このため、使用者が前記アーム51に触れにくいようにすることができる。
【0030】
なお、前記扉3を閉じるように枢動させると、この扉3を開くように枢動させる場合と逆の動作が起こる。
【0031】
前述したように、前記案内部材43Rの右端と前記案内部材43Lの左端との間隔が前記開口部14の幅よりも小さく、且つ前記アーム51の後端側が自由端となっていることで、図7及び図11の状態から前記載置部本体41を前記溝部17R,17Lに沿って前方に引くと、この載置部本体41が前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lから外れる。この際、前記第二ラック57が前記第二ピニオンギア56と噛合しているため、前記載置部本体41を引くことで、前記第二ピニオンギア56、ひいては前記第一ピニオンギア53を回動させる力が働く。この際、前記第一ピニオンギア53と噛合する第一ラック52が形成された前記アーム51の後端側が自由端となっていることで、前記第一ラック52は前記第一ピニオンギア53の回動に伴って、この第一ピニオンギア53から離れる方向に移動し、一時的に噛合が解除される。即ち、前記第一ピニオンギア53は、前記第一ラック52に対し空回りする。そして、前記第一ピニオンギア53が1ピッチ分回動すると、前記第一ピニオンギア53との噛合が一時的に解除された前記第一ラック52は、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって再び前記第一ピニオンギア53と噛合する。これが繰り返されることで、前記載置部本体41は、前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lから、即ち前記焼成室15から外される。このように、前記載置部本体41を前記焼成室15から取り外すことで、この焼成室15内を清掃しやすくすることができる。
【0032】
前記焼成室内を清掃した後、前記載置部本体41の案内受部43R,43Lを前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lに押し込むことで、再び前記載置部本体41を前記焼成室15内に取り付けることができる。即ち、前記扉3が角度C開いた全開の状態で、前記載置部本体41の案内受部43R,43Lを前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lに沿って押し込むと、前記第二ラック57が前記第二ピニオンギア56と当接する。この際、前述したように、前記案内部材16R,16Lの前端部にそれぞれ誘い込み部18R,18Lが形成されているので、前記載置部本体41の案内受部43R,43Lを前記溝部17R,17Lに容易に挿入することができる。そして、このまま前記載置部本体41を前記溝部17R,17Lに沿って押し込むと、前記第二ピニオンギア56が回動して前記第二ラック57と第二ピニオンギア56が噛合する。そして、これらが噛合することで、前記載置部本体41を前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lから取り外す場合と同様に、前記小径ギア55、大径ギア54及び第一ピニオンギア53を回動させる力が働く。この際、前記第一ピニオンギア53と噛合する第一ラック52が形成された前記アーム51の後端側が自由端となっていることで、前記第一ラック52は前記第一ピニオンギア53の回動に伴って、この第一ピニオンギア53から離れる方向に移動し、一時的に噛合が解除される。即ち、前記第一ピニオンギア53は、前記第一ラック52に対し空回りする。そして、前記第一ピニオンギア53が1ピッチ分回動すると、前記第一ピニオンギア53との噛合が一時的に解除された前記第一ラック52は、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって再び前記第一ピニオンギア53と噛合する。これが繰り返されることで、前記載置部本体41は、前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17L、即ち前記焼成室15に再び取り付けられる。
【0033】
この場合、前記扉3と案内部材16R,16Lと載置部本体41との相対的な位置関係は正確でなくても良い。即ち、前記扉3が角度C開いた全開の状態では、前記載置部本体41は、前記案内部材16R,16Lの溝部17R,17Lに対し、図7及び図11に示される規定位置であるのが望ましいが、この規定位置よりも前記載置部本体41が奥となるように取り付けても良い。但し、前記扉3が角度C開いた全開の状態で、前記載置部本体41が規定位置よりも前にあるのは、前記扉3を閉じる際にこの扉3と前記載置部本体41とが衝突する虞があるので、好ましくない。
【0034】
例えば、規定位置よりも前記載置部本体41を奥に取り付けた状態で前記扉3を閉じるように枢動させる場合、この枢動に伴って、前記リンク機構5のアーム51は、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって前記本体2内に引き込まれる。この際、前記アーム51は、前記揺動軸62を中心に揺動する。また、前述したように、前記アーム51の後端側は前記引っ張りコイルばね58によって後上方に付勢されているので、前記アーム51の第一ラック52は、前記第一ピニオンギア53と噛合し続ける。このため、前記扉3を閉じるように枢動させると、前記第一ラック52が後方に移動して前記第一ピニオンギア53を回動させ、この回動に伴って前記大径ギア54、小径ギア55、第二ピニオンギア56が回動し、更に、この第二ピニオンギア56と噛合する第二ラック57、ひいてはこの第二ラック57が結合した前記載置部本体41が前記溝部17R,17Lに沿って奥に移動する。しかしながら、前記載置部本体41が規定位置よりも奥に取り付けられているので、前記扉3が図5及び図9の位置となる前に、前記載置部本体41の案内受部43R,43Lが前記案内部材16R,16Lの端壁19に当接し、これ以上奥に移動できなくなる。即ち、前記第二ラック57の移動が停止する。これによって、この第二ラック57と噛合した第二ピニオンギア56、及びこの第二ピニオンギア56と連動する前記小径ギア55、大径ギア54、第一ピニオンギア53も停止する。更に、この状態では、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53とが噛合しているので、前記第一ラック52が形成されたアーム51の移動も停止する。このため、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によっては、前記扉3がそれ以上枢動しなくなる。
【0035】
しかしながら、この状態から更に使用者の手で前記扉3を閉じるように枢動させると、前述したように、前記アーム51の後端側が自由端となっていることで、前記アーム51の後方への移動に伴って、前記第一ラック52が前記第一ピニオンギア53から離れる方向に移動し、一時的に噛合が解除される。即ち、前記第一ラック52の歯が前記第一ピニオンギア53の歯を乗り越える。そして、前記第一ラック52が1ピッチ分移動すると、前記第一ピニオンギア53との噛合が一時的に解除された前記第一ラック52は、前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって再び前記第一ピニオンギア53と噛合する。これが繰り返されることで、前記扉3を閉じるようにこの扉3を枢動させることができる。
そして、前記扉3が角度Aまで枢動させられると、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53との噛合が解除され、この第一ピニオンギア53は前記アーム51における前記第一ラック52の非形成部63と当接する。この結果、前記アーム51が前記引っ張りコイルばね58の付勢力によって後方に引かれて移動することになり、前記扉3も前記アーム51に引かれて閉じ、図4及び図8の状態に戻る。
【0036】
このように、前記本体2に対する前記載置部4の着脱が容易であることは、前記焼成室15内の清掃性を向上させるだけではなく、前記オーブントースター1の製造時における組立性を向上させることも意味する。
【0037】
以上のように、本発明は、正面に開口部14が形成されると共に内部に焼成室15を有する本体2と、この本体2に枢支されると共に前記開口部14を開閉可能な扉3と、この扉3の開閉に伴って前記開口部14から出没する載置部4と、前記扉3の動きと前記載置部4の動きを連動させるリンク機構5とを有する加熱調理装置としてのオーブントースター1において、前記リンク機構5が、前端が前記扉3に揺動可能に支持されると共に後側に第一ラック52が形成されるアーム51と、前記第一ラック52と噛合する第一ピニオンギア53と、この第一ピニオンギア53の回動に伴ってこの第一ピニオンギア53のピッチ円の線速度よりも速い線速度でピッチ円が移動する第二ピニオンギア56と、この第二ピニオンギア56と噛合する第二ラック57と、前記アーム51の後側を後方に且つ前記第一ピニオンギア53側に付勢する付勢部材としての引っ張りコイルばね58とを有し、前記第二ラック57が前記載置部4に結合されることで、前記扉3における前記アーム51の前端の支持位置となる前記アーム軸受部34を前記扉3の枢軸35R,35L寄りに設けたとしても、前記第一ピニオンギア53と第二ピニオンギア56の外周部線速度の比、即ち変速比Gを適切にすることで、前記載置部4の引出量Mmaxを、被調理物を安定して載置できる最大限の引出量にすることができる。このため、前記扉3の解放時に、前記アーム51に触れる危険性を減ずることができる。
【0038】
また、本発明は、前記アーム51に、前記扉3を所定角度A枢動させた際に前記第一ラック52が前記第一ピニオンギア53と噛合するよう、第一ラック52の非形成部63を設けることにより、前記扉3を開き始めてから所定角度A枢動するまでの間、前記載置部4が前方に引き出されないので、扉3の開放初期にこの扉3と載置部4が衝突しないようにすることができる。
【0039】
また、前後方向に延びる案内部材16R,16Lが前記焼成室の左右両壁にそれぞれ設けられ、前記各案内部材16R,16Lに対し前方から着脱可能な案内受部43R,43Lが前記載置部4の載置部本体41の左右にそれぞれ設けられると共に、前記引っ張りコイルばね58の付勢力に抗して前記第一ラック52が前記第一ピニオンギア53から離れる方向に前記アーム51が揺動可能となるように、前記アーム51が前記扉3に支持されることで、前記載置部本体41を最大突出状態から更に前方に引くと、前記第一ピニオンギア53が前記第二ピニオンギア56及び第二ラック57と連動して回動するが、前記第一ラック52と第一ピニオンギア53の噛合が一時的に解除されて空回りするので、前記載置部本体41を前記本体2から取り外すことができる。このため、前記焼成室15内を容易に清掃することができる。
【0040】
更に、前記第二ピニオンギア56が前記第二ラック57の下方に設けられることにより、前記載置部4に被調理物を置く際に前記第二ピニオンギア56が邪魔にならないようにすることができる。
【0041】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、第一ピニオンギアと第二ピニオンギアとの間に大径ギアと小径ギアからなる増速機構を設けたが、他の方式からなる増速機構を設けても良い。また、第二ピニオンギアを第一ピニオンギアと同軸且つ一体に設けると共に、この第二ピニオンギアのピッチ径を第一ピニオンギアのピッチ径よりも大きくしても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 オーブントースター(加熱調理装置)
2 本体
3 扉
4 載置部
5 リンク機構
14 開口部
15 焼成室
16R,16L 案内部材
17R,17L 溝部
21R,21L 本体側軸受部
33R,33L 扉側軸受部
34 アーム軸受部
35R,35L 枢軸
51 アーム
52 第一ラック
53 第一ピニオンギア
56 第二ピニオンギア
57 第二ラック
58 引っ張りコイルばね(付勢部材)
60 軸受孔
62 揺動軸
63 非形成部
A 角度
C 角度
G 変速比
L 距離
Lmax 距離
M 距離
Mmax 距離
R1 第一ピニオンギア53のピッチ円の半径
R4 第二ピニオンギア56のピッチ円の半径
T1 第一ピニオンギア53の歯数
T4 第二ピニオンギア56の歯数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11