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  • 特開-筒型リニアモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121182
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024374
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】芝原 大智
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG04
5H641GG05
5H641GG08
5H641HH02
5H641HH06
5H641JA02
5H641JA09
5H641JB07
(57)【要約】
【課題】高い推力の発生が可能であって界磁のガタつきを防止可能な筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】筒型リニアモータ1は、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石10a,10bを有する筒状の界磁6と、界磁6の内周側に軸方向移動自在に挿入される電機子2と、筒状であって界磁6の外周を覆うバレル7と、バレル7の一方の開口端に取り付けられて界磁6の一方の端部6aに対向するヘッド部材9aと、バレル7の他方の開口端に取り付けられて界磁6の他方の端部6bに対向するボトム部材12と、ボトム部材12と界磁6との間に介装されるスペーサ41と、スペーサ41の軸方向端部に設けた凹部41c内に収容されて界磁6を付勢する弾性体としてのOリング42とを備えて構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石を有する筒状の界磁と、
前記界磁の内周側に軸方向移動自在に挿入される電機子と、
筒状であって前記界磁の外周を覆うバレルと、
前記バレルの一方の開口端に取り付けられて前記界磁の一方の端部に対向するヘッド部材と、
前記バレルの他方の開口端に取り付けられて前記界磁の他方の端部に対向するボトム部材と、
前記ヘッド部材および前記ボトム部材の少なくとも一方と前記界磁との間に介装される環状のスペーサと、
前記スペーサの軸方向端部に設けた凹部内に収容されて前記界磁を付勢する弾性体とを備えた
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記凹部は、前記スペーサの反界磁側端に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記スペーサは、前記電機子が無負荷の状態において、前記ヘッド部材および前記ボトム部材の一方と前記界磁とに当接している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、軸方向にS極とN極とが交互に並ぶように収容される複数の永久磁石を有する界磁と、界磁に対して軸方向に相対移動可能な電機子とを備えるものがある。
【0003】
このように構成された筒型リニアモータでは、界磁或いは電機子を固定子としており、固定子側では界磁或いは電機子を外筒の内周に固定的に取り付けている。従来の筒型リニアモータでは、たとえば、固定子は、外筒と、外筒内に挿入された電機子と、外筒の両端の開口端に取り付けた一対の側壁と、一対の側壁と電機子との間の2箇所に挿入されたパッキンとを備えて構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-115171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
筒型リニアモータでは、固定子に対して可動子を軸方向に駆動して推力を発生する際に、固定子における電機子に前記推力と同じ大きさの反力が作用するが、電機子の両端側にパッキンを設けているため、反力の全てをパッキンで受けることになる。
【0006】
よって、従来の筒型リニアモータの推力を高推力化すると、パッキンが押しつぶされて電機子が軸方向へ移動してしまうという問題が生じる。また、界磁を固定子側に装着する場合、界磁が多数の磁石を接着剤の介在によって軸方向に積層する構造となるため、長年の使用によって高熱に晒される界磁の軸方向長さが僅かに変化して外筒に対して界磁が軸方向にガタつく場合もある。
【0007】
そこで、本発明は、高い推力の発生が可能であって界磁のガタつきを防止可能な筒型リニアモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石を有する筒状の界磁と、界磁の内周側に軸方向移動自在に挿入される電機子と、筒状であって界磁の外周を覆うバレルと、バレルの一方の開口端に取り付けられて界磁の一方の端部に対向するヘッド部材と、バレルの他方の開口端に取り付けられて界磁の他方の端部に対向するボトム部材と、ボトム部材と界磁との間に介装される環状のスペーサと、スペーサの軸方向端部に設けた凹部内に収容されて界磁6を付勢する弾性体とを備えて構成されている。
【0009】
このように構成された筒型リニアモータでは、界磁がスペーサの凹部内に収容された弾性体によって付勢されているため、筒型リニアモータの長年の使用によって高熱に晒されて界磁の軸方向長さが僅かに変化しても弾性体によって界磁のバレル内での軸方向のガタつきを防止できる。また、弾性体が界磁に対向するスペーサの凹部内に収容されているので、筒型リニアモータが推力を発生した際に界磁が当該推力の反力を受けても、弾性体のみならずスペーサでも当該反力を受けるため、筒型リニアモータの推力を高推力化しても界磁のバレルに対する軸方向のずれを抑制できる。
【0010】
また、筒型リニアモータにおける凹部は、スペーサの反界磁側端に設けられてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、メンテナンスの際の弾性体の交換が容易となる。
【0011】
さらに、筒型リニアモータにおけるスペーサは、電機子が無負荷の状態において、ヘッド部材およびボトム部材の一方と界磁とに当接していてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、推力発生時に界磁に反力が作用しても界磁がスペーサによって支持され、弾性体によって付勢されるので、バレルに対する界磁の軸方向へのずれを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筒型リニアモータによれば、高い推力の発生が可能であって界磁のガタつきを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石10a,10bを有する筒状の界磁6と、界磁6の内周側に軸方向移動自在に挿入される電機子2と、筒状であって界磁6の外周を覆うバレル7と、バレル7の一方の開口端に取り付けられて界磁6の一方の端部である図1中左端6aに対向するヘッド部材としてのヘッド部9aと、バレル7の他方の開口端に取り付けられて界磁6の他方の端部である図1中右端6bに対向するボトム部材としてのボトムキャップ12と、ボトムキャップ12と界磁6との間に介装されるスペーサとしての環状のエンド側スペーサ41と、エンド側スペーサ41の軸方向端部に設けた凹部41c内に収容されて界磁6を付勢する弾性体としてのOリング42とを備えて構成されている。
【0015】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されている。
【0016】
コア3は、前述の通り筒状であって、図1に示すように、コア本体3aの外周に軸方向に等間隔に並べて設けられた10個のティース3bを備えており、ティース3b,3b間には、巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相巻線、V相巻線およびW相巻線の三相の巻線で構成されている。9個のスロット4には、図1中左側から順に、W相、W相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相が装着されている。
【0017】
そして、電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着されている。ロッド11は、筒状の第1ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第1ロッド20の内周に螺合される第2ロッド21とを備えている。
【0018】
第1ロッド20は、筒状であって図1中左端外周と図1中右端内周にそれぞれ螺子部22a,22bを有するロッド本体22と、筒型リニアモータ1を機器へ取り付けるブラケット23aを有してロッド本体22の図1中左端の螺子部22aに螺着されてロッド本体22の左端を閉塞するロッドキャップ23とを備えている。
【0019】
また、ロッド本体22の図1中右端外周には、環状のスライダ25が嵌合されている。スライダ25は、後述する筒部9bの内周に摺接する摺接部25aと、摺接部25aの図1中左方側であるロッド11の基端側に設けられた外径が摺接部25aよりも小径な小径部25bと、小径部25bの外周に周方向に沿って設けられた環状溝25cと、図1中右端内周に設けられたフランジ25dとを備えている。そして、スライダ25の環状溝25cには、弾性体としてのゴム製のシールリング26が装着されている。また、フランジ25dの内径は、ロッド本体22の内径以上であってロッド本体22の外径以下となっており、スライダ25をロッド本体22に嵌合するとフランジ25dがロッド本体22の図1中右端面に当接する。
【0020】
第2ロッド21は、外周にコア3が装着される筒状のコア保持筒21aと、コア保持筒21aの図1中右端となる先端の外周に設けられる環状のスライダ21bとを備えている。また、コア保持筒21aの図1中左端となる基端の外周には、螺子部21cが設けられており、コア保持筒21aの基端側内周には内径が他の部位よりも大きな内径大径部21dが設けられている。そして、コア保持筒21aの基端を第1ロッド20におけるロッド本体22の図1中右端の内周に挿入しつつ螺子部21cを螺子部22bに捩じ込むと、第1ロッド20と第2ロッド21とが連結される。このようにロッド11は、本実施の形態では、第1ロッド20と第2ロッド21とで構成されて筒状とされている。
【0021】
また、第2ロッド21におけるコア保持筒21aの外周には、コア3が嵌合されて装着されている。コア保持筒21aの外径は、第1ロッド20におけるロッド本体22の外径よりも小径となっているので、スライダ25を装着した第1ロッド20に電機子2を装着した第2ロッド21を前記した要領で連結すると、電機子2およびスライダ25が第1ロッド20の図1中右端と第2ロッド21のスライダ21bとで挟み込まれて固定される。このようにロッド11に電機子2を装着すると、コア3がスライダ21bおよびスライダ25に挟まれる格好でロッド11に固定される。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、コギング推力の向上等のために複数のコア3を持つ構成とされてもよい。
【0022】
つづいて、ロッド11には、ロッド11の外周を覆って空隙Gを形成するカバー17が設けられている。具体的には、カバー17は、筒状であって一端がロッド11の外周に設けた環状のカバーエンド18の外周に嵌合されるとともに他端がスライダ25の小径部25bの外周に嵌合されてロッド11に装着されている。
【0023】
カバー17とロッド11との間の空隙G内には、コア3に装着された各相の巻線5を外部の図示しない駆動回路へ接続するリード線Lが収容されており、カバー17を取外した状態で巻線5とリード線Lとの配線作業を行えるようになっており、筒型リニアモータ1の組立作業を容易ならしめている。
【0024】
つづいて、本実施の形態では、界磁6は、軸方向に交互に積層され複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。また、界磁6は、外周に装着される円筒状の磁性体で形成されるバックヨーク8とともに、円筒状のバレル7と、バレル7内に挿入される円筒状のインナーチューブ9との間の環状隙間内に収容されている。
【0025】
バレル7は、非磁性体で形成されており、図1中左側の開口端の内周に設けられた螺子部7aと、図1中右側の開口端の外周に設けられた螺子部7bとを備えている。また、バレル7の図1中右端側の開口端の外周には、ボトムキャップ12が螺着されており、バレル7の図1中右端の開口端が閉塞されている。ボトムキャップ12は、底部12aと筒部12bとを備えた有底筒状であって、バレル7の外周に筒部12bを螺合することでバレル7に装着されている。また、ボトムキャップ12の筒部12bには筒型リニアモータ1の機器への取り付けを可能とするブラケット12cが設けられている。ボトムキャップ12は、底部12aを界磁6の他方の端部となる図1中右端6bに対向させており、ボトム部材として機能する。
【0026】
インナーチューブ9は、非磁性体で形成されており、バレル7の図1中左端の開口端に螺子締結によって装着される環状のヘッド部9aと、ヘッド部9aよりも肉厚が薄くヘッド部9aの図1中右端の内周から延びて界磁6の内周に挿入される筒部9bとを備えて構成されている。よって、インナーチューブ9におけるヘッド部9aの図1中右端は、筒部9bの外周に装着される界磁6の一方の端部となる図1中左端6aに対向するヘッド部材として機能する。
【0027】
また、インナーチューブ9は、ヘッド部9aの図1中右端と筒部9bとの境に湾曲面9c備えており、ヘッド部9aにのみ軸力が作用してもヘッド部9aと筒部9bの境に応力が集中しないようになっている。なお、このように応力集中を回避するには、ヘッド部9aと筒部9bとの境にテーパ面を設けるようにしてもよい。
【0028】
界磁6は、筒状のバックヨーク8の内周に軸方向に交互に積層されて挿入される複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。永久磁石10aと永久磁石10bとは、飛散防止のため、接着剤を介在して積層されている。なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
【0029】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さは、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くなっている。このように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを長くすればコア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
【0030】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けると磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さの短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
【0031】
また、界磁6の内周側には、電機子2が軸方向移動自在に挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、バレル7と筒部9bとの環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。
【0032】
なお、本実施の形態では、界磁6は、ハルバッハ配列の永久磁石10a,10bで構成されているが、ラジアル方向に着磁されて内周にN極を持つ環状の永久磁石とラジアル方向に着磁されて内周にS極を持つ環状の永久磁石とを順番に積層して構成されてもよい。
【0033】
そして、筒部9bの外周とバレル7の内周との間には、環状のヘッド側スペーサ40、界磁6、環状のエンド側スペーサ41とが収容されている。ヘッド側スペーサ40は、筒状であって、図1中右側となる界磁側の外径より図1中左側となる反界磁側の外径が大きくなる形状となっており、大径部40aと小径部40bとを備えており、大径部40aの図1中左端がインナーチューブ9のヘッド部9aの図1中右端面に当接し、小径部40bの図1中右端が界磁6の左端6aに当接している。
【0034】
また、ヘッド側スペーサ40の大径部40aの反界磁側端の端面40cの内周には面取りされてインナーチューブ9の湾曲面9cを避ける逃げ部40dが設けられている。このようにヘッド側スペーサ40が逃げ部40dを備えることで、ヘッド側スペーサ40の大径部40aの図1中左端である反界磁側端がヘッド部9aの図1中右端面に正対して当接できる。さらに、小径部40bの外径は、バックヨーク8の内径よりも小径となっており、小径部40bは、筒部9bとバックヨーク8との間に隙間に入り込んで界磁6の左端6aに正対して当接している。
【0035】
エンド側スペーサ41は、筒状であって、図1中左側となる界磁側の外径より図1中右側となる反界磁側の外径が大きくなる形状となっており、大径部41aと小径部41bとを備えており、大径部41aの図1中右端がボトムキャップ12の底部12aの図1中左端面に当接し、小径部41bの図1中左端が界磁6の右端6bに当接している。さらに、小径部41bの外径は、バックヨーク8の内径よりも小径となっており、小径部41bは、筒部9bとバックヨーク8との間に隙間に入り込んで界磁6の右端6bに正対して当接している。
【0036】
また、エンド側スペーサ41の大径部41aの反界磁側端の端部には、環状の凹部41cが設けられており、当該凹部41c内には環状のOリング42が挿入されている。Oリング42の体積は、Oリング42が何ら外部から負荷を受けない状態では、凹部41cの容積よりも大きい。
【0037】
そして、筒部9bの外周には、図1中左から環状のヘッド側スペーサ40、界磁6、環状のエンド側スペーサ41が順に嵌合され、インナーチューブ9のヘッド部9aをバレル7に螺子締結した後、バレル7の図1中右端にボトムキャップ12を取り付けると、ヘッド側スペーサ40、界磁6およびエンド側スペーサ41がインナーチューブ9におけるヘッド部9aとボトムキャップ12の底部12aとで挟持され、界磁6がバレル7の内周に固定される。なお、界磁6の外周に装着されるバックヨーク8は、ヘッド部9aとボトムキャップ12とによって軸方向で挟持されていないが、界磁6に接着されているのでバレル7内で移動しない。界磁6の磁力によって界磁6に対するバックヨーク8の軸方向への移動を拘束できる場合には、バックヨーク8を界磁6に接着せずともよい。
【0038】
このように、界磁6がバレル7に固定されて、筒型リニアモータ1が推力を発揮せず、界磁6に推力の発生による軸方向の反力が作用していない状態では、界磁6の右端6bとエンド側スペーサ41の左端とが当接し、エンド側スペーサ41の右端とボトムキャップ12の底部12aとが当接する。また、この状態では、ヘッド側スペーサ40の右端は、界磁6の左端6aに当接するとともに、ヘッド側スペーサ40の左端は、インナーチューブ9のヘッド部9aの左端に当接している。さらに、エンド側スペーサ41の凹部41c内に収容されたOリング42は、エンド側スペーサ41の右端と底部12aとの当接によって、底部12aによって圧迫されて凹部41c内に圧縮された状態で押し込められており、エンド側スペーサ41を軸方向で界磁6側へ向けて付勢する。
【0039】
なお、ヘッド部9aの内周には、第1ロッド20の外周を覆うカバー17の外周に摺接する環状のシール部材28が設けられており、筒型リニアモータ1内への塵や水などの侵入が防止されている。
【0040】
そして、インナーチューブ9内には、電機子2が装着されたロッド11が軸方向移動自在に挿入され、筒部9bの内周にスライダ21b,25が摺接して、電機子2の軸方向の移動が案内される。
【0041】
筒部9bは、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ21b,25と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、複数のコア3を持つ場合、電機子2の軸方向両端だけでなくコア3,3間にも筒部9bの内周に摺接するスライダを設けてもよい。
【0042】
さらに、ボトムキャップ12の底部12aの内周には、ガイドロッド16が取り付けられている。ガイドロッド16は、底部12aの内周に固定される基端部16aと、基端部16aからロッド11側へ延びてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイド部16bとを備えており、筒型リニアモータ1が伸縮しても常にロッド11の内周に摺接している。より詳細には、ガイドロッド16のガイド部16bは、第2ロッド21の内径大径部21dよりも先端側に摺動自在に挿入されている。
【0043】
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1では、ガイドロッド16がロッド11の内周に摺接し、スライダ21b,25が筒部9bに摺接しているので、電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。
【0044】
また、このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2の軸方向移動をガイドして界磁6に対する電機子2の偏心を防止する筒部9bがヘッド部9aと一体構造になっているので、筒部9bとヘッド部9aに歪が生じにくくスライダ21b,25が筒部9bの内周を滑らかに摺動でき、スムーズに伸縮できる。
【0045】
そして、筒型リニアモータ1は、ロッド11の界磁6に対する位置を図示しないストロークセンサで検知し、コア3の界磁6に対する電気角を把握して通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御して、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御するコントローラによって駆動される。なお、前述のコントローラにおける制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギー回生も可能である。
【0046】
以上のように、本発明の筒型リニアモータ1は、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石10a,10bを有する筒状の界磁6と、界磁6の内周側に軸方向移動自在に挿入される電機子2と、筒状であって界磁6の外周を覆うバレル7と、バレル7の一方の開口端に取り付けられて界磁6の左端(一方の端部)6aに対向するヘッド部(ヘッド部材)9aと、バレル7の他方の開口端に取り付けられて界磁6の右端(他方の端部)6bに対向するボトムキャップ(ボトム部材)12と、ボトムキャップ(ボトム部材)12と界磁6との間に介装される環状のエンド側スペーサ(スペーサ)41と、エンド側スペーサ(スペーサ)41の軸方向端部に設けた凹部41c内に収容されて界磁6を付勢するOリング(弾性体)42とを備えて構成されている。
【0047】
このように構成された筒型リニアモータ1では、界磁6がエンド側スペーサ(スペーサ)41の凹部41c内に収容されたOリング(弾性体)42によって付勢されているため、筒型リニアモータ1の長年の使用によって高熱に晒されて界磁6の軸方向長さが僅かに変化してもOリング(弾性体)42によって界磁6のバレル7内での軸方向のガタつきを防止できる。また、Oリング(弾性体)42が界磁6に対向するエンド側スペーサ(スペーサ)41の凹部41c内に収容されているので、筒型リニアモータ1が推力を発生した際に界磁6が当該推力の反力を受けても、Oリング(弾性体)42のみならずエンド側スペーサ(スペーサ)41でも当該反力を受けるため、筒型リニアモータ1の推力を高推力化してもOリング42が押しつぶされずに界磁6のバレル7に対する軸方向のずれを抑制できる。
【0048】
以上、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、高い推力の発生が可能となるとともに、界磁6のガタつきを防止できる。
【0049】
なお、前述したところでは、弾性体は、Oリング42とされているが、Oリング42以外にも、界磁6を付勢できればよいので、スプリングワッシャやその他のスプリング、ゴム等とされてもよい。また、凹部41cは、必ずしも環状とされずともよいが、凹部41cが環状に形成されて、弾性体も環状とされると、弾性体の付勢力を円筒状の界磁6に対して周方向で均等に作用させ得るので界磁6の軸方向のガタつきを効果的に抑制し得る。
【0050】
さらに、本実施の形態では、エンド側スペーサ41のみに凹部41cを設けてOリング(弾性体)を凹部41cに収容する構造を採用しているが、これに代えて、或いは、これに加えて、ヘッド側スペーサ40に凹部を設けて、ヘッド側スペーサの凹部に界磁6を軸方向に付勢する弾性体を収容してもよい。
【0051】
本実施の形態では、エンド側スペーサ(スペーサ)41に設けられた凹部41cは、内周と外周に側壁を有する構造となっているので、界磁6が前記反力を受けた際に、エンド側スペーサ(スペーサ)41は、凹部41cの内側の肉厚と外周の肉厚とで反力を受け得る構造となって強度上有利となるが、凹部を環状とする場合、内周側或いは外周側に側壁を有しない構造も採用できる。
【0052】
また、本実施の形態では、エンド側スペーサ(スペーサ)41の反界磁側端にOリング(弾性体)42を収容する凹部41cを設けているので、筒型リニアモータ1のメンテナンスの際に、ボトムキャップ(ボトム部材)12をバレル7から取り外せば、エンド側スペーサ(スペーサ)41をバレル7から取り外さなくともOリング(弾性体)42にアクセスでき、Oリング(弾性体)42の交換が容易となる。なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、インナーチューブ9における筒部9bがヘッド部材としてのヘッド部9aと一体とされる構造を採用しているが、ヘッド部9aのみがバレル7に取り外し可能な態様となっていてもよく、その場合、ヘッド側スペーサ40を請求項に言うスペーサとして利用して反界磁側端に凹部を設け、当該凹部内に弾性体を収容すればヘッド部9aの取り外しによって弾性体の交換が容易に行えることになるので、このようにしてもよい。
【0053】
なお、エンド側スペーサ41の界磁側の端部に凹部を設けて当該凹部にOリングを収容したり、ヘッド側スペーサ40の界磁側の端部に凹部を設けて当該凹部にOリングを収容したりすると、筒型リニアモータ1の使用によって高温に晒される界磁6にOリングが焼き付いてしまいOリングの交換が困難となる。ただし、交換が不要な弾性体を使用する場合、エンド側スペーサ41の界磁側の端部に凹部を設けて当該凹部に弾性体を収容してもよいし、ヘッド側スペーサ40の界磁側の端部に凹部を設けて当該凹部に弾性体を収容してもよい。
【0054】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、エンド側スペーサ(スペーサ)41の軸方向端部は、電機子2が通電されずに無負荷な状態にあって、界磁6がOリング42の弾発力を受ける他には電機子2から軸方向の荷重を受けない状態、つまり、電機子2が無負荷の状態において、ボトムキャップ(ボトム部材)12と界磁6とに当接している。このように構成された筒型リニアモータ1では、エンド側スペーサ(スペーサ)41の軸方向端部は、電機子2が無負荷の状態において、ボトムキャップ(ボトム部材)12と界磁6とに当接しているので、推力発生時に界磁6に反力が作用しても界磁6がエンド側スペーサ(スペーサ)41によって支持され、さらに、Oリング(弾性体)42によって界磁6が付勢されるので、バレル7に対する界磁6の軸方向へのずれを効果的に防止できる。なお、ヘッド側スペーサ40をスペーサとして用い、ヘッド側スペーサ40に凹部を設けて弾性体を当該凹部に収容する場合、電機子2が無負荷の状態において、ヘッド側スペーサ40の軸方向端部をヘッド部(ヘッド部材)9aと界磁6とに当接させれば、推力発生時に界磁6に反力が作用した際にバレル7に対する界磁6の軸方向へのずれを効果的に防止できる。
【0055】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、凹部41cは、環状凹部であって、弾性体は、環状のOリング42とされている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、規格が決まっておりコンパクトなOリング42を弾性体とすることで、エンド側スペーサ(スペーサ)41に対してOリング42を無理なく装着できるとともに、Oリング42が安価で手に入りやすいので、筒型リニアモータ1を安価に製造できる。なお、弾性体をOリング42とする場合、メンテナンス時の交換の容易性に鑑み、エンド側スペーサ(スペーサ)41の反界磁側端に凹部41cを設けるとよい。また、ヘッド部9aのみのバレル7からの取り外しが可能であれば、Oリング42が収容される凹部をヘッド側スペーサ40の反界磁側端に設けても、同様に、メンテナンス時の交換が容易となる。
【0056】
また、本実施の形態では、電機子2を軸方向に駆動する際に反力としてインナーチューブ9のヘッド部9aに軸力が作用しても、ヘッド部9aと筒部9bとの境に湾曲面9c設けられているので、インナーチューブ9の前記境の部分への応力集中を緩和できる。ヘッド側スペーサ40が湾曲面9c避ける逃げ部40dを備えているので、ヘッド側スペーサ40の端面40cがヘッド部9aに正対して当接できるので、電機子2の駆動時の界磁6に作用する軸力によるヘッド側スペーサ40とヘッド部9aとの接触圧力を低減できる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、6・・・界磁、7・・・バレル、9a・・・ヘッド部(ヘッド部材)、10a,10b・・・永久磁石、12・・・ボトムキャップ(ボトム部材)、41・・・エンド側スペーサ(スペーサ)、41c・・・凹部、42・・・Oリング(弾性体)
図1